【モバマスSF】天翔る輝子 (100)

あるいは輝子の宇宙旅行


・キャラ崩壊、キャラ設定捏造
・一部のキャラクターが人間じゃない(腕が取れたりする)
・ぢの文と台本のどっちつかず
・パロディネタしかない
・いわゆる【モバマス銀河世紀】

以上に地雷を感じるならブラウザバックの後OS再インストール推奨
ほのぼののつもりです

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1503839321

【8/19・宇宙船『インディヴィジュアルズ号』・船内】


宇宙船に乗り込んでコンソールを起動する。
といっても細かい部分は船内システムの統括AIである美玲ちゃんが全部やってくれるので、私がやるのはヒトの権限が必要な一部の機能だけだ。


輝子「とりあえずエウロパまで」

美玲『おう、任せろッ』


インディヴィジュアルズ号は船体こそ古いものの、エンジンは最新のものを積んでいる。
反重力装置のおかげで地球の重力圏を脱出するのもさほど苦ではない。


美玲『インディヴィジュアルズ号、発進!』

輝子「おー……」


船体が少し揺れ、すぐに景色が一変した
ぐんぐんと高度を上げていき、あっという間に外が真っ暗になった。

慣性制御装置のおかげで加速度による身体の負担も少ない。
買ってよかった……。

美玲『ベガ星系まで行くんじゃなかったか?
   エウロパにはなにしにいくんだ?』

輝子「うん、ちょっと小梅ちゃんを拾いに行くぞ。
   遠出するっていったら、ついていきたいって」

美玲『そういえばコウメはいまエウロパにいるのか。
   ライブのゲストだったよな』

輝子「うん、その応援もかねて、な」


小梅ちゃん、今はエウロパでダークイルミネイトのライブにゲスト出演している。
小梅ちゃんも「ダーク」っぽさではあの二人に負けてないから、なかなか相性はいい気がする。

美玲『ウチもな、実は歌は得意なんだ』

輝子「え、そうなのか。それは聞いてみたい……」

美玲『いいぞ。せーのッ

   デイジー、デイジー
   ギブミーユアアンサー、ドゥ!
   アイムハーフクレイジー
   オールフォーザラブオブユー!』

輝子「おお、なんかカッコイイぞ」


モニターの美玲ちゃんがゆらゆらと踊っている。
カッコイイだけじゃなくて、かわいい。


美玲『うへへ。だろッ!
   なんかな、よくわかんないけどAIの界隈では歌と言ったらこの曲らしいんだ。西暦の時代から』

輝子「そうなのか。そんな昔から……」


美玲ちゃんの歌、良かったな。
できればもっと聴いていたい。

美玲『そういえばさっきから気になってたんだけど、その首から下げてる時計はなんなんだ?
   それこそ西暦の時代のクオーツ時計みたいじゃないか』

輝子「うん、昨日の夜はずっとこれの調整をしていて……。ふわぁ~……」

美玲『なんだ、眠そうだなショーコ。ちょっと寝たほうがいいんじゃないか?』

輝子「美玲ちゃん、エウロパにはどのくらいで着く?」

美玲『うーん、普通に行けば十二時間くらいで着くと思うけど……。
   もっと急いだほうがいいか?』

輝子「いいや、大丈夫。それだけあれば充分眠れるな……」

美玲『そうだな、おやすみショーコ』

輝子「おやすみなさい……」

「シャイニングっ!!」

「ご、ごっど……!」


輝子「チェリィィィイイイ!」ガバァ

美玲『うおッ! おはよう、ショーコ。凄い寝起きだな』

輝子「う、うんおはよう。変な夢を見てた……。私が智絵里ちゃんになってた」

美玲『あと一時間くらいでエウロパに着くからな。もうちょっと待っててくれ』

輝子「フヒ、わかった……。けっこうぐっすり寝ちゃってたな」

美玲『そうだなあ。かわいかったぞ』

輝子「フヒィッ!?」

グウゥゥ……

輝子「お腹すいたな……」

美玲『なんか食べるか? 食料庫はあまり充実してないけど……』

輝子「いいや、ついたらどこかで何か食べる」

美玲『そうか。エウロパは食べるものには困らないしな。屋台とかいっぱいあるし』

輝子「そうなのか。美玲ちゃん、物知りだな」

美玲『それほどでも無いぞッ……というか今太陽系ネットで検索しただけだし』

輝子「おお、ネットか。便利だな」

美玲『実はそうでもないぞ。亜光速航行中とかはまともに使えなくなるしな』

輝子「そうなのか……」

【8/20・木星第二衛星『エウロパ』・宇宙港『アーニャ』】


輝子「着いた……」


時間払いの格納庫に船を停め、外に出た。
エウロパには星全体に生命維持フィールドが展開されているため、生身でも平気らしい。


輝子「はじめて来たけど、エウロパは寒いな。地上には降りられないのか?」


腕時計型のPDAの中に移動した美玲ちゃんに話しかける。
船と通信しているわけじゃなくて、美玲ちゃんはあくまでこの中にいる。
一時的にお引っ越ししている状態、らしい。
よくわからないけど。


美玲『地面っぽく見えるあれ、全部氷だぞ。下のほうが寒いんだ。
   だからこうやって人工浮翌遊島の上だけで生活してるんだ』

輝子「下のほうが寒いなんてあるんだな、宇宙は広いなあ……」

美玲『ショーコ、お腹減ってるんだろ? 早くあっちの方に行くぞ!
   なんか屋台がいっぱいあって楽しそうだ!』

輝子「う、うん。いこう」


反重力バイクに乗って、賑わっている方へ向かう。

美味しそうなうどんの屋台を見つけた。
食欲をそそるにおいが漂ってくる。


輝子「あのうどん屋さん、おいしそう……。
   でも屋台か。ボッチのコミュ障にはハードルが高いな……」

美玲『ショーコ、エウロパまで来てうどん食べるのか?
   もっとこう、ここならではの料理とかのほうがいいんじゃないか?
   魚料理とかおいしいらしいぞ』

輝子「それはそうなんだけど。たぶんあの店、付け合せに天ぷらがある。
   それもキノコの天ぷら……。このにおいはマイタケかな?
   それが食べたくてな、フヒ」

美玲『なるほど、キノコに関してはすごい嗅覚だな……。さすがだ』

店主「空きました空きました! ヘイラッシャーイ! なんにします?」

輝子「うぅ……」


誘導されるままに座ってしまった。
このヘイラッシャイ感、リア充っぽくてやっぱり苦手だ……。


輝子「これを、四つください」

店主「ふたつで十分ですよ」

輝子「そ、そうか、じゃあ二つで……」

店主「任せてくださいよ!」


美玲『かけうどん、四つも食べるつもりだったのか?』

輝子「いや、マイタケの天ぷらを四つ、のつもりだったんだけど……」

美玲『二つにされちゃったな』

輝子「うん……」

美玲『……』

輝子「ごちそうさまでした」

店主「毎度あり!」


おいしかった……。
あわせだしの心地いい香りといいコシの強い麺といい、まさにうどんの王道といった感じだった。
本命だったマイタケ(に似たエウロパのキノコ)の天ぷらも、香り高く上品な味だった。
やっぱりキノコはおいしい。最高だ……。

でも屋台が空中にあるのはちょっと落ち着かない。
こっちではこれが普通なんだろうけど……。


美玲『よかったな、ショーコ!』

輝子「うん……。おいしかった。また来よう。
   ライブの会場、どこだかわかるか?」

美玲『えーと……。この先の島を三つ越えたとこだな。
   ショーコの固有時でだいたい一時間もあればつくぞ』

輝子「ありがとう。じゃ、じゃあ、行くか」


バイクに乗って走り出す。
エウロパ、狭いようで広いなあ……。

【木星第二衛星『エウロパ』・ライブ会場『アドニススタードーム』】


ライブは大盛況だった。
小梅ちゃんの「Bloody Festa」で会場のボルテージが上がりきったところで、ダークイルミネイトの新曲「双翼の独奏歌」が流れてきた時にはメタルスイッチを抑えきれなかった。


美玲『いいライブだったな! でももうおしまいだから落ち着いたほうがいいぞ、ショーコ』

輝子「ヒャッハーーーーァァァアアアア!!! アアアアァ……。
   そうだな、フヒ」

美玲『ショーコのその突然の切り替え、やっぱりいつ見てもびっくりするな……』


小梅ちゃん、いつもどおりのパフォーマンスに見えたけど、最後のサビのところがちょっとぎこちなく見えたな。
気のせいだろうか……。

楽屋に挨拶に行こうか、と思ってたら裏口で待ってて、とメッセージが来た。
どうしたんだろう。

蘭子「あわわわわわわ……(あわわわわわわ……)」オロオロオロ

飛鳥「ふむ、ボクたち人間にとってはともすれば致命的なことになりかねない事態なんだけどね。
   小梅。キミにはこの程度のことは日常茶飯事、ということなのかい?」ガクガクブルブル

