【咲 -Saki- 】優奈「佐々野先輩、お誕生日おめでとうございます!」 (142)




「カン!」ガッ


「嶺上―――…」


「開花ならずや!」タン


「…………」



愛宕 洋榎―――


飄々として、それでいて自信に満ちた佇まい―――


伝統的に中堅にエースを置く、強豪 姫松高校の絶対エース―――


そんな彼女に夏のインターハイ、ちゃちゃのんは負けたんじゃ――――





(ちゃちゃのんの一手はコレ…!)


(どうかいの!)ピシッ


「ロン」


「!?」


「清老頭!!」




ちゃちゃのん「――――ふぇぇっ!?」ビクンッ






SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1513247658



【こんな感じの作品です】


・12月14日、ちゃちゃのん誕生日ということで見切り発車です。


・広島県 鹿老渡高校の津秋 優奈さんと、ちゃちゃのん(佐々野 いちご)を主人公とした咲SSです。


・【咲 -Saki- SS】 大学編 - いちご味 - ちゃちゃのん「おかえりなさい」と直接の繋がりはありませんが、一応 姉妹作的な感じです。

【咲 -Saki- SS】 大学編 - いちご味 - ちゃちゃのん「おかえりなさい」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1450099989/)

本編終了後はどん亀進行で、番外編を今もだらだらと書いてます。





http://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira149693.png
◇ 津秋 優奈(つあき ゆうな)…2年。 鹿老渡高校 先鋒

全国大会 団体戦一回戦 先鋒戦にて、強豪 姫松高校を相手に5万点以上の差をつける活躍をみせた実力者。

長いあいだ名前のない怪物扱いだったが、第174局「好敵」にて登場。



http://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira149670.jpg
◇ 佐々野 いちご(ちゃちゃのん)…3年。 鹿老渡高校 中堅。 12月14日生まれ。 身長148cm。

全国大会 団体戦一回戦 中堅戦で姫松の愛宕 洋榎に清老頭をくらって全国に戦犯顔を晒しちゃった女の子。

その可愛らしいルックスと高い麻雀の実力で注目を集め、アイドル的な人気がある。







<1>


【広島・鹿老渡高校 麻雀部部室】12月某日―――



いちご「――――ふぇぇっ!?」ビクンッ


優奈「佐々野、先輩……?」


鹿老渡2年「いちごちゃん、ようやっと起きたみたいじゃね~~」ケラケラ


優奈「…………」


見知った顔ぶれに、見慣れた景色。


ここはちゃちゃのんが3年という時間を過ごした場所。




いちご「―――部室?」キョロキョロ


優奈「そうですが。 佐々野先輩、もしかしてまだ寝ぼけとります…?」


いちご「ふぇ……?」



彼女の名前は津秋 優奈ちゃん。


ちゃちゃのんの一つ後輩の高校2年生。


夏のインハイでは団体戦、最も実力が必要とされる先鋒を務めるほどの実力者。


実際 彼女は今年のインハイで、全国大会の常連校 姫松高校の先鋒さん相手に 5万点以上もの差を付ける大活躍をした。






優奈「佐々野先輩―――」


優奈「うちら後輩の練習 見とるうちに、そのまま寝ちゃったんですよ…」


いちご「あぅぅ… そうじゃった……///」


鹿老渡2年「いちごちゃんは、ホンにボケボケしとるけぇのぅ」アハハ


いちご「そ、そんなことはないじゃろ~~」


鹿老渡2年「いやいや、そんなんありまくりじゃろ~~」


いちご「むぅ~~~」


鹿老渡2年「いちごちゃんの可愛ええ ふくれっ面、頂きました~~♪」パシャッ


いちご「ちょっ…」


優奈「部活中―――」ムスゥ


いちご「あ… 優奈ちゃん、ごめんのぅ…」


鹿老渡2年「コイツは申し訳ない!!」


優奈「…………ハァ」



また怒られちゃった―――


優奈ちゃんはとってもしっかりした後輩ちゃんで、ちゃちゃのんはいつも怒られてばっかりじゃ―――






いちご「――――?」


いちご「ほうじゃ、このタオルケット……?」


いつの間にかちゃちゃのんにかけられとった、とってもぬくい にゃんこ柄のタオルケット―――




憩「優奈ちゃんが、眠れる森のいちご姫に優しく掛けたったんやで~~」ニュッ


いちご「ありゃ… 憩ちゃんじゃ……?」


優奈「さっきから、いましたよ…」


憩「どもどもやでーー♪ また勝手にお邪魔してますよーぅ」クスッ


いちご「そっか… 憩ちゃん、今日はようきんさったねぇ♪」ニコッ





いちご「それんしても…」


いちご「憩ちゃんは今日もピンクのナースさん姿が、とってもキュートじゃのぅ♪」


憩「えへへー♪ いつもキュートないちごちゃんから、とってもキュート言われてしまいましたよーぅ♪」ニコニコ


優奈「ただの社交辞令や思いますけど…」


憩「んもぅ~~ 優奈ちゃんのイケず~~」ツンツンッ


優奈「ちょ… 何、つついちょるんですか…」ヤメッ…



優奈ちゃんの後ろからひょっこり現れた、笑顔がとっても可愛ええショートカットの女の子。


少し間延びしたような大阪弁に、何故かいつもナース服を着た彼女は、北大阪の三箇牧高校2年生の荒川 憩(あらかわ けい)ちゃん。


麻雀がとっても強うて、団体戦では総合力で同じ北大阪の千里山女子に負けはしたものの―――


個人戦では全国2位っちゅう、とんでも成績を残しとるくらいの麻雀の鬼みたいな とっても凄い子じゃ―――





いちご「優奈ちゃん、タオルケットどうもありがとーの♪」ニコッ


優奈「風邪… ひかれても困りますから……」


憩「もぅ、優奈ちゃんはツンデレさんやねーー」クスクス


優奈「ちゃいますけぇ……///」プイッ


憩「うふふ… 優奈ちゃん、照れとる、照れとる~~♪」


優奈「照れちょらんけぇ……///」


憩「お顔が耳まで真っ赤やで~~」ニコニコ


優奈「夕日の関係で、そう見えちょるゆーだけです……」


いちご「えへへ……♪」


同い年で麻雀がとっても上手な二人。


特に優奈ちゃんは、憩ちゃんのことをライバルとして随分と意識しとるようじゃ。





優奈「そこ!! 何を笑っちょるんですか!!」ビシィッ


いちご「わひゃっ!? ゴメンなさい!!」


優奈「もぅ… 先輩なんですから、そんなんでイチイチ謝らんで下さい…」


いちご「ご… ゴメンなさい、なんじゃ…」


優奈「ほら、また…」


いちご「あぅぅっ……」シュン…



優奈「だいたい佐々野先輩は、先輩としての威厳が足りなさすぎるんです…」


優奈「そんなだから、後輩達からいちごちゃんとか呼ばれて―――」


鹿老渡2年「はいはい、優奈っち。 いちごちゃん涙目なっとるけぇ、そんくらいで許してやってな~~」


鹿老渡2年「いちごちゃんは、うちら鹿老渡のゆるきゃらじゃけぇ。 威厳出せゆーんは、ちぃーと難しいじゃろね~~」アハハ


優奈「あなたは、またそんなことを……」


優奈「…………」チラッ


いちご「」プルプル





優奈「少し言いすぎました。 ゴメンなさい…」ペッコリン


いちご「ん~~ん、優奈ちゃんのゆー通りじゃけぇ…」


いちご「ホンに、ゴメンのぅ……」


優奈「…………////」




憩「うふふ… 鹿老渡の子はみんなええ子やね~~」


憩「ご褒美にウチがなでなでしてあげますよーーぅ」ナデナデ


優奈「ちょっ… やめ―――」


いちご「えへへ……♪」


優奈「…………」ジトッ


いちご「わひゃっ!?」





いちご「それんしても憩ちゃん、お迎え行けんでスマンかったのぅ…」


いちご「憩ちゃん、わざわざウチの後輩の指導に顔出してくれたゆーに―――」


憩「そんな、気にせんでええですよーー」


憩「鹿老渡には立派なコーチ先生もおるんやし、ウチのは指導なんてそんなご大層なもんやないんやでー」


憩「ウチはただ可愛ええ いちごちゃんと優奈ちゃんと遊びたい思うて、こうして顔出しとるだけですよーー」ナデナデ


いちご「んもぅ… 憩ちゃんってば、またそんなことゆーて…」



高校入って少し経った頃、ちゃちゃのんが麻雀で伸び悩んどった時―――


大阪に麻雀がとっても 強い子おるゆー話を聞いて、会いに行ったことがちゃちゃのんと憩ちゃんの最初の出会い。


その頃の憩ちゃんはまだ中学生の女の子じゃったが、あの時はとにかく何かキッカケになるものが欲しかったんじゃと思う。


年の近い、麻雀の強い女の子と勝負して、ちゃちゃのんにゃぁ何が足らんのか…


ちゃちゃのんに必要なもの、それが何なのか―――この子と対局することで、何か見えるかもしれん思ったんじゃ。







結果は、ちゃちゃのんの完敗―――



世の中にゃぁ、ちゃちゃのんの想像も及ばんような 強い子がおるゆーことを思い知らされた―――





そして、それは―――



いくら手を伸ばそうと、絶対に届かん高みがあるんじゃと―――






そんな、残酷な現実を―――



実感としてうっすら感じることとなった、最初の敗北じゃった――――







憩「おかげさんで、いちごちゃんの可愛ええ寝顔もバッチリ見られましたし―――」


いちご「ね、寝顔! 見られちょったんか!?」


憩「ええ、それはもぅバッチリとーー」


憩「だらしなくよだれを垂らしながら、寝言にウチへの愛の言葉を囁く いちごちゃんはホンマ天使のようでしたーー♪」クスクスッ


いちご「ふぇぇっ!? ちゃちゃのん、そんなだらしない姿を見られちょったんかぁ!?」ウヒャーー


優奈「荒川さんの嘘に決まっとるでしょ!!」


憩「んもぅ… 優奈ちゃんのイケずぅ~~」ツンツン


優奈「ちょ… だから、どうしてツンツンするんですか!?」


いちご「う、嘘じゃったんか……」


優奈「まぁ、だらしなくよだれは垂らしてましたけど……」


いちご「~~~~!?」ゴシゴシ


鹿老渡2年「いちごちゃん、そん時の写メ見る~~?」アハハ


いちご「ひゃ~~ それ消して~~~!!」バタバタ


優奈「もぅ……」ハァ…






いちご「ほぇ……?」キョロキョロ


優奈「どうかされました…?」


いちご「今日は先生、まだ来ちょらんのじゃね…?」


鹿老渡2年「ぷっ… またいちごちゃんのボケ発動! 効果はバツグンじゃ…」


優奈「先生方は試験明けでテストの採点。 コーチは3年生の今後の事で、今日は部室にゃ顔出せんゆーとったでしょ―――」


優奈「じゃけぇ、うちらは絶賛 自主トレ中。 こうして荒川さんと打っとったんやないですか」


いちご「そ、そうじゃったの…」


憩「今日のいちごちゃんは、いつも以上にぽや~~んとしとりますねーー」クスクス


いちご「う~~~~///」






いちご「そういえば―――」


いちご「さっきまで、憩ちゃんと対局しとったんじゃよね―――?」


優奈「えぇ、まぁ……」





ロン―――



その掛け声に、ちゃちゃのんは起こされたんじゃった……?







