【モバマスSS】猫な雪美 (20)
雪美に独自設定があるので苦手な方は注意
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――正午 某テレビ局・食堂
P「みく、雪美、お待たせ。セットの定食、適当に持ってきたぞ」トン
メニュー
白米・味噌汁・サンマの塩焼き・野菜サラダ・プチケーキ(チョコ)
みく「魚は苦手って言ってるでしょー!」
P「好き嫌い直さないとトップアイドルになれないぞ」
みく「そんな話聞いたことないにゃ!」
雪美「魚……いらないの……? なら、私のケーキと、交換……しよう……?」
みく「え、そんな……さすがにそれは悪いにゃ……」
雪美「チョコ、苦手だから……」
みく「……本当に、いいのかにゃ……?」
P「雪美は魚が好きだもんな。……雪美のほうが猫ちゃんアイドルとして売り出したほうがいいかな?」
みく「フニャー!! そんなことさせないにゃ!」
雪美「……ふふっ。猫ちゃんアイドル…………ならない……ならないよ?」
みく「なんでちょっと考えたにゃ!?」
みく「大体、みくは猫ちゃんアイドルをやるために、この事務所に来たの。そこは譲らないにゃ!」
P「そういえばそうだったな」
みく「人のアイデンティティを『そういえばそうだった』とは何事にゃ!」
雪美「……ふふっ」
みく「……そういえば、雪美チャンはどうしてアイドルになったにゃ?」
雪美「それは……プロデューサーと、約束……したから……」
みく「約束って?」
雪美「秘密」
みく「……秘密にされると、気になるにゃ」
P「まあ、俺と雪美だけの秘密だからな。絶対教えないぞ」
みく「……秘密の約束を叶えるために、アイドル……なんだかロマンチックにゃ」
P「ロマンチック……ああ、そうかもな」
みく「……Pチャンがそう言うなんて、なんだかアヤシイにゃ……」
――翌日・昼ごろ 事務所
みく「……ということがあったんだにゃ」
こずえ「ゆきみはねー……ねこだからねー」
アヤ「まあ確かに、雪美のほうが猫っぽいかもな」
みく「重要なところはそっちじゃないにゃ! 秘密の約束、気にならないにゃ!?」
こずえ「おんなはみんな、ひみつをもってるんだよー」
アヤ「どこから覚えてきたんだ、こずえ……まあ気になるっちゃ気になるけど、秘密にしていることをわざわざ探らなくても……」
ちひろ「確かに気になりますよね……」
みく「ちひろさんもかにゃ? ……ちひろさんがノってくるの、珍しいにゃ」
ちひろ「ふふ。雪美ちゃんには、前から少し気になっていることがあって……」
アヤ「ちひろさんも何かあったのか?」
ちひろ「雪美ちゃん、プロデューサーさんにだけ異様に懐いてるんですよね」
みく・アヤ「「あー」」
アヤ「よく静かに近づいてきては、プロデューサーの膝に乗ってきてるよな」
みく「昨日も内緒話を何回もしていたにゃ」
こずえ「ゆきみがきたときねー……おてて、つないでたよー」
ちひろ「言われてみれば、最初から距離が近かったような……もしかしたら、その約束が何か関係しているのかもしれませんね……秘密の約束、ねぇ……」
こずえ「とっぷあいどるになるー」
みく「それだけじゃないはずにゃ……トップアイドルになったら、なんでも言うことを聞いてくれるとか……」
アヤ「言うことを聞く……結婚するとか?」
ちひろ「そんな、まゆちゃんみたいな……」
まゆ「呼びましたか?」
ちひろ・みく・アヤ「「「ひゃあ!?」」」
まゆ「うふ……まゆは、婚約なんて……まだ、してないですよ」
みく「まだ、って……あれは婚約の一種じゃないの……?」
まゆ「……うふふ。プロデューサーさん、鈍いから……」
アヤ「あっ……なるほど……」
ガチャ
雪美「おはよう…………あれ、プロデューサー……いない……」
みく「あ、雪美チャン! いいところに来たにゃ!」
雪美「…………?」
こずえ「あのねー、みんなで、ゆきみのおはなし、してたのー」
雪美「私の……?」
まゆ「ひょっとして、雪美ちゃんもプロデューサーさんを狙っているんですか!?」
アヤ「話が飛躍しすぎだ!」
雪美「……どうして……そんな話に……?」
ちひろ「実は、こういう話をしていて……」
………………
雪美「……ふふっ……秘密の約束……知りたいの……?」
みく「知りたいにゃ!」
雪美「……だめ……教えない……」
みく「じゃあヒントだけ! ヒントだけでもいいから!」
雪美「ヒント……? ……えーと………………ノーヒント」
みく「ケチぃ!」
ちひろ「ヒント、思いつかなかったのね……」
ガチャ
春菜「みなさん、おはようございます!」
ちひろ「おはようございます……あれ、なんか不思議な匂いがしますね」
雪美「……!!」
みく「どこかで嗅いだような……」
春菜「ええ、これです! マタタビです!」
