オルオ「お久しぶりです、教官」(36)

進撃SSです。

よろしければご笑覧ください。

※オルオがキャラ崩壊(?)しているかもしれません。
※オルオとペトラが同期という前提で話を進めていきます。

*(訓練兵団、教官室)

コンコン

ガチャ

オルオ「お久しぶりです、教官」

キース「…オルオ・ボザドか?懐かしい顔だな…」

オルオ「突然お尋ねしてしまい申し訳ありません」

オルオ「今日は公用でこちらに参りまして」

オルオ「長らくお目にかかっていないのでご挨拶をと」

キース「そうかそうか。まぁ、座れ」

オルオ「…失礼します。お忙しくはありませんか?」

キース「なに、そうでもない」

キース「…コーヒーでいいか?」

オルオ「すみません、お構いなく」

オルオ「これはペトラ・ラルからです。手作りのクッキーだそうで」

キース「おお、すまんな。今から二人で頂くとしよう」

キース「ラルは先月ここに来たぞ」

オルオ「はい、本人から聞きました。あいにく今日は、所用があるとのことで」

オルオ「教官にくれぐれもよろしくと」

キース「そうか。礼を言っていたと伝えておいてくれ」

・・・・・・・・・・

オルオ「お元気そうで何よりです」

キース「未熟者ばかりだ。老いぼれる暇が無い」

オルオ「ふふ、私もよく怒鳴られましたね」

キース「…まぁ、私の仕事の大半は怒鳴ることだからな」

オルオ「教官に初めて怒鳴られましたのは…、確か…」

キース「入団式の筈だ」

オルオ「ああ、そうです、そうです」

キース「訓練兵を整列させて、私が訓辞を始めると」

キース「舌打ちをした者がいた」

キース「それがお前だったな」

オルオ「…いやはや、今考えると冷や汗ものです」

キース「過ぎたことだ」

オルオ「こう言っては何ですが、それまでの俺は喧嘩自慢で」

オルオ「故郷の田舎では年上相手でも構わず殴り合いをして」

オルオ「少しばかり体力もあったものですから」

オルオ「負けたことなんてほとんど無くて」

オルオ「まぁ、要するに天狗になっていた訳ですね」

オルオ「それで、困り果てた両親が相談した挙げ句」

オルオ「暴れたいなら兵士になれと」

オルオ「家業を継ぐなんて格好悪いなんて、いきがっていた私は」

オルオ「面白い、だったら兵士になってやろうじゃないかと」

オルオ「志願したわけです」

キース「ふふ、今日初めて聞いたが、おおかたそんなことだろうとは思っていた」

オルオ「それが、あの入団式で、目の前に教官がいらっしゃって」

オルオ「低~い声で。ゆっくりと。『…おい、貴様。今、何をした?』」

オルオ「震え上がりました」

オルオ「田舎でいきがっていた不良と歴戦の兵士」

キース「…伊達に巨人と戦ってはおらんからな」

オルオ「はい、迫力の質が違っていました」

キース「ふふ、毎年、一人二人はおかしなヤツが入団するものだ」

オルオ「そうなのですか?」

キース「今年で三年目になる104期の連中の中にも面白いヤツがいてな」

キース「入団式の時、芋を食っておった」

オルオ「芋…ですか?」

キース「調理場から蒸かした芋を盗んできたらしい」

オルオ「それは…何とも…」

キース「で、何故今食べるのかと聞いたところ、冷めてしまっては元も子もないと」

オルオ「はあ…」

キース「さらに問い詰めたところ、何故人は芋を食べるのかという話かと答えおった」

キース「笑いをこらえるのに必死だったよ」

キース「それから、食事中に放屁する」

キース「ちなみに、女性だ」

オルオ「女性ですか!?」

キース「まぁ、成績上位者ではあるがな」

オルオ「想像がつきませんね、お話のみでは」

キース「その内に会う機会もあるだろうが…」

キース「本人の名誉のため、名前は伏せておく」

キース「私が笑いそうになったこととともに機密事項だ」

オルオ「はい、それはもう」

キース「女性訓練兵といえば…ラルにもあったな、騒動が」

オルオ「そうでしたね、…入団から半年後、でしたか」

キース「夕食時にとつぜん大声で泣き出したと聞いて駆けつけた」

オルオ「あの時、教官をお呼びしたのは私でした」

キース「そうだったか」

オルオ「一種のホームシックだったのでしょうね」

オルオ「お父さんに会いたいと泣きじゃくって手に負えませんでした」

キース「そうだ。入団前は父親に可愛がられていたそうだ」

キース「責任感の強さでその寂しさを押し殺していたみたいだが」

オルオ「はい。たまたま家族の話になって、それで…」

