【モバマス】楓さんで安価 (1000)

楓さんで安価をもらって書きたいと思います
エッチなのとグロいのはちょっと書けません……
皆さんの思う楓さんを教えてくださいな

まずは、>>3の楓さんを

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1515156470

変態

ライダー

ノッポ

ライダーな楓さんですか
ちょっと書いてみます

チャレンジ番組で取ることになったバイクの中型免許

長期間のロケの末、何とか撮ることができました

車はもちろん、免許証を持つということが初めてだったので

受け取る時はそれはもう嬉しかったです

私が免許証を受け取り、そのロケは終わったのですが

せっかく取った免許なので、バイクを購入してみようと思います

と、意気込んでみたはいいものの……

私にはそういった知識もないですし、どうしようかと悩んでいた時です

お仕事が終わり、事務所に戻ると、何やらバイクの話題が飛び交っていました

「お疲れ様です。バイクのお話ですか?」

これは良いお話が聞けると思い、菜々さんと夏樹ちゃんに声を掛けます

「楓さんか、お疲れ様です」

「お疲れ様です、楓さん。夏樹ちゃんにバイクの雑誌を見せてもらってるんですよ」

「菜々がいけるクチでね、旧車の事を良く知ってるんです」

「ヨンFour、FX、それにニンジャ……渋いですよねぇ」

よんふぉあ、えふえっくす? 忍者さんってバイクがあるのかしら

「私も見せてもらってもいいですか?」

「いいですよ、ほら」

夏樹ちゃんから雑誌を受け取り、ぺらりとめくる

バイクと一言にしても、色々なメーカーと形があるんですね

角ばっていたり、丸っこいデザインのものもある

それにとてもカラフルで、眼を楽しませてくれます

そして、何ページかめくった時、私はそのバイクに釘付けになりました

「あ……これは何て言うバイクですか?」

まぁるいライトに、ライムグリーンのカラーリング

教習所で乗ったバイクより、とても綺麗に思えました

カワサキか……

カワサキか・・・

kwsmか・・・

「これはKH250、通称『ケッチ』て言うんですよ」

夏樹ちゃんがそう教えてくれました

「これは最終型ですね、このカラーが目を引きますねぇ」

菜々さんが細かく、補足してくれます

「ケッチ……ですか」

ケッチ、ケッチ? 頭の中で反芻してみる

うん……何だか可愛らしく思えてきました

「ちなみに、これはどこで買えるんですか?」

「え、買っちゃうんですか?」

「ナナは止めませんけど……高いですよ?」

2人がびっくりしてますけど、これは正に運命の出会い

きっとこの機会を逃すと、もう出会えないような気がして……

「大丈夫です」

胸を張って、声高らかに宣言します

「ケッチなことは言えないです♪」

その日は夏樹ちゃんに雑誌を貸してもらい

お部屋に戻った後も、お酒を飲みながらケッチの写真を眺めていました

ケッチ……ケッチ君? それともケッチちゃんかしら?

お酒のグラス越しに見るケッチの写真はきらきらと輝いて

思わず、頬が緩くなってしまいます

いけないいけない、まだ買ってもいないのににやけちゃって……

「ふふふ♪ 早くアナタに乗ってみたいですね」

私の独り言に、からりと氷が返事をしました

それから数日後、夏樹ちゃんから連絡がありました

夏樹ちゃんと拓海ちゃんにお願いをして探してもらっていたのですが

こんなに早く見つかるとは思いもしませんでした

早速、夏樹ちゃんと一緒にお店へと向かう事になったのですが

心が浮つくのを止めることができなくて、夏樹ちゃんに迷惑をかけてしまいました……

「楓さん……嬉しい気持ちはわかりますけど」

「はい……反省してます」

これじゃいけませんね、もっとちゃんとしないと

何と言っても、これからケッチちゃんとご対面なんですから!

「顔がにやけてますよっと……お、着いた着いた」

夏樹ちゃんが先行して、お店の方とお話をしています

その間に呼吸を整えようと、軽く深呼吸

すぅはぁ……すぅはぁ

「楓さん、こっちみたいです」

「は、はいっ……」

深呼吸をしたけれど、まったく意味はなくて

私の胸の鼓動は早くなっていくばかり

でも、それは嫌なドキドキじゃなくて

恋にも似たような焦がれた気持ち

さぁ、楓。ケッチちゃんを迎えにいかなくちゃ

夏樹ちゃんの声がするほうへと向かうと、そこにはたくさんのバイク

そして、ぴかぴかのケッチちゃんが佇んでいました

「わぁ……綺麗……」

まるで写真がそのまま飛び出てきたような錯覚

いえ、ライムグリーンのカラーリングは実物のほうが綺麗かも

「ほら、楓さん」

夏樹ちゃんの声で我に返って、ケッチちゃんにそっと触れてみます

……金属のパーツで出来ているのに、ちょっと暖かいような、そんな感じがしました

「どうです? ケッチとのご対面は」

にやにやとした夏樹ちゃんが私の顔を覗き込んできます

「感動です……ありがとう、夏樹ちゃん」

夏樹ちゃんの手を両手で包み、きゅっと握りました

「あーっと……探してくれたのは店の人ですんで」

少し照れたような夏樹ちゃん

「ううん、夏樹ちゃんも頑張ってくれたから」

「……楓さんにそんなことを言われると照れちまうな」

「そうそう、エンジンもかけていいみたいですよ」

「エンジン……緊張しますね」

夏樹ちゃんから説明を受けて、エンジンをキックスタートさせてみます

スカートで来なくて正解でした

それはさておき

ケッチちゃんを起こしてあげましょうか

キックにそっと足を置いてから、ぐっと踏み込みこみました

ケッチちゃんのおはようの挨拶はとても凄くて

びりびりと体が痺れれるような、そんな挨拶

そして、ケッチちゃんの鼓動が私の胸の鼓動をかき消すように響く

「おはようございます、ケッチちゃん」

ケッチちゃんだけに聞こえるように、小さく挨拶を返して

私の新しいお友達は、機嫌が良さそうに声を上げるのでした




おしまい

こんな感じで書いていきますので、よろしくです
そうそう、単語だけでも書けることは書けるのですが
シチュエーションとか書いてもらえると、助かっちゃいます

それでは、見てくれた方に感謝を
安価の続きはまた明日です


超期待

単語だけでもこんなに書けるのはすごい

おつおつ
菜々さんは昔カブに乗ってたりしてそう

1おつ

楓さんとバイクでこんなに膨らむのはすごい。
明日も舞ってる

おお、これは有能な香りがする
おつ

ケッチを颯爽と乗り回す楓さんか…
画になりすぎて傍目から見たらドラマか映画の撮影と思われるな

こんばんは、それでは再開します
酒でも飲みながらお付き合いください
私も飲みながらまったり書きます

それでは、>>33の楓さんを

ほすてす

お月見

サバイバー

スーツアクター

花屋

アングラー

サバイバーな楓さんですか
ちょっと書いてみます

「紗南ちゃん、何をやっているの?」

テレビの前で体を揺らしながら、紗南ちゃんがゲームをやっています

「これはバイオハザード2だよ」

バイオハザード……確かゾンビとか怖い生き物が出てくるゲームだったはず

あれ? この白くて四角い人が主人公なのかしら?

「紗南ちゃん? この人、ちょっとお豆腐みたいな人なんだけど……」

恐る恐る質問を投げかける

「楓さん鋭い! これは豆腐サバイバーっていうモードなんだ」

豆腐サバイバー? お豆腐が生き残る……の?

紗南ちゃんの返事にしばらく唖然としてしまった

……落ち着きましょう、現状を整理してみると

バイオハザード2はお豆腐が怖い生き物と戦うゲーム? でいいのかしら

お豆腐は冷ややっこで食べるのが一番だと思ってましたけど、最近のお豆腐は凄いんですね

ちょっとした勿体なさと、尊敬を感じます

「楓さん、変なこと考えてない?」

「い、いいえ……そんなことないです、よ?」

紗南ちゃんの言う通り、変な事を考えてましたけど、お豆腐が戦うのもそもそも変な話では……

「まぁいいや、ちょっと進めてみるから」

ぺろりと舌を出した紗南ちゃんは真剣な顔になって

ぎらぎらとした闘志を瞳に宿し、ゲームを再開するのでした

ああっ! 白い体がピンク色になってまるでかまぼこみたいに……

あら? お豆腐みたいだけど、よくみるとちくわぶみたいな感じにも見えるような……

『なにすんねん』

えっ!? この方は関西の人なの? そもそも人じゃないですけど……

「楓さん、笑わせないで! 全部声に出てるから」

「はい……ごめんなさい」

怒られちゃいました

それにしても、見てるほうもはらはらするものですね

お豆腐が戦うなんて凄くシュールだと思うんですが

私は紗南ちゃんのゲームプレイに釘付けになっています

……いいえ、もしかしたらお豆腐のようなちくわぶのようなういろうのような方にかも……

「よーし、もう少しでクリアっと」

なにやらコートを着た、頭が涼しそうな大きな人から逃げられればいいみたいです

頑張ってください! こぼれちゃったお豆腐は私が食べますから

大丈夫かしら……食べられちゃわないのかしら

さっき、攻撃されたときに赤いものがでてたけれど

血液は紅葉おろしか何かなのかしら……

それなら温やっこか湯豆腐もいいわね

今日の肴に思いを馳せていると、いつの間にか紗南ちゃんがゲームをクリアしていました

「ふぅ……昔のゲームはやりがいがあるねー」

楽しそうに、そしてやりきった顔の紗南ちゃん

「お疲れ様でした。そうそう、紗南ちゃん」

「どうしたの?」

きょとんとした顔の紗南ちゃんに私はこう言うのです

「寒いから湯豆腐でも食べていかない? 今度は敵側でどうかしら」





おしまい

豆腐サバイバーはうろ覚えです、ごめんなさい……
寒い日の湯豆腐は乙なもんですよねぇ
少し席を外します

21時には再開しますね

おっつおっつ

1です
ごんなさい、すこし遅れます……

お待たせしました、それでは再開します
それでは>>50の楓さんを

スナイパー

アングラー

釣りか
肇(川)なのか七海(海)なのか

アングラ―な楓さんですか
ちょっと書いてみます

話は数か月前

寒さが少しきつくなった時期の事です

「あ、楓さん。お疲れ様れす」

「七海ちゃん、お疲れ様です」

いつものように事務所へ顔をだすと七海ちゃんが何やら雑誌を読んでいました

「何を読んでいるの?」

「釣りの雑誌れすよ」

そんなの愚問れす! と言わんばかりに七海ちゃんが答えました

「へぇ……今の時期はどんな魚が釣れるのかしら」

んーと唇に手をやってしばらく考える七海ちゃん

「やっぱり今の時期は鯵れすね」

……鯵、味がいいからその名前がついたというお魚

お刺身でも、焼いても、揚げても、どのような調理でも美味しく頂けるお魚

もちろん、酒の肴としても一級品です

「まぁ♪ 鯵ならお酒の肴でもいいお味、ですね」

「もちろんれすよ♪」

そのときの、七海ちゃんのにやりとした笑みの意味を数日後に知ることになりました

ただいまの時刻、午前六時

準備などを考えて、その一時間以上前には起きています

「ふわぁ……」

自然と出てくるあくびを我慢……できませんでした

うう……私なんでこんな早起きしているのかしら……

いくら美味しい酒の肴が釣れるからって、ほいほい着いてきてしまったのが運の尽き

「うーん、良いお天気れすね♪」

そう言う七海ちゃんはご機嫌の様です

「七海ちゃん、ご機嫌ね」

「もちろんれすよ、楓さんの海デビューが良いお天気れすので」

それに、と七海ちゃんが続けます

「今日は潮も良いし、群れが入っていれば入れ食いれす」

「入れ食い……?」

私の質問に、可愛らしい胸を張って七海ちゃんが答えます

「おつまみがいっぱいってことれす♪」

七海ちゃんと雑談をしていると

エンジン音とともに、ボートがこちらへと向かってきました

「さて、船長も来たので準備しますか」

にやりと笑う七海ちゃんは、アイドルというより海の女という感じがしました

「私に何かできることがあれば言ってね」

「わかったのれす。では、ポイントに着くまで我慢れすかね」

船長さんと楽しそうに話す七海ちゃんがそう返しました

……我慢? 何を我慢するのかしら

そんな気楽な考えをしていた私ですが、身をもって知る事となりました

「この堤防を抜けたら波が高くなるのれす、しっかりと掴まって下さいね」

「は、はい」

きりりと引き締まった七海ちゃんに、短く返事を返します

そして、堤防を抜けたと思った瞬間……揺れが強く、いいえ、、とてもとても強いものへと変化しました

それはもう絶叫アトラクションにも負けず劣らずといったもので

波を受けるボートがぐわんぐわんと揺れるのでした

「きゃあっ……」

思わず悲鳴が漏れてしまいますが、波は待ってくれませんし、ボートは進むのみです

ざばんと波を受けるボートがぐわりと揺れる。その繰り返しを何度か受け、ようやくポイントへと到着しました

「今日は簡単にサビキとコマセを使って釣りをするれす」

七海ちゃんが説明をしてくれますが、初心者の私にはちんぷんかんぷんです

「ええと……いっぱい針がついた仕掛けに餌をつけて、たーくさん鯵を釣るのれす」

わかりやすい説明ありがとう、それなら私でも理解できます

「船長が今調べてるのれす、ちょっとお待ちを」

見てみると船長さんがすでに竿を投げていました

何事にも慣れている人の動作はとても綺麗で、流れるような動作です

「さて、掛かるならそろそろです」

七海ちゃんがそう言った瞬間です

船長さんが、ぐうっと竿を上に上げ、リールを巻きます

「おう七海ちゃん、今ならコマセはいらないみたいだ」

その言葉を聞いて、七海ちゃんが動き出します

「楓さん、近くで良いので、仕掛けを落として下さい」

「え? まだ餌をつけてないけど……」

あたふたとする私を見て、七海ちゃんが力強く返事をします

「今日は活性が高いみたいれす。仕掛けだけで釣れますよ♪」

こちらに話しかけながら、七海ちゃんが流れるような動作で仕掛けを海に落とします

「まずは仕掛けを底まで落とします。糸が出なくなったなと思ったら底に着いたってことれす」

「そして軽くとんとんって竿を動かして、当たりがないなら少しリールを巻いて……」

くいくいっと竿を動かしてリールを巻く七海ちゃん

そして……

「食ったれすよー!」

ぐいっと力強く竿を上げてリールを巻き始めました

それをはらはらしながら見守る私。七海ちゃんのほうが慣れているのに、変な感じです

そして数秒後、魚のシルエットが何匹も見えて……

「うん! 良い型の鰺れすね」

七海ちゃんの仕掛けには三匹も鯵が付いていたのです

「わぁ……凄い」

七海ちゃんが釣った味はとても大きくて、綺麗で、感嘆の声が漏れますが

「ほらほら、楓さんも早くするのれす」

いつもとは違う目つきの七海ちゃんの気迫に押され、たどたどしい手つきで仕掛けを海へと落とします

まずはベールを返して、糸をそのまま垂らす……

「あの……七海ちゃん、底に着いた感覚がわからないんだけど……」

糸が止まっているような感覚はあるのですが、いかんせん正解かわかりません

「んー……じゃあ糸を垂らしてゆっくり七秒カウントして見てください」

いーち、にーい、さーん……頭の中でカウントしてから七秒

「七秒経ちました……あれ? ぐいぐい引っ張られてるみたいな……」

手元に伝わる生き物が動いているような感覚

「それはきっと鯵が針を食ったのれすよー!」

さぁ、竿を上げてリールを巻くのれす! と七海ちゃんの言葉に竿をぐいっと上げてみると

先ほどより強い、生き物の力強い感覚

そこから無我夢中でリールを巻いてみると……

「おー! 良い型の鰺れすよ。それに、カサゴも付いてるのれす」

七海ちゃんの嬉しそうな声に、その生き物を釣るという感覚が両の手に重さとなって感じました

何と言葉にして良いのでしょうか

手に残るお魚の重み、そして余韻

「……これが釣りの醍醐味、ですか」

知らずに漏れた言葉に、七海ちゃんが反応します

「そうれすよー、楓さんの手に残る重みが命の重みなのれすから」

そう……なんですね。では……私はこれを受け止めなければいけません

「さぁ、まだ群れはいるので根こそぎ釣っちゃうのれす!」

「はいっ!」

七海ちゃんの言葉に力強く返事をして、また糸を垂らすのでした

「ふぅ……今日は大漁れした」

二つのクーラーボックスにぎゅうぎゅうに詰められたお魚たち

メインは鯵で、カサゴとサバがほんの少し

「七海が活〆したので、あとはお刺身でもなめろうでもアジフライでも何れもいけますよ」

あー、お刺身なら一日か二日熟成したほうがいいかもれす、と七海ちゃんが補足しました

「わかりました」

これだけいっぱい釣れたなら、皆さんにおすそ分けという事で……

いつものメンバーにラインを送ることにします

『酒の肴のお魚がたくさん釣れました。今日は鯵パーティーしませんか?』

自分で釣ってそのお魚を食べる……釣ったからにはその命を粗末にはしないのは良いことだと思います

食べられてしまうお魚には少し可哀想かとは思いますけれど……

せめてみんなで美味しく頂きますのでご勘弁を

「さぁ、帰るとするのれす」

七海ちゃんの声を合図にして、私たちは帰ることになったのですが

この手に残る感触と、このお魚たちを肴にして飲むことを想像すると

生唾がとまらないのでした……



おしまい

安価をくれた方に感謝を
そして読んでくれた方にも……

丼いっぱいになめろうをつくって、アジフライを作った日にはお酒が進みまくりでした
是非皆さんもお試しを!

飲みすぎみたいなので今日はここまでということで
明日はお昼過ぎには再開したいなーって

乙です!
ネタが深いなぁ

こんにちは、それでは再開します
>>72の楓さんを

お散

スーツアクター

日帰り手術

家電製品

これはあきらるしかないわ……なんだ、その速さは

ライダー、サバイバー、アングラー、スーツアクター
全部erで揃ってるのね

>>76
アクターとサバイバーはorだぞ

スーツアクターな楓さんですか
ちょっと書いてみます

>>77
これだから英語は……

「高垣さん、少しお話よろしいですか?」

「ええ、大丈夫ですよ」

相変わらず他人行儀なプロデューサーに、少し冷たく返事をします

「……仕事を取ってきたのですが、少し問題がありまして」

「どんなお仕事なんです?」

ちょっと困ったような表情のプロデューサーがゆっくりと口を開きます

「戦隊ものの仕事なのですが……」

戦隊もの……日曜日に朝にやってるやつですね

光ちゃんが聞いたら喜びそうなお仕事です

色々な層に見られる番組なので、大きなお仕事のはず

けれど、プロデューサーの顔はあまり嬉しそうではなくて

「内容に問題が?」

ずずいとプロデューサーに近づいて質問します

「ち、近いです……離れてください」

この人は表情が豊かで、とてもからかいがいのある人

「仕方いですね、では、その内容を教えてください」

これ以上困らせるのもいけないので、大人しく、渋々離れることにします

「ええと、監督からのお願いで、中の人もやってほしいとのことです」

中の人……?

「スーツアクター、女性なのでスーツアクトレスになりますかね。それを高垣さんにやって頂きたいと」

「という事は……それが問題ということですね」

私は正直そっち方面に明るくないので、何が問題なのかわかりません

「ええ……アクションなどを自分で行うというのはとても危険なことなのですよ」

それからプロデューサーは丁寧に説明してくれました

あの手の作品は、中の人がアクションを代わって行っていること

そして、時には怪我をしてしまうときもあるとか……

「もしも怪我をしてしまえば、アイドル活動に支障が出ます」

うーん、それは確かにそうなんですが

「それに、私が辛いです」

あら? それはどう受け取れば良いのでしょう

「ふふ……そんなに優しくされると嬉しいですね」

「あー……失言です。忘れてください、それで……」

プロデューサーが真剣な面持ちで、改めて私に質問をします

「この仕事を受けますか、それとも……」

もう私の気持ちは決まっています

……………
…………
……

早まっちゃったかしら

「もちろん受けますよ」

そう、自信満々で返事をしてしまった

いえ……あの人が頑張って取ってきてくれたお仕事ですし

私にもきっと良い経験なるはず

「あ、楓さん!」

「ひゃいっ!?」

後ろから大きな声で名前を呼ばれて、引きつった声がでました


「聞きましたよ、戦隊シリーズに出るって!」

振り向くと、そこには目をきらきらとさせた光ちゃん

「良いな良いなぁ! アタシも出たいなー」

小さい体を目いっぱい使って、ちょっと子犬みたいで可愛い

「ふふふ、光ちゃんも、きっと近いうちに出られるわ」

光ちゃんならきっと、カッコよくて可愛いヒーローになれるはずです

色々な作品を見ていて知識もあるし、ポーズの真似もよくしてるし

……そうだ、近くにとっておきの先生がいましたね♪

「光ちゃん、いえ……光先生」

「か、楓さん?」

きっと光先生なら、私にどうあるべきかを教えてくれるはず

「私にヒーローを教えてください!」

「なるほど……スーツも着るんですか」

光ちゃんが真剣な顔で悩んでいます

「楓さんはヒーローものって見たことありますか?」

「いいえ、あんまり……」

縁のないものと思っていたのですが、少しでも見ていればよかったかも

「よし! じゃあまずは見てみましょう、百聞は一見に如かずって言うし」

……なにやら鑑賞会の流れになっているような

「うう……このシーンが泣けるんだよな」

「こんな結末が待っているなんて、可哀想……」

気付けば私も時間を忘れ、見入ってしまいました

シナリオも良く出来ているし、何より戦闘シーンが恰好良いです

こんなことならもっと早く見ていれば良かった

「ヒーローって凄いんだ、皆を勇気づけてくれる」

ぐっと拳を握って、光ちゃんが続けます

「戦う理由は色々あるけど、決してあきらめないし、くじけない」

「だから……楓さんもくじけないでほしい」

「光ちゃん……」

「アタシが教えてあげられるのはこれくらい」

そう、そうね……壁に当たってもくじけない心

それはヒーロー以前に大切なものですよね

「ありがとう、光ちゃん」

小さな体を優しく抱きしめる

「わぁっ! は、恥ずかしいよ」

小さなヒーローに教わった気持ちで、私も頑張らないといけませんね♪



おしまい

読んでくれた方に感謝を
ちょっと休憩します
夜から再開できる……かもです

こんばんは、それでは再開でござい
それでは>>96の楓さんカモーン

ダウナー

イケメン

プラグスーツ

旅人

囚人

センチメンタル

プラグスーツの楓さんですか
ちょっと書いてみます

「エヴァの劇場版はいつやるんだろ……」

雑誌をめくっていた奈緒ちゃんが独り言ちています

「どうしたの? 奈緒ちゃん」

「わわっ! えーっと……アニメの劇場版なんですけど、新しいのはいつやるのかなーと」

独り言が聞かれてしまったのか、ちょっと困った顔の奈緒ちゃん

可愛らしい眉毛を八の字にして、照れています

「エヴァって言うと……ロボットが怪獣と戦うやつだったような」

えいやっとパンチして見せます

「か、怪獣……まぁ大体あってますね、はい」

奈緒ちゃんはアニメが好きみたいで、比奈ちゃんとよくお話をしているのを見ます

「アニメって映画でもやってるのねぇ」

「何を言いますか、最近はいっぱい作品ありますよ。ジブリだってそうだし、君の名はだってそうです」

あ、そういえばそうでしたね

「大人でも見られるアニメもたくさんありますし、楓さんもどうです?」

なるほど、そういうのを開拓するのも面白いかもしれません

「良いですね、じゃあ早速今日の夜にでも」

それを聞いた奈緒ちゃんの顔が、ぱあっと明るくなって

「流石楓さん、話がわかる♪」

奈緒ちゃんは未成年だからお酒はだめだけど、私はちょっと飲んじゃおうかしら

「そうそう、話が戻りますけど、エヴァの続きが気になるんですよね」

奈緒ちゃんがそこまで気にしているのなら、きっと面白いのでしょう

「続きが見れないってのは、気になるわよね」

ドラマや小説、上手に次に続くように切って、続きを早く見たい気持ちにさせられてしまう

「そうなんですよ、はぁ……早くやんないかな」

「奈緒ちゃん、そんなに気になるならエヴァを操縦する気持ちにでもなってみますか?」

「わっ! ち、ちひろさんか」

さっきと似たようなリアクションで奈緒ちゃんがびっくりしています

「はい、楓さんもお疲れ様です」

「お疲れ様です、ちひろさん」

ぺこりとお辞儀したちひろさんが、また奈緒ちゃんに話しかけます

「それで、どうです?」

「どうですって言われても……なにをどうするのさ」

その言葉を聞いて、ちひろさんがにっこりと笑います

「ちょっと御幣がありましたね、プラグスーツ着てみませんか?」

ぷらぐすーつ?

「えっ? ちひろさん持ってんの?」

奈緒ちゃんが驚いてますが、私は何が何やら


「ええ、見た目は完璧に再現できたモノを」

「マジか……ちょっと着てみたい気もするけど」

「あ、あの……ぷらぐすーつって何ですか?」

このまま蚊帳の外も嫌だったので、会話に混ざらせてもらいます

「あーっと、プラグスーツってのはエヴァに乗る時に着るものです」

「あ、よかったら楓さんも着てみてはいかがですか?」

奈緒ちゃんの説明と、ちひろさんの言葉に

「は、はい……?」

流されるように返事をしてしまいました

「という事で、お二人のプラグスーツを持ってきました」

「はやっ!」

言うや否や、ちひろさんが迅速に準備を終えていました

両手に緑色と紫色のウェットスーツみたいなものを持っています

「それがぷらぐすーつですか?」

「ええ、緑色は楓さん。紫色のは奈緒ちゃん用です」

どうぞ、とちひろさんから手渡されました

手渡されたそれはしっとりした手触りで、柔軟性がありそうな素材みたい

引っ張ると、ぐいっと伸びるみたいです

「わー! これ凄いなぁ、カヲル君仕様だ」

奈緒ちゃんはとても嬉しそうに飛び跳ねています

「さぁさぁ、更衣室で着替えてきてくださいねー」

ちひろさんも嬉しそうに笑って、奈緒ちゃんの背中を押しています

ん? 右手に何か持っているみたいですが、ここからは良く見えません

私も奈緒ちゃんと一緒に着替えることになったわけですが……

「どうしたんです? 楓さん」

どことは言いませんが、ボリューム凄いです

「いえ、別に……」

「そ、そうですか」

そうです、私だって……私だって……

やめましょう、人間、今ある手札で勝負しなくちゃいけないんです

気分を切り替えて、プラグスーツに袖を、袖を……

「これ着にくい!」

奈緒ちゃんが代弁してくれました

ぴっちりしていて、少しずつ着ていかないと……

「んっ……」

体に密着するような素材で、擦れると変な声が漏れてしまいます

眉毛のボリュームかな?

ふぅ……ようやく着れました

「か、楓さぁん……」

後ろから聞こえる奈緒ちゃんの切なそうな声

振り返ると、背中を大胆に開けたままの奈緒ちゃんが、困った顔をしています

「奈緒ちゃん、とってもセクシー」

「わ、見ないでくださいっ! じゃなくて、背中のチャックを締めてくれませんか」

頬を赤く染めて、胸を抑えるようにしてお願いする奈緒ちゃんがとても可愛い

これちゃんと全裸で着てるんだよなぁ?
全裸になって着てるんだよなぁ?おーん?

「それじゃ、一気にいきましょー」

「わ、いきなり!?」

じぃっと気持ち良い音を立てて、チャックが締まりました

「は……ぁ、どうもです、楓さん」

ふるりと奈緒ちゃんが体を震わせます

ちょっと呼吸が荒いけど、どうしたのかしら?

「わぁ……楓さん、スタイル良いですね」

私をじろじろと眺めて、ほうっと奈緒ちゃんが息を吐きます

「似合ってます?」

ちょっとポージング

「とっても! 着こなしがパないっす」

「ありがとう奈緒ちゃん。奈緒ちゃんもとっても似合ってるわ」

ボリューミーな感じが同性の私から見ても凄い

あ……今日は肉まん食べましょう

「記念に一枚♪」

「わあっ! なにしてるんですか!?」

スマホのカメラで、記念にどうかなーと思ったの

「……別にいいですけど、凛と加蓮には絶対見せないで下さいね! 絶対ですよ!」

これはお決まりのフリというやつかしら?

とっても可愛いのに勿体ない……




おしまい

読んでくれた方に感謝を
今日はここまでです

続きは明日の夜くらい……かなぁ

おつー
緑ってあーなるほど
ちっひないす!

おつ
チャックが背中側にあったからよかったけど、前だったら奈緒はジャングル挟んでた危険性があったな(下世話な妄想)

>>120 ちゃんとお手入れしていればそういうことはないので

けがないだけに フフッ…

>>121 楓さん、仕事行きますよ

それでは再開でござい
>>125の楓さんおいでませ

ww

プロデューサー

プロデューサーな楓さんですか
ちょっと書いてみます

「プロデューサー、お話があります」

「はい、何ですか?」

私の言葉に、キーボードを打ちながら答えるプロデューサー

むぅ……人と話すときは目を見てきちんと聞きましょう

「ふぅっ」

吐息を耳にかけるとプロデューサーが飛び跳ねました

口をぱくぱくさせながら、何が起こったかわからない顔をして

「あ、あんた何やってんだ……」

「ふうってしました」

別に変なことしてませんよ? ええ

「……はぁ、わかりました。それでお話とは?」

観念したのか、プロデューサーが私に向き合います

む、何ですかそのがっかりした顔は

こほんと、一つ咳ばらいをして、ゆっくりと口を開きます

「貴方は働きすぎです。よって、一週間のお休みを差し上げまーす♪」

わーぱちぱちー!

「……」

あら? 反応が薄いですね

「すみません、盛り上げが下手で……」

「え? そこじゃないですよ。ただ、うちに代わりのプロデューサーはいないじゃないですか」

流石プロデューサー、良い所に目をつけます

「私が「あ、私が代わりにやるとかは無しですよ」」

何なんですかこの人は……エスパーさんですか?

「……」

「はぁ、そんなことだろうとは思いましたけど」

「よよよ……」

「泣きまねをしても駄目ですよ」

……もっと演技力を磨かないと駄目みたいでした

「良いんですよ。俺は皆のために働くのが楽しいんですから」

「プロデューサー……」

そう、確かにこの人は皆のために頑張ってくれている

自分の身を削ってまでも……

誰よりも遅く帰るのに、誰よりも早く出社して

その証拠に、今こうして話している彼の目の下には濃いクマが出来ている

でも、この人はきっとわかっていないんです

その『皆』が彼のことをとても心配していることを

だから、だから……少しでもお休みを取ってほしい

「嫌なんです、空元気な貴方を見るのは……」

このままじゃ、きっと近いうちに彼は体を壊してしまう

だから、ここは無理やりにでも……

「楓さん……」

ごめんなさい、プロデューサー

私は悪い女です……

「え~い♪」

勢いよく彼の腕の中に飛び込む

「え……どうしたんです楓さ……」

「はい、笑ってくださいねー♪」

カメラを持ったちひろさんが、良いアングルでシャッターを切る

「あらあら、これは大変♪ オフィスラブですかー?」

「きゃあ♪ 見られちゃいましたー」

とんだ茶番ですが、知らない人が見ればどうなりますかね?

