【ミリオン】翼 & 昴 & 海美 「弟ができた!」 (100)




ー 765プロ ライブシアター 控室 ー



翼「あーあ!わたし、おねぇちゃんになりたいなぁ!」

昴「急になんだよ、翼」

海美「どしたの、翼?」

翼「わたしの同級生の娘に、この前弟が産まれたんだって。
写真見せてもらったんだけどすっごく可愛くって!」


翼「でね、その娘が
『頼りになるお姉ちゃんになるように、しっかりしないと』って
顔がすっかりお姉ちゃんしてて、なんかいいなぁーって!」






翼「ねぇねぇ。弟ができるのってどんな感じなんだろう?」

昴「いや、オレは5人きょうだいの一番下だからわかんないなぁ。海美は?」

海美「私も妹だからわかんないや」



翼「わたしも3人きょうだいの一番下…」





翼「そっかぁ。ここにいる3人、みんな妹……それも末っ子ってことかぁ」





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翼「みんな、もしも弟ができたら何したい?

わたしはね、毎日一緒に買い物とか、オシャレなカフェに行くの!ぜったい楽しいよね!」


昴「うわぁ、翼の弟は大変だなぁ…。

オレなら、野球の練習に付き合わせるんだ!んで、兄ちゃん達の飯の当番とかやらせる!」

翼「えー!なんか家政婦さんみたいでかわいそー!」

昴「だってオレは姉ちゃんだぜ?『姉の命令はゼッタイ』だろ!

兄ちゃん達がよく言ってきてウザいけど、1回言ってみたいよなぁ」


海美「私はお姉ちゃんからそんなこと言われたことないけど…。

……弟ができたら、かぁ。
ん〜!一緒に遊んだりするだけで楽しそう☆
あとあと、お料理食べさせてあげたいな!」




ガチャ




P「お、みんなおつかれ。随分盛り上がってたみたいだけど、何の話してたんだ?」

翼「あ♪Pさん、おつかれさまでーす!
ねぇねぇ、Pさん!わたしがお姉ちゃんになったら、ぜったいステキになると思いません?」


P「なんだなんだ急に。
……翼がお姉ちゃんか。
翼はしっかりしたお姉ちゃんになるには、まずレッスンをサボらずにちゃんとやらないとなぁ?」タメイキ


翼「うー……Pさん、イジワルです!だって覚えたダンスを何回も繰り返すの、つまんないんだもん!」

P「はぁ…あのな、翼。レッスンはな、同じことのように見えてもその一回一回は違うものなんだぞ!それに…」

翼「はいはーい!オセッキョーは後で聞きまーす!ところで、昴くんはどんなお姉ちゃんになると思いますか?」






P「……昴が?うーん、ガサツだけど、頼りがいのあるお姉ちゃん……っていうより、アネキって感じだな!」

昴「な、なんだよそれ!オレだって、アイドルやってちょっとは女らしくなってきただろ」ムスー

P「んー?前の握手会で、最初は自分のことを『わたし〜』とか媚びた口調だったのに途中で顔を真っ赤にしてやめたのは誰だったかなぁ?」

昴「あ、あれは……!///
その…アイドルらしい口調のほうがファンも喜んでくれるかなって思ったけどやっぱハズくて…」







海美「ねぇねぇP!私は、私は!」

P「海美は…うん。優しくてかまいたがりのお姉ちゃんになりそうだな。
それも、かまいすぎて過保護すぎるくらいに…」

海美「え、えー!そんなに褒められるとちょっと照れちゃうよー!/// えへへ!」

P「いや、褒めてないし…。
海美はレッスンにしても仕事にしても、早とちりなところがあるからなぁ。
もうすこし落ち着きが必要かな?」


海美「あはは……気をつけまーす!」




P「うーん、やっぱり皆にはお姉ちゃんはまだ早いかな?」





翼「むー、Pさん厳しいー!それなら、Pさんが弟になってくれればいいのにぃー!」


P「……は?俺が……弟に?」



翼「そしたら、わたし達がおねぇちゃんにふさわしいって証明、してあげられるのに!」

昴「ははは、それ面白いな!Pが弟とか野球の仕込みがいがあるぜ!」

海美「Pが弟……!?なんか想像するだけで楽しそう!」




P「まてまて!勝手に盛り上がるのはいいが、残念ながら俺が弟になるなんて天地がひっくり返ったってないぞ!!

P「それに姉っていうのは、大きくて頼りがいがあって、模範となる存在じゃないといけないんだぞ」

翼「あれ?Pさん、きょうだいいたんだっけ」

P「いや、いないけど。なんとなくイメージで」

昴「なんだそりゃ…」



P「それに、お前ら3人がお姉ちゃんになったって、
才色兼備で美少年だった俺が、お前らに世話になることなど…ありえんな!」フフンッ




翼&昴&海美「うっそだー!」





P「うぐ……ま、まぁいい!

ところで、今日は皆、掃除当番だろ?
劇場出入り口扉が結構汚れていてな。そこを中心にやってほしいんだ」



翼「えー!あんなにおっきい扉、めんどくさいよー!」

P「そのために3人いるんだろ?力を合わせてピカピカにしておくこと!」

P「じゃあ俺はもう帰るから、たのむな!」



海美「あれ、もう帰り?いつもより早くない?」

P「打ち合わせが早く終わってな。明日は休みだし、早く帰ってのんびりしようかな」




P「じゃあ、3人とも。また、な!」スタスタ…




昴「さーて、Pも行っちゃったし、さっさと始めるかー」

翼「うー…めんどくさーい」

海美「きっと皆でやると掃除も楽しいんじゃないかな!一気にやっちゃおー!!」

翼「は〜い」





……



昴「だああー!もう動けない!やりきったぁー!」ドサッ

海美「あー楽しかったー!やっぱりなんでも競争すると、楽しいね!」イキイキ

翼「うー、昴くんも海美さんもムキになっちゃって、ついてくの大変だった〜!」

海美「あはは、ごめんね翼!でもみて!劇場の玄関扉ピカピカだよ☆」

翼「確かに……!こんなにキレイになったんだし、Pさんに大人のデートに連れてってもらわなきゃ♪」




昴「さ、腹減っちゃったし、早く帰ろうぜー!」

海美「あ、待ってよすばるん!電車途中まで一緒だし、一緒に帰ろう〜!」

翼「もー、海美さんも昴くんも元気すぎ!待ってくださいよー!」





ー 夢の中 ー



翼「……んー、あれ?なにここ?わたし達、確か……」

昴「あっ翼!3人で電車乗ってたのに、なんだよここ!なんかスッゲーぼんやりした空間…」

海美「あれ?翼とすばるん?」

翼「海美さんも!どこなんだろ、ここ…」




???「おさんかた〜!ようこそ~!!」





翼&昴&海美「だれ!?」




魂ちゃん「いらっしゃい、サナギちゃん達♪私は……765プロライブ劇場に宿る魂!
……さしずめ、『劇場の魂』ってやつ。魂ちゃんでいいわよ♪」





昴「な、何こいつ…スッゲー馴れ馴れしい…」ドンビキ


海美「ね、ね!魂ちゃん!ここどこなの!やっぱり夢!?夢なら私、空とか飛べちゃったり!?」フンフン

魂ちゃん「あらぁ素直なお姫様は好きよ!それくらいお茶の子よ〜!あ、そーれ♪」

海美「わはーーー!浮いた浮いた!すご~い!」キャッキャッ

翼「わー……すっごい順応性…」

昴「いや、なんかブキミだよ…。夢なのは分かったし、こんなところから早く出してくれよ!」


魂ちゃん「あら~、つれない!今日はね、あんたらにご褒美をあげに集まってもらったのよ!」




翼 & 昴 & 海美 「ご褒美…?」




魂ちゃん「そうよー!劇場の扉をピカピカにしてくれたわね!それのお礼♪」

昴「……たしかに、今日掃除したけどさ。そんなに大層なことじゃないと思うけど」


魂ちゃん「あら、玄関って運気の通り穴なんだから♪そこをあれだけキレイにされると、劇場の魂的には超ポイント高いってわけよ!」


翼「ふーん、まぁいいや。ところで、ごほうびって何もらえるの?」

海美「それそれ!私も気になるー!」

魂ちゃん「あらー!乗り気な天使ちゃんね!まぁ、あした劇場に来たらわかるわよ♪ご褒美はサプライズが基本でしょ♪」ウィンク


昴「こ、こいつのノリすっげー疲れる…。頼むからこれ以上出てこないでくれよ……」



魂ちゃん「あらー…ずいぶんな妖精ちゃんね。じゃあ説明は省いて、アタシはおいとまかしらね?


