北条加蓮「藍子と」高森藍子「膝の上で ななかいめ」 (41)

――おしゃれなカフェ――


北条加蓮(藍子の膝の上に頭を乗せたい。膝枕をしてほしい)


加蓮(……直接言えばいいじゃないかって? うん、そうだよね。そうなんだけどね)

加蓮(いや、藍子と喧嘩したってことでもないよ。頼めばしてくれると思うし)

加蓮(素直に頼むのは……ちょっと恥ずかしいけど、さすがにもう慣れたし)

加蓮(ただねー……)

加蓮(……)チラ


「~~~、~、こっち見たっ。見見見みみ、どど、どうしよ!?」
「いや何もしなくていいと思うよ!?」


加蓮(……例の、藍子のファンの女子2人組が、向こうの席にいてこっちを見てる)

加蓮(ここに来た時、あの2人がいることに気付いて藍子の機嫌がよくなった。藍子が楽しくなれるなら、それはすごくいいことだよね)

加蓮(でも、ね……)

加蓮「……なんとかあの2人を追い出す方法ってないかなぁ」ボソ

高森藍子「~~~♪」ズズ

藍子「……?」

藍子「……!?」

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レンアイカフェテラスシリーズ第90話です。

<過去作一覧>
・北条加蓮「藍子と」高森藍子「カフェテラスで」
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「カフェテラスで」
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「膝の上で」
・北条加蓮「藍子と」高森藍子「最初にカフェで会った時のこと」

~中略~

・北条加蓮「藍子と」高森藍子「向かい目線のカフェで」
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「鼻歌交じりのカフェで」
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「秋のカフェテラスで」
・北条加蓮「藍子と」高森藍子「お客さんの増えたカフェで」

藍子「か、加蓮ちゃん……?」

加蓮「あ。……聞こえちゃってた?」

藍子「あの、……はい。聞こえていましたよ、でも……」

藍子「……」チラ

加蓮「あー……」ホオヲカク

藍子「…………」

藍子「……」チラ


「あああ藍子さんまでこっち見たーーーー! どうしようわたわた私、せき、石像になる方法教えて!」
「はわー……はっ。って、いやなんで!?」


加蓮「……えーと、藍子? もしかして、どうにかしようかって考えてる感じ……とか?」

藍子「どうにか、というより……どうすればいいのかな? って感じです」

加蓮「ごめん。今のはその、えーっと……」

藍子「う~ん……。ひとまず、加蓮ちゃん。どうしてそう思ったのか、教えてもらってもいいですか?」

加蓮「そうだよね。うん、そうだよね。説明からだよね」

藍子「はいっ。あっ、でもその前に。加蓮ちゃんの顔、険しいままだから……まずはコーヒーを飲んで、落ち着きましょ?」

藍子「店員さん――は、他のお客さんの対応をされてますね」

加蓮「次に呼ぼうとしてるお客さんもいるみたい。んー、藍子。一口だけもらっていい?」

藍子「はい、どうぞ」スッ

加蓮「ありがと」ズズ

加蓮「ふうっ」

加蓮「……え、説明?」

藍子「はい。説明してくださいっ」

加蓮「説明……説明。説明かー……」アハハ

加蓮(膝枕してってお願いするのはいいけど、それを説明するのは……ちょっと、ねぇ?)

藍子「加蓮ちゃんが、何の理由もないのにそんなひどいことを言う子ではないってこと、知っていますから」

加蓮「……えー、分かんないよ? たまたますごく不機嫌だったってだけの可能性もあるでしょ」

藍子「そうは見えませんよ?」

加蓮「あははっ」

藍子「もしそうだったとしても、不機嫌だったっていう理由があるじゃないですか」

加蓮「あー」

藍子「それなら、不機嫌になった原因の出来事を教えてもらえれば――」

藍子「って、なんだか原因探しみたいになってしまっていますね」

加蓮「なっちゃってるねー」

藍子「理由や原因を探すよりも、今どうしないといけないのか考える方が大事……って、よくモバP(以下「P」)さんも言ってくれます。でも、加蓮ちゃんの理由は気になる……」

