久美子「え?特典?」
麗奈「そうよ。大ヒット上映中の『リズと青い鳥』、4週目の来場者特典がユーフォ、中二病、freeの缶バッジ3種からランダム配布なの」
麗奈「そしてユーフォのイラストは久美子なのよ。つまり久美子缶バッジを貰えるというわけ」
久美子「へー」
麗奈「ぶっちゃけ私はユーフォしか興味ないから他2つはハズレなんだけど、久美子バッジがある以上、これをゲットしないわけにはいかないわ」
久美子「そっかー。頑張ってねー」
麗奈「何言ってるの。久美子も一緒に行くのよ」
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久美子「え……」
麗奈「当たり前でしょう?」
久美子「いや、先週も先々週も一緒に観に行ったよね?その映画」
麗奈「良い映画は何回観ても良いものよ」
久美子「う、うーん……それはそうだけど」
麗奈「さぁ、早速劇場に行くわよ。20時からの回の席をもう予約してあるから急がないと」
上映中
麗奈(ああ…やっぱりリズと青い鳥は良いわ…)
麗奈(フルートの反射光で遊ぶシーンは百合史上最高のワンシーンね…)
麗奈(美しさの余り涙が出てしまうわ…)ホロリ
久美子(さすがに3回目ともなると眠気が…)ウツラウツラ
上映終了後
麗奈「良かった…。最高の映画だったわね…」
久美子「だねー」
麗奈「じゃあ早速特典を開封するわよ」
久美子「はいはい」
麗奈「久美子こい!久美子こい!」ピリピリ
麗奈「……freeの主人公か」チッ
久美子「あ、私ユーフォの当たった」
麗奈「!」
久美子「私は別にオマケに興味ないし、麗奈のやつと交換しよっか」
麗奈「いいえ、こういうのは自分で当ててこそ意味があるのよ。気持ちだけ受け取っておくわ」
久美子「そう?まぁ麗奈がそう言うなら良いけど」
麗奈「明日また来ましょう」
久美子「え。ちょっと待って。もしかしてユーフォのバッジ貰えるまで通うつもりなの?」
麗奈「?当たり前でしょう?」
久美子「マジか」
翌日 劇場
麗奈(ああ…。オープニングからもう素晴らしいわ…。足音の一つ一つが何て美しいの…。仕草の全てが愛おしいわ…)
麗奈(そしてやっぱりフルート反射光のシーンは最高…。山田監督は天才ね…)ホロリ
久美子(眠い)
上映終了
麗奈「何度観ても最高ね。観るたびに発見があるわ。希美先輩の解釈が深まるにつれてラストの見え方も変わるし、不思議な映画よね」
久美子「え?あ、うん。それよりほら、特典開けてみようよ」
麗奈「そうね。今日こそは久美子バッジ当てるわよ」ペリペリ
麗奈「……またfreeバッジね」チッ
久美子「あ、私は、えーと、中二病?のやつかな?」
さらに翌日 劇場
麗奈「さぁ!今日も気合入れて観るわよ」
久美子「麗奈さぁ…さすがに飽きない?」
麗奈「?飽きるわけないじゃない。観れば観るほど味わい深いわ」
久美子「…麗奈はすごいなぁ」
上映中
麗奈(あぁっ!そうか!鎧塚先輩は、希美先輩が愛ゆえに自分を送り出したという事に心のどこかで気付いたんだわ!)ハッ
麗奈(だから別離を受け入れられたんだわ…。この先何があっても、オーボエを続けている限り希美先輩に自分は愛されているという事実だけは変わらないから…)
麗奈(なんて歪な…そして美しい関係なの…)ホロリ
久美子(……)スヤスヤ
上映終了
麗奈「……」グスッ
麗奈「凄い…。凄いわこの映画…。表情や間で、こんな複雑な感情を表現するなんて…。山田監督は神…」グスッ
久美子「んぁ…。あっ、終わった?」
麗奈「ええ…。じゃあ、特典を開封するわよ」ピリピリ
麗奈「……中二病、か」チッ
久美子「あ、私free?だ。全部揃っちゃった」
さらに翌日 劇場
久美子「さすがにお小遣い的にキツくなってきた…」
麗奈「今日こそ当てるわ。今日こそ久美子バッジを…」ブツブツ
優子「あー!もう!納得いかない!」
夏紀「はいはい声でかいよ優子」
久美子「あ、先輩達だ。こんちにはー」
夏紀「あれ。黄前ちゃん達も来てたんだ」
久美子「はい。この後からのリズと青い鳥見に来たんですけど」
夏紀「奇遇だねー。ウチらもそれ今終わった回のを見てきたんだよ」
久美子「……で、優子先輩は一体…」