拉致ってくるから、明日ちゃんと3人で劇場に来なさいね!



あ、そーーれ♪」





ー 電車内 ー




ガタンガタン……


翼&昴&海美「……ハッ!!」



翼「んん~〜!3人で寝ちゃってたんだ…」

昴「ふぁーーぁ!なんか……すっげー変な夢見た…」

海美「私は空飛んだりしたような……」

翼「…」

昴「…」

海美「…」






翼&昴&海美「……あ、あのさ!」






翌日 早朝


ー 765プロ ライブシアター前 ー



昴「まさか、昨日3人とも同じ夢見てたなんてなー!」

海美「うんうん!しかも私達、3人とも今日お休みだし!グーゼンってすごいね!」

翼「……で、魂ちゃんに言われたとおり劇場に3人で来たわけだけど…」

昴「ノコノコ来ちゃったもんはしょうがないし、とりあえず、事務所入るか〜」




ガチャ




昴「おはようございまーす……って、今日P休みだし誰もいないか」

海美「……あれ?あそこ!見て!ソファに誰か寝てるよ!」

翼「……え、ホントだ!(ドタドタ……)



……えっ、こ、この子は……!?」




???「……んー、うるさいなぁ……あれ?ここ、どこ?お姉ちゃんたち、だぁれ?」





翼&昴&海美「……小さい、男の子!?」








昴「なるほど。朝から公園でひとりでいたら、急に眠くなってベンチで一眠りしたらここにいた、と……」

男の子「うん。夢の中で女の人が、『日暮れ時には帰してあげるからお姉ちゃん達と遊んでおいで~』とか言ってた」




海美(ねぇ翼!これって絶対魂ちゃんの……)ヒソヒソ

翼(うん。間違いないと思う!じゃあこの子は…)ヒソヒソ





海美「ねぇ、ぼく?お名前はなんていうのかな?」


男の子「うん…みんなぼくのこと、『ピー太』とか『ピーくん』って呼ぶよ!

男の子「ほら、見て!ぼくのお気に入りの帽子!毎日つけてるんだ!かっこいいでしょ!」フンス




昴「野球帽にでっかく 『P』 ってワッペン…。わかりやすっ!」




翼(間違いなく、小さいPさんだよ!なんかオモカゲあるし!今と違ってすっごい可愛いー!)ヒソヒソ

昴(Pにケータイでメッセージ送ったら普通に返事きたし)

昴(…つまり、今この世にPは二人いて、コイツは過去から連れてこられたってことか…)ヒソヒソ





ピー「……で、おねぇちゃんたち、だぁれ?」

翼「あ、そっか。まだわたし達のこと知らないんだ。じゃあ、自己紹介。わたしは翼!14歳!」

昴「オレ、昴!15!」

海美「私は海美だよ!16歳、よろしくね!」





ピー「そっか!


   翼おねぇちゃんと、
   昴おねぇちゃんと、
   海美おねぇちゃんだね!

   今日一日、よろしくね!」ニコッ






翼&昴&海美「……!?」 稲妻 ズガーーーンッ!!!








海美「……み、みみみみんな!聞いた!?海美おねぇちゃんだって!!海美おねぇちゃん!!!!」



昴「あ、あぁ!昴おねぇちゃんって……すっげーハズいけど…なんか…」



翼「わたしたちが……おねぇちゃん……っ!」




翼&昴&海美 (ニマー)




