穂乃果のチョコの行方 (11)

朝起きると娘が厨房に立っていた。

穂乃果「お、お父さん…おはよう…早いね」

いつも時間が許すまで寝ている彼女がこんな早朝に何をしているのか。

穂乃果「え?べ、別に?何もしてないよ?本当…ね?」

この子は直ぐに顔に出る。父親である私に何かを隠しているらしい。

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穂乃果ママ「穂乃果が朝早くに?」

私は妻が何かを知っているのではないかと思い訪ねた。

穂乃果ママ「あ~ほら?今日は2月14日でしょ!チョコレート作るって昨日から張り切ってたわよ?」

そうか。今日は2月14日。世間はバレンタインデー。

穂乃果ママ「誰かあげる相手でもいるんじゃないの?」

妻はニヤニヤしながらそう答えた…が、私が知る限り娘に彼氏がいた事はない。高校だって女子高だし男の子と接する機会などないはずだ。仮にあったとして彼女は今スクールアイドルと言うものに夢中になっている。アイドルと言えば恋愛はご法度だ。私の時代からそうだった。

だから、彼女には恋人は居ないはず。そうに決まっている。

雪穂「はい、お父さん。チョコレート!」

次女が学校に行く前にチョコレートをくれた。思わず顔が緩みそうだったが何とか堪えた。

雪穂「お姉ちゃんからは貰った?」

貰っていない。

雪穂「え?そうなの?てっきりお父さんにあげるのかと思ってたけど…違うのかなぁ?」

なんだと?

雪穂「まあ、お姉ちゃんも何だかんだ言って高校生だしね~。好きな人の一人や二人居てもおかしくないか。あはは」

好きな人が二人も居たらおかしいだろ!

雪穂「なんてね。お姉ちゃんじゃ有り得ないか~。音ノ木坂じゃ出会いとかもないだろうし。そもそもスクールアイドルだもんね…ってお父さん?」

もし…もし、あの子に彼氏が居たとして許せるだろうか?

雪穂「お父さん?あの…冗談だよ?お父さんってば…」

あの子が彼氏を連れて来たらどうする?きっと玄関に並んだ靴を蹴飛ばしてしまうだろう。

雪穂「やばぁ…。私、そろそろ学校行くよ?聞こえてないか」

どんな男だったら許せる?好青年だったら許せるか?

穂乃果『お父さん、紹介するね?こちら、私の彼氏の◯◯さん」

『初めましてお父さん』

誰がお父さんだ!お前のお父さんになった覚えなどない。ダメだ。どんなに好青年を連れて来ようが殴らない自信がない。

かと言ってそんな事をして穂乃果に嫌われたらどうする?

穂乃果『お父さん何するの?大丈夫?もう…最低だよ。お父さんなんて…大嫌い』

そんな事を言われたら私は生きていけない。やはり、穂乃果がどんな男を連れて来ようと認めてやるべきなのだろうか。
しかし、どうする?とんでもなくチャラチャラした男を連れて来たら。

穂乃果『お父さん、紹介するね!こちら、お付き合いしてる◯◯さん』

『チィース。お父さんよろしくで~す』

ふざけるな。絶対にそれだけは嫌だ。こんな奴が穂乃果に指一本でも触れよう物ならもう…俺はきっと殴るどころじゃすまない。

だから…その男の為にも許すべきじゃないのだろう。いや…待て…下手に反対して駆け落ちなんかされたらどうする?

穂乃果ママ『あなた…これ。穂乃果が…』

「お父さん、お母さん、雪穂へ。私はあの人と二人で生きていきます。探さないで下さい。どうか、お元気で」

穂乃果ママ『穂乃果…なんで…』

雪穂『お父さんのせいだよ。お父さんが反対なんてするから』

そんなつもりじゃなかったんだ。私はただ…穂乃果には幸せになって欲しいから。

穂乃果の幸せ…穂乃果の幸せとは何なのだろう?私は…余りにも自分の事しか考えてなかったのではないだろうか?穂乃果が私の元から離れていってしまう事が寂しいから…。私はあの子の事を考えている様で実の所あの子の幸せの邪魔をしてるだけだ。

穂乃果『お父さん』

私に…俺にとってあの子と雪穂は何者にも代えがたい宝物だ。あの子の為だったら命だって惜しくない。

穂乃果『お父さんだーいすき』

あの子の笑顔を守る為だったらなんだってする。それが俺の役目だと…そう思ってた。けど…もう、その役目も終わりなんだ。

いつの間にか大きくなっまいやがって。ついこの間までランドセルを背負っていたのに。もう…きっと…まだまだ先の事なんて笑えない…。

穂乃果ママ「あなたー?そろそろ…えっ?」

穂乃果の幸せが一番だ。

穂乃果ママ「な、なんで泣いてるの?」

そして…。

認めよう。お前がどんな男を連れて来ても認めるよ。

穂乃果「へ?何?どうしたの急に?」

穂乃果ママ「なんか様子が変なのよ。穂乃果の結婚がどうとか…」

穂乃果「ええ?大丈夫?私まだ高校生なんだけど?結婚なんてまだまだ先の事だよ」

穂乃果ママ「ねえ?」

穂乃果「変なお父さん。まあいいや。これ!チョコレート!今年は友チョコ作ったからお父さんの分も手作りだよ~!ちゃんと心を込めて作ったんだから味わって食べてよ?」

穂乃果ママ「良かったわね~。って…ええ?また泣いてる?」

穂乃果「どんだけ嬉しいのさ…。お父さんチョコレートとか貰えた事ないの?」

穂乃果ママ「あんた…そう言う事じゃないでしょ」

結婚なんてまだまだ先の事か…そうか…まだまだ先だと良いなぁ。

乙!ウルヴァリン泣きのほのパパ可愛い

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