【モバマス】時子「30mmの彼方から」 (62)

モバマスSSです
地の文・少しの独自解釈あります
口調等おかしいかもしれませんが、見逃してください

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初めてハイヒールを履いた日のことは、鮮明に覚えている。

爪先のほんの少しの窮屈さと、ふわふわとした頼りなさ。

それ以上に激しい高揚が、全身を貫いたのだった。

だから、気付くことができなかったのだ。

私のいるこの世界が、いかに偽物で溢れかえっているのかに。

――――
――

この業界に足を踏み入れて二ヶ月が経つ。

毎日のようにあるダンスレッスンやボイスレッスンの成果が、確実に自分のものになっている実感があった。

自分のできなかったことが、一つ、またひとつと無くなっていくことに、安堵にも似た喜びを感じる。

財前家の女として産まれた以上、私は一定の水準を満たしていなければならない。

今はまだ候補生で、安心していられるような立場ではないのだと自分を戒める。。

私はまだ、アイドルではないのだと。


会社の敷地内に建てられている寮の屋上から、往来のほうへ視線を放る。

ふ、と息をつき、私は目を細めた。

?「どうしたんですか、こんなところで黄昏れて」

背後で声が響く。

時子「チッ……見ていたのね」

後ろに立っていたのは、事務員の千川ちひろだった。スカウトされてここに来たときから、どういうわけか何かと声をかけてくる。

ちひろ「こんな遅くに考え事ですか。明日は大学の授業があるんですよね」

学生である以上、その期の講義計画はプロダクションに提出しなければならない。そんな性ではないと知っているために、あの男――この事務員の同僚は、余計に嬉々として講義登録票を回収していった。


時子「盗み見なんて、躾がなってないわ」

ちひろ「候補生の子の管理は、事務員の業務の一つですから」

私の悪態に、彼女は嫌な顔一つしない。

まるで、一過性の反抗期を見守るかのような顔つきでするりと躱されてしまう。

……そもそも、このプロダクションには癖の強い人間が多すぎる。

猫耳だの、わけのわからない言葉を話すゴシック風の子だの、着ぐるみを着た幼女だの……

それら雑多なものと同じにされるのは心外だが、私個人のことについてやかましく言われないぶん、大学にいるよりも楽だった。


――さすが財前家のご令嬢。なんでもこなされますね。


――お見事です、時子さんに敵う相手なんて、他のどこにも……


蝶よ花よと育てられ、与えられ、その全てにおいて頂点を手にした私にとって、周囲からの賞賛など煩わしいものでさえあった。

ちひろ「わたしは、事務員として候補生の時子ちゃんの面倒をみる義務が……」

時子「アァン?」

ちひろ「時子ちゃ――」

時子「あ?」

ちひろ「……時子さんのご機嫌はいかがと思って、お尋ねしたんですよ」

時子「……ふん、わざわざこんな屋上まで来て、ご苦労なことね」

時子「おおかた、屋上の鍵を閉めに来たみたいだけど」

ちひろ「ばれちゃいましたか」

彼女はそう言って、私の隣にやってきた。


時子「相変わらず派手な制服ね……そんな目に痛い服、いったいどこに売ってるのかしら」

ちひろ「ふふ、よく言われます。でも案外、着心地は良いんですよ?」

時子「……見ればわかるわ」

色こそ正気を疑うものだが、素材や作りはよく洗練されている。長い間着用していても簡単にはくたびれない、良いものであるということは初めて会ったときからわかっていた。

ちひろ「ちなみにこの色はプロデューサーさんのセンスですよ。眠くても目が覚めるって」

時子「……ほんと、とんだ変態ね、あの男は……」

時子「従順な下僕になるとあの豚が言ったから、主人になって躾けてやる契約をしたのに、二か月もこの私を放っておくなんて……」

ちひろ「候補生のうちは、あまりプロデュースできることはないですからね……」

ちひろ「でも、レッスンの内容を考えているのはプロデューサーさんですし、きちんとトレーナーさん達に進捗を確認したりしていますから、もし会ったらお礼――ご褒美をあげてもいいと思いますよ?」