「……ああああ! はかったなちひろぉ!!」

どうやらプロデューサーも気付いたようです

頭が切れる所もとっても素敵ですよ♪

「さて、プロデューサーさん? 後はわかりますよね?」

いつもの優しい笑顔のちひろさん

このメンタルの強さは見習いたいところです

「……わかりました。休めば良いんでしょう」

「はい、その通りです」

ちひろさんの言葉の後に、プロデューサーがため息を吐いて

「ただし、一週間は長すぎます。三日で十分です」

私とちひろさんは目で合図を出して、それからゆっくりと頷きました

「それではもうお仕事は終わりです。帰っちゃってくださーい」

ぎゅうぎゅうとプロデューサーを押し出していくちひろさん

……良いな、私も混ざっちゃおうかしら

「楓さん」

「はい、なんでしょう?」

ちひろさんに押し出される前に、プロデューサーが真剣な面持ちで私に話しかける

「気を遣わせてすみません。それと、困ったらいつでも連絡を」

「……わかりました」

貴方は人が良すぎです、プロデューサー

「さて、作戦成功ですね」

「そう……ですね。こんなことに付き合わせてしまってすみません」

ちひろさんに深々と頭を下げます

「止めてください楓さん。無理やりにでも休ませる必要があったんですよ」

「……」

少し胸は痛むけれど、あの人のことを思えば仕方のないことです

「ところで楓さん?」

「何ですか」

笑顔のちひろさんが、すっと真顔になりました

「本当にプロデューサーの代わりを務めるんですか?」

あの人の代わり……

きっと私が思うより大変なことに違いない

けれど、私が頑張らないと、あの人がゆっくり休めないものね

「ちひろさんに迷惑をかけるかもしれませんが……よろしくお願いします」

ちひろさんはまたいつもの笑顔に戻って、頷いてくれました

プロデュース業一日めの朝

いつもより早く目覚まし時計が鳴りました

「……ね……む」

布団さんの暖かい抱擁から抜け出せません

ああ、私には心に決めた男性が……

「起きなきゃ……」

冷水で顔を洗い、濃いめのコーヒーを入れます

朝弱いのも直さなきゃいけないわね

「おはようございます」

冬の冷たく突き刺すような風を感じながら、事務所へ着きました

まだ誰もいない静かな事務所

いつもの賑やかさが嘘のようです

そして……

いつもの席に、いつもの人はいませんでした

「おはようございます」

「おはようございまー!」

しばらくしてから、ちひろさんと元気な声が事務所に響きます

「おはようございます、ちひろさん。それと薫ちゃん」

「楓さん、何だかせんせぇみたいなカッコしてる」

「ええ、先生代理です。えっへん♪」

おおーと、薫ちゃんが拍手をくれました

…………
………
……
「つ、疲れました」

スケジューリング、年少組の送迎、そして付き添い

これじゃ体がいくつあっても足りません……

こんな過酷なことを一人で毎日やってたんですね

申し訳なさと、悔しさで、視界が徐々に滲んでいく

「……あの人が帰ってくるまで頑張らなきゃ」

頬をぴしゃりと叩き、背筋を伸ばします

明日に備えて準備しましょう

一日目、二日目と、何とか無事に終わり

そして、三日目

「楓さん、ドリンクの差し入れです」

ちひろさんが見たことのないようなドリンクを差し入れてくれました

「ありがとう……ございます」

それを飲むと、少し体力が回復したみたいで

「それでは、現場を見に行ってきます」

「はい、お気をつけて」

さて、今日も頑張って乗り切りましょう

今日は確か加蓮ちゃんのロケを見に行って、それから……

タクシーの中で手帳に目を通し、確認を行います

車の揺れが心地よくて、つい寝そうになりますが、足をきゅっと抓って我慢

「……元気にしてますか?」

誰にも聞かれない独り言

無意識に出た言葉に、心が折れそうになって

負けないように、くじけないように

そっと自分を抱きしめた

加蓮ちゃんの現場に着くと、何やら変な空気に気付く

怒声が響き、周りが止めているみたいだけれど……

そして、もう一回その声が聞こえた時、それが誰の声なのか確信しました

間違いなく加蓮ちゃんの声

スタッフの人たちをすり抜け、加蓮ちゃんを見つけ……たのですが

そこにいる加蓮ちゃんは私が見たこともないほど怒っているようで

その怒りの矛先を確認しみると

……まずいです、それなりの大物俳優でした

「ふざけないで! アンタ何様なの!!」

「うるせーお子様だな、耳がいてぇや」

相手の飄々とした態度に、加蓮ちゃんはぷるぷる震えた後

「このっ……!」

右手を大きく振りかぶり、相手を叩こうとして

「待って加蓮ちゃん」

「止めないで! って、楓さん?」

後ろから抱き留める形で何とか止めることができました

「な、何で……あ、そうか」

良かった、まだ話はできる状態みたい

「落ち着いて、ね? それから話を聞かせてもらえるかしら」

私の言葉を聞くと、加蓮ちゃんがきっと相手を睨み付ける

「最近のガキは怖えなぁ」

ひゃっひゃっと笑う相手に、わたしも不快感を覚えました

ですが、状況がわからないことにはどうしようもありません

「そのガキのっ……お、お尻触ったのはどこのどいつよ!」

なるほど、そういうことですか

「この度はうちの北条がお騒がせして申し訳ありません」

深く頭を下げます

「待ってよ楓さん! なんでこんな奴に頭下げてんの?」

加蓮ちゃんの言いたいことはごもっとも

けれど、今はこうして頭を下げなくちゃいけないの

「へぇ……アンタは話がわかるみたいじゃないか」

じろじろと、まるで値踏みされているかの視線を感じる

「北条に代わり、お詫び申し上げます」

もう一度頭を下げると、相手が近づいてきます

「そうか、俺も悪かった。すまん」

あら? 案外話が通じる人なのかしら

ともあれ、これで終わ……

「でもよ」

はっとして頭を上げると、とても醜い笑顔を浮かべていて

「この子のせいで耳がやられちまった」

「こりゃ慰謝料が必要じゃねえのかな」

にたにたと、下卑た笑いで

「それともよ」

私の横に立つと、ぐいっと肩を抱かれて

「アンタと遊ぶのも面白そうだな」

周りに聞こえないように、ぼそりと呟きました

どうしよう、どうしたらいいの……?

あの人ならどうやって解決するの

いつも傍にいてくれるあの人なら、私を守ってくれるあの人なら

頭がパニックになって、体が震えているのがわかる

「なに、酷いようにはしねぇよ。な?」

……怖い、力が強くて逃げ出せないし、ただ怖い

皆の為に頑張るって約束したのに……ごめんなさい、プロデューサー

「そろそろ勘弁してもらえないでしょうか?」

聞こえないはずの声が聞こえる

「こちらとしても大事にはしたくないんですよねぇ」

そして、いないはずのあの人が、いる……

「そうそう、うちの北条の体を触ったらしいじゃないですか」

私を強引に引っ張って、相手から引き離してくれた

「困るんですよねぇ、うちのアイドルはそんなに安くないんです」

全部の感情がぐちゃぐちゃになって、涙が零れるのがわかった

「はい、コーヒーです」

「ありがとう、ございます……」

缶コーヒーの暖かさが手に染みる

「いやぁ、災難でしたね」

困ったように笑うあの人に、安心して

「怖かった、です」

肩に頭を預ける

「もう大丈夫です、もう楓さんは頑張らなくていいんですよ」

「プロデューサー、でも……私」

あの人の人差し指が私の声を遮る

「大変でしたね、慣れないことをさせてすみませんでした」

こんな時でも人のことを心配するんなんて、お人好しすぎます

「ばか」

「ばかで良いです、じゃないと楓さんたちを守れませんし」

その声はとても優しくて、嬉しくて

「もう少しだけ、このままで……」

「ええ。楓さんの気が済むまで」

今はこの気分に浸らせてください




おしまい



「もう大丈夫です、もう楓さんは頑張らなくていいんですよ」

「プロデューサー、でも……私」

あの人の人差し指が私の声を遮る

「大変でしたね、慣れないことをさせてすみませんでした」

こんな時でも人のことを心配するんなんて、お人好しすぎます

「……ばか」

「ばかで良いです、じゃないと楓さんたちを守れませんし」

その声はとても優しくて、嬉しくて

「もう少しだけ、このままで……」

「ええ。楓さんの気が済むまで」

今はこの気分に浸らせてください




おしまい



あら、投稿ミスった

とうことで今日はおしまいです
読んでくれた方に感謝を
明日は書く時間ないので、続きは明後日です


一番気になったのだったから見れてよかった

今更だけど過去スレをなんとなく察した気がする
クオリティ高いなあ
おつ

こんばんは、それでは再開でござい
それでは>>162の楓さんどうぞー

ksk

スナイパー

幽体離脱

男装

幽体離脱な楓さんですか
ちょっと書いてみます

お仕事が終わって、家に着いたのは午後七時過ぎ

お腹もそんなに空いていないので

夕飯はお酒とちょっとしたおつまみで済ませてしまおう、と思います

今日はハイボールの気分なので、そんなにお高くないものをソーダ割りに

おつまみは枝付きレーズンとチーズ、それとクラッカー

手慣れた手つきでウィスキーを計ってソーダを注ぐ

炭酸がパチパチと弾けて、早く飲んでと急かしているみたい

今日もお疲れ様でした、乾杯

心の中で乾杯をして、まずはハイボールを一口

ん~、今日も美味しくできてます♪

おつまみも摘まんで、どんどんとお酒が進み

何杯飲んだかわからなくなった頃、あくびが出てきたので今日はこの一杯でおしまいと決めます

グラスとおつまみを入れた食器を洗って、次は自分の体を綺麗にするためにバスルームへ

お酒を入れた体でお風呂に入るのは本当はいけないのですが、やっぱりお風呂に入ってから寝たいです

お風呂から出た後、ぽかぽかとした体のまま明日の準備

髪も乾かして、歯も磨いて、アラームもセットして

後はお布団に優しく包まれて明日の朝までぐっすり

の、はずだったんです……

意識もまどろんで、起きているのか寝ているのかわからなくなる頃合い

明日もプロデューサーとお仕事頑張ろう、なんて思っていると、何だかふわふわとしているような変な感覚

無重力を体験したことはないんですが、きっとこれがそうなのかな? なんてことを思いました

ゆっくりと自分の体が、自分の体が……あら? 下にいるのは私? それじゃふわふわしている私はなぁに?

ふわふわしているはずなのに、見下ろすと自分の体はベッドの中です

夢なのかしらと自分のほっぺをつねろうとしてみると……

感覚はあるはずなのに、自分の手はほっぺをすり抜けるだけ

むぅ……ほっぺをつねらないと夢かわからないじゃない

何て、冗談を言ってみますが、私の置かれている状況は変わりません

しばらくの間、自分の体をいじくりまわそうとしますが、まるで空気のように触ることができない

下にいる自分を触ろうとしても、空を切るばかり

……もしかして、もしかしてですよ? これは俗にいう幽体離脱というものでは?

大変な経験をしているのに、頭はどこか冷静で、落ち着いている自分がいます


どうしましょう、元に体に戻ることもできませんし……

空中で正座をしながら、頭を悩ませます

んー……そうだ! 今の体が物をすり抜けるというのなら

どなたかのお部屋に突撃幽体離脱を仕掛けてみましょう♪

自分でも何を言っているかわかりませんが、もう流れに身を任せます

「ゴー♪ すっと、ね」

幽霊じゃないですけど、これは目を瞑ります

さて、突撃するのはいいのですが、誰のお部屋にしましょうか

菜々ちゃんのお部屋も気にはなるのですが……

やっぱりここは、プロデューサーのお部屋ですかね♪

善は急げ、といいますし、プロデューサーのお部屋までひとっとび~

部屋の壁を通り抜けて、いざ! と気分が乗ってきたところですが

そんな便利はことはできずに、満点の冬空の下を文字通り歩くことになりました

上を見れば静かに輝く星とお月さま

下を見れば人口の光が目を楽しませてくれます

不思議と高さによる恐怖心はまったくなくて

それに、こんなに寒い夜なのにまるで寒さを感じません

快適なウォーキングを堪能して、少しはカロリー消費できたのかしら?

交通機関も使わずに、プロデューサーのお部屋まで一直線で向かいます

確か、この辺りのマンションだったはず……

上からの視点のせいか、建物の判別がつきにくいです

ちょっと下ってみましょうか

階段を下りるようにして、上から横の視点になってから、ようやくお目当てのマンションを見つけました

あ、このマンションですね♪

ええと、三階の角部屋は……ここです

「おじゃまします」

夜なので、控えめに

きっと、大きな声をだしてもプロデューサーには聞こえないでしょうが

ドアをすり抜けて廊下をゆっくりと歩きます

電気はついているのでまだ起きていると思うのですが……

あ、プロデューサーを発見しました

パソコンデスクに座って、作業しているみたい

「こんばんは、プロデューサー」

挨拶をしてみますが、帰ってくるのはキーボードを叩く音だけ

挨拶が帰ってこないのは寂しいですね……

今は仕方ないのです、我慢です、ぐすん

それにしても、綺麗にしてあるお部屋ですね

前に私がお邪魔した時も綺麗でしたが、普段からだったんですね

しばらくお部屋の中を歩き回ってみますが、飽きてしまいました

触ろうとしてもすり抜けてしまうので、仕方ありません

手持ち無沙汰になった私は、プロデューサーのお仕事の邪魔にならないように

ふよふよと浮きながら正座をして、お仕事を見守ることにしました

こっそりとパソコンの画面をのぞき込むと、そこにはたくさんの文字が並んでいます

ほうほう、これはLIVEのプレゼンでもするのでしょうか

箱を抑えたり、物品販売での予想できる売り上げなど、事細かに書かれています

どうやらこれは大きなLIVEのようですね、予算の桁が物凄いです

これだけのお金があれば美味しいお酒が山ほど買えるくらい

日替わりで名酒を堪能する……良いですね

似たようなことができないか進言してみましょう

大きなLIVEなのはわかったのですが、誰のLIVEなのか

気になった私は、食い入るように画面を見続けます

ふむふむ、高垣楓単独LIVE用資料

なるほど、この資料は高垣さんのものなんですね

……あ、それ私じゃないですか

「プロデューサー? こんな大舞台、私に頂けるんですか?」

独り言、誰にも聞こえないはずの独り言、のはず

けれど

「楓さん、これでようやく舞台が整いましたよ」

プロデューサーの返事が的確すぎて、変な声が出てしまいました

「聞こえてるんですか!?」

そっと、プロデューサーに返してみますが

「とは言っても、これが通らなかったらキツイよな……」

もう! 勘違いしちゃったじゃないですか

やっぱりプロデューサーには聞こえていませんでした

「いや、これは絶対成功させないと」

けれど、プロデューサーの真摯な声は聞けることができました

「聞こえているんですか……?」

そっと、プロデューサーに返してみますが

「とは言っても、これが通らなかったらキツイよな……」

もう! 勘違いしちゃったじゃないですか

やっぱりプロデューサーには聞こえていませんでした

「いや、これは絶対成功させないと」

けれど、プロデューサーの真摯な声は聞けることができました

少しだけプロデューサーに近づきます

「今まで頑張ってきた集大成だもんな」

二人で頑張って……いいえ、周りの方たちと一緒に頑張ってきました

「やっと、ここまでこれたんだ。きっと、いや、絶対成功させてみせる」

そういうセリフは面と向かって言ってほしいな

「独り言多すぎです。それに、私にきちんと言ってくださいね?」

「あはは、それもそうですね。……あれ?」

今度こそ本当に、プロデューサーが私の声に反応した

「楓さん?」

「……」

私を探すような素振りをするプロデューサー

当の私は息が聞こえないように、両手で口を塞いでいました

それに何の意味もないはずなのに

「気のせいか……ともかく、期待しててくださいね楓さん」

そう言うプロデューサーの顔は自信に満ちていて、それでいて子供の様に可愛い笑顔で

何だか気恥ずかしくなって、逃げるようにプロデューサーの部屋を通り過ぎて、また星空の下へ

「私の単独LIVE……」

星空の下で気持ちを整理させる

なのに、体の中心がぽかぽかとして、鼓動が早くなる

「頑張らないと、いけませんね」

私の為に頑張ってくれている、そう思うと嬉しくなって、自然に顔が笑顔になる

「見ていてください。貴方のためにもっと輝いて見せますよ」

たくさんの星空の下、私はそう宣言をしました

アラームの電子音を耳に感じると、いつの間にベッドの中

正確にはずっとベッドの中だったんですけど、こんがらがります……

いつも通り朝の支度をして、事務所へと向かいます

「おはようございます」

いつも通りの朝の挨拶

そして、プロデューサーを見つけて私はこう言うんです

「今日も一緒にお仕事できますね♪ わーくわくします」



おしまい

読んでくれた方に感謝を
ちょっと休憩します

今日はもう一つくらい書けそうな予感!

再開でござい
>>188の楓さんいらっしゃいませ

スナイパー

ゲーマー

ゲーマーな楓さんですか
ちょっと書いてみます

紗南ちゃん再びなのか、他のアイドル(例えば中の人ゲーマーでりーなor飛鳥、紗南に布教されてる早耶)になるのか

「あっ、待って……待ってください」

私の懇願を無視して、相手のペンキが私を……

最近のゲームって難しいんですね、すぐやられちゃいます

これちょっと理不尽じゃないですか? なんでペンキでやられちゃうんです?

そもそもイカって……焼いて食べちゃいますよ?

「ふぅ……」

落ち着きましょう、ゲームに怒っても勝てるわけじゃありませんから

さぁ、気を取り直してもう一戦いってみましょう

気持ちを切り替えて、マッチングを待っていると

「おはようございまっス」

ふわぁ、と大きなあくびと共に比奈ちゃんが事務所に入ってきました

「おはようございます、比奈ちゃん」

「おはようございまス。おや、イカさんのゲームですか?」

ふらふらとまるでゾンビのような足取りで比奈ちゃんがこちらへと向かってきます

「ええ、これがなかなか難しくて……」

ハードの角度を変えると、ついつい自分の体の角度も変わっちゃう

「あー、楓さんのキャラがペンキまみれに」

比奈ちゃんは自分の言葉の後に、はっと何かに気付いたようで

「楓さんのキャラが……ペンキ……ぶっかけ」

単語だけしか聞き取れないので、内容がわかりません

「良い……良いっすよ! 楓さん頑張ってください」

先ほどとはうって変わってテンションが上がっている比奈ちゃんをよそに

「ああ……またやられちゃいました」

相手のペンキを受けて私のキャラが……

「そう、ソレで良いんっスよ」

はて? これはやられるのが趣旨のゲームじゃないですよね?

「比奈ちゃん、それってどういう……」

「あーっと、敵が! 突撃っスよー」

私の質問に返事を返さず、鼻息荒くぶつかっていくことを伝えてくる

「そうは言っても……」

相手は私の死角を上手く突いて攻撃してくるし

まるでこっちのペンキがあたらないしでどうしようもない

「待って……そんなにペンキをかけられちゃうと」

キャラクターに感情移入をしてしまって、まるで自分がペンキをかけられている気分になる

「良い反応っスよ楓さん!」

どこからか取り出したメモ帳に、なにやら走り書きをしている

「比奈ちゃん、何かアドバイスしてくれません?」

「いやぁ、アタシは見る専門なんで……」

むぅ……そんなのずるいです

しかし、相手の人は私だけを攻撃してくる気がする

「んー……楓さん、鴨られちゃってますかね」

ペンの動きをぴたりと止めて、比奈ちゃんがうーんと唸る

「なんだか執拗に攻撃してきて、ああっ! また……」

そんなにペンキ塗れにされちゃうと、お風呂大変なんだから

あたふたとゲームをプレイしている私を見かねてか、比奈ちゃんが口を開く

「ちょいとアタシに変わってくれませんか?」

「いいけれど、比奈ちゃんさっき見る専門って……」

恐る恐る貸すと、比奈ちゃんは優しく笑みを浮かべて

「それは謝るっス、良いモノ見せてもらったので、そのお礼ということで」

ジャージの袖をまくり、ぺろりと舌を出す比奈ちゃんの表情が変わった

「さぁて、いっちょ反撃と行くっスよ」

いつもの穏やかな瞳をギラギラと輝かせ

明らかに慣れた手つきで相手を攻撃していく比奈ちゃん

「うーん、ぶっかけるってのも気持ち良いものなんスね」

ペンキをたくさん浴びせて何やらご満悦みたい

「比奈ちゃん、お上手なのね」

「同人やってる身としては、こういう流行り物は抑えておくもんっス」

「これで終わりっスよ」

鮮やかに相手を倒して、結果的にこちらのチームの勝ちとなりました

「へへーん、どんなもんっスか」

えへんと、ボリュームがある胸を張る比奈ちゃん

「ありがとう、比奈ちゃん」

「いえいえ、どういたしましてっス。これはお礼なんで」

「ふふ……じゃあ今度は2人でやるゲームでもやりましょうか」

うーんと、あったあった

「昔のゲームならたくさんあるし、今やっても面白いの」

「か、楓さん?」

どさりとゲームを取り出すと、比奈ちゃんが驚いたような顔をしている

「くにおくんとか、キン肉マンとか、たーくさん♪」

シンプルで私でも楽しめるし、二人でやってももちろん楽しい

「わ、年季が入ったハードっスね」

「今でもきちんと動くし、現役です♪」

いわゆるレトロゲーってものだけど、前知識なんていらないものばかり

「わ、これなんて実際に見たの初めてっスよ」

ひとつのソフトをまじまじと見つめる比奈ちゃんに

「じゃあ、それにしましょう」

私は比奈ちゃんの先輩なんだから、今度こそ




こてんぱんにやられちゃいました……



おしまい

読んでくれた方に感謝を
今日はここでおしまいっス
続きは明日の夜くらいー

おつー

???「くにおくんにキン肉マン、懐かしいですね!」

アンチ乙、ウサミンはスーファミ世代だから

今日も寒いですけど再開します
それでは>>210の楓さんどうぞー

スナイパー

Pの妻

Pの妻な楓さんですか
ちょっと書いてみます

カーテンから差し込む朝日で目が覚めます

「ん……ふぅ」

体を起こして、伸びを1つ

寝ぼけまなこで時間の確認

アラームが鳴るまであと五分少々

今日は私の声であの人を起こしてあげることにします

それまで少し時間があるので、少し観察してみましょう

私の旦那様はまだぐっすりと寝ています

すぅすぅと寝息をたてて、気持ちよさそう

あ、ちょっとおひげが伸びてますね

「……」

起こさない程度に、おひげに手を伸ばします

じょりじょりとした、何とも言えない感触

……なんだか癖になる感じです

「~♪」

普段は凛々しいお顔なのに、寝ている時は子供みたい

おひげから手を放して、髪の毛に触れます

よしよし、と子供をあやすみたいに軽く撫でる

ふわりと香る、私と同じのシャンプーの匂いが、なぜか嬉しい

小さなことですけど、一緒になれたんだな、と実感します

嬉しい感情に浸っていると、いつの間にか起きる時間

「あなた、そろそろ時間です」

肩を軽く揺らして声を掛けます

「……あと五分」

なんて、テンプレートな返事

「……ちゅーしちゃいますよ?」

「良いよー」

あ、冗談だと思ってますね? 私はやるときはやっちゃいますよ

がしりと顔を掴んで、お望み通りのキス

「ん……」

「……!!」

びっくりした顔で旦那様がようやく起きてくれました

大丈夫です、少しくらいじゃれあってても遅刻しませんから

……流石にこれ以上の事は遅刻しちゃいますけどね

「おはようございます♪」

「おはよう、楓さん」

夫婦向かい合って、朝の挨拶

挨拶はコミュニケーションの基本ですよね

「私は朝食の準備をしてきますね」

「ああ、頼むよ」

さぁ一日の始まりです、今日も元気にいきましょう♪

顔を洗ってパジャマから着替えて

それから、エプロンをつける

エプロンをつけると気合いが入りますね。おー! って感じで

今日の朝ごはんは……ハムエッグとお味噌汁とお漬物

じゅうじゅうとハムと卵がフライパンで焼ける匂い

やっぱり半熟ですよ半熟、とろりとした黄身とハムが一緒になると……

ご飯もたくさん炊けてますので、いっぱい食べてもらいましょう

鼻歌交じりに調理していると

何やら後ろから控えめなスリッパの音

なるべく音を立てないようにしながら、ゆっくりとこちらに近づいているみたい

これは気付かないふりをしていてあげましょうか

危なくないように、さりげなくシンクの前まで移動してみます

ちょうど私の後ろでスリッパの音が止まって、そろそろかしら

「今日の朝ごはんは?」

ぎゅっと逞しい腕が私を抱き留める

「ハムエッグとお味噌汁とお漬物です」

「そっか、できるまでこうしていい?」

返事は聞かないとばかりに、腕の力は弱まりません

大きな甘えん坊さんですね

「帰ってきたらいくらでも。でも、今はだーめ♪」

くるりと振り返って、抱きしめ返しました

「残念、じゃあ少しだけってことで」

「私も残念ですよ、本当に」

身長が高い私ですが、それでもすっぽりと収まってしまう旦那様の体

「あったかいですね」

「うん。それに楓さんの体が柔らかくて気持ち良い」

柔らかい? それは誉め言葉なんでしょうか、アイドルを止めてから体重の変化はない、はず……

胸板にすりすりしてみたりして

「~♪」

「あー……仕事休んじゃおうかな」

む、それは駄目です

「ちひろさんに迷惑かかっちゃいますよ? それに他のアイドルの子たちにも」

「冗談だよ。半分は、ね」

悪戯っ子みたいな笑みで言われて、私もつられて笑っちゃいました

「……楓さん、なんか焦げ臭くない?」

言われてみれば焦げた匂いが……

はっとして、フライパンの蓋を開けてみると

それはもう真っ黒こげなハムエッグだったものがありました

「ごめんなさい、あなた」

「俺のせいでもあるから……ごめん」

今日の朝ごはんが少しシンプルになってしまいました

「ごちそうさまでした」

「おそまつさまです」

今度は気をつけますから、ごめんなさいハムエッグさん

心の中でお祈りを捧げます

私は食器の片づけをして、旦那様は朝の準備の最終段階です

歯も磨いて、ジャケットも羽織って、ネクタイも曲がってませんね

「それじゃ、行ってきます」

「いってらっしゃい」

ほっぺに軽くキスをして、お見送りしました

ドアが閉まるまで手を振って

ぱたりとした音が鳴れば、私はお家で一人ぼっち

……いけないいけない、気持ちを切り替えて家事をしなくちゃ

今日は良いお天気なので、いーっぱいお洗濯しちゃいましょう

ベッドのシーツにお洋服、お気に入りの匂いの洗剤と柔軟剤で洗っちゃいます

次は、お掃除しましょうかね

綺麗なままを保つって気持ち良いものですし

……暇になっちゃいました

お洗濯もお掃除もお昼前に終わって、手持無沙汰

お買い物もまだいかなくていいし、どうやって時間をつぶしましょうかね……

とりあえず、お茶にしますか

こういう時間は主婦の特権、ですよね? ね?

テレビをつけて、チャンネルを切り替えていると聞きなれた声が聞こえてきました

あら、川島さんと美優ちゃんですか

ふむふむ、お店を巡る番組みたいですね

あ、このお店素敵。あの人がお休みの時に行ってみようかな

とても楽しそうな二人の掛け合いが面白くて、つい見入っちゃいます

二人とも変わらないみたいで安心しました

もう一緒にお仕事をすることはないでしょうけど、近いうちに遊びたいですね

ほっこりした気持ちのまま、しばらく二人の番組を見させてもらった

…………
………
……

空が茜ちゃん色に染まってきました

よし、そろそろお夕飯の支度をしておきましょうかね

今日は寒いので暖かいものが良さそう

温かくて、美味しくて、栄養があるもの……

お鍋……? お鍋にしましょう、それとお酒もつけましょう

お野菜をたくさん切りましてー

白菜、人参、おネギにしいたけ

鶏肉も入れましてー

白滝もも入れるのでしてー

あら、芳乃ちゃんみたいになっちゃいました

それから、もちろんお酒も用意するのでして―♪

火が通りにくい食材は先に火を通しておいてっと

後は旦那様が帰ってきてから、土鍋で仕上げましょう

窓の外を見てみると、茜ちゃん色の空は濃い群青色に

群青色……凛ちゃんは青だし、蘭子ちゃんは黒かしら

頭を捻っていると、スマートフォンが振動します

『あと少しで家に着くよ』

画面には旦那様からのシンプルな連絡

一文だけの文章ですが、とても嬉しい

早く帰ってこないかな、お鍋美味しいっていってくれるかな

お酒も飲んで、今日のお仕事のお話もいっぱい聞きましょう

何だかそわそわしてしまって、まるで飼い主を待つワンちゃんみたいな気分

私にしっぽがあれば、きっと振り切れちゃうくらいぶんぶんと振っているでしょうね

それが面白くて、1人で笑っちゃいます

しばらくすると、インターホンが鳴ります

続いて、愛しい待ち人の声

そわそわとドキドキを隠し切れないまま玄関に向かって

「おかえりなさい、あなた♪」

「ただいま、楓さん」

きっと私は満面の笑みを浮かべているはずです

だって、これからまた二人の時間になると思うと

幸せな気持ちで胸がいっぱいなんですから



おしまい

読んでくれた方に感謝を
今日はこれでおしまいです
続きは明日の夜くらいに書けたらいいなぁ

おう

おつ

寒い! こんな日は熱燗!
ということで再開でござい
それでは>>239の楓さんどぞ

海苔

白夜

フルフェイスヘルメット

スナイパー

ダウナー

フルフェイスヘルメットな楓さんですか
ちょっと書いてみます

「これはヘルメット……?」

顔がすっぽり隠せるもの、いわゆるフルフェイスというものです

それがテーブルの上にぽつんと置かれていて、添え書きが一枚

被るな危険!! の文字

これはフリというやつですか? 本当は被ってってことですか?

どこかでカメラが回ってたりしませんよね

きょろりと事務所を見わたしますが、それらしいものはありませんでした

どうしましょう、放っておいてもいいんですけど

ちょっとだけ被ってみたいという好奇心も……

ちょっとだけ、ちょっとだけなら……怒られませんよね

女は度胸です、ということで

「いきます」

メットをえいっ! と被ってみまし

どうしましょう、放っておいてもいいんですけど

ちょっとだけ被ってみたいという好奇心も……

ちょっとだけ、ちょっとだけなら……怒られませんよね

女は度胸です、ということで

「いきます」

メットをえいっ! と被ってみました

あら、真っ暗

まっくらくらで前が見えません

これじゃ意味がないんじゃ……

メットを取ろうとした、その時です

『あ、被っちゃったんですか?』

私の声……?

声と同時に、まるでブラウン管がゆっくりとついていくように、目の前が鮮明に見えるようになりました

『狭い所ですが、ようこそ』

「いえいえ、良い被り心地ですよ」

私の声に返事をするというのも変な感じですが

「そもそもこれ……貴方はなんなんです?」

疑問に思っていたことを口にしてみます

そもそも、会話できるメットなんて聞いたことがありませんし

『よくぞ聞いてくれました! 私はとある方に作ってもらった凄いヘルメットなんです。えっへん!』

なるほど、凄いヘルメットさんですか

「凄いヘルメットさんはどこか凄いんですか?」

『えっ? どう凄いと聞かれましても……』

もの凄く人間臭いヘルメットさんのようです

『……』

『……お酒の銘柄を当てられる?』

まぁ、素晴らしい凄さですね♪

「それはどんなお酒でも大丈夫なんですか?」

『それはもちろん! 私の分析力は凄いんですから』

声は私と同じですが、何だか李衣菜ちゃんと喋っているような感じがしました

それにしても、利き酒ができるなんて凄いです

「コツはあるんですか?」

『すっと解析してばーんと当てるんです』

……私には少し難しいみたいです

「もっと凄いところを聞いてみたいです」

『良いですよー、次はですね……』

わくわくして返事を待っていると

「誰かヘルメットを見なかったか!」

物凄い勢いで晶葉ちゃんが事務所のドアが開けました

「どうしたの? 晶葉ちゃん」

「だ、だれだ!? あ、そのヘルメットを被ってしまったのか……」

びっくりした顔から、がっかりした顔に変わる晶葉ちゃん

「私です。楓ですよ」

「よりによって楓さんとはな……」

む……やっぱり被っちゃいけないものだったのでしょうか

『あ、この方ですよ。私を作ったの』

凄いヘルメットさんがそう教えてくれました

「その、ごめんなさい……好奇心に負けちゃって」

こういう時は素直に謝るに限ります

「いや、別にいいんだが……どこか変なところありませんか?」

変なところ……特にないとは思います

「今のところは特に。かぶり心地も良いですし、凄いヘルメットさんはとても面白い方ですよ」

「凄いヘルメットさん……? ああ、そのメットのことか」

会話できるヘルメットを作れるなんて晶葉ちゃんは凄いですね

「ところで楓さん、それは取ることができますか?」

「それはもちろん」

ヘルメットを取ろうとして、取ろうと……あら?

いくら力を入れても、凄いヘルメットさんを取ることができません

「やっぱりか……」

やっぱりって……うぬぬぬ! やっぱり取れません

「晶葉ちゃん、駄目みたい」

これ以上ひっぱると私の首も取れちゃいそう

私の胴体からクビ……いまいちだし、全く笑えません

「仕方ない、強制終了しよう」

『……お願いです、逃げてください』

晶葉ちゃんの言葉を聞いた凄いヘルメットさんが、悲しそうな、怯えた声で私にお願いをしてきました

「どうしたんですか? 凄いヘルメットさん」

晶葉ちゃんに聞こえないように小さな声で聞きます

『……強制終了というのは、私にとっての終わりです』

「終わり……?」

『そうです。私は消えて、電子の海でデータとして彷徨うだけ……』

「凄いヘルメットさん……」

『お願いです。もう少しだけ、もう少しだけでいいですからっ!』

凄いヘルメットさんに返事をする前に、私は駆け出しました

「待ってくれ楓さん!」

後ろから晶葉ちゃんの声は聞こえますが、追ってくる気配はありません

「全く……困ったヘルメットだな」

晶葉ちゃんの呆れたような……いいえ、これは笑い声でしょうか、それが聞こえたような気がしました

勢いよく駆け出したは良いのですが、凄いヘルメットさんが予想以上に重く

ふらふらと、まるで千鳥足のような駆け足です

『ごめんないさい重くて……ダイエットします』

凄いヘルメットさんのしゅんとした声

「大丈夫です、心配いりま……あっ」

バランスを崩してしまった私は、前に倒れこんでいきます

そして、運の悪いことに目の前には下り階段

……これは私、大ピンチです

これはかすり傷では済まなそう

骨折したりしませんかね、痛いのは嫌なんですけど……

それに、プロデューサーや皆に迷惑かけちゃうのも嫌

でも、これは迷惑かけちゃいそう

ごめんなさい

誰にかわからない謝罪を心の中で済まし

スローモーションで体が落下していきます

ぐっと目を閉じて、これからの痛みを覚悟しました

まだ……ですか?