小梅「日常茶飯事、とまでは言わないけど、前にもね、足首が」

飛鳥「おっと、すまない小梅。その先はちょっと勘弁して貰えるかな。
   あまり望んで聞きたいと思える話ではないように思ったのでね。
   ボクも蘭子も、中二病とはいえあまりグロテスクに耐性のあるほうでは無いのでね」ガクガクブルブル

輝子「や、やあみんな。どうしたんだ……?」

小梅「あ、輝子ちゃん、美玲ちゃん」

美玲『うおっ! どうしたんだその右腕!』


小梅ちゃん、左腕で自分の右腕を抱えている。
けっこうホラーな光景だ。
右腕の長い袖がぷらぷらと揺れていて、なんだか痛々しい。

小梅「えへへ、最後のサビでぴょんって飛んだら、取れちゃった……」

蘭子「は、早く神を欺き給え! (早くしまってくださいよ~!)」

小梅「でもニンゲンさんとちがって血とか出てるわけじゃないし……」


ずいっ、と取れた腕を見せつける。


蘭子「ぴぃっ!?」

飛鳥「」


二人が怯えているのを楽しんでいる。
小梅ちゃん、久々に"さでぃすと"のスイッチが入っちゃってるな……。


輝子「小梅ちゃん、そのくらいで……」

小梅「そうだね……よいしょ」カポッ

飛鳥「おや、治るのか……。ボクらの心配も杞憂だったようだね」

蘭子「よかったぁ……」

小梅「ううん、応急処置だから、すぐ取れちゃう……。あとでちゃんと直しておかないと」カポッ

あすらん「」


だ、だからそれくらいに……

飛鳥ちゃんと蘭子ちゃん、忙しいのに港まで見送りに来てくれた。
買い込んだ食料や反作用質量、そして二人からのプレゼントを積み込む。


飛鳥「生憎、当日まで仕事が入っていてね。宴には参加することはできない。すまない」

蘭子「うむ、我らからも祝いの言葉があった、と伝えて欲しいわ。あとは贈り物も」

輝子「わかった。伝えておくぞ……」

蘭子「あと、小梅ちゃんは……その、お、お大事に……」

飛鳥「ああ、ボクからも……お大事に。……お大事に、で良いのかな?」

小梅「うん、大丈夫だよ、えへへ」

美玲『じゃあ、出発するぞッ! 二人とも、じゃーなー!』

飛鳥「では、また会う日まで」

蘭子「さらば!」

輝子「ばいばーい」

【エウロパ上空・宇宙船『インディヴィジュアルズ号』】


輝子「じゃ、じゃあ惑星サクヤヒメまで……。おねがい、美玲ちゃん」

美玲『おう、任せろ! 亜光速航行使って良いんだよな?』

輝子「うん、無理しない程度に、な。あ、でもその前に小梅ちゃんの腕をなんとかしなきゃな……」


小梅ちゃんは、生きるために必ずしも体が必要というわけではない。
スターチャイルド、って言ってたっけ。
物理的な体が無い、思念体のような生き物だ。
でも私たち人間とおしゃべりするために、わざわざ人工の義体を使ってくれている。


美玲『そうだったな。コウメ、どこに行きたい?』

小梅「えっとね、このサロゲート、ウィリス星で貰ったやつだから……。そこがいいかな」

輝子「ウィリス星……って、どこだっけ」

小梅「た、確か、惑星ダゴン……フォーマルハウト、だよ」

輝子「おお、そこか。じゃあ美玲ちゃん、フォーマルハウト星系まで……」

美玲『うーん、行くのは良いんだけどな。ベガ星系とは逆方向だぞ?
   かなり急げば間に合うかもしれないけど、あんまりγが大きくなると船が壊れちゃうモン』

輝子「そ、そうなのか……」


地理は苦手だ……。地球の地図ですらたまにこんがらがるのに、どの星がどこにあるかなんて覚えてられないな。

小梅「そっか……ごめんね輝子ちゃん、美玲ちゃん。
   私のことは後回しでいいから……」

輝子「うーん、通り道に修理屋さんがあれば良いんだけど……」

美玲『ウィリス星人は宇宙のどこにでもいるしな。ベガ星系でもなんとかなると思うぞ』


ウィリス星の人たちはみんな体が小さくてなまけもの、なのだそうだ。
だから家から出るのが嫌で、お仕事のほとんど全部を脳波で遠隔操作できるアンドロイドで補っている。
その技術が"サロゲート"で、今この銀河で流行中の文化のひとつだ。
小梅ちゃんの体もその技術の応用らしい。
脳波で遠隔操作できるなら思念でも遠隔操作できる、ということかな?


小梅「そうだね、別に特注品ってわけじゃないから……。
   サクヤヒメのお店でも、きっとなんとかなるよ」

輝子「じゃ、じゃあ、私の知ってる店に頼んでみるか。
   この船買った店だから、安心……フヒ。
   美玲ちゃん、やっぱり行き先はベガ星系で」

美玲『おう! 任せろッ!』


亜光速航行を許可するスイッチを入れる。
いよいよ旅の始まりだ。

私の固有時で二分ほど経ったころだろうか。
窓から見える真っ暗な宇宙が突然輝き出した。
スターボウだ。
このきれいな光を見るために、わざわざ古い型番のこの船を買った。
最近のモデルは実用一辺倒で、窓をつけたりするような遊び心がない。


小梅「わあ、きれい……。こんなふうに見えるんだね」

輝子「だよな……。窓のある船を買って良かった……」


それからしばらくは外の景色を眺めて過ごした。
規則正しく移り変わる光のショーを楽しんだ。
やがてスターボウは安定し、動かなくなった。


美玲『よーし! 加速終わりッ!』

輝子「フヒヒ、おつかれ、美玲ちゃん」

ベガの重力圏に入るまで、私の固有時でおよそ三日だそうだ。
亜光速航行中はネットも使えないみたいだし、二人とおしゃべりするくらいしかやることがない。


小梅「そう言えば、地球の人たちってあんまり、サロゲート使わないよね……?
   ど、どうして……? 便利なのに……」

輝子「いいや、いるにはいるよ……。でも私みたいな人間のアイドルは、みんな生身で働いてるな……」

小梅「そうなんだ……。何か、理由があるのかな?」

輝子「さ、さあ……。でも、やっぱり昔からアイドルといえば生身、みたいなとこある気がする」

美玲『せっかく元から体があるんだ。身代わりになんて頼ってないでもっと使い倒すべきだぞッ』


さすが美玲ちゃん、なんとなく説得力があるな……。


小梅「でも、ニンゲンさんはすぐ死んじゃうから……」

輝子「まあ、確かに……」


身代わりで活動することで事故とか事件に巻き込まれる心配がない。
それが最大の利点だ。

輝子「でも、私が使わないのはもっと別な……宗教上の理由だ」

美玲『へー、そうなのか?』

輝子「う、うん。そんなに熱心に信仰してるわけじゃないけど、一応ドジソン教徒だから」

小梅「ああ、なるほど……そうだよね、輝子ちゃんなら」

輝子「フヒヒ。けっこうおすすめだぞ。二人とも、入信してみるか?」

小梅「それって……いいのかな。私は、ニンゲンさんじゃないから……」

美玲『宗教勧誘にしてはずいぶん軽いノリだな……』

輝子「今の時代、信仰なんてファッションみたいなものだぞ……。みんな、けっこう軽い……」

小梅「そ、そうなんだ」


ドジソン教はキリスト教やエラルド教よりは歴史が浅いから、比べたらまだ厳格なほうだと思う。
縛りのきつい宗教は、始まってから少しの間は流行っても、長くは続かない。
結局、時代に合わせて臨機応変に対応してきたこの三つの宗教だけが銀河中で広く信仰されている。

エラルド教なんかは一時期事件があって危なかったけど。

美玲『ドジソン教ではどうして身代わりがダメなんだ?』

輝子「確か……身代わり自体は否定してないんだけど、その間ずっと家で寝てることになるから、じゃなかったか」

小梅「やっぱり、なまけものさんはダメなんだね……」

輝子「そういう理由もあると思うけど……。
   ドジソン教では、移動をすることそのものが美徳なんだ」

美玲『移動? どうしてだ?』

輝子「元々はドジソン教では学問をすることが、とくに科学や数学が大事なんだ。
   人類の知の『進歩』とか『前進』とか……そういう美徳が変に解釈された結果、らしいぞ」

小梅「ふふっ、宗教あるある、だね」

美玲『あるあるなのか……?』

輝子「だからあんまり気にすることでもないと思うけど……。
   やっぱり気になっちゃうな」


"現状を維持するには歩き続ける必要がある"、みたいな文言だったはず。
私は本来、暗くてジメジメなところに引きこもるのが好きだから、ちょっと耳が痛いな。

輝子「ごめん、私ばっかり喋っちゃって……。キモかったか……?」

小梅「ううん、おもしろいよ。私、宗教ってよく知らないから……」

美玲『そうだなあ、人間特有の文化だよな』

輝子「フヒ、そ、そうか。でも、おうちの外で宗教の話しちゃだめらしいから、おしまいだ」


二人はトモダチで気安いからつい話しちゃうけど、政治と宗教とラグボールの話は外でしちゃいけないタブーなんだった。
気をつけないとな。

そんなこんなでおしゃべりしたりぼーっとしたり、シイタケ君のお世話をしたり、眠くなったら寝たり……。
のんびりと船旅を楽しんだ。トモダチと一緒だから、ぜんぜん退屈ではない、な。