加蓮「加蓮ちゃんの理由」

藍子「はい。加蓮ちゃんの理由」

加蓮「でも加蓮ちゃんは別に不機嫌じゃないよ?」

藍子「ふふ、そうでしたね。では、何が理由であんなことを言っちゃったんですか?」

加蓮「……」

藍子「あ、目をそらした」

藍子「目をそらした、ということは……何か、言いづらいことなんですね~?」

加蓮「……なんでアンタ楽しそうにしてんの?」

藍子「ほらほら、教えてくださいっ。言いづらいことでも何でも聞きますよ~?」

加蓮「ぐぬー……。まあまあ藍子。それより何か食べない? ちょうどコーヒーも飲み終わる頃だし、」スッ

加蓮「そういえば今月の限定メニューは、」

藍子「こらっ」ガシッ

加蓮「……」

藍子「……」ニコニコ

加蓮「……。藍子ちゃん? 急に手首を掴んでどうしたのかな?」

加蓮「もしかして手でも繋ぎたくなっちゃった? うーん、残念だけど今はデートって気分じゃないんだよね。また今度にしてくれる?」

藍子「……なんというか、加蓮ちゃん」

加蓮「?」

藍子「よくそんなに、ぽんぽんって言葉が出てくるなぁ、なんてっ」

加蓮「ぽんぽん……」

藍子「私は焦っちゃうと何も言えなくなっちゃうから……。それで、未央ちゃんや茜ちゃんからもよく、そんな私を見てみたい、なんてっ。たまにいたずらもされちゃったり……」

