P「夏葉に犬耳と尻尾が生えてる…」 (75)



P(……えぇ?)




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夏葉「……」フリフリ

P「動いてる…」

夏葉「…? プロデューサー?」

P「え?」
夏葉「どうしたの? さっきからずっと私を見ているけど。何かついてるかしら?」

P「あ、ああごめん。なんでもないんだ」

夏葉「なんでもないのにジッと人の顔を見るなんてことあるかしら。言いたいことがあるなら正直に言ってちょうだい」


P(うっ…困ったな…)

P「えっと……今日も、綺麗だなって思ってさ」

P(会話としては少し唐突だけど、それは事実だしな)

夏葉「…そ、そう。ありがとう……嬉しいわ」ピコピコ

P(…尻尾が動いてるってことは、喜んでくれてるのかな?)ジー

夏葉「ぷ、プロデューサー? そんなに見つめられると、恥ずかしいわ…」フリフリ


P「え。あ、すまん」

夏葉「あ…イヤじゃないのよ? ただ、その…」

P「う、うん」

夏葉「……恥ずかしくて」ブンブン

P(…か、可愛い…。ただでさえ可愛いのに犬耳と尻尾が動いていてさらに可愛い…)

P(…というか、夏葉はもしかして気づいてないのか…?)


P「……なあ、夏葉」

夏葉「な、何かしら?」ブンブン

P「えっと……み、耳……」

夏葉「耳?」ピクッ

P「うん。それ…」

夏葉「あ……気づいてくれたの?」

P「! それはそうだろう。すぐわかるよ」


夏葉「プロデューサー……嬉しいわ。気付いてくれたの、アナタがはじめてよ」
P「えぇ…そんなにわかりやすいのに?」

夏葉「……私のこと、よく見てくれているのね」フリフリ

P「それは、まあ…」

夏葉「これ、先週ショッピングをしていたら見つけたの。衝動買いしてしまったわ。とっても素敵じゃない?」

P「夏葉もそういうの買うんだな。うん、可愛いとは思うけど…」

夏葉「……そうね。少し子どもっぽいデザインかもしれないわね、このイヤリング」


P「え?」

夏葉「でもね? これを見た時になんというか、ビビッときたのよ。そういう直感というか感覚って、大事にしたいでしょう?」

P「ああ、うん。そうだな。似合ってると思うよ。夏葉は可愛いのもとっても似合うから」

夏葉「…可愛い、ね。ふふ、ありがとう」フリフリ

P「…うん。ところで、そっちの耳は…」

夏葉「こっち? 付けてるわよもちろん。髪の毛で見えないだけで」

P「ああ、うん。そうだな…」


P(…これ、夏葉は気づいてないのか…?)

P「…あのさ夏葉」

夏葉「何かしら?」

P「……尻尾」

夏葉「尻尾?」ピクッ

P「…尻尾って聞いてさ、何かこう、思い当たることはないか…?」

夏葉「尻尾……そうね……」

P「…うん」

夏葉「……あ!」


P「お?」

夏葉「やっぱり尻尾といえば、犬の尻尾よね!」

P「ああ…」

夏葉「カトレアも、私が帰ってくると尻尾をフリフリさせて寄ってきてくれるの! とっても可愛いのよ! それとそうね、マメ丸みたいにクルンと巻いてる尻尾も可愛いわ! フリフリ振るのよ! こう、フリフリ〜って!」フリフリ

P(手のジェスチャーと一緒に尻尾も振ってる…可愛い)

P「…そっか」

夏葉「ええ!」


P(…俺の幻覚? 疲れてるのかな…)

夏葉「…プロデューサー?」

P(休みだってとってるし、精神的にも特に不安とかはないはずなんだけど…潜在的なストレスとかかな…?)

夏葉「プロデューサー!」ズイッ

P「わっ!」

夏葉「もう、聞いてるの? ボーッとして。どうしたの?」

P「ご、ごめんごめん。少し、考え事してて」

夏葉「そう……。ねえ、プロデューサー」


P「ん?」

夏葉「疲れたりしていない? アナタ、少しさっきから様子が変よ…?」シュン

P「あ、えっと、大丈夫だよ。それは本当に、うん」

夏葉「そう、ならいいけど…」

P「うん」

夏葉「……そういえば、久しぶりね」

P「え?」

夏葉「アナタとこうしてふたりでゆっくり話すの」

P「…ああ。言われてみれば」


夏葉「…最近は放クラも私も、たくさんのお仕事をいただけて、本当にありがたいわ」

P「…ああ。本当に、大人気だな。放クラも、夏葉も」

夏葉「ふふ、まだまだよ。目指すはトップアイドルなんだから!」フリフリ

P「夏葉のそういう姿を見てると、こっちも勇気づけられるよ」ナデナデ

夏葉「え?」

P「あっ…! すまん、つい…!」

P(夏葉が犬みたいで可愛くて…)

