とある幻想の平行世界(パラレルワールド) (99)

【注意書き】

・このssは「東方Project」と「とある魔術の禁書目録」の二次創作です

>>1はss初心者です

・オリキャラが多数登場します

・独自設定、独自解釈を含みます

・更新速度が曖昧です(数日から半年ぐらい)

そういうのが嫌いな人は戻るなり閉じるなりしてください

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1376105561

ここは学園都市、超能力や自然科学などの研究を盛んに行っている巨大な実験都市だ。

大勢の学生を集めて授業の一環として脳の開発を行っており、学生の数は総人口の8割に及ぶ。

学校や学生寮などの数も半端ではなく、教育機関を中心とした造りをしているため、「学園都市」と呼ばれている。

しかし、それは表側の話。

裏では統括理事会公認の様々な非人道的な実験が行われており、それにより命を落とした学生の数は七桁にも及ぶ。

その学園都市の全てを支配する学園都市統括理事長、アレイスター=クロウリーは、窓のないビルに設置された生命維持槽にて外界を伺っていた。

アレイスターの目には、学園都市の整えられた街並みが映っている。

いつもと変わらない光景、退屈な光景、今のアレイスターの顔は誰が見ても退屈しているとわかるほど、表情が表れていた。

現在、アレイスターが五十年の歳月を費やし、推し進めてきた「プラン」が崩れつつあるというのもあるだろう。

このままプランの修正ができなければ、条件がそろうまでまた待ち続けなければならないのだ。

次もまた五十年かかるとは限らない。

もしかしたら世紀単位の時間を費やさなくてはならないかもしれない。

生命維持により手に入れた寿命は約1700年ほど。

それまでに条件がそろうかどうか怪しいところだった。

そんなことを考えていたアレイスターのもとに、一人の男が現れた。

既につまんね

???「何か、困っているのか?」


アレイスターは声の主に顔を向け、言葉を返した。


アレイスター『…何のことだ?』

???「君が困るようなことは大体わかる、プランの事だろう」


男にプランの事を指摘され、アレイスターは僅かに顔をしかめた。


アレイスター『貴方には関係のないことだ』

???「やはりそのことか」

アレイスター『…今日は何の用でここに来た』

???「そう怒るな、ここには少し暇つぶしに来た、現時点ではここが最も文明が発達している」

???「それに、『我々の世界』では解明されていなかったものがここでは当たり前のように研究されているからな」

アレイスター『……』

???「用がないなら帰れと言いたげな視線を向けるな、暇つぶし以外にも此処へ来た理由はある」


男はアレイスターの近くに座り、胡坐をかきつつ話を続けた。


???「他の世界に、興味はないか?」

アレイスター『…?』

???「実はこの前、ここと似た面白い世界を見つけてな」

???「その世界自体は普通だ、ある一点を除いてな」

???「二重の結界に隔離された箱庭のような空間が確認された」

???「そこへ送った偵察艇は、我々でも解析不能な代物を次々と観測した」

???「…君のプランを修正できるであろう『モノ』もな」

アレイスター『…なに?』

???「興味がでたか?こいつを使えば君のプランは修正どころか最終段階に移行するだろう」

アレイスター『……』

???「どうだ?私の暇つぶしに付き合う気になったか?」

男は薄く笑みを浮かべ、アレイスターを見上げている。

恐らく、この男は自分が断ったとしても「暇つぶし」を実行に移すだろう。

この男は自分と同じように、世界を「道具」としか思っていない。

その道具には恐らくアレイスター自身も含まれている。

だが、逆に言えば暇つぶしに付き合えばプランを一気に最終段階にまで進めることができる「モノ」を提供してもらえるのだ。

プランの修正を望むアレイスターに、断る理由などなかった。


アレイスター「…わかった、貴方に付き合おう」

???「君なら言うと思ったよ」

???「明日、また来る」

???「…あぁ、一つ言い忘れていたよ」

???「現地で得た情報だが、その空間は――」

???「――幻想郷、と言うらしい」

短くてすみませんが、今日はこれで終わりです。
気が向いたら読んでってください。

某クロスSSより話は荒そうだが、動きは激しくなりそうだな

ここは作者の更新が2ヶ月ないと落ちる(書き込めなくなる)

そうならない限り
現行のとある×東方その3として期待

DirtyDeedsDoneDirtCheap



自分のスピードでやってね~
アンチは気にすんな~

魔理沙「んー、おっかしいなぁ…」


魔法の森にキノコ狩りに来ていた魔法使いの少女、霧雨魔理沙は道に迷っていた。

いつもはもっと家に近い所でキノコを採っているのだが、珍しいキノコを次々と見つけ、奥へ奥へと入って来てしまったのだ。

だが、現在魔理沙を悩ませていたのはそのことではなかった。


魔理沙「どうして飛べないんだ…?」


そう、飛ぶことができないのである。

魔理沙にとって飛ぶことは、呼吸と同じくらい簡単なことだった。

だが、今はなぜかそれができない。

そして飛ぶことができなくなったことに対し、魔理沙は…


魔理沙「ま、いっか」


考えるのをやめた。


魔理沙「それよりここはどこだ?魔法の森特有の瘴気もないし…」


魔理沙は辺りを見回し、森の出口を探し始めた。

そして、少し離れた所に道らしき開けた場所を発見した。


魔理沙「お、助かったぜ!」


そして魔理沙は道に向かって駆け出した。

――



上条「はぁ、不幸だ…」


わたくし、上条当麻は現在絶賛不幸中である。

インデックスに噛まれ、ビリビリ中学生に追い掛け回され、道に迷い…

いつの間にか第二一学区の登山道を歩いていた。

このままいけば遭難も免れないかもしれない。


上条「はぁー…何をどうすればこんな山道にたどり着くんだよ俺ぇ…」

上条「おまけに携帯は圏外…俺の不幸っぷりからすると次は熊でも出るんじゃないのか…?」

ガサガサッ

上条「うおお!?さっそくフラグ回収!!?」

魔理沙「っぷは、やっと出られたぜ…」

上条「…は?」


とっさに身構えた上条だったが、草むらから出てきたのは魔女のような恰好をした少女だった。

上条「(…なんだこいつ?)」

魔理沙「ん?あ、そこのお前、ちょっといいか?」

上条「え?俺?」

魔理沙「お前以外に誰がいるんだよ」

上条「まぁ、それもそうだが…」

魔理沙「この道ってどっちに行けば人里に着くんだ?」

上条「…はぁ?人里?」


人里、という単語に心当たりがなかったが、道を聞いてきたということはこの少女も道に迷っているのだろうか?


上条「うーん、聞いたことないな…ってか里?」

魔理沙「聞いたことがないって、お前人間だろ?自分が住んでる里の名前も聞いたことがないのか?」

上条「はぁ?」

魔理沙「…まてよ?その恰好…お前もしかして外来人か?」


外来人?外国人のようなものだろうか?


上条「外来人ってなんだ?」

魔理沙「ははーん、その反応はやっぱりそうだぜ。」

魔理沙「よし!ついてこい、私が幻想郷を案内してやるぜ!!」

上条「え?うわっちょ、離せ!?」


少女は上条の手を引き、自分が迷っていることも忘れて駆け出した。

──第二一学区の端付近──



魔理沙「……」ポカーン

上条「…どうしたんだ?」

魔理沙「な、なんかでっかいのがニョキニョキ建ってるぜ…」

上条「…ビルのことか?別に珍しくもなんともないだろ?」

魔理沙「ビルってなんだよ」

上条「は?」

魔理沙「…まてよ?外来人のお前があれ知ってるってことは、外の世界ではまだ忘れられてないものだってことだよな?」

上条「さっきから何言ってるんだ?」

魔理沙「…もしかして……」

魔理沙「私が外の世界に出てっちゃったってことなのか…?」

上条「(話についていけない…)」

魔理沙「(いや、まだそうと決まったわけじゃない)」

魔理沙「(こいつがアレごと幻想入りしてきたって考えればアレのことを知ってるってのも納得がいく)」

魔理沙「(そもそも幻想郷に物が入り込んでくるってのはよく聞くがその逆は聞いたことがないな)」

魔理沙「(つまり私はまだ幻想郷の中にいる可能性が高いってわけだぜ!)」

魔理沙「(…いや、ここに来るまで妖精や妖怪がまったく出てこなかったな)」

魔理沙「(外の世界にはそういう類のものが全くいないって話だし…)」

魔理沙「(あんなでっかいのが幻想入りしてきたって話も聞いたことがないな…)」

魔理沙「(やっぱり私は外の世界にいるって可能性が高いのか…?)」ウーム

上条「…あのー」

魔理沙「よし、決めたぜ!」

魔理沙「お前、名前は?」

上条「え?か、上条だけど…」

魔理沙「私は魔理沙、これからよろしくだぜ!上条!」

上条「お、おう、よろしく…」

上条「…え?」

――



魔理沙「上条、待ってくれよー!」

上条「いつまでついてくるんだよ!?っていうか走ってばっかだな俺!!」

魔理沙「頼むって、泊めてくれたっていいじゃんかー!!」


なぜこんなことになっているかというと、山を下りて自分が外の世界(?)にいることを知った魔理沙が、帰る手段が見つかるまで上条の家に泊めてほしいと言い始めたことがきっかけである。

