【モバマス】Pのクリスマス (30)


カタカタカタ

P「……」カタカタカタ

P「……」ッターン カタカタカタ

P「……」カタカタカタ

P「……ふぅ」

ちひろ「お疲れ様です」

P「!!」

P「ち、ちひろさん。お疲れ様です」

ちひろ「そんなに驚かなくてもいいじゃないですか」

P「すみません。画面に集中してて、忍び寄る足音に気がつかなくて」

ちひろ「忍び寄ったつもりはないです! 朝からずっとデスクに張りついてますけど、まだお仕事終わらないんですか?」

P「はい。年が明けた後の生放送特番について、流れの確認や見直しをしてて」

P「他にも山ほどの番組出演依頼が来てますから、その処理をしてるところです」

ちひろ「大変ですね……まあ183名のアイドルをプロデュースしてますし、当然と言えば当然ですけど」

P「今は184名ですよ。来年には190名まで増えますし」

ちひろ「そういえばそうでした。書類見ましたよ、魅力的な娘ばかりですね」ニコッ

P「ええ。本格的に活動するのが楽しみです」

ちひろ「ですね。……っと、話が逸れちゃいました。お仕事、終わるまでどのくらいかかりますか?」

P「終わるまで? んーと、2時くらいかな」

ちひろ「日を跨ぐんですか!?」

P「は、はい……」

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ちひろ「……」

P「なんでガッカリしてるんですか」

ちひろ「いえ別に」

ちひろ「なるほど、だからみんな一昨日から元気なかったのね」ボソッ

P「え?」

ちひろ「何でもないです。プロデューサーさん、話は変わりますけど」

ちひろ「今日って何の日か分かります?」

P「クリスマスです」

ちひろ「正解です。せっかくの聖夜ですから、何か特別なことしたいと思いませんか?」

ちひろ「ちょっと高いレストランで食事したり、誰かとプレゼントを交換したり」

P「楽しそうですね。でもその前に、アイドルたちの仕事について色々決めるのが先ですよ」ハハ

ちひろ「……」

ちひろ(こんな笑顔でこんなこと言われたら、お誘いも断念するしかないわね)

ちひろ(無理やり連れて行くわけにもいかないし)

P「さーて、再開するか!」カタカタカタ

ちひろ「……」

P「……」カタカタカタ

ちひろ(けど、私なら。アイドルじゃなく事務員である私なら!)

P「……」カタカタカタ

ちひろ「プロデューサーさん」

P「はい」ッターン

ちひろ「確かにアイドルのお仕事を決めるのは最優先事項ですね」

ちひろ「一方で、せっかくのクリスマスなんだから、いつもより特別なことをしてみたいという気持ちもあるんですよね」

P「ありますよ。けど、そうも言ってられません」

ちひろ「少しくらいならいいんじゃないですか?」

ちひろ「1時間……いや、30分くらいなら、クリスマスっぽいことをしたっていいんじゃないですか?」

P「……まあ……」

ちひろ「決まりですね!!」

P「へ?」

ちひろ「ここでやりましょうよ、ささやかなクリスマスパーティーを! チキンやケーキ、プレゼントも用意して!」

ちひろ「夕飯は済ませました?」

P「いえ、まだです」

ちひろ「ちょうどよかった。今から私がめちゃくちゃ急いで買って来ますから、お仕事しててください」

P「いやいや、悪いですよ」

ちひろ「悪くないです! だって私、プロデューサーさんと一緒にパーティーしたいので」

P「えっ」

ちひろ「あ……あはは……。ということなので、ちょっと行ってきます!」カァァ

ちひろ「頑張ってくださいねっ!」スタタタッ

P「……」

P「あっ、ちひろさん! お金出しますよ!」

――――

(その頃、卯月宅)