P「セットも崩れちゃうし、嫌だったよな。ごめん!」


夏葉「…………じゃないわ」

P「えっ」

夏葉「い、イヤじゃ……ないわ。突然だからびっくりしただけよ…ええ」

P「そ、そっか…」

夏葉「……ねえ」

P「うん?」

夏葉「もしアナタがよければ……。もう少し、撫でてくれないかしら」ピコピコ

P「え…」


夏葉「あ、いえ、無理にとは言わないわよ!?」

P「いや、全然いいよ。俺の手でよければ…」ナデナデ

夏葉「ふぁ……」フリフリ

P(うっとりしてる……リラックスしてくれる、のかな)ナデナデ

夏葉「……ねえ、プロデューサー」フリフリ

P「…どうした?」ナデナデ

夏葉「…………」ピタッ

P(止まった…?)

P「……夏葉、どうしたんだ?」


夏葉「私……」

P「うん」

夏葉「……」

P「……」

夏葉「…や、やっぱりなんでもないわ! あ、ありがとうプロデューサー。それより、なんだか変なお願いをしてしまったわね」

P「いや、こちらこそ。子ども扱いしてるみたいになっちゃったな」

夏葉「そんなことないわ。嬉しかったわよ……………とても」フリフリ


P「夏葉……ありがとう」

夏葉「……ええ。そ、それじゃあそろそろレッスンだから! 行くわね!」ダッ

P「あ、ああ。……夏葉!」

夏葉「……何かしら?」ピクッ

P「……レッスン、『頑張れ』!」

夏葉「! ……ええ、もちろんよ! 私、頑張るわ!」フリフリ



バタン



P(……今のは、なんだったんだろうな。やっぱり俺の幻覚か…?)

P(……でも、頭を撫でた時、確かにふさふさした感触があったような……ううむ)

P(………そういえば確かに、夏葉とこんなにゆっくり話したの、久しぶりだったな。…楽しかった。それに犬耳と尻尾の生えた夏葉、大型犬みたいで可愛かったな…)

P(……とりあえず、明日また夏葉の様子を見てから考えよう)



------------




ガチャ


夏葉「おはよう! プロデューサー!」

P「おはよう、夏葉!」

夏葉「ふふ、いい挨拶ね!」フリフリ


P(ーあれから数日。夏葉には未だに犬耳と尻尾が生えている。ただ、それはどうやら俺にしか見えていないらしいということがわかった)

P(事務所のみんなや仕事先、果てはSNSまで誰ひとり夏葉の犬耳と尻尾の存在に気付いていない。「夏葉 犬耳」でヒットしたのは「夏葉は犬っぽいから犬耳付けて欲しい」というツイスタの呟きくらいだった)

P(…でも、やっぱり、俺の幻覚…というわけでもない気がするんだよなあ)


夏葉「……あの、プロデューサー?」

P「ん? どうした?」

夏葉「あのね。昨日、出演させていただいた番組の司会の方にとっても褒められたわ」

P「へえ、すごいじゃないか!」

夏葉「ええ。私だけのお仕事だったけど…「姉ちゃんおもろいやないか! 今度はユニット全員で来てや」ですって。嬉しいわね…」

P「ああ! よかったな夏葉」

夏葉「ええ……ありがとう」


P「うん…」

夏葉「……」ジー

P「……?」

夏葉「あ、あの……もしアナタが嫌じゃなかったら、この前みたいに、頭を…」

P「えっと…こう、かな…?」ナデナデ

夏葉「あ…! ふふ、ありがとう…♪」フリフリ

P「夏葉…」

夏葉「プロデューサー……♪」ブンブン



P(数日前と同じ。尻尾はわからないけど、夏葉の犬耳はこうして頭を撫でるとちゃんと触れるし、ふさふさした心地いい感触がある)

P(それに…幻覚にしてはあまりに夏葉の表情と犬耳と尻尾の動きがリンクしすぎている気がして…)


