女「自殺しよう」 (27)
女「……あれ、生きてる」
女(ビルから飛び降りたのに……このゴミ袋の山に落ちて、助かっちゃったのね)
女「……ん?」
女「パン屋がある……」
女(こんなところに店開いて、来る客なんているのかしら?)
女(所持金は……300円か。これだけあれば、パン一つくらい買えるでしょ)
女(最後の晩餐がパンってのも悪くないかもね)
ギィィ…
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店主「いらっしゃい」
女「こ、こんにちは……」
女(なんだか不気味な店員ね……全然愛想ないし……)
女(そうだ、ちょっと驚かせてみよう!)
女「実はあたし、これから自殺するつもりなの。それで最後の食事にパンを買いに来たのよ」
店主「そうか」
女「!?」
女(ちょっとは驚きなさいよォ! ていうか、普通止めるでしょ! なんなのこいつ!?)
女(ま、いいや。もうあたしが自殺するのは決定事項だし)
女(トングを取って……)カチカチ
女「どのパンにしようかな~っと。コッペパンなんていいかも……」
店主「!」ピクッ
店主「お前、今なんていった?」
女「へ?」
ガシィッ!
女「ぐえっ……!?」
店主「『どのパンにしようかな』っていったよな? 何様のつもりだァッ!!!」グググ…
女「あ、がが……(あぁ池沼のパン屋だったか……)」メキメキ…
女「それの、どこが……いけないの、よ……」
店主「どこがいけないだと? そんなことも分からんのか、このバカ女が!」
店主「お前がパンを選ぶんじゃねえ……パンがお前を選ぶんだ」
女「い、意味、わかんない……」
店主「これだけいっても分からんか……」
店主「そういえばお前、自殺するっていってたな。なら手間を省いてやろう」
店主「このまま俺がお前を殺してやる」グググッ…
女「えげぇぇぇ……」メキメキ…
女(し、死ぬ……たす、けて……池沼パンマンに……殺され)
弟子「何やってんですか、師匠! 死んじゃいますよ!」
店主「当然だろうな。殺すつもりで絞めてるんだから」グググ…
弟子「いやいやいや、殺しちゃダメですよ!」
店主「こいつはパンを侮辱した……もう死ぬしかない」グググ…
女(あ、やばい……いしき、うすれてきた……)メキメキ…
女「ゆ、ゆるひて……」メキメキ…
店主「許さん」グググ…
女「なんでもひゅるからぁ……」メキメキ…
店主「!」ピクッ
女「ゲホッ、ゲホッ、ゲホッ!」
店主「今なんでもっていったな? いったよな?」
女「い……いったわよ!」
店主「よし……だったらお前、ここでアルバイトしろ。ちょうど人手が欲しかったんだ」
女「やる! やるわ! だから殺さないで!」
店主「いいだろう……殺さないでやる」
女(よかったぁ……)
弟子「大丈夫ですか?」
女(大丈夫なわけないでしょ!)
お前1人で死んでろ
女「ところで、ここは……なんなの? パン屋さんよね?」
店主「少し違うな。ここは……“闇のパン屋”だ」
女「は?」
弟子「この店は、心に闇を抱えた人たちのためのパン屋なんですよ」
店主「ここを見つけることができるのは、そういう連中ばかりだ」
店主「真っ当に生きてる人間が、ここにたどり着くことはまずない」
店主「つまり……お前も心に闇を抱えてるってことになるな」
女「…………」
女「そうよ……。だけど、あんたたちに事情を話すつもりはないけどね」
店主「別にいい、興味ないし」
女「あぐぐぐ……」
店主「さっそく仕事を始めてもらう」
女「何をすればいいの?」
店主「掃除、接客、パンの陳列、といったところだ」
女(なんだ……大したことないじゃない)
店主「お前はパン作りの修行だ。こっちへ来い」
弟子「はいっ!」
ギィィ…
女(あ、さっそく一人目のお客だわ)
女「いらっしゃいませー!」
客「ぱんつくって」
女「パン?私はバイトだからパン作れないわ。」
客「ぱんつくって」
女「だから作れないって。」
客「ぱんつ……くって……。」
女「……ん?」
客「パンツ……食って……。」
客「オデのパンツ食ってェェェェェェェェ!」
女「うぎゃァァァァァァァァ!」
店主「何事だ!」
女「店主さん!」
客「オデのパンツ食ってェェェェェェェェ!」
店主「ふざけるな!」
バキッ!バキッ!バキッ!