優奈「………悔しいですけど、やはり荒川さんは強いです…」


憩「またまたぁ、優奈ちゃんは鹿老渡高校 期待のエースやないですかーー」


いちご「うんうん、優奈ちゃんはとっても強い子じゃよぉ~~」


優奈「それでも、荒川さんにゃぁ 及びませんでした……」


いちご「そりゃぁ、憩ちゃんはとっても強いけぇ―――」


優奈「そんなんは、何の言いわけにもなりゃしません……」



優奈「さっきの対局にしたって、結局 最後は荒川さんに持ってかれてしまいましたし―――」


鹿老渡2年「ま~~ 振り込んだのは、ウチなんじゃが―――」アハハ


鹿老渡2年「まさか… あんなん狙っとったとは、まったく想像出来んかったわ…」


いちご「まだ、卓の方はそのままになっちょるん―――?」ヒョイ


優奈「あ―――」


いちご「!?」







『ロン』



『!?』



『清老頭!!』



『32000―――思ったより 痛いんとちゃうか?』



『そんなん 考慮しとらんよ――――』ズ…





それは―――あの夏の日のフラッシュバック



いくら手を伸ばしても、努力だけでは届かん高みがあると―――





そのとても残酷な現実を―――



愛宕 洋榎、彼女との対局で―――



ちゃちゃのんは、実感として 感じてしまった――――





ちゃちゃのんにゃぁ、みなの期待に応えるだけの才能など ありはしないと――――








いちご「――――清老頭」


いちご「それに、この流れって……」


優奈「…………」


憩「…………」


鹿老渡2年「いちごちゃん………?」




いちご「へへっ……」


いちご「そりゃぁ、これはちょっと 考慮出来んよね……」


鹿老渡2年「あ~~ はい。 荒川さんにまんまと してやられたって感じです…」ポリポリ


いちご「…………」


優奈「…………」



あの夏のインハイで―――



ちゃちゃのんが振り込んだ、考慮出来んかったカタチじゃ―――






いちご「ちゃちゃのん、ちょっとお手洗い行ってくるのぅ…」アハハ


憩「アイドルでもお手洗い行くんやねぇ。 ほなウチもご一緒してええやろか~~♪」ソソッ


いちご「ちょ… ちょっと、いちご狩りに行くだけじゃよ~~///」


バタンッ タタタッ



鹿老渡2年「いちご狩りて、何じゃいな。 せめてお花摘みじゃろうに……」


憩「やっぱりいちごちゃんは、ナイスなリアクションしてくれますねーー♪」クスクス


優奈「あんまウチの先輩で遊ぶん、ヤメて貰えます……」


憩「ゴメンな~~ いちごちゃんばっか構っとったら、優奈ちゃん寂しなってまうよね~~」


優奈「そ、そういう話じゃのぅて――――」





憩「因みに殿方の場合、『ちょっと雉撃ちに行ってくる』ゆーらしいでーー」


鹿老渡2年「ほぇ~~ そりゃ初耳じゃ…」


優奈「モンゴル人の場合、『ちょっと馬を見てくる』ゆーらしいですよ…」


憩「ぶふっ… 優奈ちゃん、それドコ情報?」


憩「ちゅーか、それ自分らどこまで行く気やねんなーー」アハハ


憩「は~~ おもろいわーー」クスクス


優奈「ホンに、ええ性格しとりますよね……」ハァ







<2>



女子部員「荒川さ~~ん。 ちょっと休憩にして、紅茶とスイーツでも いかがです?」ゴッソリ


憩「これはこれは、いつもご丁寧に すみませんー♪」


優奈「そうですね。 ちょっと休憩にしましょうか」


鹿老渡2年「サンセー!!」


ワイワイ ガヤガヤ




憩「ん~~♪ このいちごのショートケーキ、えらい美味しいですねー♪」


憩「それに、この紅茶もえらい美味しいですし。 ホンマ鹿老渡のティータイムは、豪勢やねーー♪」


鹿老渡2年「これぞ鹿老渡名物、スイーツ地獄ゆーやつじゃな!!」


優奈「それ、失礼ですよ……」





女子部員「あはは、実はこれ みんな頂き物なんですよ」


憩「それは、どちらの足長オジさまから…?」


優奈「鹿老渡の商店街だったり、後援会の皆さまからのご好意ゆーやつです―――」


優奈「後は、佐々野先輩への個人的な贈り物だったり…」


女子部員「実際は、佐々野先輩への贈り物が大半なんですよね~~~」


鹿老渡2年「いちごちゃんだけじゃとても食べきれんゆーけぇ、こうして食べ物は部員みんなで ありがたく頂いとるんじゃよ」


憩「それはそれは… 何か妙なものとか、入ってませんよねーー?」ニコニコ


優奈「……………」ングッ


鹿老渡2年「だ、大丈夫じゃよ!! 今まで異物混入とか、そんなんなかったけぇ!!」ア、アハハハ…


憩「ちょっとだけ、不安になってきましたよーー」






ピンポンパンポーーン


『3年・麻雀部 佐々野 いちご―――』


『校舎内にいたら、至急 進路指導室まで来るように―――』


ピンポンパンポーーン


『繰り返す!! 3年・麻雀部 佐々野 いちご~~~!!』




優奈「佐々野……先輩?」


憩「おんや~~? いちごちゃん、何や 呼び出しされとりますねーー」


鹿老渡2年「いちごちゃん、何かやらかしたんじゃろか~~?」シシッ


優奈「ほんなら進路指導やのぅて、生活指導でしょ―――」


優奈「それにさっきの放送は、顧問の堂郷先生…?」


鹿老渡2年「堂郷んヤツがいちごちゃんに、何のようじゃ―――?」





憩「これってひょっとすると、ちょっとエッチな漫画の定番―――」


憩「先生が学園のアイドルを個室に呼び出し、ドキドキワクワク大人の進路指導いうやつなんじゃ~~///」ヒャーー


優奈「~~~~~!?」ブッ


女子部員たち「うっそ、マジでぇ~~~!!」キャーーーッ


女子部員たち「いやでも、全くありえん話じゃないよ~~~」キャーーーッ


女子部員たち「堂郷のヤツ、絶対いちごちゃんのこと特別扱いしちょるじゃろ~~」ワイワイ


女子部員たち「それ分かるわぁ!! いっつもいちごちゃんのこと見ちょるし、声かける時もぶちドモっちょるじゃろ!!」ガヤガヤ


女子部員たち「いちごちゃん可愛ええけぇ、心配んなってきたの~~」ヤンヤ ヤンヤ





優奈「そないアホなこと、あるわけないじゃろ!!」バンッ


優奈「堂郷先生は暑苦しいだけで、生徒想いな真面目な先生じゃけぇ!!」


鹿老渡2年「うぉっ!? 優奈っちがキレた!!」


鹿老渡2年「なんじゃぁ、優奈っちはあ~いうムサいオヤジが好みか~~?」


優奈「違います!!」


鹿老渡2年「即答かよ。 哀れ堂郷……」チーーン



優奈「荒川さんも、おかしなこと言わんで下さい!!」モーー


憩「あはは、えらいすんません~~」エヘヘー


憩「優奈ちゃんって、興奮すると方言 強うなるよねーー?」ウフフッ


優奈「そ… そがーなこと… あ、ありません……///」プイッ






キーーン コーーン カーーン コーーン…


鹿老渡2年「ん… もぅ、こげん時間じゃ…」


憩「いちごちゃん、なかなか戻らんねーー」


優奈「大方、進路指導の方が長引いとるんやないですか…」


鹿老渡2年「ほんで優奈っちぃ。 今日は、この後 どないするんじゃ?」


優奈「あ… 今日の部活はこれでシマイなんで、後片付けして 皆さん解散させといて下さい」


鹿老渡2年「ほ~~い!! 了解じゃ!!」


鹿老渡2年「荒川さ~ん、今日はたくさん勉強させて頂きました~~!!」


憩「ウチも楽しかったでーー♪」バイバイ



乙 ちゃちゃのん誕生日おめ♪



ガヤガヤガヤ…


センパイ、オツカレサンデース…


バイバーーイ…




憩「―――ほんで、正味な話なんやけどー」


憩「いちごちゃん… ま~だインハイでのこと、気にしとるん?」


優奈「ええ、まぁ…」


優奈「おそらくですけど……」



優奈「夏のインハイで、姫松高校に―――」


優奈「あの愛宕 洋榎に負けて以来、佐々野先輩 どっかうわの空ゆーか…」


優奈「ま~~ 元々ほっとくと、どっか遠くの空ばかり眺めとるような―――」


優奈「そんなうすらボンヤリした人なんですけど―――」





憩「団体戦 終わった後は、どないな感じやったんかなーー?」


優奈「団体戦 終わった後ですか…」


優奈「そりゃ~ もぅ―――」


優奈「ずっと大粒の涙こぼして、ぽろぽろ泣いとりましたよ……」


憩「いちごちゃん、泣き虫やもんな~~」


優奈「…………」




優奈「ほんでも翌日にゃぁ、いつもと変わらん明るい先輩に戻っとりました…」


優奈「今にして思えば、それが表面上のもんで―――」


優奈「うちらを心配させんための、精一杯の空元気だった気ぃもしますけど……」





憩「いちごちゃん、秋のコクマ(国民麻雀大会)でも調子悪そうやったよねーー」


優奈「たぶん、そん頃からでしょうか…」


優奈「佐々野先輩、麻雀の対局を避けとるよぅで―――」


優奈「あんなに大好きやったはずの麻雀に、ちっとも身が入っとらん感じで―――」


優奈「最近はアイドル活動の方が忙しくなってきたゆーて、麻雀やっとるトコあまり見かけないです…」


憩「やっぱりインハイでの 洋榎ちゃんとの対局が―――」


憩「いちごちゃんの中で、トラウマみたいになっとるんやろかーー?」


優奈「…………」





優奈「佐々野先輩は―――」


優奈「うちらにとって、特別な人だから―――」


憩「特別―――?」



優奈「ええ。 ホンでどうしょうもないアホです…」


憩「いやいや、アホかどうかは 別にええやろー」パタパタ


優奈「いえ、そこはとても大切なトコなので……」


憩「あぁ… さよかーー」





優奈「佐々野先輩は―――」


優奈「それ程おもちでもないクセに、昔から妙に華があって注目度バツグンの人やったでしょう」


優奈「特に去年のインハイでの活躍後は、テレビや雑誌なんかでもたびたび特集されとったし―――」


優奈「アホなくせして、応援団や後援会の規模も地元 広島だけやのうて、全国規模にまでなっとりましたし―――」


憩「優奈ちゃ~~ん、さっきからバブルスライムみたいんなっとんでーー」ドクドク シトルデ…


優奈「え… そうでしょうか―――?」


憩(この子も、大概やねーー)





憩「でもま~~ いちごちゃんはうちから見ても国民的 美少女や思うし、天性のアイドルちゃんやもんなーー」


憩「可愛くて素直なうえに麻雀も上手いとくれば、そら周囲のモンもマスコミもほっとかんよ~~」


優奈「佐々野先輩は、あくまで麻雀第一 ゆーとりましたけど…」


優奈「あの人 基本的にサービス精神旺盛なうえに、流され体質でしょう…」




優奈「自分を応援してくれる皆に喜んで貰いたい、落ち込んでる人を元気づけてあげたい―――」


優奈「そんためにも自分は絶対に負けられんとか、そんなことを大真面目に考えとったみたいなんですよね…」


憩「そういう一途で一生懸命なトコ、ホンマいちごちゃんらしい思うんやけど―――」


憩「それがプレッシャーになって、本人の気付かんトコで身動き出来なくなるような重荷になっとったんやろかーー」


優奈「…………」





優奈「鹿老渡高校の一回戦負けは、全部 自分のせいじゃって…」


優奈「試合が終わった後も、そりゃもぅ 何度も何度も泣きながら謝ってましたよ…」


優奈「別にうちらは、佐々野先輩のせいで負けたとは思っとらんのですけど―――」


優奈「―――でも佐々野先輩は、やっぱりそうは思えんかったよぅですね…」


憩「あ~ 見えて、えらい責任感の強い子やからね~~」


優奈「ようするに、アホなんですよ…」





優奈「応援してくれた人たちの期待に 応えられんかったことにしても―――」


優奈「今でも相当、気にしとる思いますよ……」


憩「…………」






憩「辞めるかもしれんねーー」



優奈「え―――?」







憩「いちごちゃん―――」



憩「このまま、麻雀―――ヤメてまうかもしれんね……」



優奈「まさか―――」



優奈「そんな……」





あの佐々野先輩が、麻雀をヤメる―――



荒川さんにそう言われるまで、何故かうちはそないなこと 考えもせんかった―――








<3>



【遡ること、1年と数ヵ月前―――】



広島でも指折りの麻雀の名門・鹿老渡高校 麻雀部―――


新入部員やったうちは、そこで初めて 佐々野先輩と出会った―――



優奈「津秋 優奈、1年です。 宜しくお願いします!」


いちご「お~~ 優奈ちゃんじゃな!! 鹿老渡高校 麻雀部へ ようきんさったね~~♪」


いちご「ちゃちゃのんは、ちゃちゃのんじゃよぉ~~♪」エヘヘーー


優奈「ちゃちゃのん―――?」


鹿老渡先輩「佐々野ぉ!! ちゃちゃのんじゃ 分からんじゃろぉ!!」パカンッ


いちご「あいた~~~!!」


優奈「おぉっ……」




いちご「へへっ、ゴメンのぅ~~」


いちご「うちは、佐々野 いちご。 麻雀部の2年生じゃよ~~♪」ニッコリ


優奈「は、はぁ……」


優奈(高校生にもなって、自分のことちゃちゃのんって―――)


優奈(ていうか、もしかして佐々野じゃけぇ ちゃちゃのん…?)イタイ…





いちご「えへへ♪ 優奈ちゃん、これからよろしくのぅ。 あくしゅ、あくしゅ♪」ニコニコ


優奈「あぁ… はい……」ニギニギ


優奈(後輩相手にヘラヘラして、変な人―――)




優奈「…………」


優奈(ていうか、この人―――)


優奈(もしかしなくても、メチャクチャ美少女―――?)ジーーー


いちご「ほぇ―――?」



優奈(少し舌っ足らずな甘い声、微かに漂う甘いストロベリーの香り―――)


優奈(ピンクがかったふわふわウェーブ髪に、ゆるふわツーサイドアップ―――)


優奈(そして全身から漂うこの甘くて柔らかい、全てを包み込むような癒し系まったりオーラ―――)


優奈(何なん、この生き物は… モテ神さまか? 地球温暖化? 世の中、やっぱり何かが 間違っとるんじゃ……)イラッ





いちご「お~~い… ゆうなちゃ~~ん!!」ジーー


優奈「は――――!?」



いちご「お~~ 起きた 起きた♪」


いちご「優奈ちゃん、さっきまで立ったまま 寝こけちょったんじゃよ~~」


優奈(いや、別に寝とらんし… 何故、そう思った……?)



