舞姫「あのねぇ、今日はほたるちゃんに渡したいものがあるんだよ」ニコニコ
ほたる「?」
舞姫「これ!」
ほたる「夏用の黒いネグリジェ?」
舞姫「ほたるちゃんはシンプルなデザインが好きだよね」
ほたる「飾り気は無いものの、着れば胸や腰に緩やかに丸みを帯びたラインを描くであろう、柔らかい生地のひらひらした、軽くて薄い……ヒメの趣味で選ばれたものか」
舞姫「私と色違いのお揃いだよ、形はちょっと違うけど」
ほたる「そう微笑まれては、着ないなんて選択肢は選べないな」
舞姫「ほたるちゃんはやっぱりノースリーブが似合うね」
ほたる「ヒメのネグリジェは白い半袖、裾は私のよりずっと短い」
舞姫「……」
ほたる「……」
舞姫「来て……」
ほたる(夏の夜が見せる幻か、銀髪の妖精が淡いピンクの天蓋の下へ私をいざなっている)
(翌朝)
舞姫「う、うーん……暑い」
ほたる(くたくたに乱れたシーツが昨夜の「夢の様な物語」は決して夢ではないと言ってる///)
舞姫「……おはよ、ほたるちゃん」
ほたる「ん、おはよう」
舞姫「んんー……」
ほたる「ふふ、ヒメはかわいいね」
舞姫「ほたるちゃんの方がかわいいよ。昨日もすっごいかわいかった」
ほたる「……///」
舞姫「窓を開けよう……うわっ生暖かい風」
舞姫「うへぇ、朝なのにもうあっついね」
ほたる(ヒメの髪がふわりと風に揺れる。穏やかに優しく流れる銀糸はさざ波に似ている様な気がする……)
舞姫「せっかくの夏なんだから、やっぱり夏っぽい事したいよね。……海水浴はいつでも出来るからそれ以外で」
ほたる「山も大体進入不可領域だし……」
舞姫「虫も居ないから昆虫採集も無理でしょ?うぅん夏の風物詩……ふーぶつし……ふー……あっ!わかった!風鈴作ろう!」
ほたる「風鈴?」
舞姫「そう!ふーりん!」ギュッ
ほたる(両手が捕まった///)
舞姫「ペットボトル切って工作するのも良いし、本格的に工房でガラス加工しても良いかも!だってほたるちゃんは何でも出来ちゃうからそれはそれは本格的で風流な風鈴をさらりと作って見せてくれるに決まっている!」
ほたる「いいよ。ヒメがそうしたいなら」
舞姫「窓辺に飾ってちりんちりん鳴ったらちょっとは昔みたいな夏っぽい夏に出来るかな」
いつも笑顔が眩しい彼女の表情に微かに寂しさが見受けられた私は、非の打ち所がない完璧な風鈴とついでに流し素麺用のコースだとかかき氷や綿飴なんかが作れる夏祭り風の屋台だとかを一から作り上げて、ヒメの為だけの夏祭り会場を設営、運営しようと思ったし、寧ろ祀られるべきは天河舞姫である、と思った
ほたる「信仰せよ全世界の人類及び命ある全ての生物よ!」
舞姫「ほたるちゃん?」
今日も今日とてヒメに尽くせる喜びを胸に、絡んだ指にきゅっと力を込めて、私は約三十年前の世界の再現を決意した
おしまい
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