勇者「魔王の部屋の入り口がクソ狭い」 (10)
勇者「この入り口の狭さでは武器は持って入れないか」
戦士「ここまで来て引き返すわけにはいかん。武具を外そう」
僧侶「仕方ありませんでしょうな」
勇者「では、いざ参る!!」
入室!
魔王「ようこそおいでやす」
勇者「貴様を倒す!」
魔王「威勢のよろしいことで。ここまできて急いで決着つけることもありまへん。まずは座りやせ」
勇者「うむ」
戦士「邪魔するぞ」
僧侶「よっこらせ」
魔王「今、お茶を立てますよって」
勇者「かたじけない」
戦士「おい勇者よ。これは完全に魔王のペースに呑まれてるぞ!危険だ」
勇者「確かに…。こちらからも攻勢に出るべきだな。よし僧侶!」
僧侶「心得た。さて魔王さん。我々も手ぶらで来るほど不躾ではない。まずはこの土産を検めて頂こうか」
魔王「これはこれは、虎屋の羊羹とは、あな嬉しや嬉しや」
勇者(よし!反応は上々だ!)
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戦士「やはり虎屋の羊羹で正解だった。贈り物で喜ばれるもの鉄板だからな!」
魔王「こんな高級なもの、私一人で頂くなんて身に余りますどすえ。丁度ええし、茶菓子で今皆さんで頂きましょか」
僧侶「くっ!流石は魔王。この搦め手を正攻法で返してくるか…!」
勇者「だが、あの羊羹は俺たちも実は食べたかったんだ。逆に考えよう。これはチャンスだと!」
戦士「そうだな。だが、この正座という体勢…なかなかにキツイ」
魔王「ああっ。足は崩して構わへんどす。どうか楽にしてくれやす」
戦士「では、お言葉に甘えて…よいしょっと」
勇者「情けないぞ戦士…!」
僧侶「おのれ魔王!こうも安々と戦士の正座を崩すとは…」
魔王「おっと、湯が沸きましたな。では淹れましょか」
勇者「ではその間、羊羹を切り分けておきましょう」
魔王「いえいえ、それには及びまへん。お客はんはドシッと構えといてくれやす。『ダークネスカッター』」指クイッ!
シュパン シュパン シュパーン!
勇者「羊羹が一瞬で切り分けられた…!?」
僧侶「呪文詠唱もなしにこの威力とは……恐ろしい」
魔王「今淹れますよってな」
トポ トポ トポー
勇者「ふーむ。抹茶の良い香りが漂ってくるな」
魔王「勇者さん一行が来られるて聞いて、宇治のほうにええ茶葉を買いに行かせましたきに」
僧侶「それはわざわざ」
戦士「お心遣い感謝する」
魔王「ええってことです。こんなん趣味みたいなもんですから」
勇者「でしょうね」
魔王「買い付け行かせたルシアドはんも、あのへん出身やから、帰りに田舎寄れてよかった言うてはったりましたよ」
勇者「ルシアドと言うと四天王のルシアドか」
戦士「魔王城10階で奴とは死闘を繰り広げたな」
僧侶「勇者の機転で弱点を突けたのが勝利の鍵でしたね」
勇者「でもわざわざ茶葉買いに行ってくれたのが彼だったなんて、悪いことしたなぁ」
魔王「ほなら、ルシアドはんの入院の土産に、余った羊羹包んで持ってきましょかね」
勇者「かたじけない」
しゃっしゃっしゃっしゃっ
魔王「どうぞ」
勇者「ほう。綺麗な抹茶の色だ。それに茶を立てるのも御上手ときた」
魔王「そんな。まだまだ未熟者やさかい」
勇者「ははは、ご謙遜を」
戦士「しかし、茶というのはどうやって飲めばいいのだ…?」
僧侶「確か二週半…いや三回だったか?回してグイッと……だった気がします」
魔王「そう肩肘張らず好きに飲んでくれてええどすよ。形式に囚われんと自由に楽しんで頂くんが一番やき」
戦士「重ね重ね心遣い痛みいる」
勇者「では!」
ゴッキュ!ゴッキュ!ゴッキュ!
勇者「ふぅ……。結構なお手前で」
魔王「おおきにや」
戦士「抹茶というのも中々わるくないな。美味かった」
僧侶「この茶室の静謐と相待って心が洗われるようだ」
魔王「花鳥風月、明鏡止水。茶によって自然と一体になるんはええもんです」
勇者「侘び寂びですなぁ」
魔王「茶ぁの苦味と、この羊羹の甘みが調和して、大変にええ塩梅どす」
勇者「お口に合って何よりです」
僧侶「今日は貴重な時間を割いてもてなしていただき、ありがとうございました」
戦士「機会があればまたやりたいものですな」
魔王「そう言って頂けて嬉しいですわ。こっちも張り切った甲斐がありますよって。
では、そろそろ上に参りましょか」
勇者「うむ。では後ほど」
僧侶「一旦失礼する」
戦士「邪魔したな」
魔王城の屋上
魔王「ふははははは!!よくぞここまで来たな勇者ども!!」
勇者「貴様を倒して世界に平和を取り戻す!!」
僧侶「すべては子供達の笑顔を守るため!」
戦士「例えこの身砕けようと、貴様を地獄に送ってやる!」
魔王「ニンゲン風情が笑わせる!!さあ、かかって来い!全てを賭けて!!」
勇者達「「「うおおおおー!!」」」
カッッ!!
おしまい
ありがとうございました。
乙
まさに茶番
このSSは>>8で完成したような気がした
変な時間に見たからフフってなった
>>8まで乙
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