時子「……ふん、考えておくわ」


時子「それで? 鍵を閉めるんじゃなかったの?」

私は扉を指さしながら、彼女を一瞥する。

ちひろ「そうですね、時子さんがお戻りになってくださったら、いつでも」

くすくすと笑いながらそう答える彼女に、私はわかりやすく舌打ちをする。

時子「そ。じゃあ、もう少しここでゆっくりさせてもらうわ」

ちひろ「ご一緒しますよ。お話でもしませんか?」

時子「何か面白いことでも話してくれるんでしょうね」


ちひろ「面白い話……時子ちゃ……時子さんがスカウトされたときなんて、面白かったですよ」

時子「……」

ちひろ「あのとき言った言葉、今でもそう思ってますか?」

時子「当然よ――よく覚えてる。二言はないわ」

二ヶ月前のできことだ。私がこの世界に飛び込んだ日。

まるで数時間前のことにように思い出される。

それは、決してあの出会いが鮮烈だったからではない。

過ぎたことを忘れるには、この世界はあまりに緩慢で、退屈だからだ。


――――――
――――
――

何もかもがいつも通りだった。

大学へ行き、講義を受け、取り巻きたちを適当にあしらい、大学を出てジムでメニューをこなして帰路につく。

いつもと違ったことと言えば、ジムで気の抜けた顔をした男に好意を告げられたことくらいだろうか。

あのジムでよく見かけたから、それなりの身持ちではあるのだろうが、彼の下卑た笑顔を見た瞬間、何かが偽物だと感じて黙殺した。

道行く人々は、楽しげに言葉を交わしながら思い思いの時間を過ごしている。

見た目だけのバッグ、スマートさを失った革靴、品のない光を跳ね返すアクセサリー。

騙そうという作り手の意思すら感じるそれらが、私は好かないのだ。

そんな中、一組の男女が目に入った――というよりは、一人の女性に。

時子「なにかしら、あのふざけた服は……」


黄緑の事務服を着た女性。その傍らには、普通のスーツを着た二十代半ばの男性だ。

時子「……世の中にはとんだ変態もいるものね」

恐らく会社の飲み会の罰ゲームか何かだろう。まだ夜も遅くないのにご苦労なことだとため息をつきながら、私はその場を去ろうとする。

そのときだ。


?「落としましたよ」


誰かの声がした。


私は黙って振り返る。さっきの、黄緑女の横にいた男性だ。

下を見遣ると、なるほど確かに私のハンカチが落ちていた。いつもなら取り巻きが我先にと拾いにかかるのだが、当然その男性はそんなことをしないだろう。

男「ハンカチ、あなたのですよね」

何も言わない私に首を傾げながら、彼はハンカチを拾い、こちらに差し出した。

時子「……」

気にくわない。この私が、拾ってもらったのだという立場が、なぜだか許せない。

ジムであんなことがあったからだろうか。それとも、相手が女性に謎の服を着せて喜ぶ変態だからだろうか。


同じようにただ黙って彼を睨めつけていると、彼は何を思ったか、ほんの少し頭を垂れ、捧げるようにハンカチを私の前へ差し出した。

一瞬呆気にとられ、変な感覚が全身を走った。私はなるべくその様子を見せず、冷たく言い放つ。

時子「……どうも」

あまり愛想を良くして、調子に乗られても迷惑だ。

……なのに、相手はこちらから視線をはずそうとしない。

時子「下衆い視線でじろじろと……不躾な目で見る人ね。何か?」


男「ああ、すみません。ただ……良い靴ですね」



時子「靴?」

私はもう一度視線を落とし、自分の靴を見た。

……普通のハイヒールだ。

男「よく似合ってます。ハイヒールは、7cmが一番女性を綺麗に見せるらしいですね」

男「あなたのそれも7cmのものですね。でもそれだけじゃなく、きちんとあなたに見合っている」

時子「……」

男「すみません、申し遅れました、私、美城プロダクションでプロデューサーをしている……」

女「ちょっと、プロデューサーさん? いつまでお話を……もしかしてスカウトですか?」

プロデューサー、とやらが言い終わらないうちに、緑の女性が割り込んでくる。

女「わたし、事務員の千川ちひろと言います。突然で申し訳ないんですが、もしアイドルに興味がありましたら、ぜひ事務所でお話を聞いてくださいませんか?」


ちひろ「断っていただいても、全然かまわないので!」

時子「……ふん、別にかまわないけれど。先に一つ貴方に言っておいてあげる」

私はプロデューサーと呼ばれた彼を正視する。

時子「貴方の下につくつもりはないわ。私をアイドルにしたいだなんて言う変態の下にはね」

時子「私がアイドルになるときは――私が貴方のご主人様になるときよ。私が貴方を躾けてあげる」

ちひろ「……はい?」

時子「私はアイドルになりたいわけじゃない。ただ、楽しそうだと思ったから、貴方たちに乗せられてあげる。金のために働くなんて馬鹿みたい。所詮は暇つぶしよ、私がこの世界で生きていく間のね」

