【古畑x相棒】古畑「特命係~…?」【クロスオーバーss】 (38)

何となく思いついたので書いてみました

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……

………

古畑「えー…皆さんは人を信じたことはあるでしょうか?」

古畑「無いという方はほぼいないと思いますが、それと同時に信じたけども裏切られた事もあると思います」

古畑「人を信じても相手が自分を信じてくれるとは限らない。それが信頼という難しさだと私は思います。簡単に人を信頼なんかしちゃダメです」

古畑「しかし、本当に信頼できる人が目の前に現れたとしたら…あなたならどうしますか?私ならきっとこうするでしょう。それは…」

………

……

~都内某所~

とあるマンションの一室。

一郎「おい二郎、冷蔵庫の酒取ってくれ」

二郎「一郎兄さん飲み過ぎだよ」

一郎「お前に心配される筋合いはねえよ!」

二郎「あのさぁ…わざわざ僕を部屋に呼び出しといてその態度はおかしくないですか?」

一郎「あぁ?お前散々小さい頃オレに世話になってただろ?恩を仇で返す気か?」

二郎「……わかったよ。取ればいいんだろ」

二郎は冷蔵庫からビール瓶を取り出す。

一郎「それにもうまもなく金は返せる…当てができたんだ。だからそれまでは待ってくれ」

二郎「………」

一郎「後ろの机に置いといてくれ。テレビを見終わってから飲むから」

二郎「………」

二郎のストレスはピークに達していた。

一郎「おい、返事は…」

一郎が振り向いた時、二郎は一郎の頭めがけてビール瓶を殴りつけた。

パリィィィン!

勢いよく割れるビール瓶と激しく飛び散る酒とガラスの破片。

そしてそれと同時に一郎は力が抜けたように崩れ落ちる。

二郎「ハァ…ハァ…ハァ…」

二郎「や、やってしまった…」

二郎「に、兄さん!一郎兄さん!」

トントン!(扉のノック音)

二郎「!?」

三郎「一郎のアニキ!呼ばれたから来たぞ!」

二郎(なんてタイミングの悪い時に…!)

二郎(とりあえず一郎兄さんを隠して破片を片付けないと…だけど時間が…)

三郎「おいアニキ!居留守使ってんじゃねえよ!」ドンドン

二郎(このままじゃ時間の問題か…なら…)