キース「あの年頃であれば仕方の無いことではある」

オルオ「教官が個室で懇々と話されたそうですね」

キース「特別な話などしていない。兵士としての心構えを聞かせただけだ」

オルオ「しかし本人はあの時のことをとても感謝していましたよ」

オルオ「教官から励まされていなければ辞めていたかも知れないと」

オルオ「あの時、どうしても寂しいならば手紙を書けと言われたそうですね」

オルオ「今でも頻繁に父親と手紙のやりとりをしているみたいですよ」

オルオ「からかうと叱られるので黙っていますが」

キース「ふ…、成績優秀者に辞められては困るからな」

オルオ「そうなのですか?教官は成績優秀者を贔屓する様な方ではなかったと思いますが」

キース「買いかぶりだ。教官の立場として、優秀な人材を大事にするのは当然だ」

オルオ「はあ…」

キース「まぁ、そういうことにしておいてくれ」

オルオ「分かりました。しかし…、教官には私の様な者も熱心なご指導を頂いたものです」

キース「ふむ、なかなかに手のかかる訓練兵だったぞ、お前は」

オルオ「根が田舎のちんぴらでしたから」

キース「訓練は手を抜く。注意をすればふてくされる」

キース「その度に叱り飛ばし、罰を与えるものの、次の日にはまた同じ事を繰り返す」

オルオ「お恥ずかしい限りです」

キース「そんなお前が、…二年目の春だったかな、急にやる気を見せ始めたのは」

キース「率先して訓練に取り組み、我々教官に対して真摯な態度を見せる」

キース「教官同士でも、少し話題になったのだぞ」

オルオ「そうでしたか…」

キース「いつぞや、聞いたことがあったな。一体何が原因だと」

キース「その時は何やら誤魔化されたが…」

キース「今なら答えられるか?」

オルオ「申し上げてよいものかどうか…」

キース「何だ?」

オルオ「いや、お叱りを受けるのではないかと…」

キース「安心しろ。訓練兵でない者を叱ったりはせん」

オルオ「その…」

オルオ「好きな女性が出来たわけです」

キース「ほう…」

オルオ「で、その女性は成績が良く、かたや私は落第すれすれ」

オルオ「そもそも釣り合う筈がないのですが」

オルオ「それでも、彼女の気を引くために、色々やってみました。しかし、」

オルオ「結局のところ、全て空振り」

オルオ「しまいには『そんなことやってる暇があれば訓練をしっかりしなさいよ』と」

オルオ「それはそれはきつく叱られてしまいまして」

オルオ「それで…、まぁ…、あいつがそう言うのなら頑張ってみようかと」

オルオ「もちろん、見返してやろうなんていう反発心もありましたが」

キース「若いな」

オルオ「不純な動機で申し訳ありません」

キース「気にする必要はなかろう」

キース「事情はどうあれ訓練に精を出す様になったことは評価すべきことだ」

キース「だが、苦労していたな?」

オルオ「ええ。最初の一年間を無駄に過ごしてしまいましたからね」

オルオ「さぼっていた私が苦労するのは当たり前のことです」

オルオ「遅れを挽回するのに精一杯でした」

オルオ「ただ、当然といえば当然なのですが」

オルオ「なかなか結果に結びつかないのは、正直辛いことでした」

キース「教官同士では本人から相談があるまでは見守ろうということになっていた」

オルオ「そうだったのですか?」

キース「うむ、本人にやる気があるのであれば、当然質問に来る」

キース「これはお前だけに限ったことではなく、基本方針でもあったからな」

キース「案の定、お前はやってきた。」

オルオ「確か、その年の秋、そろそろ肌寒くなってきた頃でした」

オルオ「夕食前、いつまでも成績を伸ばすことの出来ない自分に苛立ちながら」

オルオ「気晴らしに外を歩いていると」

オルオ「成績の優秀な連中が固まっていて」

オルオ「仲良く会話をしている」

オルオ「ああ、あいつらと自分はそもそも別世界に住んでいるんじゃないか」

オルオ「そう考えると涙が止まらなくなり」

オルオ「見込みが無いのであれば、教官の口からはっきりそう言ってもらいたい」

オルオ「涙と鼻水でぐちゃぐちゃになりながら教官室のドアを叩きました」

キース「うむ。あの時のことはよく覚えている」

キース「私が見るに、春からの努力で、お前の力量は格段に向上していた」

キース「だが、一年目に怠けてしまったという負い目だろうが」

キース「どうしても自分に自信を持てない」