財前家である私が彼らに使われるなんて、あり得ないことだ。立場は、わからせておくべきだろう。

そんな、一般的に見れば突拍子もないことを言っているであろう私を見据え、彼は「それでは事務所に」と笑った。


――
――――
――――――


時子「アイドルなんて遊びよ。金のために働くなんて馬鹿みたい。所詮、この世のすべては生きてる間の暇つぶしに過ぎないんだから」

スカウトされた直後、彼と彼女の目の前で放ったこの言葉は、彼らにとってとても鮮烈だったらしい。

かたちだけの偽物、意味を欠いた贋作の蔓延るこの世界は、あまりにフラットで息が詰まりそうなのだ。

誰もが一生懸命になって、金を稼ぎ、生きるためにアイドルをやっていたとしても、私はそうではなかった。この気持ちは、今でも変わっていない。

真剣にレッスンに取り組んでも、それだけが生きる道ではない。

ちひろ「あれを聞いたとき、びっくりしたんですよ? 雰囲気からしてお嬢様なのはわかってましたけど、本当にそんなことを言う人がいるなんて」

ちひろ「あのとき、よく事務所に来てくれましたよね」

時子「……本物をわかる人間の話を、無碍にはしないわ」



ちひろ「本物、ですか?」

あのとき彼は、私の靴を見て私に見合っている、と言った。

私が作らせた、特注の一級品だ。あのとき、ブランドの既製品はいくつも身につけていた。どのアイテムにもそのロゴは入っていたが、あのハイヒールだけはそんなものは表には出させなかった。

ちひろ「意味がどうであれ、プロデューサーさん、アイドルになれそうな子はみんな欲しくなるって言ってましたから、そういう意味では、ちゃんと時子ちゃんの心を掴めたんですね」

時子「……ふん」

時子「そんなことより、不愉快よ、この話。私を楽しませてくれるんじゃなかったの?」


ちひろ「そうですねえ、あ、そういえば初仕事、決まりそうですよ」



――さすがに、虚を衝かれた。

時子「……どんな?」

ちひろ「まだ具体的なことは何も。ただ、年末――というか、クリスマスの時期に合わせてライブをやるのは知っていますよね」

ちひろ「そのときに、時子ちゃんをお披露目する段取りで進んでます」

時子「……っ、」

ちひろ「普通ならバックダンサーなどで舞台慣れさせてからのデビューになるんですが、時子ちゃんはあまりにも華々しすぎるので、他のアイドルの子の曲か何かをカバーしてもらうことになりそうです」

ちひろ「もちろん、ソロになるので、相応の覚悟をしておいてください」

私だって、この会社に入って二か月目とはいえ、クリスマスの時期に開催されるイベントがいかに大きいかはわかっている。そんなときに、私が?