藍子「だから、そんな時でもすぐに言葉が出てくる加蓮ちゃんのこと、すごいなぁ、って。ちょっぴり思っちゃいました」

藍子「あっ。加蓮ちゃん、そういうのって何かコツとかってあるんですか? もしあるなら、教えてください!」

加蓮「ぽんぽん…………」

藍子「……加蓮ちゃん?」

加蓮「……あ、ごめん。えーっとコツ? 藍子はそのまま弄られ役でいいんじゃないの?」

藍子「うぅ、言われるような気はしていました。でもそこをどうにかっ」

加蓮「っていうか何、未央と茜が何をしてるって? ごめん藍子、私ちょっと用事ができたから」

藍子「え」

加蓮「大丈夫大丈夫。ちょおっと2人に話つけてくるだけだから。ね? 藍子はここで待ってて?」

藍子「待ちませんっ、じゃなくて、待ってください!」

藍子「……何をしに行くつもりですか?」

加蓮「何もしないって。ちょっと分からせ――お話してくるだけだから。うんうん。大丈夫大丈夫」ゴゴゴゴゴ

藍子「大丈夫って顔じゃない~~~! おっ、落ち着いて……ねっ? 落ち着きましょう加蓮ちゃんっ」

藍子「え~っと……あっ、そうだ!」

藍子「今、加蓮ちゃんが行っちゃったら、私は1人になってしまいます。それは、寂しいから嫌です」

藍子「だから、今はここでのんびりしていきましょ?」

藍子「どうしてもっていう急用のがあるなら……私も、ついていっちゃいますっ」

加蓮「くくっ。なんだかんだ舌回ってるじゃん」

藍子「加蓮ちゃんほどでは……。それより、ねっ? 加蓮ちゃん。座って、深呼吸と……コーヒー、もうちょっと飲みますか?」スッ

加蓮「よ、っと。コーヒーはいいよ。深呼吸も大丈夫」

藍子「そうですか……?」

加蓮「藍子、マジになりすぎー。そんな頭に血がのぼった訳じゃないから」

藍子「くすっ。そうは見えませんでしたよ?」

加蓮「うーん……。まぁ話はつけなきゃいけないけど、次に会った時くらいでいっかな?」

加蓮「それより今は、ここでゆっくりしていたいし。メニューメニュー♪」

藍子「最近、またちょっと忙しくなってしまっていましたもんね」

加蓮「限定限定はっと……ねー。学校にも全然行けなくなるくらい。お仕事がいっぱいあるのは嬉しいんだけどね」

藍子「加蓮ちゃん。夜はゆっくりお風呂に浸かって、お布団でしっかり眠って、疲れを取っていますか?」

加蓮「またすぐ心配するー。うざーい」

藍子「ごめんなさい♪」

加蓮「限定メニューあった……あれ? ハロウィン系じゃないんだ?」

藍子「あれっ、そうなんですか?」

加蓮「紅葉と銀杏の模様クッキーだって」スッ

藍子「本当ですっ。入り口のところには、大きなかぼちゃの置物があったのに」

加蓮「すみませーん! ――って、また他のお客さんの対応してるみたい」

加蓮「でも逆にありがたいかも。今月ずっとかぼちゃばっかり見てたもん。パンプキンクッキーとかパンプキンケーキとか、もうどんだけ食べたことかっ」

藍子「お疲れ様、加蓮ちゃん」

加蓮「藍子だってそうでしょー」

藍子「ハロウィンのスイーツ、いっぱい頂いちゃいました♪」

加蓮「どの番組やロケでも楽しそうだったよね、藍子」

藍子「ハロウィンのお菓子が並ぶのは、ハロウィンの時だけですからね」

加蓮「あははっ。なんか変な言い方」

藍子「そうですか?」

藍子「確かに、似た物や同じ物ばかり食べていたら、飽きてしまうかもしれませんね……。でも、ハロウィンのお菓子って、作った人によって見た目も味もぜんぜん違いますよね」

