【モバマス】加蓮「プロデューサーさんの看病」 (41)

体温計「38.0」

P「ゴホッゴホッ、思いっきり風邪を引いてしまった……」

P「最近、残業に徹夜ばっかりだったし昼と夜の寒暖さが大きい日が続いてたとはいえ、油断したなぁ……」

P「加蓮たちにいつも『風邪引かないように注意しろ』って言ってるくせに、なんて情けない……」

P「はぁ……とりあえず、事務所には連絡したし、薬飲んで大人しく寝てよう。そうか、その前に何か食べなきゃ。冷蔵庫に何かあったかなっと」

P「うげっ、何も入ってない。そういやここんとこ家で飯食ってなかったから忘れてた。さっき病院行ったときに何か食べるもの買って来るんだった……」

ピンポーン

P「ん、誰だろう。宅配便か何かかな? ゴホッゴホッ、はーい、今開けます」ガチャ


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加蓮「はーいプロデューサーさん。北条加蓮だよ♪」

P「加蓮っ!? ど、どうしてここに?」

加蓮「プロデューサーさん風邪引いたって聞いたからお見舞いに来ちゃった」

P「お見舞いにってお前、アイドルが一人暮らしの男の家に……わかってるのか?」

加蓮「今日はオフだし。アイドル北条加蓮はちょっとお休み」

P「そういうことじゃなくてだな。誰かに見られたらまずいだろう!」

加蓮「大丈夫。マスクに帽子に眼鏡までして変装してるし、誰にもつけられてないか何度も確認したから」

P「むしろ目立ってないか?」

加蓮「はいはい、そんなに心配するんだったら早く中に入れてよ。誰かに見られないうちに」

P「ああ、そっか……ほ、ほら、早く入って」

加蓮「お邪魔しまーっす♪」

P「…………」キョロキョロ

P「ふぅ、とりあえずは誰にも見られてないみたいだ」バタン

P「それより加蓮、いったい何考えてるんだ? 風邪が移ったら大変だぞ。また倒れたらどうする?」

加蓮「もうそんなにやわじゃないって。アタシが昔よりも丈夫になったこと、プロデューサーさんが一番良く知ってるでしょ?」

加蓮「それに、ちゃんとマスクだってしてるし家に帰ったら手洗いうがいもちゃんとする。殺菌スプレーまで常備してるんだから。自分の管理は自分でできるよ」

P「そうは言ってもだな……」

加蓮「もうっ。アタシがしたくてやってることなんだから口を挟まないでっ。今から帰れって言っても絶対帰らないから」

P「わがまま言うなよ。加蓮のことを心配してるんだぞ?」

加蓮「プロデューサーさんだってアタシがどれだけ心配して来たと思ってるの? 少しくらいお見舞いさせてよ」

P「加蓮……っ、ゴホッゴホッゴホッ」

加蓮「ホラホラ、病人はこんなところに立ってないで布団に戻る! まだ熱も下がってないんでしょ?」

P「ああもう、仕方ない。わかったよ。ただそこまで言うんだったら絶対に風邪は引くなよ」

加蓮「わかってるって」

加蓮「わ、なにこれ。泥棒にでも入られたの?」

P「いや、散らかってるだけだよ。ここのところ忙しくて片付ける暇がなかったんだ」

加蓮「いつから片付けてないの? 20年前?」

P「……そこまで酷くないだろう?」

加蓮「冗談だよ。そんなことより早くベッドに戻る」

P「む……わかったよ……これでいいか?」ガサゴソ

加蓮「はい、よろしい。熱は何度あるの?」

P「38.0℃だ。ついさっき計った」

加蓮「あらら、割とあるね。寒くない?」

P「ん、そういえば寒くはないかな。朝はもっとゾクゾクしてたのに」

加蓮「ってことは下がり始めかな。でもまだ上がることもあるからあったかくしてるんだよ。喉は痛くない?」

P「ちょっと痛いな。ゴホッゴホッ……このとおり、咳も出るからな」

加蓮「じゃあ、はい。タオルを首に巻いて」

P「タオル? どうして?」

加蓮「首周りを温めて菌の繁殖を抑制するの。喉の痛みが和らぐよ」

P「へぇ、そうなのか。わかった」

加蓮「そういえば、病院は行った?」

P「ああ、行ったよ。もちろん。これでも加蓮のプロデューサーだからな。インフルエンザだったらヤバいと思って」

加蓮「ふーん。それくらいの意識はあるんだ。それで、なんて言われた?」

P「ただの風邪だってさ。事務所にはもう連絡した。インフルエンザじゃないから大丈夫だって。もしそうだったら加蓮たちに感染してないか検査してもらうところだった」

加蓮「それは良かった。他には何か言われなかった? 風邪の原因とか」

P「あー、最近の仕事とか生活とか聞かれて、過労による免疫力の低下が原因だろうって」

加蓮「……やっぱり。そんなことだろうと思った。プロデューサーさん、最近休みを取ったのっていつだったっけ?」

P「うっ……で、でも今はお前たちにとって大事な時期で、休んでる暇なんか……」

加蓮「口答えしない。アタシのプロデューサーを名乗るなら自己管理にももっと気を使って」

P「はい……」

加蓮「まったく、ホントにアタシのプロデューサーか疑わしくなるよ」

P「うっ……今のが一番心に来た……」

加蓮「自業自得だよ」

P「うう、なんだか今日の加蓮は妙に高圧的だな」

加蓮「そうだね。アタシも体調崩したときにこんな風に扱われたんだよね、どこかの誰かさんに」

P「……それってもしかして俺のこと?」

加蓮「さぁ? 人の体調のこと口うるさく言ってたのに自分のことは疎かにしちゃって風邪引くような人だった気がする」

P「は、ははは、そいつはなんとも間抜けなやつだな。でも不思議だな、俺はそいつのこと良く知ってる気がする……」

加蓮「……はぁ。ごめんね。お見舞いに来たはずなのに責めるようなことばっかり言っちゃって。しんどいのは良く知ってるはずなのに」

P「いいさ。ホントのことだ。俺もこれまでのこと反省するよ……あ」グゥゥ

加蓮「ふふっ。本当に反省してる?」

P「まぁ、そうだな、俺は反省してるよ。グゥの音は出てるけど」グゥゥ

P「……悪い、実のところを言うと寝てばっかりで何も食べてなかったんだ」

加蓮「はいはい、そんなことだろうと思ったからいろいろ買ってきたよ。ゼリーにプリンにポカリに……。それより、もっとお腹にたまるものの方がいいみたいね。おかゆでも作るよ」