ちひろ「まぁ、まだ仮ですけどね」

ちひろ「もしかして、怖いですか?」

時子「そんなわけ……っ」

思わず声を荒げた私に、彼女は「さすがですね」と呟いた。

時子「私は、すべてにおいて頂点をとってきた。今回もそう――」


ちひろ「それは、自信ですか?」


私の声を遮って、彼女はそう私に問うた。

時子「……は?」


反射的に威圧的な態度をとってしまった私に対して、彼女は臆することなく笑みを浮かべたまま、

ちひろ「それは、自信なんですか?」

彼女は、底の知れない笑みを湛えたまま、私にそうたたみかけた。

時子「黙りなさい」

冷たくそう言い放ち、彼女に背を向ける。

ちひろ「プロデューサーさんは、見込みのある候補生の子を大舞台でデビューさせるのが趣味なんです」

時子「……ふん、下僕にしては良い趣味をしてるわね。せいぜい私の姿を目に焼き付けるが良いわ」

かすかに手が震えているのがわかった。

それは、決して寒さのせいじゃない。

時子「……これが自信かと訊いたわね」

私は一度下唇を強く噛み、視線を落とした。胸の中に渦巻く気持ちの悪い感情は、その程度の痛みでは消えてくれない。

時子「……そうね。これは自負。二度と野暮なことは訊かないで頂戴」

震えを振り払うように手を振りながら、私は屋上をあとにした。


――寮にしてはやけに広い廊下。凝った装飾。

ここにいるのが夢を売るアイドルだとわかりきっているからこその、金の使い方だろう。

だが、こんなものは偽物にすぎない。

壁紙を剥がせば灰色が顔を覗かせるし、ガス灯を模した照明も、その中はただの白熱電球だ。

何もかもが偽物に見える。

面白そうだと飛び込んだこの世界も、見飽きた嘘の塊にすぎなかった。

時子「こんなもの、暇つぶしにもなりやしない」

そう呟いたその声は、僅かにかすれていたような気がした。


初仕事の詳細が決まった。

12月24日のクリスマスイブ。数億の金が動く、あまりに大きな舞台だ。詳細が明かされてから、私以外のアイドルたちも背筋が伸びているようだった。

P「時子さんには、こちらの曲を演ってもらいます。それほど動く振り付けではないので、覚えやすいかと。しばらくは専属のトレーナーさんに入ってもらう形になりますね」

時子「一曲だけかしら? 私にかかれば、すぐに覚えてしまうと思うけれど」

P「ええ、まずは専念して頂くという形で。時子さんの実力を疑うわけではないですが、きっと苦労なさると思います。頑張ってください」

スカウトしてきたときこそ低姿勢でアプローチをかけてきたものの、やはり仕事となると彼にも威圧感が宿る。

彼の敬語は、こちらを敬うようなそれではなく、業務を円滑に進めるためのものだった。


時子「チッ、気にくわないわね」

P「なにかご不満がありましたか?」

時子「その態度よ。私の下僕になるという契約で入ったはずよ。躾がなっていないわね」

私の言葉に、彼は苦笑いを浮かべた。ばつの悪そうな表情の彼に、私は再び舌打ちを飛ばす。

P「決して焚き付けているわけではないんですが、今の時子さんはまだ候補生の段階です。12月24日でのデビューを以て、自分のプロデュース対象に入ると言いますか……」

時子「下僕の分際で、主人である私を騙したの?」

P「管轄が違う、というわけでもないんですがね。一応自分の立案したライブでのデビューですし、面倒を見ないというわけでもありません。ただ、デビュー日などを公開する関係で、ライブが終わるまでは、手続き上プロダクション直轄の養成所が時子さんの所属になります。一応、説明の書類はお渡ししましたが……」

P「時子さんが24日のライブを通して、アイドルになってもいいと思って頂けたのなら、是非自分を使ってくださいね。初仕事が最後の舞台になる子も、ゼロではない業界ですから」

そう言って彼は、手慣れた様子で握手を求めた。

それを払いのけ、私は彼を睨む。


時子「……あのとき、なぜ声をかけたの。貴方ごときに扱えるような女じゃないことくらい、わからなかったのかしら」

P「まあ、毛色は違いますね」

P「でも、だいたい時子さんと同じです。もっと世界を面白いものにしたくて、俺はプロデュースをやってます。時子さんも、この世界を退屈に思ってるでしょう」

P「アイドルはきっと、時子さんに向いています」

私のことを全て知ったかのようなその口ぶり。だが、それに反発させない威圧が、今の言葉には確かに滲んでいた。


――挑発されている。暇を潰させてやる代わりに、まずやり遂げろと。


時子「フン、せいぜい、自由なこの時間を満喫しておくことね。イブが過ぎたら、ゆっくりとしつけてあげる」

苛立ちをぶつけるように残したその言葉が、廊下に響く。

残響を背にして私はその場を立ち去る。


気にくわない。


あの目。


アイドルを使って、世界を面白くする――あまりに荒唐無稽で身の程知らずな願い。

何もかもを欲しがる彼は、決して満たされることのない、貪欲な生き物だ。


そう、まるで、常に飢え続ける豚のようだと、私は思った。


時間の流れが速い。

公演までは二ヶ月を切っている。それなのに、私は――

トレーナー1「ダメだ財前、やり直しだ。その動きは歌にあわない」

トレーナー2「なんていうかな、一つ一つの動きが、バラバラなんだよ。二人羽織みたいだ」

トレーナー3「うーん、もう少し感情を込めて歌ってくれるかな」

やり直しの毎日だった。

休憩の合間に覗いた他アイドルたちは、順調にレッスンをこなしているようで私の数倍先を行っている。彼女たちよりも演出量は少ないはずなのに、私だけが同じ場所で足踏みをしていた。