藍子「それを見比べるのも、なんだか楽しくて♪」

藍子「可愛いものだけではなくて、ちょっぴり不気味な……お化けや妖怪をかたどった物もあって」

藍子「だけど、それもなんだか面白くて……コミカル、って言うのかなっ?」

藍子「味もそうですよね。やっぱり、かぼちゃを使ったお菓子が多いけれど、同じかぼちゃでも、甘さがぜんぜん違ったり、食感もぜんぜん違ったり……」

藍子「って、違うお菓子なのだから当たり前なんですけどね」

藍子「ときどき、かぼちゃを使っていないお菓子もありますよね」

藍子「それもなんだか、新鮮って感じがして」

藍子「この時期は、毎日でも商店街を歩きたくなっちゃいます♪」

藍子「そうそう。商店街だけではなくて、カフェもそうなんですよ」

藍子「10月になってから、どこもハロウィンメニューが登場するようになって……」

藍子「これも、見比べるのがすごく楽しいんですっ」

藍子「かぼちゃの形をしたものから、色合いがハロウィンっぽいもの」

藍子「お菓子ではなくて、晩ご飯にも食べられるような料理」

藍子「ハロウィンとはぜんぜん関係なさそうなのに、食べてみたら、かぼちゃがちょっぴりだけ入っていて――そんなメニューも見かけました♪」

藍子「それから、他には――」


藍子「……あ、あれっ?」

加蓮「へ~……。なんだか楽しそう~……」ホワー

「ほわぁ……」
「ほわー」

<ほわ~……


藍子「加蓮ちゃん、どうしてそんなにぼ~っとした顔に……? ――あっ、店員さん」

藍子「はい。注文をお願いしますっ。ええと、この紅葉と銀杏の模様クッキーを……」

藍子「……?」

藍子「……あの、店員さん? 店員さ~んっ」

藍子「その……。お、起きてますか~っ?」

加蓮「――ハッ。また藍子に呑まれるところだった! っていうか呑まれてた……!」

加蓮「あ。店員さんがなんかトリップしてる……。この人も藍子のゆるふわに呑まれた犠牲者なんだね……」

藍子「犠牲者!?」

加蓮「おはよー、藍子」

藍子「あっ、おはようございます加蓮ちゃん……おはようございます??」

加蓮「藍子による催眠から今起きたから。おはよー」

藍子「催眠!?」

加蓮「おーい店員さーん。注文ー。藍子ちゃんが注文って言ってるよー。おーい?」

藍子「店員さ~んっ。起きてくださ~い!」

……。

…………。


□ ■ □ ■ □


加蓮「5分で帰ってきてよかったね……。放っといたらあのまま立ち尽くしてたよ、店員さん」

藍子「あはは……」


「ほわー……」
「起きろー! 起きてー! 私1人でとかちょっと嫌だから! おきっ……起きろォ!!」


藍子「店員さん、ずっと私のお話を聞いてくださっていたみたいです……。私、どれくらい喋っていましたか?」

加蓮「うーん。30分くらいじゃない?」

藍子「30分も……!?」

加蓮「藍子にしては短い方だから、大丈夫じゃない?」

藍子「ぜんぜん短くありませんっ。それに、その間ずっと他のお客さんを待たせてしまっていたから……。後で謝らなきゃっ」

加蓮「店員さんがトリップしてる間の注文は、店長さんが奥から来てたから大丈夫だったみたい」

藍子「そうなんですか……? なら、よかった」ホッ

加蓮「その店長さんも、なんか戦いの途中みたいな苦しそうな顔してたけどね……。ちらちら藍子の方を見てたし」

藍子「?」

加蓮「っと、店員さんがクッキー持って来たね」

藍子「ありがとうございますっ。わぁ……!」

加蓮「紅葉と銀杏のクッキー……。ふふっ。言葉通りのメニューだったね。でもこれすごいなぁ……」

藍子「いつもの丸いクッキーに、2つの葉っぱ模様が綺麗に描かれて……まるで、本物の葉っぱみたいっ」カシャ

加蓮「銀杏の葉とクッキーの色って似てるのに、なんかぜんぜん埋もれてる感じがしないね」

藍子「街路樹の下に、銀杏の葉がいっぱい折り重なっているみたいなイメージですね」

加蓮「あー。だから自然に見えるのかな、これ」

藍子「頂きましょう、加蓮ちゃんっ。……食べてしまうのがちょっぴりもったいないですけれど、写真は撮りましたからっ」スッ

加蓮「え、いつの間に。じゃあ食べちゃおっか」

藍子「いただきますっ」

加蓮「いただきまーす」

藍子「もぐもぐ……~~~♪」

加蓮「んぐんぐ……。味はいつものクッキーだね」

藍子「ごくん。美味しいっ♪ かぼちゃの味は……さすがにしませんね」

加蓮「なんかほっとする味ー」