優子「どう考えてもあの希美の態度おかしくない!?結局みぞれをどうしたいのよ!」
久美子「はぁ。どうしたいんでしょうね…」
優子「ほんっと納得できない!みぞれの気持ちわかってて最後まではぐらかすなんてズルいじゃない!」
麗奈「先輩、それは違います」
優子「む。高坂…」
麗奈「希美先輩にとっても最終的に鎧塚先輩は特別になったんですよ。それでも送り出さなきゃいけないから、希美先輩にははぐらかす以外の選択肢が無いんですよ」
優子「何よ。随分わかったような事言うわね」
久美子「それはまぁ、もう5回観てますから…」
夏紀優子「「え」」
久美子「ちなみに今から6回目です」
夏紀「マジか」
優子「何でそんなに観てるのよ…」
久美子「いやぁ、麗奈が缶バッジ欲しいって言うもんで…」
夏紀「バッジ?ああ、さっき貰ったこれか」
優子「そういえば何か貰ったっけ。開けてみよっか」ペリペリ
夏紀「あ、私黄前ちゃんのバッジだ」
優子「私も」
麗奈「な!?」
夏紀「ん?何?これアタリなの?」
久美子「アタリっていうか、まぁ、麗奈がそれ欲しいって言ってるんですよね。それで何回も来てるんです」
夏紀「そうなんだ。じゃあちょうどよかったね。私のあげるよ」
麗奈「い、いえ…。せっかくですが、自分で当てないと意味が無いので…」クッ
久美子「でも麗奈、全然当たらないじゃん。せっかく先輩がくれるって言ってるんだし、貰っておいた方が…」
麗奈「自分で当てないとダメなの!そうしないと私と久美子に縁が無いって言われてるみたいで納得できないのよ!!」
優子「高坂も変なところで頑固だよね…」
久美子「いやほんと、そうなんですよね…」
麗奈「さぁ!行くわよ!久美子!」
久美子「うわ、ちょ、引っ張らないでよ麗奈~。すみません、先輩、それじゃ失礼します」
夏紀「が、頑張ってね…」
上映中
麗奈(あぁ…2人に対してモヤモヤした気持ちを抱えながら口出しできない優子先輩のもどかしさ尊いわ…)
麗奈(きっと本当は鎧塚先輩の依存を良く思っていないんだけど、鎧塚先輩は希美先輩無しだと生きていけない事もわかってるから何も言えないのね…)
麗奈(2人の関係性が他の人に与えてる影響も考えていくと、いよいよ歪さが浮かび上がってくるけど…でもそこが本当に美しい…)ホロリ
久美子(あートイレ行きたい…。さすがに今行ったら麗奈怒るよねぇ…)モゾモゾ
上映終了後
麗奈「聞いて久美子。さっき気付いたんだけど、鎧塚先輩と希美先輩の関係が周囲に及ぼす影響を意識しながら観ると、また別の解釈が生まれてくるのよ!」
久美子「え?へー。そうなんだ。そんな事より特典開封しようよ」
麗奈「そんな事、ですって?」ピク
久美子「あ、やば。また口が滑った…」
麗奈「まぁ、いいわ。開けましょう」ピリピリ
麗奈「…free」
久美子「…ユーフォダブった」
麗奈「どうして…どうして私には久美子バッジが来ないの…」ガクリ
久美子「ま、まぁこればっかりは運だからね~…」
晴香「うう~。良い映画だったよぉ~」グスグス
あすか「あーもー。泣かない泣かない。ほら、ティッシュ」
晴香「だ、だっでぇ~…」グスン
久美子「あ!あすか先輩!」
あすか「おや?黄前ちゃんじゃん!ひっさしぶりー。なになに?デートかね君達?うんうん、映画館は鉄板だもんねぇ」
久美子「あー…この鬱陶しいノリ久しぶりだなぁ」
あすか「黄前ちゃんも相変わらず良い感じにオブラート破れてるねぇ~」
麗奈「先輩達もリズ観てきたんですか?」
あすか「いや?リズはこないだ観たけど今日観たのはジュマンジだよ」
麗奈「え、でも晴香先輩、号泣してますけど…」
あすか「うん。ジュマンジ観てめっちゃ感動して泣いてんの。笑っちゃうよね~」
晴香「ううう~」ズビズビ
麗奈「先輩はリズどうでしたか?」
あすか「んー。香織と晴香は凄い良かったって言ってたけど、私は合わなかったかなぁ」
麗奈「どうしてですか?」ムッ
あすか「だってみぞれちゃんも希美ちゃんも、ぶっちゃけリズでも青い鳥でもないんだから、無理して絵本の結末の通り動かなくてもいいじゃん。一緒にいたいなら一緒にいれば?って思っちゃった」
麗奈「……」