キース「成績上位者との競り合いで負けてしまうのはその点が大きかったのだ」

オルオ「はい、教官はそう仰いました」

オルオ「ただ、その時の自分は劣等感に苛まれ」

オルオ「私の力量が向上しているとはどうしても思えませんでした」

キース「何やらその様なことも言っていたな」

オルオ「教官はさらにこう仰いました」

オルオ「それほどまでに上位者が気になるのであれば」

オルオ「一度、彼らの技を真似てみろ」

オルオ「『学ぶ』とは『真似ぶ』こと。上級者の技を真似るところから向上は始まる」

オルオ「しかし、相応の力量を伴わない者が高度な技を真似することは出来ない」

オルオ「逆に言えば、お前が彼らの技を真似ることが出来るのであれば」

オルオ「お前自身に相応の力量が備わっているということだ」

オルオ「駄目で元々ではないか。試しにやってみろ」

キース「よく覚えているではないか」

オルオ「もちろんです」

オルオ「教官のお言葉に、半信半疑になりながらも」

オルオ「次の日、上位者連中の真似をしてみましたところ」

オルオ「案に相違して、私も或る程度まで出来ていたのです」

オルオ「そうか、自分のやったことは無駄ではなかったんだ」

オルオ「もう、嬉しくて嬉しくてたまりませんでした」

オルオ「あの日のことは今でも忘れられません」

オルオ「ですから、その前の日の教官のお言葉もよく覚えているのです」

キース「そうか…。教官冥利に尽きる話だ。感謝する」

オルオ「感謝申し上げるのはこちらの方です」

オルオ「自信を持った私には、日々の訓練が楽しくて」

キース「うむ、飛躍的に成績を上げていったな」

オルオ「今、私の討伐数は、四十体を超えようとしています」

オルオ「教官からのご激励が無ければ到底無理であったと考えております」

キース「全てはお前の努力の賜だ。…そういえば」

キース「お前に似た訓練兵が104期にいる」

キース「エレン・イェーガーという男だ」

オルオ「エレン・イェーガー…」

キース「まぁ、こいつは最初から真面目な男ではあったがな」

オルオ「はは、それだけで私とは大違いですよ」

キース「入団当時は特に何かが優れていたわけでもない」

キース「ただし、努力という点でいえば、104期でも群を抜いており」

キース「その結果、着々と成績を伸ばしていっているのだが」

キース「同期に幼馴染みがいてな」

オルオ「幼馴染み…」

キース「ミカサ・アッカーマン。噂は聞いているだろう?」

オルオ「はい、力量がケタ違いの女性訓練生が一人いると…」

キース「将来、間違いなく人類の希望となる逸材だろう」

キース「それほどの者が身近にいるということが」

キース「時としてイェーガーにとって悪い方向に作用する」

オルオ「努力してもどうしても抜かせないと…?」

キース「そういうことだ。イェーガーの訓練を見ていると」

キース「端々でアッカーマンへの対抗心を見せ」

キース「それが結果としてイェーガーの焦りに繋がっている」

キース「最終的にアッカーマンを抜けなかったとしても」

キース「もしもイェーガーがその様な心境から抜け出したとすれば」

キース「大化けするかもしれん」

キース「相当に先の話にはなりそうだがな」

オルオ「興味深い訓練兵ですね」

キース「まぁ、イェーガーが努力する理由はアッカーマンへの対抗心だけでなないが」

キース「それは本人の許可無しには言えない」

キース「ちなみに、イェーガーは調査兵団に入りたいと言っている」

オルオ「ほう…、来年には同僚になるわけですね」

キース「恐らくお前とも会うことになるだろう」

キース「贔屓しろとは言わん。だが、気にはかけてやってくれ」

オルオ「はい。楽しみにしておきます」

キース「ところで」

オルオ「何でしょう」

キース「ラルが愚痴をこぼしていたのだが」

オルオ「はあ…」

キース「最近、妙な口調になっているらしいじゃないか」

オルオ「ペトラはそんなことまでお耳に入れたのですか?」

キース「いつの間にやら仲間内への口調が変わり、理由も教えてくれないと言っていた」

キース「で、その口調が、…『気持ち悪い』と」

オルオ「…」

キース「まぁ、冗談めかしていたからな、心底嫌がっているわけでもなさそうだが」

キース「ただ、余りにそれまでの口調と違いすぎる」

キース「もしかして悩み事でもあるのかと心配していたぞ」

キース「本人は心配なぞしていないと言い張っていたがな」

キース「で、この話は本当なのか?」