藍子「ふふ。ずっとかぼちゃばかり食べ続けてきたから?」

加蓮「かもねっ。……ごちそうさまっ」

藍子「もう食べちゃったんですか?」

加蓮「店員さーん! お代わりお願いしてもいいー?」

藍子「あはは……。そんなにお腹が空いていた――のでは、ありませんよね」

加蓮「お願いねー!」

藍子「……くすっ」

藍子「なんだか、ほっとする味……♪」

加蓮「……」ジー

藍子「……あげませんっ」

加蓮「ちっ」

……。

…………。

「「ごちそうさまでした。」」

藍子「ん~~~~っ。あっ。ところで加蓮ちゃん。結局、あのお2人を……その、(小声で)どうして追い出したいなんて?」

加蓮「ココア、おいし……♪」ズズ

加蓮「……え、その話まだやるの?」コトン

藍子「はい。加蓮ちゃんから、聞けていませんから」

加蓮「えー……」

藍子「どうしてなんですか? 忘れちゃった、とは言わせませんよ~?」

加蓮「……なんかまた急にイキイキしだしたね。そういう日なの?」

藍子「そういう日なのかもしれませんねっ」

加蓮「そういうの、どうせならPさん相手にやればいいのに」

藍子「今私の前にいるのは、加蓮ちゃんですっ」

加蓮「ちぇ」

藍子「じ~」

加蓮「……」

藍子「じぃ~~」

加蓮「……。照れくさい系」

藍子「じいぃ~~~」

加蓮「いや、聞いて?」

藍子「はい。聞きますよ? だから、話して?」

加蓮「そうじゃなくてっ。照れくさい系の理由なんだってば」

藍子「はい」

加蓮「……話を聞いて?」

藍子「聞きますよ?」

加蓮「そうじゃなくて!」

藍子「じいいぃ~~~~」

加蓮「ハァ……」

加蓮「膝枕」

藍子「膝枕?」

加蓮「してほしいなーって思ったけど知り合いいるからって気付いて照れくさくなって言わないことにした」

藍子「してほしいって思ったけれど、知り合い……あのお2人がいることに、気付いて――」

加蓮「なんで復唱するのっ」

藍子「ごめんなさい。加蓮ちゃんが急にまくしたてるから、1つずつ確認したいなぁって思って」

藍子「お2人がいて、見られているところで膝枕をしてもらうのは、なんだか照れくさくなってっ」

藍子「それで、いろいろ考えてみてから、つい、追い出したいなんて呟いてしまったんですか?」

加蓮「そーいうこと」

藍子「う~ん……。確かに、よくお話する人がいる場所で膝枕をしたりしてもらったりするのは、私も……ちょっと、恥ずかしいかな?」

加蓮「でしょ?」

藍子「でも、加蓮ちゃんは、あのお2人を追い出したい……なんて、つい言ってしまうくらいに膝枕をしてほしかったんですよね?」

加蓮「……え。いや違……違うよね私? 違わなく……違う。うん、それは違う……」ブツブツ

藍子「ですよね?」

加蓮「いやだからそれはちょっと違うっ」

藍子「それなら――」

藍子「はい、どうぞ♪」ポンポン

加蓮「…………」

藍子「……どうぞ?」ポンポン

加蓮「……待って。なんかおかしい」

藍子「?」

加蓮「なんか……何がおかしいんだろ。わかんないけど、何かおかしいよ!」

藍子「よくわかりませんけれど、わからないのなら、おかしいことなんてきっとありませんよ」

加蓮「いやおかしいよ! ……そう! いつの間にか、私がしてもらう側から藍子がする側の話になってるじゃん!」

藍子「? それは、何が違うんですか?」

加蓮「違うでしょ。他のことで例えるなら、」

藍子「あっ、待ってください。そのお話は、加蓮ちゃんの頭を、ここに乗せてから♪」ポンポン

加蓮「それもそっか――」

加蓮「そうじゃないっ」

藍子「??」

加蓮「だからあの2人がいる前でそれは恥ずかしいんだってば!」

藍子「ん~……。きっと、大丈夫ですよ」

加蓮「何が!?」

藍子「私も、恥ずかしいですけれど――」

藍子「カフェの中は、お客さんみんなの場所で、でも、同時に1人1人の憩いの場所でもあるんです」

藍子「もちろん、迷惑なことはやっちゃダメですけれど……」

藍子「膝枕くらいなら、やっていても誰も気にしませんから♪」

加蓮「うぐ……。い、いやでも」チラ


「……ちら、ちら」
「……なんかちょっとストーカーみたいになってるよ?」


加蓮「あっちは気にしてきそうなんだけど……?」

藍子「う~ん……」チラ

藍子「……」

藍子「どうぞっ♪」ポンポン

加蓮「なんで藍子はそんなに平気でいられるの!?」