もう上条家にはすでに居候が一人(と一匹)いる上に、知らない女の子を泊めるわけにはいかないため、逃亡を謀ったのだが案の定追っかけてきたのだ。


上条「だから外の世界ってなんだよ!?家出してきたのか知らないが上条さんはもう家に人を泊めるような余裕はないですのことよー!!」

魔理沙「そんなこと知ったこっちゃないぜ!こうなったら意地でも泊まってやるからなー!!」

上条「不幸だー!!?」

――



インデックス「…で?これはどういうことなのかな?」ジトー

上条「えーっと…」←折れた

魔理沙「やっと…捕まえた…ぜ……」ゼェゼェ


わたくし、上条当麻は(ry

なぜインデックスが不機嫌なのかはわからないがこのままではまた噛まれるということは予想できる。


上条「(中途半端に誤魔化したらかえって危険かもしれないな…よし!)」

上条「ちょっと色々あってな、今日泊めることになったんだ」

魔理沙「よろしくだぜ☆」

インデックス「…ムガー!!」

上条「えぇ!?ちょ、なんで!!?」


その後、不幸だー!!という断末魔とともに上条の後頭部が犠牲になったことは言うまでもない。

今回も短いですが投下終了です。
数話ぐらい書き溜めできたら続きを投下します。


ふむ、一筋縄じゃいかない感じみたいね



上条さんェ...
さらに増えんのかな~

――



???「…?」


窓のないビル内の薄暗い部屋にて、その少年は目を覚ました。

少年は辺りを見回し、ため息をついた。

機械的な光が四角い部屋を照らしている。


???「…はぁ、どこだよ、ここ……」

???「おい、スキマ妖怪、居るんだろ?出てこいよ」


少年は、自分をここに連れてきたであろう人物に心当たりがあった。

幻想郷創造に関わっていた賢者と称えられる大妖怪、八雲紫である。

しかし、何度声をかけてもその妖怪は現れない。


???「…何がどうなってんだ全く……」

???「よっこらせっと…」


少年は立ち上がり、もう一度部屋を見渡そうとしたが、そこで自分の体にある違和感を覚えた。


???「…あ?どうなってんだ?」

???「能力の制限が解除されてやがる…」


少年はとある事情により、能力の使用をある程度抑えるように制限をされていた。

しかし、今はその制限がない。

少年は掌に光球を生成し、それを壁に向かって投げつけた。

軽く投げたにも関わらず、その球は音速を遥かに越えた速度で直進し、壁に激突した。

壁に傷一つ付かなかったのには多少驚いたようだが、能力の制限が完全に解除されていると知った少年は満足げに笑みを浮かべていた。

???『気が付いたようだな』

???「…あぁ?」


いきなり声を掛けられ、少年は辺りを見回した。


???「…お前誰だ?どこにいるんだよ、姿を見せやがれ」

???『慌てるな、私のところへは君の後ろの通路を通れば来れるだろう』


声に従い後ろを振り向くと、さっきまではただの壁だった場所に通路への入り口が開いていた。


???「…お前は何者だ?どうやって俺をここに連れてきた」

???『その質問にはこちらへ来てから答えよう』


少年は自分をここに連れてきた人物に興味を抱いたようで、言われるがまま通路を突き進んだ。

そしてビルの中心部である円形の大広間にたどり着き、ビーカーのようなものの中に浮かんでいる人物、アレイスターに目を向けた。

???「…ホムンクルスか?」

アレイスター『私はれっきとした「人間」だ』

???「で?俺をここに連れてきたのはお前ってことでいいのか?」

アレイスター『正確には違うが、君を譲り受けたのは私だ』

???「ふぅん…」

アレイスター『君の世界の事もある程度は聞いている。君は地底という場所に閉じ込められていたそうだな』

???「…確かに俺は地底で『隔離』されていたが…世界ってのはなんだ?」

アレイスター『単刀直入に言うが、ここは君の知る世界ではない』

???「……」

アレイスター『具体的に言えば幻想郷の外の世界でもない、君が住む世界とは全く違う別の世界だ』

アレイスター『平行世界(パラレルワールド)、とでも言っておこうか』

???「クッ…」

???「アハハハハハハハ!!」


少年は耐えられないといった様子で笑い始めた。

???「いきなりそんなこと言われて信じる奴なんて居るわけねぇだろ、お前バカか?アハハハハハ!!ゴホッグフ…」

アレイスター『…君が信じられないのも無理はない、私も最初は「あの男」の話を信じていなかったのだからな』

???「ハハハ!いいぜ、お前の言うことが本当だったとしよう」

???「それでお前は何の目的があって俺を受け取ったんだよ」

アレイスター『…見てのとうり、私は自由に動くことができない身だ』

アレイスター『それに五十年の歳月をここで過ごしている』

???「ふーん、それで?」

アレイスター『要するに、退屈なのだ。君を譲り受けたのはいい「退屈凌ぎ」になりそうだったからで、それ以外に理由はない』

???「なるほどねぇ…」

アレイスター『気に障ったか?』

???「全然、むしろお前の気持ちはわかる、俺も何年も前から地底で自由にできなかったんだからな」

???「こっちとしてもいい退屈凌ぎになりそうだしな」

アレイスター『そうか』

???「いいぜ、お前の言ってることが嘘か本当かは関係ねぇ、お前の暇つぶしに付き合ってやるよ」

???「…『お前』って呼び続けるのもなんか変か、名前は?」

アレイスター『…アレイスターだ』

???「俺は『霧雨紅蓮』だ。これからよろしくな、アレイスター」

紅蓮「(…笑ってやがるな。何を考えてんのか知らねぇが、せいぜい楽しませてくれよ?)」

――



上条「いてて…ったく、何でおれがこんな目に合わなくちゃいけないんだよ…」

インデックス「…ふん!」

上条「はぁ、不幸だ…」

インデックス「…で、そこの金髪の女の人はなんなのかな?見たところ魔術師みたいだけど……」

上条「え、魔術師?これコスプレじゃないの?」

魔理沙「私は魔術師でもコスプレでもないぜ、魔法使いだ!(コスプレってなんだ?)」

上条「…何が違うのか上条さんにはさっぱりなのですが……」

魔理沙「まぁ、名前が違うだけなんだけどな」

上条「それだけかよ!?」

上条「…そういえばまだ何で俺の家に泊まることになったのか聞いていなかったな」

インデックス「…泊まる理由もわからなかったのに宿泊を許可したの?とーま」

上条「いや、だって学区跨いでも追跡してきたし…」

上条「…それに、本気で困ってるみたいだったから、放って置けなかったんだ」

インデックス「…はぁ、とーまはやっぱりいつもどうりだったんだよ」

魔理沙「理由か?なに、大したことじゃないぜ?」

魔理沙「ちょっと帰れなくなっちゃったから泊まる場所がなくて困ってたんだよ」

魔理沙「まぁ、待ってりゃ紫あたりが迎えに来ると思うし、それまで泊めてくれたら嬉しいんだぜ!」

上条「…ちょっとまて、泊まるのが今日だけじゃないなんて聞いてないぞ!?」

魔理沙「いーじゃん、一日や二日増えたって変わらないと思うぜ?」

上条「なんかそれだけじゃ済まない気がする…」

上条「…まぁ、今更追い出すわけにもいかないけど……」

魔理沙「じゃ、決まりだな!」

上条「えー…」

魔理沙「そういえばお前の名前聞いてなかったな、なんて言うんだ?」

インデックス「え、私?正式名称は『Index-Librorum-Prohibitorum』っていうんだけど、長いからインデックスでいいんだよ」

魔理沙「インデックス?(目次か?)」

魔理沙「まぁいい、しばらくよろしくな、インデックス!」

上条「(しばらく、ねぇ…)」

終わりです。
ちょっと忙しくなるので次の投下が遅くなるかもしれません。

霧雨紅蓮……ねぇ
赤服魔翌理沙男版とか?

顔は魔理沙を少し男っぽくした感じです。
髪型は金髪ストレートヘアで、服装はボロボロの着物(茶色)です。

『なぁ。――俺の『未元物質』は、この世界でどこまで通用するんだ?』


…何故だ?


『なん、だ?』


俺は…一体……


『伝、達率が……?材質、情報系、統……信号の形……変化はない。変化はないはずなのに……』


どこで間違えた?


『ないはずなのに、変化はないはず、なのに。何を、した?「未元物質」内部のラインに干渉できたとしても、信号を逆流できたとしても、個々のブロックの先へ行く事はできなかったはずだ。なのに、何を、何……を……ッ!!』


あの時俺はアイツらを超えていたはずだ、なのになぜ…


『誰が始まりだったのかなンざもはやどォでも良い』


やめろ…


『きっと、こいつを止めたのも垣根帝督だったンだ。……今や、こいつを止めた「のが」垣根帝督だったとでも言うべきかもしンねェが』


やめろ…!


『学園都市第二位の超能力、「未元物質」は大したもんだ。オマエなンかにゃもったいねェチカラだよ。明らかに制御できる範囲を超えてやがる』


やめてくれ…!


『もしもオマエが世界のどこかに証を望むなら、俺がその爪痕になってやる』






垣根「やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」




垣根「ハァ…ハァ…」

垣根「……」

垣根「…俺…は……」


魔理沙が学園都市に迷い込む数日前、スクールのリーダーとしての垣根帝督は、一方通行の手により跡形もなく消滅したはずだった。


垣根「どうなってやがる…?」


能力の制御を奪われ、崩壊を始めていた身体は何事も無かったかのように元通りとなっていた。

それだけでなく、能力までもが以前と変わりなく使用できるのが確認できた。


垣根「俺は…死んだんじゃねぇのか……?」


垣根は立ち上がり、辺りを見回した。

目に入るのは木や草といった植物ばかりで、人工物どころか人の気配すら存在しない。

垣根は辺りを上空から確認するため、翼を展開して飛び上がった。

そして垣根は離れたところに集落のようなところがあるのを確認した。


垣根「(文明レベルが低いな、此処は学園都市の外なのか…?)」

垣根「(だが俺が外にいる理由がわからねぇ、そもそも俺は死んだはずだ)」

垣根「…ま、行ってみりゃ分かるか」


垣根は翼を大きく展開し、集落に向かって飛んで行った。

――人里の入り口付近──



垣根「よっと…」スタッ

ウワッナンカフッテキタゾ!!

ヨ、ヨウカイカ!?

垣根「(人は…居るみたいだな)」

垣根「…ん?」


垣根の方に、人が三人ほど走って来ているのが見えた。


慧音「おいこら、まて!!」

チルノ「はっはっはー!逃げろ逃げろー!!」

大妖精「あわわわわ…」

垣根「(なんだアイツら…コスプレか?)」

慧音「君、ソイツらを捕まえてくれ!!」

チルノ「させるかー!!」


パパパパァン!!