いちご「熱とか大丈夫け…?」


いちご「おでこは―――」ピトッ


優奈「いやいや、熱とか全然 ありませんけぇ!!」////




佐々野 いちご―――



正直うちは、この変な先輩のことが ちょっぴり苦手じゃった―――




ほほう

ちゃちゃのんかわいいよちゃちゃのん




いちご「…………」トッ


麻雀部員「…………」トンッ


優奈「…………」スッ


いちご「それ、ロンじゃよ!!」パララッ


優奈「――――!?」


麻雀部員「あちゃ~~ また、いちごちゃんに持ってかれたか…」


いちご「えへへ、ゴメンのぅ♪」ペロッ


優奈「…………」




優奈(やっぱりこの人、麻雀だけは凄く上手い……)


優奈(あとその舌出しウインクポーズ、イラっとくる……)ジッ


いちご「――――ほぇ?」


優奈「…………」ジィーー





いちご「優奈ちゃん、いぇ~~い!!」ビシィッ


優奈(……あ、そのポーズも腹立つかも……)クスッ


いちご「えへへ… 優奈ちゃんの可愛ええ笑顔、ゲットじゃね♪」ニコニコ


優奈「あぅ… しまった……///」




いちご「優奈ちゃんとっても難しい顔しとったけぇ、やっぱり麻雀は楽しくやらんとね♪」ニコニコ


優奈「そういうの、うちは不謹慎じゃ思いますけど…」


いちご「えぇ!? そ、そうじゃろか……?」


いちご「ちゃちゃのんは、皆が楽しんだ方がええ思うんじゃが―――」


優奈「楽しいのは、いつだって勝った人だけ―――」


優奈「勝ち負けを決める真剣勝負の最中に楽しむなんて、やっぱりおかしいでしょう…」


優奈「勝負の世界は勝つか負けるか、それが全てなんですから―――」


いちご「そ、そうかのぅ……」





いちご「ほいじゃが、ちゃちゃのんは―――」


鹿老渡先輩「佐々野ぉ!! 対局中に何をお喋りしとるんじゃ!!」ベシッ


いちご「―――ふみゅっ!?」


優奈「おぉっ……!?」




いちご「んもぅ~~ 先輩、酷いんじゃよぉ~~」サスサス


鹿老渡先輩「対局中のお喋りは、周りのモンに迷惑じゃろ!!」


いちご「そりゃ~ ま~ そうかもしれんのじゃが…」


いちご「そんなパカパカ叩かれたら、ちゃちゃのんおバカになってまうよ~~」


麻雀部員「いちごちゃんの場合―――そりゃ、もぅだいぶ手遅れかもしれんの~~」アハハハッ


麻雀部員「確かに!!」カッカッカッ


いちご「酷い!?」

ワッハッハッハ…

ワイワイガヤガヤ…


優奈「…………」




麻雀を楽しむ―――


正直、何を甘っちょろいことをと思った―――




ただ、いつも楽しげに麻雀しとる先輩の姿にゃぁ


妙に周囲のモンを惹きつける、そんな何かがあったような気がする―――






【鹿老渡高校 資料室】


ウィィーーン… ピッ… ピピッ…


優奈「…………」


優奈(大生院の戒能に、千里山の藤白―――)


優奈(それに加えて、今年2年の白糸台 宮永―――)


優奈(控えめにゆーても、やはり全国はバケモンばっかりじゃ……)


優奈「…………」



優奈「三箇牧に行ったアイツじゃったら、どう戦うんじゃろ……」


優奈「ん… もぅこがー時間か…」チラッ


優奈「ふぅ… そろそろ帰るかの……」ガタタ






【鹿老渡高校 職員室】


ガララ…

優奈「堂郷先生、資料室の鍵 ありがとうございました」


堂郷「お~~ 津秋かぁ!! こんな時間まで、いつもお疲れさん!!」


堂郷「それにしても、津秋は本当に研究熱心だな~~!!」ハッハッハ


優奈「えぇ、まぁ。 牌譜とか過去の映像データなんかは、出来るだけ多く目を通しておきたいですし…」


堂郷「ハッハッハッ!! 鹿老渡かたまらんよう気をつけて、あまり日が呉線(くれせん)うちに帰るんだぞぉ!!」


優奈「ぶふっ……」


堂郷「おっ!? 今のダジャレは、なかなかだったか!!」


優奈「ぁ… まぁまぁ、でしょうか……」フイッ


堂郷「ハッハッハッ!! そ~~か、そ~~か!!」


堂郷「因みに今のダジャレはだなぁ、過労と鹿老渡がだな―――」ハッハッハ


優奈「……………」


堂郷先生、何年か前に竹原南からこの学校に赴任してきた体育教師―――


生徒想いで 悩み相談なんかも親身になって聞いてくれる、とてもええ先生なんじゃが―――


生徒たちの間では、地元広島ダジャレがキツいゆーことで 変人扱いされとる―――


因みに、うちは先生のダジャレ―――そんなに嫌いでもない……





堂郷「そういえば、佐々野のヤツはもぅ帰ったのか?」


優奈「佐々野先輩、ですか―――?」


優奈「部室の方にゃぁ、もぅおらんかったよぅですけど―――」


堂郷「そうか。 アイツはいつもいつも、あっちにふらふら、こっちにふらふら―――」


堂郷「いつまで経っても、落ち着きがなくて困る!!」


堂郷「大体、アイツときたらだな―――」


優奈「あの、うちはこれで―――」


堂郷「おっ、そうか!?」






【鹿老渡高校 玄関外】


ボーーン ポンポンポンポン…


優奈「―――うぅっ」ブルッ


優奈「梅雨も近いゆーに、この時間になるとまだ結構 冷えるのぅ…」


校舎から外に出ると、もぅだいぶ日も傾き、海の向こうへと沈みかけていた。




優奈「堂郷先生、佐々野先輩の話になると長いし―――」


優奈「――――!?」


そこにフッとうちの頭上を後ろから何かが通り抜け、べちゃっと墜落するよう地面に落ちた。





優奈「紙飛行機―――?」


優奈「何か、凄く不格好な落ち方じゃったな―――」ベチャッテ…


優奈「誰が飛ばしたんじゃろ…」ヨイショ


優奈「これって―――」





優奈「えと、どっから飛んできたんじゃ―――?」キョロキョロ


視界に人影らしきものはなく、既に校庭側の教室や廊下の窓も閉められていた。


優奈「―――てことは……」






【鹿老渡高校 屋上】


ギィィィィィ…


優奈「ロン、みたいじゃな――――」


???「―――――?」


少し重い金属の扉を押し開け、屋上へ出てみると―――


そこには金網状のフェンスを背にした佐々野先輩が、一人 ぼんやりと立っていた。





いちご「優奈、ちゃん―――?」


沈みかけた夕日が、あらゆるものの陰影を深め


それを背に立つ先輩の表情を、読みとりづらいものにしていた。





優奈「…………」


優奈「寂しそう―――」ボソッ


いちご「ほぇ―――?」


優奈「な、何でもないけぇ!!」リョウテ、バタバタッ


いちご「――――?」


優奈「~~~~~////」



うちの知っている、佐々野 いちごという人は


いつだって周囲の人を和ませるような、そんな優しい笑顔を浮かべている人だった。



だが沈みかけた夕日を背に、一人 屋上で佇む先輩の姿を見た時―――


とても綺麗だなと思うと同時に、本当は凄く寂しい人なのかもしれないと―――


その時のうちは、何故だかふと―――そんな風に思ってしまった。







いちご「もしかして―――」


いちご「優奈ちゃんが―――?」


優奈「は―――?」




いちご「あ―――うぅん、何でもないんじゃ!!」ヘヘヘッ


優奈「はぁ……?」



その時の佐々野先輩は―――


ちょっと気恥かしげな、そんな妙な愛想笑いを浮かべていた。





優奈「えと… この紙飛行機って、先輩のですか―――?」ヒョイッ


いちご「おぉっ… それはちゃちゃのんが飛ばした『いちご一号!?』」


いちご「ほいじゃが、どうして優奈ちゃんが―――?」


優奈「まぁ、帰り際にコレの墜落現場に居合わせたゆーか―――」


優奈(―――てか何じゃ… その妙な韻を踏んだ、だっさいネーミング…)


優奈(やっぱこの人、自分 大好きじゃろ―――)ジト…




優奈「いくら土に還るゆーても、ゴミのポイ捨てはあまり感心しませんよ―――」


いちご「へへっ、ゴメンのぅ~~」


いちご「一応、後で拾うつもりはあったんじゃよ~~」






いちご「それんしても、よぅコレがちゃちゃのんのって分かったのぅ―――?」


優奈「まぁ… 紙飛行機に使われた便箋を見た時から、何となく―――」


いちご「――――?」




優奈「佐々野先輩、こーゆーの好きそうだし―――」


優奈「確か、こんな可愛ええ ねこの絵柄の便箋 持っちょったなって―――///」


自分で言っていて、そげん細かなことまで覚えとったゆー事実が 妙に気恥ずかしく感じられた―――





いちご「えへへ… 優奈ちゃんはちゃちゃのんのこと、よぅ分かっちょるんじゃね♪」


優奈「たまたまです!! ホントたまたまなんで―――///」ブンブンッ


いちご「そうじゃったとしても、やっぱり嬉しいけぇ♪」ニッコリ


優奈「アホ―――」


いちご「えぇっ!?」


優奈「あ―――」



優奈「すみません、つい本音が漏れました…」


いちご「もぅちょい、フォローして~~!!」


いちご「ちゃちゃのん、これでも先輩じゃよぉ~~~」


優奈「まぁ、それはそれとゆーことで……」


いちご「うぅ… 優奈ちゃんは、厳しいのぅ~~」


優奈「…………」



それはズルいじゃろとゆーような、どこまでも真っ直ぐな笑顔を向けてくる―――


この人のそういうトコが、たまらなく嫌いじゃ―――






優奈「―――そんなことより、佐々野先輩!!」


優奈「こんなトコで何しとったんです? 大体、ここって結構 海風も強いし……」


いちご「ん~~ そうなんじゃよぉ~~」


いちご「まだまだこの時期、外は結構 冷え込むんじゃね~~」ズズ…


優奈「ほんなら、何でこんなトコに―――?」


いちご「う~~ん……」




いちご「どうも、今日もちゃちゃのんの 待ちぼうけみたいじゃ……」ヘヘヘッ


優奈「あ――――」


いちご「ん……?」


優奈「あ… いえ、別に―――」


いちご「優奈ちゃん……?」


優奈「………」





もしかすると、佐々野先輩は―――


誰かに恋を…… しとるんじゃろか―――




それも、きっと上手くいっていない、片想いの恋――――



いつもとちょっと違う先輩の様子に、うちはふと… そんなことを思った。







優奈「えと、先輩はまだ ここに残るんですか―――?」


いちご「ん~~ ほうじゃのぅ……」


いちご「もぅお日さんも暮れかけとるけぇ、そろそろ帰ろぅ思っちょるよ…」


優奈「そ… そうですね。 日が呉線うちに、早う帰った方が ええですね……」


いちご「日が、くれ せん……?」キョトン


優奈「あ……///」シマッタ…



痛恨のミス―――


堂郷先生の地元ダジャレが伝染った―――





いちご「あはは、優奈ちゃんの地元ダジャレじゃ~~♪」ケラケラケラ


優奈(案外、ウケちょる……?)ドキドキ







【帰り道―――】


いちご「ほうじゃ… 優奈ちゃんはこんな時間まで、何しとったん―――?」


優奈「うちですか? うちは資料室で過去のインハイ データを漁ったりとか―――」


いちご「やっぱり、優奈ちゃんは麻雀のこと 大好きなんじゃねぇ~♪」ニコニコ


優奈「と、当然です!! 麻雀では誰にも負けたくない、そう思ってますから…」


いちご「優奈ちゃん、負けず嫌いじゃもんね~~」ヘヘヘッ


優奈「やるからには勝たないと、意味ありませんし……」


優奈「…………」チラッ


いちご「ほぇ……?」



やっぱり、先輩はとっても綺麗な人だと思う。


ちょっと天然でアホなトコもあるけど、そんなトコも含めて とてもモテる人だ。



先輩みたいな人でも、恋のことで悩んだり―――


好きな相手に振り向いて貰えない、そんな片想いとかするんだろうか―――?