藍子「だから平気じゃありませんってばっ。ちょっぴり恥ずかしいですよ。でも、加蓮ちゃんがどうしても膝枕をしてほしそうだから……」

加蓮「私そんなこと言ってないし!」

藍子「加蓮ちゃんが言っていなくても、加蓮ちゃんの目が言ってますっ」

加蓮「言ってないって……」

藍子「言ってますっ」

加蓮「言ってない!」

藍子「言ってます!」

加蓮「言ってないってば!」

藍子「いってる!」

加蓮「人の気持を勝手に決めないでよっ」

藍子「だって、本当に加蓮ちゃんの目がそう言ってますもん!」

藍子「もうっ。加蓮ちゃん? 加蓮ちゃんが、意地を張ってしまう女の子なのは知っています」

藍子「でも、時には自分の心に正直になってやりたいことを言ってしまっても、いいと思いますよ?」

加蓮「それとこれとはちょっと違うでしょ……!」

藍子「……」

加蓮「……」

藍子「……」

加蓮「……」

藍子「……分かりました。そこまで言うのなら……加蓮ちゃん、ちょっと考えかたを変えてみませんか?」

加蓮「考え方を変える?」

藍子「加蓮ちゃんは、膝枕に慣れるべきだと思います。ううん……慣れないといけないんです!」

加蓮「っ!」

藍子「あのお2人は、きっとこれからもこのカフェに来てくれると思います」

藍子「お2人がいるから膝枕をしてもらえない、って言うなら……」

藍子「加蓮ちゃんは今後ずっと、私の膝に頭を乗せることができなくなるかもしれません!」

加蓮「!!!」

藍子「膝枕ができない理由……それは、"恥ずかしいから"ですよね?」

藍子「恥ずかしいからできない、という気持ちは、よく分かります。私も、慣れたつもりですけれど……アイドルをやっていて、ときどき、勇気が必要な時が出てきますから――」

藍子「あっ。今は、私のお話ではなく加蓮ちゃんのお話でしたね」

藍子「恥ずかしい、という気持ちは、乗り越えることができるんです。そして加蓮ちゃんは、乗り越えないといけないんです」

藍子「だから……ほら、勇気を持って。来てください!」ポンポン

加蓮「……………………」

藍子「ほらっ!」ムフー

加蓮「…………いや、ツッコミどころがありすぎて何言ってんのって感じなんだけど……」

藍子「…………やっぱり?」

加蓮「パッションに任せておけば全部いけるって思うのやめなさいよ……。デタラメ並べるやり方、私が教える必要もないでしょ……」

藍子「それは、つい……。かっ、加蓮ちゃんが意地なんて張るからっ」

加蓮「そうだけどさー……。膝枕に慣れるって何よ。勇気を持ってって、行く先はアンタの膝の上なんだけど」

藍子「あはは……」

藍子「最初の1回目は、恥ずかしかったり、ためらったりしてしまうかもしれないけれど……慣れてしまえば、大丈夫ですから」

藍子「だから、加蓮ちゃん。勇気を持って……来て?」

加蓮「……なんか違う意味に聞こえてくる……」

藍子「?」

加蓮「そこまで言うなら……っていうより、言わせちゃったならしょうがないっか」

藍子「♪」ポンポン

加蓮「……あの2人、やっぱりこっち見てる?」

藍子「今は……メニューを見ているみたいですね。もう1人の……ええと、どう言えば良いのでしょう。……つっこみ役の子?」

加蓮「ツッコミ役の子」

藍子「加蓮ちゃんみたいな女の子」

加蓮「えー」

藍子「そちらは、カフェを見渡しているみたい。……あっ、目が合いました。こんにちは~」フリフリ

加蓮「おー、ポカーンとしてる。なんだかんだ2人とも藍子のファンだもんね」

加蓮「……っと、違う方見た。今がチャンスっ」スクッ

加蓮「藍子。えーっと……お邪魔します?」

藍子「加蓮ちゃん。えっと……ようこそ?」

加蓮「えい」ゴロン

藍子「ひゃ」

加蓮「ん……あー……。……はふぅ……はわぁ……」

藍子「……♪」ナデナデ

加蓮「♪」

加蓮「……えと、あの2人こっち見てない? 大丈夫だよね?」

藍子「だいじょうぶ、だいじょうぶ」ナデナデ

加蓮「ならいいけど……」

加蓮「はふぅ……」

藍子「……♪」ナデナデ

加蓮「……あの2人、こっち見てないよね?」

藍子「だいじょうぶ、だいじょうぶ」ナデナデ

加蓮「ならいいけ――」

「? ……!!!???!??!?」
「見てて飽きないなーこのカフェ。さすが藍子さんと加蓮さんのお気に入りの場所――」
「ね、ね、ねえ!? 女神様、女神様があっちにいっ……いわす!」
「は? 女神様? いわす? ……あ、ホントだ。女神様がいる」


