鳳翔さんの居酒屋にて (27)
男「ふう。今日もひと仕事終わった」
男「だいぶ遠い街での営業だったが、なんとかうまくいったな」
男「時刻は午後7時、ちょうど腹も減ってきた。家に戻るまでは時間もかかるし、今日はさすがに外食にしよう」
男「知らない土地だから、どの店が当たりか分からないのが辛いな……。圏外だから食べログとかも開けないし」
男「……おっ。良い匂いがする。あっちか」
【看板】居酒屋 鳳翔
男「ほう、居酒屋か」
男「なんて読むんだろうこれ、ほうしょう……?」
男「まあ良い、腹も減っているし仕事もうまくいった。今日はここで一杯いただくとするか!」
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艦これSS
※飯テロ注意
※飲みテロ注意
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以上を許せる方、どうぞ
艦これSS
※飯テロ注意
※飲みテロ注意
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以上を許せる方、どうぞ
ガラリ
男「こんばんは。やってますか?」
鳳翔「――あらまぁ、いらっしゃいませ」
男(わっ。美人な人だなぁ)
男(カウンター越しの向こうに、一人で立っている。女将さんだろうか)
男(店は小ぢんまりとしているけど、カウンターに一席空いているくらいの盛況ぶり。テーブル席も女性ばかりだが満員)
男(よっしゃ! これは当たりかもしれないぞ。男性客がオレしかいないのが少し不安ではあるが、がっつりというより、女性にも好かれる薄めの味付けかもしれない)
鳳翔「一名様でしょうか? 団体様なら、申し訳ございません。見てのとおり今いっぱいで……」
男「あ、一名です。私ひとりです、はい」
鳳翔「そうでしたか、良かった。ではこちらのカウンター席にどうぞ♪」
男「ありがとうございます、失礼しますね」
男(笑顔も素敵な女将さんだ……。癒されるな)
龍驤「……」
赤城「……」
加賀「……」
蒼龍「……」
飛龍「……」
男(うわ、めっちゃ見られてる……。男性客少ないし、まあ当然だけど……)
男(なんかすごくみんな、オーラがある人たちだなぁ)
男「しょっと……」
男(カウンターテーブルだが、机も綺麗だ。良い定食屋、居酒屋の証拠だな)
男(調味料には醤油、塩、コショウ、山椒、七味もある。焼き鳥メニューでもなんでもござれだ)
男(……ああ。いい匂いがしてきた。今日は食べるぞぉ)
龍驤「なんやキミィ。この辺じゃ見ん顔やな」
男「えっ!」
男(び、びっくりしたぁ。いきなり隣の小さな子が話しかけてくるんだもん)
龍驤「仕事で立ち寄ったんか? ここはええ店やから、ゆっくりしてきやー」
男「は、はあ。ありがとうございます」
男(イカをくわえながら関西弁で話す女の子……。熱燗でやってるのか。ていうかこの子未成年じゃないよな、大丈夫かな)
鳳翔「こら龍ちゃん。初めて店に来てくれたお客さんなんだから、変なこと話さないの」
男(続いてオレの前に登場するのは女将さん。この小さな人と仲が良いのだろうか。龍ちゃんと呼ばれた女性はキヒヒと笑いつつ、なんだか嬉しそうだ)
鳳翔「ごめんなさい、お客さん。お飲み物は何になされますか?」
男「あ、えっと。すみません、決めてませんでした」
鳳翔「あらあら、ゆっくりでも構いませんよ」
男「そうですね。どうしようかな」
男(恐らく和食のお店だろうし、いきなりビールってのもな)
男「えーっと、日本酒ありますか?」
鳳翔「ええ。ございますよ。何がよろしいですか?」
男(今日は商談が成立したし、ちょっとリッチにいくか)
男「久保田はありますかね?」
鳳翔「もちろんです。飲み方はどうされます?」
男「冷でお願いします」