輝子「そろそろお腹すいたな……。小梅ちゃんもなんか食べるか?」

小梅「う、うん、おねがい」

美玲『コウメのその体でもご飯食べる必要あるんだな』

小梅「うん、生き物と同じで、動力は食べ物からとるタイプだから……」


たくさん買い込んだエウロパマイタケ(正式名がわからないぞ……)を火にかける。
じゃがいもとにんじんも刻んで一緒に炒める。
しょうゆやコショウで適当に味をつけたら、出来上がり。
プロの料理人じゃないから、このくらいしかできないな……。
でもキノコのおいしさを楽しむならこのくらいシンプルなほうがいい。


輝子「いただきます」

小梅「い、いただきますっ」


輝子「ヒヒヒ……最高だぜ……!」

小梅「おいしい……!」


炊きたてのごはんにキノコの炒め物。
この単純な組み合わせの中にこそ、生命、宇宙、そして万物についての究極の疑問の答えがある。

小梅「そういえば、輝子ちゃん。今さらだけど……。
   どうしてわざわざ船で行くことにしたの……?」

輝子「あ、言ってなかったか。どう説明しよっかな……」

小梅「……?」

輝子「えっとな、ワープゲートとかを使って移動すると、キノコとかの食材が傷んじゃう、って言われてるんだ」

小梅「え、そうなの……?」

輝子「た、たぶんただの都市伝説だと思うけど……。でもちょっと気にしちゃうな。
   それに私自身、ワープゲートはちょっと苦手だから……。酔っちゃうし」

小梅「ああ、そっかー……」


ワープゲートの先が夢の世界じゃないとは言い切れない、っていう理由もある。
これも宗教上の理由だけど。


小梅「こういうときって……船と外の時間の違いってどうしてるの?
   外に出たらみんなおばあちゃんだった、とか……」

輝子「フヒヒ、そのへんは抜かりないぞ。
   この時計に、限定SSRという、魔法のスクリプトを積んでいるんだ」

小梅「げ、限定SSR……。なんか、不気味だね」


小梅ちゃん、なんか嬉しそうだ。
出来の良いスプラッタシーンを見ているときみたいな表情をしてる。

限定SSR……。SSR限定、と言ったほうが正しいかな。


輝子「ちょっとしたツテがあって、な。
   譲ってもらったんだ。こ、これを持っていれば、同期したもう一つの時計と」

美玲『話し中にスマン! そろそろベガの重力圏に入るから減速するぞッ!』

小梅「ああ、もうそんな時間なんだ……。楽しい時間は、あっという間だね」


本当にあっという間だ。もう三日経っちゃった。


輝子「フヒヒ、加速のときもキレイだったけどな、減速もそれはそれでいいぞ。
   小梅ちゃん、こっち来ていっしょに見よう……」

小梅「うんっ」


窓から見えるスターボウが解けていく。
外の景色は徐々に輝きを失って、やがて静かな闇をとりもどした。
いつもの宇宙だ。


美玲『よしッ! 減速終わり!』

小梅「美玲ちゃん、グッジョブ……!」

【8/23・ベガ星系第五惑星『サクヤヒメ』・宇宙港『花簪』】


惑星サクヤヒメは地球に似た環境で、気温といい重力加速度といいずいぶん過ごしやすい。
しっかりテラフォーミングも済んでいるので、生身で出歩いても大丈夫だ。


小梅「久しぶりの、シャバの空気、だね。ふふふ」


シャバって……。
確かに外の空気を吸うのは三日ぶりだったな。


美玲『なんか、電波が弱いな、ここ……。それで、これからどうするんだ?』


美玲ちゃんは、私のPDAからホログラム映像を出力し、半透明な姿で立っている。
最近のPDAは電池の持ちがいいからな……。こういう使い方しても全然困らない。


輝子「本当はここでキノコ買いに来ただけだからな……。
   それは市場に行けばすぐ済むから、先に工房に行こう」


宇宙港から帝都までは高速自動走路を使って直に行ける。
バイクに乗って駆け抜けるのもいいけど、こういうのも悪くない。
立っているだけで歩道が勝手に動いてくれるから、楽ちんだ。


輝子「あ、小梅ちゃん、足元、気をつけてね。自動走路の境目は危ないから……」

小梅「えへへ、ありがとう、輝子ちゃん」

【ベガ星系第五惑星『サクヤヒメ』・帝都『小早川』】


「次のニュースです。昨夜未明、ガンマセフェイb星系でテロ事件が発生しました。
 ポラリス派の過激グループによる犯行と見られ、重軽傷者は現在までに42人、死者は出ておりません。
 犯人は間もなく逮捕されましたが、各交通機関への影響が発生して……」


美玲『なんだ、なんか物騒だな』

小梅「そ、そうだね……」

輝子「エライこっちゃ……。フヒ」


自動走路に流されながら、街頭のホログラムモニターで流されているニュースを見る。
こういうのはどの星でも一緒だな。


輝子「あのポラリス派……。あれもドジソン教の一派なんだ」

美玲『そうなのか! 大丈夫なのか……?』

輝子「うん、けっこう過激派だから、相手にされてない……」


ノイジーマイノリティ、って言うんだっけ。

小梅「ガンマセフェイとドジソン教って、どういう関係なの? よくいっしょに聞くけど……」

輝子「あそこは、地球から見たら北極星にあたるんだ。だから『聖地』に認定されてる。 実は、ただそれだけ……」

美玲『ええー』

輝子「でも『聖典』が成立した時代の北極星はポラリスだったらしい……。
   だから、それでポラリスを聖地にしろ、という派閥が、あの人達なんだ」

美玲『本格的に関係ないんだな……』

輝子「本来、聖地にするべきなのは、地球のイギリスのはずなのに……」


やっぱりこの界隈でもお客さんの奪い合いは激しい。
地球では他の宗教も強いから、勝手に聖地なんて言ったらダメなんだろうな。


輝子「みんな、乃々ちゃんみたいな敬虔な信徒を見習ってほしいぞ」

小梅「ふふっ、そうだね」


そんなこんなで、工房にたどり着いた。
ここに来るのも久しぶりだ。

【帝都『小早川』郊外・工房『NEX-US』】


輝子「こ、こんにちは……」

奈緒「いらっしゃい! って、輝子、小梅、それに美玲!?」

輝子「フヒっ!? 奈緒さんか、ど、どうしてここに」


遠出した先に知ってる人がいると、ビックリしちゃうよな。


奈緒「ああ、これは番組の企画なんだ。
  『アイドル、神谷奈緒はサクヤヒメの機械技術を修得できるのか』だってさ。
   アイドルの仕事じゃないよなー?」

小梅「でも、作業着を着てる奈緒さんもかっこいいね」

輝子「う、うん、そうだな。かっこよくて、かわいい」

奈緒「な……!! お前らまでそういうのかーっ!? やめろよ、恥ずかしいだろ!」

輝子「あ、でも、西暦の時代にいたあるアイドルで……。
   アイドルをしながら農業もやり、無人島を開拓し、失われた製鉄技術を復活させ……。
   最終的には史上初のスペースコロニー、『宙船』の建設に携わった、っていう伝説がある。
   だから、アイドルが工房で働いてもいいと思うぞ」

美玲『そんなアイドルがいたのか! すごいな、アイドルって』

奈緒「もしかしてプロデューサーは、あたしにそのレベルを求めてるのか……?」

小梅「そ、それはないと思うけど……」

奈緒「で、ここには何しにきたんだ?
   知らなかったみたいだから、冷やかしじゃないだろ?」

小梅「えっと、私のこれを直してほしくて……」カポッ

奈緒「おおうっ!? そ、そうか。そういえば小梅はそうだったな……。
   ちょっと待っててな。親方―! ちょっとー!」

輝子「あ、親方さん……。お久しぶり、です……」


そうして小梅ちゃんの修理を依頼した。
ついでに、それとは別に、あるものを注文しておいた。

ちょっと時間がかかるようなので、街を見に行くことにした。

【帝都『小早川』・中心部】


輝子「うう、酔った……」

美玲『だから言っただろ、ショーコは人混み苦手なんだからおとなしく待ってたほうが良いって……』


サクヤヒメは思いのほか人が多くて、人混みで酔ってしまった。
ただの人混みならまだしも、自動走路だとどうしても酔いやすいな。


輝子「で、でも、ずっと工房にいたら迷惑なのかと思って……」

美玲『そういうもんなのか? 見られていると集中できない、みたいな?』

輝子「うん……多分」


と言ってみたものの、どうなんだろう?
関係ないんじゃないかな。

自動走路の切れ目、公園のようなところで一旦休むことにする。
ベンチに腰掛けて一息つく。


輝子「あ、ライブやるのか……。しかも今日からだ」

美玲『わ、ホントだ』


よく見ると、街中の至るところで広告が貼ってある。

惑星サクヤヒメのローカルアイドル……その名も『サクヤヒメ』。
銀河系では知らない人がいないほどのアイドルユニットだが、それでもローカルアイドルを名乗り続けている。
きっとそういうこだわりなのだろう。


