にこ「真姫が一人で温泉に入ってる」 (26)
にこ「ふう、いい湯ね~。貸切なんてサイコーだわ。せっかくの温泉なのに昨日は穂乃果と凛と一緒に入ったから落ち着いて入らなかったし。お陰で海未には怒られるし。年上なのに…」
ぽちゃん
にこ「ん?あっちの方に誰かいるのかしら…って」
バシャ
真姫「誰?」
にこ「真姫じゃない。わ、私ったら何で隠れたのかしら」
真姫「ねえ?誰かいるの?凛?花陽?」
にこ「真姫ったら。私だって気づいてないのね」
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真姫「ねえってば」
にこ(そうだ。いい事思いついた。少しイタズラしてやれ)
真姫「凛なんでしょ?」
にこ「違うけど」←少し低音ボイス
真姫「え?」
にこ「人違いだと思うよ」
真姫「あっ、ご、ごめんなさい。今日は私達以外お客さん居ないって聞いてたから。気を悪くしないで下さい。私、出ますから」バチャ
にこ(何よ。随分と人当たりがいいじゃない。まあ、知らない人相手だし当然と言えば当然か)
にこ「別に。出なくても。気にしてないから」
真姫「そ、そうですか」
にこ「うん。もうちょっと入ってなよ」
真姫「それじゃあ…お言葉に甘えて…」ちゃぽん
にこ「…」
真姫「…」
にこ「今日は…旅行か何かですか?」←さらに低音ボイス
真姫「え?」
にこ「いえ」
真姫「ちょっと待って。あなた…もしかして…男!!?」
にこ「へ?」
真姫「いやぁぁぁぁぁぁ」
にこ「ちょ、ちょっと」
真姫「こっちに来ないで。変態!最悪!」
にこ「ち、違う。違うんだって」←何故かまだ低音ボイス
真姫「何が違うのよ。早く出てってよ」
にこ「真姫、落ち着いて」
真姫「落ち着いて居られる訳ないでしょ…って何で私の名前を知ってるの?」
にこ「え?あっ!?」
真姫「もしかして…私達のファン?」
にこ「え?あっ、う、うん。そうそう」
真姫「まさか…私達の事、追いかけて来たんじゃ…」
にこ「ぐ、偶然。偶然だよ」
真姫「どうだか」
にこ「いや、本当だってば」
真姫「ちょっと。こっちに来ないでよ。少しでも私の方に来たら大声だすから」
にこ「わ、分かってるわ…分かってるよ」
真姫「…」
にこ(ふう。大騒ぎにならなくて良かったわ。こんなんで騒動起こしたらまた海未に怒られちゃうしタイミングを見てバレない様に出なきゃ。にしても、真姫ったら意外と喋るわね。もっと人見知りかと思ってた)
真姫「ねえ?」
にこ「え?な、何?」
真姫「いつから私達のファンなの?」
にこ「えっと…ファーストライブの時から…」
真姫「ファーストライブは学校の講堂でやった筈だけど。うちの学校、女子校」
にこ「え?あっ、ネットで見たんだよ」
真姫「ふ~ん。絵里がアップしたやつかしら」
にこ「た、多分」
真姫「その頃ってまだ私はメンバーじゃなかったんだけど」
にこ「あ~そうだね」
真姫「それで?」
にこ「え?」
真姫「感想。私達ってファンも周りの人達も女の子ばっかりだから男の人の意見って余り聞いた事ないのよ」
にこ「あ~そうなの」
真姫「あなたの意見は貴重って訳」
にこ「ああ良かったと思うよ」
真姫「それだけ?」
にこ「え?ダメ?」
真姫「もっと何かあるでしょ?男の人って皆んなそんな感じなの?良かったって言えばいいと思ってる」
にこ「そんな事はない…よ。うん」
真姫「じゃあ、どうぞ」
にこ「ファーストライブを見て…わた…俺は……どうせ遊びだろうって思った。女子高生が思い出作りにちょっとアイドルをやってみようって。けど…」
真姫「けど?」
にこ「本心は羨ましかったのかな。仲間が居て、楽しそうで、好きな事に一生懸命になれて」
真姫「ふ~ん。なんか意外な答えね。凄い近くで見てたみたい」
にこ「え?あっ、ああ…うん。ファンとしてね。そうやって次第に本気なんだって事も分かって。気が付いたら夢中になってたよ」
真姫「そうなんだ。……ねえ?あなたっていくつなの?」
にこ「18…だけど…」
真姫「ふ~ん。男の人にしては高めの声だし、もしかしたら同世代かなって思ってたけど。先輩だったのね。いつの間にか敬語じゃなくなってたけど」
にこ「気にしなくていいよ。別に」
いいねこういうの