自動販売機で水を買い、仰ぐ。安っぽい味が頬の内側に残った。


――このくらいできないでどうする。

――財前の娘だろう。

――全然なってない。こんなのじゃよそ様に紹介できない。


時子「……黙りなさい」

朧気な記憶を振り払うように、私は瞑目しながら呟く。

時子「……嫌なことを思い出したわね」

財前の娘として。

このくらいがどうしてできない。

今も時折耳にする、あの声。

私は努力してきた。全てにおいて、財前の名に恥じぬように。

だからこそ、私は何においても他を制するほどの実力を手にしたのだ。

スポーツや教養だけでなく、社交界において常識とされる趣味まで何もかも。

本物を見極め、偽物を排し、それなりの審美眼も養った。

その中には歌も踊りもあった。そこでも当然、私は上り詰めたのに。


時子「そんな私が、どうして……っ」


?「あ、あの、大丈夫ですか……?」


不意に、背後から声がかけられた。

時子「……何かしら」

?「いえ、何か、思い詰めた空気だったので……」

振り返ると、私と同じ練習着を着た少女が立っていた。少し上気した顔を見ると、私と同じようにさっきまでレッスンを受けていたのだろう。

時子「何も聞いていなかったでしょうね。聞いていたのなら忘れなさい、すぐに」

私が立ち上がると、彼女は怯えたように肩をふるわせた。

まゆ「ま、いえ、わたしは、佐久間まゆ、です。財前時子さん、ですよね」

そう名乗った彼女は、こちらに深くお辞儀をした。


時子「……よく知っているのね」

まゆ「はい。クリスマスのイベントで、時子さんの前にステージに立っているのがまゆなんです。もしかすると、少しだけでも、一緒にステージに立てるかもしれないですね」

彼女はそう言って無防備に笑った。私がどんな人間かも知らない彼女は、穏やかな笑顔で当日のことを語っている。

不快にならない距離感で、決してこちらには深く足を踏み入れないように。

その阿るようなやり方が、あの日々を思い出させるようで余計に――

時子「不愉快だわ」


口に出ていたとわかったときは、しまった、と思った。

彼女の笑みが凍り付くのが傍目にわかった。

まゆ「ま、まゆ、何か変なこと、言いましたか? ごめんなさい、緊張とか、不安とか、たくさんありますよね……気がつかないで……」

時子「……」

P「まゆ、そろそろ時間だぞ……あれ、時子さん」

慌てふためくまゆに何と声をかければ良いか決めかねているうちに、彼がスケジュール帳を持ちながら現れた。

まゆ「ぷ、プロデューサーさん」

P「どうしたまゆ、何かあったのか?」

まゆ「い、いえ、何も」


時子「……私が彼女にひどいことを言ってしまったのよ。悪かったわね」

告げ口をするような人間でもないだろうが、問題は早々に解決した方が良い。彼女は恐らく、年下とは言え先輩だ。共演もあり得るのなら、下手な波風を立てるのは得策ではない。

P「練習も厳しくなってきた頃合いでしょうし、うまくいかないこともあるでしょう」

彼はまっすぐに私を見てそう語った。

前にも、彼はそう言っていた。きっと私が苦労するだろうと。

時子「何も知らないくせに……」

子供のような癇癪をそんな呻きに乗せてしまう自分が、あまりに情けない。

いろいろなことを覚えて、努力して、何もかもを勝ち取ってきた。

アイドルだってそのはずだった。それなのに、全くうまくいかない。

トレーナーの言っていることが、自分の身体にうまく落とし込めない。


P「スカウトした自分が言うのも何ですけど、もしも無理そうなら、遠慮せずに自分に言ってください。デビューは必ずその日でないといけないわけではないですし、まだ調整もききます」

時子「何を……っ、豚の分際で見くびらないでくれるかしら。私は――、」

時子「私は、財前の、娘よ」

口を衝いて出てきたその言葉が、やけに自分の胸に突き刺さる。

P「あなたなら、きっとやり遂げられます」

そう言った彼は、まゆにこれからのスケジュールを簡単に伝えてその場を後にした。

私と、彼女だけが残される。

不満げな表情を浮かべている彼女は、やはり不服そうな口ぶりで私に話しかけてきた。


まゆ「どうして、プロデューサーさんにあんな酷い言い方をするんですか……?」


時子「それであなたに、何か不都合があるのかしら?」

まゆ「あります」

きっぱりと言い放った彼女に、私は一瞬でも戦いた。

まゆ「プロデューサーさんは、まゆをアイドルにしてくれた人です。あの人が傷つく姿を、まゆは見たくありません」

まゆ「まゆは、プロデューサーさんのためにアイドルをしているんです」

彼女のその言い方が、嫌に耳に障った。

時子「聞いてあきれるわね。拾ってもらえたから、それに恩義を感じて尻尾を振るの? そんなの、何も考えない人形と同じじゃない」

まゆ「同じじゃありません」


まゆ「まゆは、まゆが望むとおり、あのひとが喜んでくれるまゆになりたいんです」


時子「……っ、」

声が出なかった。目の前の少女が叫ぶその意味は、あまりに重い。

言葉の一つ一つはあまりに単純だ。

だが、そこに込められた彼女の気持ちだけが、ただまっすぐで、健気で、理解できないものだった。



ちひろ「どうですか、時子ちゃん。実物を目にすると、アイドルになる実感がわくんじゃないですか?」

まゆとの邂逅から三週間が経ち、イベントも一ヶ月後に迫ってきた。

今日は衣装合わせで、多くのアイドルたちと一緒にロッカールームに集まっていた。

時子「……よくできているのね」

近くでは見たことのなかったアイドルの衣装というものを見て、私は感嘆する。素材こそ本物の良品よりも粗悪なものだが、作りは丁寧で試行錯誤の跡が見て取れた。

ちひろ「ええ、ありがとうございます。時子ちゃんがパーティなんかで着るような服の布だと、衣装一着あたりのお値段がとんでもないことになりますから、かなり安い生地になってしまって……」