優奈「…………」ジーー


いちご「ゆ、優奈ちゃん…?」


優奈「―――何です?」


いちご「もしかして、さっきから 何か怒っちょる…?」ドキドキ


優奈「別に、何も怒っちょらんですよぉ…」ムスゥ…


いちご「うぅ… ぶち怒っちょるんじゃ……」


優奈「ふん……」



佐々野先輩が、片想い―――?


もしかして、待ち合わせ すっぽかされた―――?





優奈「何か、ちょっとムカつくかも―――」チッ


いちご「うひゃっ……!?」ビビクッ







【鹿老渡高校 麻雀部部室】


麻雀部員「…………」トッ


鹿老渡先輩「ほっ……」タンッ


優奈「ツモです。 3000・6000…」パララッ


鹿老渡先輩「げ… また津秋じゃ……」ハヤッ


鹿老渡先輩「自分、ホンマえげつないのぅ~~」


優奈「どうも……」


麻雀部員「これが才能、ゆーヤツなんかのぅ…」ハハッ


優奈「―――才能?」


優奈「そんな特別なものがあるなんて、思ったこともないです…」


優奈「うちに出来ることなんて、せいぜい日々の練習と対戦相手の研究と対策くらいなもんです―――」


麻雀部員「は~~ 優奈ちんはホンにドライじゃの~~」





鹿老渡先輩「今年は佐々野んヤツも勢いあるし、こりゃ今からインハイが楽しみじゃな!!」


優奈「夏の―――インターハイ……」ゴゴゴ…


麻雀部員・鹿老渡先輩「…………」



優奈「何か―――?」


麻雀部員「あ、いや~~」


麻雀部員「優奈ちん、結構 分かりやすいよな~~て……」クスッ


鹿老渡先輩「確かに―――」ハハッ


優奈「べ、別に、そんなことは……///」






優奈「そういえば、佐々野先輩はどうしたんです―――?」


優奈「今日はまだ見かけてませんけど、もしかして サボり…?」


麻雀部員「いや~~ いちごちゃんはいちごちゃんで、超がつく程の麻雀バカじゃからのぅ…」


麻雀部員「あの子が練習サボっとるトコ、ちょっと想像つかんじゃろ~~」


優奈「む… 確かに……」


鹿老渡先輩「美味しそうなカタチの雲を追っかけて、そのまま授業 遅刻したりはするがの―――」


麻雀部員「食いしん坊か……」


優奈「アホなんですか、あの人は―――」


鹿老渡先輩「ま~~ アホじゃな。 本人はそう思っとらんようじゃが…」


優奈「それで、サボりじゃないなら どうしたんです…」





鹿老渡先輩「あぁ… 佐々野じゃったら、保健室でぐったり寝込んどるはずじゃ―――」


優奈「えっ!? 何かあったんですか!?」


鹿老渡先輩「堂郷のカッター訓練あるじゃろ…」


麻雀部員「あぁ、あの堂郷式・地獄のカッター訓練……」ウゲ…


優奈「カッター訓練って、オール使って集団でひたすらカッターボートを漕ぎ進む……」


麻雀部員「優奈ちんも、オリエンテーションでやったじゃろ?」


優奈「えぇ、まぁ… 研修指導員の堂郷先生がスパルタで―――」


優奈「危うく手足 バラバラになるかと思いました―――」ゲンナリ…


鹿老渡先輩「そうそう! そのカッター訓練!!」





鹿老渡先輩「佐々野のヤツな、訓練中に力尽きて海にドボンしたんじゃって―――」カカッ


優奈「えぇっ、それってわりと笑いごとじゃないんじゃ!?」


麻雀部員「いちごちゃん、ドンくさいからのぅ…」


優奈「そもそも、先輩って泳ぎの方は…?」


麻雀部員「島っこなのに、カナヅチじゃ…」


優奈「あぁ、やっぱり……」





鹿老渡先輩「ま~~ そんなわけで、えらい水を呑んだそうなんじゃが―――」


鹿老渡先輩「堂郷のヤツがすぐ海に飛び込んで、どうにか救助したっちゅー話じゃな―――」


麻雀部員「ひゅ~~♪ 流石は野人 堂郷!! パワーと体力だけは規格外じゃ!!」


鹿老渡先輩「そんで今は、保健室でぐったり寝込んどるゆーわけじゃ…」


優奈「そ… そうですか……」ホッ


麻雀部員「ほんで、ほんで!! やっぱ アレはあったんか?」


優奈「アレって―――?」





麻雀部員「救助者が、海で溺れた人にすること言えば―――」


麻雀部員「人工呼吸―――マウス・トゥー・マウスしかないじゃろ!!」


優奈「ファッ!?」


優奈「さ、佐々野先輩!! 堂郷センセと、チューしたんかァ!!」ガバッ


鹿老渡先輩「おぉっ―――!?」ガクガクッ


別卓の部員たち「ぎゃぁぁぁ~~~!! ちゃちゃのんと堂郷がキスぅぅぅ!!」ガタタッ


別卓の部員たち「ぐっは… 美少女と野獣過ぐる…」ザワ…


別卓の部員たち「てゆーか、それって完全に犯罪じゃね。 事案じゃ、事案…」ザワ ザワ…


別卓の部員たち「オノレ… ドーゴー、許スマジ……」ザワ ザワ…






鹿老渡先輩「てぇ、おいおい!! まだ部活中じゃぞ!!」


麻雀部員「ぶち気になる話ブッ込んどいて、先輩がそれ言っちゃうんスかぁ?」


別卓の部員たち「この話 終わったら、すぐ再開しますんで!!」


鹿老渡先輩「ぐぬ……」


優奈「…………」ジィィィ…




鹿老渡先輩「ま… ま~~ うちも人づてで聞いただけじゃけぇ、詳しゅうは知らんのじゃが…」ポリポリ


鹿老渡先輩「―――別に自分らが考えとるようなこと、何も起こっちょらんと思うぞ……」




鹿老渡先輩「堂郷んヤツが意識のない佐々野の気道 確保しとったら―――」


鹿老渡先輩「佐々野がぴゅ~~って口から大量の水吹いて、そんで佐々野の意識が戻ってシマイじゃって…」


別卓の部員たち「ウシッ!!」グッ


別卓の部員たち「ザマァ、ドーゴー!!」シャーー


別卓の部員たち「ちゃちゃのんは、ウチらのアイドルなんじゃぁぁぁッ!!」ビシッ


鹿老渡先輩「コイツら―――」


優奈「………フゥ」



麻雀部員「優奈ちん。 もしかして、今 ちょっとだけ ホッとした?」


優奈「べ、別に!? うち、そーいうん 興味ないですけぇ!!」


麻雀部員「優奈ちんは、可愛ええの~~」ヒヒッ


優奈「そういうの、ヤメてもらえます……///」ムスッ





鹿老渡先輩「お~~し、そんじゃ 練習再開じゃ!! 自分らもはよ散った、散った!!」パンパンッ


別卓の部員たち「ほ~~い…」ゾロゾロ


別卓の部員たち「ちゃちゃのん おるかもしれんし、後で保健室 寄ってみる?」


別卓の部員たち「ええの、お見舞いのお菓子 持ってっちゃるか!!」


麻雀部員「優奈ちんも一緒に行っとく?」


優奈「部活 終わったら資料室に行く予定ですから、うちは結構です…」


麻雀部員「そっか、残念じゃな……」


優奈「…………」



その日、結局 佐々野先輩は部室に顔を出さなかった。






【鹿老渡高校 保健室】



いちご「………」


いちご「…………」




ガラガラ…

いちご「あ、優奈ちゃん……」


優奈「どうも……」ペコッ


いちご「優奈ちゃんも、お見舞い来てくれたんか…?」ニコッ


優奈「べ、別に… そういうわけでは―――」


優奈「資料室 寄って調べ物しとったら、たまたま ここの明かりが見えて……」


いちご「こない遅ぅまで、インハイ用のデータ収集 お疲れさんじゃねぇ」


優奈「ま、インハイの選考日も近いですし…」


優奈「今 やれること、やっておきたいだけですよ……」





いちご「ほーじゃ。 お見舞いに来てくれた皆がくれたお見舞い品なんじゃが、優奈ちゃんもケーキとかどーぞなんじゃ!!」ズズィ


優奈「おぉっ… メッチャある。 てか、メロンや馬鹿デカい花束まであるし……」ゴッソリ


いちご「皆、ちゃちゃのんのこと心配して お見舞いに来てくれたんじゃ♪」


優奈「お見舞い? 冷やかしの間違いじゃないですか―――」


いちご「冷やかしでもなんでも、ちゃちゃのん 嬉しいけぇ♪」


優奈「そんなもんですか…?」


いちご「ん、そういうもんじゃよ……♪」ニコ ニコッ


優奈「うちには、さっぱり理解出来ませんけど……」



先輩はとにかくモテる。


本当にアホみたいにモテる。


この中の幾らかは部員たちが心配して置いていったものだろうけど…


その大半は先輩に気のある男子と、ファンクラブの男子たちが置いていった貢ぎ物だろう。


安いお菓子やケーキくらいならともかく、普段の先輩ならこんな高価な贈り物はやんわりと断るはずだけど……





いちご「あ、何か飲み物 出さんと。 ちょっと待っとってね……」ヨイショ…


優奈「いや、そんなん ええです―――」


いちご「ほへっ―――」クラッ


優奈「さ、佐々野 先輩――!?」ガシッ


バランスを崩し倒れかけた先輩を、正面から抱きとめるかたちで受け止める。


先輩の身体はとても華奢でいて柔らかく、そして凄く軽かった……


優奈(相変わらず、柔らかくて甘いストロベリーみたいな ええ香りがする―――)