鳳翔「かしこまりました♪ ではお通しと一緒にお持ちいたしますね」
男「はい、ありがとうございます」
男(……くそう。いちいち仕草まで美しいなあこの人は)
龍驤「にーちゃん、いきなり日本酒かいな。飛ばすねえ」
男「あ、いや、あはは」
男(女性に絡まれるのって久しぶりだけど、悪い気はしないな。この子、小さくて頬も赤くて可愛らしいし)
蒼龍「りゅうちゃんこっちのテーブル席おいでって。お客さん困ってるじゃん」
飛龍「今日MVPだったから嬉しいのは分かるけど、他のお客に絡まないの! めっ!」
男(テーブル席から呼ぶのは、体が豊満な女性二人。二人共その、立派なお胸をしてらっしゃるなぁ。それにとびきりの美人だし)
龍驤「ええやんかぁ別に。この人は司令官やあれへんのやし」
赤城「そうは言っても、一般人の方にご迷惑はかけられませんよ」
加賀「鳳翔さんのお店に酷評を生ませる訳にいきませんから」
男(龍ちゃん? という女性の向こう側に座っていた女性たちも声を上げてる。うわっ、ていうかこの二人もすごい美人じゃないか。赤と青の両極端な着物を着ているけど、仲は良さそうだし、何よりオーラが半端ないな)
龍驤「なんでやぁ! うちまだそんな絡んでへんよぉ! 普通のこと話しかけとっただけやん! なあキミぃ!」
男「えっ!? ああ、はい、そうですね、あはは……」
鳳翔「もー。龍ちゃんちょっと今日は飲みすぎよ。ごめんなさいねお客さん」
男「あ、いえいえ、お気になさらず」
鳳翔「迷惑だったら席を代えますので、いつでも仰ってください。ではこちら、お通しと日本酒の久保田です」
男(おっ、きたきた!)
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男(日本酒は升に入った冷)
男(お通しは、イカと里芋の煮付け)
男(味の濃さも、見た目では控えめではない感じだろうか。とにもかくにも美味そうだ。オレの胃袋と肝臓が蠢いている!)
鳳翔「どうぞ、召し上がれ」
男「ありがとうございます。いただきます」
男(まずは里芋を頂こう。お腹と背中がひっつきそうなくらい腹が減っていたからな、五臓六腑に染みそうだ)
パクッ
男「……モグモグ……」
男「…………」
男「~~~~~ぅッッッ!!!!」
男(………………うんまぁ~………………)
男(醤油と砂糖とみりん、そしてイカの甘さが十分に染み渡っている……)
男(一見濃いかな? と思ったが、後には残らない少々控えめな味付けだ。素材の旨さを引き出しているというか)
男(それにボロボロの歯ごたえのない里芋ではなく、噛みごたえまである一品だ。煮えすぎず、食感まで楽しめる)
男(しかも最後の飲み込む瞬間まで、味がしっかりと染み込んでいる! ということは、薄味ながらも時間をかけて煮込んだお通しということだ。ここまで手の込んだ里芋は初めて食べたかもしれない)
男「美味しい……」
龍驤「あっはっはあああ!! やろ!? やろー!!?」
男「ええ、とっても美味しいです」
男(さてここで冷をごくりと)
ゴクッ
男(舌に絡めつつ、頂く日本酒)
男(あぁ~~……。至福)
男(久保田の甘味が、更に里芋の後味を引き立てる)
男(この組み合わせは抜群だ! 日本酒にして大正解!)
赤城「あらあら。とっても美味しそうに食べるんですね」
男「あ、すみません。凄くお腹がすいていたもので……」
赤城「私、料理を美味しそうに食べる殿方のお顔を見るの、すごく好きなんです」
男「そ、そうですか……」
男(なんだよこの人……。頬を赤らめながら声かけてくるなんて。ていうか美人過ぎて直視できねえわ!! 顔逸らしてしまうわ!)
加賀「……」
男(あれ、向こうの青い人、すげえムッとしてる。オレなにかしたかな)
赤城「あ、鳳翔さんすみません。オムライス十人前おかわりで」
鳳翔「はいはい。少し待っててくださいね」
男(……えっと。聞き間違いだよな?)