二郎は一郎のクローゼットから服を借り、自分のバッグの中からマスクを取り出し装着した。

ガチャ

二郎「すまんな三郎…少し風邪をひいてしまってな」

三郎「早く金返せよアニキ!1ヶ月も遅れてるぜ!」

二郎「これで借りてた分は足りるか?」

三郎「うお!珍し!ちゃんと金返してくれんのかよ!いやまてよ…しかも貸してたお金より多いけど…」

二郎「迷惑をかけたからな…利息分と思ってくれ」

三郎「アニキ…」

二郎「じゃあな…もう金を借りる事はないな」

三郎「そうだな…」

ブスッ

二郎「うっ…!」

三郎「永遠にな…!!」

三郎は一郎に扮した二郎のお腹にナイフを刺した。

二郎「三郎…ッ!…て…め…」

バタン

三郎「なにもかも遅えんだよアニキ…もう何をやってもな…」

三郎は部屋に入った。

しかし、そこにはもちろん一郎がいた。

三郎「!?」

三郎「こりゃ…どういうことだ!?」

ガチャ

四郎「一郎兄さん。扉開いてっけど何かあったの…か…」

四郎「う、うわあああぁぁあ!!」

お腹にナイフの刺さった二郎を見て驚く四郎。

三郎「四郎!!」

四郎「さ、三郎兄さんがやったのかよこの人殺し!!!!」

三郎「ま、待て落ち着け!オレじゃない!!」

二郎「う、嘘をつくな…!」

三郎「ジ、二郎のアニキ!?」

二郎「僕を一郎兄さんと思い込んで刺したくせして…中途半端にナイフが刺さって痛いじゃないか…!」

三郎「待てよ!!なんでそもそも二郎のアニキが一郎のアニキの格好してんだよ!そりゃ間違うだろ!!」

二郎「ぼ、僕だってなりたくてなったんじゃないよ!ただ…一郎兄さんをオレが殺したから…」

三郎「何言ってんだよ!まだ一郎のアニキは息してるぜ?気を失ってるだけだ!」

二郎「そ、そうなのか?」

三郎「ちゃんと脈はあるぜ?確認しろよぉ~」

二郎「よ、良かった~…」

三郎「それより二郎のアニキもか?」

二郎「え?」

四郎「お、おい…もしかしてお前らもか…?」

二郎「え?何が?」

四郎「オレも一郎兄さんを殺しに来たんだよ」

二郎・三郎「!?」

四郎「この後の五郎もオレと一緒に一郎兄さんを殺そうとしていたんだ…つまり…」

四郎「五兄弟の弟全員が呼ばれたから長男を殺そうとしていたって事だよな…?」

二郎「……マジかよ…」

三郎「…こうなったらみんなで手を組まねえか?」

二郎「どういう意味?」

三郎「みんなで互いをかばい合うんだよ。そうすりゃみんな容疑者から外れるだろ?」

四郎「なるほど…それは名案だな」

二郎「だけどどうやって?」

三郎「オレに良い考えがある。とりあえずオレの言う通りに一郎のアニキを動かしてくれないか?」

二郎「…こうなったらみんなでやるしかないか」

四郎「…あぁ。五郎にはオレから連絡しておく」

三郎「じゃあ…行動に移そう…」

~3時間後~

伊丹「害者は?」

芹沢「田中一郎、30歳独身、無職。どうやらあちこちから金を借りまくってたそうですね」

伊丹「金を返せなくなって自室から飛び降り自殺ってところか…」

芹沢「部屋のパソコンから遺書と思われる文書がありました。となると自殺かと」

伊丹「おいおい。もう解決じゃねえか」

芹沢「そうですね!これじゃあ特命係の出番もなしですね!」

杉下「そうとは限りませんよ」

芹沢「い、いつの間に!?」

杉下「さっきからずっといましたよ」

伊丹「しかし警部殿、今回は自殺の線が濃厚です。警部殿のお力を借りなくとも我々で解決しますから」

杉下「そうですか」

伊丹「そういえば。いつも警部殿の後ろにいるはずの人がいないようですが?」

杉下「彼は今、インフルエンザでお休み中です」

冠城『ゴホゴホ!!!!』

伊丹「お気の毒に…」

杉下「おや…?これは何でしょう?」

伊丹「茶色い動物の毛に見えますが…」

芹沢「だけど害者はペットなんか飼ってませんよ?」

杉下「気になりますねぇ…」

~現場下のコンビニ~

今泉「古畑さん古畑さん!ありましたよ!ハンバーガー!」

古畑「ん。ありがと」

古畑「…これは肉まんだ」

今泉「あ!本当だ!」

ペチッ(今泉のオデコを叩く音)

