世にも奇妙な星守たちの物語(21)
「バトルガールハイスクール」のキャラで「世にも奇妙な物語」的な話をするスレです。
1話につき1キャラに焦点を当てていきます。
全キャラ登場するかどうかは未定です。
先生はアプリ版の設定で。
不定期更新。
牡丹「アニメやマンガ、特にバトル系やスポーツ系の類では、必ずと言っていいほど『必殺技』が登場します」
牡丹「通常の攻撃とは違い、ここぞというときに繰り出される必殺技は、キャラクターや物語を盛り上げるうえで欠かせないものになっています」
牡丹「そんな必殺技に憧れを抱く人も少なくないでしょう。例えば今回紹介する彼女のように」
牡丹「さて、彼女はいったいどんな必殺技を習得したのでしょうか」
―オリ変オタク―
ひなた「必殺ファントムボール!」
キャッチャー「うん。ナイスボール!」
ひなた「うーん……」
キャッチャー「どうしたの?」
ひなた「なんか違う」
キャッチャー「違うって?」
ひなた「ひなたはもっとぎゅわーん!って感じのボールを投げたいの!」
キャッチャー「今のままでも十分すごいと思うけど」
ひなた「ダメ!ひなたはもっとすごいボールを投げたいの!」
キャッチャー「そう言われても……あ。そういえばこんな話を知ってる?『オリ変オタク』っていうんだけど」
ひなた「『オリ変オタク』?」
キャッチャー「うん。練習を頑張ってる人の前にまれに現れて、世界で1つのオリジナル変化球を教えてくれるオタクがいるって話」
ひなた「すごい!初めて聞いた!」
キャッチャー「私も他校にいる友達から聞いたんだけどね。その子の友達の友達は実際にオリ変オタクにすごい変化球を教わったらしいよ」
ひなた「えー、いいなあ!ひなたも教わりたい!」
キャッチャー「あくまで噂だから、そこまで信じない方がいいよ。そろそろ私は帰るけど、ひなたはどうする?」
ひなた「ひなたはもう少し練習してから帰る!」
キャッチャー「わかった。お疲れ様ひなた」
ひなた「うん。バイバーイ!」
数日後
ひなた「はあ……はあ……。うーん、やっぱり上手くいかないなあ」
??「球速、変化量、キレ、ノビ。どれをとってもイマイチでやんす」
ひなた「ん?誰?」
??「オイラでやんすか?オイラは矢部でやんす」
ひなた「矢部?」
矢部「巷では『オリ変オタク』って呼ばれてるでやんす」
ひなた「あ!知ってる!すごい変化球を教えてくれるんでしょ!?」
矢部「すごさは別として、オイラにできるのはオリジナル変化球……」
ひなた「ねえ!ひなたにもすごい変化球教えてよ!次の試合どうしても勝ちたいんだ!」
矢部「……本気でやんすか?」
ひなた「もちろん!」
矢部「わかったでやんす。ただし、オイラにオリジナル変化球を習ったことは秘密にすること。それと、どんな変化球を習得しようと文句を言わないこと。それを約束してほしいでやんす」
ひなた「わかった!」
矢部「返事は良いでやんすね。じゃあまずはベースとなる球を確認するでやんす。さっき投げてた球をもう一度投げてみるでやんす」
ひなた「ファントムボールのことだね!いくよ~。えい!」
矢部「ソフトボール特有のライズボールでやんすね。球自体は平凡でやんすけど」
ひなた「平凡って?」
矢部「たいしたことないって意味でやんす。オリジナル変化球にするためには、もっと個性を出して、誰もマネできないような球を目指すべきでやんす」
ひなた「そっか!ひなたはね!ぎゅわーん!って感じにしたいの!」
矢部「その擬音語の意味は分からないでやんすが、意欲の高さはわかったでやんす。これからみっちり指導するから言う通りにするでやんす」
ひなた「わかった!よろしくオリ変オタク!」
矢部「その呼び方はやめてほしいでやんす」
数日後
ひなた「やあ!」
矢部「うん。いいボールでやんす。ついに完成したでやんすね」
ひなた「やった!ありがとうオリ変オタク!」
矢部「最後まで呼び方を変えてくれなかったでやんす……」
ひなた「オリ変オタク大丈夫?」
矢部「無自覚でやんすか……まあもういいでやんす。最後の仕上げに入るでやんす」
ひなた「仕上げ?」
矢部「そうでやんす。この変化球に名前を付けるでやんす」
ひなた「ファントムボールじゃダメなの?」
矢部「甘いでやんす!そんなありきたりな名前じゃ、この変化球は輝かないでやんす!」
ひなた「うーん、じゃあジャスティスボールは?」
矢部「さっきのと同レベルなのと、他の星守のイメージと被るから却下でやんす」
ひなた「ならスーパー・ウルトラ・ハイパー・アルティメット・ボール!」
矢部「品の欠片もないでやんす。却下」
ひなた「むう。そんなに言うならオリ変オタクがいい名前つけてよ!」
矢部「オイラでやんすか?仕方ないでやんすね。とっておきの名前を付けてやるでやんす。その変化球の名前は、」
次の日
キャッチャー「ついに試合だね。ひなた、調子はどう?」
ひなた「絶好調!今日はひなたのピッチングで相手チームを驚かせるんだ!」
キャッチャー「やる気満々ね。その調子でよろしくね」
ひなた「うん!」
審判「プレイボール!」
ひなた(よし。いきなりだけど、あの変化球使っちゃうぞ~)
ひなた「『エーヴィヒカイト・クヴァール』!」
ひなた(よし!完璧!)