輝子「観に行きたいけどな、当日じゃあ無理か……」

美玲『さすがになー』

「じゃー、AIKO車の良いところ言ってみよう! はいあかねちん!」

「はい、まず、水平対向エンジン採用による低重心化の結果、走行安定性とハンドリング性能が優れている、というところです!」

「そうなんですか~? 私にはちょっとわからないです」

「高森重工業株式会社改め、株式会社AIKO。生まれ変わったあーちゃんをよろしくお願いしまーす!」

「よろしくお願いしますっ!」

「あはははー」


輝子「ん……。私、ちょっと寝てたか?」

美玲『そうだな、三十分くらいだと思うぞ。おはよう、ショーコ』

輝子「そ、そうか……。高森重工なんて無いよな……」

美玲『なんの話だ?』


こんなところでうたた寝しちゃうなんて、恥ずかしいな……。
この惑星、なんとなくポカポカしていて、気持ちいいんだよな。

輝子「そろそろ、例のブツを買って戻るかな」

美玲『ショーコ。また人混みだからな、無理するなよ』

輝子「だ、大丈夫……。さっきちょっと眠って回復したから」


お店に向かって歩く。
この辺はもう自動走路ではなく普通の道なので、歩いていかなきゃいけない。


【帝都『小早川』・市場・キノコショップ】


魔女「ヒヒヒヒヒヒヒ、いらっしゃい。何をご所望かな?」

美玲『おお、すごいぞッ。店主が魔女だ』

輝子「いや、あれはああいうこすぷれだから……。
   えっと……ベガテングタケをください」

魔女「ベガテングタケ!! なるほどお嬢ちゃんお目が高い! ヒーヒヒヒ!
   誠に申し訳ありませんが現在取り扱っておりません。
   他の星系から取り寄せることもできますが、お客さんの固有時で……ふむ、1/12地球周期ほどでご用意できます」

美玲『謝罪のときはちゃんと喋るんだな』


  1/12地球周期……。二時間か。

輝子「ええっと……ベガテングタケはベガ星系の特殊な重力場でしか育たないんじゃ……?」

魔女「それがねえ、お嬢ちゃん。ちょっと前、ついにベガテングタケの人工栽培技術が確立したのさ!」

輝子「おお、ついに……。菌根菌なのに、よくやったな……!」

魔女「そうさね、これもひとえに研究者たちの努力によるもの……。
   イボテン酸に量子的変異を起こして中毒作用を無効化するメカニズムを解明し、ベガ星系よりもよりベガテングタケ栽培に適した環境で大量生産が可能に……!
   それだけじゃない、土壌そのものにも手を加え、旨み成分を単純計算で1.25倍にまで増やすことに成功したのさ!」

輝子「それは、すごい……」

魔女「だからってこっちでの栽培をすっぱりやめちゃうのはどうかと思うんだけどねえ……。
   文化や伝統も、キノコの魅力の一つだと言うのに」

輝子「それは確かに……。
   えっと、二時間くらいなら、待ちます」

魔女「おお、よろしいかね?
  『霜降りベガテングタケ』お買上げありがとうございます!
   イーッヒッヒヒ!」


その後、シメジのサンドイッチを買って店を出た。

【市場・キノコショップ店外】



美玲『見た目は奇抜だったけど、良い店員さんだったなー』

輝子「キノコといえば魔女、みたいなこだわりらしい、ぞ。
   あのおばあさんの姿も特殊メイクだって。
   だから、本当はいくつなのかわからない……」

美玲『そ、それはすごいな……』

輝子「じゃあ、一旦あっちに戻るか」

美玲『そうだな』


そうして歩きだしたそのとき。
店の扉が勢い良く開いた。


魔女「待ってとくれお嬢ちゃん! 本当にすまない!
   今日中の販売は無理だ!」

【帝都『小早川』中心部・公園】


美玲『げ、元気だせよショーコ。ほら、あのエウロパのキノコだっておいしいんだろ?
   あれで手料理つくろう。な? それでも喜んでくれるって』

輝子「いや……マイタケの炒め物はいつも作ってるんだ。
   この世で一番おいしいと言われる幻のキノコ……。
   それで作る料理だからこそ、誕生日プレゼントになりうるんだ」

美玲『そういうものなのか?』


まさか、ここに来てポラリス派が牙を向いてくるとは……。

『ベガ星系よりもよりベガテングタケ栽培に適した環境』。その一つがセギン星系の第七惑星『ゼッケン』だった。
そこから鮮度を保つために光速輸送で送られ、一時的にガンマセフェイb星系の第二惑星『タドモア』に保管されてから各地に配送される。
でも、今ガンマセフェイでは現在テロの影響で交通機関が乱れている。
ワープゲートも、亜光速輸送船も。
それとは別に、民間用の量子通信回線も壊れているそうだ。

復旧には、地球の単位で三日かかる、とも言われた……。


輝子「フヒヒヒヒ……。ポラリス派の奴らめ……。
   あいつら、宗教活動とか言っておきながら、ただ新しい仲間を作って暴れたいだけのリア充集団じゃないか。
   それなのに、私たち非リアに迷惑をかけやがって……。
   ヒャッハアアアァァーッッッ!! ゴートゥーヘル!
   あんなやつら、ジョー・ギリアンのフルスイングを脳天に食ら」

美玲『わああー! 落ち着けよッ、ショーコ!
   政治と宗教とラグボールはタブーじゃなかったのか!』

輝子「す、すまん……。取り乱した……」

美玲『まったくもう』

輝子「で、でもどうしよう。三日もここで待ってたら、さすがに間に合わないな……。
   いちおう聞くけど、地球まで全力で行ってどのくらいかかる?」

美玲『うーん、やっぱり三日はかかるな。かなり無理しても二日が限界だぞッ。
   エンジンのほうはいいもの使ってるから加速はいくらでもできるけど、それ以上は船が持たない』


いくら科学や技術が発達しようと、私たち普通の人間は宇宙の法則には縛られ続ける。
どれだけ光速に近づけるエンジンでも相対論的質量の増加には抗えないんだ。

ど、どうしよう……。


美玲『なあショーコ。そもそもこの『ベガテングタケ』ってどういうものなんだ?
   あのおばあさんが色々言ってたけど、よくわからなくって』

輝子「ああ、簡単に言えば、毒キノコ、だぞ」

美玲『ど、毒キノコなのか!? ノノに食べさせて大丈夫なのか!?』

輝子「で、でもただの毒キノコじゃないんだ。
   地球には『ベニテングタケ』っていう毒キノコがあって、食べると幻覚を見たり吐き気がしたりする。
   そのかわり、驚くほどおいしいらしいんだ。
   主な中毒成分のイボテン酸が、一説にはグルタミン酸の十倍の旨味を持つらしい……」

美玲『グルタミン酸って、コンブだしだったか? 十倍ってすごいなあ』

輝子「う、うん……。
  『ベガテングタケ』はほとんど同種のキノコなんだけど、このベガ星系のイボテン酸には何らかの変異があって、ヒトが食べても中毒作用が起きないんだ。
   だから、イボテン酸を純粋に旨味成分として食べることが出来る……。
   これがベガテングタケの魅力、だ」

美玲『何らかの変異っていうの、ちょっと不安じゃないか……?』

輝子「研究によって、体に影響ないというところまでは証明できてたんだ。
   理由がよくわかってなかっただけで。
   でも、さっきのおばあさんは"解明した"って言ってたからな。
   今度、論文読んでみたい……」

美玲『うーん、ショーコがそんなに言うんなら、ウチも食べてみたいな……』

輝子「お、おう」


そうだな、美玲ちゃんはAIだから、食べられなかったんだもんな。
フヒヒ。でもそれも今日までだ……。


輝子「とりあえず一旦工房にもどろう」

美玲『そうだな!』

【帝都『小早川』郊外・工房『NEX-US』】


小梅「じゃーん」

奈緒「どうだ? かわいいだろ!」

輝子「う、うん、かわいい」


頭につけた大きなリボンが、正面から見ると猫耳みたいだ。


奈緒「この工房の最新モデル、『NEX-US6型:ヨモスガラ・パーティー』だ!
   機能性も身体能力もなかなか高いぞ」

小梅「そうだね、ちょっと、動きやすくなったかも」

美玲『良かったな、コウメ!』

輝子「フヒヒヒ……。それと、もう一つ」

小梅「あ、うん……!」

美玲『おおっ、まだあるのか!』

輝子「いいや、つぎは美玲ちゃんの番だ……」

美玲『……? ウチか?』

奈緒「じゃーん!」

美玲『おお、カッコいいな……って、ウチじゃないか!』


ホログラムの美玲ちゃんと、目を閉じてる実体の美玲ちゃん。
鏡のように向かい合っている。


輝子「美玲ちゃんがいつも使っているその3Dモデルをもとに、作ってもらった……」

奈緒「これも最新モデル、『NEX-US6型:メイク☆インパクト』だ!」

美玲『……これ、どうするんだ? ウチはただのAIだから、コウメみたいにこの中に入ったり出来ないぞ』

小梅「え、そうなの?」

奈緒「そんなことないと思うぞ?
   だって本来船のAIだったのがそのPDAに移ってるんだから、同じようにすればいいんじゃないか?」

美玲『そういうもんなのか? うーん』


私もそう思ってたけど……そううまくはいかないのかな?
とそうこうしているうちに、ホログラムのほうの美玲ちゃんがフッと消えた。


美玲「おお、いけた」

美玲「おお、おおおお? これはすごいな!
   流体の運動や体中にかかる応力、天体や照明の光のちらつき……いろんなカオス現象がダイレクトに伝わってくるぞッ!
   ショーコたちニンゲンはすごかったんだな。これだけの数の入力を全部脳だけで処理してるなんて!」