古畑「もういい。君に頼った私がバカだった」

店員1「いらっしゃいませー!」

古畑「これだこれ。やっぱりあるじゃないか。しかも最後の1つだ」

店員1「?」

古畑「店員さん質問いい?」

店員1「はい?」

古畑「このハンバーガーはピクルス何枚入ってるの?」

店員1「5枚です」

店員2「次のお客様どうぞ」

古畑「5枚?配置は?」

店員1「中心にピクルスを1枚。それを囲むようにピクルスを4枚。花びらのようにしてどこから食べてもピクルスが当たるようになっています」

古畑「完璧だ」

店員1「ありがとうございます」

古畑「それじゃあね…」

杉下「ハンバーガーを1つ」

店員2「かしこまりました!」

古畑「!」

店員1「あ…今ちょうど売り切れちゃいました…次のハンバーガーを作るのに10分ほどお時間をいただいても…」

古畑「すみません…そこのあなた、よろしいですか?」

杉下「はい?」

古畑「今、あなたはハンバーガーを頼まれましたよね?」

杉下「そうですねぇ。ハンバーガーを1つ頼みました」

古畑「実はそのハンバーガー、今から私が頼もうとしてたハンバーガーなんですー。あなたが頼む前から。ずっとそのハンバーガーについてこの店員にお聞きしてたんです」

杉下「なるほど。それは知らずに注文してしまい申し訳ありません」

古畑「話のわかる人で良かったです。それではハンバーガーを…」

杉下「しかし、先にハンバーガーを1つと注文したのは僕が先でした。つまりこのハンバーガーは僕の所有物なんですよ」

古畑「…話の分からない人だ」

杉下「残念ながらこのハンバーガーは休養中の私の友人の大好物でしてねぇ~…譲る事は出来ませんよ」

古畑「そこを何とか」

杉下「なりませんねぇ」

古畑「こんなにお願いしても?」

杉下「ダメなものはダメですよ」

古畑「んふふふ…どう思う君?」

店員1「ぼ、僕!?ぼ、僕からは何とも~…」

古畑「そもそも君がべらべらと喋っていたから先にハンバーガーを…」

杉下「ではお先に失礼します」

今泉「古畑さん!!そろそろ現場に向かわないとマズイですよ!!」

古畑「それどころじゃないよ!今は!君だけ先に現場に向かいなさい!」

杉下「……」

~数十分後~

古畑「どういう状況?」

今泉「犯人はこの部屋に侵入して金目の物を探していたようでかなり荒らされています」

今泉「その最中に部屋の所有者が帰宅したため、慌てて逃げ出そうとしましたが、結局見つかってしまい近くにあったナイフで被害者を刺して逃走したそうです」

今泉「被害者は病院に搬送されましたが幸い重症には至らなかったそうです」

三郎「クソ!!よくも二郎のアニキを…!」

古畑「この方は?」

今泉「被害者の田中二郎さんの弟の田中三郎さんです。一緒に犯人を見たそうで…」

三郎「刑事さん!犯人は一郎のアニキに決まってます!!早く一郎のアニキを逮捕してください!!」

古畑「あのー、ちょっとよろしいでしょうか?」

三郎「なんですか」

古畑「先程から一郎、二郎、三郎と名前が続いていたんですが、ひょっとして弟さんの名前は四郎さんですか?」

三郎「…そうだけど」

古畑「やっぱり!いやー、実は私の知り合いにもいるんですぅ。一郎、二郎、三郎、四郎の4兄弟が。親がめんどくさいからって適当につけたらしいんです。フフ」

三郎「だからなんなんですか!!今はそれどころじゃないでしょ!!」

今泉「もしかして五郎がいたりして!!」

三郎「ふざけるのもいい加減にしろ!!」

古畑「今泉くん。謝りなさい」

今泉「え!?僕ですか!!」

古畑「すみませんうちの部下が失礼な事を言いまして…こら君も!」ペチッ

今泉「す、すみませんでした!」

三郎「あなたも十分失礼な事を言ってたけどな…」

古畑「そう聞こえたのなら謝ります」

三郎「まぁいいよ…確かに五郎もいるけどそれより早く一郎のアニキを…」

杉下「残念ながら田中一郎さんはつい先ほどお亡くなりになられましたよ」

三郎「なに!?」

古畑「あなたは…先ほどお会いした…」

杉下「やはりそうでしたか。古畑という珍しい苗字でしたのでそうだとは思っていましたが…」

杉下「申し遅れました。特命係の杉下右京と申します。噂はよく聞いております」

今泉「古畑さん!特命係と言えば難事件を何個も解決してきたあの!」

古畑「そうなの?全然知らないけど」

三郎「そんな事より一郎のアニキが死んだって本当なのかよ!」

杉下「えぇ。先ほどマンションの一階で遺体が見つかりました」

三郎「あの野郎…!二郎のアニキを刺して自分は飛び降り自殺ってか…ふざけんな!!」