久美子「先輩…身も蓋もない…」ハハハ…
あすか「高坂ちゃんはああいうの好きなんだ?」
麗奈「私は最高傑作だと思います」
久美子「いや~麗奈がホントハマっちゃって…実はもう何回も何回も観に来てるんですよ」
あすか「へー」
あすか(で、黄前ちゃんは渋々それに付き合ってると)ヒソヒソ
久美子(まぁ、そうですね…)ヒソヒソ
さらに翌日 劇場
久美子「麗奈さぁ……今日当たらなかったらもう諦めない?」
麗奈「そうね…。特典自体もそろそろ品切れしそうだし、今日がラストチャンスかもしれないわね…」
麗奈「でも映画自体は明日も観に行くわよ」
久美子「え!?なんで!?」
麗奈「?だって良い映画でしょ?」
久美子「いや、そうだけど、いくら何でも来すぎじゃない?」
麗奈「映画の上映期間が終わったら、DVDブルーレイが出るまではもうリズ観れなくなるじゃない。1日も無駄に出来ないわ」
久美子「マジですか…」
麗奈「久美子は一緒に観に行ってくれるよね?」
久美子「いいですよ…。ここまで来たら付き合いますよ…」
上映中
麗奈「!!」
麗奈(なんてこと…。希美先輩が鎧塚先輩を先に校門くぐらせてるなんて…どうして私はこんなに重要な事を見落としていたの…)
麗奈(これはまさに学校という鳥籠から羽ばたく鎧塚先輩を、希美先輩が見届けるという暗喩だわ…!)
麗奈(ああっ!それをわかった上で最後の下校シーンを観ると…ああ…尊い…2人が尊い…)ポロポロ
久美子(やばいよー…。今月お小遣いもうほとんど残ってないよぉ…)
上映終了
麗奈「久美子!聞いて!最後の下校のところ!希美先輩が先に鎧塚先輩を学校の外に出してるのよ!!今まで全然気付かなかったわ!私はこの作品をしっかり観ているようで、まだまだ見落してる部分があったんだわ!」
麗奈「ふふっ。もう、自分の読みの甘さが嫌になるわね。これだけ観てもまだ発見があるなんて」
久美子「はいはい。特典開けるよー」
希美「うーん、よくわかんなかったなー」
みぞれ「私も」
久美子「あ、こんにちは」
希美「おー、君達も来てたんだ。もしかして一緒の回?」
久美子「だったみたいですね。全然気付きませんでした」
希美「どうだった?」
麗奈「京アニ、いえ、日本アニメ映画史上最高傑作です」
希美「そっかー。いやー私バカだからさー。ああいう映画よくわかんないんだよね。途中で寝ちゃった」
麗奈「な!?」
麗奈「……鎧塚先輩はどうでした?傑作ですよ」ね
みぞれ「隣で寝てる希美の寝顔しか見てなかったからよくわからない」
麗奈「」
麗奈「……」
麗奈「もう1回ちゃんと観た方がいいですよ」
希美「ええ?いいよいいよ。わかんないもんはわかんないし」アハハ
みぞれ「希美が観ないなら私も観ない」
麗奈「こいつら……」ピキピキ
久美子「ま、まぁまぁ麗奈。ほら、特典開けないと」
麗奈「……そうね。何としても久美子バッジを当てないと」
希美「ん?何それ?」
久美子「入場者特典ですよ。先輩達も貰いませんでしたか?」
希美「もらったっけ?」
みぞれ「多分これの事。希美のぶんは私が預かってた」
希美「ああ、これか」
希美「何入ってんの?これ」
麗奈「缶バッジですよ。そんな事も知らないんですか」イライラ
久美子「麗奈落ち着きなって…」
希美「ふーん?とりあえず開けてみよっかー」ビリビリ
麗奈(そんな雑に開けて久美子バッジが当たるわけないわ。freeが関の山ね)
希美「あ、黄前ちゃんバッジだ」
麗奈「!?」
みぞれ「私も同じのが出た」
麗奈「!?!、!???wwwwww!???」
麗奈「……」プルプル
希美「ん?どした?」
久美子「いやー…ハハハ。麗奈、それ欲しくてずっと映画館通ってたんですよ」
希美「へぇー!そうなんだ!大変だねー。んじゃ、よくわかんないけど、これアタリってことかな?ラッキー!」
麗奈「おめでとうございます…」プルプル
久美子「……麗奈も開けたら?」
麗奈「そうね……」ピリピリ
麗奈「……free」ガクリ
希美「それってハズレなの?」
久美子「ハズレっていうか…まぁこれはこれで欲しいって人もいると思いますけど麗奈的にはハズレですかね…」
希美「そっかー。ドンマイドンマイ!」
麗奈「……」プルプル
