安価)魔王♀「ボクも世界を救う旅に出たい!」勇者「はあ?」(ダークファンタジー) (25)

勇者「世界なら俺がとっくに救っただろ」

魔王「ボクも救いたい!旅して仲間と絆を深めたり英雄と称えられたり色んな町を廻ったりしたい!」

勇者「そんなこと言ってももう世界は平和だぞ?魔物も人間もみんな仲良くやってるじゃないか」

魔王「まあ、そうだねえ」

勇者「戦争も無い、差別も偏見も無い。せいぜい警察や自警団で対処できる問題ぐらいさ、騎士団すら暇してるよ」

魔王「うん、君の言うとおりだ。だったらさ」


魔王「この平和がぶっ壊れればいいかな?」

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勇者「お前!何を…ぐっ」クラァ


危機を感じて立ち上がると強烈な目眩に立っていられなくって膝をついた


魔王「ふふふ、甘い、甘いなあ。君に降伏してたった5年大人しくしていただけでボクを信じきっちゃってさ」

魔王「そんな簡単に痺れ薬を盛られて良く生きてきたね君」


ケラケラと笑いながら踊るように体をくねらせる


魔王「ボクは魔王だよ?悪逆非道、邪知暴虐、魔なる者どもを統べる魔物の王だ」

魔王「そのボクが一度敗れただけで大人しくなると?」


勇者「…俺を殺しても無駄だぞ、女神の加護はまだ活きてるからな、魔物が敵である以上何度でも蘇るぞ」

魔王「誰がそんなこと言ったの?ボクは世界を救う旅がしたいんだよ?」

勇者「マッチポンプで世界救って楽しいか?」


会話を続けながらも攻撃魔法を出そうとする…だが出ない、何故かこの部屋は魔法が使えない


魔王「ちょっと違うなあ。これからすることはもっと大がかりでもっと根本的なことだよ」

勇者「何…を…」


パチン


魔王が指を鳴らす

薄く張られていた幻覚魔法が掻き消え、この部屋の真の姿を現す


勇者「何だよ…これ…」



部屋中、床も壁も天井も目一杯使って描かれている見たことも無い魔法陣


魔王「これを動作させるには巨大な魔力が必要でね。ボクと君、魔王と勇者、この二人分なら申し分ないでしょ」


勇者「やめろ!」

魔王「ボクは満足できないんだよ、君との戦いは楽しかった。でもまだ足りない、まだ満足は出来ない」

魔王「だから舞台を整えよう。もっと面白い世界にしよう、ボク好みに、邪悪に、暴力的に」


魔王「さあ楽しいニューワールドを!」


部屋中が禍々しく輝く、世界が渦巻き、暗転する


宇宙が崩れ去り、捩じれ曲がりながら再構築される光景を垣間見た

物心ついて初めて見た色は赤だった

飛び散る鮮血の色

初めて嗅いだ臭いは酷い悪臭だった

糞尿の匂いと腐った人肉の匂い


魔物は人間を虐げ、人間は弱い人間を虐げる

王や貴族たちは醜く肥え太り、平民たちは持ってない物まで取り上げられ餓えていく


働ける者は死人のような顔と痩せ細った体を引き摺って命を削って働き、働けなくなった者は身ぐるみを剥がれ髪の毛一本、骨に着いた肉片の一つまで貪り尽くされる

希望という言葉は無く、絶望すらなく、ただただ諦めが世界を包み、堕落と退廃が貴族を形作る


何故この年まで生きられたのか、それすら神の奇跡としか思えない

もしくは悪魔か

町中に馬の足音と車輪の音が響く

人々がざわめく

貴族の馬車だ。誰かが呟いた


路上に倒れている動けない人を路上の石のように蹴散らし、人々の恨みが籠った視線を浴びて馬車が止まる


「お前は勇者のお告げを受けた。王様から直々に話がある、乗れ」


鎧を着た兵士が一方的にそう言い放つ


①乗る
②勇者「この町の惨状を見てなんとも思わないのか」

>>6

1

馬車に乗るとまるで一秒でも留まっていたくないかのようにすぐに走り出す

腐敗物と汚物と瓦礫の町から飛び出した馬車は高い塀が囲む城下町に入った


煌びやかで栄華と装飾に飾り立てられ、平民の犠牲によって成り立っている悍ましい楽園

汚物の匂いに包まれたあの町と違い、料理の芳しい匂いが漂い、誰も彼も楽しそうに笑っている


まるで別世界だ


王城に着くと臭いと言われて即大きな風呂に叩き込まれてメイドたちに全身を洗われた


そして


王「貴様が勇者か」

王「この世界が魔物に脅かされているのは知っているな?貴様は勇者、魔王を殺す使命をお告げで受けておる存在だ」

王「貴様が魔王を倒せば世界は平和になるだろう。望むならば貴様に貴族の地位を与えてもよい」

王「さあ、世界を救いに行くのだ!」


一気にそこまで言い終わると


王「さて、旅立つにあたって何か欲しいものはあるかな?」

①武器
②金
③仲間
④勇者「そんなことより、平民の暮らしをあんたは知っているのか?」