古畑「…先程から一郎さんが二郎さんを刺したとおっしゃっていましたが、なぜそうお思いになられたんですか?」

三郎「二郎のアニキは一郎のアニキに金を貸してくれって頼まれてそれを断ったんだよ。それ以来一郎のアニキはずっと二郎のアニキと口をきかなかったんだ」

三郎「そして今日、二郎のアニキとゲームをするために部屋に来たら黒い服を着た泥棒がいたんだ。その時に聞いた泥棒の声は間違いなく一郎のアニキだったんだ!」

古畑「残念なお兄さんだったんですね…心中お察しします」

三郎「だけど、一郎のアニキが死んじまったら…この怒りはどこにぶつけたらいいんだろうな…」

猫「ニャォ~」

今泉「あ、猫だ!!」

古畑「茶色くて可愛らしい猫だ事」

三郎「二郎のアニキが飼ってるんですよ」

杉下「そうですか。随分と毛並みの整った猫ですね」

杉下「それに部屋も綺麗に掃除してありますねぇ」

今泉「ほれほれ!名前はなんて言うんですか?」

三郎「確か…太郎だったと思います」

今泉「ほーら太郎!こっちおいでー!」

太郎「……」

古畑「君には興味がないようだ」

古畑「ところで三郎さん。1つよろしいですか?」

三郎「なんですか?」

古畑「四郎さんと五郎さんは今なにを?」

三郎「事件と関係ないと思いますが?」

古畑「判断するのは私です」

三郎「…チッ。2人とも買い物に行ってたはずだよ。さっき電話したらそう言ってたから」

古畑「2人で買い物ですか…そしてあなたは二郎さんと2人で部屋に。仲の良い兄弟ですねぇ…1人を除いて」

三郎「一郎のアニキはクズでしたからね…死んで清々したのはオレだけじゃないはずです」

古畑「兄弟全員がそう思っていたと…?」

三郎「多分ね…もういいですか?1人にして欲しいんです」

古畑「そうですか。では“私”の質問は以上です」

杉下「よく、僕が質問をしようとお分かりになられましたね」

古畑「感です。フフフ…」

古畑「今泉くん。被害者の病院に行こうか」

今泉「あ、はい!」

古畑「それではお先に…」

杉下「えぇ。では…」

古畑は二郎の病院に車で向かった。

車内では古畑が一郎の検死結果と現場の状況を確認していた。

今泉は古畑に頼まれて一郎のマンションへと向かった。

~病院~

トントン

古畑「失礼します」

二郎「なんですか?」

古畑「すいません。警察です」

二郎「あ、どうも」

古畑「今回は災難でしたね」

二郎「まったくです…先ほど来た警察の方から伺ったんですが、まさか一郎兄さんが…」

古畑「そうなんです。どうやら一郎さんはあなたの部屋に侵入し、あなたを刺した。そしてバイクで自宅に帰り自殺したようです」

二郎「えぇ。さきほどの方もそうおっしゃってました」

古畑「しかし気になることが何点かあります」

二郎「なんですか?」

古畑「検死の結果一郎さんの体内から大量のアルコール反応が発見されたんです」

二郎「それのどこがおかしいんですか?自殺の前に部屋で酒を飲んで気持ちを落ち着かせてたんじゃ…」

古畑「いいえ。それはありえません」

二郎「え…」

古畑「彼の部屋にはビール瓶が何本もありました。しかし、空のビール瓶は一本もありませんでした」

古畑「おかしくないですか?普通酒を飲んだら空き瓶や空き瓶の1つぐらいないと辻褄が合いません」

二郎「帰り際に酒を買って飲んだだけじゃないですか」

古畑「盗みがバレてあなたを刺した後に酒を飲んで気持ちを落ち着かせて飲酒運転する余裕があるとは考えにくくないですか?普通酒を飲むなら自宅が相場と決まっています」

二郎「おかしいですね…それじゃあまるで…」

古畑「誰かが持ち去ったとしか考えられないんです」

二郎「なぜそんな事を?」

古畑「分かりません。犯人にしか」

二郎「……」

古畑「それにしてもあなたが飼ってる猫。可愛らしかったですよ」

二郎「あ、あぁ…マー君って言うんです」

古畑「マー君…良い名前です」

古畑「よくしつけがされていて、毛並みも整えている良い猫です」

二郎「一応体調管理とかには気を使ってますから」

古畑「そうでしたか……」

二郎「三郎もうちのマー君が好きでよく遊んでるんです。マー君って呼びながら」

古畑「……なるほどぉ」

二郎「あのー…そろそろ良いですか?傷口がまだ痛むので寝たいんですが」

古畑「失礼しました。それでは…」

古畑「あ!そうそう…言い忘れていました」

古畑「現場でガラスらしき破片が見つかったそうなんです」

二郎「!?」

古畑「今鑑識に見てもらってますが、一体何か気になりませんか?何か分かりましたらまた来ます。それではおやすみなさい」

ガチャ(古畑退室)

二郎(四郎のやつ…現場に証拠を残してやがったのか…!)