輝子「いや、そこまで深く考えて生活してるわけじゃないから……」


ともかく、喜んでもらえてよかった。
これで美玲ちゃんにもキノコを食べてもらえるな。


小梅「ありがとう、奈緒さん」

輝子「フヒ、そうだな。ありがとう」

美玲「ありがとう!」

奈緒「いや、あたしは別になにも……。まだ修行中だから!」


奈緒さん、顔を真っ赤にして照れていて、かわいいな。
その後、さっき買ったシメジのサンドイッチをみんなで食べてから店を出た。
美玲ちゃん、はじめて食べるキノコに感激してた。

【帝都『小早川』・中心部・公園】


美玲「さて、これからどうしよっか」

小梅「え、帰るんじゃないの……?」

輝子「そっか、そう言えば小梅ちゃんには言ってなかったな。
   実は、かくかくしかじかで……」

小梅「じんにくうまうま……。
   ど、どうしよう……。これじゃあ間に合わないね」

輝子「しょうがないから、通信回線が直ったら地球に連絡する。
   ちょっと遅れるって、謝らないと」


こればっかりは、仕方ないか……。

美玲「ん……? おおッ!
   量子通信回線、復旧したみたいだ! 恒星間通信も出来るみたいだぞ」

輝子「じゃ、じゃあ、もうちょっとしたら電話かけよう……。
   復旧したばかりだと、回線混んでそうだしな」


あと、いくらトモダチに連絡するとはいえ、電話はちょっとニガテだ。
たっぷり十分くらい余裕を持たせてかけたい。

と、そんなことを考えていたら。


  \クーレナイニソーマッター/


輝子「おおぅっ!」


腕につけたPDAの着信音が鳴った。
し、心臓に悪い……。


小梅「だ、誰から……?」

美玲「着信音、その曲なんだな……」

意を決して通話に出る。


輝子「も、もしもし……?」

まゆ『輝子ちゃんですか? まゆです』

輝子「あ、まゆさん。えっと」

まゆ『ごめんなさい、輝子ちゃん。ちょっと時間がないので手短に話します。
   まずは、いまどこにいますか? サクヤヒメにいますか?』

輝子「う、うん。いるぞ……。
   えっと、惑星サクヤヒメの帝都……。その中心部にある、自動走路の切れ目の、公園みたいな所にいるぞ」

まゆ『本当ですか! じゃあ、ちょっとそこで待っててください。
   すぐ行きますから』


プツッ


輝子「き、切れちゃった……。まゆさんからだった」

小梅「まゆさん……? どうしたんだろう」

数分後、高速自動走路を乗り継いで、まゆさんがやってきた。


輝子「ど、どうしたんだ?」

まゆ「輝子ちゃん。それに、小梅ちゃんも。
   オフの日なのにこんなことを頼むのはどうかとは思いますが、お願いです。
   来られなくなった幸子ちゃんの代役として、ライブに出てくれませんか?」

輝子「だ、代役? ど、どうして……」

小梅「私、も……?」


ど、どういうこと……?


まゆ「幸子ちゃん、プレゼントを買うためにエライまで行ったみたいなんです。
   それで帰れなくなったって」

輝子「そ、そんな……」


小梅「エライって?」

美玲「ガンマセフェイのことだぞ」

輝子「わ、わかった……。まゆさんたちが困ってるなら、協力したい……」

小梅「う、うん。でも、良いのかな? 勝手にやって……。
   こういうのって、プロデューサーさんにお話しないと……」

まゆ「大丈夫ですよぉ。
   プロデューサーさんは、やってくれる意思さえあれば後は全部こっちが責任をとる言ってました」

輝子「なら、安心だな……」

美玲「良かったじゃないか、ショーコ、コウメ。
   どんな形であれ、新しい場所でまた歌えるんだ。
   いっぱい楽しめよ!」

輝子「う、うん。そうだな」

小梅「がんばる、よ。ふふっ」

まゆ「ありがとうございます。本当に、ありがとう。あと……」


まゆさんは、私に近づき、私にだけ聴こえる声で、そっと喋りかけてきた。
な、なんかいいにおいがする……。

まゆ「かな子ちゃんからの伝言です。
   乃々ちゃんの誕生日パーティには、絶対に間に合わせるよ。
   幸子ちゃんのことも、私がなんとかするから安心して。
   だそうです」

輝子「……わかった。ありがとう、まゆさん」

【帝都『小早川』・ライブ会場『織姫ホール』・楽屋】


美玲「なあショーコー。さっきマユと何話してたんだ?」

小梅「うん、気になる……」

輝子「ご、ごめん。あれは秘密なんだ。それに、多分、すぐわかるから」


別に喋ったからって怒られるわけでもないし、隠しているというわけでもないんだけど……。
それでも言いふらすのはためらわれる。
前、時計を作ったとき、愛梨さんに『できれば、秘密にしてくれるとありがたいです』って、言われたからな。


ガチャリ


奈緒「おはようございまーす」

杏「おはようございまーす」

輝子「おはようございます……。あれ、奈緒さんと杏ちゃん……。
   二人も、ライブに出るのか?」

杏「うん、たまたまこっちに来てたからね。
  ほんとは働きたくはないんだけど、智絵里ちゃんにあんなお願いされちゃあねー」

奈緒「わかる。わかるぞ、その気持ち。断れないよなー」

小梅「そっか、智絵里ちゃんに……」


目の端に少し涙を浮かべた智絵里ちゃんが、上目遣いでお願いしてくるところを想像してしまった。
うん、これは断れない……。
実際には杏ちゃんより智絵里ちゃんのほうが目線が高いだろうけど。

本番直前。
サクヤヒメのみんながやってきた。
みんなで打ち合わせをする機会はこのタイミングしかない。


かな子「みんな、今日は来てくれてありがとう。これ、差し入れだよ。みんなで食べてね」


プロキシマ星系の、老舗のマカロンらしい。
お、おいしい……。なんというか、高級な味がする……。


杏「かな子ちゃんもお疲れ。知り合いのアイドルみんなに片っ端から電話かけてお願いしたんでしょ? 大変だったね」

かな子「ううん、みんなで手分けしてお願いしたから、そこまで大変でもなかったよ」

輝子「そうだな……。私のとこにはまゆさんから来たし」


それでたまたまサクヤヒメにいたのが、私たちだったわけだ。
運命のいたずら、って感じがする。

今回のライブは、幸子ちゃんを除くサクヤヒメの四人がメインだ。
奈緒さん、杏ちゃん、小梅ちゃん、そして私はゲストとして、幸子ちゃんの抜けた穴を埋めるように入る。
そして美玲ちゃんは、演出や音響の手伝いをしてくれることになった。
私のPDAを使えば、美玲ちゃんなら色々できるらしい。

問題は私たちのほうだ。
直前に飛び入り参加する形でのゲスト出演だから、何の準備も出来ていない。
曲や衣装ならデータさえあれば出力できるけど、練習してない歌や踊りをぶっつけ本番は、無理だ。

だから自然と、歌うのは自分の持ち曲、ということになる。


輝子「今回のライブは、なんかこう……、カワイイ感じのライブだ。
   だから、私の毒茸伝説なんかは合わないんじゃないか……?」

奈緒「あー、確かに。絶対特権でも歌うか? あれかわいいぞ」

美玲「おお、それいいな、かわいいぞッ!」

小梅「私は……小さな恋の密室事件じゃ、だめかな……?」

智絵里「あれもかわいいし、ダメじゃないと思うけど……」

紗枝「ちょっとホラーどすなぁ」

小梅「そういえば、2nd SIDEも、かわいい曲だよね。ふふふ」

奈緒「え゛っ」

杏「うーん……」


なかなか結論が出ない。

輝子「親友って、すごかったんだな。私じゃあ、歌うことしかできないから……。
   こういう演出とか、セットリストを決めたりとかは……難しいな」

奈緒「確かになあ……」


みんな、うんうんと頷いている。


杏「……そうだよ、輝子の言うとおりじゃん。
  杏たちにはプロデュースなんて出来ないんだから、好きなようにやろうよ」

小梅「好きなように……?」

杏「うん。セットリストの流れとか、ライブのコンセプトとか関係なしに、杏たちの好きなようにやる。
  これで受ければ儲けもんだし、受けなくても『サクヤヒメ』の引き立て役にはなるでしょ?」