久美子「麗奈……。もうさぁ、諦めて交換してもらったら?麗奈はもう十分頑張ったよ」
麗奈「でも…自分で当てないと意味が…」
久美子「そこに拘って結局目当てのバッジが手に入らなかったら本末転倒でしょ?」
麗奈「……」
麗奈「そうね…。久美子の言う通りだわ…。結局手元に久美子バッジが無いのが私にとって最悪の結果ね…」
麗奈「過程はどうあれ、久美子バッジを手に入れる事が最優先よね…」
麗奈「…鎧塚先輩。私のfreeバッジと、先輩の久美子バッジ、交換しませんか?」
みぞれ「……」
みぞれ「だめ」
麗奈「え」
みぞれ「だめ。交換しない」
麗奈「え…。ど、どうしてですか…」
みぞれ「このバッジは希美とお揃い。その水泳選手のバッジと交換したらお揃いじゃなくなる」
久美子「ああ、なるほど…」
麗奈「じゃ、じゃあ希美先輩!私のバッジと交換しませんか!」
希美「うーん、私は別にこのバッジに拘り無いんだけど、みぞれがお揃いが良いって言ってるからなぁ。ごめんね」
麗奈「」
麗奈「……久美子。確か久美子、最初に当たってたわよね?あれ交換してもらえない?」
久美子「ごめん…。あれ実は失くしちゃってて…」
麗奈「そんな…」ガクリ
久美子「ああ、ほら!夏紀先輩と優子先輩も当たってたじゃん!あれ交換してもらったら?」
麗奈「!!そうだったわね。ナイス久美子」
希美「あ、これどっかで見覚えあると思ったら、夏紀と優子がバッグにつけてたやつかー」
みぞれ「そう言えば見たかも」
希美「そんで私が『お揃いじゃーん』って言ったら慌てて捨ててたっけ」
麗奈「!!」
久美子「あぁ…希美先輩…。どうしてあなたはいつもそういう…」
みぞれ「希美は悪くない」
希美「とりあえず、私らはバッグにこのバッジつけとこっか」
みぞれ「うん」
希美「どこがいいかな?」
みぞれ「あ…じゃあ私が希美のバッグにつける…」パチン
希美「お、いいねー。じゃみぞれには私がつけたげる」パチン
みぞれ「……お揃い」
希美「いいじゃんいいじゃん!仲良しって感じ!」
イチャイチャァ…
麗奈「……」
麗奈「もう終わりよ…。万策尽きたわ…」
麗奈「私と久美子は…結ばれない運命なのね…。この世は暗黒だわ…」ガクリ
久美子「そんなたかだかバッジで大袈裟な…」
滝「おや。奇遇ですね」
久美子「あ、先生」
麗奈「!!」
滝「黄前さんとはよくプライベートで遭遇してしまいますね」
久美子「で、ですねー。先生も映画観てたんですか?」
滝「はい。リズと青い鳥って映画なんですが」
麗奈「私達もそれ観てました!良い映画ですよね!」
滝「そうですね。普段アニメは観ないんですが、吹奏楽を扱った映画ということで興味があったもので観に来てしまいました。よく出来ていると感じましたね」
久美子(あ、そうだ)
久美子「先生!入場者特典のバッジって何当たりました?」
滝「入場者特典?」
久美子「バッジが入ってるんですけど」
滝「ああ、入口で貰った袋ですか。まだ中身は確認していませんが」
久美子「それ、もし中身が私の顔のバッジだったら、麗奈のと交換してあげて欲しいんですけど」
滝「構いませんよ。私はあまりくじ運がある方ではないので、期待しない方が良さそうですが」
久美子「ほら、麗奈。ラストチャンスだよ!」
麗奈「う、うん!」
滝「では開封しますよ」ペリペリ
久美子麗奈「」ドキドキ
滝「……これは」
滝「男性のイラストですね。黄前さんではないようです」
久美子「うわ、ホントくじ運悪いですね」
滝「期待に添えなくてすみません。これで良かったら差し上げますが」
久美子「いや~麗奈はそれもういっぱい持ってるんで…」
滝「そうですか。残念です」
久美子「どうする麗奈?さすがにもう諦めよっか」
麗奈「……」
麗奈「先生」
滝「はい」
麗奈「あ、あの…お揃いですね。freeバッジ…///」
久美子「え」
滝「ああ、そうですね」
麗奈「私、これ、カバンにつけます!ずっとつけておきます!先生と一緒のバッジ!大事にしておきます!!///」
久美子「」
『joint』
おわり
乙
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