ジャッ ジャーッ
男(……そういえば、この女将さん、鳳翔さんっていうのか)
男(珍しい名前だな。居酒屋の名称もそこからとったんだろうか)
鳳翔「よっ」
男(フライパンを翻す手も美しいな。あんな細い腕で、どこにそんな力があるんだろう)
男(っと、いかんいかん。手が止まっていた。次はこのイカを頂くか)
パクッ
男「……モグモグ……」
男「…………あぁ~…………」
男(とっても、その、なんというか)
男(安心する味)
男(さっきの里芋と味付けは一緒かもしれない。でも、魚介の旨みが秀でているなぁ)
男(シンプルだけど奥深いというか。シンプルイズザベスト。シンプルに混じりっけない味のベスト)
男(こりゃあ箸が止まらないや)
瑞鶴「だからぁ!! 一航戦の青い方はもう引退すればいいんだってぇ!! 全部改二の私たちがなんとかするからさぁ!!」
翔鶴「ず、瑞鶴、飲みすぎよ。ほら声も大きいから……」
加賀「……」
龍驤「加賀おまえめっちゃ機嫌悪いやん(笑)」
加賀「頭にきました」
男(わぁ……。なんか修羅場なのかな、これ……)
瑞鶴「いやね、ずっと思ってたんですよ。私ら、ひっく、私らは結局、一航戦の名を受け継いで戦線に駆り出された訳でぇ!!」
翔鶴「もう瑞鶴! いい加減にしないと怒るわよ!」
男(おいおい、この二人も奥のテーブル席にいたから見逃してたが、めちゃくちゃかわいいぞ。なんだよここ、穴場か?)
加賀「……それは。不甲斐なかったと反省しているわ。だから今、私たちは貴方たちに二度と辛い思いをさせぬよう、道を示しています」
瑞鶴「かーーーっ! 偉そうに! そんなこと言ったって、私はあんたをぜーーったい認めないんだから!!」
男(ライバル関係なのかな。なんだか客観的に見ても、仲良さそうに思えるな)
葛城「まあまあ瑞鶴先輩。私がお酌しますので……」
瑞鶴「むっ! ま、まあ、仕方ないわね。もらってあげるわ」
天城「加賀さん、もしよければ昔のお話きかせてください!」
加賀「……」
雲龍「師匠。飲みすぎ」
龍驤「やかましわ雲龍! うちは今日もっと飲みたいんや!!」
男(また新たに綺麗な女性たちが現れたぞ)
男(この三人は後輩なのかな。いやぁ、どこの世界でも上下関係は大変そうだなぁ)
男「……パクパク……」
男「あっ!!」
男(し、しまった……。この女性たちのやりとりを肴に、いつの間にかお通しを食べ尽くして、日本酒を空にしてしまったっ!)
鳳翔「お客様、何かご注文なされますか?」
男「えっ」
男(わぁ、気の利いた接客。たくさんの人が注文する中、オレの食事にも気を使ってくれてたのか)
男「ありがとうございます、えーっとですね」
男(しかし、なんのメニューがあるか確認さえもしてなかった……反省)
鳳翔「うふふ。もし注文に悩まれていらっしゃるなら、本日のおすすめはいかがでしょう?」
男「本日のおすすめ……ですか?」
鳳翔「ええ。私のお店ではいつも、できるだけ新鮮なものを市場から仕入れております。そちらに置いてあるメニューにも書かせて頂いてますが、何を頼むかお迷いになられているのなら、出来れば美味しいものを頂いてほしいなと思いまして」
男「な、なるほど」
男(本当だ。紙に手書きでメニューが書いてある)
男(魚介、野菜系が主だな。まあ新鮮な肉の仕入れなんて難しいだろうし、そりゃ当然か)
男(それにしても……)
【野菜:とれたてやさいのてんぷら(漬物もいかがですか?)】
【お魚:とれたて秋刀魚の塩焼き&なめろう】
【大豆:鳳翔特製 揚げ出し豆腐】
男(どれもめちゃくちゃ美味そうだ……!!)
男(迷う)
男(はっきり言って、非常ぉぉぉーーーーーに迷う!!)