いくらなんでも遅すぎる

怖いけど、薄目を開けてみました

すると、私の体は羽毛のようにふわりふわりとゆっくりと下の階へと落ちています

体勢を整えて、両の足でゆっくりと着地

そして、緊張の糸が切れたのか、へなへなと座り込んでしまいました

さいきっく楓になっちゃったんでしょうか

むむむーん! いけませんね、パニックになってるみたいです

ということは、凄いヘルメットさんのおかげとみるのが妥当でしょうか

「助けてくれたんですか?」

恐る恐る聞いてみます

『何とか間に合ったみたいです、貴女が無事でよかった』

そう答える声にはところどころノイズが混じっています

「凄いヘルメットさん……声が……」

『ええ、無理をした代償ですね』

段々と声が小さくなり、機械音のようにひび割れていきます

『ヘルメットとしての義務を最後に果たせました……ふふ♪』

嬉しそうに笑う凄いヘルメットさん、そして、とうとう声が聞こえなくなりました

凄いヘルメットさん、ありがとうございました……

そして、被った当初のように目の前が真っ暗に

さっきまでの肌のような感覚はすでになくなっています

もしやと思い、凄いヘルメットさんを取ってみると、あっさりと取ることができました

私を救ってくれた凄いヘルメットさん

優しく抱きしめて、心の中で再びお礼を言いました

いつかまた出会う事があったなら、今度は貴方と一緒に走りたいものです

凄いヘルメットさんを胸に抱いたまま、私は事務所へともどることにします

晶葉ちゃんにまた謝って、凄いヘルメットさんのことを聞くために

あの後、晶葉ちゃんに全て聞くことができました

晶葉ちゃんの持てる全ての力で開発された『全衝撃無効ヘルメット』であること

それはもう凄いテクノロジーで重力の操作まで行える凄い代物みたいです

話が難しくよくわかりませんでしたけどね

そして、ヘルメット内でのAIがサポートするシステムを搭載していること

そのモデルが私をベースにしてできていることも

「そうか、最後に笑っていたのか」

凄いヘルメットさんをこつりと叩いて、優しく撫でる晶葉ちゃん

「はい。義務を果たすことができたって」

その結果として、私は助けられたのですから

「……今回は私の不注意でもあります、すみませんでした。それと……」

晶葉ちゃんの口からでた言葉に

私は目を白黒とさせた後、力強く頷きました

私の目の前には徳利とお猪口がワンセット置かれています

さて、今日はこれでお酒を楽しんでみましょうか

まずは、お気にいりの日本酒を徳利に注ぎます

「このくらいかしら……さて」

少し待ちます、ほんの少しだけ

『……あ、これは良い純米酒ですね』

そして聞こえてくるのは私と同じ声

「おかえりなさい」

『この姿では初めてですが、ただいま』

この『凄い徳利』でこれからたくさんお酒を楽しむんです



おしまい

読んでくれた方に感謝を
今日はこれでおしまいです
続きはまた明日の夜に書ける予定です

こんばんは、再開したいと思います
それでは>>280の楓さんどうぞ

殺し屋

小料理屋

ksk

ビールっ腹

未来人

安価遠いな…

板前

270の間違い?

ksk

養蜂家

kskst

寝不足

若女将

間違えました!
>>270です……

この場合は安価どうなるの?

ごめんなさい……完全に私のミスです

>>270がそのままなら>>271が採用される?
>>280は無効?

えーと、271と280の安価を書くってことでどうですかね?
長々とレスさせてしまって本当にごめんなさい
反省してます……

間違えちゃったもんはしょうがない

これまで安価さばいてて、こんな凡ミス初めてしました……
それでは気を取り直して、ビールっ腹な楓さんを書いてみます

みなさん、クラフトビールってご存知ですか?

一般的にビールと聞くと、スーパーなドライや、一番に絞ったアレを想像すると思います

ビールが好きって言うと、どこどこのメーカーが好きなの? って聞かれることがほとんど

ですが、ビールの世界ってとても深くて広いものなんですよ

ブルワリーも日本だけでも相当な数がありますし、ビールのジャンルも片手で数え切れないくらい

今日は、クラフトビールにはまってしまって、お腹にちょこっとダメージを受けた私のお話です

始まりはなんてことはない居酒屋の席でした

「楓さん、クラフトビールって知っていますか?」

あいちゃんが生中のグラスを傾けて、私に質問してきました

クラフトビール? クラフトは作る、ビールはそのままよね

なんかこう……制作キットてきなものなのかしら

「うーん……ちょっと聞いたことないですね」

私は日本酒が入ったお猪口を傾けながら返す

「なるほど……それではラガーしか知らないと」

む……なんだか勿体ぶった言い方です

けれど、私の知らないお酒の話題は気になります

「あいちゃん、私にもちょこっとその話を教えて欲しいです」

お猪口を天高く持ち上げて、話を切り出してみますが

「いいでしょう、それでは説明してあげましょうか」

ちょっと反応がクール過ぎません? もう一回やっちゃいますよ?

華麗にスルーされとるなwww

もうそれからは凄かったです、あいちゃんがこんなに饒舌だなんて知りませんでした

矢継ぎ早に語られるクラフトビールのお話

最後のほうは呂律が回っていなくて、よく聞き取れませんでした

ですが、聞きなおすなんて野暮なこと

あいちゃんが楽しそうにお話してくれているんですから、私は聞き手に徹します

「あいちゃん……寝ちゃった……」

いざ私が質問しようとしたころには、気持ちよさそうな寝息が聞こえてくるだけでした

結局、あいちゃんが寝てしまったので、この席はお開きとなりました

皆、帰路につきますが、私の頭の中はクラフトビールのことばかり

タクシーに乗っている時も、お家に着いた時もスマートフォンで調べてしまうくらい

そこには私の知らないビールの世界がかかれていて、胸が躍ってしまいました

しかし、ひとつだけ心残りが

「あいちゃん、話すだけ話して寝ちゃうのはちょっとずるい……」

私の独り言は、静かな部屋に吸い込まれました

翌日、事務所へ向かうとそこには申し訳なさそうなあいちゃんが佇んでいます

「おはようございます、あいちゃん」

笑顔で挨拶をする私に対して、あいちゃんはばつが悪そうです

「その……昨晩はみっともない姿を見せてしまってすみません」

ぺこりとお辞儀をしたあいちゃんが、紙袋を手渡してきました

「これはお詫びです。クラフトビール入門には良い品だと思います」

中を見ると白いラベルの瓶が一つ入っていました

早くこれを飲みたいな……

お仕事中も、皆とお喋りしている時も

この瓶が頭をちらついて仕方ないです

あ、もちろんお仕事はきちんとやり遂げました。ほんとですよ?

私もプロですからね、お酒のことばかりなんてことはありません

「楓さん。さっきから大事そうに抱えている紙袋は何なんですか?」

ああ、酒か

なんて言うプロデューサーを、ぐーで軽く叩いておきました

さぁ、時がやってきました

今日のお仕事も全て終わって、事務所を足早に去ります

「楓さーん! 今日時間あります?」

ああ、友紀ちゃん……今日はごめんなさい

「ごめんなさい、今日は予定があるの」

「そっか、じゃあまた誘いますね」

お誘いを断るのは心苦しいですが、私にはやるべきことがあるのです

何度もお誘いを断り……なんで今日に限ってこんなに誘われるの?

けれど、仕方ないんです

皆、今日だけは私のわがままをゆるしてください

ううっと泣きまねをしたら、タクシーの運転手さんがびっくりしたので止めました

そして、お家に着くとグラスを準備します

あいちゃんからもらった紙袋から、いそいそとビールを取り出し

「で……でゅべる…?」

白いラベルに赤文字でそう書かれているみたいです

そもそもそれで合っているかはわかりませんが、いいんです

さぁ、それでは開栓といきましょう

栓抜きを王冠にくっつけて力を込めると、ぽんっと良い音で空きました

ただ瓶を開けただけなのに、何故か満足感に満ち足りています

いけないいけない、本番はこれからなのに

そして、あいちゃんに言われたように、冷やしていないグラスにゆっくりと注いでいきます

注ぎ方もあるようですが、私にできる限り丁寧に注いでみます

透明なグラスに、琥珀色の液体が満たされていきます

とくとくと魅惑的な音を出しながら、最後の一滴まで残さずに

「……」

ごくりと、自然に喉が鳴りました

これが、でゅべる……!

いつものビールより泡がしっかりとして、たとえはアレですが、洗顔フォームの泡みたい

よし、では飲ませて抱きましょうか

両手でグラスを持ち、ゆっくりと傾けていきます

「……はぁ、美味しい」

一口味わうと、自然と言葉が出ていました

華やかな香りと濃厚な飲み口、そして後味の余韻が素晴らしいです

もう一口、もう一口と飲んでいくと、あっと言う間になくなってしまいました

「たりない……」

せっかく美味しさがわかったきたのに、これじゃ物足りません

近くにクラフトビールを置いているところはあるのかしら?

スマートフォンで検索しますが、上手くヒットしません

そして、私は最終手段に出ることにしました

「驚きましたよ。楓さんがこちらまで出向くなんて」

「夜分にごめんなさい。でも、もっとクラフトビールが飲みたくなって」

私はあいちゃんに連絡をして、お家まで行くことにしたのです

「今はストックがないので、ビアバーにでも行ってみますか」

「……」

無言で私は頷きます

それからの時間はまさに驚きの連続でした

バナナのような香りのするビール、とても苦いビール、そして濃厚な黒いビール


ヴァイツェンとIPAとスタウト?

それから毎晩のようにクラフトビールを飲み漁っていたのですが

そんな私に、いえ……私の体に変化が訪れました

「え……?」

それはお風呂に入るために、洋服を脱いだ時です

鏡に映る私のお腹が……お腹がぽっこりと膨らんでいました

「……」

お腹を摘まむと、むにゅーっと伸びます

これはまさにお餅の感覚……なんてふざけている場合ではありません

いわゆる、ビールっ腹というものでしょうか!?

ああ……洋服もお腹がきつい

今は重ね着できる季節なので、多少は誤魔化せますが、薄着になるとぽっこりお腹が目立ちます

特にレッスンをしている時は……

「か、楓さん……どうしたんですか?」

ルキトレちゃんのとても驚いた顔が辛い……

「お願いがあります。マスタートレーナーさんのレッスンを受けさせてください」

ここまで来たら、生ぬるい現状ではどうにもなりません

おビール様を絶ちます!

「私のレッスンを受けたいとは、流石は高垣楓と言ったところか」

うんうんと頷くトレーナーさんですが、勘違いをしています

「はい、(おビール様を飲むために)頑張ります」

そう、私はクラフトビールを飲むために痩せるのです

「それが聞きたかった。ではいくぞ!」

「望むところです」

早くこのだらしないお腹とさよならしないといけないのです

このぷにぷにもちもちのお腹とは……

待ってくださいね、おビール様♪



おしまい

読んでくれた方に感謝を
ちょっと休憩したら280の楓さん書きます
皆さんもクラフトビールお試しください

ビール腹な楓さんとな…

一旦乙

休憩ついでに一杯いかが?
https://i.imgur.com/USRV1mG.jpg

うまそう

お待たせしました、それでは再開します
若女将な楓さんですね
ちょっと書いてみます

>>308 濁ってるからヴァイツェンかな? 美味しそうです

「ふわあ……」

旅館の朝はとても早いです

朝が苦手な私にはちょっときつい……

ですが、弱音なんてはくことはできません

私はこの旅館の若女将なんですから!

とは言え、眠さには勝てませんね、あと五分だけ……

二度寝をしようとして、暖かい布団に潜りなおすと、襖が物凄い勢いが開けられました

「楓ちゃん! もう起きる時間でしょう?」

入ってきたのはこの旅館の女将、瑞……お母さんです

「瑞樹さ……すみませんお母さん。すぐに支度します」

女将の恐ろしい顔を見て、眠気なんて世界記録でもだせるスピードでどっか行きました

「あ、今変な事考えたでしょう。今日はお酒抜きね」

「わかりません……」

お母さん、ちょー怖いです

「もう……何で私が女将なの……わからないわ」

お母さんはぶつぶつと独り言を言いながら、どすどすと戻っていきます

「……起きましょう」

さようなら、お布団さん。また夜に

名残惜しいですが、お布団さんとお別れをして、準備を始めます

顔を洗って、髪を結って、お気に入りの若草色の着物に袖を通す

不思議とこの着物に袖を通すと、気持ちがしゃんとするんです

帯をきゅっと締めて……締め……あ、あら

着物の帯って難しいですよね、慣れたと思ったらこれです……

仕方ありません、YouTubeでやり方を確認します

「はー、ここがこうなって……こうっと」

うん、上手にできました♪

準備は万端ですね、それでは朝ごはんを食べて朝のお仕事をしましょう

ああ、朝はやっぱり炊き立てのご飯ですよね

お味噌汁と焼き魚、梅干とくればもう完璧です

これで飲めちゃうんじゃないですかね? 一本つけちゃ……

「楓ちゃん?」

ひぃ……女将さんの目が笑ってない笑顔が私に向けられます

「まぁまぁ、楽しくたべるっちゃ」

「葵ちゃん、今日も美味しいご飯をありがとう」

うちの板長の葵ちゃんの料理は、今日もとても美味しいです

皆でご飯を食べ終えて、それぞれの持ち場に戻っていきます

私は……特にやることがないので、皆の仕事ぶりを見に行くとしましょう

まずは、近い所からといういことで

このまま調理場の皆さんを見てみましょう

「急いで急いで! 間に合わないよーっ!」

さきほどの葵ちゃんが檄を飛ばしています

「はーい、頑張りますっ!」

「おい、ちょっと人使い荒すぎだぞ☆」

卯月ちゃんとはぁとちゃんが返事をしながら、せわしなく動きまわっています

うんうん、忙しそうなのでお邪魔しちゃいけませんね

書ききろうとしたけど、眠いので寝させてください
それと、今日は迷惑かけちゃってごめんなさい
明日は気を付けます

おつよ

もぐもぐ……次はどこへ行きましょうか

丁度いいところに、仲居さんの輝子ちゃんを見つけました

どうやら朝の挨拶の声出しを行っているみたいです

「よく眠れたかぁぁぁ! つべこべ言ってると永遠の眠りにつかせてやるぜぇぇぇ!!」

うーん、朝の挨拶は気持ちいものですね

「おはよう……きちんと起きれたんだ……ちぇっ」

小梅ちゃんも良い挨拶ですね、清々しいです

仲居さんたちはお客様たちの目に触れる機会が一番多いです

印象を悪く持たれたりすると大変なのですが

うちの仲居さんたちは気持ちの良い挨拶と接客を行っているので安心できますね

ここでもお邪魔にならないように、さっさと退散することにしましょうか

じゃあ頼みましたよ、乃々ちゃん

「おはようなんですけど……もりくぼは押し入れにいるので勝手に帰ってください」

皆、頑張っているようでなによりですね

何だか気分がよくなって、スキップをして廊下を移動していきます

「こらこら、若女将がスキップなんてはしたないぞ」

ため息と共に聞きなれた声が聞こえます

「真奈……あなた」

「私の役目はいつもこうだ。まぁ別に構わないさ」

私の旦那様、ここでいう若旦那さんです

今日も凛々しくて恰好良いです♪

「こんな所で油を売っていていいのかい? 女将がかんかんだったよ」

あ……いけない、そろそろお見送りのお時間でした

すっぽかしたらまたお酒を抜きにされちゃう……

「私はお客様のお見送りに行ってきますので」

お辞儀をして、そそくさと女将がいるであろう玄関へと向かいます

「やれやれ、若女将はフリーダムすぎるな」

後ろから何やら聞こえますが、聞こえないふりです

今は一刻を争う事態なんですから!

ふぅふぅ……あら、これはセーフっぽいです

「女将、お待たせしました」

私の声に女将が返事をします

「楓ちゃん、あの子が呼びに行ったからいいものの……」

徐々に顔がこわ……ひぃ、本当に怖いです

「ここの若女将は酒の席限定……とか、見送りの来てくれたらラッキーとか言われちゃうのよ」

ご、ごもっともです

高垣楓、この通り深く反省しています

女将がため息を吐いて、それから一言

「はぁ……そんな貴女目当てのお客様もいるのだから不思議なものよね」

しみじみと言われましても……

「ありがたいことです……ええ」

私目当てですか…ならもっとお酒飲んじゃっても平気ですかね?

「ほら、くだらないこと考えてないでお見送り」

お帰りになるお客様を女将に続いて、笑顔でお見送りします

「ありがとうございました。お気をつけて♪」

さぁ、まだまだお仕事がたーくさんです

頑張っていきましょう、おー♪




おしまい

昨日の>>280の人お待たせしました

短いんですけど、今日はこれでおしまいにします
ちょっと体調悪いんでごめんなさい
明日は書けるかわからないです……


ゆっくり休んでくださいね

SS書いたら元気になるよ(鬼畜)

乙ー

インフルじゃなくてよかった……
最近流行ってるみたいなので、皆さんお気をつけて!

短くなっちゃうかもですが一つ書きます
それでは>>332の楓さんどうぞ

猫と話せる

ようせいさん

ようせいさんな楓さんですか
ちょっと書いてみます

「楓……妖精さん……?」

私の膝の上に乗っているこずえちゃんが、ぽやぽやとした表情でぽつりともらす

はて? どういう意味なのかしら

「こずえちゃんのほうが可愛くて妖精さんみたいよ」

髪を一撫ですると、滑らかな感触が手に伝わる

「んん……こずえがー?」

「ええ、とっても可愛らしくて、不思議な感じもして、可愛い妖精さん♪」


うちのプロダクションの子たちは可愛い子ばかりです

ですが、こずえちゃんみたいに不思議な魅力を持った子はちょっと思いつきません

「んー……でも、こずえ……まだお歌が下手だし……」

しゅんと眉を下げて、珍しく落ち込んでいるような表情のこずえちゃん

「大丈夫、練習していれば上手になるから」

まだまだ幼い年頃なのだし、伸びしろはたくさんあるはず

「んー……楓みたいに……なれる?」

おずおずと私を見つめて、問いかけてくる

翡翠色の眼が、私をじぃっと見つめて、答えを待っている

「もちろん。私みたいになれるわ」

私みたいにってのも変な言い方ですよね?

こずえちゃんがお酒飲んだり、ダジャレ言ったりするのって……

これは路線変更させたほうが良いんじゃないかしら

「そっかー……楓みたいに、なれるんだ……」

ぷにぷにしたほっぺをほんのりと赤く染めて

こずえちゃんはとても嬉しそうにほほ笑んでいる

「やっぱり私みたいにはならないほうが良い」なんて言える雰囲気じゃありません

「ええ。だから大丈夫」

「そっかー……えへへ……」

そんなに嬉しそうにされると、こちらまで嬉しくなってしまう

「こずえも……きらきらな場所で……お歌を歌える……」

小さな指をきゅっと握って、こずえちゃんが言葉を続ける

「いつか……こずえが楓みたいな妖精さんになれたら……」

ぐっと言葉を溜めて、アイドル遊佐こずえとしての笑顔で言う

「こずえと……いっしょにお歌を歌おう……?」

「もちろん。その時がくるのがとても楽しみ♪」

可愛い後輩からのお願いを断るわけにもいきませんし

こずえちゃんと一緒のライブ、とても楽しそう

こずえちゃんならしっとりした曲がイメージかしら。それともギャップを狙って元気な曲?

今度プロデューサーにも話してみましょうか

うんうんと一人で納得していると、洋服の袖をくいくいと引かれました

「それでねー……終わったら打ち上げに行くの……」

こずえちゃんはどんな所に行きたいのかしら、そう思って聞いてみると

「やっぱり……居酒屋さんー……」

あ、あら?

ちょっと……いえ、だいぶ思っていた所と違うような……

「居酒屋さんで良いの?」

「うんー……たいしょー、いつものー……って」

かなりステレオタイプな居酒屋さんなのね

「こずえちゃんはのん兵衛さんになれそうね」

「うん……楓みたいになるから……のんべえ……」

最近の子供は進んでるのかしら……いえ、それにしてもちょっと……

それにしても、何故こずえちゃんはそんなに私になりたがるのだろうか

「そうそう、何でこずえちゃんは私みたいになりたいの?」

正直なところを言うと、私とこずえちゃんの接点は多いとは言えないはず

確かに仲良くしてはいるけれど、歳も離れているし、先輩と後輩以上の交流はない

「なんで……? なんでだろー……」

首を傾げて、こずえちゃんが頭を捻らせている

「あー……あのね」

数秒考えてから、答えが出たらしく

「ふわふわしたおふくで……きらきらしてて……きれいなおうたで……」

「ようせいさん……みたいだったの……」

ふわふわできらきらでようせいさん、ですか

ちいさな妖精さんが私にほほ笑みかける

「こずえも……楓といっしょ……」

「もう、そんな可愛いこと言うこずえちゃんはこうしちゃう」

ぎゅうっと小さいな体を抱きしめる

「わー……あったかい……」

私の腕の中で小さな体がくすぐったそうに声を上げた

「こずえも……ぎゅー……」

小さな小さな妖精さんとのやりとりは、とても不思議で温かくて

私の心をぽかぽかとさせるのでした




おしまい

読んでくれた方に感謝を
今日はこれでおしまいです
明日はもう少し早い時間から書けると思います

こんばんは、冬の交流会があったのを最近知って驚きました
それはさておき、再開したいと思います
それでは>>347の楓さんどうぞ

スナイパー

未来からやって来たPの娘

はやすぎィ!
下品なの取りたいのに書き込む間すらないとか

未来からやって来たPの娘な楓さんですか
ちょっと書いてみます

あれは確か神社をお散歩していた時のこと

ひゅうっと吹いた風がどんどんと強まっていく所までは覚えている

目をぎゅっと瞑って身を屈めて、とりあえず頭は守らないとと体に力を込めた

けれど、何時になってもその風は私を巻き込むことがない

おかしいと思って、眼をゆっくりと開けてみる

「……あら?」

そこは先ほどと変わらない風景が広がっているだけだった

一体なんだったのかしら……

しばらく考えてみたけれど、ぐぅっとなるお腹の音で考えるのを止めた

こんな時でもお腹はすくものなのね、と一人で笑って家路へと向かう

神社の境内を抜けながら、今日は何を飲もうかな、寒くなってきたし熱燗がいいかな

そういえばお気に入りのお酒が残っていたし、それを飲みながらおこたでゆっくりしよう

コートの襟を立てながら、そんなことを考えて……ちょっとした違和感に気付く


あら? こんな建物あったかしら

通り慣れた道に見慣れない建物がちらほらと

ここはもっと樹木が多い場所だったはずだったけれど……

道を間違っちゃった? いえ、そんなことはないはず

何年も通ってきた道を間違えるほど、方向音痴ではない

じゃあ、なんで……?

徐々に私の心に焦りが生まれ始める







気付けば私は駆けていた

息を荒くして、知らない所を駆ける

知らない、ここも知らない、どこも知らない……

急げば急ぐほど、どんどんと私は追い込まれている

けれど、今止まってしまうのがとても怖くて

私の知らない今が突き付けられてしまうようなそんな気がして

前を見ないでがむしゃらに走っていたせいだろうか、目の前にいた人とぶつかってしまった

結構な衝撃で尻もちをついてしまう

「す、すみません……急いでいたもので」

とにかく謝ろうと、顔を上に上げると

「あー痛ぇ……こりゃ骨にヒビはいってんな」

目つきが悪くて、とても怖そうな人がにやにやしながら私に言った

「す、すみません……謝りますので」

怖くて、体が震えてしまうけれど今は謝らないと

深く頭を下げるが、相手の返事は私が望むものとは違った

「ごめんで済んだら警察はいらないよね?」

笑っているのを堪えながら私に言っているのがわかる

「あの……どうすればいいんですか?」

少しでも早くこの場から立ち去りたいのに、頭がパニックなってしまっている

「まぁまぁ、そう急がないでさ」

もう一人いた髪の毛を金髪にした男の人が私の肩を抱く

嫌悪感と怖さで、思わず悲鳴を上げてしまいそうになるが、何とか飲みこむ

「お姉さん綺麗だしさ、ちょっと俺らと遊ぼうよ、それで水に流してあげるからさ」

煙草臭い息が鼻につく

「嫌です……放してください……」

大きな声を出そうとしても、掠れたような声しかでない

どうしよう……誰か……

周りを見てみるが、通行人は我関せずとも言うように目を逸らすばかり

たまにこちらを見る人も、可哀想なものを見るような眼でしらんぷりをする

なんで……? なんで私がこんな目にあうの?

神様、私なにか悪いことでもしたのでしょうか

心の中での質問に、答えなんて返ってくるわけがなかった

これから酷いことされちゃうのかな

痛いのとかは嫌だけど……怖いな

頭の中にこれからのことが想像されて、体がぶるりと震える

相手は男性が二人、私には格闘技の経験もないし心得もない

嫌な想像が現実になってしまっても、絶対に泣いたりはするものか

そう強く思って、下唇をきゅっと噛んだ時だった

「お巡りさん、こっちです」

何とも間の抜けた声だった

ちょっとおどおどしていて、声が上ずっている

けれど、お巡りさんという単語が効いたのか、相手の二人組はどこかへと去って行った

……わたし、助かった……の?

今までの緊張の糸がほどけて、この日二回目の尻もちをついてしまった

「大丈夫ですか?」

先ほどの声が頭の上から聞こえる

「……」

大丈夫です。そんな簡単な言葉を返すだけ、それだけでいいのに

私はこの知らない所で初めて感じた人の温かさに

涙を流して、ただ泣き続けることしか出来なかった

どれだけ泣き続けたのだろう

いつの間にか渡されたハンカチは、すでに涙と鼻水でぐしゃぐしゃだ

泣かないって決めたけれど、これは方向性が違うからセーフ、うん

泣いてすっきりしたせいか、少しずつ頭が動いて来た

いつまでもこうしていたら、助けてくれた人にも迷惑がかかってしまう

そうだ、それにまだお礼を言っていない

とにかくお礼、まずはお礼、ハンカチはどこかで洗って返そう……





「あのっ……ありがとうございました」

精一杯の感謝を言葉に込めて、頭を下げる

「怪我はないみたいで何よりです」

初めて顔を見たけれど、誠実そうな人だ

仕立ての良さそうなスーツを着こなしていている

「じゃあ、私はこれで」

すっと手を挙げて、去っていこうとする男性を

「待ってくださいっ!」

私は、自分でもわからないまま呼び止めていた

「ど、どうしました?」

大きな声で呼び止めてしまったせいか、驚いてしまっている

「えっと、あの……」

自分でもわからないので、しどろもどろになってしまう

ありがとうの言葉はさっき伝えたし、私は相手に何を伝えたいのか

もちろん、相手方にそんなものはわかるはずもなく

お互い無言のまま、しばらく硬直する

そんな硬直を解いたのは、ぐううっっと前より大きくなったお腹の音だった

きっと私の顔は真っ赤になっていることだろう

助けてくれた人、しかも男性に、お腹の音を聞かれるなんて恥ずかしい以外のなにものでもない

女としてちょっとどうかと思ってしまって、自己嫌悪で消えたくなる

あわあわとする私に、さっきよりも声色が優しい声で男性が言う

「もしかして、お腹減ってる?」

私は恥もちょこっとのプライドも捨てて、ゆっくりと頷いた

茶褐色の香ばしい匂いのスープの中に箸を入れる

そして、麺を持ち上げてちゅるりと一口

もぐもぐと咀嚼してから、レンゲでスープも一口

「はぁ……おいし」

私の口から漏れた吐息には、幸せ成分が多く含まれているに違いない

やっぱり醤油が一番美味しい

お腹のぐーぐー虫がまだかまだかと急かし、私もそれに乗っかることにした

「ごちそうさまでした」

あっという間に食べ終わってしまった

寒い日には温かいものが一番

なんて、満腹になった余韻に浸っていたが、ふと気づいて横を向く

「よっぽどお腹減ってたんだね」

あはは、と笑う声に私は「……は、はい」とぼそりと返すことしか出来なかった

「何度も助けて頂いてありがとうございます」

身の危険と空腹も助けてもらえるなんて思いもしなかった

……ちょっとした女のプライド的なものはどこか行ってしまったけれど、今回は仕方ない

「いやあ、あんな大きなお腹の音を聞かされたら……ね?」

悪戯っ子みたいな笑みで楽しそうに笑う男性

「何かお礼できたら良いのですが……今はあいにく……」

お金もないし、ないないづくしだ

「なんか訳ありなの?」

そう聞かれて、ぎくりとなる

訳ありと言われればそうだし……でも、素直に答えていいものか

黄色い救急車を呼ばれて、怖い病院に連れていかれたりしないだろうか

……どうしようか

良い人そうだし、もしかしたら信じてくれるかもしれない

でも待って。私がこんな話をされて信じられる?

答えはノーだ

書き終わらないのでちょっと休憩します
30分後くらいから再開の予定です

中々長編になるのね

流石に話が非現実的すぎる

でも、これから私はどうするの?

この人とお別れした後はどこに行く? お腹が空いたらどうする? 泊まる所は?

この人みたいに良い人ばかりじゃないのは、さっき思い知ったばかり

「わ……」

言葉が出ていかない

ほんのちょっぴりの勇気があれば良いのに

ほんのちょっぴりこの人を信じることができれば良いのに

私の言葉を待つ男性の目は、真っすぐにこちらを見ている

それは嘘か真かを見定めるためなのかはわからない

何もかも今の私にはわからない

けれど、ただ一つだけわかっていることがある

それは、私では今の状況を変えることができないということだけ

「私の……」

きっとこれは私に垂らされた、一本の蜘蛛の糸

掴んで切れるかわからないなら、掴んでから確かめれば良い

「私の話を信じて、くれますか……?」

少しの沈黙の後

「わかった、ゆっくりで良いから話してみて」

言ってしまえば気が楽なもので

私に起こった全ての事を、この男性に話すことができた

「面白い! そうだ、うちでアイドルやってみない?」

話し終わると、そう提案された

「へ……?」

この人は大丈夫なのかしら、さっきの二人組より怖い人なんじゃ……

「あ、あの……身分証も持っていない人間ですよ?」

「大丈夫、うちにはどこから来たかわかんないアイドルいっぱいいるから」

ええ……アイドルってそんな人がやっていいものなの?

話を聞くと異星人や魔王やサンタさんがいるらしい

「さ、さよならっ!」

すかさず逃げ出そうと試みるが、腕を掴まれた

「ご、ごめんなさい! 私そういうの信じない性質なんです、なので今回はご縁がなかった言う事で」

丁寧にお願いしてみるが、それでも私の腕を放してくれない

「待って待って! 怪しい人じゃないからマジだから」

そんなに早口でいうところも怪しい……

「ほら、これ俺の名刺」

すっと懐から名刺ケースと共に名刺を取り出した

「シンデレラガールズプロダクション……?」

名刺には会社名と、プロデューサーという文字

「あれ? うちは割と大きな芸能プロダクションなんだけど、知らない?」

小さなころに聞いたことがあったような気がするけれど、思い出せない

「おかしいなぁ……じゃあさ、あの子も知らないかい?」

指をさした方へ、ゆっくりと顔を向ける

そこにはビルの側面に設置された大型のディスプレイがある


目を引くような銀糸の髪に、赤みがかった瞳

見るものを虜にしてしまうような存在感をもった女の子

その子が踊り、歌い、そしてこちらに語り掛ける

「可愛い……」

「だろ? うちの魔王だよ」

ま、魔王って言うからもっとこう凄い感じを想像していたのに

……魔王的魅力的な? そんな感じなのかしら

「どうどう? やってみたいと思わない?」

ちょっと心が揺れる……

「今なら住むところもご飯も付くよ!」

そ、そんな誘惑に……

「お酒もたまには付くよ?」

お酒! そういえば今日お気に入りのを飲むはずだったんだ

「お、こりゃ大物が釣れたみたいだ」

……どうやら顔に出てしまってたみたい、悔しい

かくして、住むところとご飯、あとお酒……を確保できた私はこの人に付いていくことにした

「ここが女子寮ね」

タクシーで揺られること数十分、女子寮なる場所へ連れてこられた

なかなか綺麗な建物で、セキュリティも万全らしい

「俺は入れないから、はい鍵。そのキーホルダーに書いてある部屋を探してみて」

「は、はぁ……」

部屋にあるものは好きに使ってもいい、とのことだ

「じゃあ俺は事務所に戻るから」

それじゃ、と手を挙げて去ろうとするプロデューサー

「今日は本当にありがとうございました。感謝してもしきれません」

さっきは変な流れになってしまったけれど、これは私の正直な気持ち

「どういたしまして。今日は早く休んでね」

ひらひらと手を振るプロデューサーを、見えなくなるまで見送った

さて、まずはお部屋を探さないと

キーホルダーに書いてある番号は『302』号室

どこかに階段があるはずよね、まずはそれそ探し……あら?

今、壁の所で何か動いたような……

ゆっくりと近づいてみると、銀色の髪がひょこひょこと揺れている

とても綺麗な髪なので、ついついちょこんと触ってみた

「ぴゃっ……」

可愛らしい悲鳴

つんつん

「ぴゃああっ!」

た、楽しい……もっと突いてみようかしら

「ククク……我が領域内に侵入するとはなかなかの力を持っているようだ」

日本語かどうか悩んだしまったけれど、単語自体は日本語みたい

「こんばんは?」

「……こんばんは」

どうやらこちらの言葉は通じるらしく、挨拶が返ってきた

「ぴゃっ……」

可愛らしい悲鳴

つんつん

「ぴゃああっ!」

た、楽しい……もっと突いてみようかしら

もう一突きしようとすると、髪が指をすり抜け、黒いふわふわが飛び出してきた

「ククク……我が領域内に侵入するとはなかなかの力を持っているようだ」

日本語かどうか悩んだしまったけれど、単語自体は日本語みたい

「こんばんは?」

「……こんばんは」

どうやらこちらの言葉は通じるらしく、挨拶が返ってきた

まだ途中だけど寝ます!(開き直り)
今日中には書き終わると思います

ハゲ・ホモ・アスペの三重苦のPの遺伝子が入ってるのに楓さんが産まれるって事は、母親がよっぽど美人さんじゃないと打ち消せないな

>>386
このPにそんな描写あったけ……?

ホモとアスペは容姿関係ないしハゲにもイケメンはいるぞ
ソースは俺

暗がりだったから良く見えなかったけれど、良く見てみるとさっきのディスプレイに映っていた女の子?

「もしかして……魔王ちゃん?」

「ま、魔王っ……!? 我を称賛する名ではあるが真名ではない(私にはちゃんとした名前があるんです)」

何て言ってるかはちょっとわからないけれど、この子のお名前を教えてもらえそう

「私は高垣楓、よろしくお願いします」

魔王ちゃんは先輩にあたるから、挨拶はきちんとね

「高垣?……あっ、私は神崎蘭子です」

私の苗字を聞いて不思議そうな顔をしていたけど、ちゃんと名前を教えてくれた

独特な話し方だけど、良い子みたい






どうやら、プロデューサーから連絡があったようで

私をお出迎えしてくれたようだった

その蘭子ちゃんはどうせならと、女子寮の案内を申し出てくれた

「ふむ……しなやかなる肢体はまるでヴァルキリーのようだ(楓さん、スレンダーでカッコいい……)」

「あ、ありがとう……嬉しいわ」

これはきっと褒めてくれているのよね?