藍子「あっ」

加蓮「え?」

藍子「……あ、あははは」

加蓮「……ちょっと。藍子。ちょっと? ねえ? あの2人、もうこっちに気付いたんじゃ――」

藍子「……」

加蓮「気付かれてるでしょ絶対! やっぱり私元の場所に戻るっ」

藍子「だいじょうぶですっ」グイ

加蓮「ぎゃっ……。いや、大丈夫じゃなくて絶対気付かれて、」

藍子「だいじょうぶ、だいじょうぶ」ナデナデ

加蓮「はわぁ……。じゃなくて!」

藍子「~~♪」


「女神様がこっちに手を振ってる……!」
「はわー……。うん、手をふってるねー……」

加蓮「なんで藍子はそんなに余裕でいられるの!? なんで手とか振っちゃってるの?」

藍子「実際にやってみたら、そんなに恥ずかしくなくてっ。それにあの2人も、加蓮ちゃんのこと、おかしな目で見ていたりしませんよ?」

加蓮「それはっ……」

藍子「ねっ? それよりも今は、ここでのんびりしていってください……。加蓮ちゃん、こうしたかったんでしょ?」

藍子「なでなで~♪」ナデナデ

加蓮「はふぅ……」

藍子「……♪」ナデナデ

加蓮「……」

藍子「……♪」ナデナデ

加蓮「……♪」

加蓮「……ここ、やっぱりすごく落ち着く……。なにも考えなくていい場所だよね……」

藍子「そうですよ~。今は、なにも考えないで……。いっぱい、リラックスして?」

加蓮「そうするー……。はふ、ぜんぶ忘れよ……。仕事で覚えないといけないこととか、レッスンのこととか、学校の宿題のことも……あと、かぼちゃの形とか……色とか、味とか……。今なら忘れられそう……」

藍子「本当にかぼちゃばかり食べていたんですね……」アハハ

加蓮「……」

藍子「……♪」ナデナデ

加蓮「……」

藍子「……♪」ナデナデ

加蓮「……あったかい」

藍子「私も、あったかいです」

加蓮「また、寒くなるのかな……」

藍子「……寒くなったら、またあたたかくなりましょうね」

加蓮「ん……」

加蓮「ねえ、藍子」

藍子「はい、何ですか?」

加蓮「目」

藍子「目?」

加蓮「藍子の目って綺麗だよね」

藍子「えっ……? ……ありがとう? 急に言われると、びっくりしちゃいますよ」

加蓮「ごめんね。でもこういう時くらいじゃないと言えないから……」

藍子「……」ナデナデ

藍子「加蓮ちゃんの目は――」

加蓮「うん」

藍子「……すごく、眠たそうにしてる♪」

加蓮「えー」

藍子「ふふ、ごめんなさい。加蓮ちゃんの目は……いつもは、すごく凛々しくて綺麗だけど……。今は、可愛いですっ」

加蓮「あはは。いつもの私に幻想を抱き過ぎじゃない?」

藍子「そんなことないですよ~」ナデナデ

加蓮「いつもの私なんて、どうやって藍子を困らせてやろうかなーってばっかり考えてる子なんだよ」

藍子「ふふ。そうですね。加蓮ちゃんには、困らせられてばっかりです」

加蓮「ね?」

藍子「でも……それだけでは、ありませんから」

加蓮「……そうなのかな」

藍子「はいっ」

加蓮「そっか」

加蓮「……少し寝てもいい?」

藍子「はい、いいですよ。今は、やらないといけないこと、ぜんぶ忘れていいですから」

加蓮「じゃあ、その言葉に甘えるね……」

藍子「……あっ。でも、私のことは――忘れてしまっても、起きた時に思い出してくださいね?」

加蓮「大丈夫。藍子の目を見て綺麗だなーって思ったこと、ちょっと寝るだけじゃ忘れないよ」

藍子「よかった……」ナデナデ

加蓮「……」

藍子「……♪」ナデナデ

加蓮「……すー……」zzz

藍子「あっ……。おやすみなさい、加蓮ちゃん♪」


「女神様の膝の上に女神様がいる……」
「女神様と女神様だね……。ってちがーうっ。私までこうなったら誰がコイツを元の世界に……あぁ、でも女神様と女神様がいるね……」


【おしまい】

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