P「おかゆって……作れるのか?」

加蓮「あんまりアタシを見くびらないの。おかゆくらいアタシにだって作れるよ。材料も買ってきたし」

P「ホント、助かるよ。俺なんかのこと心配していろいろ買ってきてくれて、おかゆまで……ん?」

P「そういえばどうやってうちまで来たんだ? 俺、うちの場所教えたことなかったよな? ちひろさんが教えるわけないし……」

加蓮「さーってと、腕によりをかけて作っちゃいますか! キッチン借りるね」

P「加蓮さん? 聞いてます?」

これは北条さんに、住民表の本人の隣の項目に名前を入れてもらわないとね

加蓮「はい、できたよ。おまたせ」

P「ああ、ありがとう。よっと……」

加蓮「あ、動かなくていいよ。食べさせてあげる」

P「え?」

加蓮「ふーっ、ふーっ、ふーっ」

P「そんなことまでしなくていいって。自分で食べられるよ」

加蓮「ほらほら、遠慮しないの。現役女子高生アイドルからふーふーしてもらえるなんて貴重な体験なんだからね、プロデューサーさん」

P「今日はアイドル休みなんじゃなかったのか?」

加蓮「おっとそうだった。じゃあ現役女子高生から……これだけだともっとアブナイか」

P「やめなさい。はぁ……こんなこと、絶対外には漏らさないでくれよ?」

加蓮「わかってる。二人だけの秘密……ってね♪ はい、あーん」

P「ったく……あーん」パクッ

加蓮「どう? おいしい?」

P「ん……ちょっと、聞くのが、早い」モグモグ

P「ゴクン……うん。おいしい」

加蓮「あはっ、よかった。これね、アタシが寝込んだときにいつもお母さんが作ってくれるやつなんだ」

P「へぇ。じゃあ加蓮の家庭の味ってわけか」

加蓮「そういうこと。それがおかゆって言うのもちょっと味気ないけどね。はい二口目」

P「ちょっと待って。やっぱり恥ずかしいから自分で食わせてくれ」

加蓮「ええ~。今日はプロデューサーさんのお世話するつもりで来たんだよ?」

P「充分。充分世話してくれてるよ。だからこれくらいは、さ」

加蓮「もうっ。仕方ないなぁ。じゃあはい、スプーン」

P「ありがとう。……ふーっ、ふーっ」

加蓮「……ふふっ」

P「ん、なんだ?」

加蓮「ううん。なんでもない。ただプロデューサーさんが私の料理を食べてくれてるっていうのが、少し嬉しかっただけ」

P「うん? 変なやつだなぁ」

加蓮「なにそれ、ひどーい」

P「あはは、すまんすまん。けど、加蓮はきっといい奥さんになるだろうなぁ」

加蓮「へっ!?」

P(そしてその時俺は泣くんだろうなぁ)モグモグ

加蓮「ちょ、ちょちょちょちょっと待って! いきなりなに言ってんの!?」

P「ん? ああ、なんとなくだぞ。なんとなく。料理もできるみたいだし、親身になって看病してくれるし。旦那さんは幸せものだ」

加蓮「い、意味わかんない意味わかんない。どうしてそういうことになるの? というか、アイドルに結婚話はご法度でしょ。普通、プロデューサーがする?」

P「あ、そうだな……なに言ってんだ俺。熱でおかしくなってんのかな……」

加蓮「もう……」

P「すまん、忘れてくれ」