最後に部屋まで案内してもらい、今日はこれでお別れとなった

「先達なる我に何でも頼るとよかろう(わからないことがあれば何でも聞いてください!)」

「ありがとう蘭子ちゃん。それじゃあ、おやすみなさい」

ぺこりとお辞儀をして、蘭子ちゃんが去っていく


今日は疲れてしまったし、シャワーを浴びて寝ちゃいましょうか

部屋にあるベッドもふかふかだし、ゆっくり眠れそう

シャワーを浴びた私は、今日起きたことを考えることもなく、泥のように眠りについた

朝、身支度を整えた私はロビーで新聞紙を手に取った

プロデューサーが来るまでの時間つぶし、そう気軽に思ったのだけれど

「なに、これ……」

思わず声が出る

記事の内容がどれも見たことがないことばかりだ

それにテレビ欄も知らない番組ばかり

……そして私は知ることになる

「私が生まれる前の年号……?」

悪い冗談だと思って、何度も見て、擦ったりしてみたけれど、それは変わることはなかった

私は迷子になってしまった

知らない時代で、知らないところで

帰れるお家がない迷子になってしまった

友達も両親も、だーれもいない

「お父さん、お母さん……」

ぽつりと声にだしてしまうと、もう駄目だ

疎外感が、寂しさが、胸をきゅっと締め付ける

「どうしたんだ?」

「プロ、デューサー……」

私の恩人の声が聞こえた

どうしてか、この声を聞くと安心してしまう

異性に対する恋慕なのではないけれど、何故か甘えても良いような、そんな感じ

「話は車の中で聞こうか、立てるか?」

そう差し伸べられた手はごつごつとしていて、とても温かかった

「ということは、君は未来から来たと?」

「そう、みたいです……」

身分証もないし、なんの証拠も提示できませんが

「嘘じゃないみたいだな」

私は頷く

これが嘘であったのならば、起きて覚める夢ならばどれだけ良かったか

運転免許証もないのか?

どうしたらいいんだろう

帰りたいけれど、帰る手段もわからない

一応は生活できる状態になったと思うけど……

ちらりとプロデューサーを横目で見る

うん、私だけで抱え込むと頭がおかしくなってしまいそうだし

この人にもいっぱい話して相談して、私をもっと知ってもらおう

私を知らない人しかいないなんて辛すぎるから

「スカウトしたからには最後まで面倒見るからさ、だから……そんなに悲しそうな顔をしないでくれ」

そう言ったプロデューサーの顔は真剣そのもので

「……ありがとうございます」

今は何とかして生きよう

アイドルとして頑張って、いつか帰れる日まで

「よし、気持ちを切り替えます」

ぱしっと軽くほっぺを叩いて気持ちを切り替える

前を向いて今と向き合っていこう

今日は事務所の案内と、私の日用品の買い出しに付き合ってくれた

女子寮に帰ってきたのは夕方過ぎ

私が帰ってきた少し後に、蘭子ちゃんもお仕事が終わったようで

プロデューサーを見送った私は蘭子ちゃんに声をかけた

「お疲れ様です、蘭子ちゃん」

「闇に飲まれよ!(お疲れ様です)」

いちいちポーズをとるところがたまらなく可愛い

「今日の戦果はどうだったのだ(今日は何をしていたんですか?)」

「事務所に顔出しと、日用品の買い出しに行ってたの」

昨日よりかは何を言っているのかがニュアンスでわかるようになっている

「おお、我と肩を並べる同胞たちはみな歴戦の猛者よ(みんな良い人ばかりですよ)」

「ええ、そうみたいね」

わくわくとした表情で、蘭子ちゃんが続ける

「貴殿も早く我と共に戦場を駆けようぞ(早く楓さんと一緒にお仕事したいな♪)」

そのときはよろしくお願いします、蘭子先輩♪

新しい環境に慣れるため、とにかくがむしゃらにレッスンとお仕事に没頭した

お仕事をしている時は悩みも忘れることができるし

辛いレッスンも、仲良くなった皆と乗り切ることができた

この知らない所での生活がもう少しで一年というある日のこと

「神社でのお仕事ですか?」

「ああ、元旦での神事があるんだが、それに関する仕事みたいだ」

「神々への奉仕か、たまには悪くない(縁起が良さそうなお仕事ですね♪)」

蘭子ちゃんは闇属性じゃなかったみたい

「明日、そこへ下見に行くからよろしくな」

「わかりました」

私と蘭子ちゃんが返事をする

「ふむ……聖なる衣を用意するべきか(白いお洋服のほうが良いのかなぁ……)」

「蘭子ちゃんの着たい洋服で良いんですよ」

白い天使みたいな衣装の蘭子ちゃんも素敵だったから、どちらも見たみたい

……ふと思い返してみると、私がここに来る原因も神社だった

少しの胸騒ぎがしたけれど、気のせいでしょう

そして下見当日

昨日の胸騒ぎが消えないまま、朝がやって来た

「煩わしい太陽ね(おはようございます)」

「おはよう、蘭子ちゃん」

あら、今日はふわふわの白いコートがとてもお洒落

「おはよう二人とも。それじゃ行こうか」

プロデューサーに挨拶を返し、車に乗る

今日は何も起こらなければいいのだけれど……

「ここがその神社ですか」

ここは……この神社は……

「ああ、長く続いている神社みたいだ」

奇しくも、お仕事で呼ばれた神社は私がここにくる原因を作った神社だった

「楓さん……? 気分悪いんですか?」

私を心配してか、蘭子ちゃんが声をかけてくれた

「ううん、大丈夫。ほら、行ってみましょう」

言葉では強がったけれど、蘭子ちゃんの手をぎゅっと握った

階段を上ると、あの時の記憶が鮮明に蘇る

体が震え、ぞくぞくと背中に何かが這う

大丈夫、今は蘭子ちゃんもいるしプロデューサーもいる

すぅ、はぁ……

深呼吸を何回かすると、気分が落ち着いてくる

「宮司さんに挨拶してくるから、ベンチで待ってて」

「はい、わかりました」

うん、大丈夫。落ち着いた

「ふぅ……太陽神の輝きが身を癒す(今日はぽかぽかしてますねー)」

「ふふふ、そうね」

今日は日差しが暖かくて、実に気持ちが良い

「ふむ、ネクタルを創造するか(私ジュース買ってきます)」

「転ばないようにね?」

ぷくりと頬を膨らませて、子供じゃないもん! と蘭子ちゃんが駆けていく

……あ、一人になっちゃった

境内はしんと静まり返って、私だけが取り残されてしまったみたいな感覚

ひゅうっと風が頬を撫でる

とても、とても冷たい風が吹いている

それがどんどんと強くなっていって……

「きゃっ……楓さん!」

蘭子ちゃんが異変に気付いて、こちらへ向かおうとする

「来ちゃ駄目。私は大丈夫だから」

取り乱すと思っていたけれど、不思議と私は落ち着いていた

あの時と同じようなことが起きている。そう確信した

嵐のように吹く風が、私の体を包んでいく中、蘭子ちゃんの心配そうな声が聞こえる

「蘭子ちゃん、今までありがとう」

ここでできた私の大事なお友達

周りがなにも見えなくなっていく

最後に聞こえたのは、蘭子ちゃんの鳴き声だったのだろうか

ああ……あんなに良い子を泣かしちゃった

その鳴き声も聞こえなくなってから、そんなことをふと思った

風が吹き止んだ

懐かしい空気と見慣れた風景、だけど

辺りを見渡しても誰もいない

蘭子ちゃんもプロデューサーも

きっと私は帰ってくることができたのだろう

けれど……

蘭子ちゃんとプロデューサーの顔が頭をよぎる

「きちんとお礼……言いたかったな」

帰ってこれた嬉しさよりも、あまりにも唐突な別れに

だれもいない境内で、私は静かに泣いた

目を赤くしたまま、私は家路へと向かう

帰ると普通に両親が出迎えてくれた

あら? 向こうに一年近くいたと思ったのに……

「おかえり」

懐かしく思う父の声

……そうか、お父さんの声に似ていたんだ

お世話になったプロデューサーの声と父の声が重なる

「ただいま、お父さん」

そして、帰ってこれたという実感と、家に帰れた安心感で

私は涙をこらえながら、挨拶を返した



おしまい

読んでくれた方に感謝を
今日はここでおしまいです

風呂敷をたためなくなって長くなってしまいました
あと、短く書き上げた時に手を抜いているとかはないので、ご理解してもらえると助かります
それではおやすみなさい


思ったけど、来たシーンとアイドルになるまでをカットすればもっと短くできたかもしれませんね

本来の時間軸でのらんらん気になる乙

アドバイスありがとうございます
今日は書ける時間がとれないので、再開は明日です

こんばんは、それでは再開です
>>418の楓さんどうぞー

ホステス

バスガイド

スナイパー

7回目でやっとスナイパーが取れた……(全部俺じゃないけど)

スナイパーな楓さんですか
ちょっと書いてみます

冷たい風が吹いている

人々の欲望という名の冷たい風が

帰ったら熱燗で一杯……いけないいけない、今は集中しないと

キンキンに冷えてしまった銃を構えなおし、スコープから室内を覗く

来た、今日のターゲットだ

貴方にも家庭やお友達がいるのでしょうけれど、ごめんなさい

そして、さようなら

絞るように引き金を引き、ターゲットの頭へと弾丸が吸い込まれた

ゴルゴと対決やね

……飲みすぎちゃったかも

ちょっと良いお酒が入ったので、調子に乗っちゃいました

重い頭痛に耐えながら、事務所へと入ろうとすると

「おはようございます、楓さん」

「おはようございます、プロデューサー」

頭を下げると、痛みがました

「それと、私の後ろに立たないでください」

ぎろりと睨む

「はいはい、すみませんでした」

プロデューサーは素直に謝って、懐から厚い封筒を差し出してきた

「今回の報酬です」

「ありがとうございます」

他人の命でお金を貰うのも、もう慣れてしまった

「それと今夜も一つ依頼が入っています」

この世界は酷く汚くて醜い

私もそれにどっぷりと浸かっているのだから、笑える話です

「ターゲットは?」

「悪徳プロダクションのプロデューサーを」

詳細は後で、とプロデューサーは踵を返し去って行った

……とりあえずお水飲んでお仕事行きましょう

この世界の黒井はすでに殺されているかいつか殺されるんだな

「お疲れ様でした、お先に失礼します」

ちひろさんに挨拶をしてから、事務所を後にする

こつこつとヒールが床を叩く音の中、もう一つ足音が増える

「今日のターゲットがいる場所と狙撃ポイントです」

「亜季ちゃん、お疲れ様」

私のスポッター兼、予備のスナイパーを務める大和亜季ちゃんです

「詳しい話は車の中で」

こくりと頷き、私は車へと乗りこんだ

スポッターは誰になるのか

「さて、到着したであります」

今はもう使われていない廃ビルが狙撃ポイントだ

「では私はいつも通りに」

「ええ、よろしく」

短い挨拶をして、私も準備に取り掛かる

トランクから相棒が入ったケースを取り出す

長年使用しているボルトアクションのライフル

どうもオートマチックは信用できない

階段を一段、また一段と登っていくと、だんだんと感覚が研ぎ澄まされていく

そして、心も冷たく、重くなっていく

今日のターゲットはアイドルを食べ物にしか考えていない輩だそうだ

毒牙にかかったアイドルは気の毒だと思うけれど、私には特に関係ない

余計な思考は判断を鈍らせ、仕事に支障をきたす

私は引き金を引いて、相手を始末するだけの存在で良い

屋上へ着くと、冷たい風と亜季ちゃんが出迎えてくれる

「今日も風が冷たいのね……」

「そうでありますな、とっとと帰りたいです」

ぶるりと体を震わせて、亜季ちゃんが言う

そうね、さっさと終わらせて、私たちの日常に帰りましょう

ぽんと亜季ちゃんの肩を軽く叩いて、最後の準備に取り掛かる

防寒用のシートをしいて、ライフルのバイポットと立てる

「亜季ちゃん、風は?」

「微風でありますな、楓殿の腕なら問題ないかと」

そう、と頷き、狙撃ポジションに入る

亜季ちゃんが計ってくれた距離で、スコープのメモリを合わせる

後は、引き金を引くだけだ

狙撃時に集中するため、亜季ちゃんの合図があるまで目を閉じる

はぁ、寒い……もっと厚着してくれば良かった

寒空の下、待たされる身にもなってほしい……

待つことには慣れているが、ふつふつとどす黒い感情が現れる

相手はまだ現れない、今日は長期戦になりそうだ

――女を待たせる男は嫌われちゃいますよ?

誰にも聞こえない皮肉を独り言ちて、深く深呼吸して気持ちを落ち着かせる

「楓殿、相手が部屋に入ってきました」

返事はせず、目を開けた

狙撃のチャンスは相手が椅子に腰かけた時

引き金から離していた人差し指を引き金に添える

まだ、まだ駄目……

相手が椅子に腰かけ、背もたれにもたれかかる……今だ

轟音と共に発射された弾丸が、相手の頭に穴を開けた



「いやあ、楓殿は流石ですな」

車の中で、亜季ちゃんがテンション高く話しかけてくる

「そんなことないわ」

「謙虚なところも、流石であります!」

それを私は流れる風景を見ながら、適当にあしらう

達成感もないし、嬉しくも悲しくもない

今はただ……体が疼いて仕方ない

こっちのお仕事の後は必ずと言っても良い

私はスマートフォンでプロデューサーへSNSを送る

亜季ちゃんと別れた後、私は一人夜道を歩く

夜風が少しでも体の疼きを冷ましてくれたら……

なんて期待したけれど、むしろ逆効果だ

風を受けて燃え上がる火のように

私の体は熱く火照って、まるで自分自身を焦がしてしまっているような

「は、ぁ……」

早くあの人の所へ……私をぐちゃぐちゃにしてくれるあの人の所へ……

何度も足を運んだマンションの一室、その部屋のインターホンを押す

「鍵は開いています」

声を聞いただけで、どくりと体が鼓動する

私はヒールを脱ぎ散らかして、足早へリビングへと向かう

「お疲れ様でした、楓さん」

優しそうな笑みを浮かべたあの人に、もう我慢が出来なくて抱き着く

ショートメールはSMS

男の体温と匂いが私を狂わせる

頭が麻痺して、上手く考えることができない

この時だけが私は生きていると実感できるのだ

呼吸は荒く、心臓が痛いほど鼓動している

体は熱くて、下腹部がじんじんと疼いていく

「ねぇ……抱いて、ください」

私は娼婦のように、男にお願いをした





おしまい

読んでくれた方に感謝を
ちょっと休憩します

そう思わせといて酒かと思ったら直球だったな、乙

再開します
それでは>>444の楓さんどうぞー

妊婦

ホステス

スーパーマン

ホステスな楓さんですか
ちょっと書いてみます

「……なんだこれは」

会議室に一つが異様な雰囲気を放っている

と言うか、外装も扉も違うけどどういうこと?

白を基調として、凝ったデザインの……まるで西洋の城みたいだ

良く見てみると、看板が掲げられており、こう書かれている


『Club Cinderella』

「いらいっしゃいませ」

慇懃に頭を下げる女性は、俺の良く知る女性だ

「いらっしゃいました……何してるんですか? ちひろさん」

いつぞやの黄緑色のドレスを着たちひろさんが俺を出迎える

「ここは疲れたお客様を労う場所……まぁ、ちょっとしたお遊びですよ♪」

お遊びにしては金がかかってる気がするんですけどね

「ほら、とにかく座ってください」

黒塗りのソファに促され、腰を下ろす

「それでは少々お待ちくださいませ」

俺に何の説明もないまま、ちひろさんが去っていく

手持無沙汰な俺は、店内を見渡してみる

ボックス席が何セットかあるようだ、それにしても煌びやかな店内だな

豪華なシャンデリアと綺麗なテーブル、それにソファの座り心地が安物ではないことを教えてくれる

しばらくすると、これまた見知った女性がこちらへやって来た

「かえでです、初めまして」

「何してるんですか? 楓さん」

今日二回目の質問

それに楓さんは笑って返事をする

「私は『かえで』です」

「はぁ……そうですか」

これも遊びの一つなんだろうか? 

「お飲み物はどうなさいますか?」

アルコールとソフトドリンクどちらもあるとのことだ

今日の仕事はもう終わりだが、流石にアルコールはまずいだろう

「コーラで」

「……お飲み物はどうなさいますか?」

「コー……」

「お飲み物はどうなさいますか?」

「ハイボールにしようかな」

俺が折れる形になった

「心を込めて作りますね♪」

今日も笑顔が眩しいなぁ……

持ってきたのは白州の18年……18年!? また高い酒持ってきたな

こんな酒プライベートでも買うことはない、せめて12年くらいだ

こんなものを店で飲んだらと思うとぞっとする

「良いお酒ですねよね、豪華なハイボールです」

楓……かえでさんが手慣れた手つきでハイボールを作っていく

ウィスキーをきちんと計り、丁寧にステアしている

綺麗な指が流れるように動き、少しどきりとした

持ってきたのは白州の18年……18年!? また高い酒持ってきたな

こんな酒プライベートでも買うことはない、せめて12年くらいだ

こんなものを店で飲んだらと思うとぞっとする

「良いお酒ですよね、豪華なハイボールです」

楓……かえでさんが手慣れた手つきでハイボールを作っていく

ウィスキーをきちんと計り、丁寧にステアしている

綺麗な指が流れるように動き、少しどきりとした

「はい、完成でーす♪」

俺の前にグラスが置かれた

「ありがとうございます」

「どういたしまして」

にこにこと楓さんが答える

自分が作ったハイボールを見つめながら、とても優しい笑みで

「かえでさんは……」

「はくしゅん! はくしゅっ……はくしゅう……」

「……かえでさんもどうぞ」

「まぁ、ありがとうございます♪」

二つのグラスが揃い、乾杯となった

「「乾杯」」

声が重なり、グラスがかちりと音を鳴らす

ハイボールを一口頂いてわかったが、べらぼうに旨い

若い時は濃いめで頼んでいたが、歳をとって適度な濃さがあるのに気付いた

これはその点ばっちりだ、酒の美味さが相まって何杯でも飲めてしまいそうだ

「ふぅ、おいしい……」

ほうっとかえでさんが吐息を吐く

こんなに美味そうに飲んでくれるなら、酒も喜ぶだろう

「少し、寒いです……もう少しそちらに寄っても良いですか?」

かえでさんのとうとつな言葉に

「ええ、どうぞ」

声を上ずらせながら、返事をした

「それでは失礼します」

少しの衣擦れの音とともに、かえでさんがぴたりと俺の横につく

……とても良い匂いがする

それに、その洋服と言うかドレス? 丈が短くないですか?

「えっちさんですね、めっですよ♪」

視線に気づいたのか、俺の顔を覗き込むかえでさん

「す、すみません!」

ぱっと視線をずらすが、頭の中では白くて柔らかそうな太腿が離れない

ごめんなさい、寝ます
続きは明日の午前中には書きます
それではおやすみなさい

乙ー

煩悩退散! とグラスを一気に煽る

「まぁ♪ 良い飲みっぷりですね」

手をぱちぱちと叩きながら、かえでさんは上機嫌のようだ

「おかわり作りますね」

グラスを無言で差し出すと、少しだけ彼女の手と触れる

「すみません……」

「いいえ、お気になさらず」

俺だけどきまぎして、かえでさんは随分と余裕がある

「次はロックでお願いします」

こうなりゃ飲もう、とことん飲もう

「今日はお仕事だったんですか?」

ロックグラスに氷を入れながらかえでさんが聞いてくる

「そうです、今日もありがたいことに忙しくてね」

多方面にわたり、うちのアイドルたちは頑張ってくれている

嬉しい悲鳴というやつだ

でも、何事も上手くいくわけではなく、裏方は頭を下げることも少なくない

「頑張ってらっしゃるんですね、でも……無理はしないでください」

どうぞ、とグラスを渡され、琥珀色のグラスを傾ける

何杯目か忘れてしまったころ、俺はもうほろ酔いを通りこして出来上がっていた

「ふざけんな、あのディレクターやらしい目でうちの子たち見やがって」

もう、抑制が効かなくなっている

「知ってますか? この前の俳優のこと、あいつこの前俺に何て言ってきたか」

「うーん……わかりませんね」

グラスを傾けながらかえでさんが答える

「高垣さんと飲みたいからセッティングしてくれませんか? だってさ」

ちょっと自分が売れてるからって調子に乗ってるんじゃねぇ

「へぇ、貴方は何て答えたんですか?」

「ふざけんな、一昨日きやがれ! って言ってやりましたよ」

……本当はそう言いたかった。けれど、へーこら頭を下げて丁寧にお断りするしかなかった

金と力があれば大抵のことは何とかなる、良い世の中だよ本当に

くそったれしかいねーんだからよ

「その……高垣さんはオッケーを出すかもしれませんよ?」

かえでさんが挑発的な視線で俺を射抜く

「楓さんが? ないない! あの人とあんな奴じゃ似合わねぇし、俺が許さねぇ」

「ふふふ、随分と高垣さんを気にかけてるんですね」

かえでさんが嬉しそうにほほ笑む

「そりゃあね! 俺は、楓さんが……」

楓さんがなんだ? 俺は何を言いかけたのだろう

「……同じものを」

言いかけた言葉とともに、残ったウィスキーを呷った

頭がふらふらする

きっともう呂律も回っていない、と思う

「大丈夫ですか?」

かえでさんが心配してくれている、俺だせぇ

「大丈夫、そろそろ帰ります」

俺がそう言うと、かえでさんがそっと手を重ねてくる

すべすべでしっとりしてる、触り心地が良い

「貴方の想いはきっと届いています」

かえでさんが続ける

「貴方の頑張る姿をきっと見ています」

気付けば、目の前にかえでさんの顔がある

青と緑の綺麗な瞳が、すぐ目の前に

「だから、貴方の行いは間違ってません」

かえでさんの瞳に吸い込まれそうだ

そして、最後に耳元でこう囁かれた

「またいらしてください、私はいつでも貴方を待っていますよ」

手を振るかえでさんにお別れをしていると、ちひろさんが声をかけてきた

「いかがでしたか? たまにはこういうのも良いでしょう」

「そう、ですね……たまには」

たまにはなんて言っているが、とても楽しい時間を満喫できた

公式にアイドルを酒が飲めるってすごくね? さすが千川ちひろだ

「それではこちらが今日のお会計です」

ウィンクと共に渡されたものを見て、一気に酔いがさめる

「カードも使えますので♪」

まぁ、楽しかったし……良いか



おしまい

読んでくれた方に感謝を
続きは夕方過ぎになりそうです
それではまたー

ちっひはぼったくりが似合うな

こんばんは、それでは再開します
>>473の楓さんどうぞー

男装の麗人

フナムシ

戦闘機パイロット

フナムシでどうしろと

>>474
>>473だぞよく見ろ

戦闘機パイロットな楓さんですか
ちょっと書いてみます

目の前で花火が上がっている

赤くて、盛大な花火が

私はそれをただ眺めることしかできなかった

ごめんなさい、ごめんなさいって心の中で謝りながら

貴方のおかげで……ううん、これ以上は言っちゃ駄目ですね

そして

赤い花火は黒い煙を漂わせながら、落下した

目が、覚めた

「……」

あれから同じ夢を何回も見る

そうすると、決まって目が覚めてしまう

時計を確認すると、まだ深夜といったところ

寝汗で気持ち悪いので、シャワーを浴びて眠りなおすことにした

二回も起こすのは止めてくださいね? そう、誰にともなく言ってから

アラームで起きてから、朝の準備をする

悪夢で起こされなかったことに、ほっと胸を撫でおろす

それから……と、忘れ物をしてしまった

少しくすんでしまったリボンを腕に巻き、格納庫へ向かう

足取りはとても重い

憂鬱ではあるが、重い足を引きずって無理やりに自分を鼓舞する

「おはよう、美世ちゃん」

忙しそうに動き回っている同僚に挨拶をする

「楓さん、おはようございます!」

この子はいつも元気で、私もそれを少し分けてもらっている

「調子はどう?」

美世ちゃんは隣に佇む戦闘機を見ながら

「良い感じですよっ!ただそろそろパーツがなくなってきていて……」

そっか、こちらも遅かれ早かれってところなのね

これ以上邪魔をすると悪いと思い、格納庫を後にする

なんとなく向かった先は、町……だったところ

建物はボロボロで、何とか建物の形を保っているだけ

道路もアスファルトが割れてしまっていて、舗装していない所を走るほうが早い

ここも、もう駄目かもしれない

そう独り言ちて、ポケットの中のくしゃくしゃの煙草に火を付けた

「けほっ……」

相変わらず慣れないな、いつまでたっても美味しくなんて感じない

あの人は美味しそうに吸っていたけれど、今でも理解できない

……まぁ、そんなもんですよね

ああ、お酒飲みたいな

大吟醸とは言わないから、せめて純米酒

今はそんなものどこに行っても手に入らないけど

私は煙草の煙を肺まで大きく吸い込んで

「けほ……」

また、むせた

遠くの空から、こちらに何かが近づいてくる

そう気づいた時には、轟音と共に上空を通過して行った

感傷に浸る時間もくれないのね

何て皮肉を言って、格納庫へと走り出す

そう、感傷に浸ってたって生きていけないしお腹が減るのだ

死んじゃったら自分がそれをされる側

今日も今日とてあがいてみましょうか

「美世ちゃん、出るわ」

「はい! あの……お気をつけて」

私の手を握り、悲しそうな顔で美世ちゃんが言う

「もちろん。死ぬんなら地上のほうがいいわ」

笑顔でそう答えて、私は戦闘機へと乗り込む

さぁ、今日も私を生かして返してくださいね?

返事をしない鉄のお友達に、小さくお願いをした

さっきの相手は……いた

こちらに発見されたのに、気にせず飛行している

今のうちなら、と思い、照準を合わせて攻撃を仕掛ける

すると、こっちの攻撃を予感したのか、敵機が旋回して一気にスピードを上げた

こちらも追いかけるようにスピードを上げる

……なかなか照準を絞らせてくれない

焦る。長引けばこちらは不利だ

「ん……?」

ここで少しの違和感を覚える

敵機の切り返すタイミングにリズムがある

「これは……そうですか、貴女も生きていたんですね」

青いイメージの私の後輩とこんな所で再開するとは思わなかった

本来ならお互いが生きていることを喜び会う所だけど……

「ごめんなさい……私たちも必死なの」

明日を生きるためには墜とすしかない

次は……こっち

敵機の動くタイミングを見計らい、照準を合わせる

よし、今しかない

絶好のタイミングのはず。これなら

けれど、相手は無茶苦茶な回避行動をとってきた

攻撃が外れて、こんどはこちらが窮地に陥る

はぁ……もう駄目みたい

もう回避行動はとれない、私はここでおしまい

そっと目を閉じる

そして、暗闇の中に花火が上がる

赤い花火……私のせいでいなくなったあの子の機体が燃えている

駄目だ、まだ顔向けは出来ない

かっと目を開き、思いっきり高度を下げた

地面に突き刺さるくらい限界までミサイルとの追いかけっこ

まだ、まだ……そして限界で水平飛行に無理やり戻す

体に物凄い負担がかかり、意識が飛びそうになるが耐える

……どうやら最後のあがきは成功したみたい

気付くと敵機はすでに去っている

「ふぅ……」

息を吐くと、心臓が痛いくらいに鼓動しているのに気付く
今日も生きることができた

「はぁ、お酒飲みたいな」

くいっとお猪口を呷る真似をして

ちょっとの虚しさと、生きている実感を飲みこんだ




おしまい

読んでくれた方に感謝を
今日はおしまいにします

続きは明日にでもー

おつ

それでは再開します
雪のせいで外が静かで、少し明るい……

では>>494の楓さんどうぞー

感衣地

男装麗人

レーサー

男装麗人な楓さんですか
ちょっと書いてみます

最近、楓さんの雰囲気が少し変わった気がする

「今日も仕事を頑張ろうじゃないか、はっはっは」

いや、少しじゃない……とても変わってしまった

「プロデューサー、思い詰めた顔をしてどうしたんだ?」

「い、いえ……なんでもないです」

俺の肩を叩きながら、イケメン風な笑顔で俺に言う楓さん

歯がきらりと輝いてるぜ、ちくしょう

俺の中の楓さんはダジャレ好きの、綺麗な女性というイメージだった

後、付け加えるなら、自分を特別扱いするのを嫌うと言うか……

ともかく、女性らしさがある人だったんだが

「おいおい、そんなんじゃうちのアイドルたちが困っちまうぜ」

こんな男言葉を使う人ではなかったはずだ

いったい彼女を何が変えてしまったのか……

今日の恰好もそうだ

いつもならスカートなどの女性的な恰好を好むはず

なのに、最近の恰好はパンツルックを好んでいる

黒のスキニーパンツにシャツとジレ、タイこそ結んでいないがイタリアの伊達男のようなファッション

高身長なのでとても似合っているのだが、俺からすると少し寂しい

こう……脚、いや違う、太腿、いや……違くないか

「私の顔に何かついているのかい?」

髪をアップにした楓さんが、不思議そうに俺の顔を覗き込んだ

「い、いえ……ちひろさん、ちょっと営業に行ってきますので」

同僚のちひろさんにそう言い残し、俺は事務所を足早に去った

「あっ……」

その言葉は楓さんかちひろさんかはわからない

けれど、これ以上事務所にいたくないと思ったのだ

外に出たは良いものの、営業なんてするつもりもないし

俺は適当な喫茶店に逃げ込むことにした

からんと鈴がなって、マスターが出迎えてくれる

好きな席で良いとのことなので、日が当たる窓際を選ぶ

すると、見知った顔が静かにコーヒーを飲んでいた

「おや、プロデューサーもコーヒーブレイクか?」

「まぁそんなところです」

木場さんがカップを傾ける様は、とても絵になっている

何を頼もうか、メニューを広げてみると、コーヒー豆の種類が多くてわからない

「私と同じものでよければ飲むかい?」

木場さんが助け舟を出してくれたので、頷く

しばらくするとコーヒーが運ばれてくる

きちんと焙煎して、丁寧に入れているであろうそのコーヒーはとても匂いが良い

「美味いですね」

豆の種類はよくわからないが、美味いということはわかった

「ふむ、何かあったと見える」

ぎくりとした

「営業中にさぼってるだけです、特になにも」

そう言いながらカップを傾ける

「果たしてそうかな? 顔に書いてあるよ、楓さんが変わったことに困っていると」

にやりと木場さんが悪戯っぽい笑みを浮かべる

で、どうなんだ? と聞いてくる木場さんに、俺は打ち明けることにした

「ふぅん、楓さんが変わってしまったと」

「ええ、まるでがらりと変わってしまいました」

それはもう対極のように

「なるほど、それで君は楓さんを嫌いになってしまったのか?」

俺は首を横に振る

「そんなことはないです。ただ、違和感が凄いと言うか……」

嫌いうんぬんの前に、あれだけ変わってしまうと話しづらいと言うかなんというか……

「ちゃんと話してみたのか? 何故変わってしまったのか」

俺はまた首を横に振る

「いえ、それはまだ……」

そして、木場さんはカップを傾けると、ふぅと息を吐いた

「わかならいなら聞けば良いじゃないか。イメージがどうのとかアプローチはあるだろう」

「それにだ、あの人は君の担当だろう? 逃げ腰でどうする」

「ちゃんと話してみたのか? 何故変わってしまったのか」

俺はまた首を横に振る

「いえ、それはまだ……」

そして、木場さんはカップを傾けると、ふぅと息を吐いた

「わからないなら聞けば良いじゃないか。イメージがどうのとかアプローチはあるだろう」

「それにだ、あの人は君の担当だろう? 逃げ腰でどうする」

「君は一人の女の面倒も見れないのか?」

そう言って、挑発的な視線を送る木場さん

いや、これは木場さんなりの叱咤なのだろう

「そう、ですね」

言われて気付いた、俺が楓さんから逃げていることを

滑稽な話だ、一人の女に振り回されてどうする

「私からはもう何も言う事はない。それとも、夜まで慰めてあげようか?」

それはとても魅力的な話だが、首を横に振る

「じゃあ行くんだ、ここは私が持っておく」

ひらひらと手を振る木場さんに軽く会釈をした

「やれやれ、手のかかる男だな……本当に」

誰かの呟きが聞こえた気がする

けれど、今の俺はあの人に会って話をしなければならない

とにかく急ごうと思って走る、息がすぐに上がるが気にしない

「楓さん!」

事務所のドアを開くが楓さんの姿は見当たらない

「楓さんなら屋上に行くって言っていましたよ」

「ありがとうございます」

ちひろさんに教えてもらった屋上へとまた走る

冬だと言うのに、ワイシャツが汗で濡れる

階段を上って、屋上のドアを開いた

「きゃっ……プロデューサー?」

勢いあまって凄い音がしてしまった

「か、楓さん、話があります」

ぜぇぜぇと荒い呼吸をしながら話を切り出す

恰好悪いかもしれないが、そんな姿は前から見せている

すぅはぁと深呼吸

……よし、少しは呼吸が落ち着いた

「何故、楓さんは変わってしまったんです?」

「それは……」

しばし沈黙

二人の間に風がひゅうっと吹くと、楓さんがゆっくりと口を開いた

「イメージチェンジだよ、私もそろそろ違うキャラで行こうかなと」

視線を逸らしながら、楓さんが言う

「嘘ですよね? ようやく気付きましたよ」

楓さんの体がびくりと震えた

それは気付いてほしくなかったのか、それともきづいてほしかったのか、どちらの反応かはわからない

「楓さん、貴女……」

「言わないでください」

それは拒絶の言葉だった

けれど、俺はもう引かないことにしたんだ

「好きな人ができたんですね? それで自分を変えようと……」

「……えっ?」

あれ? 思ってたリアクションと違う

「えっ? だって女の人が急にイメージ変えるのってそれくらいしか」

まさかの不正解である

ドヤ顔で言い切ってしまった俺はどう取り繕えば良いのか

「……はぁ」

そこで深いため息のとどめが来た

「す、すみません! 俺とち狂った事を言ってしまいました」

ここは素直に謝ろうと、頭を下げた

楓さんの足音が聞こえる

このまま俺を通り過ぎて行ってしまうのだろうか

しかし、俺の考えとは裏腹に、楓さんは俺の目の前で止まった

「プロデューサー」

「は、はい……」

まさかビンタか? ビンタされちゃうのか!?