アヤ「マタタビって、あの猫の好きなアレか。みくは反応しないのか?」
みく「ごろにゃ~ん……って、反応しないにゃ」
ちひろ「……あれ、雪美ちゃん、どうしたんですか? 顔が赤いような……」
雪美「……ぅぅ……」プルプル
みく「雪美チャン?」
雪美「……ごろにゃ~ん……」
みく・アヤ・まゆ・春菜「「「!!???」」」
みく「猫キャラはみくの専売特許にゃ! って、そんな恥ずかしがってやらんでも!」
雪美「……うう……春菜……それ、しまうにゃあ……」
春菜「え!?」
アヤ「……って、雪美……なんか、尻尾みたいなの、生えてるぞ……?」
まゆ「なんだかリアルな尻尾……って、さっきは無かったような……?」
ちひろ「ひょっとして……本物……!?」
ポン
猫「んにゃあー!!!」バッ
春菜「わわっ!」
こずえ「ゆきみ、ねこにへんしんして……またたびにとびついたー」
アヤ「のんびり解説している場合か!?」
ガチャ
P「おはよう、みんな揃ってるかー……って……」
猫「んにゃー? …………にゃー……」
P「…………え、えっと……猫でも拾ってきたか?」
ちひろ「……あの……信じられないと思いますけど……雪美ちゃんが……」
みく「雪美チャンが、猫になったにゃあー!!」
P「……え……本当か……春菜……?」
春菜「……」ゴシゴシ
P「一心不乱にメガネを拭いてる……はぁ……」
まゆ「あの、プロデューサーさん……これって……」
P「…………ああ、秘密にしていたんだがな……雪美は、猫娘なんだ」
ポン
雪美「………………見られちゃった……」
みく「ちょっとどういうことにゃ!?」
まゆ「説明してくれませんか?」
P「……ああ。あれは、去年の年明けくらいだったかな」
~~~~~~~~~~~~~~~~
――某日夜 京都・某神社
P「帰省ついでに前から気になってた神社に来てみたけど、イメージしていたより凄いな……というか、まさかこんなキツい山だったとは……。暗いし、足場も悪いし……」
グキッ
P「痛ってぇ!! ……足が……軽く捻ったか……これくらいなら……いや、降りるのも30分くらいかかるよな……」
P「電話は……うわあ……充電切れてる……」
ガサゴソ
P「……! 誰かいますか!?」
猫雪美「にゃー……」
P「……猫か」
猫雪美(この人……さっき、他の人に、水あげてた人……)
P(少し足を休めてる間、猫を可愛がるか。実家を思い出すなあ……)
P「どうしたんだー? 俺、エサも何も持ってないぞー」ナデナデ
猫雪美(なで心地、良い……猫の扱い、分かってる人間だ…………この人なら……)
猫雪美(この人なら、結婚、したい……)
猫雪美「……にゃー……」
ポン
P「あれ……猫が、女の子になった……?」
雪美「……ふふっ……ごめんね……驚かせた……?」
P「猫娘……化け猫……? 妖怪……?」
雪美「うん……私、人間でいう……妖怪……」
P「……本当にいたんだな……それにしても、見た目は普通の可愛らしい女の子だな……」
雪美「…………褒めても、ご利益……無いよ……?」
P「え、神様なんですか?」
雪美「違う……けど、間違われたこと、ある……」
P「そうか……あの、会ってすぐで、申し訳ないんだけど……その、誰か助けを呼んでくれないかな」
雪美「…………あれ……怖がらないの……?」
P「いや、職業柄、変わった人を見ることが多くてね……ガチ霊感持ちとか、猫ちゃんアイドルとか……」
雪美「……アイドル……?」
P「ああ。アイドルのプロデューサーをやっていてね。って言っても、猫娘……って呼べばいいのかな……君には興味ないかもしれないけどね」
雪美「私、雪美……。雪美って……名前で、呼んでほしい。それで、アイドル……って……?」
P「ああ、アイドルっていうのは……なんていえばいいのかな……大勢の人を注目させて、歌ったり踊ったりして、皆を楽しませる職業だ」
雪美「……大勢の人を注目…………」
P「ああ。俺はそのアイドルの面倒を見るのが仕事だ。そして、皆に見てもらえる、トップアイドルを育て上げるのが夢なんだ」
雪美「……トップアイドル…………」
雪美「……あの……私、アイドル……やってみたい……」
P「…………え?」
雪美「私……猫娘は、たくさんの人に、認められたら……人間に、なれるの……」
P「…………そうなのか……」
P(なんか凄い事聞いてるような……)
P「アイドルをやって、大勢の人に立派な人間と認められて、猫娘から人間になりたい……で、合ってるか?」
雪美「……うん……」
P「……そんな不思議な話もあるんだな……でも、トップアイドルへの道は厳しいぞ、大丈夫か?」
雪美「……大丈夫…………相応しい人間になって……結婚、したい……」
P「……そうか。人間と結婚したいんだな。……頑張ろうな」
雪美(あれ……伝わってない……?)