加蓮「……そういうプロデューサーさんは彼女とかいないの?」

P「……その質問の答えがもしイエスだったら、今この瞬間目の前に座って看病してくれてるのはその人になってるだろうな」

加蓮「それもそっか……ふーん」

P「ん、なんでつまんなそうなんだ?」

加蓮「別にぃ。ただ、プロデューサーさんはアタシに看病されるよりその理想の彼女に看病されるほうがいいんだなーって」

P「なっ!? べ、別にそんな意味で言ったんじゃないぞっ! 加蓮がこうしてくれてるのはとてつもなく嬉しいし感謝してる! ただの例え話だからな!」

加蓮「……ぷっ。あははははっ、そんなに必死になって否定しなくてもいいのにっ」

P「あっ、か、からかったなっ! うっ、ゴホッゴホッ」

加蓮「あぁあ、ごめんごめん。大丈夫? ほら、落ち着いて。背中さすってあげるね」

P「……ったく、勘弁してくれよ」

加蓮「ごめんごめん。ちょっと拗ねてみたくなっただけ。そんなに本気に捉えられるとは思わなくて」

加蓮「でも、嬉しかったよ。アタシのこと、そういう風に見てくれてるんだなぁって。大切に思ってくれてるんだね」

P「……まぁ、俺は加蓮のプロデューサーだからな。高いテンションを維持するのは俺の仕事だし」

加蓮「あ、照れてる。顔赤くなったよ?」

P「う、うるさいっ。これは熱のせいだ、熱の! からかうのはやめてくれ!」

加蓮「ふふふっ。はいはい、わかったわかった。じゃあ話戻すけど、プロデューサーさんって彼女作ろうとは思わないの?」

P「そりゃあ欲しいけど、この仕事してるとプライベートに気を使う暇なんてなくってな」

加蓮「いつも忙しそうだもんね。でもたくさんのかわいい女の子たちに毎日囲まれて大変じゃない?」

P「言ったろ? 俺はプロデューサーだって。そこらへんの線引きはちゃんと俺の中にあるさ」

加蓮「でも実際囲まれるのはまんざらでもないでしょ? この間なんて集まってた女子高生組みと話してて嬉しそうにしてたし」

P「そ、そんなことはないぞ! さっきも言ったとおりあれはみんなのテンションを盛り上げるコミュニケーションとしてだな……」

加蓮「ほんとかなぁ?」

P「ニヤニヤするなって!」

加蓮「はいはい♪」

P「ったく……奈緒のこともこんな風にいじってるのか?」

加蓮「だって奈緒ったらほんとにかわいい反応するんだもん」

P「奈緒……同情するよ。……ん、食べ終わったぞ」

加蓮「綺麗に食べたね。鍋にまだあるけど食べる?」

P「いや、もういいよ。残りは夜食べる。ごちそうさまでした」

加蓮「おそまつさまでした。じゃああとはお薬飲んで寝てて。アタシ台所の片付けしてくるから……一人で飲める?」

P「……加蓮、俺は三歳の赤ん坊じゃないんだぞ。からかうのはよせって……おくすりあまいのがいい」

加蓮「ふふっ。冗談が言えるくらい元気なら大丈夫だね」

加蓮「プロデューサーさん、終わったよ……って、もう寝ちゃってる。寝つき早いなぁ」

P「すー……すー……」

加蓮(ふふっ……かーわいっ……なんだかこうしてるとホントにお母さんの気持ちになっちゃうなぁ……)