びくびくと返事をすると

「顔を上げてください」

ゆっくりと顔を上げると、そこには困ったような笑顔の楓さんがいた

「てっきり怒られると思いました」

「んー……プロデューサーの答えは遠からずってところでした」

マジかぁ、やっぱり当たってたんじゃん

「木場さんやあいちゃん、それに飛鳥ちゃん、クールで人が好みなのかなと」

ははぁ、うちの事務所関係の奴か

「それで男装も?」

「だって、ちひろさんが……」

頬をぷくりと膨らませて、楓さんが続ける

「でも、反応が悪いですし、あの目は私にドン引きしてる目でした……」

今度はよよよと泣きまねを見せる

「ちなみにどんな奴ですか? 知り合いならそれとなく聞きだしますよ」

そうすると楓さんの目が輝いたのを見逃さなかった

「では、それはひとまず置いておいて、プロデューサーの好みを教えてください」

「俺の好み……ですか」

正直なところ、女性はこうあってほしいと言うのはない

好きになった人が好み、というのはずるい答えなのかな

「もう……それじゃわからないじゃないですか」

またまた頬を膨らませる楓さん

「次に聞くまでに答えを出しておいてください、私頑張っちゃいますから」

楓さんはそう言うと、屋上から去って行った

「今日は風が強いですから、風邪をひかないようにしてくださいね」

と、楽しそうに言いながら

「はぁ……」

結局楓さんの本心はわからなかった

けれど、次ぎあう時には元に戻っている、そんな確信があった

さて、風邪をひかないうちに温かい所でほっとするとするか



おしまい

読んでくれた方に感謝を
今日はこれでおしまいです
明日も多分書けると思います

おつ
屹度>>471君も満足して呉れるだらう



いいやつだったよ…

今度は男装じゃなくて生えてきてしまったのが見たいから頑張るか

こんばんは、それでは再開します
では>>525の楓さんどうぞー

高校生

ファッションビッチ

ファッションビッチというのは処女ビッチみたいなものだと思ってください

ファッションビッチな楓さんですか
ちょっと書いてみます

「ねぇ、プロデューサー?」

すすっと近づいてくる楓さん

「今日の私のファッションどうですか?」

白と黒のモノトーンでまとめた、大人っぽい恰好だけれど

その……スカートが短くないですか?

黒タイツははいているが、どうもこの攻めすぎているような気がする

「ふふっ、どこ見てるんですか?」

くすくすと笑い楓さんの手がスカートにかかる

「私のスカートが気になりますか?」

悪戯っぽい笑みを浮かべつつ

「そういえば暖房が効きすぎている気もしますよね……」

「ちょっと暑いから、まくっちゃおうかしら」

すすす、とゆっくりとスカートが……

「駄目! それ以上は駄目です楓さん」

見せられないよ! な状況になりそうなところを美嘉が止めてくれた

何故だか顔が真っ赤だ

「残念、すかっとすると思ったのに……」

ぺろりと舌をだして、おどけてみせる楓さん

その顔は挑発的だった


それからは硬直状態が続いていた

にこにこと笑う楓さんと、むすっとした顔の美嘉がばちばちと火花を散らしている

「どうしたの? 美嘉ちゃんは笑顔のほうが可愛いわよ?」

すっと楓さんの指が、美嘉の頬を撫でる

「な、ななな何してるんですか?」

どもりながら、美嘉があたふたとしている

「若いって素晴らしいわ、こんなにお肌がすべすべしてる」

美嘉の頬を撫でる指は、まるで別の生き物のように、魅惑的な動き

「ひゃっ! プ、プロデューサー助けて……」

涙目でこちらに助けを乞う美嘉

うーん、美女通しの絡みも悪くはないが

そろそろ助け舟を出してあげるか

うちの純情カリスマギャルには荷が重い

「楓さん、そろそろ止めてあげてください」

うらやまけしからん、俺も混ぜてください

……おっと、いけない

「うふふ、プロデューサーも混ざって良いんですよ?」

さっきより美嘉に密着した楓さんが、魅力的な提案をしてきた

「今日は美嘉を触って良いのか!?」

「駄目にきまってんでしょ!!」

なんだよ、ノリ悪いなぁ

「ちょっとくらい良いんじゃない?」

「いやです! そんな簡単に男の人に肌を……」

最後のほうはごにょごにょしてて聞こえなかった

「そう、残念……」

美嘉にそう言った楓さんは、俺の方に振り向き

「じゃあ、私のほっぺを触ってみますか?」

これはどっちに転んでも美味しい奴だ!

「フ、フヒ……良いんですか?」

やべ、なんか変な声出た

「うわ……プロデューサーキモイ」

おいやめろ、そんなゴミを見るような眼で俺を見るな

「ええ、どうぞ」

そうして、楓さんが俺の方にすっと近づく

「優しく……お願いしますね?」

瞳を潤ませ、上目遣いで俺を見る楓さん

こうかは ばつぐんだ!!

「じゃあ、触りますよ?」

生唾をごくりと飲みこみ、ゆっくりと楓さんの頬に触れる

「んっ」

目をきゅっと瞑った楓さんが、艶めかしい声をあげた

「ど、どうですか……?」

心なしか、声が震えているような気がするが気のせいだろうか

「ぷにぷにしてて、すべすべしています」

指に吸い付くような感触が心地いい

……おいやめろ美嘉、そんなジト目で見るな

「うふふ、良かった」

目を開けた楓さんがほほ笑む

その顔は少しの不安と、そして安堵を浮かべている

「ずっと触っていたいですね……」

自然と口が動く、それほど魅力的な触り心地なのだ

「貴方がそうしていたいなら……良いですよ」

その時、ちらりと楓さんが美嘉に視線を送ったのを見逃さなかった

「ちょっと待って! ……楓さんばっかりずるい」

美嘉が声を荒げる

「あら、さっき美嘉ちゃんが嫌がっていたから」

それを笑顔で迎える楓さん、余裕が感じられる

けれど、楓さんの体はふるふると震えている

寒くはないと思うだが、何故だろう

「と、とにかく! 一人だけは駄目、皆に平等に!」

こいつさらっと爆弾発言してるけど大丈夫か?

「ほ、ほら! アタシのほっぺも触らせてあげる」

楓さんの肌を堪能していた俺の指を、美嘉が強引に引っ張り

「……優しくしないと怒るからね」

ゆっくりと自分の頬に置いた

「ど、どーよ? カリスマギャルのほっぺ」

強がった言葉を使っているが、声が震えている

「うん、すべすべでもちもち」

楓さんの肌より弾力があるような気がする

なんかこう……突いて楽しんでいたい、そんな感じだ

「こ、今回だけだからねっ? ほんとはこんな簡単に肌を……」

またごにょごにょしてて聞こえない

うーん、しかし甲乙つけがたい

吸い付くような肌の楓さんの頬

そして、弾力ある美嘉の頬

これはどうしたものか……

「ね、ねぇ? ちょっと触り方が……え、えっちじゃない?」

これは堪能するためなんだ、ちかたないね

「むぅ……私もかまってください」

可愛らしく頬を膨らませ、楓さんがずずいっと顔を近づける

「ほら、片手が開いてるじゃないですか」

そう言って、俺の肩手を握り、自分の頬に押し付けた

「プロデューサーの手、おっきいんですね……」

すぺすぺな手が俺の手に重なり、うっとりとした顔をする楓さん

「むぅ……私もかまってください」

可愛らしく頬を膨らませ、楓さんがずずいっと顔を近づける

「ほら、片手が空いてるじゃないですか」

そう言って、俺の肩手を握り、自分の頬に押し付けた

「プロデューサーの手、おっきいんですね……」

すぺすぺな手が俺の手に重なり、うっとりとした顔をする楓さん

片方に楓さん、そして美嘉

両手からは幸せな手触りが伝わってくる

心地よさ過ぎて、手の神経が焼ききれてしまうかもしれない

「フ、フヒ……」

「うわ、キモイ」

「ほら、もっと触ってください」

二人、極端なリアクションを頂いた

けれど、二人とも頬を赤く染めて、どこか気持ちよさそうだ

「きゃあ、手が滑っちゃいましたー」

素晴らしい棒読みで楓さんが俺にタックルをかます

バランスを崩した俺は二人を巻き込み、ソファへと倒れた

二人の体が俺の腕の中にすっぽりと収まる

「あったかいですね、ふふっ」

楓さん、さっき暑いって言ってませんでしたっけ?

美嘉はどうしたのかと思い、視線を向けてみる

「むーりぃ……」

森久保みたいな声を出して、目をぐるぐるとさせていた

「美嘉ちゃん脱落ですね」

笑って余裕をかましていますが、楓さんの体が震えているのに気付く

「ほら、両手で触ってください」

がしりと俺の手を捕まえて、強引に引き寄せられる

「楓さん、そろそろ止めにしませんか?」

鈍感な俺でも流石に気付く

楓さんが望んでやっていないことを

「まだまだこれからですよ?」

そう言って、俺に体を預けてきた

「ふふっ、こうやって誰かに体を預けられるのって良いですね」

良い匂いと、楓さんの視線で頭がくらくらする

「楓さん、これ以上は冗談で済ませられないですよ」

「冗談でこんなことしません」

その眼は冗談ではないことを伺わせる

「楓さん……」

そして、俺は自分の愚かさを再確認させられる

そっと抱いた楓さんの体は折れそうに細く、やはり震えていた

優しく楓さんを突き放し、俺は自分の頬を力いっぱいはたく

ばちんと乾いた音が事務所に響き、楓さんが目を白黒させている

「ど、どうしたんですか?」

俺はひりひりと痛む頬を抑え、言う

「こんなことしても空しいだけです」

俺の言葉を理解したのだろう、楓さんが力なく俯いた

「ごめんなさい……ごめんなさい、プロデューサー」

鳴き声が混じりながら、楓さんが続ける

「何があったかは聞きません。でも、こんなことしちゃ駄目です」

これは据え膳だったのかなぁ……勿体ないことしたかなぁ

頭が邪な考えをしていたので、今度は全力グーパンでもしようかと自分を脅す

「貴女はとても魅力的です、でも今の貴女は楓さんじゃない」

そう、俺が好きなアイドル高垣楓はこんなことはしない

「嫌いに……なったりしませんか?」

「こんなことで嫌いになるほど、短い付き合いじゃありません」

「……では、普段の私なら良いってことですか?」

「はい、普段通りの楓さんはとても魅力的です」

いつも綺麗でダジャレが好きな、目を引き付ける女性

「じゃあ、今度は普段通りの私でいきます♪」

「は……えっ?」

まさかのウソ泣きだった、女は怖いなぁ

「なるほど、いつも通りじゃ駄目かと思いましたが」

うんうんと、一人で納得してりる楓さん

「こうして本音も聞けましたし、良しとしましょう」

あっけにとられた俺は、ただそれを見ていることしかできない

「美嘉ちゃんのことは任せましたよ♪」

上機嫌に言う楓さん、笑顔が眩しい

「じゃあ私はこれで……あ、伝え忘れました」

ぐいっとこちらに体を乗り出し、にこりと笑う

「泣いたのは嘘でしたけど、さっきの行為は嘘の気持ちはありませんよ」

俺の唇に人差し指を押し当ててから、軽快に楓さんは事務所を出て行った



おしまい

読んでくれた方に感謝を
今日はこれでおしまいです
明日も多分書けると思います

おつ

こんばんは、それでは再開します
では>>558の楓さんどうぞー

佃煮

猟師

ドラゴン

レーサー

ふたなり

愛人ろ

ドラゴンな楓さんですか
ちょっと書いてみます

「か、楓さん? その黄色いタイツはどうしたんですか?」

某中国の人を思わせる黄色いタイツに身を包んだ楓さんが佇んでいる

「ドラゴンです」

「はぁ……燃えよドラゴンですか?」

正解だったのだろう、楓さんは笑顔で返した

「どんしんく、ふぃーる♪」

似合わなくもないけれど……ちょっとボディラインが出て目に毒です

「か、楓さん? そのちょっと麻雀牌はどうしたんですか?」

「ちょっと待っててくださいね」

せわしくなく卓の準備をしてから、シガレットチョコを手に挟み

「あンた、背中が煤けてるぜ」

「……あー! 哭きの龍ですね」

また正解だったようだ、楓さんが笑顔でポンをした

「か、楓さん? その手に持っている剣は?」

「ちょっと待っててくださいね」

なにやら箱から取り出して、位置の調整をしている

よしっと声をかけた楓さんが笛と剣が合体したような武器を口にあてた

そして流れる軽快なメロディー

「がおー♪」

楓さんがおもちゃを動かし始めた

「わかった! ドラゴンレンジャーですね」

「~♪」

楓さんが笛の音色で返事をした

「か、楓さん? そのオレンジの服はって、もうわかりましたよ」

「ちょっと待って……え?」

だって胸の所に悟って書いてあるし、そのオレンジの服は間違いようがない

「ド○ゴンボールですね」

「え、あ……はい」

しばし沈黙……のち、楓さんがヘアスプレーで髪を逆立てながら、大きな声で叫ぶ

「幸子ちゃんのことかー」

え、いや……あの、すみませんでした

「か、楓さん? その着ぐるみはどうしたんですか?」

目の前には可愛らしいドラゴンの着ぐるみの楓さんが正座している

「もう、ネタ切れです」

「そうですか……」

ちょこんと座っている楓さんの顔は悲しそうだ

「鈴帆ちゃんに借りたんです」

「そうですか……」

どうしよう、何て声掛けたら良いかわからない

「あ……最後に一つだけいいですか?」

「え、ええ……」

いそいそと分厚いマットを用意してきた楓さん

「では、行きます!」

そういうと、楓さんの目つきが変わる

後ろに回られたかと思うと、脇から手をまわされ、首の後ろでクラッチされる

「こいつぁまさか……」

「え~い♪」

可愛らしい掛け声とは裏腹に俺の首と体に物凄い衝撃が襲う

「ドラゴン……スープレックス……」

「はい♪ ドラゴンなだけに」

可愛いなちくしょう……

嬉しそうな楓さんの声を聞きながら、俺は意識を手放した




おしまい


楓ドラゴンかわいい!

読んでくれた方に感謝を
ネタ切れです! ごめんなさい
ついでにもう一つ書きます、途中で寝るかもしれないのでご容赦を
では>>571の楓さんどうぞー

オフの日が雨

新妻

オフの日が雨な楓さんですか
ちょっと書いてみます

「……んん」

今何時かしら

アラームをセットしたのは覚えていますが、鳴ったのかは覚えていません

スマートフォンを手に取り、確認すると、午前10時

……寝すぎちゃった

幸いなことに今日はオフですし構いません


けれど、どうも頭が重い気がします

カーテンを開けた窓から見える空はどうにもよく無い様子

「一雨きますかね……」

不機嫌そうな空模様で、私の気持ちもどうも落ち込みがち

……お家でゆっくりするのも良いですけれど

せっかくのお休みなのでどこかにお出かけしたいです

そうだ、藍子ちゃんに教えてもらったカフェにでも行ってみましょうか

そうと決まれば、善は急げ

顔を洗って歯を磨いて、洋服をどうするか迷います

うーん……ワイドパンツにタートルネックのニット、それにコートでいいですかね

外は寒いし、マフラーも巻いていきましょうか

よし、これで準備万端

あいにくな空模様ですが、お出かけすっかい♪

サイドゴアブーツに足を入れて、鍵の施錠の確認も終わり

腕時計を見てみると午前11時

歩いていたら時間つぶしにもなるし、昼食もカフェで一緒に取ってしまいましょう

ええと、あの深夜ドラマでやってた『腹が、減った……』ごっこもやってみよう

そうときまれば出発です

今日も色々な発見があればいいなぁ、と思いながら私はカフェへと向かいました

あ、これ素敵ですね

足を止めたのはブティックのウィンドウに飾れらたコート

光を反射するような上品な光沢が綺麗

カシミアかしら、とても温かそう

どうも寒い季節は洋服が気になってしまいますね

買っても少ないオフの日に着るくらいで、まだ出番を待っている洋服を数えると両手でも足りません

今回は保留しましょう、そう決めて歩いているとまた目に留まるものが

これは……サックス? あいちゃんがたまに吹いてくれるやつですよね

頭の中にサックスを吹くあいちゃんがイメージされる

……うん、あいちゃんは年下なのに私より大人っぽい気がします

私も何か楽器を習ってみようかしら?

今思うと縦笛やカスタネットしかできないことに気付きました

足を止めすぎたせいでしょうか、気付くと、カフェに到着する前に雨が降ってきてしまいました

それも、結構な雨足です

仕方なくお店の軒先で雨宿りとなったのですが、なかなかやみそうにありませんでした

「どうしましょう」

ぽつりと出た言葉

運が悪く傘も忘れてしまいましたし、走ってもカフェに着く前にずぶ濡れになってしまいそう

「はぁ……」

重いため息が自然とでました

手持無沙汰になってしまった私は、流れる人たちの観察をすることにしました

この町はたくさんの人がいて、皆さん忙しそうに歩いています

すると、何という偶然か見知った人がこちらへ向かってくるのが見えました

「プロデューサー?」

「高垣さん? どうしたんですか」

私に声をかけられたプロデューサーは目を丸くしてこちらを見ています

「お出かけの最中に雨に降られてしまって……」

経緯を説明すると、プロデューサーが傘を差しだしてきました

「何なら送っていきますよ、暇なんで」

その手に握られている傘は大きめで、これなら大人二人でも大丈夫そう

「それならお言葉に甘えさせて頂きます」

このままプロデューサーもカフェに連れいっちゃいましょう♪

一人も良いですが、二人でお喋りするのも楽しいですし

傘に入れてもらったお礼、という形にすればプロデューサーも快く応じてくれるはずです

「お邪魔します」

「せまいかもしれないですけど、どうぞ」

お互いが雨に濡れないように、肩が少しだけ触れあう距離

けれど、私のほうが中心にいるような気がします

ちらりと横を見てみると、プロデューサーの右肩は雨に濡れていました

私が濡れないように、傘を譲ってくれているのでしょうけれど

「風邪ひいちゃいますよ?」

ぐっとプロデューサーに寄り添って、傘をスライドさせる

「俺は別に……」

相変わらず嘘が下手ですね、目が泳いでいますよ?

「そういうことにしておきます♪」

照れくさそうに頭をかくプロデューサーの腕を引っ張って先導することにしました

「私のせいで濡れてしまったので、暖かいものでもご馳走しますから」

「……まぁ、たまにはいいか」

これは自然な流れでお誘い出来た気がします

雨の中を二人で歩きます

普段なら憂鬱なら雨でも、こういうのなら歓迎ですね

「高垣さん、ずいぶんご機嫌みたいですね」

「ええ、恵の雨ってやつです」

私の上機嫌が雨にうつったのか

雨粒たちが楽しそうにリズムを取っているかのように聞こえてきました

「プロデューサーは何かご予定があったんですか?」

「いえ、先ほど言ったように何も」

ふぅん、ということは一日空いてるってことですよね

「そうですか、私も今日はぶらぶらしようかなと思って」

カフェの後に居酒屋で一人飲みでもしようかと思いましたけど

こうなればとことん付き合ってもらいましょう♪

「高垣さんも予定がない時あるんですね」

これはどうとらえていいのかしら?

「一人で居酒屋はざらですよ?」

「ええっ? 本当に!?」

そんなに驚くことでしょうか

「プロデューサーは私のことを誤解しています」

私のことを知らなすぎる貴方には、私を知る機会が必要ですね

「という事で、今日はとことん付き合ってもらいます♪」

憂鬱な雨が素敵な出会いをもたらしてくれました

無計画で動くのも案外良いのかもしれません

「アイドルのケアも仕事のうちか……」

財布の中身を確認するプロデューサーに私は笑顔で語り掛けます

「お仕事なら担当の私がいないといけませんね♪」

これから雨が降っても私は憂鬱になりません

なぜなら、こんなに素敵な時間があるのを知ったのですから




おしまい

読んでくれた方に感謝を
今日はこれでおしまいです
続きは明日でしてー

乙です
素敵でした

再開します
では>>594の楓さんどうぞー

ksk

高校生

ふたなり

スーパーマン

ふたなりな楓さんですか
ちょっと書いてみます

朝、ちょっとした違和感で目が覚めました

「……」

お腹の下のほうが何だか変

それに、ベッドを押し上げるようにしているものはなんなのかしら

恐る恐るパジャマを捲って見てみると

「これは……」

今までついていなかったオマケがついています

……これは夢ね、うん、きっとそう

現実逃避をするように二度寝をすることにしました

起床を知らせるアラームで目を覚まします

「んーっ!」

体を起き上がらせ、伸びを一つ

「……ふぅ」

今日もすがすがしい朝ですね

すがすがしいんですが……やっぱりさっきのは夢じゃなかったみたい

私の下腹部についているオマケが消えることはありませんでした

これはどうしたらいいのかしら?

プロデューサーに言う? いえ、女としてどうかと思います

しばらく脳内会議を行って、出た答え

ちひろさんに相談してみましょう

女性ですし、フォローしてくれるはずです

なにはともあれ、朝の準備をして事務所へ向かいましょう

歩きづらい……

いつもの感覚で歩くとものすごい違和感

それに、その……なんかはみ出しちゃうような……やっぱり何でもないです

四苦八苦しながら、何とか電車に乗り込んだまでは良かったのですが

電車が揺られるたびに、女子高生に体が触れた瞬間です

今まで感じたこともない感覚に驚きの声が思わずもれました

口を手で塞ぐようにしましたが、遅かったです

ちらりとこちらを向いた女子高生が不思議そうな顔をしています

それをみた私はこう思っていました

……可愛い、それに良い匂いがする

あら? 何でこんなことを思っているのかしら

ただ電車が揺れて、体がぶつかっただけなのに

何度も女子高生に体がぶつかるたびに、私の中の知らない何かが反応しています

何だか下腹部がうずうずして、気付くとオマケがちょっと大きくなっていて

急いでハンドバッグで隠します

体の変化に続いて、心にも変化が表れていることに今頃になって恐怖を覚えました

頭の中でダジャレを考えて、変なことを考えないようにしますが、焼け石に水です

たった十分少しの乗車で、こんなに疲れたのは初めて……

私はへとへとな体で事務所の扉を開きます

ちひろさんは……いました

いつものジャケットとタイトなスカート、そして黒いタイツに包まれた脚……

改めて見ると、こう……そそられ……はっ!

「おはようございます楓さん、どうしたんですか?」

首をぷるぷると振る私を見て、首を傾げるちひろさん

「おはようございます、ええと……ストレッチ?」

苦しい言い訳です

私に起きている異変をちひろさんに包み隠さずに言わなければいけない

よくよく考えると恥ずかしすぎます……?

これってセクハラになっちゃうんじゃないですか?

……でも、やっぱり言わないと駄目……ですよね

「ちひろ……」

ようやく決意して、私が口を開くと凄い勢いでドアが開かれました

「にゃはー、楓さん発見」

そして志希ちゃんの声

彼女は私を見つけると、嬉しそうな声でこう言いました

「お薬は効いているみたいだね~、それで困っちゃってる感じかにゃ?」

お薬……? 私は薬なんて飲んでいな……あっ!

「まさか昨日の栄養剤?」

「ビンゴ! 栄養もちょっぴりあるけど、本当の効果はご覧あれってね」

犯人さんとばったり出会っちゃったみたいです……

「あの、何の話をしているんですか?」

蚊帳の外だったちひろさんが、志希ちゃんに声をかけた

「志希ちゃん特製、『性別反転薬』を楓さんに飲ませました、まるっ!」

花丸をあげたいくらいの笑顔ですけど、私的にはバッテンです

と言うか、今聞き捨てならない単語が聞こえましたけど……

ちひろさんも同じように思ったらしく、目を白黒とさせています

「その名の通り、性別を反転させるお薬。今回は失敗しちゃったみたい、にゃは♪」

丁寧な説明ありがとうございます

「今の楓さんは女性半分、男性半分って感じかな」

困りました、これから性別を聞かれたら何て答えればいいのでしょうか

「その……お薬の効果はいつまで続くの?」

私が恐る恐る志希ちゃんに聞きます

「ん~……これだけ」

志希ちゃんが人差し指をぴんと立たせました

「い、一日……?」

志希ちゃんはぷるぷると首を振りました

「一週間?」

またしても志希ちゃんは首を振りました

そして、目を細めてまるで猫のように

「正解は一ヶ月! いっぱい貴重な体験ができるよ、やったね♪」

一ヶ月……30日間として、時間に直したら720時間

私、アイドルやっていけるんでしょうか……?

ちひろさんはあまりに唐突な話についていけないみたいで、固まってしまいました

「ねぇねぇ楓さん、それで今どんな気分?」

いつの間にか目の前まで来ていた志希ちゃんが質問してきます

「特に変わったことはないかしら」

そう答えると、志希ちゃんが猫のように体を摺り寄せてきました

「ほんとかなー? ドキドキしたり、興奮しちゃったりしない?」

さっきより強く体を押し付けてくる志希ちゃん

柔らかな感触と、とても……良い匂い

「この汗は嘘をついている味だぜー!」

ぺろりと、志希ちゃんの舌が私の頬を舐めます

それがスイッチと言わんばかりに、気付くと私の体はとても熱くなっていました

「志希ちゃん? もうやめましょう」

この感情が何なのかわかりませんが、とても……怖い

このままだと、この感情に自分が支配されてしまいそうで……

「ふーん……やめちゃっていーんだ?」

あっさりと納得してくれた志希ちゃんが離れてくれました

「つまんないから、楓さん治すお薬でもつくろーっと」

本当につまらなそうにして、志希ちゃんが部屋を出ようとします

これで、早く治る……そう喜んでいいはずです。けれど……

「にゃは……カラダはしょーじきってやつ?」

私はいつの間にか志希ちゃんの袖を引っ張っていて

「あたしの部屋で二人で実験しちゃう?」

志希ちゃんの魅惑的な提案に、私は首を縦に振ってしまうのでした



おしまい

読んでくれた方に感謝を
今日はこれでおしまいです
明日は時間があったら書きますので

おつーの

ごめんなさい、今日は書けないです
明日は必ず

実験の内容が私気になります!

興味本位で覗いてバレた>>615が楓さんに逆ア○ルされるSSか…ニッチ過ぎるな

しきにゃんに挿入しつつ楓さんに掘られるとかすげえ興奮するわ

変態さんがいらっしゃってますね
それでは再開します
>>621の楓さんどうぞー

高校生

サイキッカー

実は密かにPと付き合っている

実は密かにPと付き合っている楓さんですか
ちょっと書いてみます

私は皆に嘘をついている

事務所の誰もしらない私の秘密

いいえ、私とプロデューサーの二人の秘密

本当は関係をもってはいけないはずなのに

お仕事だけの関係じゃなければいけないのに

でも、私はあの人を求めて

あの人は私を求めてくれた

私は……誰にも知られてはいけない、恋に落ちた

スマートフォンが震える

ライトの色からすると、lineかな

ロックを解除して確認してみると、あの人からのlineだった

『今夜九時、あの場所で』

短い文章だけど、ちょっと嬉しい

わかりました、と返事をした

ウィッグをつけて、眼鏡もかける

姿見の前でくるりと回って、チェック

うん……高垣楓とはばれないでしょう

あの場所、私とあの人の秘密の居酒屋さん

個室が用意されていて、他のお客さんの目にもつかない

本当なら、高垣楓として堂々と飲みに行きたいけれど

事情が事情だから、そこは我慢しないといけないですね

お家からタクシーであの場所へ向かう

周りを気にしないように、そして、こっそりとしない

私はただの一般人。そう演じる

しばらくして、あの場所へと到着した

久しぶりの二人で飲めると思うと、わくわくとした気持ちになる

扉を開くと、女性の店員に出迎えられた

いらっしゃいませ、と声は控えめで、落ち着いた接客

連れが来ていることを告げると、奥の個室へと案内された

純和風の造りになっていて、個室の入り口は襖になっている

逸る気持ちを抑えて、その襖をゆっくりと開けると、あの人が……いた

こちらに気付いたようで、笑顔でこちらに来るように催促される

「寒かったでしょう、熱燗にしますか?」

「良いですね、お酒の種類は任せます」

熱燗と肴を数品頼み、そろったところで静かに二人で乾杯をした

お銚子を三本ほど開けると、プロデューサーの表情が変わる

「楓さん、俺不安なんです」

この人はお酒が入ると、どうも気が小さくなってしまう

「いつか二人の関係がばれてしまうんじゃないかって……」

特にここ最近は、私との関係についてのことが多い気がする

確かに公にできる関係じゃないし、ばれたらきっと大変なことになってしまう

マスコミなんかに知られたら……と思うとぞっとする

けれど、だからと言って別れることなんてできない

「大丈夫、です。私と貴方が黙っていればばれませんよ」

私は彼を安心させるように、返事をした

…………
………
……んん、今何時?

ベッドに備え付けている時計を確認する

まだ時間に余裕はある、もうすこし寝ることができる

隣で眠る彼も、まだ夢の中みたい

……子供みたいな寝顔ね

つんっとおでこを突いて、彼に抱き着くようにして二度目の夢の中へ……



誰にも言えないけれど、幸せな時間が続くと思っていた

けれど、世間の目と、アイドルとしての私の立ち位置はとても危ういものだった

「楓さん、見てもらいたいものがあります」

「何でしょうか」

お仕事が終わり事務所へ戻ると、ちひろさんに手招きされた

「人に聞かれたくないので、こちらへ」

どうやら大事な話みたい

わたしは声を出さずに頷いた

後をついていくと、いつも使われていない会議室の前でちひろさんが足を止めた

「ここなら大丈夫です」

ちひろさんに続いて入室すると、ちひろさんが内側から鍵をかけた

そんなに聞かれたくない話なのかしら……?

「これに見覚えはありますか?」

ちひろさんが取り出したのは、数枚の写真

私はそれを見て絶句する

それは、私と彼の逢瀬の時の写真だった

「うそ……なんで……?」

あんなに気を付けていたはずなのに、どうして?

それに、変装していない私が映っているのは何故?

二人っきりの時以外はずっと変装していたのに……

「楓さんはこう思っているでしょう、一体何故と?」

そう言うちひろさんの顔は無表情だ

「これは、とある筋にお願いして手に入れたものです」

犯罪すれすれですけどね、と付け加えた

刑事ドラマならこの後ちひろさん刺されそう

夜ドラマなら黒幕は黒井

>>634
話聞かず思わず殺っちゃって、クライマックスでちひろさんは普通に祝福するつもりだった教えられるパターンかな?

「私も驚きました、まさか楓さんとうちのプロデューサーができているなんて」

一枚の写真を手に取って、一瞥してから私に向き合う

「私としては応援したいところです。けれど、社会とよそ様はそれを許してくれません」

なんで……秘密がばれた……どうしよう

「一度プロデューサーとお話をしてください」

私の肩をぽんと叩き、ちひろさんが会議室から去って行こうとする

「……待ってください」

私は何とか声を出して、ちひろさんを呼び止める

「はい、なんでしょうか?」

「……このことは他の誰かに言いましたか?」

しばらくすると、ちひろさんは笑顔でこう言った

「いいえ、今のところ私だけに留めています」

「……そう、ですか」

「ええ、私と楓さんの、二人だけの秘密ですね」

そう言い残して、私だけが会議室に取り残された

とうとうばれてしまった

私とプロデューサーとの秘密が

とりあず、プロデューサーとお話をしないといけない

私は震える手でスマートフォンを取り出して、電話をかける

何回かのコールの後、プロデューサーが電話に出てくれた

『今は事務所のはずですよね、何かありました?』

「あの……お話したいことがあります」

私の声色で何かを察したのか

『わかりました、今日は車で送っていくのでその時にでも』

「……よろしくお願いします」

怖い……彼にどう伝えたらいいのか、とにかく怖い



窓の外がオレンジから群青色に変わったころ

プロデューサーが事務所へともどってきた

「お疲れ様です。ああ、ちひろさん、楓さんを送っていきますので」

「ええ、安全運転でお願いしますね」

ちひろさんは何食わぬ顔でプロデューサーに返事をした

「それじゃ楓さん、行きましょうか」

「はい……お先に失礼します」

ちひろさんに挨拶をすると

「はい、お疲れ様でした」

ちひろさんは変わらぬ笑顔で私に返した

「それで、一体なにがあったんですか?」

車に乗り込んでからすぐに、プロデューサーがそう聞いてきた

「……ばれちゃいました」

何回か深呼吸してから、そう答える

私の声を聞いてから、プロデューサーの顔が青くなっていく

「まさか……俺たちの関係が?」

それに、無言で頷く

「嘘だろ……あんなに気を使ってたのに……」

プロデューサーが信じられないと言った風に俯く

車内の空気が酷く重く感じる

どろりとしていて、とても暗い

「……どうしたら、いいでしょうか?」

ちひろさんは話し合えと言った

二人で話し合って……でも、それからどうするの?