凛「はっ!?」ピキーン

未央「どしたのしぶりん」

凛「今……誰かに抜け駆けされてる気がする……」

未央「抜け駆け?」

凛「うん……これから誰かが、プロデューサーとイチャイチャするような……」

未央「しぶりんはエスパーなの?」

未央「ってかさ、プロデューサーは明日の朝まで仕事って言ってたじゃん。イチャイチャする暇もないでしょ」

凛「だよね……気のせいかな……」

スタスタ

卯月「ケーキができましたよー!」

未央「おおー! これが女子力の成せる技か! すごい豪華だね!」

響子「ありがとうございます……」

まゆ「……」

未央「ん? なんか2名ほど、浮かない顔してるね」

美穂「さっきからずっとこんな調子なの。なんでも、誰かにプロデューサーをとられちゃうような気がするらしくて」

未央「え」

凛「響子とまゆもなんだ」

まゆ「ということは、凛ちゃんもですか?」

未央「Pラブ勢が揃いも揃ってなんなのさ」

響子「私にも分かりません。ただ、なんとなくそういう気がするだけで」

まゆ「プロデューサーさんを愛するあまり、眠っていた第六感が覚醒してしまったんでしょうか」

未央「もしそうだとしたら厄介極まりないね。プロデューサー的に」

スタスタ

加蓮「あっ、ケーキできたんだー」

奈緒「うまそー!」

卯月「2階にいたみんなも降りて来ましたね!」

茜「わーーー!? とっても美味しそうなケーキですっ!」キラキラ

藍子「……」スタスタ

未央(やっぱりあーちゃんも訝しげな顔してる)

凛「ダメだ、気になってしょうがない。プロデューサーに連絡してみる」

美穂「お仕事の邪魔をするのは……」

凛「ちょっと確認するだけだよ、それにラインなら、ふとした時に見られるからいいでしょ?」タプタプ

響子「ナイスアイディアです!」

まゆ「お願いします凛ちゃん!」

美穂「よっぽど気になるんだね」アハハ…

未央「もしこの予感が当たってたら恐ろしすぎる」

――――

ちひろ「プロデューサーさん、買って来ましたよ♪」

P「ずいぶん早かったですね。わざわざすみません、いくらでした?」

ちひろ「いいんですよ。私が無理言って企画したことですから」

P「そうはいきませんよ、これは俺とちひろさんのパーティーなので」

P「実は内心、楽しみにしてましたしね」ハハ

ちひろ「……プロデューサーさん……」

P「半分でもいいので出させてください」

ちひろ「分かりました。これ領収書です」スッ

ちひろ「全部コンビニで買ったものなので、本当にささやかですけど」

P「充分ですよ。嬉しいです」

ちひろ「じゃ、紙コップとか用意しますね。もうちょっとお仕事しててください」

P「はい」


(数分後)

P「よし、一区切りついた」

ちひろ「始めますか?」

P「ええ、始めましょう。コップを持ってっと」スッ

P「どうやってスタートするんですか?」

ちひろ「いっせーので、メリークリスマスって言いましょう! 乾杯の音頭ですよ」

P「は、はい」

ちひろ「いっせーの、メリークリスマース!」

P「メリークリスマース」

ちひろ「ゴクゴクゴク……ふー、たまにはジュースもいいですね」フフ

P「そうですね。美味しいです」

ちひろ「さあチキンを食べてください。サラダとサンドイッチもありますよ♪」

P「ありがとうございます」

ちひろ「ケーキはどっちがいいですか? ショートケーキとモンブランの二択です」

P「まずはちひろさんが選んでくださいよ」

ちひろ「いえいえプロデューサーさんからどうぞ」

P「……じゃあ、モンブランにします」

ちひろ「了解ですっ」

P「……」

ちひろ「何ですか? こっちをじーっと見て」

P「すみません。ちひろさん可愛いなと思って」

ちひろ「!?」

P「こんなにはしゃいでるの見たことなくて。無邪気だなと」

ちひろ「……だ、だって……その……」

ちひろ「何かのイベントを、こうしてプロデューサーさんと2人きり過ごすの……始めてなので」

P「言われてみれば」

ちひろ「アイドルの娘たちと楽しそうに過ごしてるのを見て、羨ましいなと思ってたんですよ」

P「大体は振り回されてますけどね……」

ちひろ「とにかく、そういうことなんです。さっきも言いましたけど、私はプロデューサーさんと一緒にクリスマスを過ごせて嬉しいんです」

P「……」

ちひろ「……」カァァ

P「それってつまり……」

ちひろ「えいっ」スッ

P「むぐっ」

ちひろ「ち、チキンどんどん食べてくださいね!! べたつかないようアルミホイルで包みますから!!」アセアセ

P「ふ、ふぁい」モグモグ
 (は、はい)