ピー「……?」







ー 劇場近くの公園 ー


昴「そっか。ピー太は10歳なんだ……なっ!」シュッ

ピー「うん!小学……4年生っ!」シュッ

昴「へー、苦手な教科とか……あんのっ?」シュッ

ピー「……最近は体育。でも外で遊ぶのは……大好きっ!」シュッ





海美「キャッチボール楽しそー!グローブが1セットしかなくって残念!いいないいな!」

翼「こういうとき男の子とすぐ仲良くなれる昴くんが羨ましいなぁ〜」




ピー「昴ねぇちゃんの球、速いね!すごいや!」


昴「えへへ……!そうかな…?じゃあ、もっとすごいの見せてやるよ!
ピー太、グローブ構えろ!」

ピー「う、うん!」



昴「……そらっ!」シュッ

ピー「……っ!(スカッ)あっ……」球コロコロ…



昴「ありゃ、流石にスライダーは取れなかったか…」

ピー「でも、すごい!昴ねぇちゃん、変化球投げれんの!」



昴「へへー、どーだ!スッゲーだろ!」フンス




ピー「たしかに、すごいんだけど…」

ピー「昴ねぇちゃん、野球もうまいし自分のこと『オレ』っていうし…女の子なのに変わってるね!あはは!」



昴「……うっ!こいつ、人が気にしてることを!チビプロデューサーのくせに、ナマイキだぞ!こうしてやる!」ヘッドロック



ピー「ゔぅ…ぐるじい……昴ねぇちゃん、ごめんなざ〜い!」





翼「あーっ!昴くん!弟くんにらんぼーは禁止ー!」

海美「ねぇねぇ、ピーくん!キャッチボールはそれくらいにして、私と遊ぼうよ!シーソーも砂場も、鉄棒もあるよ!」



ピー「……うみみおねぇちゃん!シーソーも砂場もぼく、もうソツギョーしてるよ!」

ピー「しかも鉄棒なんか、今一番やりたくない!」プイッ



海美「うっ、子どもってむずかしい……」



ピー「それよりおねぇちゃんたち、アイドルなんでしょ!?昴ねぇちゃんみたいになんかスゴイ事できるんでしょ?やってみてよ!」瞳キラキラ


翼「うわぁ、子供の悪意のないムチャ振り……!」





海美「あ♪はいはーーい!私はね、これ!」体グニー

ピー「わっ!うみみおねぇちゃん、体、凄いことになってるよ!」



海美「まだまだー!こんなこともできちゃうよ!」グニグニー

ピー「わ、わぁ……足とお手てがすごい位置に……」

海美「どう!私、バレエやってたから、体の柔らかさなら自信あるよぉー!」





ピー「う、うん。すごいと……思うけど、早く元に戻って!……なんかちょっと…………き……」ドンビキ

海美「あれ?なんか、思った反応と……違う?」





翼「わたしは……野球もできないし、あんなになれないし……ジャンケンが強いくらい、かな?」

ピー「えー!うっそだぁー!だってジャンケンなんて、運でしょ?」

翼「あはは!まぁ、やってみれば分かるよ♪」



ピー「うん!ジャ~ンケ~ン…」

翼「ポンッ!」



ピー「あ、負けた!これはグーゼンでしょ?もっかい!」

ピー「ジャ~ンケ~ン…」

翼「ポンッ!」



ピー「あれ?また負けた…… ムッ! もっかいだよ!」





……



ピー「そ、そんな…」ガーン

翼「は~い、わたしの勝ち〜!10連勝〜♪なんで負けたのか、明日までに考えてきてね♪」



ピー「な、なんで!?なんでそんなに強いの!ぼくがなに出すかわかるの?」

翼「ふふーん♪じゃあ、ヒント!指の動きをよーく見ること…かな」



ピー「指…?もしもジャンケンが強かったら、いろんな事に有利になるんだ!明日までに考えとかなきゃ…」


昴「わかるなぁ。子供の時って決め事はすぐジャンケンだかんなぁ」ウンウン





海美「ねぇねぇ!ふたりもピーくんも、もうそろそろお昼の時間だし、ご飯にしようよ!」

昴「ああ、そういえばもうそんな時間か。なんか食いに行く?」




海美「いや、そこは私……うみみおねぇちゃんに任せて!!!」フンフン





翼 & 昴「えぇ……」








ー 劇場 キッチン内 ー


海美「ふんふふーん♪ふっきん♪はいきん♪きょうきーん♪」トントントン…

ピー「わー!うみみねぇちゃん、お料理じょうずなんだ!」

海美「ちょっとまっててね!ピーくん!うみみんおねぇちゃん特性フルコース作ってるからね♪」グツグツ…

ピー「ふるこーす!ふるこーす!」キャッキャッ





翼(ね、ねぇ!昴くん!海美さんの料理って……!)ヒソヒソ

昴(あぁ!のり子が卒倒するぐらいだろ!そんなもんピー太に食わせるなんて、やばすぎる……!)ヒソヒソ





海美「あー翼!足りない食材、早く買いに行ってきてよ!」


昴(と、とにかくここはオレがなんとかする!ここでピー太が死んだら……未来が変わって、オレたちアイドルになれないかも!)

翼(海美さんの料理で……未来が変わっちゃうの!?わ、わかった!!昴くん、お願いね!)タタタッ








海美「いってらっしゃーい!さぁー今日はなんだか最高ケッサクが出来そう☆」


昴「さて……オレは料理はひと通りできるから、なんとか海美を……」






ガチャッ





歌織「なんだか、キッチンが賑やかねぇ……あら?」

美奈子「佐竹飯店スペシャルご馳走しま……ん?」

琴葉「美奈子、あんまり作り過ぎちゃだめ……って……あれ?」





ピー「(ビクッ)昴ねぇちゃん……あのおねぇちゃんたち、だぁれ……?」





歌織&琴葉&美奈子「その子……だぁれ?」





昴「う、うわぁ…めんどくせぇ…」








歌織「なるほど。昴ちゃんの親戚の子なのね♪」

昴「そ、そうそう!遠すぎてほぼ他人…な感じ!!」



琴葉「ご両親の用事で1日面倒見てあげるなんて、昴もしっかりしてきたのね!」

琴葉「……あ、でも昴!もしやこんな小さな子に乱暴とかしてないでしょうね?」



昴「し、してない!審判に誓って、いっさい!」

ピー「うそだぁ!さっきぼくを……むぐっ」



美奈子「うーんそれにしても……この子、誰かに似てる気がするんだけど……気のせいかな?」

歌織「言われてみれば……誰かしら……」

琴葉「例えば、今日は顔を見てない、誰かに…」ジーッ



昴「き、気のせーだよ!気のせー!ほら、ピー太。歌織と琴葉と美奈子だ。あいさつ!」







ピー「うん!よろしくね!

   歌織おねぇちゃん!
   琴葉おねぇちゃん!
   美奈子おねぇちゃん!」ニパー







歌織&美奈子&琴葉「……!?」 稲妻 ズガーーンッ!!





歌織「ねぇ、ぼく?『歌織おねぇちゃん』と、あっちでおうたの練習しよっか?」ズイッ


美奈子「すぐそこにうちの『美奈子おねぇちゃん』ちがあるの!ゲームも、美味しい料理もあるよ…!」ズズイッ


琴葉「あっちで『琴葉おねぇちゃん』とお勉強しましょう?ふたりきりの個別レッスン……ふふふっ…」ズズズイッ



ピー「え!?おねぇちゃんたち、遊んでくれるの!やったー!」キャッキャッ





昴「い、いや!いいから!ピー太はオレたちが見てるから3人とも、ちょっとキッチンから出ててくれよ!」

昴「ほら!行った行った!」オシコミー



美奈子「うー!餌付け〜!」
歌織「一緒に最高のハーモニーを届けましょ〜…!」
琴葉「ちょ、ちょっと昴!まだこの子と話が…!」




昴「んあー、暴れんな!ピー太は……海美の手伝いしてやってくれっ!すぐ戻るから!」ヤイノヤイノ…




ピー「はーい」







ピー「うみみねぇちゃん、なんか手伝うこと……って、うわ!な、何この煙!」モクモク

海美「ひゃー!ピーくん、見ちゃだめぇー!これは、その……6分火にかけるのを60分かけちゃっただけで!」

ピー「こりゃひどいや。まっくろ焦げ…!うみみねぇちゃん、お料理できるんじゃなかったの?」

海美「心意気だけは……一流シェフ…えへへ。レシピ通り、作ったつもりなのにな…」

ピー「どうしてお料理なんて作ろうとしたのさ?こんなにへたっぴなのにさ!」


海美「うっ……!ヨウシャのない言葉が……」グサリ





海美「…えっとね。昔、私のお姉ちゃんがホットケーキ作ってくれたんだ。

甘くて、ふわふわで…こんなに美味しいのを作れるおねぇちゃん、すごい!って思ったんだ♪」


海美「だから、ピーくんにおねぇちゃんっぽいことをしたいなって考えたとき、私も美味しいお料理を作ってあげたいなって思ったんだ☆」


海美「……けど」





ピー「……そっかぁ。でも、これは食べらんないよね。きっと昴ねぇちゃんも、翼おねぇちゃんもお腹空かせてるね」

海美「……うん。どうしようぅ…」ウルウル

ピー「うーん…なに作ろうとしてたの?」


海美「えっとね、イギリス料理が最先端の女子力トレンドらしくて、このスター・ゲイジー・パイと、うなぎのゼリー寄せに挑戦しようと思って!」


海美「見た目が女子力ぅーって感じで面白いよね☆」




料理本ペラー




ピー「ウッ……これ写真の時点であぶない……」

ピー「残ってる材料はイワシと卵と、かんてんかぁ」








昴「うわぁー!あの3人を連れ出すのに遅くなったぁ!!海美!だいじょう……ぶ………か?」

翼「ふぇぇーん!ウェンズリーデイルのクランベリーチーズとか、ナイティンバーワインとかどこで売ってるか分かんなかったよー!