ばれてしまった以上、この関係を続けることは不可能に近い

けれど、けれど……この人と別れたくはない

好き、愛してる、何て言葉で片付けられないほど、この人の事を想っている

「……わかりました、俺が掛け合ってみます。だから、泣かないで」

気付けば私は泣いていたみたい

視界が涙でぼやけていて、笑っているはずの彼の顔がよく見えない

「お願いします……私、私は……貴方の事を」

「大丈夫、大丈夫だから」

私の肩を抱きしめる彼の体はとても温かくて

安心しきってしまった私は、涙が枯れるまで泣き続けた

「それじゃあ、おやすみ」

「はい、おやすみなさい」

随分と恥ずかしいところを見せてしまった

お家で目を冷やさないと……そんな事を考えながら車を降りようとすると

「楓さん」

「んっ……」

唇が触れるくらいの軽いキス

「今日はゆっくりと休んでください」

「わかりました、お気をつけて」

唇に残る感触を名残惜しみながら、彼の車を見送った

ちっひ……いい奴だったよ……

そして、翌日のこと

インタビューのお仕事が終わった後、プロデューサーに呼び出された

指定された場所は……昨日と同じ会議室

胸騒ぎがする、とても嫌な……

ドアを三回ノックすると、どうぞ、と返事があった

私は心臓の鼓動が早くなるのを感じながら入室した

椅子に掛けている彼の顔色はどうも優れない

ふぅ、と息を吐いてからプロデューサーは私と向き合った

「単刀直入に言うと、交換条件を出されましたよ」

「交換条件……?」

恐る恐る聞き返す

「ええ……今の関係を続けるなら俺はクビ、それが嫌なら……」

それが嫌なら、今の関係を破棄する……

そういうことですよね




「うちの事務所も大事にはしたくないみたいで、俺だけがクビなら別に構いません」

彼は苦笑いしながら言う

「……それは嫌です」

貴方と離れ離れにはなりたくない

お仕事に行くときも笑顔で送ってくれて、帰ってくるときも迎えて欲しい

他愛ないお話をして笑いあっていたい

貴方がいない事務所でのお仕事なんて、絶対に……嫌

「楓さん……」

「ほとぼりがさめて……今度は貴方と堂々とお付き合いできるように頑張ります、頑張りますから……」

今は……さようなら、私の愛したプロデューサー

私は涙声でお別れを言った

……涙がとまらない、私の中の水分がなくなっちゃうくらい

「楓さん」

彼に抱き寄せられた

「いや……いやぁ、顔……見ないでください」

こんな事されたらもっと辛くなってしまう


辛くなってしまうはずなのに、私は彼を求めてしまった

顔を上げて、キスをねだる

目を閉じると、彼の唇が触れる

ずっと貴方のぬくもりが……ずっと貴方の感触がのこるように

そんな長くて熱いキスが終わるころには、私の涙も止まっていた

「これからはプロデューサーと担当アイドルに戻るけど……また、戻れるように頑張りましょう」

プロデューサーの言葉に頷いて、私は笑顔で返事をした

プロデューサーがいなくなった会議室で気持ちの整理をする

今は我慢しなくちゃいけない

また、二人の関係を元通りにするために

そう……とにかくお仕事を頑張って、皆に認めてもらって

彼との時間を再開させられるために

……よし、今日は川島さんと早苗さんを誘って飲みにでもいきましょうか

二人の元気を少しでもわけてもらうことにしよう

頬を軽く叩いて、気持ちを整理し終えた私は事務所へと向かう

二人はまだお仕事中だから、ゆっくり待つとしましょう

事務所のドアを開けると、そこにはプロデューサーとちひろさんの二人だけ


そして、二人はまるで愛し合うかのように抱き合い、唇を重ねていた

さっきまで触れていた彼の唇がちひろさんの唇に触れている……

ちひろさんは閉じていた目をゆっくりと開け、私にほほ笑む

まるで私に見せつけるように、そして、私をあざ笑うかのように

……そうだ、何かおかしいと思っていた

あの写真もおかしいと思ったけれど、私が彼にばれたと伝えた後、誰にとは聞かれなかった

じゃあ誰に掛け合ったの? 誰にばれたか知っていたの?

ちひろさんは私との二人だけの秘密と言っていた

……そうすると、もう答えは一つだけ

そうか、私は一人で踊っていたんだ

ステージでもなく、ちひろさんとプロデューサーの掌で

くるくる、くるくる、回って、ステップを踏んで

一人のステージに、ちひろさんとプロデューサー二人の観客

なんて最悪なステージ……

カーテンコールと同時に私は目の前が真っ暗になって

意識を手放した



おしまい

読んでくれた方に感謝を
明日ってか今日か、お祭り行くんで書けないっス
月曜日は書ける思います


鬱エンド……

今日はおしまいだけど
今度の安価は明るく書くよ! ごめんね

イチャラブを期待していました……

鬼悪魔ちひろやからしゃーない
どれだけのPから搾取しとるかわからんであの糞緑は

>>658
お前の後ろになんか緑色の女がいるぞ

戻ってきましたー! ということで再開します
あくらのなまはげパンクス美味しかったなぁ……
では>>663の楓さんどうぞー

セクハラ親父

ksk

バツイチ子連れ

母親

F1パイロット

バツイチ子連れな楓さんですか
ちょっと書いてみます

事務所に見慣れない女の子がいる

はて? 新しいアイドルの子か……と思ったが幼すぎる

「お嬢ちゃん、どこから来たの?」

女の子は、んーと悩んだ後に

「あっち、かな」

と、指さした。うん、全然わかんねぇ

今回は幸せで終わりますように……(懇願)

「そっか、お母さんは一緒じゃないの?」

目線を合わせるようにしゃがみ、できるだけ優しく聞いてみる

「おかあさんはおしごとだって」

なるほど、プロダクション関係のお子さんで間違いはないかな

……しかし、この子は誰かに似ているような気がする

涼し気な瞳と、ふわりとした髪質

それに、声は幼いが、身長は割と高い

「どうしたの? もみじのかおに、なにかついてる?」

少女がじいっと俺の顔を見返してきた

どうやら、もみじちゃんと言うらしい

秋を連想させる名前だ、楓さんも秋っぽい名前だけどまさかな

「もみじちゃん、お母さんの名前ってもしかして、かえでって……」

「お疲れ様です、戻りました」

もみじちゃんに質問しようとすると、楓さんが仕事から戻ってきた

「おかあさん! おかえりなさい」

「ただいま、良い子にして待ってた?」

もみじちゃんが楓さんに抱き着く、『おかあさん』と呼びながら

「うん、もみじいいこにしてた」

「もみじは良い子ね。よしよし」

楓さんに頭を撫でられて、もみじちゃんはご満悦のようだ

……そっかー、もみじちゃんのお母さんは楓さんだったのかー、知らなかったなー

「お腹空いてない? 今日はどこかで食べて帰りましょうか」

「んー……はんばーぐがたべたいな」

「ちゃんとお野菜も食べるのよ?」

微笑ましい親子の会話が繰り広げられていて、俺が入る隙がない

というか、楓さんが子持ちだったことに驚いた

「ではプロデューサー、お疲れ様でした。行きましょう、もみじ」

「うん」

「あっはい、お疲れ様でした……じゃなくて! ちょっと待ってください」

自然に帰ろうとした楓さんたちを呼び止めた

「言っていませんでしたっけ。私、バツイチ子持ちなんです」

「……今日初めて知りましたよ」

説明を求めると、楓さんはあっさりと言い切った

それに、バツイチって離婚してんのかよ……

「いや、これはアイドルとしてのイメージダウンにも繋がりますし……」

お熱のアイドルに子供がいて、しかもバツイチってどうよ?

最近は物騒な世の中だし、もしものことも起こりかねないんじゃないか

「ファンの方たちは大丈夫みたいですよ?」

「はぁ? そんなバカな……」

ほら、と楓さんがスマートフォンでネットの掲示板を開いて見せてきた

誹謗中傷だらけかと思ったが、それはほんの少しだけだ

逆に、庇護する内容ばかりだ。楓さんのファン統制とれすぎだろ……

「ファンに対して問題がないことはわかりました。ですが、俺に言わなかったのは何故です?」

業務的に支障が出るし、何よりもやもやとした気分だ

「それは……」

楓さんが俯いてしまった。けれど、俺のこのやり場のない気持ちは止まらない

「俺に相談の一つもないってのがおかしいんですよ、こんなの裏切りに近いです」

ああ……何でこんなに熱くなってるんだ俺は

「おかあさんをいじめちゃだめっ!」

もみじちゃんが俺と楓さんの間に立つ、まるで楓さんを守るように

もみじちゃんから見れば、楓さんが俺にいじめられているように映ったのだろう

その顔は涙をにじませて入るが、強い意志を感じさせる



「それは……」

楓さんが俯いてしまった。けれど、俺のこのやり場のない気持ちは止まらない

「俺に相談の一つもないってのがおかしいんですよ、こんなの裏切りに近いです」

ああ……何でこんなに熱くなってるんだ俺は

「おかあさんをいじめちゃだめっ!」

もみじちゃんが俺と楓さんの間に立つ、まるで楓さんを守るように

もみじちゃんから見れば、楓さんが俺にいじめられているように映ったのだろう

その顔は涙を滲ませてはいるが、強い意志を感じさせた

「はぁ……言いすぎました、すみません」

小さい子にあんな目で見られるのはきつい

確かに言いすぎてしまったし、ここは素直に謝ろう

「いえ、私のほうこそすみません」

「おかあさん……」

もみじちゃんが楓さんの袖をくいくいと引っ張り、不安そうな顔をしている

「お母さんはいじめられてないから大丈夫」

くしゃりともみじちゃんの頭を楓さんが撫でた

「言わなかった、ではなくて言えなかったんです」

もみじちゃんの手を握り、俺に楓さんが言葉を続ける

「一つは確かにアイドル活動に支障が出てしまうかも、ということ」

「もう一つはその……嫌われてしまうかなって」

もじもじとしながら、楓さんが俯きながらそう言った

「その、嫌われるってのは誰にですか?」

他のアイドルにかな? うちのアイドルたちにそんな奴いないとは思いたいが

「皆若くて可愛いし、それに対して私は子持ちです。もしかしたらって思ってしまって……」

顔を上げた楓さんの目尻には涙が浮かんでいる

「おかあさん……」

それを見て、もみじちゃんが心配そうな声を出した

そうか……楓さんも色々と考えてのことだったのか

「……それは気にしなくても良いいんじゃないですか」

よくよく考えると、楓さんにお子さんがいても、楓さんの魅力がなくなるわけじゃない

むしろ、母性的な楓さんの一面を見れて良かったとも言える

「嫌いになりませんか……?」

恐る恐るといった風に楓さんが聞いてくる

「少なくとも、俺はなりませんね」

俺は自信を持って答える、そんなことはないと

「そう……ですか」

「これからは俺も力になりますから、だから隠し事は無しですよ?」

悪戯っぽく笑って、楓さんに意趣返しだ

「ええ、もちろんです」

ようやく楓さんに笑顔が戻ったようだ

それを見て、もみじちゃんも笑っている

そして、くぅっと可愛らしい音が鳴った

「おかあさん、おなかすいたー」

おあずけを食らったもみじちゃんのお腹の虫が、ご飯を急かしたみたいだ

「ごめんなさいね、じゃあ行きましょうか」

あ、そうだと楓さんが振り返る

「その……良かったらご一緒にどうですか?」

飲みに誘う時とは違い、随分としおらしい

「もみじちゃん、おにいさんも一緒にいいかな?」

しゃがみこみ、もみじちゃんに聞いてみる

「いいよ、おじさんもごはんたべよ」

おじ……

「もう、もみじったら」

まだ若いつもりなんだけれど、まぁ……いいか

「はやくはやく」

楓さんの手をぐいぐいと引っ張るもみじちゃんを微笑ましく思いながら

俺は二人の親子の後を離れないように歩いていく




おしまい

読んでくれた方に感謝を
今日はこれでおしまいです

やっぱりほのぼのが良いっスね

おつー

時間ができたので一つ書きます
それでは>>687の楓さんどうぞー

バニー

実は忍

実は忍な楓さんですか
ちょっと書いてみます

ようやく、ようやく尻尾が掴めそうです

慣れないことを続けていたせいか、お酒の量も増えてしまいました

……あ、仕事に差し支えないほどですよ? ええ

お酒を飲んでも飲まれるなってよく言いますしね

あれは酔っぱらっているフリですよ、フリ

本当ですよ? 本当ならお酒なんて避けたいんですから

どうやって潜入しようと思っていたら、ある日スカウトされて、簡単に潜り込むことができました

それに、お仕事もとても楽しくて、没頭してしまいました

事務所のアイドルも良い人ばかりだし、ちひろさんも、プロデューサーも言わずもがな

ですが、表向きはそうかもしれませんが、裏の顔は果たしてどうなんでしょうか……?

たくさんの女性を抱える芸能プロダクションです、黒い噂もあったりします

私はそれを調べるために、ここへと潜入することとなりました

「楓さん、今日もお疲れ様でした」

笑顔で私を労ってくれる、事務員のちひろさん

人畜無害な笑顔ですが、プロデューサーに怪しげなドリンクを飲ませ

アイドルにも、似たようなものを飲ませているとか……

私も一本飲んだことがあるのですが、その効能は凄かったです

頭がぼーっとして、何て言うんでしょう……プロデューサーに対する気持ちが変わってしまったと言うか……

あ、これは別にどうでもいいですね

「ちひろさんもお疲れ様です」

お辞儀をしながら、相手の出方を見る

「……最近、お疲れじゃないですか?」

きた! この展開を待っていたんです

「そうですね……忙しくて、休む暇もありません」

ここはちひろささんの口車に乗せられることにしましょう

「あら、そんなときはこれがいいですよ」

懐から取り出したのは、明らかに既製品とは思えないドリンク

私が前に飲んだドリンクも、このようなキャップをしていました

「では、お言葉に甘えて……」

キャップを開けて、ドリンクを一気に呷る

……体の内側にじわりと染み込んでいくような感覚

そしてその後は、気持ちがしゃっきりとして、力が湧いていくような……

やっぱりこれは合法じゃないですよ

「いつもありがとうございます。そういえば、これってどこで作ってるんですか?」

コートの内側に潜ませた短刀に手をかける

返答次第では、ここで処理しなければならない

「ああ、これはですね、大手の製薬会社と漢方を取り扱う会社に共同開発してもらいました」

ふぅん、まぁ口だけならなんとでも言えますよね

「確かどこかに成分表があったと思うですが……」

自分のデスクを漁っているようにみえるが、もしかしたら飛び道具などを取り出すかもしれない

私はいつでも動き出せるように、体に力を入れる

「ありました、これです」

ちひさんがデスクの引き出しから手を抜いた瞬間に体を動かす

……しかし、手に握られた書類を見て、急静止させた

「見せてもらっても良いですか?」

「ええ、成分がわからないのを飲むのも不安でしょうし」

にこにことした表情でちひろさんが答えた

書類に目を走らせる

……ぱっと見では怪しそうな成分や植物は使っていなさそう

「楓さんの気持ちもわからなくはないですよ」

ちひろさんが悲しそうな顔をして、言葉を続ける

「プロデューサーさんが急に元気になったり、プロデューサーさんに対する気持ちが変わってしまったり……」

ちひろさんの言葉はもしかして本当なのかもしれない、そう思って、短刀から手を離す

「これは男女での効能が違ってしまうという、こちらの落ち度ではあります」

「ですが、アイドルの方たちもプロデューサーさんも、元気でいて欲しいという気持ちは変わりません」

ちひろさんは深々と頭を下げて、私にこう言った

「体に何かあったらすぐに言ってください、すぐ対応致しますので」

……ちひろさんはどうやらシロみたいですね

あれから事務所を去って、家路へと向かっている時

「楓さん、お疲れ様です。今夜どうです?」

くいっとお猪口を傾けるような仕草をするプロデューサー

「良いですね、お付き合いしますよ」

ちひろさんがシロなら、プロデューサーはどうなのか?

たくさんのアイドルをプロデュースしているのなら、過ちもあるのではないだろうか

そう考えて、プロデューサーの案に乗ることにした

……決してお酒が飲みたいだけではないです、ええ

「今日もおつかれさまでした。それでは乾杯」

ジョッキが合わさり、かちんと音を鳴らす

「……はぁ、お仕事の後の一杯は本当に美味しいですね」

これが労働に対する対価だとしたならば、最高だと思います

お酒は百薬の長と言われますが、それも頷けますね

「良い飲みっぷりですね! 楓さんと飲むと楽しいですよ」

子供みたいに瞳を輝かせて、プロデューサーが楽しそうに笑う

……まぁ、悪い気はしないですよ

「ふぅ……これも美味しい」

日本酒に切り替えて、色々な銘柄を楽しんだ

最近飲みやすい日本酒が良いみたいな風潮ですが、私はそれが不思議です

お水ではなくお酒なのですから、それ相応の飲み口があるほうが良いのではないでしょうか?

……話がそれてしまいましたね

「プロデューサー? 私ちょっと酔ってしまったみたいです」

一つ芝居をうってみることにしましょう

邪な気持ちを持っていたら、対応はおのずとわかるはずです

「ペースが速かったですもんね、それじゃあ――」

私はプロデューサーの言葉を待つ

「送っていきますね、タクシー呼んできます」

「……ええ、お願いします」

拍子抜け、というか、やけにあっさりとしていた

でも、まぁ良い……これはこのまま芝居を続けることにしましょう

タクシーが到着したことを告げられて、居酒屋を出ることにした

「きゃっ……すみません」

わざとらしく、つまずいたふりをしてプロデューサーに寄りかかる

「大丈夫ですか、手を貸しますから」

これは真摯な対応ですけど、何故かもやもやします

「タクシーまでもう少しですから」

……完全に毒気が抜かれしまいました、これはプロデューサーもシロですかね

タクシーに乗り込んだあとは、お互いに無言だった

はぁ……芝居と言ってはみたけれど、実は結構良い気分

体も熱いし、今日は簡単にシャワーを浴びて寝てしまいましょう

「ほら、着きましたよ」

「すみません、また手を貸してもらえますか?」

もちろん、とプロデューサーが笑って、手を握ってきた

手が温かい……きっと外が寒すぎるせい

「すみません、鍵はここなので開けてもらっても良いですか?」

うう……飲みすぎてしまいましたかね

お家についた安堵感もあって、頭がくらくらとしてきました

「……抵抗はありますが、仕方ないですね」

渋々と言った風に、鍵を開けて、部屋の中まで私を運んでくれた

どうでもいいですけれど、最後にもう一芝居うちますか

ベッドの近くまで歩いて、そこでプロデューサーも巻き込んで、ベッドへと倒れてみせる

「あったかいですね」

「か、楓さん!? 放してください」

プロデューサーの言葉を無視して、プロデューサーの胸の中に顔をうずめてみせる

あ……ドキドキしてるのがわかる

プロデューサーの心臓はとても早く鼓動していた

「今日は寒いですし、温めあいませんか?」

さぁ、貴方はどう動きますか? プロデューサー

「酔いすぎです、俺は帰りますからね」

……あ、ちょっと女としてのプライドを傷つけられました

「そうですか、残念ですね……」

そう言いながら、自分の服をはだけさせていく

……よし、こんな感じでいいですかね

「はい、ちーず♪」

素早くスマートフォンのカメラを起動させて、タップした

ぱしゃりと機械音がなると同時に、プロデューサーが面白い悲鳴をあげた

「なにしてんだアンタ!」

珍しく口調が乱れるプロデューサー

「ふふ♪ 他のアイドルやちひろさんが見たらどう思いますかねぇ」

貴方にお熱の子が見たら、さぞ面白いことになるでしょうね

「脅しかよ……」

はぁ、とプロデューサーがため息を吐いた

「まぁまぁ、ちょっと温かくなるまでですから……」

夜はこんなにも寒いんですから、少し温まりましょう?

忍としてはお仕事は失敗ですが、女としては成功かしら?




おしまい

読んでくれた方に感謝を
夜からまた再開しますね

エッチなのはどこまでダメなんだろう
「淫乱な楓さん」はアウトかな?

例えばその安価を書くとしたら、誘う描写はあるけど、上手くいかなかったりぼかしたりって感じっスね
内容は私の筆によっちゃいますけど

Rでもごくごく稀にスレをたてる時があるので、よろしくです

せっかく忍者なんだから、浜口
あやめと絡めてほしかった(T_T)

>>710
×忍者
〇忍

だから、忍者の安価をすればしてくれるのでは?

>>710 気が利かなかったね、ごめんよ

ぼちぼち再開します
それでは>>715の楓さんどうぞー

Pの嫁

小料理屋

妊婦

ヴァンパイアハンター

妊婦な楓さんですか
ちょっと書いてみます

はやすぎぃ

遂にコンマの戦いに突入したけどね

早い人は2秒ぐらいで反応するからなぁ…

病室の窓からは元気に走り回っている少年の姿

私の赤ちゃんもあんな風に元気になってくれるかしら

随分大きくなった自分のお腹をさすってみる

小さいころに見たアニメの映画の狸みたい

何だかおかしくなって、一人で笑っちゃいました

あれってぽんぽんがぽっこりしてるから、ぽんぽこ?

はぁ……久々に面白かった

一人でしきりに笑ったあと、待っているのは病室の静けさ

「退屈……」

今は安静にしていないといけない、それはわかりますけれど

誰かお見舞いに来てくれませんかね

むむむーん、と裕子ちゃんの真似をしてみる

こんこんこんと、病室のドアが三回ノックされる

あら、もしかして私のお願いがつうじちゃいましたか

「どうぞ」

今日は誰が来てくれたのかしら

そんな逸る気持ちを抑えながら、返事をした

「こんにちは、楓さん」

「みりあちゃん、いらっしゃい」

元気いっぱいの笑顔のみりあちゃんに、私も笑顔を返す

「お腹……苦しくない?」

ぽっこりとした私のお腹を心配してか、みりあちゃんの眉根が下がる

年少組の子だけど、最近はお姉さん気質が出てきたみたい

「ええ、大丈夫」

「そっかー、みりあは食べすぎちゃった時とっても苦しいの」

あはは、とみりあちゃんが笑った

「触ってみる?」

そう提案すると、みりあちゃんがこくりと頷いた

「やさしく……そーっと」

恐る恐るといった風に、ゆっくりとみりあちゃんの手が私のお腹に触れる

「わ……凄い」

目をまん丸にして、きゃあきゃあとはしゃいでる

「楓さんの赤ちゃん、早く見たいな」

「もうちょっとしたら、ね」

みりあちゃんの髪を撫でると、さらりとした感触が手に伝わる

「えへへ、みりあも赤ちゃんのお世話手伝うからね」

「ええ、その時はお願いね。みりあお姉ちゃん」

私がそう言うと、みりあちゃんは目を輝かせた

「やった♪ 一緒に遊びたいし、一緒にんーと……」

指を使ってやりたいことを数えているみたい

こんなに可愛いお姉ちゃんがいれば、赤ちゃんもきっと喜びますね

「そうだ! 楓さん、これお見舞いのリンゴと暇かなって思って本持ってきたの」

みりあちゃんが可愛いバッグから、リンゴと本を数冊取り出す

ひよこクラブ、ですか

「お母さんがこれ持っていきなさいって」

後でお礼をしておかないといけませんね

「ありがとう、みりあちゃん」

「どういたしまして! そうだ、みりあがリンゴの皮向いてあげる」

果物ナイフなら引き出しにあるはずだけど、大丈夫かしら?

「んしょっと」

はらはらしながらみりあちゃんを見ていると、それは杞憂だったみたい

慣れている手つきでリンゴの皮をするすると向いていく

「できた! ウサギさん♪」

「可愛いウサギさんね、それじゃあ頂きます」

少し耳がかけてしまったウサギさんのリンゴはとても甘くて美味しい

「でねでね、晴ちゃんがプロデューサーに怒っちゃって大変だったの」

小さい体をめいっぱい使って、その時の状況を細かく伝えてくれる

「プロデューサーも晴ちゃんに怒られるのが日課になっちゃったわね」

やりとりがすぐにイメージできた

「でもね、晴ちゃん後でごめんなさいしてた」

「きちんと謝れるのは大事だものね」

そっか、事務所の皆は元気みたいで一安心

落ち着いたら事務所にも顔を出してみましょうか

赤ちゃんも連れて行ったら、皆びっくりするかな

それまでにとっておきのダジャレを考えておかないと……

「あ、こんな時間になっちゃったわね」

気付くと窓の景色が茜色に染まっていた

みりあちゃんとの時間はとても楽しくて、時間があっという間に過ぎていた

「みりあちゃん、帰る時はどうするの?」

「プロデューサーが迎えに来てくれるって」

そっか、あの人が来てくれるなら安心

「それまで楓さんのお世話するの」

えへんと胸をはるみりあちゃん

「ふふふ……頼もしいわね」

「みりあはお姉ちゃんだからね♪」

それでね、まだ聞かせたいお話いっぱいあるの! とみりあちゃんが話し始める

これは退屈してる暇なんてないわね

小さなお客さんの言葉に耳を傾けながら、赤ちゃんに語り掛けた




おしまい

読んでくれた方に感謝を
このままもう一つ安価もらいます
それでは>>735の楓さんどうぞー

ksk

探偵

ヴァンパイアハンター

小料理屋

ヴァンパイアハンターな楓さんですか
ちょっと書いてみます

昔々の物語

一人のヴァンパイアハンターがおりました

長身とそれぞれ色が違う瞳をもつ妙齢の美女

町をあるけば男どもが振り向いてしまうほどです

「さて、今日はどこの酒場にしましょうか」

当の本人はどこ吹く風といった感じで、マイペースでした

「いらっしゃい……お客さん、ミルクは置いてないぜ」

酒場に入ると、いやらしい笑みを浮かべた店主がそう言いました

「エールをください、大きいジョッキで」

女性は、酒場でミルク? ……ミルクを飲んでみるく……いまいち

なんてことを思いながら、不思議そうな顔です

「お、おう……ちょっと待ってな」

店主はいそいそとしながら準備をしています

女性が酒場に入ってからしばらく経ちました

「おかわりを」

「は、はい……」

女性の飲みっぷりに店主が恐れをなし、態度が軟化しました

「あ、そういえばこの辺りの町はヴァンパイアに困っているとか……」

何杯目かわからないエールを飲みながら、女性が尋ねます

「よくご存じで……あれは恐ろしい存在です」

店主が目をつぶり、重々しい口を開きます

なんでも、そのヴァンパイアは小柄で銀色の髪を持っている

口には恐ろしい牙を持ち、よなよな生贄をさがしているとか

そしてなぜかキノコを落としていくとか何とか

「なるほど……あ、この干し肉美味しいですね」

女性は干し肉をもぐもぐと咀嚼しながら、返事をしました

「出会ったら逃げたほうが良いですよ」

店主の忠告に、女性はこくりと頷きました

輝子かな?

「さて、良い時間ですね」

外は真っ暗で、星とお月さまが輝いています

女性は酒場を出ると、腰の革袋にあるものを確認し、夜の街を徘徊することにしました

いつの間にか、冒険者風な装いから、町娘なような装いに変わっています

「さて、後は私を間違えて襲ってくればいいだけですね」

女性は寒い寒いと言いながら、軽い足取りで歩きだしました

「だ、誰かー! カワイイボクが襲われてますよー」

薄暗闇から、まるで緊張感の無い悲鳴が聞こえてきます

「まぁ、大変」

こちらの女性も緊張感は皆無でした

声を頼りに走り出すと、そこには少女が尻もちをついていました

「大丈夫? 幸…お嬢ちゃん」

女性が、髪の毛がぴょこりと外ハネしている少女に声をかけます



「ヴァンパイアが……ボクに……」

何故か、可愛いと自負していそうな少女が怯えながら言います

「もう大丈夫よ、どっちに行ったかわかる?」

「あっちに……」

女性の問いに、タレ目がちな少女が返しました

「貴女は安全な場所へ、それじゃあ」

女性は少女が指さした方へ走り出します

「かえ……気を付けてくださいね」

しんとした町に、少女の声が静かに響きました

「こ、これは……」

女性が何やら見つけたようです

それは、道に点々と落ちている血……ではなく

「エリンギ……? あ、こっちにはしめじも」

どうやらキノコを落とすと言うのは本当だったみたいです

「帰ったら焼いて食べましょう♪」

女性はるんるんな気分でキノコを拾いながら、ヴァンパイアの後を追いました

そうしてキノコをたくさん拾っていると、じめっとした洞窟にたどり着きました

「ここにヴァンパイアが……」

女性が神妙な顔をして見せますが、頭の中ではキノコで一杯やることしか考えていません

「慎重に、ゆっくり奥まで行きましょうか」

音を立てないように、差し足で女性が進みます

奥に進むにつれ、キノコの量が増えていきます

それはまるで栽培しているかのような量

「キノコ食べ放題ね」

くすりと女性が笑いました



「ん……?」

ろうそくの明かりが見えます

そして、銀色の髪の毛も

こちらに背を向けて何かをしているようですが、好都合です

今がチャンスと言わんばかりに、女性が腰にぶら下げた革袋から透明な小瓶を取り出し

「え~い」

楽しそうな声とともに、放り投げました

「うわっ……く、くさっ!」

銀色の髪の毛のヴァンパイアは小瓶の中身を浴びて転がりまわりました

「特製の聖水(ウォッカ)のお味はどう?」

ちょっと勿体ないことしたかしら、と女性が思っていました

「くそ……こんなところで……」

こちらに振り向いたヴァンパイアは噂通りとても小柄です

ですが、口から覗く鋭い犬歯は恐ろしさを感じさせました

「続いてニンニクも……!」

女性がニンニクを投げます

ヴァンパイアの伝承ではニンニクも効果があり……ませんでした

ほかほかと湯気を立てるニンニクは、香ばしく焼かれていました

「あ……臭くない」

そこで女性はお酒のおつまみ用に焼いてしまったことに気付きました

「とどめはこれです」

女性は腰に装備していた鞭を伸ばしました

先には金属片が付いていて、とても痛そうです

「これは痛いですよ? とっても痛いですよ?」

女性は何故か鞭を振りません

「降参するなら今のうちですよ?」

ヴァンパイアは気付きました、鞭使ったことないんだなって

膠着状態かと思われたその時です

「輝子ちゃんをいぢめるのはやめるんですけど……」

奥のベッドから金髪のおどおどした少女が現れました

「乃々ちゃん、動いちゃだめだ」

ヴァンパイアから乃々と呼ばれた少女が女性の前に立ちます

まるでヴァンパイアを守るように、手を広げて

これではまるで女性のほうが悪者みたいです

「事情があるみたいね、お話を聞いてもいい?」

二人のやり取りを見た女性は話を聞くことにしました

傷つけるのは得意じゃないし、これで解決できるならと思ったからです

「乃々ちゃん……」

「わかりました、お話します」

乃々と呼ばれた少女が、伏目がちに話し始めました

「まぁ、そんなことが……」

聞けば、少女はぷろでゅうさぁと呼ばれる男性にいぢめれていて

逃げたところをヴァンパイアが助けたようです

「輝……ヴァンパイアちゃんは乃々ちゃんを襲わないの?」

女性は疑問に思い、聞いてみました

「友達を襲うわけない……」

はて? これはどういうことでしょうか

「血なんてまずいし、気持ち悪い」

このヴァンパイアはどうやら変わり者みたいです

「じゃあ、町の人を襲ったってのは?」

「あ、あれは……キノコと他の食料を交換しようと思って」

ヴァンパイアがちらりと少女を見ました

「乃々ちゃんにごはんを食べさせるため?」

ヴァンパイアが頷きます

「でも……皆逃げるんだ……フ、フヒ……ボッチ」

女性は町の人たちが勘違いしているとわかりました

「やっぱりもりくぼが町に出たほうが」

「だ、だめだ……またいぢめられるに決まってる」

女性は二人の友情に胸が熱くなるのを感じました

このヴァンパイアは人と共存できると確信した女性は

「私に良い考えがあるの」

ウィンクをすると、二人に話し始めました

町を騒がせたヴァンパイアはもういません

一人のヴァンパイアハンターに退治された……ということになっています

「キノコ―、キノコはいりませんか」

「美味しいキノコですよー♪ お鍋にも焼いても美味しいですよー」

銀色の髪の少女と、あの女性がお店でキノコを売っています

そして、その机の下には乃々と呼ばれた少女の姿もありました

女性の考えにより、ヴァンパイアは人との生き方を学んだのです

これで、この町にも平穏が訪れる事でしょう



おしまい

読んでくれた方に感謝を
今日はこれでおしまいです
続きは明日の夜からー

時間も伝えておいたほうが良いですかね?