真姫「そっ。助かるわ。μ'sって先輩禁止だから敬語とかあまり慣れてなくて」
にこ「そうなんだ」
にこ(先輩禁止になる前からにこに対してタメ口だったけど)
真姫「所で…あなたはμ'sの中で誰のファンなの?」
にこ「あっ、ファン?」
真姫「うん。推しって言うの?居るでしょう?」
にこ「あ~そりゃあ勿論。矢澤にこに決まってるよ」
真姫「え~にこちゃんのファンなの?」
にこ「お、おう。そうだけど?」
真姫「へ~にこちゃんねぇ」
にこ「な、何だよ?」
真姫「あなたって趣味悪いのね」
にこ「は、ハァァァァ!!!?」バシャ
真姫「ちょっと!!こっち来ないでよ!!大声出すって言ったでしょ」
にこ「あっ、ごめん」
にこ(くっふぅ~。何でにこが謝らなきゃいけないのよ)
真姫「趣味が悪いって言ったのは謝るわよ。けど、にこちゃんって口は悪いし、嘘はつくし変な事ばっかりするし、見栄っ張りで素直じゃないし。オマケに勉強も出来ないし」
にこ(な、何を言い出すのよ。キレてやろうかしら)
真姫「本当、そんな感じなのよ?にこちゃんって」
にこ(決めた。もうキレちゃいました。プッツンします)
真姫「けど、何でかしらね。そんな人なのに…にこちゃんの事をカッコいいって思ってる私が居るの。だから、趣味が悪いのはお互い様かも」
にこ「真姫…」
真姫「なんて。私ったら何を言ってるかしら。会ったばっかりの人なのに。不思議ね。何故か、お喋りになってしまうわ。あるのね、こういう事って」
にこ(な、何なのよ。本当に真姫?やけに可愛いじゃない)
真姫「けど、覚悟しててね」
にこ「へ?」
真姫「次のライブまでにはにこちゃんじゃなくて私のファンだって言わせてあげるわ」
にこ「お、おう」
真姫「ふふっ。今のセリフ、男の子からしたらポイント高いんじゃない?」
にこ「そ、そうだね」
真姫「うふふ」
にこ(ど、どうしよう。なんか恥ずかしくなって来たわ。そろそろ)
真姫「ねえ…」
にこ「あ、あのさぁ」
真姫「何?」
にこ「いや、そちらから」
真姫「さっき言ったじゃない。μ'sのファーストライブを見て内心羨ましかったって」
にこ「うん」
真姫「どうしてそう思ったの?」
にこ「あ~…それは…」
真姫「それは?」
にこ「挫折してるんだよ、一度。当時はどうしていいか、これからどう頑張っていいのかも段々と分からなくなって来てさ。燻って上手くいかなくて、夢を諦めかけてた時に出会ったのがμ'sで…」
にこ(だから、そんな私がμ'sと出逢えたのは奇跡的な事だった。高校3年生のあの時期に出逢えたのが)
真姫「その夢って…今は…」
にこ「まだ追いかけてる途中だけど。お陰様で」
真姫「そうなんだ。良かった」
にこ「真姫…ちゃんはさ。どうしてμ'sに入ったの?」
真姫「私?」
にこ「うん」
にこ(そう言えば一度も聞いた事がなかったわ。真姫がμ'sに入った理由って)
真姫「変われるかなって思ったの。私って昔から中々素直になれなくて。そんな可愛くない性格をしてるからろくに友達も出来た事なかったの。班決めする時なんていつも余ったりして」
にこ「…」
真姫「高校に入ってたまたまμ'sと関わる事があってね。だから、少しだけ勇気を出してみたの。お陰で、今じゃ毎日クタクタになるくらい…楽しいわ」
にこ「そっか。良かったね」
真姫「そう。毎日楽しいの。こんな毎日が続けば良いのにって思ってる。そんな筈はないのにね。変わりたかったのに…今は変わってしまうのが少し怖い。いつか、バラバラになってしまうのが怖いの」
にこ「あ~…そうか。分かるよ。その気持ち。毎日楽しくてこんな日がずっと続けばって俺も思う」
真姫「うん」
にこ「そうはいかないんだろうね。青春なんて人生のほんの一瞬だって言うしさ。だからこそ、その一瞬一瞬が尊いと感じるんだろうね」
真姫「…」
にこ「けど、安心しなよ。この先、真姫の生は希望で満ち溢れてる。俺が保証するよ」
真姫「どうしてそんな事が言えるの?」
にこ「真姫にはかけがえのない仲間が居るんだからさ。それはこれからも変わらないでしょ?」
真姫「そうね」
にけ(ぐ、ぐわぁぁぁ。私ってば何て恥ずかしい事を言ってるのよぉぉぉ。くぅぅぅ、むず痒いぃぃぃ。穴があったら入りたい)
真姫「ねえ。いつの間にか私の事を呼び捨てで呼んでたでしょ?