古畑「どうだった?」

今泉「管理人がバイクで帰宅する一郎さんを見ていたそうです」

古畑「顔を見たって言ってた?」

今泉「いえ!いつもフルフェイスのヘルメットと赤いライダースーツに青ズボンを着ていたのでおそらく一郎さんだと証言してました」

古畑「喋ってもない?」

今泉「はい!一言も!」

今泉「それから二郎さん達が一郎さんの部屋を訪れたかは分からないそうです」

古畑「分からない?」

今泉「写真を見せたんですが、顔を覚えてなかったようです」

古畑「監視カメラは?」

今泉「つけてないそうです」

古畑「セキュリティの甘いマンションだねぇ~…」

古畑「オッケーありがと」

今泉「あと!頼まれてたさっきのハンバーガー買ってきましたれ」

古畑「…それ食べかけに見えるけど?」

今泉「あ!実はこれ僕が少しだけ食べちゃいました!」

古畑「…もういいよ。それは君が食べなさい」

今泉「いいんですか!?じゃあ遠慮なく!」

古畑「はぁ~…」

~四郎宅~

杉下「豪華なご自宅ですねぇ~」

四郎「まぁ…稼いでますから…」

杉下「という事は、一郎さんからはお金をせがまれていた?」

四郎「はい…一郎兄さんはいつも弟から金を借りていました」

五郎「…あんなの兄でもなんでもないよ」

杉下「友達の間では金銭トラブルがしょっちゅうあったようです」

五郎「あいつが死んで清々したよ…」

四郎「五郎!そんな事言うな!!一郎兄さんには世話になっただろ!」

五郎「ごめん…」

杉下は写真立ての写真が目に入った。

杉下「昔は随分仲よかったんですか?」

四郎「あ、その写真ですか」

杉下「皆さん顔がそっくり。これじゃあ誰が誰だか分かりませんねぇ」

四郎「二郎兄さんは一郎兄さんに勉強を教えてもらい、三郎兄さんは一郎兄さんによく相談に行って、俺は釣りに行ったりして…五郎はよく一郎兄さんとバイクでツーリングに行ってました」