夏葉「……♪」フリフリ


P(…うっとりしてる夏葉の顔、やっぱり可愛いな…)

P(いつも凛々しくて堂々としてるから、そのギャップが…)ナデナデ


夏葉「……ふぅ。ありがとう、プロデューサー」フリフリ

P「…ん。こんなことで喜んでもらえるなら嬉しいよ」

夏葉「ふふ。アナタにしてもらえるから、私は嬉しいのよ」

P「……ありがとう」

夏葉「こちらこそ、よ。プロデューサー。……ねえ」

P「どうした?」


夏葉「………」ピタッ

P(まただ…動きが止まった)

夏葉「私…………が」

P「…が?」

夏葉「……『頑張れ』って、言ってほしいわ。いつもみたいに」

P「ああ、お安い御用だよ。……夏葉」

夏葉「…ええ」


夏葉「…ええ」

P「『頑張れ』!」

夏葉「…ええ! 今日も頑張るわ!」

P(…あれ?)

夏葉「ありがとう。それじゃあ、行ってくるわね!」


バタン


P「……」



P(…夏葉。最後、犬耳も尻尾も振ってなかった…)

P「いつもと変わらないように見えたけど……うーん…」



-------------



P(ーさらに数日が経って。変わらず夏葉には犬耳と尻尾が生えている。それが気になるのもあるけど……以前より、ふたりで話す時間が増えた。夏葉は、放クラのみんなのことをよく話題にする)


夏葉『聞いてプロデューサー! 昨日の収録で樹里がね…』フリフリ

夏葉『昨日果穂と果穂のお友だちが公園でお城を作っていたの! 写真を撮ったから見てちょうだい!』フリフリ

夏葉『凛世の所作の美しさは惚れ惚れするわ! 時代劇も似合うけれど今度の朝ドラの役もとっても楽しみね!』フリフリ

夏葉『智代子、前は無理だったメニューもこなせるようになってきたの! 努力の成果ね!』フリフリ

P(夏葉は、放クラのみんなのことを話す時、とっても嬉しそうだ。犬耳や尻尾を見なくたってそれは伝わる。本当にみんなが…放課後クライマックスガールズのことが好きなんだな。それにー)


夏葉『樹里、またダンスのキレが上がったの!』ブンブン

夏葉『この前のドラマの果穂の演技、とってもよかったわ! 思わず泣いてしまったもの』ブンブン

夏葉『凛世が読み上げた『聴きたい日本文学』のCDを聴いたの。凛世の声は涼やかで引き込まれるわ!』ブンブン

夏葉『智代子が食べる姿はいいわね。ごはんが何倍にも美味しそうに見えるもの! 作った人も幸せね!』ブンブン



P(夏葉は、みんなのことをよく褒める。心から、そして誰よりも。聞いた本人がきっと恥ずかしくなってしまうくらいに)


夏葉「ーだからね、みんなってすごいのよ!」ブンブン

P「…夏葉は、本当にみんなが好きなんだな」

夏葉「ええ! 誰ひとり欠けてはならないわ。……アナタも含めて、ね」

P「…ありがとう」

夏葉「ふふ。だから、それは私のセリフなのよ。ありがとう。頑張っているみんなに応えてくれて」


P(…!)

P「……」

夏葉「? …もう、どうしたの? 最近様子が変よ?」

P「あ、いや。なんでもないんだ」

夏葉「…本当に、アナタに何かあったら大変なんだから。少しでも身体に違和感があったら病院に行くのよ? それとも……心の悩み、かしら…?」

P「俺は大丈夫だよ。本当に」

夏葉「…そう。なら、いいけれど。でも、本当に何かあったら私に言うのよ?」

P「はは、なんだかお姉さんみたいだな。頼りないプロデューサーで、すまん」


夏葉「そんなことはないわ!」

P「夏葉?」

夏葉「アナタは、アナタのことを、本当に頼りにしていて、私に…いえ。私たちにとって、唯一無二の最高のプロデューサーよ」

P「…夏葉に言われると、自信がつくよ」

夏葉「もう。アナタはもっと自分を認めて、褒めてあげるべきよ。自分の頑張りをね」

P「……それは、夏葉も、なんじゃないかな」

夏葉「え?」ピクッ


P「…………」

夏葉「…………」

P「……なあ、なつ」

夏葉「あら、もうこんな時間! 現場に行かないと」

P「……そっか」

夏葉「…プロデューサーは、一緒に来てくれるの?」ピクッ

P「……ごめん。今日はお得意に営業して、それから果穂と樹里のロケ先に顔を出すことになってる」


夏葉「………そう」シュン

P「……ごめんな」

夏葉「…もう。そんな真剣な顔で謝らないでちょうだい。私は大丈夫よ! ……そうでしょう?」

P「ああ、夏葉は大丈夫だよ。……絶対に」

夏葉「…ふふ。そうよね。それじゃあ、行くわね!」

P「あ、夏葉ー」



バタン


P(…夏葉)