垣根「うおっ!?」


氷でできた羽根のようなものを生やした少女が垣根に光球を発射した。

垣根「(この糞ガキが!)」バサッ


しかし、垣根は翼を展開して光球を防いだ。


慧音「!」

垣根「この…!」ガシッ

チルノ「うわっ!」

大妖精「キャッ!」

垣根「(さっきのは…コイツ、能力者か?)」

チルノ「はーなーせー!!」ジタバタ

垣根「暴れるな、クソッ…!」

慧音「やめんか!!」ゴッ

チルノ「ぎゃっ!?」


垣根に光球を発射した少女は、青い服の女性が放った頭突きにより気絶した。


慧音「全く…君、この二人を捕まえてくれてありがとう。そして…済まなかった」

垣根「いえ、大丈夫ですよ(ホントだよ全く…)」

垣根「(…こいつら、日本語喋ってるな。少なくとも此処は日本か)あの、すみません」

慧音「ん?なんだ?」

垣根「此処は日本のどの地域なんでしょうか?」

慧音「…?此処は幻想郷だが……」

垣根「(幻想郷?そんな地域聞いたことねぇぞ…)」

慧音「…もしかして、君は外から来たのか……?」

垣根「外…?」

慧音「(人間には見えないな…新手の妖怪か……?)」

垣根「此処がどのような場所なのか、もう少し詳しく聞かせてもらえませんか?」

慧音「うーん、まだ授業の途中なんだが…まぁ、少しくらいならいいだろう」

――



垣根「……」

慧音「以上だ、他に何か聞きたいことはないか?」

垣根「(妖怪?妖精?この女、頭沸いてんのか…?)」

慧音「信じられないか?」

垣根「えぇ…そう簡単には……」

慧音「これでどうだ?」フワッ

垣根「!」

垣根「(浮いてやがる…コイツも能力者なのか……?)」

垣根「(いや、幻想郷とやらがどこにあるかは知らねぇが、恐らく学園都市外のはずだ)」

垣根「(そんなところに能力者が住んでる訳がねぇ)」

垣根「(…コイツの言っていることは本当なのか……?)」

チルノ「あうあうあー…」ピヨピヨ

大妖精「チルノちゃーん…」ペチペチ

垣根「(だとしたらコイツらは本物の妖精さんってか?)」

垣根「(…冗談じゃねぇ、常識が通用しねぇのは俺の能力だけで十分だっての……)」

慧音「…そういえば、ずっと気になっていたんだが、君は人間なのか?」


そう言われ、垣根は自分がどのような姿をしているのかを思い出す。

復活直後、辛うじて残っていた色素も抜けてしまっており体色は白一色。

口の中には暗い闇が広がっており、黒く染まった眼の中では虹彩が赤く輝いている。

そして背中から突き出る白く巨大な翼。

とても人間には見えないだろう。

身体を構成しているものは全て未元物質に置き換わっているため、もう人間とは呼べないのかもしれない。

垣根「…少なくともこの前までは人間でした」

慧音「ほう、今は人間ではないのか?」

垣根「体の構造は人間と同じですけどね」

チルノ「うー…ハッ!」ガバッ

大妖精「あ、チルノちゃん!」

チルノ「…あれ?此処どこ?」

慧音「起きたかチルノ。二人とも、とりあえずこの人に謝りなさい」

チルノ「よくわかんないけど、ごめんなさ~い!」

大妖精「えっと、すみませんでした…」

垣根「気にしなくていいよ、お嬢さん」

慧音「それじゃあ、私たちは授業に戻る。聞きたいことがあったら寺子屋に来てくれればいい」

垣根「親切にしていただいて、本当すみません」

チルノ「じゃーなー!」

大妖精「さようならー…」

――



垣根「…ハァ」

垣根「(面倒なことになってきやがったぜ全く…)」

垣根「(これからどうするんだ…今更学園都市に戻る価値なんてねぇよな)」

垣根「…とりあえず適当にブラブラしてみるか……」


そう言うと、垣根は翼を展開して人里を後にした。

終わりです。
次は来週か再来週の日曜日に投下します。

遅くなりました、投下します

御坂「ハァ…」

白井「あら?どうされましたの?お姉様」

御坂「…なんでもないわよ」


学園都市第三位の超能力者(レベル5)、御坂美琴は現在とても機嫌が悪かった。

原因はつい先日起きた博覧百科(ラーニングコア)での騒動、その中心にいたと思われる少年、上条当麻だ。

昨日にそのことについて詳しく聞こうとしたものの、いつもの癖で追い掛け回してしまい、結果逃げられてしまった。


御坂「(ったく…何でアイツはいつもいつも……)」

御坂「…ハァ……」

白井「…本当にどうされましたの?さっきから溜息ばかり……ハッ!」

白井「(もしやお姉様…またあの類人猿と……!!)」メラメラ

御坂「(毎回毎回何で私を頼らないかな…)」ブツブツ

御坂「…あれ?メールが来てる……佐天さんかな?」


御坂はメールを確認するため、携帯を開いた。

しかし、メールの送り主を確認した御坂はわずかに顔をしかめた。


御坂「(…学園都市統括理事会?)」


それは御坂にとってあまりいい思い出がないところだった。

暴走能力の法則解析用誘爆実験、絶対能力者進化計画。

それらの実験を公認し、実行してきたところである。


御坂「(珍しいわね、統括理事会からメールが送られて来るなんて…)」


そう思いながら、御坂はメールを読み始めた。

そこには――

――



紅蓮「これは…」ガサゴソ

紅蓮「ここが開くのか…」ガチャリ

紅蓮「なるほど、低温を維持して食料を腐らせないように貯蔵するのか…」フムフム


とある学生寮の一室、霧雨紅蓮は現代科学の結晶(冷蔵庫)の分析を行っていた。

そんな紅蓮を、外見が全く同じな二人の少年が観察していた。


???「…昨日からずーっとそういうことばっかりやっててよく飽きないねぇ、君」

紅蓮「まぁな、俺が居た世界じゃあこんなものはなかなかお目にかかれない」

???「貴方の世界の文明レベルは江戸時代並みという話でしたからね」

紅蓮「俺はさらにひでぇ所に隔離されてたけどな」ガチャガチャ

???「ちょ、あんまり乱暴に扱わないd」バキッ

紅蓮「あっ…」

???「…まぁいいよ、また買えばいいし」ハァ

紅蓮「…すまねぇ」

???「…それよりもうすぐ君の居た世界は『あの男』の遊び道具になっちゃう訳だけど、本当に良いの?」

紅蓮「かまわねぇよ、むしろ歓迎だ」カチャカチャ

???「それはまた、どうしてですか?」

紅蓮「色々あったんだよ…幸い、魔理沙だけはこっちに来てるみたいだし……」ガチャリ

紅蓮「おい偶数、これはなんだ?」バタン


そう言うと、紅蓮は冷蔵庫から何かを取り出した。

偶数「それ?…いちごおでんだね……」

紅蓮「おでんってことは食い物か?」

偶数「あまりお勧めしないよ、ゼロは気に入ってるみたいだけど…」

ゼロ「全く、オリジナルはなぜこれの良さに気付かないんですかねぇ」

偶数「…これのどこが良いんだか……」

紅蓮「…おでんは分かるがいちごが何なのかわからねぇな」

偶数「いちごは単品で食べると美味しいんだけどね」

ゼロ「組み合わせた方が美味しいに決まってるじゃないですか」

偶数「遺伝子レベルでの同一個体内でいちごおでんが好きなのはゼロと統一だけじゃないか…」

紅蓮「良いのか悪いのかさっぱりわからねぇ…」

紅蓮「…ところでお前らはあんな世界に何しに行くんだ?」

ゼロ「主に遺伝子資源や原石などの回収が行われる予定です」

偶数「拠点ができ次第、ゼロたちはその世界に送り込まれるんだったよね」

紅蓮「お前らは簡単に攻略できると思ってるんだろうが、アイツらは舐めない方がいいぞ?」

ゼロ「肝に銘じておきます」

紅蓮「…ゼロ、ちょっと頼みたいことが有るんだが……」

ゼロ「何ですか?」

紅蓮「いきなりこっちに飛ばされたもんだから地底に置いて来ちまったもんがあってな、取って来てくれねぇか?」

ゼロ「別に構いませんが」

紅蓮「悪いな」

紅蓮「…ちょっと散歩行ってくるわ」

偶数「何?また?」

紅蓮「良いだろ別に、減るもんじゃねぇしよ」

偶数「別にいいんだけどもう夜遅いしここら辺治安が悪いからさ…まぁ、『八人目』に認定された君なら心配いらないか……」

――



御坂「(八人目の…超能力者?)」


御坂のもとに届いた一通のメール。

それは現在存在する七人の超能力者達に送られた、新たな超能力者の誕生を知らせるためのものだった。


御坂「(…おかしいわね、この時期に能力診断(システムスキャン)なんて無い筈なのに……)」

御坂「(…まぁ、細かいことは別にいいか)」

白井「お姉様、どなたからでしたの?」

御坂「んー、なんか統括理事会からみたいなんだけど…」

白井「それはまた何で…?」

御坂「なんか八人目の超能力者が現れたとかなんとか」

白井「八人目の超能力者…?こんな時期に?」

御坂「(あれ?これ普通に喋っちゃったけど良かったのかな…)」

白井「それでその超能力者はどのような方ですの?」

御坂「あぁ、うん。えーっと…嘘……」

白井「…お姉様?」

御坂「序列…第二位……!?」

白井「第二位!?お姉様よりも上ですの!!?」

御坂「(名前は…霧雨紅蓮。能力名、力量調節(アジャストメント)……?)」

白井「…驚きましたわ、まさかお姉様よりも上の能力者が現れるなんて……」

御坂「私どころか第二位の人よりも上だからねこの人…あーあ、私今日から第四位か……」

御坂「(第四位ねぇ…)」


御坂はその数字から、元第四位である麦野沈利を連想した。


白井「お姉様!例えお姉様が第四位になろうとも…わたくしはお姉様を愛しておりますわ!!」ハアハア

御坂「う、うん、ありがと…それよりそろそろ寝ないと寮監に絞められるわよ?」

白井「もうそんな時間ですの?」

御坂「私は先に寝るわ、おやすみ」

白井「おやすみなさいまし…ウヘヘ」ワキワキ

御坂「…変なことしたらしばらく口聞いてあげないわよ?」

白井「わ、わかりましたの…」


そんなやり取りを繰り返しているうちに眠気は強くなっていき、御坂は意識を手放した。

終了です、次の投下日時は未定です

霊夢「…見つけたわ」


博麗霊夢は、現在ある異変の調査を行っていた。

過去に幻想郷を崩壊寸前にまで陥れた大異変の首謀者、霧雨紅蓮の失踪。

旧都から離れた小屋に軟禁されていたのだが、数日前に煙のように消えてしまった。

そして同日、紅蓮の妹である霧雨魔理沙も行方不明となっている。

紅蓮の失踪直後しばらくは地底で調査を行っていたが、今は魔法の森付近で調査を行っていた。

そして霊夢は、異変の元凶ともいえる存在に遭遇していた。

魔法の森の上空付近、青白い光を放つ物体が浮遊している。

直径は十八間(約33m)ほどだろうか。

それは徐々に高度を下げ始め、人型の何かを大量に投下し始めた。


霊夢「(何よあれ…あんなもの幻想郷にあったかしら?)」

霊夢「…ま、行けばわかるか」

――



魔理沙が来てから早数日、一向に迎えが来る気配がない。

魔理沙は「あー、そういえば今アイツ冬眠してたっけ」とか訳の分からないことを言っていたが…