オルオ「そうですねぇ…、変えたといいますか、変わったといいますか…」

オルオ「特段の悩みがある訳でもないんですが…」

キース「話が読めん。はっきり言え」

オルオ「あの…、誰にも言わないで頂きたいのですが、よろしいですか?」

キース「機密事項扱いにしてやる。言ってみろ」

オルオ「調査兵団に入りまして…、目標とする人物が出来たのです」

キース「ほう…」

オルオ「その人の戦いぶりは私の理想、そのものでした」

オルオ「戦いぶりだけではありません」

オルオ「その人の兵士としての心構え。部下に対する厳しさと暖かさ」

オルオ「悉くが私の目標とするに足るものなのです」

オルオ「現状では『目標』とする事すら烏滸がましいほどの実力の差があります」

オルオ「もしかすると、一生追いつけないかも知れない」

オルオ「しかし、どうしても諦めきれない!!」

オルオ「ああなりたい。あの人から認められ、信頼されたい」

オルオ「憧れているんです。一人の男として。腹の底から」

オルオ「私は成績上位者の真似をしてのし上がりました」

オルオ「今はまだ、兵士としてのその人を真似出来る域には達していないでしょう」

オルオ「ですから、どんな細かいことからであっても、あの方の真似をしてみよう」

オルオ「もしかすると、いつかはその努力が報われるかも知れない」

オルオ「つまり…、口調は、その人の真似です…」

オルオ「情けない話ですが、それが真相です」

オルオ「恐らく、私が誰の真似をしているかは皆、分からないでしょう」

オルオ「変なヤツだと思われているかもしれません。まぁ、事実ですからね」

オルオ「まだ、その人の下に附いたことはありませんが」

オルオ「いつ、如何なる時にでも馳せ参じることが出来るように」

オルオ「訓練にせよ、何にせよ、日々、精進を重ねているところです」

キース「…」

これは恥ずかしいw

キース「口調、な…」

キース「他の者が言い出したなら」

キース「そんなことを真似て何になると一喝をくれてやるところであるが」

キース「お前なら、心配無いだろう。理想に辿り着くまで、努力を惜しまぬことだ」

オルオ「頑張ります。…実は」

オルオ「思い切って髪型も真似してみようかとも思っているんですが…」

キース「…この私に髪型の話をするか」

オルオ「…!!あ、いえ、その…」

キース「冗談だ。…まぁ、好きにするといい」

オルオ「はい、すみません…」



コンコン

キース「誰だ?」

エレン「エレン・イェーガー訓練兵です」

オルオ「…!!」

キース「入れ」



ガチャッ



エレン「失礼します。…ご来客中でしたか、申し訳ありません」

キース「こちらは内地から来られた方だ。事情があってお名前は明かせないが」

キース「我が訓練兵団に対し、かねてよりご助力を賜っている」

キース「ご挨拶申し上げよ」

エレン「はっ!!第104期訓練兵団所属、エレン・イェーガー訓練兵であります!!」

オルオ「…挨拶、痛み入る」

キース「イェーガー、それで何の用だ?」

エレン「はいっ、昨日の立体起動訓練の報告書を提出しに参りました!!」

キース「分かった。その箱に入れておけ」

エレン「はっ!!」

キース「折角の機会だ」

キース「この方に、貴様の所属希望先と、その理由を簡潔に申し上げよ」

オルオ「…」

エレン「はっ、自分は調査兵団を希望しております!!」

エレン「その理由は、この世から巨人を駆逐したいからであります!!」

オルオ「…鍛錬に励み給え」

エレン「はっ、全力を尽くす所存です!!」

キース「…よし、下がれ」

エレン「はっ、失礼します!!」



ガチャッ バタン

キース「敢えてお前の正体は伏せておいたが、悪く思うな」

キース「調査兵団に所属するお前に会ったとなると」

キース「イェーガーのことだ、必要以上に力が入り」

キース「訓練過剰になる可能性がある」

オルオ「ええ、気にしておりません。しかし」

オルオ「いい気迫でした」

オルオ「先輩として会える日が楽しみです」

キース「うむ。残り一年、出来る限りあいつの力量を向上させておく」

キース「先程も言ったが、絶対に贔屓はしてくれるな」

キース「むしろ、厳しく当たってくれ」

オルオ「はい、私も調査兵団の先輩方には厳しく仕込まれましたから」

キース「そうだったな、そうして調査兵団独特の連帯感が生まれていくのであったな」

オルオ「…」

オルオ「…教官にお尋ねしたいことがあります」

キース「何だ」