ちひろ「でも、他の子たちの衣装と比べたら、時子ちゃんのこれは数倍くらいお金がかかってますよ」

時子「……そう」


いくら安物でも、そう言われるとどうしてか悪い気はしなかった。

だが当然、どうして、という疑問もわいてくる。そういう質問を気軽にできないのが、自分の性格の嫌なところだった。

ちひろ「やっぱりクリスマスにデビューですし、それに初めての衣装って、やっぱり大切なものだから……ちゃんと残るものにしたいじゃないですか」

衣装箱に入れられた小物を取り出して検品しながら、ちひろはそう呟く。その背中は楽しそうに弾んではいるが、その声色は僅かに暗い。

ちひろ「着てみてください、きっと似合うはずですよ。なんたって、あのプロデューサーさんもデザインに協力してくださってますから」

時子「貴方の服をデザインしたあれが……? それを聞いて余計に不安になったわ……」

だが実際に袖を通してみると、想像していたよりもずっと動きやすい作りだった。おそらくこれも、機能性を確保するために随所に工夫が凝らしてあるのだろう。

事務員に視線で感想を求められたが、鼻を鳴らして一蹴しておいた。


姿見に映った自分の姿を見ると、自分が自分でない錯覚さえ抱く。

ちひろ「着てみると、やっぱり時子ちゃん綺麗ですね。アイドルになった感じ、ありますね」

時子「ふん、当然でしょう」

ちひろ「ふふ、服は変わっても、時子ちゃんはやっぱり時子ちゃんですね」

ちひろ「あ、そうだ、靴の方も確認しておかなきゃですね。踵の部分が結構高いんですけど、大丈夫そうですか?」

別の箱から取り出した靴を確認する。派手な装飾はあるが、基本は普通のハイヒールだ。

ちひろ「7cmのヒールですから、歩きにくいことはないと思います。いつも履いていらっしゃいますよね。ただ、これで実際に踊ったりしますので、これからのレッスンにはこれと同じ高さの靴を履いてもらうことになります」

そう言いながら、彼女が私の足に靴を嵌めてくれる。いつもパーティで履くのと同じ感覚だ。


慣れた感覚。

だが、これを履いてダンスができるかと言われれば、今の私には首を縦に振ることはできない。

トレーナーからある程度の良しはもらっているが、彼女たちの顔色から、それが妥協や諦観であることは明らかだった。


鏡に映った、自分の像。

今までとは違う自分。

時子「こんな仰々しいもの……偶像なんて、いったい誰が魅入るのかしら」

時子「熱狂する愚民たちは、アイドルの何を見て心を動かされるのかしら? こんな姿は所詮、偽物にすぎないのに」


ちひろ「だったら、時子ちゃんはアイドルになれますね」



突として、痛いほどの静寂が広がった。

時子「――は?」

息継ぎをするように漏れた声が、自分の鼓膜を刺す。

鏡越しに、彼女と目が合った。

いつもと同じ笑顔が鏡の向こう側から覗き込んでいる。

ちひろ「偽物は、アイドルにはなれませんから」

ちひろ「時子ちゃんは、偽物なんかじゃないですもんね」

時子「……アァン?」

凄んでいるはずが、うまく表情を作れない。

力を入れているはずの眉根にも、瞼にも、そして喉にも。

まるで、自分がばらばらにされているようだった。

このやり手っぽいP見たことあるな
前にkwsmさんのSS書いた?