居候が二人(と一匹)に増えたため、上条家の家計は火の車である(元々だが)。

そのため、上条は学校+補習を終えた後に青髪の居るパン屋でバイトする羽目になってしまった。

そして肝心の居候二人はというと…


インデックス「とうまー晩ごはんまだー?」ダラー

魔理沙「ふーむ、外の世界の式神は自分で動いたりしないのか…」カタカタ


家事の一つもせずにフリーダムに過ごしていた。

…不幸だ。

魔理沙はパソコンに興味があるようで、キーボードやマウスをいじっている。

上条「もう少し待ってろって」

インデックス「早くするんだよ、もう我慢の限界かも…」グテー

魔理沙「あー駄目だ、さっぱりわからないぜ…」カチカチカチカチ

上条「ほら、飯だぞーインデックス」

インデックス「わーい!」

魔理沙「またモヤシ炒めかよ…日本人ならもっとこう、魚とか味噌汁とか和食っぽいのを食おうぜ?」

上条「仕方ないだろ?魚どころか味噌を買う余裕すら無いんだからさ…」

魔理沙「ったく、そんな食生活ばっかしてるとモヤシになっちまうぜ?」

上条「魔理沙が来る前までは三日に一度はまともな食事してたんだぞ?」

魔理沙「なんだよ、私のせいだって言うのか?」

上条「(そのとうりでございます)」

インデックス「ほーははひんほーははらひはははひんはほ」モッシャモッシャ

上条「こら、口の中の物を飲み込んでからしゃべ…おいインデックス!?俺の分まで食べるんじゃねぇ!!」

魔理沙「うーん…」シャクシャク

上条「…不幸だ……」


テレビでも見ようかと思ったが、リモコンが見つからない。

…俺が何をしたって言うんだ……

仕方がないので手でテレビの電源を入れる。

しかし、どのチャンネルもニュースばかりで面白そうな番組は見当たらない。

上条「(そういや最近八人目の超能力者が誕生したって話題になってたっけ…)」

魔理沙「なぁ上条、超能力者ってのはそんなにすごい奴なのか?」

上条「あぁ、なんでも一人で軍隊を相手にできるとかなんとか…」

魔理沙「ほえーすごい奴らなん…!?」


魔理沙は突如、目を見開きながら硬直した。

テレビの画面をじっと見つめているようだが…

画面を見ると、話題の八人目の名前と顔写真がでかでかと映っていた。


上条「魔理沙、どうした?」

魔理沙「い、いや、なんでもないぜ…」

上条「そうか?ならいいけど…」

魔理沙「……」

魔理沙「(何で…何でアイツがここに居るんだよ……!?)」


魔理沙がこのような反応をするのは無理もないだろう。

そこに映っていたのはまだ魔理沙が幼いころに行方不明となっていた自分の兄、霧雨紅蓮だったのだから。

――



とある学生寮の一室。

昼間にも関わらず、カーテンを閉め切った部屋に、機械的な音声が響いた。


???『…おいオリジナル、仕事だぞ』

偶数「うーん…」ゴソゴソ

???『起きろこのクソ野郎、もう昼だぞ』

偶数「うるさいなぁ…なんだよ統一……」

統一『ちょっとまずいことになってな…第二一学区に博麗の巫女が侵入した』

偶数「……」ウトウト

統一『…話聞いてるのか?』

偶数「あーうん、聞いてる聞いてる。で?なんだって?」

統一『ハァ…だからな、博麗の巫女がこっち来ちまったっつってんだよ』

偶数「ふーん、それで?」

統一『それでじゃねぇよ、今八人目は巫女とぶつけれるような状態じゃねぇだろ?』

偶数「あー…」

統一『じゃあ頼むわ』

偶数「ちょっと待ってよ、侵入者の処理は統一がやるって言ってたじゃないか」

統一『まだ「ベータ」の調整が終わってねぇんだよ』

偶数「ハァ…わかったよ」

統一『じゃ、頼んだぞ』

偶数「ハァ…まぁ、久々に体を動かすのも悪くないか……」


そう言うと、偶数は身体を起こし、


偶数「…フフ…アハハハハハ……!!」


狂ったように笑い始めた。

偶数「良いねぇ…フフフ、ハハッ……!!」


偶数は、決して常識的な人間ではない。


偶数「どうやって『壊して』やろうか…アハッ……!!」


暗部が解体されてなお闇に居続けることを選んだ『新入生』と同じような存在だ。


偶数「殺さずに…じっくりゆっくりと…アハハ!!」


そして、学園都市が生み出した究極の殺戮兵器でもある。


偶数「見せてやるよ…学園都市の…『木原』の…恐ろしさを……!!」


自分の欲望を満たすための玩具を見つけた『木原』は、それを手に入れるために行動を開始する。

終わりです
ペースがちょっと落ちてますね、すみません

霊夢「くっ…!なんなのよこいつ!?」


現在、博麗霊夢は追われていた。

飛行物体が投下した物を調べようと魔法の森に降下したのだが、突如背後から何者かに襲われたのだ。

そこらの妖怪ならば一瞬で倒すことができただろうが、それは妖怪ではなかった。

人の形をしているが、明らかに人間とも違う外見をしており、宙に浮いている。

霊夢を見下ろしているそれは、青白い光を放つ翼を持ち、頭上には輪のようなものが浮かんでいる。

その何者かの姿を捉えた霊夢は、その異様な見た目に天使を連想した。

霊夢は知る由もないが、外の世界の人間が見ればそれが高度な技術で作られた『ロボット』だということに気がついただろう。

その『ロボット』は霊夢に向け、青白い光球を放ちながら追いかけてきており、霊夢が『空を飛んで』逃げ始めた後もしつこく追跡してきている。


霊夢「もう、しつこいわね…!」


そう言うと霊夢は懐からカードを取りだした。


霊夢「霊符『夢想封印』!!」


霊夢がそう叫ぶと、カードから色鮮やかな光球が放たれ、『ロボット』に直撃した。

人間で言う左半身にあたる部分に光球を受けた『ロボット』は、残骸をまき散らしながら森に落ちていった。


霊夢「ハァ…なんなのよ一体……あれ?」

霊夢「此処…どこ……?」

――



『…再き…か完了。身体状…把握』ギギ…


霊夢が撃ち落とした『ロボット』は、機能を停止していなかった。

それはゆっくりと体を起こすと、損傷した左半身の腕と脚を動かしながら身体の状態を確認し始める。


『…レ…トハンド…フトフ…ートの損しょ…言語機…の…異…確認。自己…復を開いい…ぃ……』ドクッ…ズル…


突如、『ロボット』の損傷した部分から何かが噴出した。

それはドロドロとしたオイルにも見え、束ねられた黒いコードのようにも見える。

それは近くにあった損傷部品を絡め取るとまるでジグソーパズルのように元の形へと組み変えていく。

やがて、多少亀裂は存在するものの、『ロボット』はほぼ完全に修復されていた。


『……修復率99.84%、各機能の動作テストを開始』


不安定だった声も、今はクリーンになっている。


『…異常なし。任務、続行可能と判断』

『現時点の戦力では侵入者の撃破は困難と判断。「FTC学園都市支部」への支援を要請』

『…暗部組織「センター」の出撃を確認、要請を中断』

『暗部組織と合流次第、侵入者撃破を再開』

???「もう合流してるけど?」


背後から声が聞こえた。

『ロボット』が振り返ると、背中に大きなバックパックのような物を背負っている少年が立っている。

少年は音楽プレイヤーのようなものをいじりながらこちらに近づいてきた。


『…暗部組織「センター」構成員、「木原偶数」との合流を確認。以後、バックアップに移行』

偶数「…相変わらずだねぇ、君。もっと人間っぽく話せないの?」

『…私は人と対話できるよう設計されたヒューマノイドと違い、軍用に設計されたアンドロイドです』

『故に感情等の情報が入力されておらず、人らしく振舞うことはありません』

偶数「ふーん。それで、博麗の巫女はどこ?」

『…滞空回線(アンダーライン)からの情報を受信、南西約1300mの位置にて侵入者を補足』

偶数「便利だねぇ…あ、僕一人で片づけるから君は引き続き警備よろしくね」


『ロボット』が偶数がいた方に振り向いた時には、そこには誰もいなかった。

――



霊夢「…なんなのよあれ」


霊夢は今、第二一学区の端の辺りにいた。

目の前には地面から生える巨大な建造物が多数存在している。

霊夢は今の状況を整理し始める。


霊夢「(…あんなものは幻想郷に存在しない…となると此処は外の世界?)」

霊夢「(何で魔法の森が外の世界と繋がっているのかしら…魔理沙は此処に来てるかもしれないわね)」

霊夢「(…地底から失踪した魔理沙のお兄さんとも関係があるのかしら……?)」

偶数「何か考え事?」

霊夢「!?」

気が付くと、霊夢の目の前には一人の少年が立っていた。

偶数「んー?どうしたの?」

霊夢「…貴方、何者?」

偶数「え、僕?どこにでもいる『マッドサイエンティスト』だけど?」

霊夢「…もう一度聞くわよ?貴方、何者?」

偶数「……」

霊夢「悪いけど、貴方みたいなのとは関わりたくないわ」

霊夢「『血の匂い』がするもの」

偶数「…フフッ」

霊夢「…?」

偶数「アハハハハハハハ!!」

偶数「いいよ、いいよ…フフッ……!」

偶数「大丈夫、『殺さない』からさぁ…!」

霊夢「ハァ…またか……」


霊夢は先ほどと同じように懐からカードを取り出し、目の前の少年に夢想封印を叩き込もうした。

だが、

偶数「遅いよ」

霊夢「!?」


霊夢の脇腹に偶数の蹴りが入った。

ミシッ と、嫌な音が聞こえ、霊夢は数メートル吹っ飛ばされる。


霊夢「ぐはっ…!?」


地面を転がり、木に激突して停止する。

その場に蹲り、脇腹を押さえている霊夢へと、偶数は近づいていく。

その顔に、歪んだ笑みを浮かべながら。


偶数「『殺しは』しないよ…アハハハ……!」

偶数「君にはまだ『役目』があるからねぇ…フフフ……!」


そういうと、偶数は霊夢の腹に数発蹴りを入れた。


霊夢「がぁ…くっ、あぁ……!!」

偶数「あはは!あはははは!!」ゲシッガッ

偶数「あはは…」ゲシッ

偶数「……」

霊夢「あ…うぅ……」

偶数「…なんだよ、もう終わり?この程度で?」


霊夢は偶数の言葉に反応しない。

どうやら気を失っているようだ。


偶数「…やっぱりコイツもただの人間、かぁ……」

統一『…おい、そこまでにしとけ』

偶数「あ、統一。見てたの?」

統一『お前が博麗の巫女を殺していねぇか気になってな』

偶数「でもさぁ、全然遊んでないんだけど」

統一『…ったく、キチガイが』

偶数「統一にだけは言われたくないんだけど」

統一『今はそんなことどうでもいい、早くそいつ連れて帰ってこいよキチガイ』

偶数「はいはい…」

偶数「…つまんないなぁ……」

とりあえず終わりです

偶数の外見ですが、目や髪の色は黒で、服装は長点上機学園の制服の上に白衣を羽織り、山登りをするときに使うような大き目のバックパックを背負っています。
音楽プレイヤーのようなものは白衣の胸ポケットに入れており、そこからイヤホンのコードのようなものが耳に伸びています。