――――

(その頃、北の地方のホテル)

早苗「はっ!?」ピキーン

桃華「早苗さん、どうされました?」

早苗「今……誰かに好きなようにやられてる感じがする……」

仁奈・薫「???」

早苗「ごめんね。たぶん小さい子たちには分からないと思う」

瑞樹・留美・美優「……」

仁奈「お、おねーさんたち、こわい顔でごぜーます……」

留美「怒ってるわけじゃないのよ。ただ」

瑞樹「ええ、危機を感じるわ」

美優「プロデューサーさんが、何者かに奪われてしまうような……」

千枝・ありす「……」

桃華「千枝さんとありすさんも怖い顔ですわ!?」

薫「どうしちゃったのみんな……」


きらり「みんなー☆ おっきなケーキが届いたにぃ☆」

杏「かな子ちゃんが丸呑みしちゃう前に早く食べよー」

かな子「しないよ!?」

杏「って、うわ。ここにも険しい顔してるアイドルがたくさんいるし」

桃華「え? 『ここにも』とはどういうことですの?」

かな子「智絵里ちゃんも、さっき人が変わったように真顔になったの」

かな子「今は東京がある方を、じーっと見つめててね」

薫「こわいよぉ……」

桃華「何が起こったのでしょうか」

きらり「うにぃ……Pちゃんに関係があるとは思うんだけど……」

杏「プロデューサーがとられちゃう、的なこと言ってたよね」

留美「くっ……地方ロケじゃなければ……」ボソボソ

瑞樹「マズイわ……このままだと……」ボソボソ

仁奈「なにか呟いてるでごぜーます」

杏「あんまり気にしないでおこう。それよりケーキ食べない?」

きらり「とっても豪華で、きゃわゆいデコレーションだよぉ☆ 人数分切り分けるね☆」スッ

かな子「なにかを感じ取ってる人たちはいいの?」

杏「落ち着いたら食べるでしょ。杏たちで先にパーティー始めちゃおう」

――――

ちひろ「っ!」ブルッ

P「寒いですか? 暖房効いてますけど」

ちひろ「大丈夫です。なんとなく身震いしただけなので」ニコッ

ちひろ(どこか遠くの方から敵意を感じる。気づかれた? ……まさかね)

P「ところで、プレゼントも用意するって言ってましたよね? 俺は何にもないですよ」

ちひろ「用意しなくてもいいですよ。急なパーティーですからね」

P「でも、ちひろさんは俺へのプレゼントを用意してくれたんでしょう」

ちひろ「はい」

P「じゃあこっちも渡さないと。待っててください」スッ

ちひろ「えっ。どこへ……」

P「事務所のすぐ下にあるワインのお店に行ってきます」スタスタ

ちひろ「そんな、いいですよ! ただでさえお仕事を中断してもらってるのに!」

P「買うものは決まってるので、10分ちょっとで済みますから。食べててください」ニコッ

ガチャ パタン

ちひろ「……一緒に過ごせるだけで、幸せなのにな……」

(15分後)

P「ただいま戻りました」ガチャ

ちひろ「わざわざすみません。ありがとうございます」ペコリ

ちひろ「あら、頭に雪が」

P「結構降ってましたよ。ホワイトクリスマスですね」ハハ

ちひろ「今日は一段と寒いですからね」

ギュッ

P「え」

ちひろ「手、寒かったでしょう? こうすれば早く温まりますよ」

P「なにも手を握らなくたって……」

ちひろ「嫌ならやめます」

P「……ありがとうございます」

ちひろ「はい」ドキドキ

ちひろ(今日はとことん攻めないと)

――――

ちひろ「これ、私が飲んでみたいって言ってたワイン……!」

ちひろ「もらっていいんですか?」

P「むしろこれで良かったのかなと」

ちひろ「感激です! ありがとうございます!」

ちひろ「では、私からもプロデューサーさんにプレゼントを」スッ

P「これは……高級温泉旅館の宿泊チケット!?」

ちひろ「『ペア』チケットです。この前たまたま当たっちゃったんですけど、一緒に行ってくれる人が誰もいなくて」

ちひろ「その……もしよければ、私と……どうですか?」モジモジ

P「めちゃくちゃ嬉しいです! 温泉好きなんですよ!」

ちひろ(知ってますとも)ニコニコ

P「あー……でも……」

ちひろ「え? も、もしかしてダメなんですか!?」ガタッ

P「ダメというか、俺以上に温泉好きなアイドルがいたなって思って」

P「だから、俺よりもそのアイドルに…」

ちひろ「この温泉旅行ペアチケットはプロデューサーさんへのクリスマスプレゼントなのでできればプロデューサーさんが使って欲しいなと私は思うんですよねぜひそうしてもらえると嬉しいですお願いします」