杉下「そんなに仲が良さそうなのに何があったんですか?」

四郎「…離婚してから生活が一変したんです。よくある話でしょ?」

杉下「なるほど…」

四郎「昔の一郎兄さんはもう戻らない…それならいっそ…と思った事もありました。だけど、実際死なれると悲しさしか残らないんです」

五郎「……」

杉下「死んでは元も子もないですからねぇ…」

杉下「ところで、あなた方弟の皆様は仲が今もよろしいんですね?」

四郎「えぇ。一郎兄さん以外のみんなはお互いに信頼し合ってますから」

杉下「ですが、1つ気になる事があります」

四郎「なんですか?」

杉下「二郎さんと三郎さんは今日部屋で集まり、あなたと五郎さんは一緒に買い物に行かれていた」

杉下「その間に一郎さんは二郎さんの部屋に泥棒に入ろうとしたが失敗した…あまりにも不自然に思えるんです」

杉下「普通、泥棒に入るなら買い物で外出中で金目の物があるであろう四郎さんの自宅を狙うはずです。しかし、泥棒に入ったのは二郎さんの家」

杉下「行動パターンや金品の確認を理解せずに泥棒に入るとはあまりにもマヌケすぎるように思えます」

四郎「そ、そうですね…」

杉下「ちなみにお二人は今日は何で買い物に行かれたんでしょうか?」

五郎「バイクで…」

四郎「いや違います!車だよ車!」

五郎「え…あぁ!そうだったね!」

四郎「普段はバイクに乗ってるからって適当に喋るなって!刑事さんも疑うだろ?」

杉下「誰にでも言い間違いはあるものです。お気になさらず」

四郎「それじゃあこれから用事があるので…」

杉下「最後に1つだけ…」

四郎「…なんですか?」

杉下「買い物はどこでされたんですか?」

五郎「デパートで買い物してたんです。これがレシートです」

杉下「ヘルメットにライダースーツですか…」

杉下「…なるほど。ありがとうございます」

五郎「……」

杉下「では、失礼します」

バタン

四郎「おい…怪しまれてるぞ多分」

五郎「大丈夫だよ。ちゃんとオレはスーパーに寄ってたってアリバイはある。兄さんが疑われる心配はないさ」

~一郎の部屋~

杉下「おやおや奇遇ですねぇ」

古畑「ンフフ…どうも」

益子「お、やっと到着ですか」

杉下「どうでしたか?」

益子「成分を調べたが、床にあった水滴はビールで間違いない。それから床に落ちてた動物の毛は猫の毛だ」

杉下「破片は落ちていませんでしたか?」

益子「綺麗に掃除されてたよ。1つも見つからなかった」

杉下「そうですか。感謝します」

益子「ま、仕事だからね」

杉下「あとで写真送っときます」

益子「……はいはい」

杉下「古畑さん。この事件、どう思いますか?」

古畑「自殺じゃないとお思いでしょう?」

杉下「その通りです」

古畑「犯人はおそらくあの4兄弟だ」

杉下「僕もそう思います」

古畑「じゃあ彼らをここに…」

杉下「もう。呼んでいますよ」

古畑「…あなたは出来る人だ」

杉下「あなたもですよ」



……

………

古畑「えぇ…今回の事件はー、2人の優秀な警察にやってすぐに解決されそうです」

古畑「彼らはどうやら本当に互いを信頼してはいないようです」

古畑「彼らを追い詰める段階で必ずボロが出るはずですが、私と杉下さんは見逃すはずはないでしょう」

杉下「もちろんそのつもりですよ」

古畑「ンフフ…今回事件のヒントは猫」

杉下「そしてビール瓶」

古畑「古畑と…」

杉下「杉下でした」

………

……

~一郎の部屋~

伊丹「すみません。この部屋の中へどうぞ」

三郎「四郎!それに五郎も!」

四郎「なんで二郎兄さんも!?」

二郎「車椅子でここに連れて来させられたんだよ」

芹沢「では中へ…」

五郎(一体なんで4人を…まさか…)

二郎(そんなわけない…)