買ってきたけどー……ってあれ?」






ピー「うみみねぇちゃん!次はいわしにお塩だよ!」

海美「うん!わかった!」ゴトッ

ピー「それお砂糖だよ!おちついて、よく見てね!」

海美「あっ、いっけない!ありがとピーくん!」フリフリ


海美「……あっ、ふたりともおかえりー!もうすぐ出来るから待っててね!」





昴 & 翼「う、うん…」




ピー「さぁ出来たよ!食べよう!」

昴「へーー!!いわしの塩焼きと、卵焼きと、みそ汁か!」

海美「えへへ。おみそ汁とご飯は間に合わなかったから、備蓄品のレトルトのだけどね!冷蔵庫には、オレンジジュースで作ったゼリーもあるよ☆」

翼「んぐんぐ……うん、思ってたよりぜんぜん普通ぅー!わたしはお肉のほうが好きだけど、お魚も美味しいー!」

昴「なんだよ海美。フツーに料理できんじゃん!心配して損したぜ!」

海美「…でも、最初に作ろうとしてたのとは全然違って、女子力皆無だけどね……あはは…」





ピー「うみみおねぇちゃん、レシピを見ながらやってるけど、気が焦っちゃって読みまちがえが多いんだ」

ピー「だから、ぼくはレシピを読んであげてただけだけで…!」


海美「料理もアイドルも、焦っちゃダメなんだね♪ やっぱり、Pは小さくなっても頼りになるね☆」


昴「デカした!ピー太!こうして昼メシにありつけて、ほんと助かったぜ」髪クシャクシャ〜

ピー「えへへ、そうでもないよ!」



翼「……あれ?でも弟くん、箸があんまり進んでないね?お魚苦手?」

ピー「そうじゃないんだけど…」

ピー「ぼく、お魚の骨って上手にとれなくておかあさんから食べ方が汚いって叱られるんだ…」シュン…


海美「あ♪じゃあ私にまかせて! …ほら、チョチョイっと…はい、出来た!」

ピー「わっ、すごい!きれいに身だけになった!」

海美「バレエって、指先まで神経使うからね!箸の使い方なんかお手の物だよ〜。

海美「はい!お魚の身、あーん!」



ピー「あ、あーーん」パクッ


海美「どう?美味しい?」






ピー「んぐ……うん!美味しい!

   うみみおねぇちゃん、ありがと!」ニパー







海美「……っ!?///(ゾクゾクゾクッ)

う〜〜っ!!!弟って……可愛すぎっ!!
おねぇちゃん、もっと食べさせてあげるね!!

はい、あーーん!(ポイッ)
はい、あーーん!(ポイッ)
はい、あーーん!(ポイッ)」




ピー「もがっ!もがっ!うみみおへーひゃ、もうはいんな…」





海美「う〜!困ってる顔も可愛いよぅ!!/// 何でもしてあげたくなっちゃうっ!

なに?おねぇちゃんのも食べたいって?しょうがないなぁ〜!///」



翼「もぐもぐ……ところで、海美さん。

わたしが買ってきたチーズとかはどこに使ったんですかぁ?」



海美「あ……」



ー 繁華街 ー




翼「もー、海美さんひどい!あれだけ苦労して買ってきたのに、結局お料理に使わないなんてー!」ムスー

海美「ご、ごめんね!翼〜!また今度、作ってあげるから!…ね?…ね?」

翼「そ、それはエンリョーします」

昴「…で、その代わりに翼の行きたいとこって、ココなのかよ?」




翼「そう♪弟くんとショッピングいくの、夢だったんだぁ♪ねぇ、ねぇ!どこ行く?弟くん!」

ピー「と、都会ってすごい……ぼく、2つとなりの街までしかいったことなくて、人がたくさんで…目がまわる……」

昴「本人は楽しんではなさそうだけどな…」



海美「あっ♪ほら、翼!みてみて!今流行ってる黒いぷちぷち入りジュースのお店!」


翼「ほんとだ!わたし、ずっと気になってたんだぁ♪ねぇねぇ弟くん!あれ飲もうよ!」


ピー「うぷ……ぼく、お魚でお腹いっぱい……」


翼「えー、弟くん!おねぇちゃん、あれ今飲みたいなぁ。


お買い物で疲れてへとへとで、甘いもの飲みたいし。
ねぇねぇ、おねぇちゃんがご馳走するから〜!



……ダメぇ?」




昴 「でたな」
海美「でたね」




ピー「う、うーん……」

ピー「でもぼく……やっぱりお腹いっぱいだよ…。おいしいものはおいしく食べないとダメだって、おかあさん言ってたよ」

ピー「また今度にしようよぅ…」ウルウル




翼「……え〜!うーん………」





翼「……わかった。わたし、今はおねぇちゃんだし、ガマンする……!」グッ




昴「……おっ!なんかいつもと違うパターンだぞ!」
海美「翼がガマンした!?すごーーい!!」




翼「ちょっと、昴くんも海美さんも、聞こえてるんですけど!わたしをなんだと思ってるんですかぁ〜」

翼「わたしは、弟くんと楽しくジュースを飲みたいだけ!


だ・か・ら!
弟くんは、今度はぜーーーったいジュースを一緒に飲むこと!
それまでは、わたしも飲むのガマンするから。



これはおねぇちゃん命令っ!約束だよ!