にこ「そ、そうだっけ?」
真姫「そうよ。どさくさに紛れて」
にこ「ご、ごめん。つい」
にこ(つい、いつも通り)
真姫「ズルいわ」
にこ「え?」
真姫「あなたは私の名前を知っているのに。私はあなたの名前を知らないなんて。不公平よ」
にこ「あ、ああ…そっか。そうだっけ」
真姫「そうよ。あなたの名前教えて」
にこ「いや、いんじゃないかな」
真姫「なんで。私はあなたの名前を知りたいの」
にこ「いや…でも…」
真姫「知りたいの。あなたのことをもっと知りたいって思ったの。自分がどうかしてるのは分かってるわ。こんな事があるなんて。さっき会ったばかりの人が気になるなんて。こんな気持ち初めてなの」
にこ(は、はぁぁぁぁぁ。な、な、何を言っちゃってるのよ。それってつまりアレでしょ?行きずりの男にコロッと。これだから恋愛経験のない子は…私もないけども)
にこ「や、やめといた方が…」
真姫「どうして!?」
にこ「どうしてって…ほら?お互いの事しらないし」
真姫「だからもっと知りたいし私の事も知ってもらいたい。ここの旅館に泊まってるんでしょ?後で会いに尋ねるわ。連絡先も交換したいし。なんか…あなたと話してると落ち着くの。だから…」
にこ「……」
真姫「ねえ。顔を見せて」バシャ
にこ「ちょ、ちょっと…こっち来たら見えちゃうから」
真姫「そんなの構わないわ」
にこ(は、はぁぁぁぁぁ!!?何を言ってるのよ真姫は。もう付き合ってられないわ)
にこ「お、俺…出るから」バシャ
真姫「待ってってば」バシャ バシャ ガシッ
にこ「あっ…」
真姫「捕まえた。思ったよりずっと華奢なのね…って」
にこ「あっ…」
真姫「……」←固まる真姫
にこ「いや~…お湯を被ると男になっちゃう体質で………」
穂乃果「ふあ~良く寝たぁ」
海未「珍しいですね。穂乃果がこんなに早く起きるなんて」
穂乃果「朝風呂楽しみにしてたからね!」
ことり「穂乃果ちゃんは遠足の時も早起きだもんね」
穂乃果「そっ!楽しみがあると早起き出来るの!」
海未「普段から早起きして下さい」
穂乃果「いや~…ん?」
にこ「……」←部屋の前で正座をするにこ。
穂乃果「にこちゃんおはよう…どうしたの?」
にこ「いや…締め出されちゃって…
穂乃果「あ~鍵忘れたんだ。ドジだなぁ。中から開けて貰えばいいのに。真姫ちゃんだったっけ?」
にこ「起こしちゃ悪いじゃない…」
穂乃果「いや…まあ、そうだけど。って言うかにこちゃん顔パンパンじゃない?どうしたの?むくんでるの?」
にこ「あ~……疲れてるのかな」
穂乃果「ふ~ん。ついてないね」
にこ「本当にね」
完
乙
面白かったです(こなみ)
定番のシチュだけどにやにやしたわ
乙
す こ
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