紫色の景色が広がる空間に、一人の女が立っていた。

女は空間上に開いている穴を覗き、目を細めている。


???「…紫様」

紫「藍…」


紫と呼ばれた女の後ろに、もう一人女が現れる。


藍「…博麗の巫女が幻想郷から姿を消しました」

紫「…そう、霊夢も……」

藍「外の世界も捜索しましたが、見つかりません」

紫「……」


紫は相変わらず空間に開いた穴を見つめている。

その穴には博麗の巫女を襲った『ロボット』と同じようなものが、魔法の森を徘徊している様子が映し出されている。


藍「…紫様、あの者たちは一体何者なんですか?」

紫「…わからないわ」


その言葉を聞き、藍と呼ばれた女は表情を曇らせた。

八雲紫は幻想郷の創設者の一人であり、地上でもっとも力を持った妖怪である。

幻想郷はもちろん、外の世界の事も常に把握することができる能力を持っている。

その紫がわからないと言ったのだ。

紫「一応、あの傀儡と似たものは外の世界にも存在するけど、あそこまで高度なものじゃないわ」

紫「それに、あれは私の能力の干渉を受け付けないのよ。外の世界でそんなものが作れるわけがないわ」

藍「紫様の…能力を……?」

紫「月の民の刺客ってわけでもなさそうね。彼らは争いを好まないし、あんなものは作らないものね」

藍「……」

紫「…まぁでも、外の世界でも動きがあるようですし、あれが外の世界の人間が作ったものじゃないって断定するにはまだ早いでしょうけど」

藍「…外の世界ではどのような動きがあるのでしょうか」

紫「ある企業の人間が幻想郷近辺を嗅ぎまわっているのよ」

紫「あの傀儡が現れた日から数日ほど経ってからね」

藍「企業?」

紫「『Future Technology Corp』、略称は『FTC』。地上で最も高度な技術を有しているロシア系の巨大軍事企業」

紫「アポロ計画やソユーズ計画などに関り、月面戦争を起こした元凶でもあるわ」

藍「…それほどの企業の人間が幻想郷近辺で何かしら動きを見せていると」

紫「えぇ」

藍「…紫様、私はこれからどのように動けばいいのでしょうか」

紫「そうね…とりあえず、『FTC』の動きを監視しててくれないかしら?」

藍「わかりました」


そう言うと、藍は背後に現れた空間の裂け目に入り、裂け目とともに姿を消した。

紫「…もうそろそろ出てきたら?」

???「…いつから気が付いていた?」

紫「最初からよ。多分、藍も気が付いてたんじゃないかしら」

???「…そうか」


突如、一人の男が音もなく姿を現した。

その男はゆっくりと紫の方へ歩いてくる。


紫「…で、何の用かしら?」

紫「『FTC』創設者にして月面戦争を起こした元凶、『フラスト=グロスマン』」

フラスト(?)「…確かに私は『フラスト=グロスマン』だが、君が言っているのは恐らく私の事ではない」

紫「…それはどういうことかしら?」

フラスト(?)「お前に話す必要性がどこにある?」

紫「…そうね」


紫の周りの空間が引き裂かれ、巨大な穴が出現した。

その穴からは先の尖った鉄の塊が顔を覗かせている。


紫「…貴方が現在幻想郷で起きている異変の首謀者なのかしら?」

フラスト(?)「そうだが?」


自分が異変の元凶だということを、男はあっさりと肯定した。


フラスト(?)「…やめておけ、核兵器程度では私を殺すことなどできんよ」

フラスト(?)「それにこの『身体(ハード)』は私の精神を出力するための『端末(アバター)』に過ぎない。替えなどいくらでもある」

紫「…化け物」

フラスト(?)「妖怪であるお前に言われたくはないな」


紫は周りの空間を元に戻すと、フラストを睨み付けた。

紫「貴方は一体何の目的があって、異変を起こしているのかしら?」

フラスト(?)「ただ単に、退屈だったからだよ」

紫「……」

フラスト(?)「君もよくやっていることだろう?外の世界の住民を自分の気まぐれで呼び込み、その者の運命を傍観する」

フラスト(?)「私はそれを異世界規模でやっているだけの事だ」

フラスト(?)「まぁ、彼、彼女らを取り返したければ勝手にすればいい。私は楽しめればそれでいいのだ」

紫「…それなら、勝手にさせていただきますわ」


ドゴオオオッ!! と、空間内に轟音が響き渡る。

紫が列車をフラスト(?)に叩き付けた音だった。

普通の人間ならば、そんなことをされれば即絶命するだろう。

『普通』の人間ならば。


フラスト(?)「…核兵器でも殺せないと言っただろう。この身体が複製だということもな」


フラストはそこから一切動かず、片手のみで列車を受け止めていた。

列車の方は正面が潰れ、残骸が飛び散っている。


フラスト(?)「…逃げたか」

フラスト(?)「まぁ良い。どうせ、もう奴には何もできんのだからな」

――



魔法の森の奥深くに、透明なドーム状の物体が存在している。

直径は200mほどの巨大なものであるが、遠くからだと判別しにくいものだった。

そのドームから少し離れた所から、二人組の少女が様子をうかがっている。


大妖精「やっぱりやめようよチルノちゃん…」

チルノ「だいじょーぶだって、もしなんかあってもアタイが大ちゃんを守るからさ!」

大妖精「うぅ~…」

チルノ「それじゃ、いちにのさんで突撃だー!!」

大妖精「えぇ!?」

チルノ「いっくよー!いーち!!」ダダダダッ

大妖精「ちょ、チルノちゃん!?二と三はー!!?」


ドーム状の物体に突撃していく妖精一人と馬鹿一匹。

しかし、ドームまであと少しというところで…


チルノ「うおおおお――」シュンッ

大妖精「え!?チルノちゃ――」シュンッ


その二人組は姿を消した。


???「あっちゃー…まだ座標が曖昧な場所があったか……」


上空からその二人を見下ろすように観察していた青年は、頭を掻きながらアンテナのような装置を取り出した。

青年はそれを二人が消えた場所へと向ける。


???「これで良しっと…向こうに行っちゃったのは……まぁ、あっちが何とかするか」

???「それにしても、父さんは悪趣味だなぁ。こんな文明レベルの低い世界同士を争わせるなんてねぇ」

???「…なかなか面白いじゃないか、フフッ」ズプッ


青年はドーム状の物体に身体を沈めた。


???「おー、結構できてるねぇ…」


ドーム内部には、幻想郷とは思えない光景が広がっていた。

その光景はどちらかと言えば外の世界に近い。

中央には、三角柱を捻ったような建造物が建っている。


???「もうそろそろだね…僕も傍観させてもらうとするよ、父さん」

終わりです
フラスト(?)は、目が青く銀髪で、二十代後半の白人のような外見で、
チルノ達を十空から観察していた青年は、目は緑色で髪は黒く、二十代前半の東洋人のような外見です