P「あ、はい……」

ちひろ(全くこの人は。アイドル思いなのはいいけど少し自重して欲しいわね)

ちひろ(そのせいで色んな娘に勘違いされて、ライバルが増えちゃうんだから……)

P「えっと、じゃあ行きますか。日付は?」

ちひろ「そうですねぇ。来年の3月なんてどうですか?」

P「分かりました。予定を調整しときます」

ちひろ「お願いします♪」

――――

(その頃、南の地方のホテル)

フレ「はっ!?」ピキーン

美嘉「どうしたのフレちゃん」

フレ「トイレに行きたいけど行ってもいい!?」

美嘉「勝手に行けば!?」

フレ「ありがとー♪」スタタタッ

美嘉「もー、いちいち許可とらないでよ」ハァ…

志希「美嘉ちゃーん、あたしもおトイレ行きたーい」

美嘉「どうぞご自由に!!」

志希「ありがとー♪」スタタタッ

美嘉「全く、子供かっての」

周子「あの2人、ホント美嘉ちゃん好きだよねー」

美嘉「オモチャとしての好きだよね絶対。弄ばれてるし」

周子「嫌なの?」

美嘉「嫌に決まってるじゃん! ドMの人なら喜びそうだけど」

周子「でも美嘉ちゃんMじゃん」

美嘉「勝手に決めつけないで」

周子「Mじゃないの?」

美嘉「……。ってか話ズレてるし」

周子「やっぱMだ」

美嘉「も、もういいでしょ、追及しないでよ!」カァァ

周子「ホント美嘉ちゃん面白いわー」フフ

スタスタ

奏「あら? 自由の化身2人がいないわね」

周子「今ちょうどトイレ行ったとこ」

美嘉「パーティーの準備できたの?」

奏「ええ、だからこうして呼びに来たのよ」

美嘉「ありがと。2人が戻ってきたら行こっか」

奏「そうしましょう…」


美嘉・奏「はっ!?」ピキーン

周子「!?」ビクッ

周子「ど……どないしたん」

美嘉・奏「……」

周子「あのさー。トイレ行きたいボケなら、あたし相手にやるのやめてくれへん?」

美嘉「違うって!」

周子「じゃあ何」

美嘉「予感がしたの……嫌な予感が……」

周子「嫌な予感?」

奏「これはプロデューサー絡みね。しかも女関係よ」

美嘉「うん……おそらく……」

周子「……」

奏「『えぇ……』みたいな顔して引かないでくれるかしら」

周子「無理でしょ。プロデューサーのこと好き過ぎておかしくなったんじゃない?」

美嘉「そうかも……って、べべ、別に好きじゃないよ!?」

周子「今更しらを切っても無駄やって」

スタタタッ

夏樹「お、ここにいた」

美嘉「?」

奏「あ、ごめんなさい。今リップスのみんなに話したところだから、すぐに下へ…」

夏樹「呼びに来たんじゃないんだ。下にいるアイドル数人の様子が変になってさ」

周子「え?」

――――

幸子「……」

小梅「さ、幸子ちゃん……お腹でも痛いの……?」

輝子「それとも頭痛かな……」

幸子「すみません、ちょっとハプニングが起きたようで」

輝子「目が怖いぞ……」

小梅「カワイくないよ……」

文香「……」ゴゴゴゴ

夕美「……一体誰が……」ゴゴゴゴ

美波「油断したわ……お仕事中を狙ったのかしら……」ゴゴゴゴ

蘭子「ま、魔神の如き力を感じる……」プルプル
  (みなさんすごく怒ってます……)