加蓮(……っと、プロデューサーさんの寝顔を見てるのも悪くないけど、まだやることはあるんだよね)

加蓮(乾燥対策に加湿器は……ないか。洗濯籠にいっぱいの洗濯物を洗って干してもいいけど、さすがにそれに触るのはプロデューサーさんに悪いかな。ここは濡れタオルにしよう)

加蓮(水が滴り落ちない程度まで絞って……プロデューサーさんの近くに干してっと……後は……部屋の片付けかな)

加蓮(ざっと部屋を見回して……やっぱり床に山積みの雑誌が目立つなぁ。机の上の書類の山は仕事のかな……パソコンが埋まっちゃってる)

加蓮(よし、仕事関係っぽいのには触らないようにして、軽く片付けよう)

加蓮(プロデューサーさん、意外と漫画も読むんだね。週刊だし、毎週買ってるのかな? あ、そういえばこの間奈緒と楽しそうに話してたっけ)

加蓮(……今度、奈緒におすすめ教えてもらおうかな……)

加蓮(よし、これを巻数順に並べて本棚につめちゃおう。よいしょっと、ふう……あれ?)

加蓮(下の段の本、巻数が入れ替わっちゃってる。もう、プロデューサーさん、こういう小さいところでおっちょこちょいなんだから。ま、らしいけどね。ふふっ)

加蓮(順番に直しておいてあげるね、プロデューサーさん。入れ替わってる本を取り出してっと……ん? 奥にまだ何かある……?)ガサゴソ

加蓮「……あっ」

加蓮「…………」チラ

P「すー……すー……」

加蓮(寝てる……よね。…………)ガサゴソ

加蓮「……わぁ……///」

加蓮(そ、そりゃあプロデューサーさんだって男の人なんだし、大人なんだし……こういうのも必要だよね……///)

加蓮(よ、読んじゃだめだ。プライバシーってものがあるし……元に戻そう、うん……///)

加蓮(……ちょ、ちょっとだけ……///)ピラッ

加蓮「……わぁ……わぁ……///」ピラッピラッ

加蓮(……こういうのって、こうなってるんだ……///)

加蓮(……わぁ、凄い。おっきい……///)

加蓮(……プロデューサーさんって、こんな人が好みなのかな……?)

加蓮(……でもアタシだって……)チラッ

加蓮「…………」イラッ

加蓮「…………」パタングッグググッ

加蓮「……ふん」

P「すー……すー……」

加蓮「……プロデューサーさんのばか」

加蓮「もう。イライラして鬱陶しいな。……いやいや、アタシはイライラなんてしてないから。冗談じゃない。アタシには何も関係ないんだしこんなことでイライラなんてするわけないじゃん」