――

初めてハイヒールを履いた日のことは、鮮明に覚えている。

僅か12歳の頃だ。童話に出てくるような、赤い靴だった。

その頃から背の高かった私は、当時にしては高すぎる7cmのヒールを履いて、社交界に飛び出したのだ。

私は、快く世界に迎えられた。

今までに培った教養が、技能が、趣向が、潤滑剤となって人々の心にしみこんでいった。

私が財前の娘として表に出ることで、必要なこともさらに増えた。

美しく歩くこと。

美しく話すこと。

美しく笑うこと。

美しく泣くこと。

美しく在ること。

どれも難しいことではなかった。

周りには、それができる、それをさせてくれる本物ばかりだった。

7cm背伸びして見えた世界は、あまりにも煌びやかで私の心をくすぐったのだ。

だけど。


その世界を覗くために背伸びをしなければならなかった私は、果たして本物だったのだろうか。

――




トレーナー「財前! 昨日言ったことがまたできていないぞ。遅れている。うまくやろうとしなくていい、自然にやるんだ」

時子「……」

トレーナー「お前らしさってのを、みせてやるんだ」

トレーナーの声が、意識の中をすり抜けていく。

あの日、あの事務員に言われたことがずっと心の奥に刺さっているせいだ。

――偽物は、アイドルになれない。

アイドルは偽物だ。私にはそれがわかる。

あの佐久間まゆというアイドル。彼女は確かに、偽物だった。

距離を測り、勝手に私という人間のどこまで踏み込んで良いかを探って、心地良い位置に佇もうとする。そこで、穏やかに手を振ろうとする。

それが、心底不愉快だ。

私の不調を悟ったのか、トレーナーは一度肩の力を抜き、こちらにタオルを投げた。

トレーナー「いったん休憩にするか、財前」


時子「……」

何も言わずに部屋を出た私を、トレーナーは呆れたように見送っていた。

トレーニングルームを出て当てが在るわけではないが、あの場所にはいたくなかった。


……家を出たときもそうだった。


これ以上あの空間にいれば何かが壊れてしまいそうで、それが怖くなってあの家から距離をとったのだ。

時子「……どうして、私が」

こんな惨めな思いをしなければならないのか。

どこかすぐ近くで、誰かのレッスンの音が聞こえる。ハイヒールの踵が、フローリングを叩く音がする。

軽い音だ。そして、テンポの揃っていないばらばらな音。

時子「……全然、音楽になってない――」

覗き込んだルームから見えたのは、あのアイドルだった。



時子「佐久間、まゆ……」


自分の歌を歌いながら踊っているのか、私のレッスンよりもずっと厳しそうだった。

やらなければならないこと、覚えなければならないこともずっと多いだろう。

偽物のくせに、

アイドルのくせに、

それなのに、


時子「なんて、綺麗な――」



本物だ、と思った。


あの踊りは、まごうことなき彼女のものだ、と。

自分のような、全てがちぐはぐな動きではない。彼女が作り出す動きとして、歌として、もっとも佐久間まゆらしい動きで、声で、空間を魅了していた。

ダンス中の彼女と目が合う。

まゆ「時子さん」

私に気付いた彼女は、トレーナーに一言断ってから私の元へ駆け寄ってきた。



まゆ「どうかされましたか?」

時子「……なんでもないわ」

まゆ「そ、そうですか……あ、あの、もうすぐ本番ですけど、何か困ってることとか、ないですか……? もしかしたらお話を聞くくらいなら――」

時子「だったら」

私の焦燥を含んだその声に、彼女はびくりと肩をふるわせた。

その華奢な彼女に、私は問う。

時子「だったら、教えてもらえるかしら?」


時子「貴女にとって、アイドルとは何なの?」


彼女は視線をそらさない。

まっすぐと私を見据え、

まゆ「まゆにとってのアイドルは、まゆの全部です」

その腑抜けた答えに、突発的な苛立ちが募る。

時子「……またそんな答えを。アイドルなんて、都合の良い部分を見せるだけの偽物に過ぎないでしょう? なのに、それが全てだなんて、どれだけ浅い生き方を――」


まゆ「そんなものはどうでもいいです」


時子「……は?」



どうでもいい? 何を言っている。

自分が生きるこの世界そのものが、金と私欲を覆い隠すだけのはりぼてかもしれないのに?

まゆ「アイドルが本物かどうかなんて知りません。どうでもいいことだと思います」

まゆ「だけどまゆは、まゆの全部をアイドルにして、みんなにそれを見てほしいんです」

まゆ「大切な人には、本物のまゆ以外は、好きになってほしくない」

滅茶苦茶だ。

アイドルが偽物であるか本物であるかなど気にしない。

大多数、或いは誰かに好きになってもらうために演じ、そしてその姿は決して偽りたくない――?