いちご「……あはは、ごめんのぅ――」


いちご「ちょっと足元、フラついちゃったみたいじゃ……」ヘヘッ


優奈「…………」


やはりまだ具合が優れないのだろう、いつもより少し元気のない笑顔を佐々野先輩が浮かべた。





優奈「そういうんは、うちがやりますから。 病人はもうちょっと横になっとって下さい。」


優奈「ホンに、世話の焼ける先輩です…」フンッ


いちご「えへへっ、ごめんね…」


優奈「別に、ええですけど……」カチャカチャ




優奈「先輩、コーヒーの砂糖いくつ入れます?」


いちご「えと… いっぱい……?」


優奈「はいはい、お子様の味覚と―――」チャポチャポチャポ…


いちご「ち、違うけぇ!! 今日は塩分過多じゃったけぇ、糖分でちょっと中和しとこうかなって―――!!」


優奈「なんですか、その超理論……」





優奈「そういえば、保健室の先生は…?」


いちご「カープの試合見に行くけぇ、先に帰るんで 後はヨロシクじゃって―――」


優奈「何て、ええ加減な……」


いちご「その代わり保健室のコーヒー、自由に飲んでもええゆーとったんじゃ♪」ヘヘッ


優奈「もう散々、塩水 飲んだでしょう…」


いちご「んもぅ、それは言いっこなしじゃよぅ…」ブーー


優奈「はい、砂糖とミルクたっぷりのコーヒーです」コトッ


いちご「ん… どうも、ありがとなんじゃ♪」ズズッ…


いちご「うぇッ にがっ……」ゴホゴホッ


優奈「…………」クスッ





いちご「優奈ちゃん、今 ちょっぴり笑ったじゃろ…」ジッ…


優奈「フフッ、さぁ先輩。 良い子ですから、もう少し横になりましょうね…」ポフポフ


いちご「うぅ~~ 何かちゃちゃのん、子ども扱いされてる気がするんじゃ~~」


優奈「気のせい、気のせい……♪」








いちご「」スゥー スゥー


放課後の保健室―――


既に日もとっぷりと海へと沈み、部活帰りの生徒たちの気配も今はない。


やはり、だいぶ疲れと 無理が溜まっていたんだろう。


横になった先輩は、程なくして静かなまどろみの中へと落ちていった。



先輩が呼吸をするたび、僅かに胸元で上下する 薄手の掛け布団。


室内には先輩がときおりする、弱々しい寝息だけが静かに響いていた。



優奈「まったく、この人は―――」


優奈「どうせ冷やかし半分の野次馬たちにも、いつもの笑顔で空元気 振りまいとったんじゃろね……」


優奈「…………」






いちご「ん… んっ…」ゴロ ゴロッ


優奈「わっ、意外と寝相悪い人なんか……?」



暫く経った頃―――


ベットの中で もぞもぞ、ごろごろとしきりに動き出す先輩。


しまいには掛け布団を跳ね飛ばさんばかりに手足をバタつかせ始める。



優奈「何か、怖い夢でも見とるんか…?」


優奈「スカートん中、見えそうですよ~~」


いちご「はぁ… はぁ……///」


優奈「………掛け布団、しっかりかけましょうね―――////」


激しく呼吸を乱し、頬を赤く上気させ、たくさんの汗を浮かべる佐々野先輩。


優奈「凄い汗、拭いてあげた方がええんじゃろか……」





いちご「暗い…… 沈む………」


優奈「―――――!?」


いちご「」ゼハッ ゼハッ


言葉にならない何かを口にした先輩が、両の手を虚空へ向け、頼りなげに放り出していた。


優奈「…………」





優奈「大丈夫、うちはここにいますから―――」


優奈「先輩は、一人じゃありませんよ―――」ギュッ



次の瞬間―――


うちは虚空へと投げ出され、闇雲に何かを掴もうとしていた 先輩の両の手をしっかりと握っていた。







いちご「」ハッ ハッ…


優奈「佐々野、先輩……?」


いちご「」スゥ スゥー


うちに手を握られた先輩は安心したのか―――


程なくして落ち着きを取り戻したかのように、再び穏やかな まどろみの中へと溶け込んでいった。




いちご「」ギュッ


優奈「ん… もしかして、うち ずっとこのままなん……?」


もう離さないとばかりに、うちの手を懸命に握り続ける先輩は まるで小さな子どものようだった。






いちご「」スゥ スゥー


優奈「ええですよ。 先輩が落ち着くまで、うちがこうして握っててあげます…」キュッ



小さくて、柔らかな先輩の手のぬくもり。


抱きとめた時に感じた、先輩の甘やかな香りと柔らかな感触。


佐々野先輩、すごぅ軽ぅて、とっても暖かかったんじゃ――――




先輩としての威厳もなく、どこか危なっかしくて頼りないくせに、どこか人をホッとさせる不思議な魅力がある。


甘くて、柔らかくて、暖っかくて、気がつくとうちの全てを包み込んどるような、そんな綿菓子みたいな ふわふわとした女の子。


それが うちの中にある、佐々野 いちごという先輩だったのかもしれん―――


いちご「」キュフフッ


優奈「ホンに、変な先輩じゃ……」キュゥッ




まどろむ意識の中、うちはそんなことを考えとったような気がする―――


優奈「…………」コクリ コクリ…








ピンポンパンポーーン


『これより 校門を閉めようと思う―――』


『まだ校内にいる生徒、大至急 学校から出て、速やかに帰宅するように―――』



ピンポンパンポーーン


『繰り返ぇ~~す!! まだ校内にいる生徒ぉ、さっさと帰宅するよぉぉ~~~にッ!!』キーーンッ




優奈「げっ… もうこないな時間じゃ―――!?」ガバッ


優奈「佐々野先輩、大丈夫ですか!!」ユサユサ


いちご「うにゅ~~~?」





優奈「そろそろ帰らんと、校門 閉められちゃいますよ!!」ユサユサ


いちご「うにゅ… 優奈ちゃん、おはよ~~~」


優奈「はぁ、おはようございます…」


優奈「それで、具合の方 少しは良ぅなりましたか?」


いちご「んっと、だいぶ良ぅなった感じかのぅ……」


優奈「それは、良かったです―――」ホッ



いちご「―――ほんじゃ、おやすみなさ~~~い……」ウニューー ペタン


優奈「ちょっ 待てぃ!!」ベシンッ


いちご「うひゃぁっ!!」ガバッ


優奈「だから、何でまた寝ちょるんですか!!」


いちご「えと… そこに気持ちええベットがあったから……?」ヘヘヘッ


優奈「何か名言っぽく言っても駄目です。 とりあえず校門 閉められる前に外に出ますよ!!」




いちご「うぇぇ… 優奈ちゃんは厳しいのぅ……」


優奈「先輩だって、夜の学校に閉じ込められたくないでしょう…」


いちご「それは、ちょっと怖いかもしれんのぅ…」


いちご「―――ほいじゃが 優奈ちゃんと一緒じゃったら、そがに怖くもないかもしれんね♪」ヘヘッ


優奈「~~~~~////」


優奈「もぅ!! アホなことばっか言っとらんで、帰りますよ!!」




いちご「あ… 皆からのお見舞い品どうしよ…」


優奈「こないたくさん持って帰れんでしょ!!」


優奈「明日までここに置かせて貰えばええですよ!!」






【鹿老渡高校 校門外――】


いちご「はひ~~ 何とか間に合ったみたいじゃね……」ウヒィーー


優奈「そうですね。 それで佐々野先輩―――」


優奈「何か無理に起こしちゃいましたけど、具合の方は大丈夫ですか?」


いちご「あ、うん… 少し横になれたおかげかのぅ、随分 よぅなったみたいじゃ♪」


優奈「それは、良かったです…」




いちご「優奈ちゃん、どうも ありがとのー」


優奈「は…? うちはただ、先輩をたたき起こしただけですけど…」





いちご「ちゃちゃのんのため―――」


いちご「こない遅ぅまで、起こさんどってくれたじゃろ?」


優奈「それは… うちも一緒になって、うたた寝しとったただけゆーか…」


いちご「それにのぅ、なんか よぅ覚えちょらんのじゃが―――」


いちご「優奈ちゃんのおかげで、とっても安心して 眠むれた気ぃするけぇ♪」ヘヘヘッ


優奈「そ、それは… 良かったですね……///」




優奈「そ、そんなことより!!」


優奈「佐々野先輩、寝相悪すぎ!!」ビシッ


いちご「ほぇっ!? そない酷かったんかぁ!?」


優奈「そらもぅ、スカート ブワァ~~ッなっとりましたよ~~!!」


いちご「ふぇぇ~~!? ちゃちゃのん、そんなじゃったか~~~////」アババババ…


優奈「それは、秘密です……」フフッ


いちご「ほぇ~~ どっちなんじゃよ~~~!!」







【数日後 麻雀部部室―――】


麻雀部員「いちごちゃ~~ん!! チア部の子が呼んどるで~~!!」


いちご「あ、うん!! すぐに行くけぇ!!」テテテッ


優奈「………?」




チア部女子「あ、いちごちゃん!! 週末、またお願いしたいんだけど 大丈夫だよね?」


いちご「ほーじゃのぉ… そろそろ部内選考も近いけぇ、ちゃちゃのんも今はそっちに集中せんと―――」


チア部女子「お願い!! いちごちゃんいてくれると、皆 凄くやる気出るんだ!!」


チア部女子「先方の部にも絶対いちごちゃん呼ぶって言っちゃってるしさ、どうか友達を助けると思って!!」ネッ


いちご「えっと、うん……」





いちご「な、何とか時間作って 応援にゃぁ駆けつけるけぇ、心配せんで待っちょってね!!」ヘヘッ


チア部女子「うわぁ~~い!! ちゃちゃのん、だから好き~~~♪」ダキッ


いちご「うきゅっ!?」


優奈「!?」




チア部女子「それじゃ いちごちゃん、予定とかまた後で伝えるからヨロシクね!!」バイバーーーーイ


いちご「へへっ… 了解じゃよ~~♪」フリフリ





優奈「アレ… なんなんです?」


鹿老渡先輩「ありゃ、佐々野の悪癖じゃ……」


優奈「悪癖……?」




鹿老渡先輩「チア部の応援。 佐々野が来ると客が集まるゆーて、何やら重宝されとるらしい―――」


優奈「チアって、佐々野先輩 ピラミッドとかエクステンションなんか出来るんですか?」


鹿老渡先輩「あのウンチにゃ、そんなん出来んじゃろ…」


鹿老渡先輩「ピラミッドの周りでポンポン振ったり、笑顔でお囃子しとる感じじゃろ…」


いちご「むぅ… ちゃちゃのん、ウンチじゃないけぇ……」


鹿老渡先輩「なんじゃ、ほんなら自分 出来るんか? やってみんさいや?」ホレホレ…


いちご「うぅ… 出来ないんじゃ……」ガックシ


優奈「ダメじゃないですか……」





鹿老渡先輩「ほんで、何か言うことあるじゃろ……?」


いちご「えと、その……」


いちご「週末の練習なんじゃが、今回も別メニューでお願いしてもええじゃろか…?」オズオズ


鹿老渡先輩「部活サボって よその部の応援たぁ、随分とよゆーじゃのぅ 佐々野よぉ……」ギロッ


いちご「うひっ……」ビクッ


鹿老渡先輩「後でた~~ぷりしごいちゃるけぇ、覚悟しとけよぉ!!」


いちご「はひ…… ごめんなさい……」プルプル




鹿老渡先輩「ほんで、ぶっつけ本番ってわけにもいかんじゃろうし、今回も暫く掛け持ちか?」


いちご「お昼休みとか、時間作って一緒に練習させて貰う予定じゃよぉ~~」


鹿老渡先輩「まぁ、せいぜい赤っ恥かかんよぉ 頑張るんじゃよッ!!」ガシガシ


いちご「ひゃ~~ やっぱ怒っちょるんじゃ~~~」





【翌日の昼休み―――】


ワイワイ ガヤガヤ

優奈(何だか、今日は廊下の方がやけに騒がしい…?)


女生徒「津秋ちゃんさぁ… お昼 まだじゃったら、うちらと一緒にどう?」


優奈「あ、えと……」



男子生徒「いちごちゃんが体育館でチア練しとるんじゃって!!」


男子生徒「俺、朝練に参加しちょるとこ見たんじゃ!!」


男子生徒「チア服着ちょった!?」


男子生徒「着ちょった!! 着ちょった!! ほんで盛大にすっころんどったわ!!」カッカッカ


男子生徒「マジか~~!? そいつぁ すぐ見に行かんとな!!」ガタタッ


男子生徒「お主も好きよの~~~♪」ヒッヒッヒ


男子生徒「応援されて~~~!!」


優奈「………」


女生徒「何なん、アレ……」キモッ




女生徒「いちごちゃんって、2年の佐々野先輩んことじゃろ……?」


優奈「―――知ってるの?」


女生徒「そりゃ ま~ 佐々野いちご ゆーたら、この辺じゃちょっとした有名人じゃし…」


女生徒「地元のアイドル高校生ゆーて、テレビや雑誌なんかにも何度か出たことあるみたいじゃよ」


優奈(…………)



女生徒「入学してから告白された回数は数知れず――」


女生徒「男子ってホント、あ~いうアホっぽい子が好きじゃよね~~」


優奈「………」





女生徒「あ、津秋ちゃんも 同じ麻雀部じゃったね…」ゴメンナー


女生徒「ほんでもなぁ、あの人 女子からの評判イマイチじゃろ。 あんま関わらん方がええ思うよ~~」


女生徒「この前もうちらの先輩が、彼氏 取られた~~ゆーとってな―――」


優奈「あの… うちもお昼、食べ行きたいんで―――」


優奈「そろそろ行ってもええですか…?」ガタッ


女生徒「あぁ、うん―――」


女生徒「ほな 津秋ちゃん、またな~~」バイバーーイ


ドージャッターー?

アーー フラレタミタイジャ…

アハハ、アノコ ツキアイワルイケーー



優奈「…………」


彼女に悪気はないんじゃろう―――


ないんじゃろうが――― 知り合いの悪口を言われて、少し気分が悪かった―――





【廊下―――】


麻雀部員「お… 優奈ちん。 何じゃか、ご機嫌ナナメ…?」


優奈「全然… ちっとも怒っちょらんですよ…」プイッ


麻雀部員「おぉ… メチャ不機嫌じゃ……」


優奈「怒っちょらんです……」


麻雀部員「―――で、何をそない怒っちょるん……?」


優奈「…………」




麻雀部員「―――あぁ、いちごちゃんのこと……」


優奈「何も言うてませんけど……」


麻雀部員「でも、そうなんじゃろ?」ジーー


優奈「まぁ… 否定はしませんけど……」





麻雀部員「いちごちゃんの~~」


麻雀部員「頑張り屋さんじゃし、誰に対しても人当たりええ子じゃけど―――」


麻雀部員「地元のアイドル言われて、テレビや雑誌なんかでも ちやほやされとるじゃろ…」


麻雀部員「接点ない同性からすりゃ、目の上のたんこぶもええトコじゃけぇ―――」


麻雀部員「そりゃ、面白い存在ではないじゃろね……」



優奈「―――彼氏取られた… ゆーてましたけど……」


麻雀部員「そりゃ、その彼氏クンがいちごちゃんにお熱んなって、絶賛 彼女サンと大揉め中とかゆー話じゃろ?」


優奈「まぁ… そんなトコなんでしょうけど……」


麻雀部員「ほんでも、ま~~ あの子も誤解させるような態度とっとるようじゃし、全く悪くないとも言えないんじゃよな~~」


優奈「それって―――」





ワイワイ ガヤガヤ

イチゴチャーーン!!


優奈「―――?」


麻雀部員「そういや、体育館でチア練やっとる ゆーとったのぅ」


麻雀部員「―――うちらも、ちぃーと野次馬しとく?」


優奈「べ、別に… 興味とかありませんけぇ……」


麻雀部員「ほんっと、素直じゃないの~~」ケラケラ


麻雀部員「せっかくじゃけぇ、アンタも付き合いんさいな!!」グイグイッ


優奈「ちょっ… そんな強引に―――!?」






【体育館―――】


イチゴチャーーン!! チャチャノーーーン!!