キャッチャー「え。何この変化球……タ、タイム!」
ひなた「あれ。どうしたの?」
キャッチャー「それはこっちのセリフよ。何今の変化球」
ひなた「すごいでしょ。『エーヴィヒカイト・クヴァール』って言うんだ」
キャッチャー「名前はどうでも良いわよ。それより、あんな球投げられても困るんだけど」
ひなた「なんで?」
キャッチャー「だって座ってる私の遥か上まで浮き上がるのよ。私取れないし、全部ボール球になっちゃうわ」
ひなた「あ、そっか!」
キャッチャー「もう、しっかりしてよ。これからはあの変化球はナシね」
ひなた「はーい」
審判「プレイ!」
ひなた(サインはストレート。よーし)
ひなた「『エーヴィヒカイト・クヴァール』!」
キャッチャー「な……タイム!」
ひなた「あれ……」
キャッチャー「何やってるのよひなた。さっきの話聞いてた?」
ひなた「うん……ひなた、ストレート投げるつもりだった……でも、体が勝手に……」
キャッチャー「変な言い訳しないでよ。いい?次はちゃんと投げてよ」
ひなた「うん……」
審判「プレイ!」
ひなた(次のサインもストレート。今度こそ……)
ひなた「『エーヴィヒカイト・クヴァール』!」
キャッチャー「ひなたの馬鹿!タイム!」
ひなた「あ……あぁ……」
キャッチャー「何やってんのよ!いい加減にして!」
ひなた「ひなた、もうだめだ……」
キャッチャー「何が」
ひなた「『エーヴィヒカイト・クヴァール』しか投げられなくなっちゃった……」
キャッチャー「は……?」
ひなた「ひなた、オリジナル変化球しか投げらない体になっちゃった……」
矢部「『エーヴィヒカイト・クヴァール』。ドイツ語で『永遠の苦しみ』を意味するでやんす」
矢部「オリジナル変化球しか投げられないことで、あの子は永遠に苦しむことになるでやんす。まあ、オイラにオリジナル変化球を習おうとした対価でやんすね」
矢部「オイラからすれば、ピッチャーがどうなろうが知ったことではないでやんす。オイラはただ、沢山のオリジナル変化球を見られればそれでいいでやんす」
矢部「次はどんなオリジナル変化球に巡り合えるでやんすかねえ」
牡丹「人はだれしも、眠れない夜というものを過ごしたことがあると思います」
牡丹「前日に嬉しいことや悲しいことが起こって眠るどころではない時。次の日に早起きしないといけないけれど、緊張して目が冴えてしまう時。色々あると思います」
牡丹「日本人の実に20%はこうした睡眠障害に悩まされているというデータも存在します」
牡丹「今回紹介する彼女もまた、この問題に直面してしまったようです。彼女はどのようにしてこの問題を乗り越えたのでしょうか」
―眠れない―
桜「む。なんだか眠れないのお」
桜「昼間に寝すぎたかのお。いや、今日はむしろ昼寝の時間は少なかったはず。放課後にサドネの勉強を見てあげたからのお」
桜「明日は早朝特訓があるから早めに寝なければならんのに、困ったものじゃ」
桜「とりあえず、羊でも数えてみるかのお。羊が一匹。羊が二匹……」
桜「そういえば、羊を数えるのは英語で言うから意味があると聞いたことがあるのお。sleepとsheepが似ているとか、いないとか」
桜「いかん。考えだしたら羊を数える気がなくなってしまった。何か他の策を講じないと」
桜「そういえば今朝、望が『あろま』というものを焚くといい睡眠がとれると言っておったの」
桜「『あろま』ってなんだったかのお。確かお香のようなものだったような」
桜「この家にあるお香といえば、線香くらいなもんじゃが。試しにやってみるかのお」
数十分後
桜「むう。匂いが部屋中に充満して益々目が冴えてくるわい。線香じゃだめかのお。一旦窓を開けて仕切り直しじゃ」
桜「さて。これでも寝られないのなら、何か疲労感を感じて眠る作戦を考えるとしよう。ひなたが体育の後の授業をよく眠っておるのを思い出すわい」
桜「まあわしにはひなたのように激しい運動をする体力はないから、頭を使って疲労を感じるとしようぞ」
桜「そこでこの『超難問詰将棋100選』の出番じゃ。これを解いていけば自然と疲れて眠くもなるじゃろうて」
数十分後
桜「むう。全部解いてしもうた。そこまで難しくもなかったから疲れる前に終わってしもうた」
桜「時間は……3時か。今更寝ても仕方がないのお。3、4時間ほどしか寝られん」