引き立て役……か。
それは、ちょっと嫌かな。


奈緒「でも杏は良いのか? ただの引き立て役に甘んじるので」

杏「良いわけないじゃん。だから……やるからには徹底的にやるよ。
  それこそ、サクヤヒメを食うぐらいに」

輝子「おお、こ、これは……」

まゆ「宣戦布告、ですね。杏ちゃん」


まゆさん、なんだかうれしそうだ。


杏「多分、こっちのほうが面白いでしょ? どう?」

智絵里「うんっ!」

紗枝「対ばん、言うやつどすなぁ~。楽しみやなぁ」

小梅「そ、それはちょっと違うと思うけど……」

輝子「フヒヒヒ。楽しくなってきたな……!」


私は幸子ちゃんの代役で来たんであって、幸子ちゃんじゃない。
たとえお客さんたちが求めているのがカワイイ幸子ちゃんのパフォーマンスであっても、できるのは私のパフォーマンスだけだ。
だから、全力でそれをやるしかない。

その上で、観客を私色に染め上げるんだ。
私が染まるのではなく。

方向性が決まり、そのあとの打ち合わせは順調に進んだ。
『サクヤヒメ』の曲を引き立てるように、そして私たちの曲もまた活きるように。
色々と考えてセットリストを組みなおした。

けっこう大幅に変えちゃったから怒られちゃうかもしれないけど……。
でも、親友は『全部こっちで責任をとる』って言ってるし、たぶん大丈夫だろう。

また、嬉しい知らせもあった。


かな子「みんな、聞いて!
    幸子ちゃん、なんとか帰ってこれるみたい。
    時間的にはライブの終了間際だと思うけど、一、二曲は歌えると思う」


多分、かな子ちゃんが何かやったんだ。

ともあれ、幸子ちゃんのソロ曲「To my darling...」とサクヤヒメ五人で歌う「パステルピンクな恋」はセットリストに組み込める。

ミンナーデオドーロウ! ゴキゲンーナ Party night!


輝子「は、はじまったな……」


準備もなしでぶっつけ本番、しかもアウェイでのライブ……。
不安要素しかないはずだけど、不思議となんとかなるような気がしている。


美玲「アイドルのライブ、こっち側で見たのなんてはじめてだな。
   なんか……新鮮な気分だ」

輝子「帰ったら、美玲ちゃんもアイドル、やってみるか? プロデューサーに頼んだら、やってくれるかも」

小梅「あ、いいね、それ」

美玲「ええっ!? ウチがか? うーん……」


美玲ちゃんは考え込んだ。
多分、ここでどんな答えを出そうと、プロデューサーは見逃してはくれないと思う。

身体を得た美玲ちゃんは、紛れもなくアイドルの原石だ。
そしてその輝きを、プロデューサーは遅かれ早かれ必ず見つけ出す。
私の親友はそういう人なんだ。

美玲「そ、それはともかくとしてッ! ショーコの出番、そろそろだろ?」

輝子「もうちょっと先……。奈緒さんが歌って、そのあと智絵里ちゃんが歌って、その次に出るぞ。
   ちょっと休憩挟んだら、シャイニングゴッドチェリーの三人で、MC……」

美玲「おお、大変そうだな。トークのほうは大丈夫なのか?
   ショーコ、そういうのニガテみたいだから、ちょっと心配だぞ……」

輝子「多分、なんとかなる……。智絵里ちゃんとヒャッハーしてたら、奈緒さんがなんとかしてくれる、と思う。
   す、少なくとも前はそうだった」

小梅「ふふっ、なんか、楽しそうだね。かわいい……!」

美玲「ナオも大変そうだな……。
   演出のほうは任せとけよッ! 派手に決めてやるぞッ」

輝子「あ、そうだ。演出の話で……。インディヴィジュアルズ号の、あの機能を使いたい。
   親友がお遊びで入れた、あれ……。大丈夫か……?」

美玲「あの機能? ……おお、あれか! うん、使えるぞ。
   ただPDAはウチが裏で使ってるから、合図は工夫しなきゃな。
   特定の振り付けとか、合言葉とかで」

輝子「そうか、じゃあ、せっかくなら……」



小梅「な、なんのことだろう……?」

サーキニキーヅイテー ホ シ イ ノ


奈緒さんの曲が終わる……。
その後すぐ暗転して、私の番だ。


輝子「じゃ、じゃあ、行ってくる」

智絵里「がんばって、輝子ちゃん!」

小梅「がんばって……!」

奈緒さんの、かわいくてクールな曲のおかげだ。
キュートを目的に来ていた観客たちにも、私の情熱的な曲が受け入れられる土壌ができつつある。
……気がする。

スポットライトが灯った。
照らし出されたのは、私の姿。
ひゃっはーするときの格好じゃなくて、みんながかわいいって言ってくれた、「ぱーりぃー☆ひゃっはー」だ。


イントロが流れ始めた。
さあ、地獄のパフォーマンスの始まりだ……!


 暗く澱んだ日陰で こっそり育てた気持ち
 独りきりは一人だけじゃない……だから
 ジメりジメり 隅に縮こまる身で
 地味に闇に 灯る蝋燭のように
 深く刻む 想イノタケの言葉 タケの鼓動を

観客が望む、とびきりキュートな歌を歌った。
そしてここからは、メタルな私のターンだ……!

途端に曲が激しくなる。
照明も怪しく激しく移り変わる。


輝子「タケノコ……お前。キノコじゃなかったのかぁ!?」


私は、ヒャッハーのかわりに……。
とびっきりのパワーと、信仰と、信念と……その他諸々をたくさん詰め込んで、"合言葉"を叫んだ。


 「赤射ァァァアアアアッ!」

マッシュアップ☆ボルテージ 星輝子は、僅か1ミリ秒で赤射蒸着を完了する……フヒ。

これが、プロデューサーがお遊びで入れたインディヴィジュアルズ号の隠し機能。
一瞬で別の衣装にチェンジできるこのシステムは、途中から曲の雰囲気がガラッと変わるこの曲、『PANDEMIC ALONE』にぴったりだ。

あとは、いつも通りやるだけ。
メタルの神様に、魂を捧げるんだ!


輝子「吹き荒れる胞子 爆風に載せろ!」


……
…………
………………

智絵里「というわけで、サプライズゲストとして、神谷奈緒ちゃんと、星輝子ちゃんが遊びに来てくれました」

輝子「フヒ、神谷奈緒です」

奈緒「ああ、星輝子です……。って、違うだろ!」


ワハハハハ

小梅「カッコよかったよ、輝子ちゃん……!」

杏「いやー、やっぱり輝子はすごいね。この小さな体からどうやってあの声が出せるのか……」


杏ちゃんが、私のお腹をペタペタ触ってくる。
く、くすぐったい……。


輝子「ヒャッハーァァアア! やめろォ!!」

奈緒「あはははは!」


輝子「みんなも、良かったぞ。カッコよかった。
   観客のみんなも、引いてなかったと思う……。ちゃんとウケてた」

小梅「だよね、よかったぁ」


特に小梅ちゃんの『小さな恋の密室事件』。
なんだか異様なほど盛り上がってたな……。

私たちの出番はもう終わった。
後は、サクヤヒメのみんなが、どれほど観客を沸かせられるかにかかっている。

結論から言うと、やっぱりサクヤヒメはすごかった。
地元でのライブというアドバンテージもあるけど、パフォーマンス一つ一つの完成度が高かった。
それだけに、もしあの場に幸子ちゃんもいたらもっと完成したパフォーマンスなんだろう、とも思ってしまった。


輝子「やっぱり、引き立て役くらいにしかならなかったかな……」

奈緒「いやいや、そんなことないって。爪痕を残すくらいは出来たぞ」

杏「うん。だいたいあっちは何ヶ月も前からこの日のために準備してるんだよ?
  飛び入り参加の杏たちにしては、上出来の結果だって」


そういう杏ちゃんは、ほんのちょっとだけ悔しそうだったな。

輝子「美玲ちゃん、どこに行ったか知らないか?」

小梅「そういえば、見てないね」

杏「裏の方にいるんじゃないの?」

輝子「いや、今はお仕事じゃないから戻ってきていてもいいはず」


サクヤヒメのほうのステージではもとから演出は用意されてるから、今の時間は暇なはずなんだ。


輝子「ちょっと探してくる」

小梅「わ、私も……」

美玲ちゃんは、舞台の裏にいた。
ぐったりと横になって、倒れていた。


輝子「み、美玲ちゃん! 大丈夫か! おい!」

美玲「んおっ! おう、おはようショーコ、コウメ。ちょっとスリープモードに入ってた」

小梅「へいきなの……?」

美玲「大丈夫だッ! ちょっと眠ったら回復したからな」


美玲ちゃんも、眠ることがあるんだな……。
いや、今の美玲ちゃんには身体があるから、その影響か。

美玲「ライブって、すごいな……。
   アイドルのみんなの歌や踊りや、観客の熱気、あとは照明の効果や演出とか。
   それら全部が難解に影響しあう複雑系だ。
   これを脳だけで処理しきるニンゲンは、やっぱりすごいぞッ。
   ウチ、オーバーフローしちゃった」