加蓮「さーってと、最初は軽く掃除するだけのつもりだったけど、こうなったらこの部屋思いっきり掃除しちゃおう。アタシのこのイライラじゃない気持ちが治まるまでね」

加蓮「ふう! こんなものかな。やっと治まった」

P「……う、うん? 加蓮?」

加蓮「あ、プロデューサーさん、起きた?」

P「なんで……ああ、そうか。看病に来てくれたんだったな」

加蓮「そうだよ、プロデューサーさん。あとついでに部屋も掃除しておいたよ」

P「うわ、本当だ。見違えるほど綺麗になってる。凄いな。ありがとう加蓮。本当に助かるよ」

加蓮「これで誰か部屋に呼んでも泥棒に入られたんじゃないって説明しなくて済むね」

P「はは、ああ。20年前から毎日掃除してますっていうことにするよ」

加蓮「ポカリ飲む?」

P「ん、もらうよ。ありがとう……ぷは。結構喉が渇いてたみたいだ」

加蓮「汗も沢山かいてるからね。ほら、パジャマ見て」

P「本当だ。酷いなこりゃ。着替えるか」

加蓮「それがいいよ。服脱いで。体拭いてあげる」

P「なんだって? いや、いや、それには及ばないよ。自分でできるって」

加蓮「上半身だけだからさ。ほらほら、逃げ場はないよ。観念しなさい。さあ万歳して~」

P「わっ、ちょ、待てっ、待てって! やめて!」

加蓮「なんか時代劇の悪いお代官さまの気分でちょっと楽しくなってきた」

P「お戯れはいけませんわ! お代官さま!」

加蓮「よいではないか~♪ よいではないか~♪」

P「あ~れ~!」

P「シクシク……もうお婿にいけない……」

加蓮「なに言ってんの。後半ちょっとノリノリだったくせに。ほら、手広げて。ちゃんと拭けないでしょ」

P「くそぉ……だいたい、加蓮はこういうのに抵抗ないのか? 自分で言うのもなんだけど、俺もうおっさんだぞ」

加蓮「アタシは看病のつもりだし全然平気。それにプロデューサーさんだって全然若いよ。……まぁ最近ちょっとお肉ついてきたかなっては思うけど。この辺とか」

P「うっ、くすぐったいからやめなさい。……まぁ、飲み会も多いし、最近いい中華料理屋見つけたこともあってな……。あそこ美味いし安いし量多いしでちょっと魅力的すぎる」

加蓮「食べすぎ飲みすぎは健康にも悪いし気をつけてね。適度な運動も大切だよ」

P「まさか加蓮に健康論を説かれるとは。今度事務所のトレーニングルームにでも行こうかな」

加蓮「その時はアタシも付き合うよ。ついでだし。よし、拭き終わったよ」

P「ああ、ありがとう。後は着替えを着て……と、これでよし」

加蓮「はい、体温計。熱も少しは下がったんじゃないかな」

P「測ってみるか……。それにしても、なんだ。今日は本当に世話になっちゃったな。今度お礼に何かご馳走するよ」

加蓮「ホント? じゃあ何食べたいか考えとくね」

P「おう。加蓮のことだからポテトがいいって言うかと思ったよ」

加蓮「ちょっと、プロデューサーさんまでそういうこと言う。やめてよね。アタシ最近ポテトキャラになりつつあるんだよ」

P「ははは、いいじゃないか。ポテトのCMが沢山取れそうだ」

加蓮「もう! 笑い事じゃないって! 四六時中ポテト食べてるわけじゃないんだから」

加蓮「ポテトはもちろん好きだけど、それだけじゃないんだよ。ほら、この間見せたまゆと奏と撮った写真。アタシあの時チュロス食べてたでしょ?」

P「ああ、そういえば。まゆのポップコーンもつまみ食いしてたな」

加蓮「アタシはああいうお菓子とかジャンクなものが好きなの。昔あんまり食べられなかったから」

P「でも自分の食べられる量も考えないで注文するのはダメだぞ。こないだ奈緒に愚痴られた」

加蓮「あのお店のポテト思った以上に重くって、失敗したよ。でも神様が許してくれたから大丈夫。やっぱり持つべきはいい神様だね」

P「いい奈緒もな」

ピピピ ピピピ

P「お、体温計が鳴った。えーっと、37.6℃」

加蓮「ちょっと下がったね。今晩また大人しく寝てれば明日の朝には完全に下がると思うよ」

P「良かったよ。これで明日は仕事に行ける」

加蓮「それはダメ」

P「え、どうして?」

加蓮「最近ずっと働き詰めで、そのせいで体調崩したって言うのに、一日休んだ程度じゃ休んだことにならないから。明日の朝、熱が下がってても仕事は休むこと」

P「そうは言ってもな。加蓮やみんなのためにまだまだやることがたくさんあって、今日一日休んだのにもう一日休むなんて――」

加蓮「アタシたちの力はプロデューサーさんが一日二日休んだくらいで崩れるほど脆いものなの? ハリボテみたいな、そんな程度のものだったの?」

P「そんなことはない! お前たちの力は俺が一番良く知ってる! お前たちにはトップを取れる力があるって!」

加蓮「そうだよね。信じてくれてるもんね。だからこそこの間のライブだってアタシたちに任せてくれたんだよね。アタシはそんなプロデューサーさんを信じてる」

加蓮「だからさ、アタシたちは大丈夫だから、こういうときはしっかり休んでよ。ちひろさんだっているんだし。それとも明日絶対外せない用事でもあるの? アタシは明日レッスンだけだったよね?」

