北条加蓮「残暑厳しい幸せな日」 (16)



―――泰葉のルーム


ミーンミンミンミンミン……
ジジジジジ……


加蓮「あつーい……」グデー


李衣菜「もう9月なのにねぇ……はぁ、そろそろ涼しくなってくれてもいいのに」パタパタ

泰葉「完全に台風一過ね……。ふう……」

加蓮「あー……もっと扇いでぇ……」

李衣菜「はいはい……」パタパタ…

泰葉「アイスはもう無いし……あ、そうだ」

加蓮「ん……なに、泰葉」

泰葉「加蓮、誕生日おめでとう……」

李衣菜「あぁ、そういえば……。おめっと、加蓮……」

加蓮「……今世界で一番やる気のないおめでとうをありがとう……」

泰葉「うん……」


「「「暑い……」」」

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ミーンミンミンミンミンミッ……ミーンミーン……


李衣菜「プレゼントなにがいい……?」

加蓮「アイス……」

李衣菜「いやもっとなにかあるでしょ……」

泰葉「昨日の夜食べたモナカで最後だったから……コンビニに行かないと」

加蓮「……この暑い中を?」

泰葉「この暑い中を」

李衣菜「気温30℃超えてるんだけど……」


「「「…………」」」


加蓮「さいしょはグーっ」

李衣菜「じゃーんけーんっ」

泰葉「ぽんっ」

李衣菜「…………」

泰葉「…………」

加蓮「…………」


加蓮「……やっぱアイスいらない」クテン

泰葉「あっ負けたからってずるい。買ってきて加蓮」

加蓮「やだぁ……。こんな炎天下に外歩いたら干からびちゃうぅ……」

李衣菜「干からびてもいいから早く」

加蓮「それが誕生日の人間に対して言う言葉ぁ……?」

李衣菜「あはは、冗談冗談」

加蓮「んもー……」

泰葉「夕方なら少しは涼しくなると思うから……そしたら一緒に買いに行きましょう」

李衣菜「うん、だったらコンビニじゃなくてスーパー行こっか。夕飯に加蓮の好きなもの作ってあげる」

加蓮「え、いいの?」

泰葉「私も手伝うね。誕生日の加蓮のために腕によりをかけて」

加蓮「やった! じゃあお言葉に甘えちゃおうかな♪」

李衣菜「へへ、誕生日っぽくなってきたね」

加蓮「暑くなければ最高の1日なんだけどね……お祝いされるのは素直に嬉しいけど」

泰葉「ふふっ……他に欲しいものはある? 今日はわがまま、聞いてあげるから」

李衣菜「いつもわがまま聞いてる気がするけどね」

加蓮「むっ、私だって李衣菜のロックに付き合ってあげてるでしょー」

李衣菜「頼んでないもーん」

加蓮「なによー」ペシペシ

李衣菜「あは、くすぐったいってー♪」

泰葉「ふふふ、もう。暑いのにそんなくっついて……♪」

加蓮「んで、欲しいものだっけ。んーとねー」ノシッ

李衣菜「あの、重いんだけど……暑いし」

泰葉「欲しいものじゃなくても、私たちにしてもらいたいことでもいいよ?」

加蓮「んー……。色々あるけど……こうして一緒にいてくれるだけでいいんだよね、正直」ムギュ

李衣菜「暑いってば……」

加蓮「誕生日だからって、なにか特別なことするとかじゃなくて……普通に、いつもみたいにこうやってさ」

李衣菜「…………」

泰葉「……うん」

加蓮「それだけでいいの。2人がいてくれれば、それで。ねっ」

李衣菜「…………」

泰葉「…………」

加蓮「……な、なんか言ってよ……恥ずかしいこと言ってる自覚あるんだから」

泰葉「ううん、恥ずかしいなんてそんなこと。ありがとう、そう言ってもらえると私も嬉しいな……♪」

加蓮「えへ。来年も同じこと言っちゃうかもだけど♪」

李衣菜「とりあえず離れてくんない? いい加減暑苦しい」グイッ

加蓮「ああっ、ちょっといいこと言ったつもりだったのにひどいっ」コテーン

李衣菜「はぁ……また1年加蓮のお世話しないとならないのかー」

加蓮「やん、ツレないこと言わないでよ李衣菜♪」プニプニ

李衣菜「うみゅ。へへ、大丈夫。私も加蓮のこと頼りにしてるからねっ」

加蓮「うんっ。泰葉っていう芸能界の大先輩もついてるしねー?」

泰葉「あ、そういうこと言うの。だったら加蓮にはもうなにも教えてあげない」

加蓮「あっウソ、ウソだよ! もっと色んなこと教えて泰葉っ!」

泰葉「つーん」

李衣菜「あははは♪」


―――

――




ジジッ、ジジジ……ミーンミンミン……
カナカナカナカナ……


泰葉「――さ、そろそろ出かける準備しましょう。涼しくなってきたし」

加蓮「ワタシ…モウゲンカイ…ヒカラビタ」ゴロゴロ…

泰葉「なに言ってるの。ほら、起きて」

加蓮「うー……髪梳かしてくるぅ」トテトテ

泰葉「うん、待ってるから」


李衣菜「……泰葉。例のアレは?」コソッ

泰葉「大丈夫。ちゃんと1ヶ月前に予約しておいたから」

李衣菜「へへ、早く加蓮の驚く顔みたいなぁ♪」

泰葉「私が受け取りに行くから、李衣菜はその間加蓮をお願いね」

李衣菜「おっけー、任せてよ。てきとーに連れ回しとくから」

泰葉「ふふ……特注のケーキ、喜んでくれるかな」

李衣菜「くれなきゃ困るよ。せっかくの誕生日なんだし、盛大にお祝いしないとね!」

泰葉「ええ、そうね♪」

加蓮「――準備できたよー。なんの話してるの?」

李衣菜「んーん、なんでも。って、お? ポニテにしたんだ?」

加蓮「あ、うん。暑いしちょうどいいかなって」

李衣菜「へー、いいじゃん」

泰葉「……ぽにぽに」サワサワ

加蓮「ひゃっ! な、なに泰葉っ、別に珍しくもないでしょっ。ていうかぽにぽにってなにっ?」

泰葉「ふふっ、ぽにぽに……♪」

李衣菜「ぽにぽにー♪」

加蓮「もーっ、なんなの2人してー! 早く行こっ、今日は私のリクエストに答えてくれるんでしょ?」

李衣菜「えへへ、なんでもいいよ。加蓮のお好きなように」

泰葉「付け合わせ、フライドポテトにしてあげたら?」クスクス

加蓮「!!!」


加蓮「置いてくよ2人とも!!」ダッ

李衣菜「ちょっ!? 待ってよスーパーは逃げないよ!」

加蓮「逃げるよポテトは! 早く! ポテト!」

李衣菜「逃げるポテトってなに!? 加蓮、待ってってば――!」


泰葉「……余計なこと言っちゃったかな。ふふふ」

泰葉「幸せそうな顔……また1年間見せてね、加蓮♪」



泰葉「待ってー、2人ともー!」

李衣菜「ほ、ほら泰葉がまだ……!」

加蓮「ぽってとーぽってとー、ぽってっとー♪」

李衣菜「聞いてないし……あはは、もー……」


加蓮「ふふっ♪ いつもありがとねっ、李衣菜、泰葉!」



おわり

というお話だったのさ
ポテトの歌

加蓮、誕生日おめでとう!

ひとつ前のお話
モバP「だりやすかれんの親愛度」

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