男(くそー、どれも頼んでしまっても良いのだけれど、せっかくだから一品ずつ味わいたいしなぁ)
男「……」グゥー
男(でもこの空腹感をまずなんとかしたいな。ズシッとくるものを入れたいというか)
男(だとするとやっぱりあれかなぁ)
男「すみません、鳳翔さん」
鳳翔「あら? もうお名前覚えて頂いたんでしょうか?」
男「あっ。すみません、咄嗟に……」
鳳翔「いえいえ。嬉しいので思わず口にしてしまいました。なんでしょう?」
男「あ、えーっと。この『鳳翔特製 揚げ出し豆腐』をください」
鳳翔「かしこまりました。お飲み物はどうされますか?」
男「そっか、しまったです、えーっと」
男(あちゃー。まずお腹に入れたいものを頼んでしまった)
男(揚げ出し豆腐に合う飲み物かぁ。何がいいだろう)
瑞鳳「うふふうふふ、ねえねえおにいさん、揚げ出し豆腐にすりゅの?」
男「えっ」
男(な、なんだこの子。顔真っ赤だな)
瑞鳳「それならねぇ、ビールにしよっ! あとね、ここは卵焼きも、美味しいんだよ!!」
男「ああ、ビールですか。なるほど」
男(揚げ出し豆腐にビールか……。油物だし合わない訳じゃないが、和風とは相性いいのかな)
男「では生ビールでお願いします」
鳳翔「承知いたしました♪」
瑞鳳「あと卵焼きも!!!! 卵焼きもいりゅの!!!!」
男「は、はい。鳳翔さんすみません、卵焼きもお願いします」
鳳翔「あらあら分かりました。瑞鳳さん、お値段は貴方から引いておきますね」
瑞鳳「うん!! いいよ!! だってこの人に鳳翔さんの卵焼き食べてもらいたいし!!」
男(なんだこの子、ただの天使か)
ジューッ
男(卵焼きを焼きつつ、揚げ出し豆腐も作っているのかな。この人は何をしても綺麗だ)
瑞鳳「むーーー……」
男「あ」
瑞鳳「今、鳳翔さんに見とれてたでしょ!!」
男「え、あ、はい、すみません……」
瑞鳳「……」
瑞鳳「ニッコリ」
瑞鳳「まぁ鳳翔さん可愛いから仕方ないか~♪」
男(上機嫌になるのか……)
瑞鳳「私、瑞鳳って言うの! おにいさんどこから来たの??」
男「えっ、あー、えーっと。都内の方からですね」
瑞鳳「へええええーーーっ! じゃあシティボーイだね!! すごい!! かっこいい!!」
男「い、いやそんなものでもありませんよ……」
男(六畳間に住んでるしがない社会人とは言えない……)
瑞鳳「今日はじゃあ、遠出だったんだね!」
男「そうですね。営業先がたまたまこちらだったもので。良い匂いに誘われて、お店にお邪魔しちゃいました」
瑞鳳「そっかぁ! ならうーーんっと美味しいもの食べていってね! ここらはあんまり人のお客さんが来ないから!」
男「? 人?」
祥鳳「こら瑞鳳、そろそろ席に戻るわよ。おにいさん、妹が絡んでごめんなさい」
男(わっ、すっげー美人! しかも今時サラシて!!)
瑞鳳「いいじゃん別にー。この人には卵焼き食べてもらうの!!」
祥鳳「はいはい、私が食べて上げますから……」
男(お姉さんは会釈して、奥の席にいってしまった)
男(……もうちょっと絡んでくれても良かったのに。なんてね)
本日はここまでです。
鳳翔さんの揚げ出し豆腐、お楽しみに
おつです
美人に絡まれて、飯もお酒も絶品とか天国じゃないかw
どこのヴァルハラだよ……
鳳翔「お客様、お待たせいたしました」
男「おっ」
鳳翔「こちら生ビールと、鳳翔特製揚げ出し豆腐でございます」コト
男「うおお……! こ、これは……!」
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男(キンッキンに冷えた生ビールと……!)
男(なめこ? 入りの特製揚げ出し豆腐!!)
男(なんてことだ……! 最高じゃないか!)
龍驤「……おいおい兄ちゃん。よだれ出とるでぇ?」
男「わっ。これは失礼」
鳳翔「うふふ。卵焼きはもう少々お待ちくださいね♪」
男「はい、ありがとうございます」
男(さて、飲むぞ、食うぞぉーっ!)
男(まずはビールを喉にかきこむ!)
ゴッ ゴッ ゴッ ゴッ
男「~~~~~~~~~~ッッッ!!!!」
男(キンッキンに冷えてやがる……!)