雪美「……まあいいや…………約束……ね……」
P「ああ。絶対に雪美を、大勢の人に認知してもらえるトップアイドルにして、人間にしてあげるからな」
雪美「…………じゃあ、下まで、運んであげる……」スッ
P「……え?」
雪美「……私、人間より、力……あるよ……」
P「……まさか俺を持てるなんてな……頼んだ」
~~~~~~~~~~~~~~~~~
雪美「……それで、私……アイドルに……なった……」
みく「まさかの動機がまゆチャンと同じにゃ!?」
まゆ「まさか、こんな所に小さなライバルがいたなんて……!」
雪美「……でも、みんなに……バレちゃった……どうしよう…………人間に、なれない……」
P「おい泣くな雪美。まだ人間になれないって決まったわけじゃ……」
みく「……猫チャンになる手品、凄いにゃ! みくにも教えてほしいにゃ!」
雪美「……え?」
アヤ「いやー、最近疲れっぽくてな……全然手品のタネ、分からなかったぜ」
春菜「私、眼鏡が曇っていたみたいで……何があったんですか?」
まゆ「さぁ、プロデューサーさんのことを考えてたら、見逃しちゃいました」
こずえ「……ふわぁー……おもしろい、おはなしだったー」
P「そんな話があれば面白いよなー。はっはっは」
雪美「……プロデューサー……みんな……ありがとう……!」
P「はいはい。もう時間も時間だから、お仕事の打ち合わせ、行こうな」
みく「猫ちゃんトーク、楽しみだにゃ!」
――打ち合わせ後
みく「直前に凄い話を聞いたせいで、打ち合わせが全然耳に入ってこなかったにゃ……」
P「ははは。まあちゃんとメモったし、後で読み返そうな」
みく「ありがと、Pチャン。……でも、トップアイドルになったら人間になれるって、変な話だよねー」
P「ああ、それはな、意外と当然の話なんだと思うぞ。あの時は不思議な話だと思ってたんだがな」
みく「どういうこと?」
P「みんなが人間だと思っていたら人間、ってだけさ」
みく「……そういうもんなの?」
P「ああ。もしみくが、雪美に出会ったばかりであの姿を見たら、当然、人間だと思わないだろ? でも、今は……」
みく「……今でも、あれは何かの間違いで、雪美は人間だと思っているにゃ」
P「そう。だから、そういうもんなんだよ。ああいう人間がいてもいい。みんながそう思っているから、市民権を得ているんだよ」
みく「うーん……やっぱり何か騙されているような……」
P「例えば、みくは自他共に認めるアイドルだよな?」
みく「何言ってるの? 当然だにゃ」
P「そう。誰に聞いてもアイドルと返ってくる。みんながアイドルだと思っているからな。もしこれが、まだ駆け出しの頃だと……」
みく「皆にアイドルと思われていなかったにゃ……」
P「それと一緒でな。自分が何を言っても、結局自分を決めるのは、大勢の他人なんだよ」
みく「……え、それって、自分を決めるのは自分、っていう言葉は、嘘ってこと?」
P「いいや。結局自分の振る舞いで他人にどう思われるか決まるからな。自分を決めるのは他人っていうのは、単なる結果論だ」
みく「……なるほど……」
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みく「……でも、アイドルだなんて、やっぱり回りくどいような。隠すだけでいいんじゃないの?」
P「そうなんだけどな。そこまでして人間にならなくても、って思ったけど……どうしても、"相応しい人間"になりたいらしいからな」
みく「あ、それって……」
P「ああ。結婚してみたいんだと。猫娘でも結婚に興味あるんだな」
みく(……あれ……何かズレているような……?)
P「派手な結婚式とか、一緒に長い間過ごすこととか、そういうのに憧れでもあるんだろうな」
みく「……そうじゃないと思うにゃ……」
P「? そうじゃないのか?」
雪美「…………みく…………」クイクイ
みく「……あ、雪美チャン。……えーっと、言わなくていいのかにゃ?」
雪美「耳……かして……」
みく「?」
雪美「私が……トップアイドルに、なってから……告白、するの……」コソコソ
みく「……やっぱりロマンチックだったにゃ」
雪美「それに……ちょっとニブい、プロデューサーも……好き……だから……」コソコソ
みく「あーはいはい! そんな耳元で惚気るなにゃ!」
おわり
おまけ
アヤ「しかし、猫娘って本当にいたんだな……って、あれは手品、あれは手品……」
春菜「妖怪みたいな不思議な存在、実在してたなんて……まあ私は何も見ていませんが」
こずえ「ふしぎなそんざいはねー、いがいとみじかにいるんだよー」
春菜「……そういえば、こずえちゃんだけノーリアクションだったような……」
アヤ「もしかして、最初から知ってた……?」
春菜「ひょっとして、こずえちゃんも……?」
こずえ「?」
おわり
ギリギリ猫の日に書きあがった、猫の日ネタでした。
夏コミに出る佐城雪美猫化合同では、もっと猫化雪美の密度が高いと思いますので、そちらもよろしくお願いします。
私も寄稿するかもしれない。今日でネタ一つ消化したけど。
おつおつ。可愛い(かわいい)
乙
では雪美に、青魚と玉葱をあげてきます
おつおつ
いつも書いてるのとは違う雰囲気のssだったな
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