輝子「フヒヒ……。だろ?」


私は生まれてからずっと人間だから、その感覚はわからないんだけど。
多分、美玲ちゃんの感じたこれこそが、"楽しい"ってことなんだと思う。

美玲ちゃんを連れて戻ってきた。
ライブも終盤に差し掛かったところで、休憩時間に入った。
サクヤヒメのみんなが楽屋に入ってくる。


まゆ「幸子ちゃん来ましたか?」

輝子「いいや、まだだ……」

智絵里「そろそろ来てくれないと……」

輝子「そ、そんなにギリギリなのか?」

かな子「うん、残念ながらもう……。ネタが尽きちゃったの」

小梅「ええっ? ……ほんとだ。予定では次の曲、『To my darling...』になってる」

紗枝「トークを伸ばして時間稼ぎしたり、暗転の時間をちょっとだけ伸ばしたり……。
   そないな姑息なことをやってなんとか持ちこたえるはずだったんや」

輝子「そうだったのか。全然気づかなかった……」

まゆ「でも、神は細部に宿ります。
   お客さんのうち誰も気が付かなくても、無意識のうちに違和感が積み重なっていって……。
   いつか不満が湧いてきちゃうはずです」

美玲「おお、そういうものなのか」

かな子「幸子ちゃん、もうこの惑星に着いたみたい。
    今から高速自動走路で向かうって」

杏「ああ、でも幸子って高速自動走路ニガテじゃなかった?
  乗り移るのに失敗したりしてタイムロスしそう」

奈緒「ああー……。ちょっと納得しちゃったな」


ふと智絵里ちゃんのほうを見ると、ライブ会場を映すモニターを食い入るように見ていた。


智絵里「多分、この雰囲気だと……。不満が出始めるまで、五分ぐらいだと思うよ」

小梅「わ、わかるの……?」

智絵里「う、うん……。なんとなく、経験から」

輝子「すごいな、智絵里ちゃん。なんか、玄人っぽい……」

まゆ「港からここまで、少なくとも十五分はかかっちゃいますね」

紗枝「せやなぁ~……」

かな子「またMCとかで引き伸ばすのも、多分もう限界だと思うし……」

智絵里「きっと、あと一曲くらいあれば……。幸子ちゃんの到着まで持つよ」

杏「そっかー。じゃあまた杏たちヘルプ組から出る? もう歌える曲ないけど」

奈緒「それしかないかなー。事務所の他の子の曲とか歌えばなんとかいけるかー?」


と言っても、気は進まない。
自分の曲じゃない歌のカバーは、とっても難しいんだ。
ぶっつけ本番でもなんとか形になるのは、歌い慣れた自分の曲だけだ。

この中でまだ、自分の持ち曲を歌ってない"アイドル"……。
私には、一人心当たりがある。

輝子「み、美玲ちゃん。ちょっと……」

ステージに、突然ライトが灯った。
美玲ちゃんが照らされている。

観客からは困惑の声が上がっている。
ライブの再開か、と思ったら突然知らない女の子が立ってたんだから。

私や小梅ちゃん、杏ちゃん、奈緒さんとは、比べ物にならないほどアウェイな状況だ。
でも、きっと大丈夫。美玲ちゃんなら出来る。

旅の前のあの日。私の心を掴んで離さなかったあの曲……。
今でも覚えている。


杏「大丈夫かなー。心配だな。うーん」

輝子「フヒヒ、美玲ちゃんの歌はすごいぞ。心配ないさ」

イントロが流れる。
どこか古風な感じの、ピアノが主体のポップソングだ。


 ゼアイズ ア フラワー ウィズインマイハートッ
 デイジー、デイジー!
 プランティッド ワンデイバイ ア グランシングダーツ、
 プランティッド バイ デイジー・ベル!

 ウェザ シー ラブズミー オア ラブズミー ノット、
 サムタイムズ イッツ ハード トゥ テールッ
 イェット、アイアム ロンギン トゥ シェア ア ロット
 オブ ビューティフォー デイジー・ベル!


会場中が、美玲ちゃんに釘付けだった。
いつの間にか、赤やピンクのサイリウムが揺れている。


奈緒「わあ、すごいな……。かわいい……」


フヒヒヒヒ……。だろう?
美玲ちゃんはかわいいんだ。

 デイジー、デイジー
 ギブミーユアアンサー、ドゥ!
 アイムハーフクレイジー
 オールフォーザラブオブユー!

 イット ウォントビー ア スタイリッシュ マリッジ、
 アイ キャント ア フォード ア キャリッジ、
 バット ユール ルック スウィート
 アポン ザ シート
 オブ ア バイセコウ ビルト フォー トゥー!


美玲ちゃんの歌声は力強く、愛らしく、それでいてどこか儚い。
放っておけない感じ、と言うんだろうか。
会場中が美玲ちゃんに魅了されていた。

それだけに、どこかもったいない。
多分、プロデューサーの手にかかればもっと、この何倍も何十倍も輝けるんだろうな、と。

フヒヒヒ。やっぱり、私にはアイドルのプロデュースは無理だな。

曲が終わる頃には、多分、みんな美玲ちゃんのファンになっていたんだと思う。


美玲「あ、ありがとう!」


美玲ちゃんはそれだけ言って、退場した。
歓声はずっと鳴り響いていた。


輝子「お疲れ、美玲ちゃん」

美玲「ショーコ! なんか……すごく楽しかったぞッ!
   だから、ちょっと寝る……」


パタリと、美玲ちゃんは電源が落ちたかのように眠った。
慌てて受け止める。
おやすみ、美玲ちゃん。無茶言ってゴメンな。

幸子「フフーン! 皆さんお待たせしました! カワイイカワイイボクの登場ですよ!
   何ですか? カワイイですか? そうです! 何回でもカワイイと言って良いんですよ!
   皆さんは、次の八月にもおなじことを言うでしょう。七月にも、九月にも、その他の月にも!
   真実は何度でも繰り返す値打ちがあるものですからね!
   では聴いてください! 『To my darling...』!」