そんな、そんな、

望んだ自らを、そのままに受け入れてもらえるなんて、

時子「そんな、傲慢なことが――」

私の呻きに、彼女はなおも目をそらさない。

どこか遠くを見つめるような、虚ろな、穏やかな、夢を見るような双眸で、


まゆ「許してもらえるまで、愛するんです」




――自分の中にあった違和感。

自分が自分ではないような感覚。

私の中の経験が、身体が、私のものではなかったあの不和。

その正体が、わかってしまった。

あの家から逃げ出すことで知らない振りをしてしまった事実。


時子「……私が、本物じゃ、なかった」


それを思い知らせてくれた彼女の元をあとにして、呼び止めるトレーナーも振り払って、私はただ、あの事務員の元へ歩を進めた。


私は本物を着た人形だった。

本物がわかるだけの、ただの偽物に過ぎなかったのだ。

だが私はここにいる。

偽物を認めない、そんな私が。

佐久間まゆの言葉が頭の中で反響する。


――自分という存在を受け入れてもらえるまで、ずっと愛を捧げる。


いいや、そんなやり方は。

蝶よ花よと育てられ、あらゆる分野で頂点をとった私が、愛されるまで愛するなど、


――そんなやり方は認めない。


だから、ドアを開き、私は彼女に言い放つ。



時子「ちひろ。必要なものがあるの。這いつくばってでも準備なさい」


――――
――


騒がしい鳴き声が、耳を刺す。

あともう数十歩、脚を進めればステージに出てしまうほどの距離。

階段を数段上ったところで、佐久間まゆが観客たちに愛を振りまいている。

ちひろ「緊張していませんか、時子ちゃ……時子さま?」

時子「何をどう見れば、緊張しているように見えるのかしら?」

ちひろ「一応おたずねしますが、それは自信ですか?」

時子「私が私であることに、覚悟が要ると思う? 考えてからものを言いなさい」

私のその言葉を聞いて、彼女は安心したように笑った。


ちひろ「トレーナーさんたちからの報告を聞いて、はじめのうちは冷や冷やしていたんですよ。間に合わないんじゃないかって」

ちひろ「だけど、突然歯車がかみ合ったみたいに良くなって……初めて舞台に立つ人とは思えないって」

時子「……初めて?」


私は、かつての自分の姿を思い出す。

赤いハイヒールを履いて財前の娘として名乗りを上げたときのことを。

ちょうどあれも、クリスマスイヴの日だったか。

あの日からずっと、私は演じ続けてきた。

取り巻く者どもが私にそうしたように、私も財前の人間として望まれるように演じていたに過ぎなかったのだ。

それに気付くまで9年だ。9年かかって、私はようやく、本物になれた。これが初舞台と呼べるほどの浅さはない。

時子「無様な姿なんて、見せるわけないでしょう」


ちひろ「その言葉、プロデューサーさんにも聞かせてあげたかったですね」

時子「そういえばあの豚は……私を置いてどこをほっつき歩いているのかしら?」

ちひろ「プロデューサーさんなら、舞台の下手側で待機しています。時子ちゃんの姿は絶対に見ないと怒られるって言ってましたから」

時子「ふん、わかってるじゃない。一瞬でも目をそらしたら容赦しないわ」

そう言いつつ、私はステージの上に視線を投げる。

ピンクのフリルを身に纏って、甘い声で歌を歌う彼女。

彼女は本物だ。

アイドルと自己の境界に、差を全く感じていない。自分の全てを、アイドルというもので成形している。

だが、それがアイドルなのだろう。

ちひろが言っていた言葉が、今になってようやく理解できた。

偽物はアイドルになれない。

本物を貼り付けた偽物程度では、人の心に触れることすら敵わないのだ。

この事務員はもしかすると、私のその浅さに気付いた上で、わざと「アイドルになれる」などと言い放ったのではないだろうか。


時子「……あなたも、本物なのかしらね」

ちひろ「何がですか?」

時子「……何でもないわ。派手な色の腰巾着かと思っていたら、想像よりは使えそうだと思っただけ」

ちひろ「……あ、もしかしてあれのことですか? ぎりぎりになって時子ちゃんが欲しいって言ってきた……」

時子「あれも、よく間に合わせたわね。褒めてあげる。どうせ無理だろうと思っていたから」

私がそう言い放つと、彼女はなぜかばつの悪そうな顔をした。


ちひろ「時子さんにお渡ししたあれ、実は……もともとプロデューサーさんが用意させていたものなんです。時子ちゃんが、きっと必要だって言ってくるだろうから揃えておいてくださいって」

ちひろ「半信半疑だったんですけど、本当に言ってきてくれたからびっくりしちゃいました」

その言葉には、さすがの私も驚きを隠せなかった。

私の突然の思いつきを、あれは予想していた――?

時子「あの豚は……いったいどういう奴なの」

ちひろ「プロデューサーさんですか? うちの会社きっての超敏腕プロデューサーですよ。200人近いアイドルを同時にプロデュースする、正直得体のしれない人です」

そう言って彼女は、くすくすと笑う。


時子「200人……?」

ちひろ「しかも、時子ちゃんみたいにすぐスカウトしちゃうので……どんどん増えていくばかりです」

ちひろ「この世界はもっと楽しくなる、って言って、少しでも気になる子がいると声をかけてしまうみたいで……」

時子「この世界は、もっと楽しくなる……」

時子「気にくわないわね、その言葉」

私のその呟きが、向こう側からの歓声に掻き消された。

出番が近い。ステージの上から、あのアイドルが視線を送っていた。


――気にくわない。

あの豚が、暇を持て余す主人を差し置いて、世界を楽しくしようだなんて。

階段に脚をかける。踏み出した一歩の感触が、いつもとはまるで違う。

心地の良い感触が、全身を痺れさせた。

時子「フン、やっと、面白くなるのね」

あのとき用意させた靴。用意させられたハイヒール。

高さ10cmの、ほんの少しだけ背伸びした、新しい私の一部。

かっこいい


ああ本当に、なんて気にくわない。

主人である私が、豚なんかに望まされるなんて。

だから今度は、私の番だ。

あの子のように、愛されるまで愛し続けるなんて、そんなまわりくどいやり方は私じゃない。


刮目なさい。

貴方の主人が、豚どもに望ませる姿を。

全てを望ませ、そして与え、さらに掌握するこの私を。

7cmの高さからは見えなかったこの光景。

プラス30mmの彼方から、私は全てを支配する。

下僕どもの欲望も、その快楽も――


時子「さあ、愉しませてあげる」


決して、飢えさせてなどやるものか。


以上になります

読んでくださった方、ありがとうございました!

>>39
コメントありがとうございました
すみません、それは私ではないです
そちらのほうも読んでみたいですね

乙!
面白かったわ!

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