ガチャ

伊丹「連れて来ましたよ」

杉下「わざわざ連れて来ていただきありがとうございます」

二郎「なんで僕達を集めたんですか?」

古畑「とりあえず…そこの冷蔵庫に入ってるコーヒー取ってくれませんか?」

二郎「!?」

杉下「えぇ。結構ですよ」

杉下は冷蔵庫からコーヒー缶を取り出し、古畑に渡した。

四郎「早くしてくれませんか?そんなに暇では…」

古畑「今回の犯人が分かりました」

4人「!?」

杉下「おやおや?自殺じゃなかったんですか?」

古畑「いいえ。これは立派な殺人です」

杉下「つまり、飛び降り自殺に見せかけた殺人とおっしゃりたいわけですか?」

古畑「その通り」

三郎「ちょ、ちょっと待てよ。どういう事だ?」

古畑「実は部屋の中からガラスの破片が見つかりました」

伊丹・芹沢「?」

4人「!!」

古畑「鑑識に回したところ、どうやらビール瓶のようです」

古畑「一郎さんが間違えてビール瓶を落として割ってしまった可能性もあります。しかし、あまりにも不自然な点がありました」

杉下「残りの破片が部屋から無いという事ですね」

古畑「一体どこに消えたんでしょうか…燃えないごみの日は明日です。ならこの部屋に残ってるはずです」

古畑「しかしそれが無いということは誰かが持ち帰ったという事になります」

杉下「誰がなんのために?」

古畑「ビール瓶が見つかっては困るからです…犯人にとって」

二郎「そんなの憶測でしか無いだろ!」

杉下「そうですねぇ…古畑さん。犯人の見当はついてるんですか?」

古畑「えぇもちろん」

古畑「犯人はあなたです二郎さん」

二郎「!!」

古畑「この部屋は綺麗に掃除がされていました。ビール瓶の破片が見つかったのも棚の隙間に奥にたまたまあったからです」

古畑「しかし、なぜかこの部屋に、茶色の猫の毛が落ちていたんです」

杉下「おや~?妙ですねぇ…一郎さんはペットは飼ってないはずですよ?」

古畑「二郎さん、あなた猫飼ってましたよね?」

二郎「飼ってるけど…それだけで犯人呼ばわりかよ!!一郎兄さんの部屋には一週間前に来たし、たまたま俺の服についてた猫の毛が床に落ちただけだろ!?」

杉下「しかし、変ではありませんか?こんなに綺麗に掃除されてるのに猫の毛が床に…しかもつい最近したように見えます」

杉下「となると考えられるのは掃除をした帰り際にたまたま猫の毛が落ちてしまったと考えるのが普通でしょう」

古畑「そう…そこなんです…なぜ掃除をしなければならなかったのか」

三郎「待ちなよ!こうは考えられないのか?」

三郎「一郎のアニキは二郎のアニキの家に泥棒に入った。その時に服に猫の毛が付着した」

三郎「家に帰った一郎のアニキが服を脱いだ時に毛が落ちた。その可能性もあるだろ!!」

古畑「残念ですがその可能性は低いでしょう」

三郎「なんでだよ!」

古畑「二郎さんの家の入った泥棒の服装は黒色だった…間違い無いですか?」

三郎「あぁ!そうだよ!」

古畑「今泉くん」

今泉「はい!」

ガチャ

そう言うと今泉はクローゼットの中を開いた。

古畑「見てください。どこに黒い服があるんでしょうか?」

4人「!」

古畑「どうやら一郎さんは黒い服を持ち合わせてなかったようです」

古畑「しかも帰って来た時には赤いライダースーツに青いズボンだったそうです」

杉下「帰り道のどこかで捨てたのかもしれませんねぇ」

古畑「だとすれば…ここで着替えても二郎さんの猫の毛が落ちるとは考えにくい。つまり!」

古畑「二郎さん。あなたがこの部屋に来ないと茶色い猫の毛は落ちないんです」

二郎「ぼ、僕は三郎と一緒にいたんだ!!アリバイはあるぞ!!」

三郎「そうだ!変な言いがかりはやめろ!」

古畑「では三郎さんにお伺いします。二郎さんが飼ってる猫の名前はなんですか?」

三郎「や、それは…」

古畑「二郎さん。猫の名前はなんですか?」

二郎「それは…その…」

古畑「なんで答えないんですか?あなたは病室ではっきりお答えになったじゃありませんか」

古畑「“マー君”と…」

三郎「!!」

杉下「おかしいですねぇ…確か三郎さんは“太郎”と言っていました」

三郎「か、勘違いしてたよ!それは友人のペットの名前だったよ!」

古畑「それはありえません!二郎さんがおっしゃっていました!あなたがマー君と呼びかけながら遊んでいると!」

三郎「じ、二郎のアニキ!!」

二郎「ぐ…」

古畑「となると三郎さん。あなたは二郎さんの部屋を訪れていない事になります」

杉下「アリバイ自体が嘘になりますからねぇ」

古畑「となると二郎さん。あなたのアリバイは無くなります」

古畑「ビール瓶で一郎さんの頭を殴り気絶させたあなたは三郎さんに嘘のアリバイ作りを頼んだ」

古畑「そしてパソコンで偽の遺書を作り、部屋を片付け、一郎さんをベランダから落とす」

古畑「どうです?違う点があれば教えてください」

二郎「ぼ、僕がやったんだ…」

3人「!」

三郎「二郎のアニキ!?」

二郎「すまない二郎。お前は悪く無い。アリバイ作りのために利用してすまなかった」

三郎「アニキ…」

二郎「刑事さん…この事件は全て僕がやりました…だから…」

杉下「ですがまだ気になる点はあります」

二郎「え?」

杉下「三郎さん。あなた、最初に一郎さんがお亡くなりになられた時になんとおっしゃったか覚えてらっしゃいますか?」

