海未「新春ことりなまけ過ぎ問題」 (18)
海未「日頃大変だということはわかるんです」
海未「納期に追われながらの衣装制作の労力は相当なものでしょうし」
海未「そもそも衣装アイディアを考える時点で毎回生みの苦しみと向き合っているわけです」
海未「そりゃあ私だって労ってあげたいと思っていますよ」
海未「とは言えですね……」
ことり「ぬくい」
海未「三が日をほぼほぼコタツから出ないなまけ過ぎぐうたら生活はいい加減やめませんか」
ことり「みかん切れた」
海未「確かまだ冷蔵庫に……ではなくてですね!」
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海未「どうしたのですか一体。年が明けた途端こたつの寄生生物みたいになってしまって」
ことり「ぬくい」
海未「温かいから出たくないというのはわかりますけど」
ことり「だいごみ」
海未「年始はこたつでみかん食べながら新春特別番組でも見るのが醍醐味と言えますけど」
ことり「チューーーーー…………ーーーーーン」
海未「語彙と表情が極端に乏しくなるのやめてくれませんか怖いです」
ことり「むきりょく」
海未「表情筋が脱力しすぎていつもの顔文字みたいになってますよ」
ことり「(・8・)」
ことり「お茶なくなっちゃった」
海未「足しますけど……自分で淹れるのすら億劫なのですか?」
ことり「口にするだけで何でも海未ちゃんがしてくれるから楽」
海未「そんなこと言うともう甘やかしませんよ?」
ことり「……チューン……」
海未「そ、そう悲しそうな顔しないでください。ずるいです」
ことり「ボーっとしてるだけのつもりだったけど」
海未「あーはいそうですか勝手に慮った私が恥ずかしいパターンですかっ」
ことり「お雑煮おいしい」
海未「お粗末様です」
ことり「おかわり」
海未「いいですけど、こたつで食べて寝てばかりだと本当に太ってしまいますよ?」
ことり「その手の悩みにぶつかったことがないのが自慢なのでー」
海未「花陽辺りが聞いたら激怒しそうなことさらっと言わないでください」
ことり「花陽ちゃんには優しくするし言葉選ぶもん」
海未「では今の私に対する扱いは優しく言葉を選んだものと言えるのですか?」
ことり「んーそれはほらー、ね。おかわりまだかなぁ」
海未「いつからはぐらかしのプロになったのやら」
海未「さあさあいい加減こたつから出ましょう」
ことり「出てなにするの?」
海未「それは……特にこれと言ってやることはありませんけど」
ことり「じゃこのままでいいよ」
海未「初詣を除いて家から出ていないじゃないですか」
ことり「年明けを外出しないで過ごすこと自体はおかしくないと思うけど」
海未「一歩もこたつから出ないからいっそ外に出たほうがいいと言ってるんです!」
ことり「問題です。『いっそ外に出たほうがいい』の理由を五十字以内で説明しなさい」
海未「え? ええとですね……うん? 話逸らそうととしてません?」
ことり「ちゅーん」
海未「ほら、童謡でも言うじゃないですか。犬は喜び庭駆け回りって」
ことり「私たち人じゃなかったんだ。びっくりだワン」
海未「歌に倣って若者らしく外に出ようと言う例えです」
ことり「私たちもう若者って言えるのかなぁ」
海未「悩ましい問題ではありますけど今考えるべきはこたつ籠城問題ですから」
ことり「嫌なことから目を逸らしちゃダメっ。現実を見ようよ!」
海未「話題逸らす手にはもう乗りません」
ことり「ちぇー」
海未「ほら見てください、外では綺麗な雪景色が待っていますよ」
ことり「猫はコタツで丸くなるニャ」
海未「それ凛の特権なので却下です」
ことり「私犬でも猫でもなくて鳥だもん」
海未「さっきまで人だと主張していたのは誰ですか」
ことり「酉年は戌年に取って代わられました。十一年後まで出番はありません。さようなら」
海未「あと十一年こたつから出ないつもりなんですか?」
ことり「それいいね」
海未「本当に実行したら足裏から根っこが生えて床と同化しますよ」
ことり「これで真なるこたつ寄生生物へと転生できます。めでたしめでたし」
海未「エンドではなくトゥービーコンティニューです」
ことり「後編に続かなくていいのにぃ」
海未「まったくもう。寝正月を徹底してヤキモキする相手は穂乃果だと思っていましたのに」
ことり「穂乃果ちゃんならむしろ溢れる元気と一緒にお外に飛び出していくよ」
海未「言われてみれば。神社に商店街に御近所巡りと、散々連れ回されましたね」
ことり「それに比べ今年の何と心穏やかなことでしょう、とか思わない?」
海未「思いますけどもしかして今の私の真似ですか?」
ことり「心の声の代弁だよ。素直になりなよぉ」
海未「本心を言い当てられたところで諦めませんから」
ことり「頑固さん」
海未「何なら今から穂乃果を呼んで強制的に外へ連れ出してもらってもいいんですよ?」