第七学区の大通り。

普段は大勢の人が行きかうこの道に今、人はいない。

それは今が夜だからである。

学園都市では、全域に設定された完全下校時刻に合わせて運行ダイヤが組まれているため終電が早くなってしまうのだ。

そのため、生徒たちは自然と早めに寮に戻ることになる。

スキルアウトなどの例外はいるものの、その多くは路地裏などでたむろっている。

そんな人気のない大通りに、一人の少年が現れた。

髪、肌が異様に白いその少年は、杖を突きながらゆっくりと歩いている。

学園都市第一位、一方通行(アクセラレータ)。

あらゆるベクトルの『向き』を操作し、理論上ならば核兵器だろうと無効化すると言われる超能力者である。

そんな力を持った少年、一方通行の背後から、複数の人影が迫っている。

その人影の手には、鉄パイプやら金属バットやらが握られている。

徐々に距離を詰め、あと数歩で一方通行に追いつくほどの距離になったとき、

カチッ と、何かのスイッチが入る音がした。

それと同時に一方通行にバットが振り下ろされ、そして――

――



学園都市に存在する七人の超能力者(レベル5)は、スキルアウトなどの無能力者集団に襲撃されることがある。

その襲撃犯の多くは、超能力者達を甘く見ていたり、自分たちが勝てば強さが証明されると思い込んでいるものがほとんどだ。

今、一方通行の足元に転がっている少年たちもその類である。

学園都市第一位である一方通行は、無能力者に敗北し、その後に起きた事件で能力に制限がついてしまった。

そのため、高い頻度で襲撃されるようになってしまったのだ。

最近はあまりされなくなったものの、まだ襲撃を考える輩もいる。


一方通行「…あァ?」


ふと、一方通行は自分から20mほど離れた位置に一人少年が立っていることに気が付いた。

その少年は一方通行の方に近づいてきている。


一方通行「オマエは…」


一方通行はその少年を知っていた。

今目の前にいる少年は、今学園都市で話題になっている八人目の超能力者、霧雨紅蓮。

テレビで放送される話題はこの少年の物ばかりだった記憶がある。


紅蓮「お前が第一位って奴か?ふぅーん、なるほどねぇ…」

紅蓮「(…ホムンクルスに続き雪女みたいな奴が出てきやがったな……)」

一方通行「…何の用だよ、第二位」

紅蓮「いやぁ、ちょっと自分より上の能力者様の顔を拝みにな…」

一方通行「…用がないンならもう帰れ、俺も急いでンだからよォ」

紅蓮「…あぁ、そうするわ」


二人の超能力者は交差するようにして、互いとは別方向に歩き始めた。

紅蓮「(…あれが、第一位ねぇ……)」

紅蓮「(ま、能力の制限もあるし…理論上、『アイツの攻撃は俺に届かない』だろうから現時点じゃ俺が学園都市最強かねぇ?)」

紅蓮「(…こっちで最強でも意味がねぇんだよクソが……)」

紅蓮「…偶数か」


紅蓮から見て右側にある路地に、白衣を着た少年が立っていた。


偶数「全く…困るよ。よりにもよってアイツに会うなんてさ……」

紅蓮「…何か都合の悪い事でもあんのか?」

偶数「いやね、アイツは暗部の事になると自分から突っ込んでくるから厄介なんだよね」

偶数「それに…いや、なんでもない」

紅蓮「…お前はあっちに行かないんだったか?」

偶数「さあね、興味があったら直接行くかもしれないけれど…」

紅蓮「…ま、せいぜい気を付けとけよ。恐らくアイツはこっちでの『能力』のカテゴリに入らない奴だからな」

偶数「ふーん、わかったよ」

偶数「…話が逸れちゃったね。とにかく、自分以外の超能力者には近づかないようにしてよ」

紅蓮「…なぁ偶数」

偶数「ん?」

紅蓮「それだと『お前も』対象に入れなくちゃならないんだが」

偶数「…僕は序列に入ってないし、『今は』無能力者だから例外ってことで」

紅蓮「…あぁ、わかったよ」


二人はそのまま話を続けながら歩きはじめる。


偶数「そういえば、ゼロは明日幻想郷に行くんだってさ」

紅蓮「…博麗の巫女やスキマ妖怪は今どうなってんだ?」

偶数「巫女は僕が片づけたよ。八雲紫は…上が直接『能力を封じた』みたいだから大丈夫じゃない?」

紅蓮「スキマ妖怪はどうでもいいが…お前、どうやって巫女をやった?」

偶数「…結構あっさり倒せたよ。飛行能力を封じれなかったのには驚いたけど、博麗の巫女としての力は鈍らせることができていたみたいでね」

偶数「能力を使用する前に蹴りまくったら気絶した」

紅蓮「フェアじゃねぇな」

偶数「だって能力を使用されたらあの男だって干渉できるかどうかわからなかったんだもん」

紅蓮「それは認めるが…」

偶数「それに…」

偶数「(あの男が望むように世界を動かさなきゃ…この世界は……)」

――



一方通行「……」


一方通行は、ある少年について考えていた。

第二位の事ではない。

第二位に接触する前にあった路地、あそこに立っていた少年だ。

その少年はこちらを見た後僅かに顔を逸らしていた。

その時、少年は顔を青くしながら震えているように見えた。

一方通行はその少年の姿を、以前どこかで見たことがある気がしたのだ。


一方通行「…チッ」

一方通行「(一体なンだってンだよ、アイツは…)」

一方通行「……」


一定の間隔で、杖を突く音が辺りに響いている。

今の一方通行には、帰るべき場所がある。

複数の研究施設でたらい回しにされ、ずっと孤独だった時とは違う。

それに、守るべき存在もいる。


一方通行「(…ン?研究施設……!?)」バッ


突然、何かを思い出したかのように、一方通行は振り返った。

しかし、大通りには一方通行以外に誰もいない。


一方通行「(…アイツ……)」



『ねぇ、―――。僕ってさ、「欠陥品」なのかな…』



一方通行「……」


一方通行はしばらくその場に立ち尽くしていた。

無理もないだろう。

あの少年は、あの頃の一方通行に歩み寄ってきた唯一の人間であり、

一方通行の目の前で死んだはずの少年だったのだから。

早いですが投下します

上条「クッ…!」ゼェ…ゼェ…


上条当麻は、危機的状況に陥っていた。

辺りには大勢の人、人、人。

数えきれないほどの人が溢れている。


上条「(何てことだ…まさかこれほどなんて……!)」


上条は物陰に隠れ、呼吸を整える。

辺りからは怒声や叫び声が絶え間なく聞こえてくる。


上条「(どうする…このままじゃ……!?)」


ふと、上条は前方を見る。

すると、まるで濁流のように人が迫ってきているのが見えた。


上条「(このままじゃ…ヤバいッ!!)」


上条は身をひるがえし、後方を確認する。


上条「…ッ!あった!!」


今回の騒動の『元凶』を、上条は見つけることができた。

その『元凶』に向かい、全速力で走った。


上条「うおおおおおおおお!!とどけえええええええええええええ!!!」


上条は右手を『元凶』に向け伸ばす。

そして、


上条「獲ったどおおおおおおおおおおおおお!!」

                  タマゴ
バーゲンによって破格の安さとなった『元凶』を掴み取った。

――



インデックス「うーん…これっぽっちじゃ食べた気がしないかも」モグモグ

魔理沙「やっぱ肉はもっとこう…ガツーンと食いたいよな」モグモグ

    バーゲンセール
上条が血みどろの戦いを繰り広げている場所から少し離れた所で、インデックスと魔理沙は試食コーナーに置いてある商品(主に肉類)を殲滅していた。

店員が慌てふためいている様だが、そんなこと知ったことかという勢いで二人は肉を貪り続けている。


魔理沙「それにしても、肉なんて久しぶりに食ったなぁ」モグモグ

インデックス「この魚肉じゃないソーセージなんてとうまは絶対に買ってくれないもん、今のうちにたくさん食べるんだよ」モグモグ

店員「(…この黒いの新しくリストに追加しとくか)」

魔理沙「それにしても、なんか凄いことになってるな」


魔理沙は安くなった商品にゴキブリのように群がる人間の方に視線を向ける。

すると上条がもみくちゃにされながらも人の波から這いずり出てきているのが見えた。


上条「プハァッ…死ぬかと思った……」グテー

魔理沙「お疲れさん、これ食うか?」ヒョイッ

上条「あぁ、ありがとう…」パクッ

上条「おお、旨いなこれ!」

インデックス「そう思うんなら魚肉じゃないソーセージも偶には買ってほしいんだよ」

上条「そう思うんなら少しは食べる量を減らしてほしいと上条さんは思うのですが…」

インデックス「それは私に死ねと言っているのかな?」

上条「そこまで言ってねーよ…つーかお前また試食品食い尽くしたのか!?」

インデックス「むぅー、私だけじゃないもん!魔理沙もだもん!」

上条「魔理沙もかよ…」

魔理沙「いいじゃん、食ってもいいやつなんだからさー」

インデックス「そうなんだよ」

上条「限度っていうものがあるだろ…まぁいい、行くぞ」

上条は会計をすませ、レジから離れようとした時だった。

ポン と、上条の肩に手が乗せられた。

見ると、ガタイのいい店員の一人が、上条の肩をガッチリと掴んでいた。


上条「(ウホッいい店員…じゃなくて)」

上条「な、何でせう?」ビクッ

店員(♂)「お客さん…万引きは感心できないな」

上条「え?…えぇ!?ちょ、何かの間違いですよ、俺万引きなんてしてません!!」

店員(♂)「だったらそのポケットのお菓子はなんなんだ?」

上条「…ヘ?」


上条はズボンのポケットを見た。

ポケットにはこれでもかというほどお菓子が詰め込まれていた、というかバレバレである。


上条「まって違う、俺じゃない!俺じゃありません!!俺じゃないから取り調べ室に連れて行こうとしないでー!!!」ズルズル

魔理沙「(チッ、さすがにあれは欲張り過ぎたか…)」
                     アッー!
店員(♂)「そう慌てるなって、一時間くらい『お話』すれば見逃してやるからさ」

上条「な、なんかものすごい嫌な予感がするのですが…」

店員(♂)「お客さん、よく見ればなかなかイイ男じゃないの」

上条「ッ!?」ゾッ

店員(♂)「詳しい話は取り調べ室でヤろうか…」

上条「ちょ!?魔理沙、インデックス、助けて!!」

インデックス「自業自得かも」シレッ

魔理沙「泥棒はいけないことなんだぜ!!」キリッ

上条「ちくしょおおおおおおお!!」ズルズル


<不幸だー!!