アーニャ「アー……ミナミ? どうしましたか?」

美波「何でもないの。ごめんね」

アーニャ「でも、顔が怖いですよ」

夕美「気のせいじゃないかな」

文香「……許すまじ……」ボソッ

蘭子「ぴぃっ!?」ビクッ

アーニャ「よしよし、怖くないですよランコ」ナデナデ


涼「おい、これどうなってるんだ」

里奈「さあ?」

亜季「皆揃って、とある方向を凝視していますが……」

拓海「……」ゴゴゴゴゴ

涼「拓海、何が起きたか教えてくれよ」

拓海「それどころじゃねえんだよっ! くそっ」

里奈「今は近づかない方がいいね」

スタタタッ

周子「え……ウソやん。何これ」

亜季「周子殿! ご無事でしたか!」

周子「無事って?」

亜季「見ての通りであります。アイドル数人が同じ方向を見つめ、怒りを露わに」

奏「みんなも感じ取ったのよ」

夏樹「は?」

里奈「何を?」

美嘉「プロデューサーの身に起きていることを……」

涼「意味が分からない」

美嘉「アタシも上手くは言えないんだけどね……嫌な予感が……」

紗枝「ふふふふ」

美嘉「!?」

周子「さ、紗枝はん……」

紗枝「どこぞの女狐が、雄を前にして盛ってますなぁ」ゴゴゴゴ

紗枝「ほんま出し抜くのが上手いこと」ゴゴゴゴ

里奈「怖っ!?」

周子「般若出ちゃってるよ紗枝はん……」

涼「なあ、パーティどうする?」

夏樹「こんなんじゃ乾杯の音頭もとれないな。勝手に始めとくか?」

亜季「賛成であります。このままでは、せっかくの料理も冷めてしまいますし」

亜季「正気のアイドルを招集してきます」スタスタ

周子「……」

周子(え、マジでプロデューサーの身に何か起きたん? 女関係とか言ってたけど)

周子(何らかの波動を感じ取ったなら、このアイドルたち怖すぎひん?)


――――

ちひろ「……」

P「どうしましたちひろさん。あちこちを気にしてますね」

ちひろ「はは……何でもないですよ」

ちひろ(念を感じる。これはプロデューサーさんのことが好きなアイドルたちのもの)

ちひろ(どういう原理かは分からないけど、彼女らは私が企てたこの計画を察知したみたい)

