いらない過去だけをピンポイントで消していった話 (6)

誰にだって消し去りたい過去があると思う
そういうのって大抵、気付いたら忘れてるんだろうけど
でも、どうしようもなく取り返しのつかないものってあるだろ?
それが消せるって言われて、調子に乗ったのが余計大きな失敗を呼んだんだろうな


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「消したい過去があるんでしょう?」
その店主は確かにそう言った
問いただそうとする俺を制して、大げさな身振りとともに話を続ける
「失敗した。そんな顔をしています。
 でもね、無かったことに出来るんですよ。
 信じる信じないは貴方の自由ですけどね」

高2の夏だったか、受験なんてまだまだ先だと思ってたし、期末試験の結果もまあまあ
部活にも入ってなかったから、夏休みまでの時間をなんとなく過ごしてた時期だった

当時俺には彼女なんてものはいなかったんだが、代わりに仲良くしてる子が一人いてさ
その日も帰りのホームルームが終わると同時に声をかけてきたんだった
「ほらほらうーちゃん、帰るよー」なんて、ルーズリーフを片付け終わってない俺の腕を引っ張りながら

「どうせうーちゃん今日も暇なんでしょ」
「今日もってなんだ今日もって。俺は稲葉と違って忙しいんだよ!」
なんて馬鹿みたいに騒ぎながら廊下を走って学校を出る。
今日もまたこいつに振り回されながら帰るんだろうなんて考えながら。

俺の家はアホみたいに親が厳しかったから、こうやってしょっちゅう稲葉に振り回されるのは嫌じゃなかった
むしろ、家での窮屈な時間を忘れさせてくれる貴重な時間だった

家に帰れば受験の話だ成績の話だでストレスが溜まる
そのストレスを稲葉と馬鹿騒ぎすることで発散させることでどうにか日々を楽しいと思えていたんだ

だからこそ彼女とはこの関係を長く続けて行きたいと思ってたし、そうなるもんだと思ってた
なんていうか、それが当たり前だと感じてたんだよな
いつものように遊んで、いつものように帰って、また明日もいつものように挨拶して

でもさ、そんなずっと変わらない当たり前なんてあるはずもないよな

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