三郎「…?」

杉下「僕は一階で遺体が見つかったと言っただけなのに“飛び降り自殺”と言ったんです」

杉下「まるで、飛び降り自殺と分かってたかのように…」

三郎「あ!」

杉下「それから二郎さん。一郎さんじゃないとすればあなたの刺し傷は誰に刺されたんでしょうか。ひょっとしたら自分で刺したのかもしれませんが」

杉下「それにもし、二郎さんが一郎さんを殺したのなら、管理人が見た一郎さんは一体誰だったんでしょうねぇ…」

五郎「…!」

杉下「ちなみに四郎さんと五郎さんがデパートで買われたヘルメットとライダースーツ…実は気になって僕も買ってきたんです」

古畑「今泉くん、そろそろ着替えは終わった?」

今泉「はい!」

4人「は!?」

今泉の服装…フルフェイスのヘルメットに赤いライダースーツを着ていた。

杉下「まるで管理人さんが見た一郎さんにそっくりですねぇ…おや?五郎さん。あなたのその青いジーパンに似合いそうですよ?」

五郎「わ、わ、わ…」

古畑「そう、この事件は二郎さんが1人でやったにしては不可解な事が多すぎるんです。しかし!」

古畑「4人全員が共犯とすれば…納得がいってしまうんです」

古畑「二郎さんが一郎さんを気絶させ、4人で協力してアリバイと現場を作り上げた!違いますか!!」

杉下「これ以上罪を重ねるのはおやめなさい!!」

三郎「……」

二郎「その通りです刑事さん」

四郎「なんで全部バレちまうかなー」

古畑「……お認めになるんですか?」

五郎「はい。そうです」

二郎「ここまで完璧にバレたら仕方ありませんよ」

三郎「二郎のアニキを刺したのはオレです刑事さん。間違えて一郎のアニキだと思って刺しちゃったんです」

四郎「全員一郎兄さんに呼ばれて部屋に来たんです。そして4人全員殺意があった」

五郎「だから4人で協力した…」

二郎「僕は現場を掃除して証拠隠滅…ビール瓶は僕が持ち帰りました」

三郎「オレは間違えて二郎のアニキを刺した事を利用し二郎のアニキとアリバイ作り…」

四郎「オレは五郎と一緒にいたっていうアリバイ作りとデパートで調達。そして二郎兄さんの片付けの手伝いを」

五郎「そしてオレがその服とヘルメットを装着して現場に現れる…」

二郎「最後に僕が一郎兄さんをベランダから落としたんです」

杉下「見事な計画です…しかし、あまりにも互いを信頼しすぎてしまったようですね」

二郎「まさか三郎が勝手にマー君に名前をつけるとは…」

三郎「すまねぇな」

古畑「…それから最後に、先ほどの推理で私は嘘をつきました」

二郎「なんだって?」

古畑「ガラスの破片なんて見つかっていません。アルコール反応で勝手に推測しただけです」

三郎「カマをかけたのか…」

四郎「まんまと騙されたよ」

二郎「ですが後悔はしてません。死んで当然だったんですあいつは」

三郎「あぁ」

杉下「…ちなみに、パソコンを調べていたら一郎さんの本当の遺書が見つかりました」

4人「え!?」

杉下「勝手ながら中身を拝見させていただきました。簡潔にまとめると、一郎さんは一日前に保険に加入されたそうです」

杉下「そして、自分が死んだ時にそのお金は弟4人に均等に分けて欲しいと書いてありました」

二郎「そ、そんなはずは…」

杉下「今まで迷惑をかけた報いとして自殺する決心をしたようです。だけど最後に、あなた方に顔だけは合わせたかったと…」

四郎「それでオレたちを呼んだのか…?」

杉下「そして4人に対して個別にメッセージが書いてありました…お節介かもしれませんが、印刷してきたのでどうぞご覧になってください」

しばらく弟4人はその紙を真剣に読み、そして号泣し出した。

杉下「お兄さんは、たしかに最低な人間だったかもしれません。しかし、この遺書を読む限りでは誰よりもあなた方弟の事を信頼していたとお見受けできます」

杉下「あなた方はお兄さんのためにも、しっかり罪を償わなければなりません。それがあなた方にできる事です」

五郎「う…うぅ」

三郎「すまねぇ…すまねぇアニキ!」

四郎「…オレは…なんて事を」

古畑「では…参りましょう」

伊丹「ほら行くぞ」

二郎「行こうみんな…」

芹沢「はい乗って」

4人はパトカーに乗り、去っていった。

今泉「終わりましたね古畑さん!」

古畑「そうね…」

杉下「そうだ。古畑さん、これをどうぞ」

古畑「これは…?」

杉下「あのコンビニのハンバーガーです。食わずにとっておきました」

古畑「ンフフ…いいえ。これはあなたのハンバーガーだ。私はいりません」

今泉「え!?あんなに欲しがってたのに!」

杉下「いいのですか?せっかくなのに」

古畑「そのハンバーガーは友人に食べさせてあげてください。それに…」

古畑「もう既に3個手に入れてますから」

杉下「ふふ…とんだ負けず嫌いですねぇ」

古畑「どうも」

ー終ー

乙です。

この二人が相手とか犯人が可哀想でしかないです。


面白かった
兄弟が何故か全員出川で再生された
ビットコインのCMのせいだ

1乙
>>35
最初から見抜く古畑警部と最後まで追い詰める右京さんだしね、でも二人とも説教臭くないし犯人的には良い刑事に捕まったんじゃね

この物語はフィクションであり、
古畑任三郎・杉下右京は架空の刑事です。

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