オルオ「教官は何故、一線から退かれたのでしょうか」

キース「…」

オルオ「出過ぎたことを申し上げてしまいました」

キース「エルヴィンは極めて有能な男だ。無能な私の出る幕はない」

オルオ「しかし…」

キース「何かを成し遂げることが出来るのは、何かを捨てることが出来る者だ」

キース「壁の中の人類のために、仲間を切り捨てる」

キース「兵を率いる者は、常にそれを覚悟しておかねばならない」

キース「エルヴィンや他の幹部にそう教えたきた」

キース「しかし私は、その覚悟を失ってしまったのだ」

キース「息子を亡くし泣き崩れる母親を見た時」

キース「日頃から思い定めていた筈の覚悟ががらがらと崩れてしまった」

キース「そんな私に調査兵団を率いる資格は無い」

キース「今はただ、私の無能さによって死なせてしまった仲間への悔恨、懺悔」

キース「調査兵団に対してはそれを思うのみである」

キース「私に出来るのは、訓練兵を鍛え、精強な兵士として育て上げることのみだろう」

キース「その一点に全力を尽くそうと思っている」

オルオ「…教官のお気持ちはよく分かりました」

オルオ「訓練兵へのご指導に、一点の曇りも無いことは私が一番存じております」

オルオ「…古参の調査兵の中には」

オルオ「教官のいらっしゃった頃を懐かしむ声があります」

オルオ「それはエルヴィン団長に対する不満の裏返しということではありません」

オルオ「団長時代の教官が無能であったかどうか、それは私には分かりません」

オルオ「仮にそれがそうであったとしても」

オルオ「キース団長を慕う調査兵が今もいることをお伝えしたいと思います」

キース「オルオ・ボザド」

キース「その配慮に、衷心より感謝する」

オルオ「…」

オルオ「さて、そろそろお暇致します」

キース「そうだな、今からであれば宵の口には屯所に着くだろう」

オルオ「…また参ります」

キース「待っている」


ガチャッ


キース「ああ、待て。聞くのを忘れていた」

オルオ「はい、何でしょうか」

キース「その…、お前の想い人とやらは…」

オルオ「只今、引き続き攻略中です。…とてつもない強敵がいましてね」

オルオ「憧れでもあり、強敵でもあり…。なかなか厄介なものです」

キース「…そうか。成功したら教えてくれ。結婚式の挨拶ぐらいはしてやる」

オルオ「それはもう。是非、お願いしたいところです」

オルオ「それでは」


ガチャッ バタン

・・・・・・・・・・
キース「…」

『オルオ・ボザド。
訓練兵二年目の冬より格段の進歩を見せる。
たゆまぬ努力に裏打ちされた実力は将来性を感じさせるに十分である。
性格的には若干の軽薄さが見受けられるが、仲間からの信頼は篤い。』

キース「…ふむ」

*(調査兵団屯所)

オルオ「着いたか。やれやれ」

ペトラ「あ、オルオ、遅かったね」

オルオ「ふっ、俺を待っていたのか?」

ペトラ「馬鹿じゃないの?」

オルオ「照れ隠しか?」

ペトラ「やめてよ。気持ち悪い」

オルオ「俺は素直な女が好みだ。覚えておけ…」

ペトラ「うるっさいなぁ。…で?教官はお元気だった?」

オルオ「眩しかったさ、凄く」

ペトラ「失礼なこと言わない!!」

オルオ「ああ、教官から伝言だ」

オルオ「…」

オルオ「ク、クッキーうまかったぞ。ごちそうさん」

オルオ「それから…」

オルオ「食べ過ぎに注意せよ…だ」

ペトラ「教官がそんなこと言う筈ないでしょ!!」

ペトラ「あんた何を言ったのよ、教官に!!」

オルオ「気にするな。誰にでも…言い間違いはある」

ペトラ「わけわかんない!!その変な口調もやめてって言ってるでしょ!!」

オルオ「ふっそれは無理だ」

ペトラ「な…何でよ?」

オルオ「…何しろ機密事項だからな」


…以上です。
お読み頂きありがとうございました。

高校の恩師に会いにいった時を思い出しながら書きました。

SSは本作で5作目になります。
1作目  ミカサ「私は誕生日が嫌い」
2作目  ミカサ「守る」
3作目  ミカサ「お花見に行きたい」
4作目  リヴァイ「花見だと?」

また機会があればどうぞよろしくお願いします。

末筆ながら、コメントを下さった方、ありがとうございました。


オルオさんちょっとかっこいい

これは良い

こういうサブキャラの掘り下げエピソード好きだ。乙

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