……ね?」頭ナデナデ


ピー「あ♪……うん、約束!えへへ!」



昴「おい、なんかさ……」ジーン
海美「うん、なんか……いいね、翼♪」





翼「…じゃあじゃあ、おねぇちゃんを待たせるからには、次は弟くんにジュースご馳走してもらおうかなぁ?」

ピー「えぇ!?1杯800円……!?お小遣い足んないよぅ…」


翼「……あっ♪ほら、あそこのブティック!新作だぁ〜可愛いー!弟くん行こ、行こ!」

ピー「……翼おねぇちゃん、はやいよぅ!待って、置いてかないで〜!」メソメソ






昴「あはは!結局…」

海美「いつもとおんなじ、だね♪」






ー 765プロ ライブシアター 控室 ー



翼「楽しかった〜!弟くんに似合う服たくさんあるから、着せかえ大会しちゃったね♪」

ピー「もう……お着替え疲れた…」ズーン

昴「ありゃりゃ……フルイニング投げたあとのピッチャーみたいな顔してんな…」





昴「……ん?ピー太、ちょっと帽子貸してみ」

ピー「……?はい、昴ねぇちゃん」

昴「ん……あ、やっぱり。これワッペン取れかけてるな」

ピー「え!ホントだ……!どうしよう……おかあさんに言わなきゃ……」

昴「毎日かぶってりゃそうなるよなぁ……。


  ……よっしゃ!オレにまかせろ!」







翼 & 海美 & ピー「ドキドキ……」

昴「ちくちく……きゅーーーっと……! よし!いっちょあがり!どうだ、ピー太」

ピー「わー!すごいや!取れかかってたのがしっかり縫われてる!」

海美「すごーーい!すばるん、お裁縫もできるんだね!」

昴「へへ……!恵美とか美咲に時間あるときに教えてもらってたんだ!」
昴「兄ちゃんたちのユニフォームとかボタンよくとれてるし、覚えておいて損ないかなって!」




翼「なんか昴くんって、意外と家庭的〜!」

昴「これでも公式プロフィールの特技は変化球と、家事全般なんだぜ!」フンス

ピー「プッ!変化球投げられて、家事もできるなんて昴ねぇちゃん、やっぱり面白いね!」



昴「な、なんだとー!また痛い目にあいたいか!?」手ワキワキ

ピー「ひぃん!ごめんなさ~い!」





昴「……ふん、これでもガサツで男っぽいのは分かってるつもりなんだぜ。

だからアイドルやって、ちょっとでも女の子っぽくなれるように努力中なんだ」




昴「……」





昴「な、なぁピー太。やっぱ、自分のこと『オレ』っていう女子って変わってるのかな?」

ピー「うん!変わってる!ぼくのクラスの女子では言ってる子、見たことない」

昴「そ、そっか。やっぱ、女の子っぽくはないよな。ははは……はぁ…」






ピー「……でも、ぼくは昴ねぇちゃんの『オレ』、変わってると思うけど、ヘンじゃないと思う!」

昴「へ?どういうことだよ?」




ピー「だってクラスに変化球投げられる女子、いないもん!あと帽子直せるのも!」

ピー「昴ねぇちゃんがオレって言うの、すごい似合ってて、カッコいい!」




昴「ふ、ふーん…オレが『オレ』っていうの、似合ってんだ……!」

ピー「うん!似合ってる!あと……その…」




ピー「後ろのポスターみたいに、アイドルの服着た昴ねぇちゃんは、女の子らしくて可愛いとおもうな♪」ニコッ




昴「なっ!お、お前!なに言ってんの!/// は、ハズすぎだから!急にそういうこと言うの、全然変わってないっ!///」

昴「つか、その歳からみんなにそんなこと言ってんのかよ!?悪い口は、こうしてやる!」ほっぺビローン





ピー「い、いふぁい!ほめたのに、なんえ〜!」





翼「あ〜!昴くんだけずるーい!弟くん、弟くん!わたしはどう?可愛い?」

海美「わ、私は!?私は!?ピーくん!私、体には自信あるんだけどっ!」


ピー「えっと……みんな違って、みんな可愛いとおもう!」



翼「むー、玉虫色のかいと〜!じゃあじゃあ、どんな女の子が好み!?」

海美「髪型は!?私、髪なら長いし合わせられるかも!」

ピー「い、いやあの、その……」ヒヤアセ





昴「はいはい、困ってんだろ!それくらいにしとけよ!」


昴「それより、日が傾いてきた。じきに日暮れの時間だぜ」

翼「あ……弟くん、もう帰らなきゃいけないんだ…」

海美「でも、帰るって言ってもどうやって?」

昴「そういやそうだな。そういうとこ、全然説明なかったもんなぁ」

翼「ねぇ、弟くん。

ここに来る前は公園にいたんでしょ?
公園でひとりで何してたの?
帰るためのヒントになるかも!」



ピー「そ、それは……」



翼&昴&海美「ん〜?」







ー 劇場近くの公園 ー



ピー「んーーしょっ! んーーしょっ!」ピョンピョン

昴「ほらっ!蹴り出しが甘いぞ!」

海美「腰が引けてるよっ!ん~~って前に!」

ピー「んーーしょっ! んーーしょっ!」ピョンピョン




翼「そっかぁ。弟くん、ひとりで鉄棒の逆上がりの練習してたんだね」

ピー「うん……もうクラスでできないの、ぼくだけなんだ。近所のひとつ下の女のコもできるようになってて……

……んしょっ!」ピョン



ピー「んあーーっ!!ダメだできない!これじゃあ、また放課後に先生と居残り特訓だよぅ…」メソメソ…


昴「泣くなピー太!練習すれば、絶対できようになる!」

海美「そうだよピーくん!おねぇちゃんと頑張ろう?」

ピー「できないものはできないんだい!そんなこと言って、おねぇちゃんたちは逆上がりできるの!?」



昴「やるの久々だけど…いち・に・さんっ!」クルッ

翼「これくらいなら…ワン・ツー・スリ〜っ!」クルッ

海美「たしか、こう…アン・ドゥ・トロワ〜!」クルッ



ピー「ふ、ふこーへいだ……!」



ピー「……なんでぼくだけ出来ないんだろう。

何回も何回も、練習してるのに、そのたんびに失敗…。

どうせ次だって失敗だし、意味ないよ…。
おんなじことばっかり繰り返すの、ぼく疲れちゃったよ…」


翼「……」

翼「ね、ねぇ…海美さん、昴くん。もうやめよう?弟くん、疲れて動けなくなってるよ!」



昴 & 海美「……」



昴「…いや、だめだ!」
海美「…うん、そうだね!」



ピー「そんな…。逆上がりすることがそんなにだいじなの?将来、なにか意味がある事なの?」



昴「……ピー太!ほら、グローブ!(ポイッ)


さぁ、構えろ!」


ピー「……!」

昴「このボール、よく見とけ!


  それっ!」シュッ



ピー「変化球だ……っ!(スカッ)あっ……」球コロコロ…



海美「ピーくん!私の体の動きも見てて!

はいっ!アン・ドゥ・トロワ!海美フェ〜ッテ!」スススー


ピー「わぁ……きれいなステップ!」




昴「……オレの変化球もさ、はじめはTVで見てカッコいいからやってみたんだけどさ、これが何回やってもできなくてな」



海美「私もね、始めは基本的なステップができなくって、バレエの先生から何度も叱られたんだよ!

『もっと指先から頭のてっぺんまで、神経を行き届かせて〜』って!」


ピー「……そうなの?」



海美「うん!……できない自分が悔しくて、叱られるのがイヤで、いつもひとりでベソかいてたんだ」

海美「……でもそんな時ね、居残りで先生がステップ見てくれたり、お家でお姉ちゃんが一緒に練習してくれたんだよ!」



昴「オレも、チームメイトとか兄ちゃんが練習付き合ってくれるようになったんだ。何日も、何日もさ…!」

昴「……最初はカッコつけで始めたけどさ。

  ……でも。いつからか『こいつらのために投げたい』って思うようになったんだ」



海美「……ねぇ、ピーくんが逆上がり出来るように、一緒に練習してくれた人たちはいたよね?」

ピー「……うん。先生とか、お父さんとか、近所の娘とか…」


昴「……確かに、逆上がりができたって何も役に立たないかもしれないけどさ。


でも、みんなピー太が出来るって信じてくれてるから、練習に付き合ってくれたんだぜ。何回も失敗してもさ!
そんな奴らにクルッと逆上がりしてるとこ、見せたくないか?」



翼「……」

ピー「そっか……。出来るかな?ぼくに」




昴「できるさ!みんな、絶対喜んでくれるぜ!オレも、初めて変化球で打者討ち取ったときのチームメイトの嬉しそうな顔、まだ覚えてるんだ♪」

海美「私もできるようになった時、すっごく自信ついたもん!やればできるんだって、バレエすっごく楽しくなったんだ☆」



海美「……それにピーくんは、今も1人じゃないよ!」



翼「うん…そうだね。
おんなじ失敗の繰り返しに見えるけど、きっと一回一回は違ってて、少しずつ前に進んでる…って誰かが言ってた!
日暮れまであとちょっとだけど、がんばってみよう?」




ピー「わかった!ぼく、やってみるよ!今はおねぇちゃん達が見ててくれるからっ!」






ピー「アン・ドゥ・トロワっ! アン・ドゥ・トロワっ!」ピョンピョン

昴「んー、惜しい!あとちょっとなのに!」


翼「こう、足をズサッーて引いて、思いっきりえーーいっ!ってピョンってすれば……。

ふぇーん!教えるの難しい〜!未来みたいになっちゃう!」


海美「リズムはいいし、蹴り出しもいいし、足も上がってる。……きっと、あとちょっとなんだけど」

昴「ああっ!あと少しで日の入りだ!行けるか、ピー太!」



ピー「はぁ、はぁ……!大丈夫!おねぇちゃんたちが、応援してくれてるからっ!」

ピー「い、いくぞっ……」ギュッ




海美「……っ! ちょっと待って!私、分かったかも!」

ピー「…え、なに?」

海美「ピーくん、飛ぶ時に目を瞑ってるんだよ!」

ピー「え…そう…なのかな」

海美「多分、ピーくんの苦手意識からじゃないかな」

翼「……でも、目を瞑ってることと関係あるの?」

海美「大アリだよ!目を瞑ってるってことは、頭が動いてないってこと!」

海美「頭ってね、体でも重たい部分なんだよ。確かに回るためにはおへその方を見るのは大事なんだけど、ずっと見てると…」


翼「体は回ろうとしてのに、頭が邪魔してるんだ!」


海美「そういうこと!逆上がりも、目線の移動が大事。

足が上がりきったとき、目線をおへそから足先に…ううん!首を上にぐわっと向くようにすれば!」


昴「頭の重さのぶん、勢いがついて回れるってわけか!」


ピー「目をしっかりあけて……頭を……!分かった!やってみる…!」


ピー「ふぅ〜………よしっ!」キッ




ピー「……アン!」




海美& 昴 & 翼「ドゥ!」





ピー「トロワ……っ!」





バッ




昴「足は上がってる!あとは!」

翼「頭を……」

海美「上げてーーっ!」


ピー「んーーっ!」




クルッ




海美「…」

昴「…」

翼「…」


ピー「……!」

ピー「おねぇちゃん!ぼく……っ!!」



海美「……やった」



海美「やったやったー!逆上がり、できたよぉ〜!!頑張ったね、諦めなかったね!グスッ…おねぇちゃん、嬉しいよぉ〜!わ〜〜ん!!」抱キツキ

昴「スッゲーーっ!!代打満塁サヨナラホームランだぜ!!やれるって信じてたぜ、ピー太!!」背中バンバン

翼「やった〜!弟くん!すごーーい!!ちょっとカッコよかったかも!」頭ナデナデ



ピー「お、おねえちゃんたち、苦しいよ……!