P(……最後まで、耳と尻尾、垂れたままだったな)

P(……………)

P(…そうだよな。夏葉だってー)



バタン


P(…夏葉)

P(……最後まで、耳と尻尾、垂れたままだったな)

P(……………)

P(…そうだよな。夏葉だってー)



------------




夏葉『みんなー! 今日は私たちのライブに来てくれてありがとうー!!』



夏葉「ーお待たせしたわね、プロデューサー!」

P「夏葉。もう抜けて大丈夫なのか?」

夏葉「ええ。スタッフの皆さんに挨拶はしてきたし…打ち上げまで時間はあるわ。それで、どうしたの?」

P「いや、用ってわけじゃないんだけど…」

夏葉「ええ」


P「少し…歩きながら話さないか」

夏葉「え?」ピクッ

P「ほら、ここ、海が近いからさ。景色もいいし」

夏葉「私で……いいの?」ピコピコ

P「ああ。夏葉と、話したいんだ」

夏葉「!……ええ。勿論いいわよ!」フリフリ



………………………………


夏葉「…風が気持ちいいわね」

P「寒くないか?」

夏葉「ええ。ライブの熱がまだ残ってるから、このくらいがちょうどいいのよ」

P「そっか。でも、寒くなったらすぐに言ってくれ」

夏葉「ええ。ありがとう」


P「……」

夏葉「……♪」フリフリ

P・夏葉「「あの」」

P「あ」

夏葉「あ」

P「…えっと、どうぞ?」

夏葉「あ、ありがとう……いえ、大したことじゃないのだけれど」

P「…うん」


夏葉「最近、アナタが私のことをよく見てくれてるなって思うのよ」

P「……そう、だな」

夏葉「…嬉しかったわ。とっても。ありがとう」

P「…そんな、お礼を言われるようなことじゃないよ」

夏葉「私が嬉しかったのだからいいのよ。お礼を言わせてちょうだい。……うん。私からは、それだけ」

P「…じゃあ、今度は俺の番かな」

夏葉「……ええ、そうね」

P「…最近、夏葉のことが少し気になってさ」


夏葉「!」ピクッ

P「最初はまあ、些細なこと…でもないんだけど、まあ、その、とにかく気になることがあって」

夏葉「…?」

P「…うん。でもさ、夏葉を見てるうちに、もっと気になることができたというか、言いたいことができたというか……。とにかく、夏葉に伝えたいことが、あるんだ」

夏葉「そ、それって、こ…」

P「こ?」

夏葉「い、いえ。……何、かしら」ピコピコ


P「……みんなってさ、すごいよな」

夏葉「え?」ピタッ

P「今日もさ。放クラだけであんなに大きな会場でライブができてさ、大勢のファンの人たちが来てさ。演者もファンもスタッフもみんな笑顔でさ」
夏葉「……」シュン

P「……夏葉?」

夏葉「…え、あ、そうね。ええ。……みんなって、本当にすごいのよ!」

P「ああ。すごいよな」

夏葉「学校も、アイドルとしてのレッスンやお仕事も全力で」

P「うん」

夏葉「見てるだけで、勇気をもらって、背中を押してもらえるような気がして…! とうとう、こんな大きな会場でライブまで!」


P「…うん」

夏葉「ー今日まで本当にみんな、本当に頑張ったわ!」

P「それだ」

夏葉「え?」ピクッ

P「……夏葉」ガシッ

夏葉「え? え?」



ポンッ


夏葉「……え? …えっと、私の頭に、何か、ついてるかしら…?」フリフリ

P「……」ナデナデ

夏葉「ぷ、プロデューサー…?」

P「…なあ、夏葉」

夏葉「何、かしら…?」