ことり「その場合海未ちゃんも犠牲になるけど」
海未「……今の案は無しでお願いします」
ことり「ね。素直が一番」
ことり「一応聞くけど」
海未「なんでしょう」
ことり「私がこたつから出ない理由の一つに海未ちゃんが関係してるって気付いてるのかな」
海未「え? 私のせいですか? 穂乃果でなく?」
ことり「去年はテレビで駅伝見てたら感化された海未ちゃんに無理やり新春マラソン大会に同伴させられたし」
海未「思い返せばテレビつけっぱなしの割に今年は駅伝を見ませんでしたね」
ことり「その前の年は特別な初日の出を仰ごうとか言い出して夜中出発の登山道に付き合わされたし」
海未「あの日踏み締めた山道の一歩一歩は確かな軌跡として今も尚心の奥底で輝き続けています……!」
ことり「その他エトセトラエトセトラの反動で今年の私はこたつの主になったって説は考え付かないのかな」
海未「はあ……うっとり…………ぇ何の話でしたっけ」
ことり「もうさ、海未ちゃんも一緒に入りなよぅ」
海未「こたつにですか? いいですよ私は」
ことり「結局一度も入ってないじゃん」
海未「ことりがずっと占領していましたし、お陰で私がことりの分まで年末年始の諸々を済ませなければなりませんでしたし」
ことり「いいからどうぞ」
海未「いやですから誘惑しないでください。隣開けてこたつ毛布持ち上げないでください」
ことり「海未ちゃんが入らないと冷気入って足がさむいー」
海未「ですから……」
ことり「さーむーいー」
海未「はあ……わかりましたよもう」
ことり「わぁい」
海未「よいしょ、っと。狭くないですか?」
ことり「くっついてぬくい」
海未「ならいいですけど。…………はあぁぁぁぁ」
ことり「きもちいぃでしょ」
海未「ええ……」
ことり「もう出たくないでしょ」
海未「不本意ながら」
ことり「私の気持ちがわかったと読みました」
海未「否定できないのがもどかしいです」
ことり「今日はこのまま寝正月決定だね」
海未「もう三が日も終わりますけど」
ことり「心のお正月はまだまだ続くみたいな」
海未「何ですかそれ」
ことり「きっとね、私たちはもう少しゆっくりする時間が必要なんだよ」
ことり「毎日忙しくしてるけど、せめて年末年始くらいはこうしてくっついて温かくして」
ことり「体を休ませることで心も安らいで、また新しい一年をきちんと迎えることができるんだよ」
海未「……それらしいこといって強引にまとめようとしてません?」
ことり「ぬくいからなんでもいいです」
海未「いい加減ですねえ……確かに、何でもいい気がしてきました」
ことり「ね」
海未「はい。幸せな年明けのひと時です」
ことり「……さあ! 三が日も過ぎたところでようやく心身共に力が漲ってきました!」
ことり「これも全てこたつ様でたっぷり休んだお陰だね! 感謝感謝!」
ことり「三日くらい足踏みしたけど遅れを取り戻す勢いで今年のスタートダッシュ決めていくから!」
ことり「お待たせ海未ちゃん! 今日からは私も毎日せかせか頑張っちゃうよ!」
海未「ぬくい」
ことり「あれぇ?」
海未「みかん……切れました……お茶……なくなりました……」
ことり「ミイラ取りがミイラになっちゃった」
海未「この場合こたつ取りがこたつになってしまった、みたいな」
ことり「正しくこたつの寄生生物ーって誤魔化さないのっ」
海未「あーぬくいです。あぁーぬくいですぅー」
ことり「海未ちゃんまで語彙力無くさないでよぅ」
海未「表情筋が弛緩しきった今なら例のことり顔もできそうです」
ことり「(・8・)は私の特権だもん!」
海未「でしたらこたつは私の特権ということで」
ことり「あーずるい! 私も入るぅ隣寄せてよぅ」
海未「わざわざこちら側に入らずとも両脇や向かいがあるじゃないですか」
ことり「それじゃ意味ないし」
海未「何の意味です?」
ことり「いいからどいてー!」
海未「まったくもう。わかりましたよ」
ことり「……はぁ。ぬくいぃ」
海未「ええ。ぬくいです」
ことり「こうして結局こたつ寄生生物が二人も生まれてしまいました。めでたしめでたし」
海未「新年だけにおめでたいってオチですか?」
ことり「お上手」
海未「良いんですかねえ年明け早々こんなになまけてしまって」
ことり「心に素直になろ」
海未「……仕方ありません。明日までは新春なまけ過ぎ問題を棚上げします」
ことり「新年最高のスタートダッシュ切っちゃった」
海未「端から見たら真逆の印象持たれるでしょうけど」
ことり「私たちが幸せならなんでもいいよ」
海未「ですねぇ……ぬくいです。ああーぬくいですぅー」
ことり「ぬくいー。しあわせー。えへへぇ」
おわり
終了です
読んで頂けた方ありがとうございました
>ことり「私たち人じゃなかったんだ。びっくりだワン」
かわいい
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