麻雀部員「おぉっ… 何か凄い野次馬じゃの~~」


麻雀部員「それにしても、見事にヤローばっかじゃ!!」


優奈「……………」



麻雀部員「の~ の~ そこのキミ、今 チア部は何をやっとるんじゃ?」


そこらの男子「あぁ… これからチア部のプロモ動画を撮るゆー話みたいじゃな…」


麻雀部員「プロモ動画…?」


麻雀部員「練習風景なんかをネットに流して、観客をたくさん呼ぼうってことかの~?」


優奈「まぁ、そうな感じなんじゃないですかね…」






チア部女子「皆さん、お待たせしました~~」


麻雀部員「お、始まるみたいじゃな…」


チア部女子「それじゃ、今からチア部女子による PV撮影を始めようと思いま~~す!!」


チア部女子「ギャラリーの皆さんも、盛り上がって合いの手ヨロシクね~~~!!」


ギャラリー「「お~~~!!」」



チア部女子「いちごちゃんも、ヨロシクね~~!!」


いちご「ん… ちゃちゃのん、頑張るんじゃ!!」グッ


ギャラリー「ちゃちゃのん、頑張れ~~!!」


ギャラリー「またさっきみたいに、盛大にすっころぶんじゃね~~ぞ!!」


いちご「うぅっ… さっきのはたまたまじゃよ~~」

ワハハハハッ!!




パチパチパチパチッ パチパチパチパチッ

ズンチャ ズンチャッ ズンズンチャッ~~~♪


チア部女子「Ready OK?」


ギャラリー「「オッケーー!!」」オォォッ


麻雀部員「オッケーー!!」


優奈「おぉ… 何ですか、いきなり……?」


麻雀部員「合いの手じゃ、合いの手!!」


麻雀部員「チアにゃぁ掛け声かけて、観客と一緒に盛り上がるコールゆーのがあるんじゃよ!!」


麻雀部員「ほれほれ、優奈ちんもしっかりコールに答えんと!!」ウリウリィ


優奈「えぇと…… オッケ……?」


麻雀部員「もっと大っきい声で!!」


優奈「オッケーーッ!!」


麻雀部員「オッケーーッ!!」グッ


優奈「………………///」グヌヌ…




ズンチャ ズンチャッ ズンズンチャッ~~~♪


チア部女子「GO!! KAROUTO!!」サッ

チア部女子「GO!! GO!! KAROUTO!!」ササッ

ギャラリー「「ゴーー ゴーー カローート!! ゴーー ゴーー カローート!!」」ウォォッ


チア部女子「Let's Go KAROUTO!!」バトン バッ

チア部女子「Let's Go KAROUTO!!」バッ バッ

いちご「レッツ ゴー カロ~~ト!!」バトン フリフリ

ギャラリー「「レッツ ゴー カローート!! レッツ ゴー カローート!!」」ウォォッ


チア部女子「GO! FIGHT! WIN!!」バサッ

いちご「ゴ~ ファイ! ウィ~~ン!!」パッサ パッサッ

ギャラリー「「ゴー ファイ ウィーーン!!」」オォォッ



チア部女子「GO! FIGHT! WIN!! GO! FIGHT! WIN!!」バサバサッ

ギャラリー「「ゴー ファイ ウィン!! ゴー ファイ ウィン!!」」オォォッ

麻雀部員「ゴー ファイ ウィン!! ゴー ファイ ウィーーン!!」

優奈「ゴー ファイ ウィン… ゴー ファイ ウィン……」


いちご「ゴー ファイ ウィン!! ゴー ファイ ウィンッ!!」ポンポン ファサ ファサッ

優奈(ズレとる……)




チア部女子「スタンツ!!」ササッ

チア部女子「ダブルベースサイスタンド!!」

ギャラリー「オォッ!!」


チア部女子「ショルダー ストラドル!!」ササッ バッ

ギャラリー「オォーーッ!!」



優奈「あれって確か、一人を持ち上げる組体操みたいなヤツ…」


麻雀部員「スタンツのグリコポーズを見ると、チアじゃ~~って感じするの~~」


いちご「うひゃっ…」フラフラッ


優奈(若干名、フラついちょる……)





チア部女子「いちご!! エレベーター!!」ノッテ!!


いちご「りょ、了解じゃよ~~!!」ヨイショ グッ


麻雀部員「エレベーター!! 結構 危ない、なかなかの大技じゃ!!」デキルン?




チア部女子「YES!! I LOVE KAROUTO!! We're No.1!!」

ギャラリー「「イエスッ!! アイ ラブ カローート!! ウィー アー ナンバーー ワーーン!!」」オォォッ

グイーーン



いちご「よし、エレベーターじゃ!!」バッ


ギャラリー「「オォォォーーーーッ!!」」ウォォッ


優奈「おぉ… まさか本当に出来るとは……」



いちご「ほぇぇ……?」グラグラッ


いちご「ふに"ゃ~~~!!」

ズッテーーーンッ!!



ギャラリー「「あ~~!! ちゃちゃのん、盛大にズッコケた~~~!!」」ガハハハハッ


チア部女子「ちょっとぉ、大丈夫~~?」


いちご「な、なんとか~~」アイタタタ…


このスレ3年前からやってるのか凄いじゃん




ギャラリー「「ちゃちゃのん、平気か~~~!!」」


いちご「う、うん…… ちゃちゃのん、元気じゃよぉ~~」ヘヘヘッ


男子生徒「ちゃちゃのん、さっきからパンツまる見えじゃぞ~~!!」


いちご「うひゃぁぁっっ!?」


ギャラリー「「ウォォォッ!!」」



いちご「てぇ、これはアンスコじゃけぇ。 べっ… 別に見られたって、恥ずかしくなんて……////」ハズカシイケド…


ギャラリー「「ちゃ~ちゃ~のん!!ちゃ~ちゃ~のん!!」」オォォォッ


いちご「ほぇぇっ!? 何のコール!?」


チャーッチャーーッノン!! チャーッチャーーッノン!! チャーッチャーーッノン!!




麻雀部員「―――謎のちゃちゃのんコールが始まったんじゃ…」


麻雀部員「流石 いちごちゃん。 期待を裏切らん、ナイス芸人根性……」アザトカワエエ…


優奈「イヤ過ぎる盛り上がり方……」






チア部女子「以上、鹿老渡高校チアリーディング部によるPV撮影会でした!!」


チア部女子「ご参加 下さった皆さん、どうも ありがとうございました~~!!」ペコリッ


ギャラリー「「」」パチパチパチパチ




いちご「さ… さっきのトコ、上手にカットしといての~~」


チア部女子「え~~ どうしよっかな~~!! 残した方が絶対 再生数 稼げるし~~~」


いちご「そ、そこを何とか~~~」ウルウル


チア部女子「あはは、ま~~ 前向きに検討してあげる!!」


いちご「ありがとなんじゃ~~」





チア部女子「今週末には、バスケ部の応援もあるから 皆も絶対見に来てね~~~!!」


ギャラリー「「おぉっ~~~!!」」



チア部女子「今回の応援には、いちごちゃんも来てくれるんだよね?」


いちご「うん!! ちゃちゃのんも いっぱい頑張るけぇ、皆も応援ヨロシクの~~♪」ファイトッ


ギャラリー「「ちゃちゃのん、応援しとるぞ~~!!」」オォォッ


いちご「皆、ありがと~~~♪」




いちご「それと 麻雀部も夏のインターハイ頑張るけぇ、そっちの方も応援ヨロシクなんじゃ!!」


優奈「!?」


麻雀部員「ナイス、いちごちゃん。 流石、ウチの広報担当じゃ―――」グッ


ギャラリー「「ちゃちゃのん、絶対 レギュラーとれよ~~~!!」」ワーワー


いちご「うん!! ちゃちゃのん いっぱい頑張るけぇ、しっかり見ちょってね~~~♪」フリフリ





ギャラリー「そんな大事な時期に、チア部の手伝いとかしとってええんか~~~!!」


いちご「あぅぅ… 痛いトコ 突かれたんじゃ……」


ギャラリー「「ギャハハハハッ!!」」


ワイワイ ガヤガヤ ワハハハハッ




優奈「ホンマ、選考も近いゆーに、何 やっとんでしょうね」


麻雀部員「推しに弱い子じゃけぇ、断れんかったんじゃろ―――」


麻雀部員「ま~~ そんなトコが いちごちゃんらしい思うわけじゃが……」クスクスッ


優奈「そりゃ、先輩が人一倍 部の練習も頑張っとるんは分かりますけど―――」


優奈「なんて言うか、イマイチ緊張感に欠けとるゆーか……」




優奈「そういうトコ、何かイライラするんですよね 」


麻雀部員「ご機嫌ナナメみたいじゃの~~」


優奈「別に、そういうわけではないですけど……」




いちご「」ポンポン フリフリ


麻雀部員「お… いちごちゃん、こっち向いて ポンポン振っとるんじゃ!!」


優奈「うちらに、気がついたみたいですね―――」


麻雀部員「おっ、こっちに来るようじゃな 」




いちご「二人とも見に来てくれとったんじゃね~~♪」トテトテ


優奈「いや、別にそういうわけでは―――」


麻雀部員「いちごちゃん、お疲れちゃ~~ん!!」スカート バッ


いちご「うひゃぁッ!?」


優奈「なッ!?」


いちご「ちょ~~ 何でいきなりのスカートめくりじゃ!!」


麻雀部員「いや~~ 優奈ちんが元気なさそうじゃったけぇ―――」


麻雀部員「ちぃーと、元気付けてあげよ~~ 思っての~~♪」サービス、サービス


優奈「ちょッ―――」


いちご「どーゆーことじゃ!?」




麻雀部員「優奈ちんの先輩として、臨時とはいえ チア部のメンバーとして―――」


麻雀部員「いちごちゃんは、元気のない後輩ちゃんを励ましてやろう 思わないんか?」


いちご「ほぇぇっ!?」


麻雀部員「それとも、そのエッチぃ衣装はただのコスプレなんかぁ!!」ズビシッ!!


いちご「そ、それは~~」


麻雀部員「ホレホレ、どーなんじゃ!!」


いちご「え、えと… 優奈ちゃん……」


いちご「ちぃーとは元気、出たかのぅ……?」テレッ


優奈「―――――///」


いちご「―――優奈ちゃん?」ドキドキ


優奈「アホかッ!!」

ズビシィッ!!


いちご「あいたぁッ!?」


麻雀部員「おぉっ、ナイスな脳天チョップ!?」





優奈「そんなんで、元気とか出るわけないじゃろ……///」マッタク…


いちご「うぅ… ごめんのぅ~~」


麻雀部員「お~~い、こんなんでも 一応は先輩じゃぞ~~」アタマ ペシペシ…


いちご「こんなんて……」



優奈「先輩も、佐々野先輩にアホなこと吹き込まんで下さい……」ジロリッ


麻雀部員「いや~~ なんつーか、優奈ちんの反応が面白かったけぇ ノリ…みたいな……?」タハハ…


優奈「佐々野先輩も、イチイチ アホな冗談を真に受けんで下さい―――」


いちご「へへっ… 面目ないんじゃ……」






優奈「佐々野先輩―――」


いちご「は、はひぃっ!!」


優奈「放課後は部活 参加されるんですよね? 久しぶりに手合わせお願いします…」


いちご「あ… うん!! モチロンじゃよ!!」


優奈「それじゃ、うちはこれで―――」スタスタッ


いちご「優奈ちゃん、じゃあの~~♪」フリフリ




いちご「優奈ちゃんとの対局、楽しみじゃね~~♪」エヘヘッ


麻雀部員「やれやれ、おっかない後輩ちゃんじゃの~~」


いちご「へへ… それだけ、 麻雀にかける想いが強いってことじゃよ。」


いちご「いよっし!! ちゃちゃのんも優奈ちゃんに負けんよう、もっともっと頑張らんとね!!」グッ


麻雀部員「それんしても、自分 先輩としての威厳ゼロじゃのぅ……」


いちご「う~~ん… なんでじゃろね~~~」ワカラン…






【数日後 麻雀部部室――】


麻雀部員「いちごちゃ~~ん、雑誌 見たで~~~♪」ニマニマ


いちご「ほぇっ?」


優奈「―――?」


麻雀部員「この広島の地方誌、この前 いちごちゃんがチアで応援に行った時の写真がバッチリ載っとるんじゃ!!」


いちご「本当じゃ―――」


優奈「知らんかったんですか?」


いちご「うん…」チットモ…


優奈「それって、隠し撮りじゃないですか…」


鹿老渡1年「お~~ チア服、ぶちエロいんじゃ…」


いちご「いやいや、別にエッチではないじゃろ~~!!」


麻雀部員「いや~~ これはエロいじゃろ…」


VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
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VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
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VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
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VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな




