※メタメタの誕生日SSです。メタ表現、アイドルが悲しむ様が苦手な方はご注意ください。
事務所はすごく静かだった。
余りに静かすぎて、あたしのやってるゲームのBGMはすごく無駄に部屋に響く。
事務所には誰もいない、あたしだけがいる。 あたしだけが、残っている。
きっとみんなはイベントを頑張ったり、ステージで踊っているんだと思うけど。
私は、誰もいないこの事務所で、一人でゲームをやっている。
だって、今日は、誕生日だから。
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Pさんは、あたしの担当プロデューサー!って言ってくれた。
あたしをゲームに出してくれたり、バレンタインのチョコとか、サマーライブとかさ。
そりゃもう一緒に頑張ったよね。
編成にはいつもあたしが真ん中で、あたしの言う言葉を全部覚えていてくれた。
あたしがイベントでユニットを組んだらさ、手放しで喜んでさ。
仲良くなれたなって嬉しそうに笑ってたよね。
私がメインのイベントなんてさ、Pさんあたしが引くくらいガチになってるんだもん。
びっくりしたよね。凄かった。
だからこそ、あたしのプロデューサー!って感じで嬉しかった。
誕生日なんてさ、毎回すごい騒ぎでさ。
他のプロデューサーのみんなにうちの紗南はこんなに凄いんだぞ!って、怒られるくらい自慢してさ。
衣装も気に入った言葉も、全部覚えて、あたしの良さを教えてくれた。
みんながあたしのことを知りたがってくれてさ、あたしのアイドルとしての道が、どんどん広がっていって…………
そして、事務所はいつも明るくて、アイドルのみんなも、一緒に祝う感じだった。
プロダクションの他のPさんもおめでとう!なんて、何故かPさんに言っちゃってさ?
照れるPさんにあたしも恥ずかしくなったもんだった。
総選挙は……………正直、あたし圏外って言われるランクだったけどさ。
Pさんはあたしに全ツッパ!って言って聞かなかったよね。
周りがこのアイドルがいい!って話してる中に、紗南も可愛いですよ!って割り込んでいって。
あたしの話題が出たら、一喜一憂してさ。
出番があるたびに今年こそはあがるぞ紗南!ってあたしに笑いかけてくれた。
それが…………すごい嬉しかったんだ。
嬉しかったんだよ。プロデューサー。
Pさんが事務所にあんまり来なくなったのは、いつごろからだったかな。
覚えてないや。プロダクションも大きくなってさ。銀河級!なんて言われちゃってさ。
Pさんのお仕事ぶりなんてレベルは100なんてとっくに超えてるみたいに敏腕で。
Pさんはあたしの仕事を心待ちにして、他のアイドルのお仕事を楽しそうに見てた。
そう、あの時から。
……………Pさんは、みんなの仕事を、『見る』ようになっちゃった。
プロデュースを、バラエティ番組も、トーク番組も、ツアー番組も、ドラマ公演だって。
Pさんは、「頑張ってるなぁ、すごいなぁ、この衣装かわいいな」って。
ねぇPさん、行こうよ。お仕事だよ? みんなを応援しに行こうよ、って
あたしはPさんのスーツの袖をつかんだけど。
Pさんは、事務所の机で、みんなの仕事ぶりだけ見るようになった。
Pさんはそれから少しずつ、事務所に来なくなった。
ユニットメンバーはあたしだけ、オールあたしでオンリーワン。
みんな寮とかで待ってたけど。バックメンバーで応援するくらいだったからさ。
あたしは事務所で、みんなのがんばりを見ながら、ゲームをしてた。
まぁみんなでゲームするのは楽しかったし、よかったけどね?
そして、Pさんはあたしのお仕事があると嬉しそうな笑顔で事務所に来るようになった。
さぁ行くぞ紗南!って昔の時みたいに熱血で、あたしの手を引いて。
昔みたいに他のプロデューサーさんに相談したりしてさ。
イベントでユニットのお仕事があった時はイベント会場中走り回ってあたしのことを探してくれたよね。
あたしはそれが嬉しくて、楽しくて。
Pさんが帰った事務所が、寂しくて。
Pさんは、あたしのことを応援してくれている。
今でも俺は三好紗南のプロデューサーだっ!って言ってくれてる。
あたしのことを追いかけて、あたしのことを引っ張ってくれるPさんがすきで。
事務所に来て、おめでとう紗南!ユニット、楽しみにしてる!と言うPさんの笑顔が好きで。
だから、あたしは頑張った。パートナーだもん。頑張るよ。
そして………………あぁ、思い出したくないなぁ。
なんで、思い出しちゃうかな。ねぇPさん。覚えてる?
あたしがゲームマスターをした時のこと。
あのお仕事、楽しくてさ。すごくやりたかったお仕事でさ。
大きなスクリーンにあたしの姿が映って、ゲーム開始だ!ってアイドルのみんなに開会宣言をしたんだよ?
みんなが、いろんなプロダクションが、主役があたしのイベントでみんなが、頑張ってたんだよ?
―――――――なんで、いなかったの、プロデューサー。
他のプロダクションとの対決は、みんな楽しみにしてたのに。
あたしも、Pさんの応援があれば必殺技ゲージMAXで行ったのに。
遅れてごめん、って。必ず、後で迎えるからって。
その言葉は、うれしかった。
でも、あの時、ううん、もっともっと前に、あたしは気づいてたから。
ねぇプロデューサー、『この事務所は好き?』
スーパーロボット公演、楽しかったよね。
あの時はPさんも目をキラキラさせて、あたしと一緒にはしゃいでた。
公演のシナリオが楽しみで明日が待ち遠しくて。
だからこそ、Pさんの顔があたしは見られなかった。
ねぇPさん、この公演が終わったら、また事務所を来ないの?
そう、聞こうとした声は………出るわけがなかった。
出せるわけないじゃん。そんなこと。
だって、あたしは、声なんて出せる状態じゃなかったし。
事務所は暗くて、携帯ゲームの光がぴかぴかしてる。
ゲームのBGMが何故かずっとうるさく聞こえて、時計の音が耳に響く。
いつの間にか、ボタンを押すのをやめちゃってて、画面には
『GAME OVER』
の文字が踊ってる。
ゲームの電源を落としたら、事務所はもう真っ暗、ちひろさんは多分、他のアイドルの面倒を見てる。
他のアイドルはエチュードを踊って、チャレンジしてるんだろうなって思う。
主役のアイドル以外もみんなで応援してる。賑やかで、明るい。
なんでここだけ暗いんだろ、電気をつければいいのかな。
……つけたら、部屋の広さを実感しそうで、指が、止まる。
ねぇPさん。今日は6月25日だよ。
あたしの、三好紗南の誕生日だよ。
あなたの好きな、あなたが担当だって言ってくれた、アイドルの。
今日は1年に1度で、一回だけの。7回目の14歳の誕生日なんだ。
とびきりのセリフと、キラキラの演出を持って待ってるよ。
だからさ、事務所に来てほしいな。
この事務所は少し、寂しいからさ。
おわり
『モバマスに飽きてしまったプロデューサー』の事務所にいる一人で待ってる紗南ちゃん、というシチュエーションでした。
プロダクションマッチフェスに関しては自分の実体験です(白目)
ブラックな会社でまともにログインできなくなってました。
依頼出してきます。
別に書いた関係のない前作
【モバマス】おさなづま
【モバマス】おさなづま - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1529852809/)
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