P「……いや、明日は社内でのちょっとした打ち合わせが二件とイベントの資料作成と溜まってた書類のチェック。どれも急ぎのものじゃない」

加蓮「だったら、明日も休んでしっかり英気を養って。それで全快したらまたアタシたちを全力でプロデュースしてよ。アタシたちが全力でアイドルしてるんだから、プロデューサーさんも万全の状態で、全力でプロデュースして欲しいんだ。言っておくけどこれは絶対に譲らないからね?」

P「……はぁ。最初はレッスンにも乗り気じゃなくてめんどくさがりだったのに、どうしてこんなに勝気な子になっちゃったかねぇ」

加蓮「アタシをこんなに立派なアイドルにしてくれたのは、プロデューサーさんだよ」

P「ああ、その通りだ。お前は立派な俺のアイドルだ。俺にも見る目はあったってことだ」

P「担当アイドルに全力でプロデュースしてくれって言われちゃ仕方ない! かんっぺきに快復するまで俺は休む! その代わり、俺が帰ってきたら……加蓮、覚悟しろよ?」

加蓮「望むところだよ! こっちこそ、生半可なやつだと跳ね返していくからね? 覚悟してて!」

P「さて、と。おっと、もうすぐ夕方じゃないか。加蓮、暗くなる前に帰ったほうがいいぞ」

加蓮「そうだね。プロデューサーさんももう平気そうだし、そろそろ帰るよ」

P「今日は本当に助かったよ。本当にありがとうな」

加蓮「アタシも久しぶりにプロデューサーさんとゆっくり話せて楽しかったよ。お礼のデート、楽しみに待ってるね♪」

P「え? デート? そんなこと言ってないぞ。俺はお礼に何かご馳走するって――」

加蓮「もう、二人でどこかに連れてってくれるってことはデートでしょ。違う?」

P「そうなの、かな?」

加蓮「そうだよ」

P「んー、まぁいいか。でもこのことはくれぐれも誰にも言わないでくれよ?」

加蓮「わかってるって。ああそうだ。おかゆはまだキッチンの鍋に残ってるから。あと消化によさそうなおかずをいくつか作って冷蔵庫にいれてあるから、もっと食べられそうなら食べて」

P「そんなことまでしてくれてたのか」

加蓮「それともし明日の朝になっても熱が下がりきっていなかったりまた上がってるようだったらすぐに病院に行くこと。早めにね」

加蓮「汗かいたらすぐに着替えるんだよ。ポカリもまだまだあるからこまめに給水してね。それから――」

P「わかったわかった。加蓮、いつまでもやってると本当に日が暮れるぞ」

加蓮「あぁ、といけない。じゃあもう帰るよ。プロデューサーさん、またね。おやすみなさい」

P「ああ。またな。おやすみ、加蓮」

バタン

P「さてと……俺はまた寝なおすとするかな。加蓮やみんなのためにも早く元気にならなくちゃ……。Zzz……」

数時間後

P「……う、うーん。のどかわいた……。ポカリポカリ……ゴクッゴクッゴクッゴクッぷはっ。……また汗かいたな。着替えるか……」

P「ってもう真っ暗だな。着替えたらなにか食べよう……」ガサゴソ

P「そういえば加蓮がなにかおかずを作ったって言ってたな。ちょっと見てみるか。たしか冷蔵庫に……お、このゼリーやプリンは買って来てくれたやつだな」

P「えっと、おかずはこのパックのやつかな? あ、蓋にメモが貼ってある。なになに? 『中は豚肉の生姜焼き。おかゆだけじゃものたりないと思ったら食べて』加蓮……」ジーン