鹿老渡1年「汗びっしょりになりながら、笑顔でダンスを続けるいちごちゃん―――」


鹿老渡1年「とってもフェティッシュじゃのぅ~~」


いちご「フェティッシュて……」


優奈「むっ……」ジーー


いちご「ゆ、優奈ちゃんは、別にエッチぃとか 思わんじゃろ!?」


優奈「……………」ジーー


いちご「ゆ、優奈ちゃん―――?」


優奈「ま… ま~~ これくらい… 別に普通じゃ… 思いますけど―――///」アセッ




麻雀部員「さら~~にッ!! この後にある読者投稿ページのヤツなんか、もっと刺激的じゃけぇ―――」ペラペラ


鹿老渡1年「たっはぁ~~ こいつぁ たまりませんの~~♪」


優奈「むむっ……」ジーーー


いちご「はわわわっ……」





鹿老渡1年「この写真のアングルとか、完全にアウトじゃろ~~!!」ヤッベ…


麻雀部員「これなんかも~~ 完全に黒寄りの黒じゃけぇ!!」グヘヘッ


優奈「何て、破廉恥な―――////」


いちご「優奈ちゃんまで!?」ヒドイッ



いちご「あ~~~ もぅ恥ずかしいけぇ!! もぅ えぇじゃろ~~~!!」ブンブンッ


鹿老渡先輩「じゃかぁしゃ~~ッ!!」

ゴスッ


いちご「あいたぁ~~~!!」



鹿老渡先輩「自分ら いつまで騒いどるんじゃ!! さっさと部活の準備 始めんかぁ!!」


麻雀部員「いよっし、今日も楽しい部活を頑張るぞ~~と―――」


鹿老渡1年「ですね、ですね―――」


いちご「なんで、ちゃちゃのんばっかり~~~」ウゥッ






【麻雀部部室 部活終了後――】


鹿老渡1年「お疲れさまでした~~!!」ガタガタッ


麻雀部員「は~~ お疲れ~~~♪」


鹿老渡先輩「一年!! 部室の掃除と片付け終わったら、こっちのゴミ出しも 忘れんようにのぅ。」


優奈「あ、はい……」




鹿老渡1年「よしっと、これでお掃除 おしまいっと…」


麻雀部員「ここんトコ 練習キツいし、試合続きじゃけぇ、流石に疲れたのぅ……」


鹿老渡1年「あ、津秋さん。 そこのゴミ捨てだけ 頼んでもええ?」


優奈「別に、いいですけど……」ヨイショ





鹿老渡1年「津秋さん、また明日~~」バイバイ


優奈「あぁ、はい……」



優奈(インハイの代表を決める部内 選考試合―――)トットッ


優奈(普段はあんなでも、やっぱり佐々野先輩の実力は侮れない―――)


優奈(今日は上手く躱されたけぇ、次は絶対 仕留めてみせるんじゃ―――)グヌヌッ


優奈「ん―――?」


優奈「あそこにおるんは―――?」




鹿老渡男子「佐々野さん、来てくれたんじゃね―――」


いちご「うん、お手紙 貰ったけぇ♪」


いちご「ホンで、うちにお話ゆ~~んは―――?」


鹿老渡男子「あ~~ その……」






鹿老渡男子「お、俺さ……」


鹿老渡男子「前々からずっと佐々野さんのこと、可愛ぇなって思っとって―――」


いちご「ちゃちゃのんが、可愛ぇ……?」


鹿老渡男子「も、モチロン!! 他の女子なんて比べるのも失礼ゆーか、月とスポポビッチゆーか!!」


鹿老渡男子「と、ともかく!! もぅ~~ ぶっちぎりで佐々野さんが可愛ぇって話じゃ!!」


いちご「あはは、そない力説されると反応に困ってしまうけぇ―――」


いちご「じゃけぇ… 可愛ぇ 言ってもらって、悪い気はせんかのぅ―――///」




鹿老渡男子「そ、それでなんじゃが―――」


鹿老渡男子「さ、佐々野さん!!」ズズィ


いちご「は、はい―――」






鹿老渡男子「す、好きじゃ!!」


鹿老渡男子「も、もし良かったらなんじゃが―――」


鹿老渡男子「俺と… 付き合って もらえんじゃろか……?」


いちご「……………」




鹿老渡男子「さ、佐々野さん……?」ドキドキ


いちご「そっか……」


いちご「ちゃちゃのんのこと、好き――― ゆーてくれるんじゃね……」


鹿老渡男子「あ… うん……///」ドキドキ



そう言うと、佐々野先輩は男子生徒の手を、小さな両の手でそっと包み込み


こわばる男子生徒の顔を見上げつつ、とても無邪気で屈託のない微笑みを浮かべてみせた―――





いちご「えへへ… とっても嬉しいんじゃ♪」


鹿老渡男子「え…… マジ………?」


いちご「うん。 ど~~もありがと~~の♪」ニッコリ



ドサッ


鹿老渡男子「――――!?」ビクッ


いちご「!?」


鹿老渡男子「なっ、ななっ!?」キョロキョロ




鹿老渡男子「ん、何でこんなトコにゴミ袋―――?」


いちご「…………?」


鹿老渡男子「あ~~ すぐそこにゴミの集積所があったんじゃな……」オモッ


鹿老渡男子「もしかすっと、俺らの告白現場―――誰かに見られとったのかもしれんね……」ハハハッ


いちご「……………」







優奈「はぁ… 思わず逃げ出してしもうた……」トボトボ


優奈「あ、ゴミ袋… 後で回収せんと……」


正直、少し ショックじゃった―――




優奈「いや、ま~~ 先輩はあのルックスじゃ……」


優奈「誰にでも優しくて、いつでも微笑みを絶やさない あの人懐っこい性格……」


優奈「クラスの男子もよー 噂しよるし、ファンクラブなんかも あるとか聞くけぇ―――」


優奈「そりゃ、告白の一つもされんはず ないんじゃが……」


優奈「……………」



先輩は、この後 あの男子と付き合ったりとかするんじゃろうか―――


大体、嬉しいってなんじゃ……


ありがとう……


そんなにアイツのことが、好きだったんじゃろか……




先輩があの時 見せた屈託のない微笑み、それが妙な違和感となって―――


うちの頭から離れんかった――――







いちご「う~~ん……」


いちご「どうも、今日もちゃちゃのんの 待ちぼうけみたいじゃ……」ヘヘヘッ



ふと、その瞬間―――


あの日、夕日を背に屋上で一人 佇んどった先輩の姿が、うちの脳裏によぎった―――


優奈「……………」



うちはあの時の先輩を、とても綺麗で美しいものだと思う反面―――


本当は凄く寂しい人なのかもしれないと、そう感じずには おれんかった――――




あの日、あの時に見た先輩の姿と―――


普段うちらが目にしとる、周囲の人を和ませ 優しく屈託のない微笑みを浮かべる先輩―――


どっちが、本当の先輩なんじゃろぅ………?





この日―――



うちは佐々野いちごという人のことが、少し分らんくなった気がした――――








<4>


【鹿老渡高校 麻雀部部室】


麻雀部コーチ「佐々野、今ちょっとええか―――?」


いちご「あ、コーチ!! モチロン、ええですよ~~♪」


麻雀部員1「いちごちゃんだけ廊下に連れ出して、いったい何の話じゃろ?」


麻雀部員2「もしかして、プロポーズ!!」


優奈「なっ!?」



麻雀部員1「もしかすっと 二人は既にただならぬ関係で、今夜の逢い引きの相談かぁ!!」


麻雀部員2「なんてこったい!!」


麻雀部員1「ご飯にする~~? お風呂にする~~?」


麻雀部員2「そんなものより、あま~~い いちごのスイーツを食べちゃうぞ~~!!」ガオーーーッ!!


麻雀部員1、2「「なんてな、なんてな~~」」ワッハッハ!!


優奈「まったく、もぅ……」ハァ…





麻雀部コーチ「今年のインハイなんじゃが、どうやら次鋒は 佐々野で決まりそうじゃ。」ヒソヒソ


いちご「え、ちゃちゃのんが次鋒!?」


麻雀部コーチ「あぁ、他のコーチたちも次鋒戦は佐々野で行く心積もりじゃけぇ。 ほぼ決定と考えてええじゃろ―――」


麻雀部コーチ「そんつもりで、残りの期間もしっかり気張って練習するんじゃぞ。」ポンポン


いちご「は、はい!! ちゃちゃのん、いっぱいいっぱい頑張るんじゃ!!」ムンッ


麻雀部員1「いちごちゃん、レギュラー決定 おめでとう~~♪」ダキッ


いちご「うひゃっ!?」


いちご「えへへ、どうもありがとなんじゃ~~♪」テレテレッ


麻雀部コーチ「こらっ、勝手に盗み聞きするんじゃない!!」


麻雀部員2「どうも、さ~~せ~~~ん!!」




麻雀部員1「いちごちゃ~~ん、お祝いのスイーツタイムじゃよ~~♪」ジャーーン


いちご「わ~~い♪ どうも、ありがと~~~♪」ハムッ


いちご「ん~~~~!?」

ゴホッ ゴホゴホッ!!



