提督「……辞めたい」 (1)

着任後から一年間が経ったある日、提督は鎮守府近くの病院の病室に居た。誰かに階段から突き落とされた結果、骨折してしまったのだ。 犯人は以前として見つかっていないものの、艦娘の誰かというのは明らか。といっても一年間もの間、前任のせいもあり、艦娘達から酷い風評被害を受け、無視や陰口、暴力等が日常的に行われていたのでいつかこうなるとは提督も分かっては居た。これまで落ちぶれていた艦娘達の為に尽力してきた提督だったが、ついにこの事件がきっかけで愛想を尽かしてしまう。


 不意に、そんな弱音を病室のベッドの上で吐き出しまった。
 これまで色々なことを、見舞いに来てくれた一人の艦娘である大和と話し込んでいたが、俺は一通り会話が終わると、自然と口からそんな弱音を溢していたのだ。

 何かにすがるような思いだった。会話が終わった後に訪れた静寂が、元々疲弊しきって極限まで心細くなった心をさらに寂しくさせたのだろうか。

大和「……提督」

 俺の言葉に、大和が先程までの会話で淑やかに微笑んでいた表情を暗くさせる。

提督「……いや。ごめん。今のは、ちょっとした冗談って奴だ。……まだ二十二才という若輩者が、しかも提督の立場に立っているというのに、こんな弱音を吐くわけにはいかない。……だから、今の言葉は無かったことにしてくれ」

 やはり病室に居ると心細くなるのだろう。普段はこんな弱音は吐かなかった筈なのに、こうして無意識に吐いてしまった。気も滅入っている。

 普段の大和は俺のことを凄く思いやってくれる艦娘だ。だから、そんな俺のちっぽけな命令もいつも通り聞き入れ、俺が弱音を吐いたことを流してくれるだろう──そう思ったが、

大和「……無理です」

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