客「」ボロボロ
店主「ここはパン屋、パンを食わすところだ。パンツを食わすところではない。」
女「……。」
店主「何をしている。早く仕事に戻れ。」
女「この人は一体……。」
店主「言っただろ。ここを見つけることができるのは、そういう連中ばかりだと。」
女「……。」
女「(私、もしかしてこいつと同類?)」
客「パン下さい。」
女「あ、いらっしゃいませ。」
客「ぱんください。」
女「えっと……何パンですか?」
客「パンク……ダサい……。」
女「!?」
客「パンクがダサいよォォォォォォォォ!」
ギュワンギュワンギュワンギュワン!
女「ぐわァァァァァァァァ!うるせェェェェェェェェ!」
店主「何事だ!?」
女「店主さん!大変です!客が店内でギターを!」
客「パンクがァァァァァァァァ!ダサいよォォォォォォォォ!」
ギュワンギュワンギュワンギュワン!
店主「ぐわァァァァァァァァ!うるせェェェェェェェェ!」
客「パンクダサいパンクダサいパンクダサいパンクダサいィィィィィィィィ!」
ギュワンギュワンギュワンギュワン!
店主「こいつ、そんなにパンが欲しいのか。」
女「店主さん違います!パンク『が』ダサいです!」
店主「パンクだと!?ふざけるな!ここはパン屋だ!パンクを聴かせるところではない!」
店主「死ねェェェェェェェェ!」
バキッ!
客「ぐはっ!」
女「やったか!?」
客「……。」
店主「やったか!?」
客「あァァァァァァァァ!」
バキッ!
店主「ぐわぁっ!」
女「店主さん!(ギターで殴った!)」
客「パンクゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
ブンッ!
店主「!?」
サッ!
客「パンツゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
ブンッ!
サッ!
ブンッ!
サッ!
店主「(まずいぞ。避けてばかりでは勝てない。)」
女「店主さん!」
客「パンフゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
ブンッ!
店主「(こうなったら一か八か……。)」
パシッ!
女「!?」
客「!?」
店主「真剣白刃取り、成功。」
女「客のギターを真剣白刃取りで受け止めた!」
店主「隙あり!」
バキッ!
客「がはっ!」
女「客からギターを奪った!」
店主「最強の武器を手に入れたぞ。」
客「!?」ビクッ
店主「おらぁっ!」
バキッ!
客「がはっ!」
バキッ!
客「がはっ!」
バキッ!
客「がはっ!」
バキッ!
客「が…は…っ…。」
店主「自分の武器でやられる気分はどうだ?」
バキッ!バキッ!バキッ!バキッ!バキッ!
客「」ボロボロ
店主「……やったか?」ハァハァ
女「動きませんね。」
店主「……勝った。」
女「……店主さん。」
店主「何だ?」
女「この店、いつもこんな感じなんですか?」
店主「そうだ。」
女「……。」
店主「どうした?早く仕事に戻れ。」
女「……はい。」
女「(そういえば何で私、こんなところでバイトしてるんだっけ?)」
女「(……あ、何でもするって言ったの忘れてた。)」
女「(何で『何でもする』って言ったんだっけ?)」
女「……。」
女「!?」ゾクッ
女「私、あいつに殺されかけたんだった。」
女「何で私を殺そうとしたヤツの店で働いてんだろう。」
女「……。」
女「帰ろ。」
死の恐怖を知った女は自殺を諦めた
それ以降あのパン屋は見えなくなりました
女「(同類じゃなかった・・・・・・)」ホッ
おしまい
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