麻雀部員1「ほらほら、慌てて食べるけぇ…」トントントン


いちご「す、すまないんじゃ……」ゴホ ゴホッ


優奈「……………」






【部活終了後―――】


優奈「あの、コーチ……」


麻雀部コーチ「津秋か。 何じゃ、まだ残っとったんか……?」


優奈「どうして佐々野先輩だけ、イチ抜け状態でレギュラーが決まったんです?」


麻雀部コーチ「あぁ、ま~~ これはあまり大きな声で言うことでもないんじゃが―――」


麻雀部コーチ「所謂、広報の都合が大きいじゃろうな―――」


優奈「広報の都合―――?」




麻雀部コーチ「佐々野にはアイドル的な人気というか―――」


麻雀部コーチ「人を強く惹きつける魅力のようなものがあるじゃろ―――」


麻雀部コーチ「学校側もそれを無駄には出来んと、広報担当として佐々野を強く推していくつもりらしくての―――」


優奈「それって、佐々野先輩を客寄せに使おうゆーことですか!?」


麻雀部コーチ「ま…… そういう側面は確かに あるじゃろうな―――」


優奈「……………」





麻雀部コーチ「ただ、佐々野の 麻雀の実力は本物じゃ―――」


麻雀部コーチ「選ばれるだけの実力がなけりゃぁ、コーチ陣も佐々野をレギュラーに推したりはせんじゃろぅ―――」


麻雀部コーチ「それは、津秋もよう分かっとるじゃろ―――?」


優奈「えぇ… それは、まぁ………」




麻雀部コーチ「佐々野だけが全体発表の前に決まったんは、テレビの取材や雑誌社インタビューのスケジュールの都合でしかないけぇ―――」


麻雀部コーチ「津秋もあまり佐々野のことは気にせず―――今は自分のレギュラー入りに集中するんじゃな!!」


優奈「えぇ… 言われずとも……」


優奈「うちにも、負けたくない相手がいますけぇ―――」


麻雀部コーチ「よし、ええ答えじゃ―――」


麻雀部コーチ「それじゃ、気をつけて帰るんじゃぞ!!」ポン ポンッ


優奈「はい、ありがとうございました……」






いちご「優奈ちゃん、優奈ちゃ~~ん!!」


優奈「佐々野先輩… なんです……?」


いちご「優奈ちゃんも、これから帰り……?」


優奈「まぁ、そうですけど……」


優奈「先輩は今まで、居残り練習を――?」


いちご「へへへ… レギュラーに決まったからにゃぁ、これまで以上に気張っていかんとね!!」


優奈「そいつはご立派です。」



いちご「そういえば優奈ちゃん、さっき コーチとお話しとった―――?」


優奈「まぁ、ちょっとした世間話を―――」


優奈「佐々野先輩が とても愚かだという話で、ひと盛り上がりしてました―――」クスッ


いちご「優奈ちゃんがナチュラルに酷いんじゃ!!」ガーーーン





優奈「で、用件はそれだけですか―――?」


いちご「優奈ちゃんのレギュラー入り、ちゃちゃのん 応援しちょるけぇ!!」


優奈「…………」



いちご「ちゃちゃのん、優奈ちゃんと一緒にインターハイの舞台で戦いたいけぇ―――」


いちご「じゃけぇ、残りの選抜戦も頑張ってのぅ―――♪」ナデナデ…


優奈「まったく、何かと思えば……」



優奈「ホンに佐々野先輩は愚かな人ですね―――」


いちご「あぅぅ… また愚かって言われたんじゃ……」


優奈「佐々野先輩がレギュラーに選ばれて、うちがレギュラーに選ばれんとか ありえんじゃろ―――」


いちご「へへへ…… それもそうじゃねぇ~~~♪」




あの告白現場を目撃してしまって以来―――


何となく先輩とは話しづらい気がして、少し距離を置くよう接していたかもしれない―――


ただ向こうはこちらのそんな気持ちなどお構いなしで、相も変わらず無遠慮に踏み込んでくるのだった――――







【それから数日後―――】


キーーンコーーン カーーンコーーン

オツカレサマデシターー


麻雀部員「は~~ これでようやっとインハイの選抜戦も終了じゃぁ!!」


麻雀部員「あとは数日後に行われる、レギュラーの発表を待つだけじゃな―――」


麻雀部員「この開放感を満喫するためにも、この後 どっか遊びに行かない―――?」


鹿老渡1年「賛成でありま~~す!!」


ワイワイ ガヤガヤ…



麻雀部3年「津秋よ~~ 自分、ホンに容赦ないの~~」


優奈「はぁ、スイマセン……」


麻雀部3年「今年のインハイは出来レースの佐々野に、1年の津秋で 自分のレギュラー入りもすっかり黄色信号じゃな―――」チッ


優奈「……………」


アンタの実力じゃ、佐々野先輩にゃぁ勝てんじゃろ―――


そう言ってやりたいのはヤマヤマじゃったが、この人にも先輩としてのメンツみたいなものがあるんじゃろう―――




高校一年での初めての選抜戦―――


手応えとしては ま~ま~あったと思うが、団体戦ではチーム全体のバランスや役割も重要視される―――


最終的な決定はコーチが判断することなので、まだ一年でしかない自分がレギュラーに選ばれるかどうかは正直 分からない――――



優奈「三箇牧に行った荒川 憩―――」


優奈「アイツじゃったら一年でもレギュラーとして、今年のインハイの舞台 暴れまわるんじゃろうな―――」






優奈「あ… 佐々野先輩―――」


いちご「優奈ちゃん―――?」


窓辺で一人 彼方を眺める佐々野先輩を見かけ、思わず声をかけてしまった―――


正直、今 佐々野先輩と話すのは少し気まずい―――




優奈「えと、何をしてるんです―――?」


いちご「あぁ、風を感じとったんじゃ―――」


優奈「風、ですか―――」


いちご「うん、風がとっても気持ち良かったけぇ♪」


トレードマークのツーサイドを風になびかせ、目を閉じ風に身を任せる その姿が悔しい程 絵になっていた―――


ていうか、大体 何をしてても絵になるような人だった―――


優奈「はぁ…… これだから、天然ものは……」ボソッ


いちご「………?」





いちご「優奈ちゃん、選抜試合 お疲れ様じゃったねぇ~~」


優奈「別に、特に疲れるようなことは何もありませんでしたけどね……」


いちご「そうじゃ、これから部の備品なんかの買い出しに行くんじゃが―――」


いちご「優奈ちゃんも、一緒にどうかのぅ―――?」


優奈「えっ!? そんなん一年の仕事なんじゃ……?」


いちご「ちゃちゃのんが、好きでやっちょるだけじゃけぇ~~」エヘヘ


優奈「はぁ… まぁ、荷物持ちくらいならええですけど……」


いちご「やた♪ ほんじゃ、今日は優奈ちゃんとデートじゃね~~♪」ピョンコッ


優奈「で… デートて……///」エェ…



鹿老渡先輩「佐々野ぉ!! 津秋は期待のルーキーじゃけぇ、悪い遊び 教えるんじゃないぞぉ!!」パカンッ


いちご「ひゃんっ!!」


いちご「んもぅ、そんなことせんよ~~」グスンッ


優奈(天然 小悪魔め……)


優奈(この人は… 何の躊躇いもなく、自然にあーゆー事が言えてしまうらしい……)





ルンルン ルンルン…♪


優奈「…………////」


すれ違いの男子生徒「あ、ちゃちゃのんじゃ……///」


すれ違いの女子生徒「…………」クスクスッ


いちご「ゆーなちゃんとデート♪ ゆーなちゃんとデート~~♪」ルンルン


優奈「さ、佐々野先輩。 廊下で歌いながらスキップするん、よして下さいよ……///」ヒソヒソ


優奈「ぶち見られとるんじゃ…////」ウゥ…



いちご「あ… ゴメンのぅ~~ 優奈ちゃんとのお出かけ、楽しみじゃったけぇ~~」


すれ違いの男子生徒「ちゃちゃのんと一緒にいるのって、今年入った1年…?」


すれ違いの女子生徒「何か、かなり麻雀が上手らしいよ……」ヒソヒソ


優奈(ぶち注目されちょる……////)


いちご「みんな、ゆーなちゃんの噂しちょるね~~」ヘヘッ


優奈(アンタのせいじゃろ……)コノ…






優奈「それで今から買い出しゆーと、倉橋のデパートでええですか?」スタスタ


いちご「あ… 鹿老渡の商店街まで行きたいんじゃが、ええかのぅ?」テッテッ


優奈「はぁ… まぁ、ええですけど―――」スタスタ


優奈「デパートの方が手軽や思いますけど……」


いちご「まぁ~~ そうなんじゃけど、ちょっと寄りたいトコもあるけぇ―――」ヘヘヘッ


優奈「寄りたいトコですか―――?」




優奈「…………」ジーーッ


いちご「ほぇ……?」


優奈「前から思ってたんですけど、先輩って校内でも よぅクツ持ち歩いてますよね……」


優奈「外用のクツを教室とか部室にまで持ってきとるし、何でなんです?」


いちご「あはは、その… 実はのぅ……」





いちご「ちゃちゃのん、よぅクツをなくすんじゃ……///」


優奈「は……? なくすってドコで……?」



いちご「その~~ 下駄箱とかで……」


優奈「あ――――」


いちご「………///」



下駄箱に入れておいたクツがなくなる―――


先輩の何とも言えん恥ずかしげな表情からも、それがなくしたんじゃないと容易に察せられた―――






【鹿老渡高校 下駄箱】


優奈「因みに、これまで何足ほどなくされとるんです?」ジブンノ クツバコ カチャ…


いちご「えと… 1年生ん時だけでも、10足以上は―――」


いちご「昔から物がようなくなるけぇ、妙じゃの~~とは 思っちょったんじゃけどね……」


優奈「10足て… それ、もっと早ぅ気付いて下さいよ……」


優奈「もしかして、リコーダーとか体操服もよぅなくす方ですか?」


いちご「……………///」コクンッ


優奈「はぁ~~ 男子にモテるゆーんも大変なんですねぇ……」




優奈「そんなら佐々野先輩の下駄箱、今は使ってないんですか?」センパイノ クツバコ カチャ…


いちご「あ―――」


バサバサバサッ ドサドサッ


優奈「おぉっ!?」スザッ


先輩の下駄箱から飛び出してきた、無数の手紙と贈り物らしきものに驚き 思わず後ずさる。





いちご「そういえば、今日は時間がのぅて―――」


優奈「えっと… 何かすみません……」


いちご「ん~~ん… 別に気にせんでええよ~~」ヨイショ…



しゃがみこんで、手紙を一枚一枚 丁寧に回収していく先輩。


それが男子生徒からのラブレターと先輩へのプレゼントだとゆーことは、一目見れば分かったが―――


その数の多さに、正直 ちょっと引く――――




いちご「ふぅ… これで全部じゃね♪」ヨッ


優奈「あの~~ 佐々野先輩は、いつもこんな数のラブレター貰っとるんです?」


いちご「ふぇっ!? うぅん、今日はたまたまじゃよ、たまたま!!」ブンブン


優奈「…………」



これは後で知ることだが、先輩は昼休みや休憩中に手紙の回収に姿をくらますことがあるらしい―――


今のうちのように、周囲の人がドン引きするのを気にしてのことじゃろう―――


イヤミか――――



>>1の酉ないし乗っ取り?




いちご「優奈ちゃん、ごめんのぅ…」


いちご「先にお手紙 読んでしまうけぇ、ちょっと 待っちょってね……」パラッ


優奈「そんなん、別に後でも ええやないですか。」


いちご「それじゃと、ドコかで待っちょるゆー手紙があった時に申しわけないけぇ……」


優奈「律儀か……」ウンザリ…




優奈「もしかして『放課後、待ってます――』みたいな手紙ある度、先輩はアホみたいに出向いちょるんですか?」


いちご「そりゃぁ、そうじゃよ。 放置なんてしたら、その子に悪いしのぅ……」


いちご「―――まぁ、たまに誰も来なくて、ちゃちゃのんの方が一人 待ちぼうけさせられたりもするんじゃけどね……」ヘヘッ…


優奈「………ほんで、先輩はそーゆーの迷惑だから ヤメろってゆーとるんです?」


いちご「ほぇ… ゆーちょらんけど……?」


優奈「ドアホですかッ!!」


いちご「えぇっ!?」


優奈「迷惑なら迷惑、困っちょるんなら 困っちょる―――」


優奈「そーゆーことは、しっかり相手に伝えなきゃ アカンじゃろ!!」


いちご「そ… そうはゆーてものぅ―――」





優奈「それとも何です? そうやってチヤホヤされて、先輩もまんざらでもないゆーことなんですか?」


いちご「ほぇ……?」


いちご「えっと… うん……」コクッ


優奈「―――えぇっ!? 今の流れで、そこ認めちゃいます!?」


いちご「へへっ… 褒めてもらえたら、やっぱり嬉しいけぇ…」


いちご「それにのぅ… 誰かに必要としてもらえるゆーんは―――」


いちご「とっても幸せなことじゃって、ちゃちゃのん思っちょるけぇ―――////」


優奈「……………」




いちご「優奈ちゃん……?」


優奈「じゃけぇ先輩は―――」


優奈「誰に告白されても、あんなに嬉しそうに微笑み返すんじゃな―――」


いちご「…………?」



優奈「何日か前、偶然 ゴミの集積所の近くで 先輩が告白されとるトコを見てしまって―――」


いちご「あぁ… アレ見られとったんじゃね……」


いちご「えへへ、何じゃか 照れくさいのぅ……///」



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優奈「あの時の先輩、とっても嬉しそうじゃったけぇ……」


優奈「あの男子生徒からの告白、受けられたんですか……?」キュッ


いちご「―――ううん、受けちょらんよ」


優奈「えっ、そうなんです!?」




いちご「ほぇ…… そりゃ、ちゃちゃのんは未来のアイドルじゃけぇ―――」


いちご「男の子と個人的な お付き合いをするわけにゃぁイカンじゃろ―――」シレッ


優奈「えぇ、何か軽っ……」



優奈「ほいじゃが… 嬉しいとか、ありがとうとか―――」


優奈「とってもええ笑顔で、男子の手を取りながら ゆーちょりましたよね……?」


いちご「そりゃぁ… ちゃちゃのんのこと可愛ぇ、好きじゃってゆーてくれたけぇ―――」


いちご「その心のこもった言葉に対して、ちゃちゃのんがお礼をゆーんは当然のことじゃろう―――」


優奈「……………」


いちご「優奈ちゃん……?」


提督「嫌われスイッチ?」明石「はいっ」
提督「嫌われスイッチだと?」夕張「そうです!」
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魔剣転生というスレの作者ですが、断筆する事に致しました。
魔剣転生というスレの作者ですが、断筆する事に致しました。 - SSまとめ速報
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外野の反応に負けてエタった先人たち
彼らの冥福を祈りつつ我々は二の舞を演じない様に注意しよう




いちご「―――優奈ちゃん、もしかして 何か怒っちょる……?」


優奈「怒っちょらん!! 別に何も怒っちょらんですけぇ!!」


いちご(ひゃ~~ やっぱり怒っちょるんじゃ……)




優奈「えっと、その高そうな贈り物なんかは どうしてるんです―――?」


いちご「部のみんなで頂ける お菓子くらいなら、ありがたく頂いちょるんじゃが―――」


いちご「あまり高価そうなもんは、お礼と一緒にしっかり お返しさせてもらっちょるんじゃよ―――」


いちご「ちゃちゃのん、そういうところは しっかりさんじゃけぇ!!」ドヤッ


優奈「あ~~ はいはい、偉い偉い……」


いちご「えへへ、もっと褒めてくれてもええんじゃよ~~♪」


優奈「うざっ……」ペッ


優奈「あぁ… 今のは心の声なので、お気になさらず……」


いちご「優奈ちゃん、酷い……」



その後 暫く―――


佐々野先輩のラブレターと贈り物へのお礼参りに付き合わされることになった―――



阿良々木暦「ぶんぶんぶぶん!」レベッカ・忍「おーなみばんばばんばーん、じゃ!」
と別のベクトルで不快な文章
最近の咲SSってこんなんばっかだな

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このSSまとめへのコメント

1 :  MilitaryGirl   2022年04月19日 (火) 16:56:19   ID: S:_U2Y1N

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2 :  MilitaryGirl   2022年04月19日 (火) 22:19:14   ID: S:t2lw1i

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3 :  MilitaryGirl   2022年04月19日 (火) 23:35:05   ID: S:sQtJlC

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4 :  MilitaryGirl   2022年04月20日 (水) 01:19:24   ID: S:jaK5NW

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