えへへ、ありがと!
……でも、全然カッコよく出来なかったから、また練習しないと……!」





???「ん~なんだかすごくいいシーンねぇ〜!」



翼&昴&海美「だ、だれ!」


魂ちゃん「あら!この出会いの仲人の魂ちゃんじゃない!忘れないでよね♪」



ピー「あ、夢のおねぇさん!」

ピー「そっか、もう……」


魂ちゃん「ええ、そう。もう日暮れ。黄昏時。不思議で楽しい時間はおしまい。

約束の時間よ?」




昴「そんな……まだオレたち、今日会ったばっかなのに。やっと、逆上がりできたばっかなのにさ!」

翼「もうお別れなんて、早すぎ!まだまだ、一緒に行きたいところ、いっぱいあるのにっ!」

海美「ピーくん……おねぇちゃん、寂しいよぅ…。もっとたくさんお料理作ったり、遊んだり、お喋りしたいよぅ……」





ピー「おねぇちゃんたち……」

魂ちゃん「気持ちはすごく分かるけど。でも、この子は元のところに帰してあげないと」

魂ちゃん「ほら、お別れよ。おねぇちゃんたちに、挨拶なさいな」




ピー「……うん。翼おねぇちゃん、昴ねぇちゃん、うみみねぇちゃん。今日はたくさん遊んでくれて、ありがとう!」



ピー「ぼくね。ひとりっ子で、ずっときょうだいが欲しかったんだ。

だから、今日いきなり3人のおねぇちゃんが出来て、最初は驚いたけど、すっごくうれしかったんだ!」




ピー「昴ねぇちゃんは、変化球投げれるし、お裁縫もできて、カッコいいし!

うみみねぇちゃんは最初の格好にはビックリしたけど、すごく優しくて、たくさん褒めてくれて!

翼おねぇちゃんはちょっとイジワルだけど、オシャレでジャンケン強くて、いろんなところに連れてってくれた!」




ピー「ぼく、まだよわ虫だけど、おねぇちゃん達みたいにカッコよくなりたい!」




昴「オレ達みたいにって……オレをお手本にすんのか!?

だ、ダメ!オレ、ホントは全然自信なんかなくて!カッコよくなんかほんと、全然ないんだ…」



翼「わたしも、レッスンサボっちゃったり。自分のことばっかりで、しっかりしてない…」



海美「うっ、私も…早とちりでドジばっかりで、全然おねぇちゃんらしくない」





ピー「……じゃあさ、約束しようよ!」

ピー「次に会うときまでにぼく、たくさん練習してもっと上手に逆上がりできるようにしておくからさ……」


ピー「だから、おねぇちゃんたちは、今よりもっとカッコよくなってよ!」



翼「……っ!」
昴「ピー太、実はな…」
海美「……次は……その…」




ピー「うん。なんとなく分かる。次会うのはずっと、ずぅっと…」




ピー「…だからぼく、言うんだ。『またね!』って!

『またね!』はお別れじゃなくって、約束だから。

『またね!』はまた会える、おまじないだから!」





ピー「…次に会うぼくは……ううん!」





ピー「……おれ、もっと頼りがいのある弟になってるから!だから、おねぇちゃんたちも……っ!」





昴「……分かった。約束、だな!」

翼「…うん、約束。わたし、もっと自分のことしっかりする!」

海美「グスン……ピーくん、分かった…。おねぇちゃん約束守れるように、お料理、頑張るからねっ!」




ピー「……よかった。ぜったい…ぜったいだよっ!」



ピー「じゃあ、おねぇちゃんたち……!もう、行くね?」



翼「弟くん…」

昴「ピー太…」

海美「ピーくんっ…」



翼&昴&海美「またねっ!」




ピー「うんっ!また…ねっ!」





日の入り前、陽がひときわ眩しく光った瞬間、消えてしまった少年。
最後に、笑顔だけをその場に残して。


3人は何を言うでもなく、藍色に染まっていく空を身を寄せ合って眺め続けたーーー








ー それから ー




P「やれやれ……事務所で溜まった事務仕事をしようとおもってたら……」


P「朝から昴とキャッチボールなんて…なっ!」シュッ


昴「へへ♪別にいーじゃん!休みもどーせ1日ゴロゴロしてただけなんだ…ろっ!」シュッ


P「うっ、鋭い……球速も」シュッ





昴「…なぁ、プロデューサー」

P「ん〜?」

昴「Pはさ、いつから自分のこと『俺』っていうようになったっ?」シュッ

P「……ん〜?そんなの覚えてないな……ずいぶん前からってのはなんとなく……っ!」シュッ

昴「そっか……そうだよな」



昴「……オレさ、やっぱ自分のこと、『オレ』って言うことにするよっ!」シュッ

P「……前の握手会のことか?別にそんなこと、言わなくたってっ!」シュッ

昴「ううん!これはピー…、プロデューサーに聞いてもらいたいんだ」



P「……」




昴「オレってさ、女子なのにガサツだし、野球好きだし、格好だって無頓着だし…」

昴「でもさ」

昴「こんなオレを、カッコいいって…可愛いって言ってくれたやつがいたんだ!

そいつのためにも、オレが胸張って自分のこと、『オレ』っていいたいんだ!」



P「……そうか。ファンの人がそう言ってくれたなら、期待に答えるのは大切なことだな」

P「でも、一番大事なのは……」



昴「……オレ自身の気持ち、だろ?分かってるよ、P!」

昴「オレ、もうブレない。だって、オレが迷ってたらナマイキなアイツに、また笑われちゃうからさ!」ニカッ




昴「……だから。


  次投げる一球は……
  そんなオレの……決意の一球だぜっ!」


P「な、なに!?」





昴「さぁ構えろっ!ちゃんと受け取ってくれよプロデューサーっ!真っ直ぐな、オレのキモチっ!」





昴「……ふっ!!」シュッ




P「………っ!」






パシッ‼






昴「……あっ♪取れるようになったんだな!」

P「まぁな!野球は昔少し、な」



P「……でもな、真っ直ぐな気持ちをスライダーで投げるやつがあるかっ!俺でなきゃ取り逃してたぞ!」

昴「へへ♪いーじゃん!ちゃんと取ってくれたんだし!」

昴「オレのキモチ……バッチリ受けとめてくれてサンキュな、プロデューサー!」




昴「それにしても……」

P「……?」





昴「Pの『俺』、なかなかサマになってるぜ?