P「あれ? 裏にもなにか書いてある。えーっと……『追伸、本棚の奥に隠してあるもの見ちゃった♪』? 本棚の奥……って、なにぃいいいい!?」

後日

奈緒「加蓮さ、なんか最近やけに上機嫌じゃないか?」

凛「あ、奈緒もそう思った? 私もそう思ってたんだ。なにかいいことでもあった?」

加蓮「いいこと? んー、あったといえば、あったかなー♪」

奈緒「なになに? なにがあったんだ?」

加蓮「えー? 教えるわけないじゃん」

凛「加蓮。私たちの間に秘密はなしだったはずだよ」

加蓮「そんな約束したっけ? どっちにしろなに言われても教えないよ。これはアタシだけの秘密……だから♪ あっ、まゆ!」


独り暮らしでこんな独り言言わんやろ

まゆ「あら、加蓮ちゃんに皆さん、こんにちは」

加蓮「まゆ、この間はありがとね。さっそく役に立ったよ」

まゆ「そうですか? それならよかったです。こちらもいろいろと参考になりましたし、楽しかったですよ♪」

加蓮「アタシもだよ。今度は二人でお茶でも行こうね」

まゆ「ぜひ。うふふ」

奈緒「なんのこと?」

加蓮「前の仕事で少し仲良くなったからね。ちょっと一緒に出かけたんだ♪」


凛「まゆはこれから仕事?」

まゆ「はい。まゆのプロデューサーさんとちょっと地方ロケに……」

凛「地方ってことはもしかして泊まり?」

まゆ「はぁい♪」

奈緒「半分旅行みたいなものか。いいなぁ」

加蓮「やったね、まゆ! 頑張って!」

まゆ「はい♪ じゃあ行って来ますね♪」

加蓮「いってらっしゃーい! あ、入れ替わりでプロデューサーさん!」

P「今の佐久間さんか? やけに上機嫌だったな……。おはよう。みんな揃ってるのか」

凛「おはよう、プロデューサー。もう出てきていいの?」

奈緒「みんな心配してたんだぞ? 風邪は治ったのか?」

P「あ、ああ! おかげさまでもうこの通りさ! 元気バリバリだぞ!」

凛「……どうしたの? なんかいつものプロデューサーじゃないみたい」

奈緒「なんかやけにテンション高くないか? やっぱりまだ無理してるんじゃ……」

P「そ、そうか? 風邪はちゃんと治ったんだが……病み上がりだし、そのせいかもな! ははははは!」

P「……っと、仕事の話なんだけど、加蓮、ちょっとこっちに来てくれないか?」

加蓮「アタシ?」

P「ああ。ちょっと次のイベントのことについて聞いておきたくて」

奈緒「アタシたちはいいのか?」

P「ああ、ちょっとな。待っててくれ」

ガチャバタン

加蓮「……で、聞きたいことって?」

P「あ、あの、そのだな……」

加蓮「なに? はっきり言って欲しいんだけど。……なーんて、ほんとはなんのことか気づいてるけどねー♪」

P「うっ……あのさ、あのメモに書いてあったことなんだけど……」

加蓮「うん、ばっちり見たよ。中身までぜーんぶね♪」

P「うあああああ! なんてことだ!」

加蓮「ちょっと! 声が大きいって」

P「あ、ああ……っくぅぅ。なんて恥ずかしい……」

加蓮「大丈夫だよ。プロデューサーさん。あんなの気にもしてないから。男の人なんだしああいうのも必要なんだよね。わかってるよ」

P「……そのわかられてるのが男には一番恥ずかしいってのは覚えておくといいぞ、加蓮」

加蓮「ふーん。そういうものなんだ」

P「……それで、誰かに言ったか?」

加蓮「それも大丈夫。“まだ”誰にも言ってないよ」

P「はぁぁぁ、よかった……“まだ”?」

加蓮「うん。これからどうなるかなんてわかんないし? 特別口が堅いほうでもないし? ぽろっと口が滑っちゃうこともあるかもしれないし? ねぇ?」

P「お願いします加蓮さん! どうかこのことだけは! 誰にも言わないと約束してください!」

加蓮「えぇ~。どうしよっかな~」

P「後生ですから! 加蓮さん! お助けください!」

加蓮「じゃあこれから先、アタシが欲しいって言った時にポテト買って来てくれたら黙っててあげる。さっそく買ってきて♪」

P「……え? それだけでいいのか? もっとキツいお願いでも覚悟してたんだけど……」

加蓮「あれぇ? もっとキツいお願いが良かったような口ぶりだね? わかった、今すぐ考えるから。えーっと……」

P「よっしゃ行って来ます! うおおおおお! 走れ俺! 病み上がりがなんぼのもんじゃああああああ!」

加蓮「……これから先、“ずっと”だよ、プロデューサーさん。健康には気をつけてね。私との約束、だよ」ボソッ





読んでくださってありがとうございました
GW中風邪引いちゃって加蓮が看病してくれねえかなって考えながら寝込んでたよ
くれぐれも体調には気をつけてね

総選挙も明日5月9日 18:59までだから投票忘れないようにね
加蓮頑張れ!

頑張るのはお前だよ
加蓮は最初っから頑張ってんだ

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