男「鬼女」 女「ひっどーい!」 (12)


「鬼女」


私の彼は、いきなり私に向かってこう言った。
“鬼女”なんて言葉は、女にとっては最大級の侮辱といってもよい。


「ひっどーい!」


この後のことはよく覚えていない。
が、心の中が怒りと悲しみに満ち溢れたことだけはよく覚えている。

気づいた時には、私はアパートの一室を飛び出し、近所に住む友達の家に向かっていた。


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インターホンを押すと、中から女友達が出てきた。


「こんな時間にどうしたの?」

「うん……彼氏と喧嘩しちゃって」

「喧嘩? あの人と? まあ、とにかく入りなさいよ」

「ありがとう……」


突然訪れた私を、友達は快く出迎えてくれた。

私は持つべき者はよき友達だ、と心から思った。


「喧嘩って……いったい何があったの?」

「うん……」


うまく説明ができない。

ついさっき沸騰したばかりの負の感情が、正常な思考を邪魔しているのだ。


「まだ落ち着いてないみたいね。だったらさ、覚えてるところから順々に話していきなさいよ」

「そうする……」


私はアドバイスに従い、きちんと覚えているところから説明することにした。


私は彼とテレビを見ていた。
見ていたのは、グルメ系のバラエティ番組。

芸能人がさまざまな店の料理を食べて「うまーい!」とか「舌がとろける~!」とかいうあれだ。


それを見ながら私たちも、


「こういうの食べてみたいね~」

「外食する時はいつもチェーン店だもんな、俺ら」


こんな他愛ない会話をしてたことを覚えている。
今のところ、喧嘩になるような要素は全くない。


この日はハンバーグの特集をしており、色んな店のおいしそうなハンバーグ料理の紹介が続いた。

二人ともハンバーグが大好きなので、会話は弾んだ。


「今度、私が作ってあげよっか?」

「お、いいね~!」


そんな時、あるシェフがハンバーグを作る様子が映し出された。
豚のひき肉に卵や玉ねぎ、パン粉などを入れて、慣れた手つきでこねている。

オーソドックスな工程であり、そのオーソドックスさがかえって私たちの唾液分泌を促した。


――そうだ。

私はこの時、彼にこう尋ねたのだ。


「玉ねぎって、英語でガーリックだっけ?」



この直後、彼から「鬼女」発言があり、私の「ひっどーい!」に繋がるわけだ。

こうして思い出してみても、なぜ自分が「鬼女」などと言われなければならないのか全く分からない。


すると、友達が苦笑しながら口を開いた。


「それってさ……もしかして、“鬼女”じゃなくて“オニオンな”って言いたかったんじゃない?」

「あっ……」



この瞬間、私はやっと自分の間違いに気づいた。

彼は私を侮辱したのではなく、玉ねぎは英語でオニオンだということを教えたかっただけなのだ。
なのに私は勘違いして、部屋を飛び出してしまったのだ。


とんでもないことをしてしまった……と私は後悔した。


すると、友達の家のインターホンが鳴った。

友達は玄関に出て、すぐ戻ってきた。


「あんたの彼が追いかけてきてくれたよ。仲直りしたいってさ。よかったね」

「うん……」


アパートを飛び出した私がどこに行ったかは、すぐ推測できたのだろう。
完全に私が悪かったのに、彼は追いかけてきてくれた。

こんな優しい男を彼氏にできた私は幸せ者だ、と私は思った。


私が玄関に出ると――


「どうしたのそれ!?」


顔面のあちこちが腫れ上がっている彼が立っていた。


「なにって……激怒したお前に十発ぐらい殴られたじゃん」

「ご、ごめんなさい……」


これでようやく、私の記憶の空白が埋まった。

怒りに任せて彼に殴りかかる自分の姿を鮮明に思い出し、私はこうつぶやいた。


「私は……鬼女だわ」







―終―

うん、そうだね

アホwwwwww
わらった乙

きじょと読んでしまってだいぶネットに毒されてるなと思った

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