……ま、『オレ』ほどじゃないけどさ♪」ウィンク




ー 劇場 キッチン内 ー



海美「ふんふふーん♪はいきんっ♪ふっきん♪だいきょうきーん♪」トントン…



P「お、おい海美!土鍋、もう吹きこぼれそうじゃないか!?あぁ!あっちの出汁もっ!」



海美「焦らない、焦らない〜♪アイドルもお料理もね、焦ったらダメなんだよ!ほらほら、座って見ててよっ!」




P「だって急に『お昼ごはん作らせて!』って言ってきて……。その、いろいろ心配にもなるだろ!」



海美「確かにちょーっと失敗しちゃったけど、前あれだけたくさん食べてくれたのに」トントン…

P「……前?そんなことあったっけ?」




海美「あ……そっか。覚えて、ないんだ……」

海美「ピーくん…」…ジワッ




P「お、玉ねぎ染みたか?」



海美「……グスン……うん!そうみたい。
でも、大丈夫!メソメソしてるなんて、カッコよくないもんね!えへへ!」






……




P「焼き魚に、味噌汁、ほうれん草のおひたし、土鍋で炊いたごはんか…」

海美「うん!女子力はないかもだけど、しつじつごーけんなお料理のつもり。ど、どう?」

P「ズズ……うん。出汁もちゃんと取れてるし……ごはんもピカピカだな。これは大したもんだ!」

海美「えへへ…お料理本の通りに作ったんだ。何回も読んで、たくさん予習したんだ♪」

P「そりゃ大事なことだな」


海美「……うん。私、ピーく……ううん!」

海美「ある人と、約束したんだ。次会うときには、もっともっと美味しいお料理を食べさせてあげるって!」


海美「そのためには、まず基本から。女子力アレンジは、それからかなって!」

P「そ、そうか……察するにそのある人とやらは、海美の料理を食べたのか……。か、体は大丈夫なのか?」


海美「うん!私のお料理をね、いっぱい食べてくれたんだ!美味しい、美味しいってね☆」

海美「今はね……(まじまじ)…うん!私よりもうーーんとおっきくなってるよ、あはは♪」



P「そ、そうか。元気ならいいんだ…」





海美「ところでプロデューサー?焼き魚…」

P「うっ!し、仕方ないだろ!魚は好きだけど、昔からうまく骨を取れなくて…」

海美「お母さんから叱られてたんでしょ?そういうところ、昔から変わらないんだね、あはは!」


海美「ほら、お皿貸して!チョチョイっと…はい、出来た!」



P「お!あっという間に白身だけになった!器用なもんだなぁ」





海美「はい、じゃあ…あーーーん♪」ズイッ

P「いやいや、あとは自分で食べるから。皿返してくれ!」



海美「むー、だめ!ほら、おねぇちゃん命令っ!お口開けて、はい、あーーん♪」



P「だれがお姉ちゃんだ……。うーん、周りには誰もいないな?」キョロキョロ

P「しょうがないな…」




P「あ、あーーん」パクッ

海美「……ど、どう?美味しい?プロデューサー…」







P 「んぐ……うん!美味い!

   海美、ありがとな!」ニコッ






海美「あ…」






P「ん?どうした海美?」




海美「……その顔」




海美「いっしょ、だ……」ポロポロ…





P「ど、どうした!なんで泣いてるんだ海美っ!」




海美「だって……だってだってっ!ヘンなところ、変わらなさすぎるからっ…!」


海美「もう、ずっと会えないって……食べてもらえないって、思ってたから…!」ポロポロ…




P「な、なんのことかはわからんが……。俺で良かったら、また料理食べてやるから、な?」




海美「……うん、うん!