⑤勇者「自由安価」

>>10

4

今日はここまで

おつ

勇者「そんなことより、平民の暮らしをあんたは知っているのか?」

王様「いきなり何のことか。魔物どもは町に侵入しておらぬ。問題は無かろう」

勇者「魔物のことを言っているんじゃない。あの町の惨状だ!重税と無理やりの労働で倒れる人間に不衛生から来る病気、ロクな食べ物は無く、犯罪と暴力が横行している」

王様「知らぬ。どうでもよかろう。ああ、貴様もあの町の出か。安心しろ、貴様は魔王討伐したあと貴族になれるのだぞ」

勇者「そういう問題じゃない!あんなに人が苦しんでいるのにあんたは王として何もする気が無いのか!」

王様「知らぬと言っている。さっさと行け」


うざったそうにそう言い放つ王様


①勇者「言っても無駄か」
②勇者「改革を約束しろ!」
③自由安価

>>15

1

勇者「言っても無駄か」

あとは王は何も言わなかった
―――――
―――

勇者「やべ、武器貰ってない。金も貰ってない」


城を出てそんなことに気が付いた

その時


グサッ!!


勇者「うおっ」

足元に剣が降ってきた。地面に突き刺さっている


勇者「…ってこれ」


よく見れば見覚えがある。そうだ、これは前の世界で使っていた剣じゃないか


①女神の祝福を受けた祝福の剣
②魔王城に一番近い町で買った市販の帝鋼の剣
③謎の遺跡で手に入れた邪神の剣
④自由安価

>>17

4
道端で拾った聖剣

勇者「俺の聖剣…」


地面から抜くと手によく馴染む。常に右手に握り、何度も死線を掻い潜ってきた相棒


勇者「まさか」


降ってきた上方を見上げる…も、誰もいない


「誰を探しているのかな?」

勇者「おわっ!?」


後ろから声がかかる。と同時に首筋をツー、と細い指でなぞられて背筋が凍る


「くふふ、久しぶり。勇者君」


齢10歳と少し程度に見える愛らしい少女、しかしその表情はとても人間とは思えないほどにおぞましく、邪悪な笑みが張り付いていた


勇者「魔王…」


貴族の娘でも着ていないような高価な生地で出来た黒いゴスロリドレス、牙のような鋭い八重歯に赤い瞳

明らかにこの世界では浮いている恰好


魔王「嬉しいなあ、こんなに姿が変わっても分かってくれるなんて」


確かに前の世界の魔王は人間とは似ても似つかない化け物だった。だが可愛らしい少女になろうともその邪悪な気配は隠し切れていない

勇者「…こんな…こんな世界がお前の望んだ世界なのか」

魔王「そうだよ。救い甲斐のある世界になったでしょ」

勇者「救い甲斐…だと?」

魔王「ふふ、闇が深ければ深いほど光はより強く輝く。より深い絶望の中でこそ希望は活きる。ボクは見たいんだよ、君という光がこの濃い闇の世界でどれだけ輝くかを」


魔王「さあ、この救いようのない救い難い世界こそ君の救うべき世界だ!ボクに見せてくれよ!無限の闇の中で君の輝しき活躍を!」

勇者「…お前を倒せばこの世界は元に戻る。そうだな?」


聖剣を魔王に向ける


魔王「まさか。この世界は改変後の世界だよ?作者を殺したところで既に書き終えた本は消えやしない。ボクの存在の有無はこの世界に何の影響も与えない」

魔王「そして、この世界の魔王はボクじゃない。ボクはただの人間の女の子だよ」

勇者「…何がただの女の子だ。化け物の気配を隠しきれてないぞ」

魔王「酷いなあ、傷ついちゃうじゃん」クスクス


少しも気にしてないどころか楽しそうに笑っている


魔王「でも一つだけ朗報だよ。世界改変の術式はまだ魔王城に残っている。君がこの世界を救った暁には、すべてを思い通りに作り直すことができるよ」

魔王「ほら、これで君は魔王城へ向けて旅するしかなくなった。あ、ボクと君で二人分の魔力が無いと世界改変出来ないことも忘れずにね?」クスクス


①無視するように無言で歩きだす
②勇者「そうだな、世界改変した暁にはお前の存在を抹消してやる」
③勇者「分かったから行くなら行くぞ」
④自由安価

>>20

3

勇者「分かったから行くなら行くぞ」

魔王「はーい」ギュゥ


勇者「ひっつくな」

魔王「ふふふ、今のボクはただの人間の女の子だもん」


そう言って腕に抱き着く魔王


①勇者「はいはい…」
②勇者「ふざけんな化け物」
③勇者「自由安価」

>>22

1

勇者「はいはい…」

魔王「んふふー、君は甘いなあ」

勇者「…おい、聞こえてるぞ」

魔王「空耳じゃない?」

勇者「…こいつ」

(’ω’)ファッ!!ここで終わり!?

なん…だと…

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