P「ー『頑張ったね』」



夏葉「……っ!」

P「それと…『頑張ってるね』。いつもいつも」ナデナデ

夏葉「……ど、どうしたのよ、急に?」

P「…夏葉はさ、放クラ最年長だろ」

夏葉「そ、そうね…」

P「夏葉はしっかり者だからさ、つい、頼ってしまうんだよ」

夏葉「…それは、光栄だわ」


P「…俺、ここ最近、夏葉の現場にあまり行けなかったろ。ついつい「夏葉なら大丈夫」って思ってしまうんだ。いや、それは今でもそう思うし実際そうなんだけど」

夏葉「…私はいいのよ。それに、みんな本当に頑張ってるのだから、プロデューサーにはその姿を見て欲しいわ」

P「…うん。でもさ、夏葉だって頑張ってるじゃないか。他のみんなに負けないくらい」

夏葉「……そう、かしら」

P「そうだよ。夏葉だって、大学で忙しいのにアイドルにも全力でさ」

夏葉「…大学は、スケジュールの調整がききやすいから」

P「それでもだよ。それに…夏葉だって、みんなみたいに誰かに勇気を与えてるし、背中を押してるんだよ。例えば……俺とか」


夏葉「…プロデューサー」

P「夏葉は、確かに最年長だけどさ、アイドルとしてはみんなと同級生だろ。……同じくらい、すごいんだよ。夏葉だって」

夏葉「そ……そうなの、かしら」

P「うん。すごいよ、夏葉。本当に本当に、頑張ってると思う」

夏葉「…………ほん、とうに?」

P「ああ、本当だよ。…俺さ、夏葉にちゃんと伝えてなかった。思っていても、言わなきゃ伝わらないのにな……夏葉、本当に今日まで『頑張ったね』。側にいれない時も多くなったけど…それでも、いつだってちゃんと見ているし知っているつもりだよ。夏葉の頑張り」


夏葉「………」

P「きっかけはまあ、ちょっとしたことだったんだけど……直接、言いたくなったんだ。誰よりもみんなのことが大好きで、誰よりもみんなの頑張りを見ていて。そんな夏葉の頑張りを、俺が見てるんだよって。誰よりもみんなを褒める夏葉を、誰よりも褒めたくなったんだ」

夏葉「………プロデューサー」ギュウ

P「……だから夏葉。俺でよければ、甘えて欲しいな」ナデナデ

夏葉「………………ぐすっ」

P「…夏葉?」

夏葉「ぐすっ……ひっぐ……うぇぇ……うわぁぁぁ…!」ギュウウウウウ

P「な、夏葉…!?」



………………………………


P「……落ち着たか、夏葉?」ナデナデ

夏葉「…ええ。その…ごめんなさい。恥ずかしいところを、見せてしまったわね…」

P「とんでもない。….…可愛かったよ」

夏葉「っ! ば、バカ…!」ポカポカ

P「いてて……なあ、夏葉」


夏葉「……何?」

P「…ごめんな。夏葉が不安だったのに気づいてあげられなくて」

夏葉「……いいのよ。私も、隠そうとしていたのだし」

P「いや。それでも俺が気づいてなきゃダメだったんだよ。夏葉はさ。すごい人だと、俺は思うし特別な存在だけど。それでも……普通の、まだ20歳の女の子なんだから」

夏葉「…トップを目指す人間が、「私、みんなに負けないくらい頑張れてる?」なんて、そんな小さなことで悩んでる姿なんて見せたくなかったのよ」

P「小さい悩みなもんか。トップを目指して頑張ってるからこそ不安に思ってしまうんだよ。俺が20歳の時なんて数年後どころか明日のこともロクに考えてなかったのに。夏葉は俺には想像もできない努力をして、想像もできないプレッシャーと戦ってたんだなって思わされたよ。……すごいよ、夏葉」