私、もっともっと勉強するから!
待たせちゃった分、これからいっぱい作るから!たくさん食べてね?約束だよ?」



P「お、おう……!男に二言はない……っ」





海美「グスッ。えへへ……あとね、プロデューサーっ!」



海美「今度はお料理して欲しい!私と……うみみおねぇちゃんと、一緒にっ!」





ー 劇場 屋上 ー


翼「1・2・3! ターン!キメッ!」

翼「んー、もう少し速く?」

翼「1・2・3! ターン!キメッ!」





ガチャ





P「……翼。ここにいたか」

翼「あっ、Pさん!お疲れ様でーす!」

P「おつかれ。さっき、レッスン見てたぞ。なかなか見事なステップだったけど、そこのパートはもう覚えたんじゃなかったのか?」

翼「はい!もう動きは……覚えられたかな?」



P「そうか……」まじまじ

翼「……な、なんですか?Pさん。わたしが自主練してるの、そんなにヘン?」




P「……はは、悪かった!ヘンじゃないさ。定期公演前だし、自主練自体はいいことだ」

P「ただ、さっきのレッスンも今練習してるときも、翼の顔がいつになく真剣に見えてな」




翼「……あはは♪なんかPさんに口説かれてるみたーい!」

P「こ、こら!茶化すんじゃない!」

翼「はーい!ごめんなさ~い!」



翼「……」



翼「……ねぇ、プロデューサーさん」


翼「わたし、遠くに行っちゃった男の子と約束したんです。次に会うときは、もっとしっかりしたおねぇちゃんになるって」


翼「あれから、昴くんはお裁縫、海美さんはお料理を頑張ってる。大変だって笑ってるけど、なんかふたりとも、キラキラしてる」


翼「じゃあ、わたしが今、頑張れることを考えたら、アイドル活動しか思い浮かばなかったんです。

さっきのレッスンで、覚えたと思ってたステップを何度繰り返しても。今のじゃ足りない、もっと良くできるかも、って全然、納得できなくて」


翼「さっきレッスン終わったばっかりだけど、なんか……いても立ってもいられなくなって」


翼「それで、ここで…」



P「なるほど、な」



翼「今まで、こんな事なかったから、戸惑い中……って感じ。あはは…」


P「……そう感じるのは、きっと翼の想いの強さの現れ、みたいなものじゃないか?」

翼「想い…?」




P「今までの翼だって、レッスンも仕事も、よくやっていたと思う。

でも、それに『誰かを想う気持ち』が宿ったから、今までのレベルに満足できなくなったんだろう」


P「……人はな、何かを強く想って行動すると、自分が勝手に決めてたハードルなんかラクラク飛び越えて、もっとずっと高く飛んでいける」

P「そんな、不思議な力があるんだぞ!」


P「今の翼にはわからないかもしれないけど、俺には翼にそういう力が宿り始めている気がしたんだ」





翼「Pさんも、そんな経験あるんですか?」



P「……」

P「さぁ、な!そんなことも、あったかもな。随分昔のことだから、もう忘れちゃったけどな」




翼「そっか……なれるかな?わたし。しっかりした、おねぇちゃんに」



P「なれるさ!俺は翼の真剣な顔を見て、そう感じたよ」



P「きっと、その約束した男の子も、遠くで翼が頑張っているのを見てくれているさ!」

P「だって、約束は守るだけじゃなくて、守ってるのを確認するまでが約束だからな!」



翼「約束…」



翼「…うん。弟くんが……プロデューサーさんが見ていてくれるなら、わたしっ!」


P「ああ、俺はいつも後ろから見守ってるからなっ!」




P「……それにな。翼は想うだけじゃなくて、想われてもいるみたいだぞ?」

翼「え?」

P「たとえば……さっきから扉の影からチラチラ覗いてるふたりとか!」





???「うわっ!やっべ、バレてるし!」

???「わわっ、待って!バランスが……」

???「わー、バカ!たおれ……っ!」



ドシーン



翼「あっ!昴くん、海美さん!」




昴「てて……バレちゃってたかぁ。レッスン終わってから、3人で帰ろうとしたらさ」

海美「翼がいないから、探しに来たらふたりが話してて!…でも、ほとんど聞こえなかったけどね!えへへ」


翼「ふたりとも……」


昴「まったく、水くせーぞ翼!居残り特訓なら、言ってくれたら付き合ったのにさ。オレたち同じ釜の飯食った仲、だろ?」

海美「あのご飯レトルトだけど…。でもでも、特訓もひとりでやるより、みんなでやったほうが絶対楽しいよね♪」



P「…な?翼が誰かを想うのと同じくらい、翼は誰かに想われてるってことだ。まるで、家族みたいにな!」



翼「…クスッ、そうみたい! でも、Pさんはなんで屋上に?」

P「お、俺はその…翼の珍しい姿を茶化しに来ただけだ!」


翼「はーい、そういうことにしておきますね♪」





翼「……」

翼「…ありがと。大きい弟くんと、ふたりのお姉ちゃん…♪」ポツリ



P & 海美 & 昴「ん?なにか言った?」

翼「クスッ…何でもありませーん!」




翼「それより…ふたりとも、ちょっと耳貸して!」


ゴニョゴニョ…


海美&昴「……うん……うん。あー、確かに…」ニヤリ




翼「……プロデューサーさん♪」

昴「ちょっとオレたちに…」

海美「付き合ってほしいところがあるんだよねぇ〜?」


P「な、なんだ……? 」




ー 劇場近くの公園 ー


P「で、鉄棒の前に連れて来られたわけだけど…」



昴「決まってんだろ!アレだよ、アレ!」

海美「Pっ!私、信じてるからね!アレができるようになってるって!」

翼「Pさぁーん?約束のアレ、見せてくださーい!」


P「あ、アレとは……?」




海美 &昴 &翼「逆上がりっ!」




P「う、うわっ!3人からすごい圧が……!」

P「さ、逆上がりをすればいいんだな……」鉄棒ニギリ

P「うわぁ……すごい久々だ……何年ぶりだろうか…」



海美 ウズウズ…ウズウズ…

昴 ハラハラ…ハラハラ…

翼 ドキドキ…ドキドキ…



P「うっ……し、視線が痛い…。い、いくぞっ」


P「……ン……ゥ………ロワッ!!!」 バッ



クルッ



海美&昴&翼「……っ!」


P「……ふぅ!こんなもん、かな?」



海美「……すごいすごーーーい!!逆上がり、出来るようになったんだね!!約束、守ってくれたんだねっ!大好き~!!!」抱キツキ〜

昴「すっげー!完璧な逆上がりだったぜっ!!男を見せたな、プロデューサーっ!」背中バンバン

翼「あはは!まぁ、当然だよね?だって、わたし達の弟くんだもん!」頭ナデナデ







P「うおっ……お前ら苦しい!それに逆上がりなんて、昔から出来るからし、そこまで喜ぶことでも…」


昴「いーや、これはめでたいことだ!ビールかけでもやってやりたい気分だぜっ!」


海美「そうそう!がんばったPに、なにかしてあげたいよぅ!うみみん特製女子力ドリンク、作ってあげようか!?」


翼「んー……あっ♪そうだ!じゃあ明日……っ!」





翌日

ー 繁華街近くの公園 ー


P「ジャ~ンケ~ン…」

翼「ポンッ!」



P「うっ!また、負けた……」


翼「はい、わたしの勝ちぃ〜!なんで負けたのか、また10年くらい考えてきてくださいね〜♪」



P「まさかジュースを買うのに30分も待つなんて…黒いプチプチ入りドリンクか……」



P「待ってる間の暇つぶしのジャンケンも10連敗…。しかも、俺の逆上がり成功記念なのに、なんで支払いが俺持ちなんだ…」ズーン


翼「えへへ~、いいじゃないですか〜!これもちゃーんと約束、ですからね♪」


P「……まぁ、いいけど。

しかし立派な桜並木だ…!繁華街からすこし離れた公園に、こんな花見スポットがあったなんてな」



翼「わたし達がジュースの買い出し行ってる間、ふたりが花見の場所取りしてくれてるらしいけど、どこだろう…」

P「ああ、そうだな…」キョロキョロ

P「…ん?」

翼「Pさん、見つかったんですかぁ」

P「いや、ちょっと、な…」



少年「んーーっしょ!んーーっしょ!」ピョンピョン

少女「ほらほら、そんなんじゃ逆上がりできないよ! 足をこう、えいっと上げるんだよ!」

少年「そんなこと言ったって!無理だよ、姉ちゃん!」ピョンピョン

少女「これはまたおやつはいただきかな〜?」

少年「それはヤ!んーーっしょ!んーーっしょ!」ピョンピョン







翼「なんか、見た光景……」

P「これだけは、いつの時代も変わらないなぁ…ははは!
がんばれ!少年っ!」

翼「ねぇ。Pさんも、あんなふうに出来るようになるまで練習したんですか?」

P「そう…だな。おれはクラスでもできるようになったのが、ずいぶん遅い方でさ」

P「でも、そんなとき……」


P「……」


P「ふっ。いや、なんでもない!ただの夢の話さ。それもかなり荒唐無稽な話だ」



翼「ふーん…」



昴「おーーい!!P、翼っ!!こっちこっち!」

海美「もー!遅いよ、ふたりとも!」

P「お、ふたりとも悪かった。……わぁ、いいところに陣取ったなぁ!桜が満開だ!」

昴「さぁさぁ、さっさと飲み物回して……せーのっ!」








全員「カンパーーイ!」







翼「んぐ……うん♪ジュース、美味しいですね!Pさん♪」

P「ああ…もちもちしてて、面白い食感だな!」


海美「ほら!前失敗したパイ、作ってきたよ!この見た目の女子力……すごくない!?」


P「ひえっ……無数の魚の頭が……ゆ、夢に出そう……」

昴「このランチョンマットもオレが作ったんだぜ!順調に上達中だぜっ!」



翼「んぐ……あ、ところで昴くん、海美さん!
Pさん、なにかわたし達に隠し事があるみたい〜!」




P「……え?いや、さっきの話は別に隠してるわけじゃなくて、人の夢の話なんかつまらんだろうと…」




昴「へー!Pの夢の話か!それは気になるなぁ」

海美「私もー!聞きたい聞きたーい!」

翼「……だ、そうですよ〜?」






P「……といっても、もう10年以上前の話だからもう随分、記憶もおぼろげだけどな」



P「俺に、1日だけお姉ちゃんが3人できる夢だよ」








海美 & 昴 & 翼「……」(顔を見合わせる)




海美 & 昴 & 翼「……プッ、あははははっ!!」




P「なんだなんだ、3人して…」




昴「……さぁ、プロデューサーっ♪ 話してくれよ、その夢の話!」




海美「私ね、聞きたいこととか、聞いてほしいことがね、いっーーーっぱいあるんだ♪」




翼「おねぇちゃんには隠し事は禁止っ!覚えてるだけ、ぜーんぶ話してもらいますねっ♪」








海美& 昴& 翼「これはおねぇちゃん命令だからねっ♪」











全員末っ子グループのお話でした。
普段は妹なアイドル達がお姉ちゃんになったとき、どんな表情をするのかを考えてみました。
長くなってしまいましたが、お付き合いありがとうございました。


皆様のお暇つぶしになれれば、幸いです。



また、私の過去作のまとめです。
お暇でしたら、ぜひ。
https://www.pixiv.net/member.php?id=4208213

お姉ちゃんっていいね...
あと劇場の魂は便利、乙です

>>1
高坂海美(16) Da/An
http://i.imgur.com/xnXzR1B.png
http://i.imgur.com/10nAsBg.jpg

永吉昴(15) Da/Fa
http://i.imgur.com/t6a4aJ8.jpg
http://i.imgur.com/zjaRrbK.png

伊吹翼(14) Vi/An
http://i.imgur.com/jYD95ta.jpg
http://i.imgur.com/gA6ilqR.png

>>27
桜守歌織(23) An
http://i.imgur.com/ah2Judv.png
http://i.imgur.com/vGvqLjI.png

佐竹美奈子(18) Da/Pr
http://i.imgur.com/uKPOZmh.png
http://i.imgur.com/H8nI7OX.jpg

田中琴葉(18) Vo/Pr
http://i.imgur.com/Cy6VJVQ.png
http://i.imgur.com/xUswnEt.jpg

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