ちひろ(まあ、知ったところでどうにかなるものでもないけど。気にせずプロデューサーさんとの時間を過ごさせてもらうわ)フフフ

P「……すみませんちひろさん」

ちひろ「え?」

P「料理、全部食べてしまいました。昼飯を抜いたせいで腹が減ってて」

ちひろ「ああ、気にしないでください。私もお腹いっぱいなので」ニコッ

ちひろ「それより、これからどうしますか?」

P「仕事に戻ろうかなと…」

ちひろ「もう少し時間ありますよね。ゲームでもやりませんか?」

P「ゲーム?」

ちひろ「実はさっきコンビニでトランプも買ってきたんですよ。これで何かやりましょう」

P「2人でトランプって寂しくないですか」

ちひろ「そんなことないですよ! ちなみにルールは、一回負けるごとに罰ゲームというハラハラドキドキなものにします」

P「いや、罰ゲームはやめましょうよ。罰を受ける必要なんてないでしょう」

ちひろ「まあまあそう言わず、ゲームを盛り上げるための些細な要素ですから。何をやりますか?」

P「強引だな……じゃあポーカーで」

ちひろ「了解! よーく混ぜますからね」シャシャシャ

ちひろ「はい、配りますよー」スッ

P「……うわ」

ちひろ「おっと? 悪い手札みたいですね」

P「悪いですよ。けど、まだチャンスはあるので」

――――

ちひろ「私はこれでいいです」

P「……俺もです」

ちひろ「じゃ、同時に出しましょう。はい」スッ

P「……」スッ

ちひろ「やった♪ 私がフルハウス、プロデューサーさんがワンペアで私の勝ちですね♪」

P「くそー、最初の手札が悪すぎた」

ちひろ「ドンマイですよ。さあ、罰ゲームといきましょう」

P「本当にやるんですね。内容は?」

ちひろ「勝者の言うことを何でも1つ聞いてください」

P「重い罰だ……」

ちひろ「大した要求はしませんから。そうですね」

ちひろ「膝の上に座らせてください」

P「え」

ちひろ「膝の間でもいいですよ」

P「……分かりました」

ちひろ「あら、断られるかと思いました」

P「断るほどのものでもないですし」

ちひろ「ふふ……じゃあ早速」スッ

ちひろ「失礼しますね」

P「はい」

スッ

ちひろ「……」

P「……」

ちひろ「要求しておいてなんですけど、私が恥ずかしいです、これ」

P「でしょうね。さあ、続きをやりましょう」

ちひろ「ノリノリになってきましたか」

P「久々にやると楽しいです。今度は負けませんよ」

――――

P「な……何故だ……」

ちひろ「また勝っちゃった♪」

P「ちひろさん、イカサマしてないですよね」

ちひろ「それだけは絶対にありえませんよ」

P「くぅ……俺が弱いだけか……」

ちひろ(その通りなのよね。まさかこんなに勝てるなんて)

ちひろ「えーっと、膝に座る、こちょこちょしてもらう、抱きしめてもらう、ときたので……」

ちひろ「今度は耳に息を吹きかけてもらいましょうか」

P「やってて思ったんですが、俺よりもちひろさんが罰を受けてるような内容じゃないですか?」

ちひろ「これでいいんです!」

ちひろ(どれもやってもらって嬉しいし。イチャイチャしてるカップルみたいで)エヘヘ

ちひろ(そしてこういうのを続けていけば、プロデューサーさんが私にドキっとしてくれる可能性も……)

P「耳に息、ですか?」

ちひろ「はい! お願いします♪」

ちひろ(早く吹きかけてもらってゾクゾクしたい。プロデューサーさんの温かい息を感じたい)ソワソワ

P「いきますよ」

ちひろ「んっ」ビクッ

ちひろ(耳のすぐ近くで声が……♡ あとでまた勝って、愛の言葉を囁いてもらうのもいいかも♡)

ちひろ「お、お願いします」

P「すぅー……」

ちひろ「……」ドキドキ



ちひろ「!?」ゾクッ



P「ん? ちひろさん、どうしましたか?」

ちひろ「……」ダラダラ

P「ちひろさん? 汗が噴き出してますけど……」

ちひろ(こ……これは……)

ちひろ(この、身も凍ってしまうような威圧感は……!)チラッ

ちひろ「ひぃっ!?」ビクッ

P「え!? ど、どうしたんですか? どこを見て……」

P「!?!?」ビクッ


「「「……」」」ジー


P(へ、部屋の透明ドアに……ギラギラと光る瞳が! 誰かが張り付いてる!?)

ちひろ(まさかそんな! 念のためにかけておいた、いくつものロックも突破してきたの!?)