夏葉「プロデューサー…………ありがとう」

P「…うん」ナデナデ

夏葉「言い訳をさせてもらえば……アナタに迷惑をかけたくなかったのよ。いつも忙しいのに、私のことでー」

P「何言ってるんだよ。迷惑なもんか。夏葉に甘えられるなんて、プロデューサーとしてこれ以上ない光栄なことだよ。よかったらこれからもどんどん甘えて欲しいな」

夏葉「……プロデューサーとして」

P「うん」

夏葉「……ふふ」

P「?」


夏葉「…いえ、なんでもないわ。たった今、目標がまたひとつ増えただけよ」

P「お、そうなのか? どんな目標だ?」

夏葉「ふふ。教えてあげない」

P「…そっか」

夏葉「…でも、いつか教えてあげるわ。そうね、私がトップアイドルになった時にでも…♪」

P「…ああ。楽しみにしてるよ。……夏葉」

夏葉「…ええ」

P「…改めて。本当に、今日まで本当によく頑張ったね夏葉。みんなに負けないくらい頑張る夏葉の姿、とっても素敵だったよ」


夏葉「…ありがとう」

P「それと、これからも…『頑張れ』。いや、『頑張ろう』。一緒に。ふたりなら、きっと大丈夫だから」

夏葉「……ええ!」ギュウウウウ

P「おっと」

夏葉「プロデューサー…♪」スリスリ

P「夏葉…」ナデナデ


夏葉「……それにしても、よくわかったわね。私が…その、甘えたがっていたこと。『頑張ってる』って褒めて欲しがっていたこと。…私、わかりやすかったかしら?」

P「いや。多分、あれがなかったら気がつかなかったと思う」

夏葉「あれって?」

P「あー…いや、大したことじゃないよ」

夏葉「教えて欲しいわ。気になるもの」

P「うーん…信じてもらえないと思うけど……あ、あれ?」

夏葉「ど、どうしたの?」


P「な、ない…」

夏葉「な、何が…!?」

P「夏葉の犬耳…」

夏葉「?」

P「あと尻尾も…」

夏葉「!?」

P「いつの間になくなったんだろう…」

夏葉「ぷ、プロデューサー!? アナタこそ、大丈夫なの…!? が、頑張りすぎなんじゃ…!?」



------------



P(ーあれから数日。もう夏葉の犬耳と尻尾が見えることはなかった)

P(夏葉は「本当の理由は教えてくれなくても…私のことをずっと見てくれていた。それだけでいいわ」と笑っていた)

P(どうして夏葉に犬耳と尻尾が生えていたのか、そしてどうして俺にだけ見えたのか。理由はよくわからないし結局は俺の幻覚だったのかもしれない。でも…)

P(そのおかげで、俺は夏葉に『頑張ったね』の言葉を伝えることができた。どんな理由で、どんな過程であれ、その事実は変わらない)

P(…あれ以来、少し変わったことがある)



ガチャ


夏葉「おはよう! プロデューサー!」

P「夏葉、おは…!?」

夏葉「ふふ、どうかしら!」ピコピコ

P「な、夏葉、それ…!」

夏葉「ええ! 犬耳と尻尾よ! この前の動物番組の収録でもらったの。どうかしら? これ、動くのよ!」ピコピコ


P「…うん。可愛いよ。すごく」

夏葉「ふふ♪ ありがとう。それで昨日、カトレアと一緒に写真を撮ったのよ! ほら! 今度また出演させていただいた時に見せようと思うの。それで、この写真を撮る時にカトレア ったら…」


P(夏葉は、自分の話をよくしてくれるようになった。話を聞くたびに、まだ20歳なのに随分大人びてるなと思う時もあれば、やっぱりまだまだ20歳の女の子なんだなと思う時もある)

P(それとー)


夏葉「…それでね、プロデューサー」

P「うん?」

夏葉「私、収録後にとっても褒められたわ。自分でも手応えがあったの。私…その…」

P「……」

夏葉「……」

P「……夏葉。『頑張ったね』」ナデナデ

夏葉「…! ええ! とっても頑張ったの! ……ふふっ♪」ピコピコ



P(夏葉が、以前よりも素直に甘えてくれるようになった気がする)

P(みんなが大好きで、みんなの頑張りを誰よりも見ていて……そんな夏葉を、俺はこれからも、誰よりも褒めてあげたいなと思う)



夏葉「……♪」



というわけで、甘えた川夏葉の話でした。誰よりも頑張る夏葉を、誰よりも褒めてあげたい。
そして、夏葉にとって自分の弱さを素直に見せる人ができること。それが夏葉の成長なんだと思います。

それでは、またの機会に。


以前書いた藤原肇ちゃんに犬耳が生える…というか、柴犬そのものになる話もよろしくお願いします。
藤原肇「ワンちゃんになってしまいました…」 - SSまとめ速報
(https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1535728503/)


あとこちらも!

夏葉『朝、私が起きたらカトレアが女の子になっていたの!』
夏葉『朝、私が起きたらカトレアが女の子になっていたの!』 - SSまとめ速報
(https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1562307463/)

乙~
夏葉は大型犬

ウリは肉が大好きニダ

おつおつ

おつ
かわいいっぬ…

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