乙ー
時間は伝えなくても、やりやすい時に始めればいいと思います

ではいつものスタイルで告知なしでいきます

そうだ、後Twitterに詳しい方いますか?
SSの話じゃなくて申し訳ないのですが……

昨日の最後のレスは忘れてください、自己解決できました

それでは再開したいと思います
>>764の楓さんどうぞー

露出狂

バンドウーマン

小料理屋

小料理屋な楓さんですか
ちょっと書いてみます

仕事終わりの帰り道

通り慣れた道から帰ろうと思って、ふと考える

たまには違う道から帰ってみよう

そう思って、いつもの道から一本ずれた道へ歩き出す

ずいぶんと入り組んだ道だ……ちょっと薄暗いし

そして、暗闇を薄く照らす提灯を掲げる店が一軒

『小料理 楓』

看板には達筆でそう書かれていた

趣のある外装と提灯の灯りで、どこか幻想的でもある

小料理屋か……一人で入ったことないんだよな

高い場合もあるし、どうしようか

そう悩んでいると、店の入り口にいる女性と目が合った

……とんでもないレベルの美人さんだ

こちらを見て、薄くほほ笑んでいる

もっと近くで見たい、そう思った時にはもう入り口の扉に手をかけていた

給料日を迎えたばかりだし、こうなりゃやけだ

扉を開けると、さきほどの女性がにこやかに出迎えてくれる

「いらっしゃいませ。外は寒いでしょう、どうぞ中へ」

身近で見ると、さきほどより魅力的に感じる

淡い緑色の着物と、後ろで結った髪、それと白いうなじに目を奪われる

「お好きな席に掛けてくださいね、とは言ってもそんなに席はないんですが」

女性を目の前でみたいばかりに、カウンターの真ん中を陣取った

「お飲み物は何になさいますか?」

注文を聞かれて、はっとする

「とりあえずビール……じゃなくて熱燗で」

今日は寒いし、酒をちびちびやろう

「今日みたいな日にはぴったりですね、少々お待ちください」

慣れた手つきでお燗をしていく

まくった袖から見える腕はすらりとしていた



酒を待っている間、手持無沙汰なので店の中を見回してみる

あまり広くはなくて、席はカウンターが七席ほどだ

店の人間は……この女性だけ、ってことはこの人が女将兼板前をしているのか

若そうなのに一人で店を切り盛りしてるなんて大したもんだ

一人でうんうんと頷いていると

「お待たせしました、熱燗とお通しです」

お通しの美味そうな匂いに、腹の虫がくぅっと鳴いた

「では、一献どうぞ」

女将さんがお酌をしてくれるようだ

「ありがとうございます」

お猪口を傾けると、燗された酒の香が広がる

「こいつは美味い酒ですね」

「喜んでもらえて良かったです、お通しも冷めないうちにどうぞ」

これはふろふき大根と……もう一品がわからない

丸くて、黄色がかった衣がついていて、それにとろみをつけた出汁が張ってある

「頂きます」

「お召し上がりくださいな」

箸を入れるとさくりと子気味良い感触

中身は白雪のように淡い白さ

それに出汁をたっぷりと絡めて口の中へ入れた

ふわふわとさっくりとした食感、それを包む濃厚な出汁の味

これは噛むのが楽しい料理だ、それに美味い

「白身魚の真薯を湯葉に包んで揚げてみたんです」

「初めて食べた料理ですけど美味いですね」

俺が素直に伝えると、女将さんが嬉しそうに顔を綻ばせた

続いて食べたふろふき大根もとてもうまく炊けており

この二品のせいで、俺の腹の虫が大騒ぎしだしてしまった

お品書きを手に取り、目を走らせていると良いものを見つけた

「この金目鯛の煮つけをください」

「はい。少々お待ちくださいね」

流石に良い値段だが、今日は奮発しよう

「この時期の金目鯛は美味しいですよ、ほっぺが落ちちゃうくらいに」

「それは楽しみだ」

煮つけがくるまで、女将さんの調理姿を肴に酒を呷る

「お待たせしました、金目鯛の煮つけです」

皿からはみ出しそうな立派な金目鯛だ

ふわりと湯気が上がり、その匂いが食欲を刺激する

何の抵抗もなく箸が入り、ほろりとした身をこぼさないように口に運ぶ

「……美味い」

甘辛く煮つけているのに、魚の味も損なわれていない

これは味付けのせいか、それともこの金目鯛の美味さなのか

酒が進み、気付けばお銚子が空いてしまった

もう一本つけてもらうか? いや、ここはどっちかと言うと……

「ふふっ、炊き立てのご飯も合いますよ?」

俺の考えを読み取ったかのように、女将さんが言った

「お願いします、大盛で」

「はい、わかりました♪」

こんなに美味い煮つけを白飯で追っかけたら……おっと、よだれが

「はい、どうぞ」

目の前につやつやのご飯が置かれた

……よし、俺の腹の虫を黙らせてやるとするか

金目鯛の身をたっぷりと箸で取ってから、飯の上でバウンドさせる

それからすかさず口に運び、それから白飯を追っかける

……これが幸せってやつか

白飯が金目鯛の味を……もう御託はいいや

とにかく、もう食べる事しか頭にない

煮つけ、白飯、煮つけ、白飯、ここに完璧なループが生まれる

「まぁ、凄い食べっぷり♪ おみおつけもどうぞ」

「頼んでないですよ?」

「サービスです、そんなに美味しそうに食べてもらえるお礼です」

それならありがたく頂戴することにしよう

「アラのおみおつけです、ほんの少し酒かすが入っています」

女将さんの説明を聞きながら、汁を啜る

魚のアラがたっぷりで、身をこそぎながら食べるのが楽しい

「ふぅ……ご馳走様でした」

我を忘れて箸を動かしていたら、いつの間にか食べ終わっていた

「こちらこそ、ご馳走様でした」

はて? こちらから何かご馳走した覚えはない

「あなたの美味しそうに食べているお顔、です」

そう言われて、何だか恥ずかしくなってきた

食後のお茶を飲みながら、余韻を楽しむ

それにしても、本当に美味かった

それに、女将さんも美人だし……

ちらりと女将さんを見ると、また目が会った

「どうかなさいましたか?」

そう言う女将さんの笑顔は少し悪戯っ子のようだ

「いえ……美味かったです、また来ますね」

「ありがとうございました、お待ちしています」

店の外まで見送ってくれる女将さんを背に、いつもとは違う帰り道を歩く

たまには道を変えてみるのもいいもんだ

ふと上を見上げてみると、綺麗な月が輝いて

俺の帰り道を明るく照らしていた



おしまい

読んでくれた方に感謝を
今日はこれでおしまいです

二月になりますが、変わらずにお付き合い頂ければ幸いです
それではまた明日

1000を超えても続けてほしい

ええなぁ
おつ


>>764をみてなぜか居酒屋志衛を思い出した。

おつ
小料理屋と聞くと、輿水じゃない方の幸子が女将で細かい事が気になる紳士が常連さんの店を思い浮かべる

いつも安価を頂ける皆さんに感謝です
残りスレ200強……精一杯書ききりたいと思います
二スレ目は皆さんが飽きていないのなら喜んで

それでは再開します
>>789の楓さんどうぞ

職人

下こ

ライダー

Pと幼馴染

あまちゃん

ライダーは一度とっているけれど、別のライダー?

仮面ライダーなのかもしれない

二回目のライダーな楓さんですか
ちょっと書いてみます

仮面ライダーで頼みたい

普通に生活して、何も面白いものがないまま終わると思っていた

だけど、私の終わりは随分と早く訪れた

夜遅くに帰宅することになった私は、近道するためにいつもとは違う道を選ぶ

後悔するならやってから、っていう人もいるかもしれないけど

この先、後悔できない状況ならば、先に後悔してもいいと思わない?

今、前の前で行われている事。そして、それを見てしまった私

男の人がスーツの内側から何かを取り出したのは覚えてる

それから、ぱぁんって音が聞こえた後は何も覚えてない

「……」

どうやら、私は生きているみたい

ぼんやりとした意識のなかで、それだけはわかる

けれど、ここがどこなのかわからないし、私がどうなっているのかがわからない

体に力は入らないし、ずっと頭がぼんやりしてる

それに頭が少し痛む

……もう少し寝てましょうか

そう思ったけれど、思いとどまった

自分の横にある姿見、そこに映った鏡に映る自分の姿

それは私が見慣れている自分の姿ではなかった

がばりと寝台から起きる

それから姿見に近づいて、まじまじと自分の姿を確認した

見れども見れども、自分の顔じゃなかった

それに、片目の色がおかしくなっている

「あら、おはようございます」

頭がパニックを起こしている中、誰かが部屋に入ってきた

「すみません、状況が状況だったので……」

ネオングリーンのジャケットを着た女性が深々と頭を下げた

「どういうことか、説明してもらえますか?」

私の言葉に女性はにこりとほほ笑んで、口を開く

しかし、この女性の笑顔はなんとなく怖い

女性の話を聞いて、私が置かれている状況がわかった

一つ、私は見てはいけないものを見てしまった

二つ、銃弾を顔に受けた私の顔を整形したこと。片目にも銃弾を受けたらしいこと

三つ、その見返りに、この女性の言う事を聞くこと

「はぁ……?」

話を聞いた後に、私の第一声はそれだった

随分とふざけた話だ、第一照明するものがない

片目の視力もあるし、いまいち信用できない

「ほら、事件直後のあなたの写真ですよ」

女性が見せてくれた写真には、見慣れた自分が血まみれで倒れていた

ご丁寧に、顔がぐちゃぐちゃだ

吐き気が襲ってきたけど、何とか耐える

「信用してくれます? あ、片目のことはまぁ知らないほうが良いですよ」

くすくすと笑う女性に怖さを覚えた

「……それで、私は何をすればいいんですか?」

ここは大人しく従ったほうが良いと本能が言っている

「まずアイドルになってください、それとついでに正義のお仕事を」

「はぁ……?」

この女性は何を言っているの?

ついてこいと言われ、地下へのガレージへと向かう

この女性……千川ちひろさんというらしい

千川さんが働いているところは大手の芸能プロダクション

そして、裏のお仕事は正義のお仕事を少し、なんてふざけた話をされた

そんな嗜む程度ですが、みたいな話されても反応に困る

「さぁ、着きましたよ」

殺風景なガレージには布がかけられた物体がぽつりと佇んでいる

「これが貴女の……高垣楓の相棒です」

千川さんが布を両手で引っ張り、現れたのは真っ黒の一台の車だった

これはスポーツカー? あまり車に詳しくないけど、外国車かしら

「これはナイト……じゃなくケイト2000です」

今なにか言いかけましたよね? この車、マイナーなところのやつなのかな

「まぁまぁ、とりあえず乗ってくださいよ」

「はぁ……」

千川さんに背中を押され、運転席へと乗り込む

左ハンドル……それに、わからないスイッチがいっぱい

「これってどうやってエンジンを……」

言い終わる前に、勝手にエンジンがかかって

『ハァイ、私KATE。ケイトって呼んでくだサイ 』

最近の車って喋るみたい……

2000ってことはトランザムの方か

>>804
3000なんてなかった。マスタング?何それ(過激派)

「千川さんが喋ってるんですか?」

「違いますよ?」

可愛らしく小首をかしげて返事をする千川さん

『んもう、ケイトはここヨ? ちゃんと見てくだサイ』

見てってどこを見ればいいのかわからないの……?

「もしかして、この車がケイトってこと?」

『そうですヨ、ええと……タッキー』

その呼び方は色々とまずい気がするから止めて欲しい

「貴女はこれからケイトと一緒にお仕事してもらいます」

『よろしくネ、タッキー』

それほんとやめて!

「貴女をこんな風にした人物を探したくないですか?」

「この仕事を続ければ見つけられるんですか?」

できれば見つけ出したい、見つけ出して……文句の一つでも言ってやりたい

「ええ、もちろん。張り巡らされた蜘蛛の糸を断ち切れば、本体がおのずと出てきます」

「そうですか……」

もちろん、アイドルとしてのお仕事でお給料も出ますよ? そう千川さんが言い足した

お金につられたわけじゃないけれど、これは私にとってメリットだらけの話に思えた

ちらりとケイトのほうを見る

『そんなに見つめられる照れまス』

ちょっと、いえ、大分不安かもしれないけれど

私をこんな風にした人物、それにお給料……

正義の味方なんて柄じゃないですけれど

「わかりました、私やります。それと美味しいお酒もご馳走してくださいね?」

私の言葉に千川さんが笑顔で頷いた




おしまい

(ナイト)ライダーな楓さんでした
ちなみに私は2000のほうが好みです

読んでくれた方に感謝を
今日はもう一つ書きますね
その前に休憩します

懐かし過ぎる
関西の深夜でよくやってたわ

ぼちぼち再開します
それでは>>813の楓さんどうぞー

運動不足

フィーダー(対象アイドルはおまかせ)

巨大娘

あ、補足するとフィーダーっていうのは他人を太らせるのが好きな肥育者っていう意味です

ああ、お隣の

補足ありがとうございます、必死で意味しらべてました

フィーダーな楓さんですか
ちょっと書いてみます

お知り合いですか?

ミリオンにPをフォアグラ用のガチョウみたいにするアイドルがいるの

「翠ちゃんお疲れ様。よかったらご飯でもどうです?」

珍しいお誘いです

普段はあまりご飯をご一緒しない、というかお酒を飲みに行ってしまうイメージでした

「私でよければ喜んで」

せっかくの機会ですので、もっと楓さんのことを知りたいとも思いました

「嬉しい♪ じゃあ私のお気に入りのお店にしましょう」

「はい、楽しみです」

この時の私は、楓さんを疑うなど一かけらもありませんでした

「あ、楓さん」

事務所に向かっていると、前を歩いている楓さんを見つけ声をかけました

「あら、翠ちゃん。制服姿も可愛いわ」

じっと私の制服姿を見て、楓さんがほほ笑みます

……楓さんみたいな綺麗な方にみつめられると、ちょっと恥ずかしい

「そうだ、美味しいケーキ買ってきたから食べましょう」

ケーキ……お昼からだいぶ時間が経っていますし、なにより

楓さんが美味しいと言っているケーキに興味が湧いてきました

「わぁ、どれも美味しそうですね」

チョコレートのケーキに、クリームのケーキ、それにタルトがたくさん

「たーくさん食べてね」

目移りしちゃってどれを食べようか悩んでしまいますね……

「食べないの?」

「お恥ずかしいのですが、どれを食べようか悩んでしまいまして」

私が言うと、楓さんが笑顔で私の横へと移動してきました

「じゃあ私が食べさせてあげるわ」

楓さんがいそいそとチョコレートのケーキを取り出して

「はい、あーん」

「子供みたいで……恥ずかしいです」

嬉しい気持ちと恥ずかしい気持ちで、なかなか踏ん切りがつきません

「そんな……私悲しい……」

私の態度に気を悪くしてしまったのか、楓さんの大きくて綺麗な瞳が潤んでいます

「わ、わかりました! あーん」

「はい、あーん♪」

……楓さんは演技もとてもお上手の様です

「ふぅ……ご馳走様でした」

なんやかんやで、ケーキを一人でほぼ食べてしまいました

流石に食べすぎてしまい、苦しいです

「ごめんなさい、翠ちゃんの美味しいそうにしてる表情を見てたら、つい調子に乗っちゃって……」

「いえ、せっかく楓さんが買ってきてくれたものでしたので」

「そう言ってくれると嬉しいわ」

そういえば、さっきからずっと楓さんが隣に寄り添っています

良い匂いはケーキだけではなく、楓さんの香りだったのかもしれません

「私の顔に何かついてる?」

楓さんと目が合いました

「いいえ、何でもありません」

すると、楓さんの指が私の唇に触れて

「動いちゃ駄目」

「は、はい!」

これはどういう状況なのでしょうか、動いちゃ駄目って言われましたけど……

「はい、とれた」

どうやら、私の唇にチョコが付いていたみたいです

「ん……おいし」

楓さんはそれを舌でぺろりと舐めて、そしてまた私は固まってしまいました

「私レッスンに行って参ります!」

バッグを取って逃げるようにして、事務所から飛び出します

はぁ……心臓がばくばくしてる

楓さんにはまた後でお礼を言っておきましょう

とりあえず今はレッスンに行って、精神を沈めないと


と思っていたのですが、いつもよりミスをしてしまい、トレーナーさんに怒られてしまいました

「翠ちゃんお疲れ様。どうしたの? 浮かない顔をして」

しょんぽりとした気持ちで帰ると、楓さんが心配そうな顔をしています

「いつもより体の調子がおかしくて、失敗をたくさんしてしまいました」

頭と体がちぐはぐと言うか、感じたことのない感覚です

「そうだったの……じゃあお夕飯がてらお話しましょう」

お話を聞いてくれるのはとてもありがたいのですが

「嬉しいお誘いなのですが、あまり持ち合わせがないのです」

すると楓さんが笑顔で答えました

「大丈夫。お姉さんにお任せです♪」

「このお鍋美味しいです」

「そうでしょう、私のお気に入りなの」

魚介類がたくさんはいっていて、箸が止まりません

体も温まりますし、さきほどまでのモヤモヤもどこかへ行ってしまいました

「今日の嫌な気分は明日に持ち越さないほうが良いんですよ」

楓さんがお酒を一口飲んでから、そう言いました

「今日は楓お姉さんが付き合ってあげます。だから、言いたいことは言って良いたい」

こういう時は笑ったほうが良いのでしょうか? その……リアクション? 的な感じで

「今日はありがとうございました」

タクシーで送ってもらいましたし、どうお礼をしたら良いのか……

「良いの。私は翠ちゃんの笑顔が見たかっただけだから、それじゃあおやすみなさい」

「はい、おやすみなさい」

私はタクシーが見えなくなるまで見送りました

今日は楓さんにたくさんお話を聞いてもらって、気持ちの整理ができました

けれど……また食べすぎてしまった気もします

そういえば、楓さんは私に勧めるばかりであまり食べていなかったような気がします

私は楓さんと過ごす時間が多くなりました

楓さんの差し入れや、連れて行ってくださるお店も楽しみにしている自分がいます

今も体の違和感は消えませんが、楓さんにアドバイスを頂いて、それをあまり気にしないようにしています

「なぁ、翠。最近レッスンが上手くいってないみたいだな」

事務所で楓さんの差し入れを頂いていると、プロデューサーに声をかけられました

「そうです、ね……ですが、楓さんにアドバイスを頂いて頑張っています」

「……そうか、ならいいんだ。それにしても、よくそんなに甘いものが食えるな」

そうでしょうか? 今日の差し入れはいつもより少ない気もします

「そういえば、今日プロデューサーに不思議がられました」

楓さんとお夕飯を頂いている時に、今日あったことを話します

「いつもより少ないと思ったんだけど、変なプロデューサーね」

やっぱりですね、いつもより少ないなら全然食べられてしまいます

「ほらほら、そんなことよりお肉が焼けましたよ♪」

私の取り皿にお肉を置いて頂きました

「いただきます」

大きなお肉はとても柔らかく、ご飯と一緒にいくらでも食べられてしまいそうです

楓さんは私がご飯を食べる姿を、可愛いと言ってくれます

まだ言われ慣れないのですが、とても嬉しいです

最近服のサイズが上がってしまったのですが、楓さんは成長期だからと言っていたので気にしないことにします

今日はどんな差し入れとお夕飯を頂けるのか楽しみですね

ここ何日かはレッスンよりも楓さんとご飯を食べるのを優先的にしています

「翠ちゃん、今日もお夕飯行きましょうか」

「はい、ご一緒させてください」

ちょうどお腹が空いていたので、お言葉に甘えることにします

楓さんとのご飯は本当に美味しいのです





おしまい

読んでくれた方に感謝を
なんか百合百合っぽいお話になってしまいましたね
それではまた今日の夜に

乙ですー

ぼちぼち再開したいと思います
それでは>>836の楓さんどうぞー

転職

一国の姫

Pと幼馴染

一国の姫な楓さんですか
ちょっと書いてみます

とあるお姫様のお話です

楓姫という、それはそれは美しいお姫様がおりました

この時代には珍しく、髪は結っておらず、異国の物のような独特な瞳を持っています

声もとても綺麗なものを持っていて、歌を歌う時は臣下たちがこぞって集まっておりました

その美しさは城下の民にも伝わり、まるで雲の上の人と思われていました

確かに美しさと、その仕草は見るものを魅了することでしょう

ですが、楓姫はその斜め上をいく人物なのでした

「姫様、今日の夕餉でございます」

女中である、かな子が夕餉を持ってきました

「ええ……頂くわ」

この時代の食べ物はいわゆる薄口の味付け

「(もっと味の濃いものが食べたい……)」

楓姫の口には少し合わないようです

「ねぇかな子ちゃん? ちょっとお出かけしましょうか」

「ええっ! ばれたら怒られちゃいます……」

かな子がそう言いますが、楓姫は笑顔で

「そうなったら私も一緒に怒られてあげますから♪」

楓姫の脱走が今日も始まるようです

「ふぅ……やっぱり城下の町は良いですね」

楓姫がぐぅっと伸びをして、軽く体をほぐしています

「姫様? やっぱり戻りませんか?」

かな子は見つかったらどうしよう、という気持ちでびくびくしています

「愛梨ちゃんに聞いたんだけど、新作の甘味があるらしいわよ?」

楓姫がそう言うと

「新作の甘味……良いですね、行きましょう!」

かな子は楓姫の言葉にまんまと釣られてしまいました

「これは……」

「かな子ちゃん、これはほっとけぇきと言うらしいわよ」

まぁるく焼かれた焼き菓子のようです

ほかほかと湯気を立て、香ばしい匂いをさせている菓子をまずはかな子が一口

「では私が味見……いえ、毒見を」

ないふとふぉーくなるものを器用に使い、一口大に切ったものを口に運びました

「どう? 美味しい?」

目を閉じ味わっているかな子に、楓姫がそわそわしながら言いました

かな子がほっとけぇきを飲みこむと、くわっと目を開けました

「……美味しい! 楓姫、これすごいですっ、ふわふわで食べるとふかふかです」

ふわふわでふかふか、とにかく柔らかい菓子のようです

それを聞いて、楓姫がほっとけぇきを口に運びました

もぐもぐと咀嚼して、ごくんと飲みこみます

「美味しい……確かにふわふわでふかふか」

楓姫は大層気に入ったみたいで、ほっとけぇきを食べ進めていきます

「姫様、このめぇぷるしろっぷをかけるともっと美味しいみたいですよ」

めぇぷるしろっぷ? 楓姫が聞き慣れない言葉に首を傾げます

こんなに美味しいほっとけぇきがもっと美味しくなる……楓姫はごくりと唾を飲みます

めぇぷるしろっぷは琥珀色をしていて、蜜のような芳醇な香りがしています

「では……」

楓姫がとろりとほっとけぇきにめぇぷるしろっぷをかけ、それを口に運びました

「……!」

口の中に濃ゆい甘さが伝わります、けれどその甘さはほっとけぇきの味を一層引き立てるのです

「めぇぷるしろっぷ……恐るべしです」

ふぉーくを咥えたまま、楓姫が嬉しそうに声を上げました

後で店主に聞いたところ、めぇぷるしろっぷは楓の木の樹液を使うとか

それを聞いた姫は

「私の名前を聞いて、これはほっとけん」

「えっ? そ、そうですね……」

お得意の冗談をかましますが、かな子は苦笑いで返します

「(とてもお綺麗なのに、これはちょっと……)」

かな子がそう思いましたが、楓姫は真剣なので性質が悪いのでした

「とても美味しかったですね」

楓姫がほっとけぇきの余韻を感じながら、はあっと吐息を吐きます

「満足されたようなので、お城に戻りましょうか」

かな子はほっとした顔で楓姫にそう勧めました

「……えっ? 夜はまだこれからですよ」

何を言ってるの? と言わんばかりの楓姫

気付けば月の静かな光を感じられる時刻になっていました

「わかりましたよ……もう」

こうなった楓姫を止められないことを知っているかな子は、深いため息を吐きました

楓姫は何かないかと目をらんらんと輝かせ、町を歩きます

そして、かな子はその後ろを黙って後を追います

「(これは本当に覚悟しないといけないかも……)」

かな子の心中は穏やかではありません

楓姫が口添えをしてくれるとは言え、これほど城を空けるのは流石にまずいようです

かな子の表情が曇るなか、楓姫が何か見つけたようです

店の前でじゅうじゅうと香ばしい匂いをたてるもの

それは、焼き鳥でした

「……」

楓姫が指を唇に当てて、かな子を見ます

かな子ちゃん、焼き鳥ですよ? これはもうお酒を飲むしかありませんよね

目がそう語っています

しばらく考えた後、かな子が言います

「お銚子は二本までですよ……?」

それを聞いた楓姫が、そら来たと言わんばかりの表情で

「調子が出てしまったらごめんなさい♪」

楓姫が店に入り、かな子もそれに続きました

「わぁ……美味しそう」

これは楓姫ではなく、かな子の言葉です

「姫様、どれも美味しそうですよ♪」

姫は、ちょろいですね……と誰にも聞かれないように呟き

「私は皮とやげん、それに砂肝を頼みます」

流れるように楓姫が注文を決めると、かな子も同じものを頼むことにしました

「かな子ちゃんはまだ飲めないんですよね……」

とても残念そうに楓姫が言います

「まだお酒は飲めませんが、姫様にお付き合いすることはできます」

かな子がそう言うと、お銚子を持って姫様にお酌をしました



「砂肝は焼き方がキモなんですよ」

楓姫がもきゅもきゅと砂肝を咀嚼kしながら言います

「この皮も香ばしくて美味しいですね♪」

「お酒が進んで仕方ないです」

ぐいぐいとお猪口を傾ける楓姫

「あ、もう一本つけてくださーい♪」

すでに約束の二本は過ぎていますが、かな子は焼き鳥に夢中で忘れてしまっているようです

「はぁ……今日もお酒が美味しい」

ほっぺを桜色に染めて、楓姫が言いました

「はぁ……満足しました」

焼き鳥屋を出て、楓姫とかな子が歩いています

「本当に美味しかったですね」

〆の親子丼をあっさりと平らげたかな子も満足気です

「かな子ちゃん、今日は本当にありがとう」

楓姫が立ち止まり、かな子に向き合いながら言います

「私のわがままにつきあってくれるのは、かな子ちゃんだけなの」

その表情は悲しそうでもあり、嬉しそうでもありました

「楓姫……」

かな子が察したような表情で聞いています

姫と言う立場はとても行動が制限されてしまいます

人間というよりかは、まるで国が所有する『物』のように

楓姫のこのような行動はきっとそれが原因なんだろうな、とかな子はいつも思っています

「私はいつまでも楓姫のお側に仕えております」

楓姫を安心させるように、かな子がほほ笑みました

しかし、ちょうどその時です

暗闇から何者かが飛び出してきて、囲まれます

「楓姫、私の後ろに!」

かな子が身を挺して楓姫を守ろうと、前に出ます

人数は、ひのふの……三人のようです

「(こんなときに……)」

かな子が目を細めて、相手を睨み付けます

「あれ……?」

飛び出してきたものは羽織を着ており、それにつけられている家紋は高垣のもの

そっか……見つかっちゃったんだ。かな子がそう思い

「姫様、どうやらお城に戻る時間のようです」

楓姫のほうを向くと、そこには誰もいませんでした

「まさか……」

そこには文が置かれています。かな子が手に取り読んでみると

『私はもう一軒行ってから帰ります。かな子ちゃん、後はよろしくね』

それを見たかな子はぷるぷると体を震えさせ、叫びました

「姫様の嘘つき―!」

それははたして楓姫に届いたのかどうか



おしまい

楓さんの和服って結構な破壊力があると思いませんか?
以上、一国の姫な楓さんでした
読んでくれた方に感謝を
今日はこれでおしまいです

明日も書けるとは思うのですが、所用で遅くなります……

とつー

豆まきはやりましたか? 私は職場で勝手にやりました。あ、恵方巻食べるの忘れた……

それでは再開します
>>859の楓さんどうぞー

運動不足

三段腹

Pと幼馴染

三段腹な楓さんですか
ちょっと書いてみます

年末、そして年始

この季節には何かと酒の席がつきものですよね?

イベントが盛りだくさんなので、それは仕方ないです

かくいう私もお誘いを受けたら参加してしまう性質なので

それはもう、たくさんお酒を飲んでしまいました

お酒と美味しいおつまみ、私は片方だけだと成立しないと思っています

「あ、あら……?」

後悔先にたたず、ぷにぷにとした私のお腹は、服に包まれるのを拒んだのです

「楓さん、最近少し……ええと、そのふくよかになりましたか?」

プロデューサーが何重にもオブラートに包んで言いました

「すみません、不摂生がたたってしまいました」

深々とお辞儀しようとしても、ぷにゅっとお腹に邪魔をされます

「うう……」

悲しい、悲しすぎます

このお腹は私に徹底的に反抗しているようです

「いえ……俺はそんなに気にしなくても良いと思いますよ。かな……いえ、ぽっちゃりも需要はあります」

今絶対何か言いかけましたよね?

「うちのアイドル達は細すぎる傾向にありますし」

ちらちらとプロデューサーが私のお腹を見てきます

そういう視線って女性はすぐ気づくんですよ? 

「そう、ですか……」

もう何と言って良いかわかりません

私のお腹を見るプロデューサーの表情が何故かほんのり桜色なのもわかりません

しかし、これは女の沽券に関わる問題なのです



私のお腹に熱い視線を送るプロデューサーから、逃げるようにして事務所を飛び出しました

あの人なら……あの人ならきっとなんとかしてくれる

トレーナーさん達が待機している部屋を目指して歩きます

もう、四の五の言っている時間はありません

私は元の私に戻るんです

それが例え修羅の道であったとしても

「麗さん! 麗さんはいらっしゃいますか?」

それが、マスタートレーナーの力を借りなければいけないとしても……

「どうした高垣? 随分と騒がしいじゃないか」

いらっしゃったみたいです

「私に……地獄の特訓を施してください」

ああ……本当ならばこんな言葉を言いたくありません

けれど、やらなければならないのです

明日からやればいいや、なんて思ったら絶対やらないんですから

「ほう……良い心意気じゃあないか」

にやりと笑う麗さんはとても楽しそうです

「ふむ……三段ば……体を絞りたいと」

剣道三段って凄い強そうに聞こえますよね? 関係ないですけど

「はい……もうなりふりかまっていられないんです」

そう、やると思った時に行動は終わっていないといけないんです

「お前の気持ちは分かった、ただ……私の特訓は厳しいぞ?」

「覚悟の上です」

さようなら、私のお酒ライフ。さようなら、今までの私

「まずは食事だ、人間の体は食べるものでできていると言っても過言ではない」

食事の見直しっと。私は麗さんに言われたことを逐一メモを取ることにしました

「それと、今回有酸素運動は行わない」

「え……? それで私の反抗期のお腹をどうにかできるんですか?」

「任せておけ」

いつもは怖い麗さんの笑顔が、今はとても頼もしく思えます

思えますけど……やっぱりちょっと怖いですね

麗さんから説明を受けて、連れてこられたのはトレーニングルーム

いつもはランニングマシンやエアロバイクしか使わないのですが

「お前にはBIG3を基本として、筋トレを行ってもらう」

ビッグスリー? 聞いたことのない単語です

「ベンチプレス、スクワット、デッドリフトの三種目のことだな」

「はぁ……」

ちょっと専門的すぎて何を言ってるかわかりません

「まずは私が手本を見せてやる」

まずはベンチプレスからだ。そう言って、麗さんがラックがある台に仰向けになり、重りがついている棒を持ち上げ始めました

「これは大胸筋を鍛えることができる」

こくこくと、とりあえず頷きます

「次はスクワットだ」

それは私も知っています。しゃがんで伸びてを繰り返すやつです

しかし、麗さんは重りがついている棒を担いでスクワットしてみせました

「次はデッドリフト」

響きが怖いです、特にデッドってところが

麗さんがまたもや重りが付いている棒を、これは何て言ったら良いんでしょうか

……頭でイメージしたのはお芋とか、大根を収穫する時のようなイメージ

それの重いバージョンでしょうか

「とりあえずやってみろ、わからなければその都度教えてやる」

習うより慣れろの精神。嫌いじゃないですが、ちょっと、ええ……

「むー……!」

お、重い……全然持ち上がりません

「初めは軽い重量で良い。まずは正しいフォームを覚えろ」

麗さんのフォームを頭の中でイメージして……あ、持ち上がりました

「そうだ、それで良い」

人間、やろうと思えば何とかなるものですね

それに……達成感というか、私の中の熱いモノが反応します

「筋トレは長く続けてようやく効果が出るんだ。道のりは長いが、その頂はお前が目指すものだろう」

にやりと笑う麗さん

その言葉にちょっぴり感化されて、調子に乗った私はもくもくと種目を消化していきました


次の日は起き上がるのも困難なほど、筋肉痛に襲われましたが……

起き上がった私はマルチビタミンとプロテインを飲むことにします

これも麗さんが勧めていたので間違いはないはずです……きっと

「筋肉を作るためにはビタミンも必要だぞ」

なんて言っていましたっけ

しかし、この錠剤大きくて飲みにくいです……

プロテインは……とっても甘くて飲みやすいですね

そういえば食事のメニューも言い渡されていましたっけ

玄米と低カロリーで高たんぱくなご飯

味気ないし、美味しく感じませんが我慢です

それを続けること数か月

私の体に変化が起こってきました

ぷにょっとした反抗期のお腹はいまや引き締まり、すっきりです

腕も脚も、筋トレのおかげかすっきり……と言うか逞しい?

「良い体になってきたな高垣、とってもきれてるぞ」

「そうですか?」

もうこれで良いと思う反面、今度は筋トレが楽しくなってきました

筋肉が傷めつけられて起こる筋肉痛が、いまや愛おしく感じてしまいます

私は今までの種目とそれぞれの筋肉に効く筋トレを行いました

そうして手に入れた体は……

「いいぞ高垣! フィジークの大会にでも出たらどうだ?」

鏡の前でポージングすると、筋肉が収縮して見事なカットが出るようになりました

「あ、あら……?」

私の目的はなんでしたっけ? 反抗期なお腹をどうにかすることだったような気がするんですが

「私でさえうっとりしてしまうな……」

今やプロデューサーがそっけない視線を送るかと思えば、今度は麗さんが熱い視線を送ってきます

……とりあえず、今度は増量で良いでしょうか?



おしまい

三段腹な楓さんでした
読んでくれた方に感謝を
そろそろ眠さが限界なので寝ます

明日も書くのでよろしくお願いしますね

おつの

楓さん(の筋肉が)キレてるキレてる!
>「いえ……俺はそんなに気にしなくても良いと思いますよ。かな……いえ、ぽっちゃりも需要はあります」
かな子(が)キレてるキレてる!!

お昼からの飲酒って何か良いものです、美味い酒なら尚更……
時間ができたので一つかきます
>>882の楓さんどうぞー

ksk

首都高

アルコール依存

お昼からお酒飲んでいい気分な1に対してこれは草

アルコール依存な楓さんですか
ちょっと書いてみます

あの……もっとほのぼのと言うか、その……ハートフルな安価でも良いんですよ?
……良いんですよ?