男(これだよこれ! やっぱ仕事終わりの冷えたビールってのは最高だなっ!!)
男(日本酒の甘さとほろ酔いも悪くないんだけど、さっぱりとグビグビ飲めて、少しの苦味があるのも、ビールの魅力かもしれない)
男(よしっ。喉がリセットされた状態で、この『鳳翔特製 揚げ出し豆腐』を頂こうじゃないか)
ジュワアァ
男(うおっ、箸でつついただけで油がつゆに染み込む!)
男(でも見た目で分かるけど、体に悪い油を使ってないような気もするな。カリッと揚がっている訳じゃないけど、豆腐としての尊厳も忘れてないというか)
男「いただきます」
パクッ
男「…………」
男「……ほわぁ……」
男(……日本人に生まれて良かった……)
男(油はしつこくないが、口の中で心地よく弾けるふわっと感。油とつゆの味が舌先で優しく広がったと思えば、豆腐の滑らかさと味の濃さが口全体を包む)
男(うまい。とてつもなくうまい。薬味として添えられたネギと海苔となめこがしっかり豆腐の魅力を引き出している)
男「……うまぁ……」
グラーフ「――ふふ。鳳翔のアゲダシ・ドウフは絶品だろう、青年」
男「えっ!?」
男(誰!?)
男(が、外人さん!? ていうか、いつの間にか龍ちゃんって人が隣にいないし!!)
どこにこの極楽は売ってますか
グラーフ「まあ、アゲダシ・ドウフが絶品とは言ったが、ここはなんでも絶品なのだがな」
男「は、はぁ……」
男(うわぁ、肌も真っ白で金髪だ。まさか人形? じゃないよな。ていうか、頬がピンク色ってくらいで、化粧もしてなさそうなのに顔綺麗すぎだろ)
アクィラ「んもぉぉぉおおお、グラァァフぅぅ!?」ギュッ
グラーフ「うおっ」
アクィラ「なにしてるよぉ! こんな美人を放っておいてぇ!」
男(ええ……。後ろからまた、なんだ、地中海的な女性がきたなぁ)
アクィラ「……あら。この人だぁれ?」
グラーフ「知らん。だがカウンターに座っているということは客だろう。ちょうど美味しそうに揚げ出し豆腐を食べていたのでな」
男「ど、どうも」
アクィラ「浮気? 分かったわグラーフ! 浮気なのね!? 私という人がありながら!」
グラーフ「いやそもそもお前と付き合ってない」
アクィラ「ひどいわ! 昨晩はあんなに愛し合ったというのに!!」
グラーフ「お前が勝手に私の部屋で寝てたんだろう」
男(……仲、良いんだなぁ……)
鳳翔「ごめんなさいね、お客さん。皆さんだいぶ酔っぱらっていらっしゃるから……。やっぱりお席代えましょうか?」
男「いえいえお気になさらず。お酒はたくさんの方々と飲んだほうが美味しいですし」
鳳翔「うふふ。寛大なお方なのですね」
男「いやぁ、そんな……」
男(とてつもなく可愛い人だけど、やっぱり鳳翔さん、落ち着くなぁ)
鳳翔「ではこちら、お待たせいたしました。卵焼きです」
男「おっ!」
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男(うおぉぉおおおぉおぉっ!)
男(なんて綺麗な卵焼きなんだっ! 絶対うまいだろこれ! 不味いはずがないよ!!)
鳳翔「こちら、卵焼きというよりは、少々出汁をくわえましたので『出汁巻き卵』となっています。ただ出汁の分量はそこまで多くないので、うちでは『卵焼き』と呼んでいるんです」
男「そうなんですね。いやいや、僕は卵焼きも出汁巻きも大好きなので、楽しみです!」
鳳翔「大根おろしにはお好みでお醤油を……。って、もうかけられてましたね」
男「ああっ、すみません。食べたい気持ちが先行してしまいました」
鳳翔「ふふ、おかしな人。では、召し上がれ」
男「はいっ。いただきます」
男(よし、まずは。このふっくらとした卵焼きを二つに割って、と)
男(醤油の大根おろしをちょいと載せて……)
男「………………はむっ」
男「…………」
男(…………ああ…………)
男(天国かよ…………)
男(絶妙な柔らかさを持つ卵という土台に、わざとらしくない出汁の味が協調してくる)
男(昆布? 鰹? いや、煮干しだろうか。どれが混じっていてもおかしくない。むしろ全ての出汁味が凝縮されたような濃厚さがある)
男(そして後からくるおろしの冷たさ。ほくほくだった卵にちょうど良い温度が加わる。二つが織りなす味のハーモニーはまさにオーケストラ……)
男(素材の味が存分に引き出ているにも関わらず、繊細な味だ。舌先でとろけて喉の奥へ一直線!)