魔理沙「…帰るか」

インデックス「…うん」

短いですが今日の投下は終了です

乙乙乙乙

後から確認してみたんですが色々とズレまくっちゃってますね、すみません

インデックス「うーん…」キョロキョロ

魔理沙「…?」キョロキョロ


戦死者、上条の屍を超え、スーパーという名の戦場を後にしたインデックスと魔理沙。

しかし、彼女らは今、予想していなかった事態に陥っていた。


イン&マリ「迷った…」

マイゴ
遭難である。

インデックスは、完全記憶能力を持っているものの、学園都市の複雑な構造を把握できないでいる。

また、魔理沙は学園都市に来てからあまり日が経っていない上に、普段は寮に引きこもっている。

故に、二人は迷ってしまった。


インデックス「あーもー!早く帰らないとカナミン始まっちゃうのにー!!」

魔理沙「落ちつけって。うーん、ホントここどこだ?」


二人は辺りを見回すが、どこを見渡しても同じようなビルが建ち並んでいる。

この二人は知る由もないが、ここは第一八学区。

どこをどう行ったのかは不明だが、いつの間にか二人は別の学区まで来てしまったのだ。

魔理沙「んー…ん?」


ふと、魔理沙は道の向かい側にあるとあるファミレスに目を止めた。


魔理沙「…ッ!あいつ…!!」

インデックス「どうしたの?魔理沙」


話しかけられるも、魔理沙はファミレスに向かい歩きはじめる。

インデックスは魔理沙を止めようとしたが、信号を待っていた人ごみの集団に流されてしまった。


インデックス「ちょ、待ってよ魔理沙!」

魔理沙「(やっぱり…あいつは本当に……!)」

インデックス「ま、魔理沙ー!どこー!!」キョロキョロ


インデックスの呼びかけが耳に入っていないようで、魔理沙はそのままファミレスに入る。

人ごみから抜け出したインデックスは、そのまま魔理沙を見失ってしまった。

――



偶数「――で、魔法の森の制圧は完了」

偶数「魔法使いと交戦したみたいだけど、相手はA-388に損害を与えることはできなかったみたいだね」


偶数は、ファミレスでの食事の合間に、幻想郷の現状を報告していた。

席には、偶数のほかに二人の男が座っている。

一人は紅蓮、もう一人は――


偶数「で?土御門はどうするの?」


――土御門元春。


土御門「…本当にこれで、舞夏の安全は保障されるのか?」

偶数「多分大丈夫だと思うよ?」

土御門「……」

偶数「安心しなよあの男は『プランの最終目標』でもあるんだから」

偶数「そんなのに気に入られたら、いくら理事長でも迂闊に手は出せないだろうね」

偶数「…もっとも、君は飽きるまで玩具として弄ばれるだろうけど」

土御門「…そうか……」

紅蓮「…スキマ妖怪はまだ見つからないのか?」

偶数「うーん、実はまだ能力封じ切れていないらしいんだ」

偶数「とはいえ、滞空回線にも引っかからないなんてね」

土御門「(…滞空回線だと?)」ピクッ

紅蓮「…アイツの能力は厄介だ。できるだけ早く始末した方がいい」

偶数「肝に銘じておくよ」

偶数「…君にお客さんみたいだよ?」

偶数がそういうと、ファミレスのドアが開き、一人の少女が入ってきた。

その少女は、視線を紅蓮に合わせたまま、こちらに近づいてくる。


紅蓮「…魔理沙か、久しぶりだな」

魔理沙「……」


紅蓮は魔理沙に向き直り、軽く手を振った。


魔理沙「…本当に…紅蓮…なのか……?」

紅蓮「……」

魔理沙「生きて…たんなら…なんで…うぅ……」

紅蓮「魔理沙…」


魔理沙の目には、涙が溜まっていた。

今回はこれでいったん終わりです

紅蓮「…偶数、席を外すが……いいか?」

偶数「ん?別にいいよ?」

紅蓮「あぁ、悪い…」


そういうと紅蓮は魔理沙を連れ、店外へ出て行った。


偶数「…まさか霧雨魔理沙と接触することになるとはね」

土御門「カミやんが保護してるっていうアイツの妹か?」

偶数「あぁ、そうだよ」

土御門「ならカミやんもこの近くにいるのか?」

偶数「かもしれないね…僕らもそろそろ解散しようか、紅蓮はともかく君が幻想殺しと接触するのは不味い」

土御門「…わかった」

――



紅蓮は魔理沙を連れ、ファミレス近くにある公園に入った。

噴水の前にベンチがあったので、それに魔理沙を座らせ、自分も腰掛ける。

何から話せばいいか考えたが、今まで魔理沙の住むところから遠く離れたところで暮らしていたため、かける言葉がなかなか見つからなかった。

それは魔理沙も同じなようで、顔を逸らして黙っている。


紅蓮「…なぁ魔理沙」

魔理沙「…なんだよ……」

紅蓮「幻想郷では、俺は死んだことになってたのか?」

魔理沙「…行方不明」

紅蓮「そうか…」


話題を切り出したものの、会話が長く続かない。

次に何を話そうかと紅蓮が迷っていると、今度は魔理沙が口を開いた。


魔理沙「…なぁ、紅蓮…あの時、お前に一体何があったんだ……?」

紅蓮「あの時、か…」


紅蓮は、魔理沙の言う『あの時』の事を頭に思い浮かべた。

およそ十年前に幻想郷で起きた異変、連続猟奇退妖異変。

幻想郷中の妖怪を二割強ほどを死滅させた大異変である。

その異変により一時的に人間と妖怪の均衡が崩れ、幻想郷は崩壊寸前にまで追いつめられた。


紅蓮「魔理沙…お前薄々気づいてるんじゃねぇのか?」


そう言われ、魔理沙は一瞬肩を震わせた。


魔理沙「…何をだよ」

紅蓮「俺があの異変の首謀者だってことをな」

ざあ……と、その言葉をかき消すように風が吹いた。


紅蓮「…俺はあの異変で能力を封じられ、地底に落とされた。その後はずっと軟禁状態……ある事情があってこっちに出て来れたんだがな」

紅蓮「…本当は里の連中も殺してやりたかった」

魔理沙「…やっぱり、許せないのか……?」

紅蓮「…あぁ」

魔理沙「……」

紅蓮「…魔理沙、この街で一緒に暮らさないか?」

魔理沙「…え?」


紅蓮からの突然の発言に、魔理沙は一瞬混乱した。


紅蓮「此処にはもう俺を『化け物』だと罵る奴らはいない、誰も邪魔をしないんだ。もう一度、あの頃のように…」

魔理沙「紅蓮…」

紅蓮「頼む、もう俺にはお前しかいないんだよ…頼む……!」


紅蓮は魔理沙に縋るようにして腕を掴んだ。

その手はまるで寒さに凍えるように震えている。


魔理沙「…紅蓮、すまない」

紅蓮「…ッ」


魔理沙の言葉を聞き、紅蓮は目を見開いた。


魔理沙「出来れば私も紅蓮と一緒に暮らしたいさ…でも私には、あっちに残してきた友達が居るんだ」

紅蓮「…そう、か……」


そういうと、紅蓮は魔理沙の腕から手を放した。


魔理沙「…ごめんな」

紅蓮「…いや、いい。自分の都合ばかり考えてた俺が悪いさ」


紅蓮は立ち上がると、公園の出口へと歩き始めた。


魔理沙「紅蓮ッ…!」

紅蓮「…心配するな、またすぐに会える……」

紅蓮「(そう…すぐにな……)」

今日はこれで終わりです
最近短くてすみません

テストがあるので次の投下が遅れます

霊夢「う…ん……?」


霊夢は、全身に包帯を巻かれた状態でベッドに寝かされていた。

消毒液の臭いと全身の痛みに顔をしかめながら辺りを見回すと、自分が居るのは八畳ほどの広さの白い部屋になっているということがわかった。


霊夢「…どこよ、ここ……」

???『目を覚ましたみたいだな』

霊夢「…ッ」


誰も居ないにも関わらず、どこからか男の声が聞こえてきた。

霊夢は痛む体を無理やり動かし、ベッドから飛び出した。

札を取り出そうとしたが、自分が来ている服が巫女服ではないのに気付き、眉を顰める。


霊夢「…誰よアンタ、隠れてないで出てきなさい」

???『出て行ったところで、お前に何ができるんだ?』

霊夢「札がなくても、低級妖怪ぐらいなら捻り潰せるわ」

???『…能力どころか霊力すらまともに使用できない今のお前に?』

霊夢「…!?」


男の言葉を聞き、霊夢は自分が霊力を操ることができていないことに気付き、驚愕する。

無論、能力も使用できなくなっている。

霊夢にとって、霊力を操るというのは呼吸などと同じ、無意識的にできることであった。

それができないことに、霊夢は強い違和感を感じた。


霊夢「…何をしたの?」

???『さぁな、アイツらの「未来技術(オーバーテクノロジー)」は正直俺にもよくわからん』

霊夢「……」

???『そんなどうでもいいことは置いといてだな…とりあえずこっち来い』


ガシャッ と、固いものが乱暴に置かれるような音がした。

その後、壁の一部が長方形に窪み、それは壁に収納されるようにスライドした。

どうやら隠し扉のような物らしい。

突如姿を現した通路に驚きつつ、霊夢は部屋の外に出る。

左右に伸びる通路は機械的な光を発している。

警戒しつつ、霊夢は通路の奥へ進もうとして、

???『そっちじゃねえよ、逆だ逆。あーそうか、お前此処の構造知らねぇのか、めんどくせぇ』


再び男の声が聞こえた。


霊夢「……」イラッ


男の声に指摘され、霊夢は苛立ちながらも通路を進んで行った。

その後も右だ左だと言われながら迷路のような通路を進まされ続け、霊夢の苛立ちは次第に大きなものになっていく。


???『そこだそこ、そこで止まれ』

霊夢「…行き止まりじゃないのよ」イライラ


霊夢に言われ、男はあれ? と声を漏らし、


???『あ、さっきのところ左だったわ』


などとほざいた。


???『オラ、さっさと引き返してこっち来やがれ、一つ前間違えただけだから分かるだろ』

霊夢「……」ブチッ


男の一言に怒りは有頂天となり、霊夢は目の前の壁を殴りつけた。

ベコォッ! と、金属がへこむような音が聞こえ、霊夢が殴りつけた壁に穴が開いた。


???『……』

霊夢「アンタ、一発殴らせなさい?」ゴゴゴ

???『いや死ぬからな?今の喰らったら確実に死ぬぞ俺。っていうか何でお前重傷なのに何でそんな力出せんの?オリジナルに負けたのは芝居か?なぁ?』

霊夢「問答無用!!」


こっちへ来るなああああ!!と声が聞こえたが霊夢はそれを無視し、男が居ると思われる部屋へ突撃した。


???「ホワァァアア!?」

霊夢「何なのよアンタ!さっきから上から目線で指図し…」


男の姿を確認すると、霊夢は無表情になった。


霊夢「アンタ…」

???「…あー」


その男は、霊夢を襲った男と全く同じ姿形をしていた。


霊夢「…今ならアンタを殴り殺せる気がするわ……!!」

???「(冗談じゃねえ…複合素材製の壁を素手でぶち破るような拳なんて喰らったら俺でも死んじまう……)」

???「(コイツ…まだ訳の分かんねぇ力が働いてやがんのか?)」

???「オリジナルの野郎…全く、厄介な奴を……」

霊夢「フフフフフフフフ…」ゴゴゴ

???「(やるしかねぇか…畜生)」

――



ゼロ「…ん?」

???「…どうかした?」

ゼロ「11号の信号(レイアツ)が…消えた……?」

???「は?」

ゼロ「…なんでもありません、気のせいでしょう」

???「しっかりしてくれよ。お前が的確に指示してくれないと僕らが困るんだ」

ゼロ「分かっていますよ…もう少し近づいてください、情報にノイズが生じています」

???「りょーかい」


魔法の森の西側付近に、幻想郷ではあり得ない光景が広がっていた。

一言で表すなら街。

直径200mほどの壁に囲われた小さな範囲ではあるが、そこから放出される膨大な光の影響で、圧倒的な存在感を示していた。