「楓ちゃん、ちょっと飲みすぎじゃない?」

あきらかにいつものペースより早い

「大丈夫ですよ早苗さん。お酒は裏切りませんし」

なにその意味深なセリフ……きっとこの子はそんな深い意味はないとは思うけど

「よし、あたしが付き合ってあげるから無理しないでね!」

「もちろんです。お酒を飲んでも飲まれるなって言いますし」

いつものやりとりだけど、今回は楓ちゃんの雰囲気が違う気がした

でも、あたしはそんなことには全然気が付かなかった

「はぁ……ちょっと酔っちゃいましたねぇ」

ふらふらと千鳥足の楓ちゃん

「……何かあったの?」

これだけ楓ちゃんが酔うなんて珍しい

切り上げるタイミングと言うか、ぎりぎりのところはちゃんと考えて飲んでいたと思うのに

けど、今の楓ちゃんはそれに当てはまらない

そこら辺の疲れたおじさんみたいに、ゾンビみたいな足取りをしてる

「ほら、タクシー捕まえたから乗った乗った」

「ええー、早苗さんはどうするんですかぁ?」

まるで子供みたいに拗ねた表情の楓ちゃんの背中を押していく

もう、私よりたっぱがあるから扱いづらい……

「あたしも帰るの。楓ちゃんも寄り道しないで帰るのよ?」

楓ちゃんがしばらくあたしの顔を見てから

「わかりました。おやすみなさい」

ちょっと悲しそうな、切なそうな表情をして、手を振った

楓ちゃんと飲んだ翌日

あたしが事務所に入ろうとすると、どこかぽやぽやとした表情で楓ちゃんが歩いているのを見つけた

「おはよう楓ちゃん。……なんかお酒くさい気がするけど」

昨日は日付が変わる前には家に着いていたはず、あれから寝たらこんなに匂うはずがない

「おはようございます早苗さん。ちゃんとお家で寝たんですけど、夜中に目が覚めてしまって」

えへへ、と笑顔を浮かべる楓ちゃん

「もしかして……それから飲んでたの?」

「眠れるかなって思ったんですけど、駄目でしたね」

やっぱりこの子……何かあったんじゃないの?

レッスン中に楓ちゃんがふらりと倒れたかと思うと、そのまま嘔吐した

他のアイドル達がしぃんとしているなか、響くのは楓ちゃんの苦しそうなうめき声だけ

あたしはすぐにタオルを持って駆け寄り、楓ちゃんの声をかける

「大丈夫? 医務室に連れて行ってあげるから我慢してね」

マストレさんにアイコンタクトを送って、あたしは楓ちゃんに肩を貸す

身長差があるけど、このぐらい……気合いよね、気合い

吐しゃ物を残してきちゃったのは気が引けるけど、この場合は仕方ないわよね

このプロダクションは女性に対しての福利厚生が整ってる

医務室にいる方も女性だし、何かあった時はとても助かるの

「睡眠不足と……それに、深酒のせいですかねぇ」

「そうですか……」

相槌を適当に打つけど、あたしも楓ちゃんの状態は聞かなくてもわかる

「今日のレッスンとお仕事はキャンセルです。今日は寝かせておいてあげましょう」

「すみません、よろしくお願いします」

あたしはお辞儀をして、医務室を去る

さて……楓ちゃんがこんな風になっているのに、担当のプロデューサーは何をしているのかしら

あたしは事務所に向かうと、音なんて気にしないでドアを開けた

楓ちゃんの担当は……いた

「ねぇ、ちょっとお話いいかな」

「はぁ……いいですけど」

楓ちゃんのプロデューサーはきょとんとした顔であたしに応える

はぁってなによ、はぁって! 楓ちゃんがあんな風になってるのにあんたは何してるの?

ふつふつと怒りが湧いてくるけど、ここじゃまずいと思って屋上に場所を変えた

「さっき、楓ちゃんがレッスン中に倒れて嘔吐したの」

冷たい風が吹く屋上で、あたしは彼にありのままを伝えた

「高垣さんが……?」

驚いたような表情をしているけど、その裏には違う感情をあるような気がする

「ねぇ、楓ちゃんに何があったか知ってる……わよね?」

ここ最近の楓ちゃんはまるで自分の体を痛めつけるかのような行動をとっている気がするし

なにより、原因はきっとこの男にあるんじゃないかって、警察官だったころのあたしの勘がそう言っている

「……じ、実はですね」

担当プロデューサーが重い口を開く

「少し前に、その……高垣さんと関係を作ってしまいまして、それから……」

あたしは絶句しちゃった

男と女の関係がもつれるほど、面倒なことはないけど

へぇ……楓ちゃんがこの男とねぇ……ちょっと見る目がないんじゃないの、楓ちゃん?

そりゃ、悪い噂も聞かないし、優しい人ってのは知っているけどさ

でもねぇ、関係がある女をほっぽっているのはどういうことなの?

さっきの一言から、口を開かない担当プロデューサー

まるで、あたしの言葉をまっているような……ちっ、はっきりしない男ね

あたしが舌打ちをすると、びくりと身を縮めるのも気に入らない

「それで、それからどうしたの?」

話が進まないので、仕方なく、本当に仕方なく言葉をかける

「俺が、高垣さんを振ったんです……」

苦笑いをしながら、担当プロデューサーはあたしにそう言った

「はぁ!? あんたが楓ちゃんを振った? なによ、なにが気に入らなかったの?」

ずいっと担当プロデューサーに近づいて、睨む

「そ、その……俺と高垣さんはプロデューサーとアイドルの関係ですし……」

あたしの視線から逃げるように目をそらし、言葉を続ける

「やっぱりね、良くないって思ったんですよ……はい」

へらへらと笑いながら、いけしゃしゃあと喋る男に、あたしは堪忍袋の緒が切れた

やっぱりよくないと思うなら手ぇ出すなよお

あたしの右手が勝手に動いて、男の頬をびんたしてた

「……いってぇ」

「いてぇじゃないわよ! 楓ちゃんはもっと痛い気持ちを味わったのよ?」

この男はきっと楓ちゃんの体が目当てだったに違いない

楓ちゃんは押したら断れなさそうだし、顔だけは良いこの男に騙されたんだ

それに、さっきからあたしの胸ばかり見てるのにはとっくに気付いてる

ああ、楓ちゃん……あなたはもっと男を見る目を磨くべきね

あたしはまだ怒りが収まらず、そのへらへらとした顔を、もう一度ぶった

もうこの男とはなすことはない、あたしはそう判断して、医務室へと向かう事にした

「え……楓ちゃん、帰ったんですか?」

「ええ、片桐さんとすれ違いですね」

タイミングが悪かったようだ、ちっ……あんな男に時間をとられるなんて癪ね

「意識もはっきりしていましたし、明日は大丈夫だと思いますよ」

「わかりました、お手数をおかけしました」

あたしは深くお辞儀をしてから医務室を後にした

……楓ちゃん、本当に大丈夫なの?

どうにももやもやして、LINEを送ったけど、楓ちゃんからの返事はなかった

あの事があってから、三日目

いまだに連絡もないし、楓ちゃんが事務所に来ていない

ちひろさんもあの男も焦っているようで、あたふたとしている

しまいには「高垣さんの様子を見てきてくれませんか?」だって

はん……あんたに言われなくてもこっちはそのつもりだっての

けど、午前中は収録の仕事があったので、それが終わると同時にタクシーを拾って楓ちゃんのマンションへと向かう

……この部屋よね

何度も来たことがある部屋なのに、今日は身構えちゃう

インターホンを何度か鳴らして……返答がない

楓ちゃんはこの部屋にいるはずなんだけど、どうしよう

試しにドアノブを捻ってみると、ぎぃと音と共にドアノブが回った

もしかして事件とかに巻き込まれてないわよね?

心臓の鼓動が高鳴るなか、あたしは楓ちゃんの部屋へと入った

楓ちゃんは……いた

机に突っ伏すようにして、グラスに入ったお酒を飲んでる

「あ……早苗さ~ん♪」

あたしに気付いたのか、楓ちゃんが明るい声を出した

「不用心すぎるわよ、それに……」

部屋中がお酒臭い

アロマか何かわからないけど、それと相まって変な匂いがしてる

それに、部屋に転がっているお酒の瓶の数が、尋常じゃないことを物語ってる

「早苗さんも飲みましょうよぉ……」

「楓ちゃん、あんたねぇ……」

楓ちゃんに近づいて説教でもしてやろうと思って、あたしは思いとどまる

「あ……」

言葉が、出てこない

「どうしたんですかぁ……?」

つやつやしてた髪はぼさぼさで、綺麗だった瞳も濁ってる

目の下にはクマができているし、私にグラスを渡そうとしている手は……ふるふると震えていた

「あ、ああ……」

あたしの目の前にいるのはアイドルの高垣楓じゃない

……お酒に溺れざるを得なかった、一人の弱い女性

「きゃあ……早苗さんはあったかいですねぇ♪」

体が勝手に動いて、楓ちゃんを抱きしめてた

「もう良いのよ楓ちゃん。もう、無理しなくていいの……」

「……早苗さんも、お酒と一緒で、私と一緒にいてくれるんですねぇ」

ぼろぼろな顔で、痛々しい笑顔を作る楓ちゃん

「うん、楓ちゃんの傍にいるから……もう安心だから」

数日会わなかっただけなのに、とても細くなってしまったような楓ちゃんを抱きしめながら

あたしは涙が止まらなかった




おしまい

悲しいなあ

大変だ、楓さんを介抱しにいかなくちゃ……

お酒はほどほどに、ガシャもほどほどに
何事も適量というものがあるんです

それでは読んでくれた方に感謝を
再開は夜からにします
ではではー

??「ガシャの適量っていうのは欲しいものが出るまでですよ、途中で止めたらそれまでの投資が無駄になるじゃないですか」


あと数回だろうし頑張る
幸せ安価をしたい

おつ!
夜は安価とりたいなあ


おつ
>>906
ファッキューちっひ

幸せな安価……有田みかんの収穫体験とか?

今までの安価を見れば何か参考になるのでは?

ああ……毎日クラフトビール飲むだけの生活がしたひ

それでは再開します
>>915の楓さんどうぞー

異世界人

奥山で修行中

アイドル国会議員

動物学者

Pと幼馴染

く…ちょっと目を離した隙に…

ダメだ…スピードが追い付かない……4秒だと遅い?

アイドル国会議員の楓さんですか
ちょっと書いてみます

「高垣さん、今のお気持ちはどうですか?」

「皆さんのご期待に応えられるよう、精一杯務めたいと思っております」

たくさんの拍手と、たくさんのフラッシュ

こんな私ですが、本日から国会議員ですか

実感がわきませんし、何をすればいいんですか?

こう、あれですかね……ばかやろーとか、はげーとか言えば良いんですか?

アイドルという、支持率を持つ人物を政党に組み込む

うんうん、なんとなくわかります

やる気に満ち溢れ、これからの日本を導くような人物が好ましい

あ、これ私駄目な奴じゃないですか?

超法規的措置で、アイドル活動も議員の活動とみなす

……アイドルを辞めなくていいのは助かります、が

私、アイドル活動だけで良いような気がしてきました

「いやあ、とうとう我がプロダクションから議員が選出されましたか」

プロデューサーが、わっはっはと笑います

もう……他人事だと思ってのんきなものですね

「今日からは楓『先生』と呼んでくださいね♪」

「……すんません、調子乗りました」

ふふ、わかってくれればいいんです

とはいえ、私よりふさわしい人がこの事務所にはいると思ったんですけどね

くっそ飯食ってる間に

「楓さん、そろそろお仕事の時間です」

私に声をかけてきたのは、秘書として働いてもらっているマキノちゃん

スーツ姿がとてもきまっていて、できる女って感じです

「ええ、それじゃあ行きましょうか」

ええと……今日は委員会のお話でしたっけ

私にまかせていいんかい、んー駄目ですね

他の方たちの前で言ったら怒られちゃうかしら

…………
……
…はっ! ぼーっとしてました

そっと周りを見渡してみると、偉そうな方たちが議論を交わしています

うわぁ、私にはちょっと難しくて良くわかりません……

「高垣さんはどう思われますか?」

「ええと……素晴らしいと思います」

私が当たり障りのない返事を返すと、また議論の交換が始まりました

ふぅ……退屈ですね

「お偉い先生方とのお話はどうでしたか?」

意地悪そうな笑みでマキノちゃんが聞いてきます

「難しいお話でわかりませんでした、今はぱーっと飲みたい気分ですね」

そう、お酒をゆっくりと飲んで気分を落ちつかせたいな

今日はお魚の気分だし、川島さんたちも誘って飲みに行きましょうか

気分を切り替えて歩いていると、先ほどの委員会の方たちがぼそぼそと何か言っているのが聞こえました

「あの女、政治のことがまるでわかっていないんじゃないか?」

「そりゃそうでしょう、男に媚びを売る仕事しかしてないんですから」

あら、聞こえちゃってますよー? 本人ここにおりますよー

「行きましょう、どうせ楓さんを妬んでいるだけですから」

「えっ? ちょっと待ってマキノちゃん」

私の前を歩き、ヒールの音を高らかに先ほどの方に近づいていくマキノちゃん

「高垣がお世話になっております」

恭しく頭を下げた後に、相手の耳元で何か言っているようですね

良くわかりませんが、とたんに顔色が悪くなっているようですけど

「挨拶が終わりましたので行きましょう」

にっこりと楽しそうに笑うマキノちゃんに、細かいことは聞けませんでした

あれから川島さんたちに連絡を入れると、快く了承をもらったので飲みに行くことにしました

「楓ちゃん、いえ楓先生ね。お疲れ様でした」

「先生なんて柄じゃないでしょうに」

「あ、あの……慣れないことで疲れていないですか?」

私を笑いものにしてる、川島さんと早苗さん。ああ……美優さんだけがオアシスです

もう、今日はとことん飲んじゃいますよ

私の事を普通に扱ってくれるこの人たちとの時間はとても楽しい

「きっと楓ちゃんのファンがいるわよ、間違いないわ」

「そうそう、サインの一つでもあげたら言う事きいてくれるって」

「あ、グラスが空ですね……何を飲みますか?」

やっぱり美優さんがオアシス……あら、さっきもこんなこと思いましたっけ

それにしても、だいぶ飲みましたね。時間があっという間に過ぎちゃった

「ほらほら、楓ちゃんらしくないわよ? もう一杯いっちゃおう!」

早苗さん、肩をバシバシ叩くのはおば……いえ、何でもないです

サインで票も返そう
そういりゃアイドルのサインって公職選挙法に抵触するのかね?

「とにかく、楓ちゃんらしくて良いと思うわよ」

ぐいっとグラスを呷りながら川島さん

「うん、他の人たちにできることがあるんだからさ」

揚げ出し豆腐をつまみながら早苗さん、それ私のですよ?

「そう、ですね……私たちはアイドルなんですから」

ほっぺを桜色に染めて、美優さんが言いました

……そうですよね、私はアイドルなんですよね

歌って踊れる議員、なかなか素敵な響きじゃないですか

>>931
サインした色紙を渡すのはNG
相手から差し出されたものにサインして返すのは基本的にセーフ

「高垣さん、何か案はありますか?」

また呼ばれてしまった委員会のお話

しかし、今日の私は一味違いますよ

「国民の皆さんを楽しく笑顔にさせること……『アイドルでもっと笑顔に』法律案を提出したいです」

あ、皆さんぽかーんとしてる

「私たちアイドルにはその力があります、どんよりしてるより笑顔のほうが素敵じゃありませんか♪」

あ、今度はざわざわしてる

難しい話はわからないですけど、大人も子供もおじいさんもおばあさんも

笑顔にする方法は私知ってるんですから

何ていっても、アイドルですからね♪


おしまい

あああ……学がないのを痛感してしまいました

読んでくれた方に感謝を
今日はこれでおしまいです
安価を貰えるのもあと一つか二つですね、最後までどうぞお付き合いを

そういえば、1000まで行ったら勝手にHTML化されるとかありましたっけ?


できたら2スレもやってほしい
その意見は多いと思うし

乙、実によかった

>>933
解説サンクス、ということはアイドルの街頭演説兼サイン会は合法ということか…

おっつおっつ

>>937
その気になって突っつこうと思えば「サインに使用したペンのインクの代金分の寄附にあたる」とかできるんだけどね
アイドルみたいなサインに大きな価値がある人だと特に

>>937
どっかの政党所属なら、交付金原資(多分支部長になるから)で無料ライブできるよ。マキノんも早苗さんもわかるわさんも応援演説という事で参加可能。

>>938
中央選管
「そこまで細かい事言いません」キリッ

>>939
選管じゃなくて国会でクイズ大会してる人たち

>>940
ああ、そっちね(白目)
でも現役でファンをガッチリと抱えているからそれすると、大炎上確定案件。
つか緑の大魔王が徹底的に暗躍するっしょwww

初見ですが乙、楓さんメインだけでここまで書けるなんてすごすぎる

こんばんは、ぼちぼち再開したいと思います
それでは>>946の楓さんどうぞー

ksk

ブルマ

ネカフェ生活満喫中

Pと結婚して夫婦

これが最後の安価になるかもしれないと考えると……悲しい…悲しい……

>>948
1個10レス程度だからギリもう一つ行けるかも?(と言いながら1レス消費)

ネカフェ生活満喫中な楓さんですか
ちょっと書いてみます

「すみません楓さん!」

出会い頭にプロデューサーに頭を下げられました

私、何かされましたっけ? 心当たりがありません

「ええと、どうかしたんですか?」

「こちらの不手際で、今住んているマンションの契約が……」

頭を下げたプロデューサーはとても申し訳ない顔で

「私の住んでいるマンションの契約が?」

「契約ができなくて、ええと……楓さんの住むところが無くなってしまいます」

これは一大事ってやつですよね? プロデューサー

「新しいマンションを探してはいるんですが、一ヶ月は無理かと……」

一年の十二分の一、書いてみると短いですが、時間に直すとものすごい数字です

「困りましたね……どうしたらいいんでしょう……」

「本当にすみません。女子寮もいっぱいで、こちらで用意できるのはビジネスホテルくらいで……」

あ、それなら安心で……良いこと思いついちゃいました♪

「私に良い考えがあります」

胸を張って、私はプロデューサーに言います

「ネットカフェに行きます」

ばれないように帽子を深くかぶって

私は高垣楓じゃありませんよー、見ても面白くありませんよー

手にはその日の着替えを一式。たくさんの荷物は置けないので、事務所のロッカーを借りました

……しかし、無理やりすぎましたかね

「おいアンタ何言ってんだ? 何かあったらどうすんだ、おい」

あれだけ口調が荒いプロデューサーを見たのは初めてですし……

まぁまぁ、成るようになりますよね

私はドキドキを抑えながら、ネットカフェの入り口へと足を踏み入れました

「いらっしゃいませ、初めてのご利用ですかぁ?」

まゆちゃんにとても似ている女の子が出迎えてくれました

「ええ、初めてです」

もしかして、一見さんお断りなんてルールがあるのかな

「会員証を作りますので、身分証の提示をお願いします」

えっと、バイクの免許証で大丈夫よね

「高垣楓さんですね、少々お待ちください♪」

……あら? バレちゃいました?

でも、私の名前には特に反応がありませんでした。同姓同名だっていますもんね、ええ

「じゃあ、まy……私が施設の案内をしますね」

「はい、お願いします」

店員さんが細かく説明をしてくれます

お部屋の種類とシャワーやトイレ、ドリンクバーの場所

「なるほど……ネカフェって凄いんですね」

「そうなんです、凄いんですよ」

こんなに設備が充実しているなら、期待できます

私はフラットシートのお部屋を選び、店員さんの案内通りお部屋へと向かいました

「おじゃまします」

周りの人たちの迷惑にならないように小声で

私はお部屋の中に入ると、何が備え付けてあるか確認してみました

クッションと大きなパソコンと机、それにゴミ箱

うんうん、広さも丁度良さそうです

荷物を置いてから伸びをすると

くぅっとお腹が鳴りました

もう夕ご飯の時間ですね、今日は私の新しい?お部屋が決まったのでお酒飲んじゃいましょう♪

おそらくご飯のメニューだと思われるものを広げてみます

……へぇ、何だかファミレスみたいなメニューですね

ぺらりとページをめくると、次はお酒のメニューがずらり

あっ、日本酒がこんなに置いてあるんですね

ああっ、おつまみもたくさんあるじゃないですか

「……よし」

何を頼むか決めたので、備え付けの電話で注文をしましょう

しばらくすると、こんこんこんとノックされます

きましたね、こちらは準備万端ですよ

どうぞ、と声をかけると「失礼します」店員さんが入ってきます

「お待たせしました、精一杯作ったのでいっぱい食べてくださいねっ」

響子ちゃんに似てますね、んん……でもこの子は左で髪を結ってますし、他人の空似でしょう

そしてテーブルに並べられるビールと冷ややっこ、それに唐揚げ

「ありがとうございます」

私がそう言うと、響子ちゃん似の店員さんは笑顔で去って行きました

ハイカラも良いですけど、ビールと唐揚げも素敵な組み合わせ

熱々の唐揚げを食べてから、ビールで流し込む……これは鉄板というやつです

きっと揚げたてなのでしょう、ほかほかと湯気を立てて美味しそうな匂いの唐揚げ

「いただきます、それと乾杯♪」

唐揚げを箸で掴むと、それだけでさっくりと上がっているのがわかります

口に運ぶと、鶏肉の弾力とちょっぴりニンニクを効かせた濃い味付け

そしてすかさずビールです

「はぁ……おいしい」

これはビールが進んじゃいますね

ひとしきり唐揚げを楽しんだ後は冷ややっこ

うん……これも美味しい

薬味がたっぷりと乗っているのが嬉しいですね

「あら、ビールが無くなっちゃいました」

気付けばもうグラスが空っぽ

もう一杯頼んじゃいましょう、まだまだ夜はこれからです

あ、パソコンもありますし何か面白いものがあるか覗いてみましょう

お酒を楽しみながら、色々なことができるところですね、ネットカフェって



「ふぅ……満足です」

ビールもおかわりしたし、お腹もいっぱいです

さっき動画で見た、唯ちゃんの『唯さんぽ』も面白かったですし

そろそろお風呂入って寝ましょうか

……実を言うと、ちょっと不安もありましたけど

これならここでの生活も楽しく過ごせそうですね

明日は本を見て、DVDも借りてみようかな

まだまだ私の知らないネットカフェの魅力を、満喫しましょう♪



おしまい

読んでくれた方に感謝を
今日はおしまいです

もう一つ書けそうなので、最終安価を明日貰います
それと、次スレってもう立てたほうが良いですか?
一つのスレ使い切ったことがないもので……

明日最終書いてからでいいよ

わかりました
ではまた明日―

他人の空似だな

冷房効きすぎるとこ行って風邪ひいたトラウマから、夏場利用する時は上着一枚持っていくな…

ネカフェはパーカー持ってかないと寒い乙

こんばんは、それでは最終安価をもらいます
それでは>>971の楓さんどうぞー

お母さん

マジシャン

Pと結婚して夫婦

漫画家

最後でやった……甘いのでお願いしたい!(懇願)

まともな奴でよかった・・・

Pと結婚して夫婦な楓さんですか
ちょっと書いてみます

シリアスなしの甘々でいくぜー

柔らかくてとてもいい匂いがする

俺の好きな匂いだ、とても落ち着く

「あまえんぼさんですね」

楓さんの声が聞こえ……あれ? なんで楓さんの声が聞こえんだ?

状況を確認しようと目を開けてみても、前が見えない

ただ、顔が柔らかいものに挟まれている感覚はある

「そんなに動くとくすぐったいです」

くすくすと笑う声が、少し上から聞こえた

「おはようございます、あなた」

「おはよう、楓さん」

あなた? 貴方の意味か、それとも良い人のあなたの意味か

「あん、くすぐったいですってば」

こっちはちょっと息苦しいよ? 

息苦しくて、暖かくて、良い匂い。これらが導き出すもの、それは

「私の胸の中の居心地はどうですか?」

「最高だけど、そろそろ離してもらいたいかな」

ずっとこうしていたいけど、それはちょっとまずい。男って大変なんだよ






無理やり楓さんの胸の中からはいずり、枕のある高さまでたどり着く

「もっとこうしていたかったのに、残念……」

そんな台詞をはいているけど、楓さんは悪戯っ子みたいに笑ってる

「楓さん、俺たち何で一緒に寝てんの?」

俺の言葉に楓さんはぽかんとした表情の後

「ふふっ……」

いたっ! 痛いよ楓さん! ほっぺ抓らないでよ

「寝坊助さんにはこれくらいしないと」

あー……今の痛みで完全に頭が動き出した

「おっけー、ようやく目が覚めた」

「自分のお嫁さんを忘れてしまうような旦那さんは知りません」

ぷいっと逆方向を向いてしまう楓さん

「……つーん」

擬音を口にしないで、可愛いけど

さて、楓さんを無理向かせるにはどうすればいいかな

「ああっ! 楓さんに抓られたほっぺが痛い、これはもう駄目かもしれない」

大げさなリアクションと声で痛いアピールをしてみた

「ああ……最後に楓さんの顔を見たかったな」

がくり……

「はぁ……仕方ない人」

そう言った楓さんはくるりとこちら側を向き、俺の顔を両手で挟み、耳元で囁く

「最後じゃなくて、これからずっと私の顔を見せてあげますからね」

やべぇ、ぞくぞくする

「よーし、朝の準備終わり! 朝ごはんは?」

「ちゃんとできでますよ、今日の卵焼きは上手にできました♪」

嬉しそうに言う楓さん、その頭には寝癖がぴょこりと立っている

「そっか、それは楽しみだ」

「はい♪ たくさん食べてくださいね」

楓さんが動くたびに、寝癖もぴょこぴょこと動く

面白いから食べ終わるまで放っておこう

「いただきます……うん、卵焼き美味い!」

俺の好みの味付けだし、焼き加減も丁度いい

「では私も……うん、美味しいですね」

嬉しそうな楓さんの笑顔を見ると、俺もつられて嬉しくなってしまう

「今日はお互いオフだし、どこか行く?」

「そうですね……私はあなたと一緒ならどこでも」

おおう……破壊力のあるセリフだ

「そこら辺ぶらぶらしてみようか、今日は天気も良いし」

「はい、じゃあお片付けしちゃいますね」

そそくさと楓さんが食器の片づけを始める

自分の持ち歌を鼻歌で歌いながら、何だか嬉しそうに

……しかしまぁ、俺が楓さんと結婚できたなんて奇跡に近いな

ピンク色の可愛らしいエプロンを付けた嫁さんを見ながら、そう思う

楓さん可愛いな……いかん、顔がだらしなくなってる

楓さんの片付けも終わり、お互い出かけるたびに着替えることにした

「覗いちゃ駄目ですよ?」

何て言われて覗かない奴はいるだろうか? 俺は覗かないけどね、うん……

こういう時、男は準備が簡単で良い

テーパードのデニムにニット、寒いからコートとマフラーでフル装備だ

十分もあれば俺の着替えが終わるんだけど、女性はこういう時はとても長い

長いけど、それを何も言わずに待つのが男ってもんだ

長いほど、気合いを入れてくれてるってことだし、何より楓さんお洒落さんだしね

……今日はミニスカートかな、それともショーパンかな、楽しみだなぁ

「お待たせしました」

白いコートにライトブルーのニットワンピースに身を包んだ楓さん

ほお……予想は外れたけどこれはこれで……

黒いタイツに包まれた脚から、顔まで見上げてみると、むぅっとした楓さんと目が合った

「えっちな目をしてます」

「そんなことないよ? うん、ほんとだよ」

い、いやー! 今日も楓さんは美しいなー! ……ちょっとわざとらしかったか

「調子良いんですから……そろそろ行きましょうか」

そう言うと、片腕に寄り添ってきた

「外は寒いですから、仕方ないですね」

そういうことにしておいてあげますよっと

「あ、これなんてどうですか?」

「うーん……ちょっと若すぎないかな」

何でも揃ってそうなショッピングモール

そこで、楓さんが俺の洋服を見繕っているんだけど

「まだまだ若いでしょう? 気持ちも若くしないと駄目です」

めっ、と人差し指を立てて怒られてしまった

「そうかなぁ、楓さんの隣に立ってて変じゃない?」

俺だけなら別に良いんだけど、楓さんが変な目で見られるのは嫌だな

そんなことを言うと、楓さんはきょとんとした後

「他の人は良いんです。それに、あなたは十分素敵ですよ」

さも当然とばかりに言い切った。すごい嬉しい、けど凄い恥ずかしい

「そろそろお腹空かない?」

「そうですね、そろそろお昼にしましょうか」

洋服を見たり雑貨を見たりしていたら、あっと言う間に時間が経ってしまった

女性の買い物は長いっていうけど、一緒に楽しんだらそんなの気にならないもんだ

それに、誰かの感性があると、見るものが広がって実に楽しい

「ううん……何が良いですかね?」

「なんか麺が食べたい気分だな、あそこの店にしよう」

何語かわからないから店の名前がわからないけど、パスタがありそうなのはわかる

女性は好きなんでしょ、パスタ

「私はラーメンでもいいですけど、そこにしましょうか」

この人全然飾らないよなぁ……

俺はトマトソース系のパスタ、楓さんはクリーム系のパスタをそれぞれ頼んだ

「楓さん、ワインあるよ」

「夜までお酒は止めておきます。酔ってしまったらせっかくのデートが勿体ないです」

じゃあ俺も夜まで止めておくか、一人で飲むのもなんだしね

しばらくすると、頼んでいたパスタがテーブルへと運ばれてきた

「いただきますっと」

「いただきます」

お互いの声が重なり、同時にフォークを手に取った

顔を見合わせて、吹き出しそうなのを堪えながらパスタを口に運ぶ

うん、美味いな

「これ美味しいですね。では、あーん♪」

上手にパスタを巻いて、俺の口へと持ってきた



「うん……美味い。じゃあお返し」

ぎこちなくパスタを巻いて、楓さんの口へ運ぶ

「あーん……あら? あーん」

ふふふ……誰がすぐ食べさせると言った? お前はこのパスタを目の前、ああっ!

「……美味しい♪」

がしりと腕を掴まれ、強引に食べられた……

「あーんしてる楓さんの顔をもっと見ていたかったのに……」

「じゃあいっぱい見せてあげます♪ はい、あーん」

それは俺への気遣いなのか?

いや、きっとパスタが美味しかったからもっと食べたいに違いない


昼食を食べ終わった俺たちは、食材と今日の晩酌用の酒などを購入した

「あ、このお酒前から気になってたんです」

「これも捨てがたいですね……うーん」

「これお酒に合うんじゃないですか?」

「こっちも美味しそう……」

さっきから一人ではしゃいでる、まるで大きな子供みたいだ

「こらこら、迷子にならないように気を付けるんだよ」

そう言うと、楓さんがぎゅっと手を繋いできた

「じゃあ、ずっと繋ぎとめていてくださいね?」

そんな時だけ大人の顔をするのはずるいんじゃないかな

「いやー、随分買ったな」

ようやく我が家に着いたのは夜に差し掛かる時間だ

「先にお風呂にします?」

楓さんの言葉に、俺はにやりと笑って答える

「一緒に入ってくれる?」

「ええ、良いですよ。もうお風呂は出来てますので入っちゃいましょう」

さらりと答えられた、もう少しこう……悩むとかないの? 嬉しいけどさ



そんなやりとりの後、俺は浴槽の中で楓さんを待っている

「お背中流しますね」

髪をアップにして、バスタオルを巻いた楓さんが浴室へと入ってきた

歳をとると、見えないエロさみたいなのがわかってくる

やめよ、おっさんくさい




「ふぅ……良い湯だった」

マジでのぼせるかと思った

「ぽかぽかですね♪」

楓さんはほんのり桜色。色っぽい感じだ、特にうなじがせくしー

「じゃあ、飲もうか」

「はい、飲んじゃいましょう。おー♪」

おお、行動が早いな。てきぱきと楓さんが準備をしていく

あんなに細い体のどこに元気を隠し持っているのやら

テーブルには酒とおつまみがもうセットされた

楓さんが、まだですか? まだなんですか? と散歩を待つ犬みたいな表情でこっちを見てる

「今行くよ」

俺は仕方ないといった風に声をかけた

「「乾杯」」

こちりとグラスが鳴る

……お、これ美味いじゃないか

「ふぅ……おいし」

どうやら楓さんも気に入ったようだ

「良い焼酎ですね、しょっちゅうは飲まないので美味しく感じます」

「俺も普段はあまり飲まないからね。でも、これならしょっちゅう飲めるよ」

俺の返事に、ぱあっと目を輝かせる楓さん

「さすが私の旦那さんですね」

「そりゃどうも、ほらほら、酒だけじゃなくておつまみも食べて」

美味い酒と美味い肴。長い夜にこれがあれば幸せだ

あと、可愛い嫁さんもね

「あなた、ちょっと寒くありません?」

そう? 酒飲んでるし、空調も効いてると思うけど

「私は寒いと思うんですけどねぇ……」

ちらちらとこちらを伺うように、楓さんが視線を送ってくる

なるほど、これはそういう口実か

「うーん……言われてみれば少し寒いか、こっち来る?」

「わーい♪」

俺が言うと、楓さんがすっ飛んできた

「あったかい……」

すりすりと頬ずりをして、ご満悦みたいだ

「大丈夫? まだ寒い?」

楓さんのさらさらした髪を撫でながら聞く

「うーん……まだちょっと寒いです」

めちゃくちゃくっついてて、俺はとても温かいです、はい

「だから……」

楓さんが目を潤ませて、上目づかいで俺に言う

「お布団の中で、温めてくれませんか?」

――あなたの体温をもっと感じたいんです。最後にそう付け足した

「……汗かいちゃうくらい温かくなっちゃうけどいい?」

「良いですよ。ねぇ……早く温めてください」

おねだりするような楓さんの声で、とどめを刺された

「手のかかる嫁さんだなぁ」

お姫様だっこで楓さんを抱えると、ぎゅっと楓さんが抱きしめてきた




おしまい

読んでくれた方に心からの感謝を
たくさん安価もらって最後まで書けて良かったです

二軒目の予約取れたので、行く人はこちらへ
こっちは埋めちゃってくださいな

【モバマス】楓さんで安価 二軒目
【モバマス】楓さんで安価 二軒目 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1517925181/)

じゃあ感想でも。
甘々なのが一番いいと思う。
2スレ目ではそういうのを増やしたい

乙乙。二軒目も楽しみにしとるで

最後は全世界線の楓さんが大集合して力を合わせて困難を解決するのも面白そう
でもあまり増えすぎたら無理か


安価確認からの書くスピードと文章量がすごいと思う
次スレでも肝臓に気を付けてがんばってください

>>997
Pとチッヒにやられた楓さんがPと夫婦の楓さんをどうにかするって?

>>1000なら泡姫な楓さんを見れる

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