池袋晶葉「天才と博識」 (13)
アイドルになり始めたときの私と今の私を比べてみると、それはそれは枕に顔をうずめたくなるものであった。
というのも自分への自信のなさからロボに頼り切ってしまっていたと感じる。
昔は自分よりロボを優先していて、ロボをステージのメインと捉えている節もあった。
アイドルは自分の才能を誇示するための手段の一つだとさえ考えていた。
でも今は違うだろう。
ターニングポイントを挙げるとするのならPに出会えたことと、もう一人彼女に出会えたことかな。
「なんか感謝の気持ちを込めたロボでも作るかな」
優しく微笑みながら私を支えてくれた、誰よりも頼れる彼女。
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「ということで頼子、最近悩んでいることとかないか?」
「えぇ……、そういうのってサプライズでやるものじゃないの……?」
「はははっ、そんなことは非効率的だろ?」
「……そうだね」
どうしてこういう発想にいたったかを頼子に説明した。
あの日私は孤独な天才だった。そんな私を見かねてPが組ませてくれた相手は博識だった。
正直強がってた部分もある。孤独であることを勲章のようにさえ思っていた。
頼子の知識は豊富で自分の無知を恥じたものだ。
こんなに素晴らしい人が他にいるのに、狭い世界に閉じこもってはいけないのだと知った。
頼子との出会いが私をどう変えたか、頼子が私にとっていかに大切な存在かを話した。
いや、私も恥ずかしかったぞ。でもそれ以上に顔が赤くなって恥ずかしがっているけど、それでも喜びが隠せない頼子が可愛くてな。
ついついトークに熱が入りすぎてしまった。後悔はしていない。
「ムーンライトバニー楽しかったな!」
「楽しかったね……」
「結局ウサミン星の秘密はわからなかったな。博識な頼子ならなにか知っているか?」
「うっ……、し、知らない……」
「そうか……、残念だ……」
「こ、今度菜々さんに教えてもらおう……」
「そうだな!」
頼子は何かを知っているようだが教えてくれないというのはそれなりに意味があるのだろう。
それを察せないほど淡い信頼関係ではないさ。
いつか頼子と二人でウサミン星の秘密を全部全部暴いてやる。
「そ、それで……、ロボをプレゼントしてくれるの……」
「私の得意分野だからな」
「うーん……、特に悩んでいることとかはないかな……」
「何にもないのか?セクハラプロデューサーに困らされてるとか」
「Pさんにはなにもされてないよ……」
ふむ、なにかないものか。
家事を賄ってくれるロボにするか、それとも他になにか便利なロボにするべきか。
「あっ……、欲しいものあったよ……」
「なんだ?」
「欲しいものというか……、また一緒にクレープ食べたいな……」
クレープ、頼子と私の間ではそれなりに思い出のある食べ物だと言えよう。
食事は美味しさよりも手軽さを優先していた。作業中でも取れるよう片手で食べられるものが好きだった。
もちろん、そんな状況だったから一人で食べていた。
甘いものは嫌いではなかった、糖分は疲れた頭に効くからな。
そんなとき頼子とPと三人でクレープを食べた。
美味しかった。甘いだけじゃなくて、楽しくて優しい味がしたなんて言うのはおかしいかい?でも確かに感じたんだ。
頬にクリームをつけていて頼子に笑われたのも今ではいい思い出だろう。今はもうやっていないぞ?
あの時食べたクレープが美味しくて、忘れられなくてクレープロボを作った。
だけどそれは私が食べたかったクレープではなかった。
美味しいといえば美味しい。当たり前だ、だって私が作ったロボが作ったんだぞ!
頼子に言われた、みんなで食べるクレープは美味しいと。
まさに目から鱗だった。そんな発想があったのか。私一人だけでは一生たどり着かない結論だっただろう。
頼子はそれを知っていた、博識だからとかではないだろう。
その後一緒にクレープを食べるプロデューサーロボを作ろうとしたが頼子に止められてしまったが……。
実は後日談で手のひらサイズのプロデューサーロボと頼子ロボを作ってある、内緒だが。
「いいな!ちょっと待っててくれ。事務所の物置からクレープロボを持ってくる」
「そろそろ整頓しないとダメだよ……」
「うっ、わかった……」
「今度手伝ってあげるから……」
事務所の物置に私のロボをたくさんおいてある。
どうにかPは説き伏せたのだが、我が事務所最強権力の持ち主にして一介のアシスタント、千川ちひろさんに目をつけられている。
いらないものは持ち帰るか捨てるかしなさいと言われてしまってな。どうにかして問題を先延ばしにしている。
「さて、クレープロボを動かすぞ」
「おおー……!」
「お、懐かしいもの引っ張り出してきたな」
「片付けてってお願いしていたはずなんですけど」
「ちょうどいいところにきた、Pにちひろさんもクレープ食べるか?」
「気が利くな」
「いいんですか?」
「ああ、もちろんだ」
少しして四人分のクレープが完成した。流石私の作ったロボだ、高性能だぞ!
「さあさ、食べてくれ」
「いただきます……」
「うん、美味いな」
「はははっ、当たり前だろ。そのクレープには私の愛と感謝の気持ちと賄賂の気持ちが入っているからな。ちひろさん、どうかこれで物置の件は手を打ってくださいお願いします!」
「この大きくないクレープの中にどれだけのものを詰め込んでいるんだ……」
「これは美味しいけどそれとこれとは別問題じゃないですか……?」
「そ、そんなことないぞ!物置にロボがあったおかげで美味しいクレープが食べられたんだ!」
「晶葉ちゃん……、必死だね……」
「うーん、わかりました。考えておきます」
「やった!」
「でも、綺麗にする努力はしてくださいね」
「了解です!」
「もう、Pさんと一緒で返事だけはいいんですから……」
「クレープは美味しいな、頼子」
「美味しいね……」
「だってみんなで食べると美味しいからな。そうだろ、頼子?」
「そうだね……晶葉ちゃん……。みんなで食べると美味しいね……」
あの頃の私よ、見てくれ。私はこんなにたくさんの笑顔に囲まれながら楽しく過ごしているぞ。
孤独な天才はいなくなり、ここにいるのはただの天才と博識だよ。
アイドルの池袋晶葉だよ。
以上で短いけれど終わりです。
四月分のあきよりです。
今回は平成も終わるということで自分があきよりを好きになったきっかけ、原点回帰のようなものを書いてみました。
総選挙も池袋晶葉と古澤頼子をお願いします!
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乙
あきよりシリーズと通い妻袋晶葉が同じ世界観かどうか知らないけど、仮に同じだったとしたら事務所の物置とPの自宅の両方がロボまみれなのか
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