桜「こうなったら一晩中起きておくしかないのお。大河ドラマや寄席のDVDでも見ておれば時間も過ぎるじゃろうて」
数時間後
桜「むう。結局完徹してしまったわい。そろそろ準備をしないと特訓に遅刻してしまう」
桜「こんなに眠れなかったのは初めてじゃが、学校に行けば眠くもなるじゃろ。今日はたっぷりと睡眠をとらせてもらうとしよう」
数時間後。神樹ヶ峰女学園
樹「はい、じゃあここの登場人物の気持ちを……桜。答えて」
桜「たった一人の家族である弟と離れ離れになって寂しいんじゃろ」
樹「正解よ。桜。あなた今日はちゃんと起きているのね。えらいわ。これからも続けて頂戴」
桜「う、うむ……」
桜(おかしい。退屈な授業なのに、なぜかちっとも眠気が来ない。むしろ目が冴えていく一方じゃ)
望「桜が授業中に眠ってないなんて、珍しいこともあるもんだね」
楓「今朝の特訓もきちんとこなしていましたし。心境の変化でもあったのですか?」
桜「たまにはこういうこともあるんじゃよ……」
桜(授業中に眠くならないのは予想外じゃが、八雲先生や星守たちからも高評価だし、よしとしようかのお。放課後の部活の時間にでも眠ればよい)
放課後
桜「な、なぜまだ眠くならんのじゃ。今日は最高のひなたぼっこ日和で、かつ邪魔するものもいないというのに。これはどういうわけじゃ……」
桜「何もすることがなくて、部室の掃除までしてしもうた……これは本格的に身体がおかしいのかもしれん」
桜「まだ下校時間までには時間があるが、早めに帰ろう。そして寝よう……」
数時間後
桜(家に帰ってからすぐに眠る用意をして布団にもぐりこんだはいいものの)
桜「眠れない……全く眠くない……」
桜「丸一日以上眠らないなんて、常人でもかなり厳しい行為じゃというのに、わしがやることになろうとは夢にも思わなかった」
桜「どうしよう。今夜も眠れそうにない……」
桜「昨日の時点で眠るための対策は講じつくしてしもうた。あとはひたすら眠気が来るのを待つしかない」
桜「どうしてもだめなら、予習でもして時間をつぶそう……」
翌朝
桜「また一睡もできんかった……予習も今学期の範囲はあらかた終えてしまった。わしに何が起こっておるのじゃ……」
数日後
桜「とうとう睡眠薬を処方してもらってしもうた。わしには最も縁のない薬じゃと思っていたのに、中学1年でお世話になるとは、世の中何が起こるかわからんのお」
桜「数日眠っていないし、薬もあれば今晩は眠れるじゃろ」
数か月後
桜「もう、わしは眠ることを諦めた」
桜「医者に薦められたぎりぎりの量の睡眠薬を飲んでも全く眠気が来なかった。じゃが、どれだけ検査をしても異常は見つからない。とうとう打つ手がなくなってしもうた」
桜「最近、身体が思うように動かなくなってきた。テストでもケアレスミスを多発するようになってきた。わしの身体も限界が近いのじゃな」
桜「いっそ限界までたどり着いた方が眠れるのかもしれんな」
数年後
桜(わしは、まだ眠れない)
桜(とうとう体は全く動かなくなってしもうた。俗にいう寝たきりの状態じゃ)
桜(寝たきりではあるが、五感ははっきりとしておる。周りで何が起こっているかは理解できる)
ひなた「うう……桜ちゃ~ん!」
サドネ「サクラ……」
明日葉「お医者様もできる手はすべて尽くしたとおっしゃっていた……私たちは、この状況を受け入れるしかない」
桜(昨晩、とうとうわしは死亡認定をされてしまったらしい。それを聞いた元星守クラスのみんなが駆けつけてくれたわけじゃ)
桜(じゃが、わしは死んではおらん。だってわしは眠れないのじゃぞ?ならば『死』、つまり『永眠』もできないわけじゃ)
火葬場の係員「それではそろそろ火葬を始めさせていただきたいと思います」
桜(火葬?待て。今のわしの状況で火葬なんてされたらどうなるか……)
みき「これで桜ちゃんとは本当のお別れだね……」
詩穂「数年も眠れなかったんですもの。これでゆっくりお休みになってほしいですね……」
桜(待ってくれ。わしはまだ起きてる。起きてるのじゃ。誰か気づいてくれ!)
星守たち「桜ちゃん。おやすみなさい」
桜(あぁ、誰か、誰かわしを起こしてくれ!)
ギイイ、バタン。
>>20の最後の桜の台詞は
桜(あぁ、誰か、わしを眠らせてくれ!)
です。訂正します。
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