夕方で日が落ちかけているにも関わらず、そこだけは日中のように明るい。

中でも異様に目を引くのは、街の中央に存在する三角柱を捻ったような形をした建造物である。

その異様な建造物の最上階で、同じ顔の少年が二人、幻想郷を見下ろしていた。


???「(…北東に敵影。小妖一三六、中妖五一、大妖一。大妖は……八雲藍か)」

ゼロ「…鬼や天狗がいないところを見ると、適当に掻き集めただけのようですね。こちらの戦力の確認といったところでしょうか?」

???「他の奴らはどうしてる」

ゼロ「05号は調整中のためまだ来ていません。09号と14号は地底へ向かいました」

???「05号は戦力外、か…大丈夫なのか?」

ゼロ「大丈夫でしょう。確かにFTCは此処が完成した時点で傍観者となったわけですが…あの程度なら自動的に排除できます」


ババババッと、何かが空気を叩くような音聞こえる。

見ると、街付近で待機していた妖怪たちが次々と『掻き消えて』いく。

???「うお、エグい…『六枚羽』ってあんなに強かったっけ?」

ゼロ「肉片すら残さずに文字通り粉微塵ですね」

???「嫌な光景見ちまった…能力使って見んじゃなかったよ。数日は肉食えねぇな……」

ゼロ「…撤退し始めましたね」

???「は?まだ一分と経っちゃいねぇぞ?」

ゼロ「今の戦力じゃ敵わないことを理解したんでしょう。じき、数を増して再び攻めてくるでしょうね」

???「僕は戦わないぞ…アイツらよりも流れ弾の方が怖い」

ゼロ「根っから貴方には期待してませんよ。あなたは私の『眼』として唯そこに居るだけでいいんです」

???「(ひでぇ…)」

ゼロ「…大人しく見逃す理由もないですし、三機ほど送りつけときましょう」

???「うわぁ…」


ゼロは手元のスマートフォンを操作し、六枚羽二機を追加起動した。

それらが飛び立つとともに、妖怪たちは散り散りに逃げ出し始める。


ゼロ「これだけやっておけば暫くは大丈夫でしょう」

???「まぁな…さすがにこれは――」


ゴッシャアア!! と、何かが潰れるような音が聞こえた。

数瞬遅れて爆音が幻想郷中にこだまし、妖怪たちの歓声が上がる。


ゼロ「…何?」

???「おい…マジかよ……」


街の敷地内に、先ほど飛び立った二機の内一機が墜落していた。

その上空では、一体の妖怪が浮かんでいる。

片腕を失いながらも六枚羽を叩き落としたその妖怪はゼロともう一人の少年を睨み、数十体の中妖を引き連れこちらへと突っ込んできている。


ゼロ「…八雲藍、ですか」

???「…0号、『タイプα』ってこっち持ってきてるか?」

ゼロ「地下四階の第二格納庫に」

???「はぁー、今日は大丈夫だと思ったんだけどな…」

ゼロ「(…そう簡単にはいきません、か)」

終わりです
遅くなってすみませんでした

――



学園都市が誇る最新鋭の無人攻撃ヘリ、六枚羽。

AH-64アパッチにも似た、機体の左右に機銃やミサイルなどを搭載するための『羽』を持ち、回転翼の補助動力として二基のロケットエンジンを搭載、最大速度はマッハ2.5に達する。

百を超える妖怪に対し、圧倒的な戦力差を見せつけているそれは、妖怪である自分たちを超えた化け物のように思える。

その場にいる誰もが、それを落とすなど到底できないと考えていた。

――唯一体の大妖を除いて。


ゴッシャアア!!


妖弾を放つ。

ただそれだけの動作で、他の妖怪の攻撃をもろともしていなかった六枚羽が撃墜されたのである。

先ほどの攻撃に被弾し左腕を失ったものの、大妖である藍にとってそれは大したダメージではない。

落ちた腕を傷口に押し付けると徐々に修復されていく。


藍「…妖怪を舐めるなよ、人間」


藍は街の中央に佇むビルを睨み付けた。

窓が存在していないため中の様子を知ることはできないが、藍はビル内の二つの霊力源を感知していた。

霊力とは人間の生命力そのもの。

それを感知したということは、あのビル内部には二人の人間が居るということを意味していた。

恐らく、その人間が今回の異変の元凶なのだろう。

藍は元通りになった腕の動作を確認し、前進する。

残る二機の六枚羽は藍を追おうとしたようだが、生き残った妖怪に群がられ、足止めを食らっているようだ。

眼下の森では頭部が巨大なドラム缶のような駆動鎧(パワードスーツ)が妖怪たちと交戦している。

地上でしか行動できないためか、現在は妖怪側が押しているように見えた。

藍「(二十近くの妖怪が消し飛ばされたときは焦ったが…不意を打たれなければある程度戦えるか)」


藍は妖力を掌にため、妖弾を作り出した。

それは弾幕ごっこなどで使用されるような加減されたものではなく、膨大な妖力を注ぎ込んだ殺しに特化した妖弾だ。

直撃すれば死は免れないだろう。

藍は自らの妖力をほぼ全て注ぎ込み、妖弾を肥大化させていく。

最終的に2m強の大きさになった妖弾を捻れたビルに向ける。

そしてそれは亜音速で射出され、標的に着弾した。


――ドゴォォオオンッ!!!


妖弾は、轟音とともに爆炎と衝撃波をまき散らした。

被害は周りに存在した建造物にも及び、中央近くのビルの窓ガラスが砕け散る。

しかし、


藍「…チッ」


辺りを漂っていた煙幕が霧散した時、捻れたビルは先ほどと変わらず、ほぼ無傷の状態でそこに佇んでいた。

――



――ッオオォォン…


一瞬、ビル全体が振動し、少年二人が見ていた窓に『映し出されていた映像』にノイズが走る。

この窓は外で撮影された景色を映し出している作り物に過ぎない。

ビル外部は装甲で覆われているため、窓を付ける余裕がないためである。

窓のないビルに使用されている装甲、演算型・衝撃拡散性複合素材(カリキュレイト=フォートレス)。

捻れたビルにはその下位互換が使用されているのだ。

故に大妖の全力を受けてなお、無傷でそこに存在している。


???「…六枚羽を落としたとはいえ、さすがに此処は無理だったか」

ゼロ「ですが、少し甘く見過ぎていたようですね…仕方ありません、『現時点で』保有している全戦力を投入してしまいましょうか」

???「オイオイ何が仕方ないだ…後先考えずに突っ走るなよ……」

ゼロ「良いじゃないですか。この程度、上がいくらでも補充してくれますよ?」

???「億単位の価値がある兵器をそうポンポン用意できるわけねぇだろ」

ゼロ「02号、早く行ったらどうなんですか?『タイプα』に乗って出撃するのでしょう?」

02号「ヘイヘイ…ったく、いい加減な……」


02号と呼ばれた少年はブツブツと愚痴をこぼしつつ、部屋から出て行った。


ゼロ「…いい加減でいいんですよ。あの男がが満足する結果を出せば、勝っても負けても変わらないんですからね」

今回はこれで終わりです


魔理沙はあの後も公園のベンチに座り続けていた。

日は既に沈んでおり、辺りは暗くなっている。


魔理沙「紅蓮…」


魔理沙はぽつりと兄の名前をつぶやいた。

しかし、それに答える相手は既に此処にはいない。

気を紛らわせるために空を見上げるが、街の光のせいで星が見えなくなっている。


???「魔理沙ー!」

魔理沙「ん?…インデックスか」

インデックス「もー!探したんだよ!!何してたの!!」

魔理沙「…いや、ちょっとな……」

インデックス「…どうしたの?なんか元気がないような気がするけど……」

魔理沙「いや、気にすんな。大したことじゃないからさ」


そういうと魔理沙はインデックスに笑いかけた。

だが、インデックスはその笑顔が僅かに曇っているのがわかった。


インデックス「何か悩みがあるなら遠慮なく言ってもいいんだよ?」

魔理沙「…そんなに心配すんなって、ちょっと向こうのこと思い出しただけだからさ」

インデックス「向こう?」

魔理沙「幻想郷だよ」

インデックス「…幻想郷?」

魔理沙「ん?どうかしたか?」

インデックス「魔理沙、幻想郷って何?」

魔理沙「…え?話してなかったっけ?」

インデックス「そんな単語初めて聞いたんだよ…」

思い返してみると、魔理沙は上条たちに家に帰れなくなったとしか言った覚えがない。

そんな曖昧な理由で住みついた居候であるにもかかわらず、自然と家族のように接していたために言い忘れてしまっていたのだろうか?


魔理沙「(うーん、どうもそんな感じじゃないような…まぁ、いいか)」

魔理沙「幻想郷ってのはでっかい結界の中にある箱庭みたいな所で…」

インデックス「うんうん」

魔理沙「あとは…えーっと……」

魔理沙「(うーん、なんか記憶が曖昧だな……)」

インデックス「…思い出せないの?」

魔理沙「なんか…変なんだよ、こう…さっきまでは覚えてたんだが……」


頭を抱え、幻想郷のことを思い出そうとしている魔理沙に対し、インデックスは疑問を抱いた。

魔理沙の言う幻想郷とは、魔理沙の言動からしてとても重要な場所なのだろう。

恐らく魔理沙の故郷のことではないだろうか?

完全記憶能力をもつインデックスは知る由もないが、それほど重要な場所のことをそう簡単に忘れてしまうものなのだろうか?


魔理沙「んー…ん?」

魔理沙「…あれ?そもそも何を思い出そうとしてたんだっけ?」

インデックス「…え?」

魔理沙「あれ?うーん…」


魔理沙は先ほどまで何のことを考えていたのかを思い出せず、首を傾げている。

その様子にインデックスは少し不安を覚える。


インデックス「魔理沙、大丈夫?」

魔理沙「んー…ま、すぐに忘れるってことはホントに大したことないんじゃないか?」

インデックス「え?」


魔理沙はインデックスに向け、先ほどとは違う曇りのない笑顔を見せた。

先ほどまであれほど落ち込んでいたにもかかわらず、だ。


インデックス「魔理沙、なんか変だよ…?」

魔理沙「大丈夫だって、そんなことより腹減ったぜ。早く帰ってメシ食おうぜメシ!」


そういうと、魔理沙はベンチから立ち上がり、「あれ?ここどこだ?」と言いつつ歩き始めた。


インデックス「魔理沙!幻想郷のこと教えてくれるんじゃなかったの!?」

魔理沙「ん?なんだ、インデックス?」

インデックス「だから、幻想郷が――」

魔理沙「なぁ、インデックス――幻想郷って、なんだ?」

――



紅蓮「…本当に、これでよかったのか……?」


路地裏の壁に身を預けている少年は、煙草の箱ほどの大きさのケースを弄りながら、そう呟いた。

少年の声は弱々しく、手は目視できるほど震えている。


紅蓮「…あぁ、これでいい。これでいいんだよ」


少年は自分に言い聞かせるように、何度も何度も同じことを呟く。


紅蓮「誰にも渡しはしない…絶対に手に入れる」

紅蓮「今度こそ…必ず……!!」


グシャッ と、ケースが潰れ、中身が零れ落ちる。

潰れたケースを踏み潰し、少年は路地裏の奥へと消えた。

後に残ったのは、『ナノデバイス』と書かれたラベルが貼られている注射器のみであった。

今回はこれで終わりです

設定やストーリーに不備があることが発覚したため、このスレは途中で終了します、すみません。

どれくらい後になるかはわかりませんが、きちんとした設定やストーリー構成、書き溜めなどを十分に行ったうえでもう一度立てたいと思っています。

見やすさの問題から別のサイトになるかもしれません。

今まで見てくださった方、ありがとうございました。

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