P「そ、そこにいるのは誰ですか! そっちの方は電気をつけてないから、暗くて分からないんです」


ガチャ

凛「私たちだよプロデューサー」

まゆ「こんばんは♡」

P「凛と、まゆ?」

P「それに響子と藍子も」

響子「お仕事お疲れ様です♪」

藍子「差し入れのケーキを持ってきました」ニコッ

ちひろ「……っ!」ガタガタ

P「そんな……気を遣ってもらって悪いな」

凛「いいんだよ。プロデューサーが仕事でアイドルたちのパーティーに参加できないならって、勝手に持ってきたんだもん」

凛「っていうかラインで連絡したのに、既読すらつかなかったけど」

P「え? うわ、本当だ。やってしまった……ごめん」

凛「どのみちここに来るつもりだったし、気にしないで」

まゆ「ところで、何故ちひろさんがここにいるんですかぁ?」

ちひろ「えっ……と……、その……」ブルブル

響子「プロデューサーさんの膝の上に座ってるのは何でですか?」

藍子「耳に息を吹きかけてもらおうとしてましたよね? どういう状況か説明をしてもらえると嬉しいです」

P「ちひろさんは俺の休憩時間に、ささやかなパーティーができないかと考えて、実行に移してくれたんだよ」

P「それくらいなら大丈夫だと思って、楽しんでた最中なんだ。これは余興の1つだよ」

凛「ふーん」

響子「名案ですね! 私たちも呼んでくれればよかったのに」

P「みんなはみんなでパーティーがあるだろ? ほんの短時間のためにわざわざ会社に来てもらうことなんてできないよ」

藍子「何だったら会社のスペースを借りることもできましたし」

まゆ「まゆたちに相談してくれれば、ここで開いたのに……」

P「いいんだよ、俺のためにそこまでしてもらわなくても」

凛「私たちはそこまでしたいんだけどね」

まゆ「ところで、お時間大丈夫ですか? ケーキ食べる時間ありますか?」

P「ん……ああ、もうこんな時間なのか。仕事に戻らないとな」

P「ケーキは冷蔵庫に入れて、明日いただくよ。さっき食べたばかりでさ」

藍子「分かりました♪」

響子「えっと、じゃあちひろさんも退場しないとですね」

ちひろ「!!」

P「あー……そうだな。ちひろさん、すごく楽しかったです。俺のためにありがとうございます」

ちひろ「い、いえ……」

凛「とりあえず膝から降りたら?」

ちひろ「そ、そうですね」ササッ

P「?」

P「顔、真っ青ですけど。大丈夫ですか?」

響子「風邪でも引いちゃったのかも」ガシッ

まゆ「お薬飲まないと」ガシッ

ちひろ「……!!」ビクビク

凛「プロデューサー、ちひろさんは私たちが介抱するから、引き続き仕事頑張ってよ」

P「そうか。ありがとう」

藍子「食べ物の容器、片づけますね」ガサゴソ

P「ああいや、俺がやるから」ガサゴソ

ちひろ「……」

響子「ちひろさん?」ボソッ

ちひろ「!」

まゆ「ここで起きたこと、あとで全部話してもらいますよぉ」

まゆ「地方にいるアイドルともテレビ電話が繋がってるので」

響子「一緒に楽しいクリスマスを過ごしましょう」

ちひろ「……あっ! プロデューサーさんの胸元がはだけてセクシーな姿に!」

響子・まゆ「え!?」ササッ

凛・藍子「セクシーな姿!?」ササッ

P「……」ポカーン

凛「きっちりスーツを着こなしてるじゃん!」

響子「はっ、しまった! 逃げられた!」

まゆ「今のはブラフだったみたいですねぇ」

藍子「なんて巧妙な……! プロデューサーさん、集めたゴミはゴミ箱に捨てておきますね!」

藍子「私たちはちひろさんを追いかけないといけないので」

P「あ、ああ……」

凛「上着も着ずに外に出たら、風邪が悪化するもんね」

P「だな……」

藍子「早く捕まえなきゃ」ヒソヒソ

まゆ「社内にいるかもしれませんよ」ヒソヒソ

響子「大丈夫です。晶葉ちゃんが作った発信機を取りつけたので、このレーダーで居所はすぐ分かります」ヒソヒソ

まゆ「ナイスです!」

凛「じゃ、またねプロデューサー。メリークリスマス」

まゆ・響子・藍子「メリークリスマス!」

P「ああ……」

スタタタッ

パタン

P「……」

P(去り際のあいつらの目、鋭く光ってたけど……)

P「まあいいか。続き続き」カタカタカタ

カタカタカタ…


「ひぃぃぃぃぃっ……!」


P「!」ピクッ


「逃げた……そっちに行った……!」

「囲め囲め……!」

「ネットを発射して……!」


バシュッ


「っしゃあ……! 捕えた……!」

「ごめんなさい~……! 許して~……!」

「大丈夫です……話を聞くだけ……」


「もうちょっと静かに……聞こえる……」

「ごめ……なさい……」


…………。


P「……」

P(静かになった。何をやってたんだあいつら)

P(ちひろさんの悲鳴みたいなのも聞こえたけど……)

P(気になるな……)カタカタカタ


その後、アイドルに捕えられたちひろは朝までくすぐりの刑に処された。


ちひろ「ふ、ふん! 別に抜け駆けしたっていいでしょう! 恋は戦いなんですからね! べーっだ!」ベー

凛「開き直ったよ」

まゆ「やっちゃいましょう」

コチョコチョコチョコチョ

ちひろ「あひゃひゃひゃひゃ! やめてぇ! 死んじゃうからぁ~!」


おわり

今年最後の投下
読んでくださった方、ありがとうございます
メリークリスマス、良いお年を



こういうの好き

もっと書いて

乙でした
ぽんこつJDの人か?

>>27
別人です

乙!

あまりにもちひろさんが報われない…

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