男「うまいっ!」
鳳翔「うふふ、良かった♪」
アクィラ「あらぁ、すっごく美味しそうに食べるのねぇ~♪」
男「あ、いや、あはは……」
グラーフ「貴官。よく見るとなかなか端整な顔をしているな。うちのアトミラールには敵わないようだが、見込みがある」
アクィラ「あ、ホウショー? 私、ワインが欲しいな~」
鳳翔「はいはい、ちょっと待っててくださいね」
男(ワインもあるのか……)
赤城「あれ。いつの間にかグラーフさんたちがお隣にいらっしゃってますね」
加賀「龍驤さんはトイレに行きましたから」
グラーフ「おお、赤城、加賀。この青年はなかなか食いっぷりが良いぞ」
赤城「ふふ、知っていますよ。本当に美味しそうに食事をされますよね」
アクィラ「あれー? アカーギー、頬が赤いわよ?」
赤城「いや、ちょっと今日は食べ&飲み過ぎまして」
男(さっきの黒髪美人の人だ。いつの間にか大きい皿が空になっている。何食べてたんだろう)
加賀「そういえばグラーフさん」
加賀「アークロイヤルさんはどこですか?」
グラーフ「え」
加賀「今日は海外出身の空母3人で飲むとお聞きしていましたが」
グラーフ「あー……」
アクィラ「それがねー、アー子、奥の襖席でだいぶ酔っちゃったみたいでぇ」
グラーフ「今は大鳳が、奴を介抱してくれている」
アクィラ「大鳳ママに任せておけば大丈夫よ!!」
男(……大鳳さんって人かわいそう)
男(しかし、こんな美人たちがたくさんいて、美味しい料理と美味しいお酒)
男(当たりも当たり。大当たりの店だよなぁ)
鳳翔「……」
鳳翔「?」
鳳翔「……ニコッ……」
男(……うわ、めっちゃかわいい)
男(やばいここ、本当。毎日通っちゃうかもしれない)
男(しかしさすがに都内から二時間以上離れた場所に通うのは……ちょっと厳しいか。そんなに稼ぎが良い訳でもないし)
男「……あ」
男(しまった。揚げ出しも卵焼きも中途半端なまま、ビールを飲み尽くしちゃったな)
男(飲み物、どうしようか)
隼鷹「ヒャァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアッハアアアアアアーーー!!!!!」
隼鷹「オイオイオイ! 男がいるぢゃねえか男がよおお!!! 男は黙ってウイスキーだよなぁ!!?」
男「えっ、えっ」
千歳「あら素敵なお兄さん♪ ここは焼酎も良いものを揃えてますよ? 焼酎はいかがですか?」
男「あ、いや、えっと」
男(すごい酒臭い二人が僕の周囲に!!)
鈴谷「ちょっとちょっと二人ともぉー。この人困ってんじゃーん。ごめんね君」
熊野「あら珍しい。人のお客さんですの?」
男(また個性強そうな美人たちが現れた! どんだけ人いたんだここ……)
おつつ
こんな店行きた過ぎる
この居酒屋どこにあるんだよ
近くに引っ越して毎日行くわ
お通しの里芋とイカの煮物懐かしいわ
里芋じゃなく大根とイカの時もあったけど
実家では秋から冬になるとこれが食卓によく出たもんだ
子供の時はまたかよって嫌々だったけど、
親元離れて上京して進学就職するとこういうの食う機会無くなるから、
酒飲めるようになるのも含めて大人になって良さが分かるようになるんだなあと思った
このSSまとめへのコメント
あぁ~俺も行きてえよ。何もかも置き去りにして通いたい
放置しないで更新せい。面白いんだよ