幸子ちゃんが無事に到着し、ライブは大成功だった。
「デイジー・ベルを引っさげて鮮烈なデビューを飾った謎の新人アイドル」と言う話題もあり、ウワサで持ちきりだった。


幸子「ごめんなさい、皆さん。迷惑をかけちゃって……」

まゆ「いいんですよ、幸子ちゃん。無事に帰ってきてくれるだけでうれしいです」

紗枝「こっち来いや、幸子はん。はい、えらいえらい」

智絵里「えらいえらいっ。ふふっ」

かな子「えらいえらい。はい、幸子ちゃん、あーん」

幸子「エライだけに、ですか? 
   ってちょっと皆さん! くすぐったいですよ!」


幸子ちゃん、撫で回されたり餌付けされたり、すごいな……。
愛されてるな。


小梅「わ、私も……えらいえらい」

輝子「フヒ、私も……」

かな子「あの……。とっても言いづらいことなんだけど、良いかな?」


そろそろ撤収、という頃になって、かな子ちゃんが、申し訳なさそうに手を上げた。


小梅「どうしたの……?」

かな子「さっき、プロデューサーさんから連絡があって……」

奈緒「あー、やっぱり好き勝手やったから怒られちゃったかな?」

輝子「特に、美玲ちゃんをステージに上げたりな……」

美玲「ほんとだよ。いきなり歌えなんていうんだもんな」

かな子「ううん、そうじゃなくて。むしろ逆かな。
    今日のライブ、とっても評判が良かったから、二日目も同じセトリで行け、って……」

杏「え、……。い、いやだ! 断固拒否! 杏はもうウィリス星に帰る! もう働きたくなーい!」

輝子「ど、どうやって帰るんだ? 船で来たわけでもないだろうし」

杏「あ、ゲートがイカれてるんだった……。しまった、逃げられない!」

かな子「それにプロデューサーさん、めったに言わない『業務命令』なんていうから。
    よっぽど好評だったんだね!」

智絵里「業務命令……」

輝子「な、なんかすごそうだ……」

杏「えー、しょうがないな~。あとでアメちょうだいよ」

かな子「うん! あめだけじゃなくて、クッキーでもケーキでも、マカロンでもどうぞ!」

小梅「わあ、いいなぁ」

美玲「あ、明日も歌えるのか……? うれしいなッ」


美玲ちゃん、すっかりアイドルにハマっちゃったな……。

二日目の公演も無事に大成功した。
セットリストは業務命令どおり一日目とほぼ同じ。
前半に幸子ちゃんの出番を追加したくらいだ。

もちろん、美玲ちゃんのソロステージもやった。
あんな思いつきの飛び込み参加じゃなくて、ちゃんとした段取りを踏んだ、ちゃんとしたやつだ。


疲れ果てた私たちは、みんなと別れたあと、船に戻って泥のように眠った。
目が覚めたらほとんど丸一日経ってたからびっくりだ……。

お、お腹すいた……。

【8/26・帝都『小早川』・市場・キノコショップ】


輝子「こ、こんにちは……」

魔女「イーヒヒヒ! いらっしゃい……。おや、お嬢ちゃんかい」

輝子「ガンマセフェイの港が復旧したって聞いて……。
  『霜降りベガテングタケ』、ください。あと、このシイタケのサンドイッチも……」

美玲「おお、これもまた美味しそうだな……」


ホントはこれを買いに来るだけのはずだったんだけどな……。
ずいぶん遠回りしちゃったな。

お金を払って、キノコを受け取る。


魔女「ヒヒヒヒヒ。毎度あり。お嬢ちゃんたち、ものは相談なんだが……」


おばあさん、身を乗り出して目を見開いている。ちょっと怖い。


魔女「サインくれませんか?」

【市場・キノコショップ店外】



美玲「まさかあのおばあさんもライブに来てたとはな……」

輝子「そうだな、多分、元の姿で来てたんだと思うぞ」

美玲「なるほど……」


あの格好魔女の格好でライブにいたら目立っちゃうからな。


美玲「さて、あとは帰るだけだな! 誕生日パーティには遅刻しちゃうけど……」

輝子「それについては、全部ひっくり返して解決する方法があるぞ……。
   とりあえず、今からかな子ちゃんに会いに行く」

美玲「ん?」

【帝都『小早川』中心部・公園】


輝子「ごめん、待つたけ?」

かな子「ううん、いま来たとこだよ」

美玲「なんだ、この会話……」

かな子「じゃあ、はいこれ。これを使えば乃々ちゃんのお誕生日に間に合うはずだよ」


そう言って、黄色に輝く小さなカードをくれた。


輝子「おお、きれいだな……」

美玲「なんだ、これは」

かな子「これはね、私の星……スウィッチの技術で作られた、魔法のカードだよ」

美玲「ま、魔法!?」

輝子「ありがとう、かな子ちゃん。助かる……」

かな子「ううんいいの。私たちはパーティに参加できないから。
    私たちの分まで、乃々ちゃんを祝ってあげてね」

輝子「うん、頼まれた」

かな子「あと、Sweetchesのみんなでケーキを焼くから、パーティに間に合うように送っておくね」

輝子「おお、それはうれしいな」

美玲「な、なあ、魔法ってどういうことだ……?」

かな子「ふふふっ、秘密です」


そう言ってかな子ちゃんはふっと消えた。


美玲「おお、すごい! ゲートも無しにワープするなんて!」

輝子「あ、あれが魔法……だと思う」

輝子「スウィッチ星っていうのは、この銀河のずっと先の……。
   超空洞の真ん中にある、小さな星。
   そこでは魔法の技術があって、なんかこう……色々と出来るらしい」

美玲「魔法って、炎を出したり空を飛んだりか?」

輝子「そういう超常的なやつじゃなくって……。
   そうだな、例えば、相対性理論を超えたことができるようになるんだ」

美玲「十分超常的じゃないかッ!」

輝子「フヒ、そうだな……。この時計にも、入ってるんだ。これと同じ、限定SSR」


恒星間で船旅をする私にとって、切り札になるカードだ。
まさかもう一枚貰えるなんて、思ってなかったな。
ありがとう、かな子ちゃん……。


輝子「あ、この話はみんなには内緒、な」

美玲「そうだよな……。こんな技術が世間にしれたら、世の中ひっくり返っちゃうもんな」

輝子「それもそうだけど……。
   スウィッチの人たちは、人に魔法のことを言って『秘密にしてくれ』って言うのが好きなんだ。
   言われた人がもう知ってたら、がっかりしちゃうから」

美玲「そんな理由なのか!」


乃々ちゃんに聞いたから既に魔法を知ってる、と言ったときの愛梨さん、悲しそうだった。
あの顔は忘れない。

輝子「とりあえず、これを使えば、一日で地球まで帰れる、と思う。
   魔法の効果で、γを制御すれば……」

美玲「ああ、そっか! ネックになってた質量の増加が抑えられるのかッ!」

輝子「うん。だから、限界を超えてぶっ飛ばせるぞ。フヒヒヒヒヒ」

美玲「それは楽しそうだなッ!」


多分、幸子ちゃんがライブの終了ギリギリで戻ってこれたのも、これのおかげだ。


輝子「じゃあ、戻ろう。今頃幸子ちゃんと小梅ちゃんとまゆさんで、反作用質量を積んでるところだ。
   手伝わないと、な。あと、シイタケサンドの差し入れも……」

美玲「おう!」

【8/27・太陽系第三惑星『地球』・日本国・神奈川県『森久保家』】


ピーンポーン

乃々「は、はいぃ。今出ます」


ドアを開けると、凛さんが立っていました。


乃々「あ、凛さん。どうぞ、上がってください。」

凛「うん、お邪魔します」


凛「私からのプレゼントはこれだよ、乃々。
  お誕生日おめでとう」


そう言って、凛さんは黄色いお花の鉢植えをくれました。
そういえば、誕生日は今日でしたね。
すっかり忘れてたんですけど。

乃々「あ、ありがとうございます……。もりくぼなんかのために、こんなキレイなお花……」

凛「良いって。……それよりもみんなは? まだ来てないの?」

乃々「みんな、とは……?」

凛「今日は乃々の誕生日パーティをするって聞いて来たんだけど。
  ……今日であってるんだよね?」

乃々「あ、はい。8月27日がもりくぼの誕生日です。パーティっていうのは、ちょっと聞いてないんですけど」

凛「輝子もいないんだ。せっかくの誕生日なのに……」

乃々「いえ、輝子ちゃんは、今宇宙にいます。たぶん、お仕事か何かかと……。
   だから、この間……一週間くらい前に、先にプレゼントをくれました」

凛「それが、その時計……?」

乃々「はい……」

【回想】


輝子「と、いうわけでちょっとベガまで行ってくるから……」

乃々「なにがというわけでなのかわからないんですけど……。どのくらいで戻ってきますか……?」

輝子「一週間くらい、だと思う」

乃々「ちょっと寂しくなりますね……」

輝子「ご、ごめん……」

乃々「いえ……」

輝子「あ、そうだ。乃々ちゃんに、これをプレゼント、です」

乃々「おお、これは……」

輝子「フヒヒ。今日び珍しいクオーツ式の懐中時計、だぞ」

乃々「す、すごいです……! 西暦の時代の遺物なんですけど! これ、どこで……」

輝子「ちょっと、な……。これ、私が帰るまで大事に持っててくれ……」

乃々「いえ、帰るまでといわず一生大事にするんですけど」

輝子「そ、そうか。うれしい、フヒヒヒ……」

乃々「ありがとうございます」

輝子「こ、こちらこそ……。で、では行ってきます」

乃々「いってらっしゃーい……」

【回想終わり】


乃々「という感じでした。この時計、可愛いですよね……」

凛「うん、それにカッコイイ。なんというか……蒼い、っていうのかな?」

乃々「あお……?」

凛「……ねえ乃々、何か聞こえない?」

乃々「えぇ? いえ、特に何も……。あ、なんか『ごおおぉ』っていう音が遠くから」

凛「この音、なんか近づいてきて」


  \ドーン!/


乃々「ひいぃっ! な、なんですか、もりくぼはもう帰りますけど」

凛「落ち着いて、乃々。ここは乃々の家だよ」


とりあえず、外に出てみます。
大丈夫ですよね……?

【『森久保家』・庭】


凛「これは、インディヴィジュアルズ号?」

乃々「落ちてきたんでしょうか……?」


プシュー ガコン


幸子「だから言ったじゃないですか! あの速度で飛ぶのは無茶だって!」

まゆ「でもおかげでギリギリ間に合いましたぁ」

小梅「荷物も無事だし……。多分、大丈夫」

美玲「船もちょっと修理すればまだまだ大丈夫だ!」

輝子「フヒ……あ、ただいま、乃々ちゃん。遅くなってゴメン。
   フヒヒヒ……さあ、乃々ちゃん……。
   誕生日パーティの始まりだ! ヒャッハアアアア!!」


なんかいっぱい出てきたんですけど。
美玲ちゃん、ホログラムじゃなくてちゃんと体で動いてますね。

いろいろと展開が早すぎて追いつけないんですけど……!

乃々「てっきり、この時計が誕生日プレゼントだとばかり思ってました」

輝子「それは、ただの限定SSR……。相対論効果限定スクリプトだ。
   相対性理論の効果を抑えて、同期した二つの時計の間で固有時を常に一致させる。
   そんな魔法がかかってるんだ」

乃々「ど、どういうことですか……?」


輝子「簡単に言えば、ウラシマ効果を無効にする魔法……かな」

美玲「すごいよな、この技術!
   これの応用で帰りはあっという間だったんだぞッ!
   相対論的質量の増加を抑えて、船の耐久力を心配せずに加速できるんだ!」


相対性理論はよくわからないですけど、とにかくすごいというのはわかりました……。


乃々「それで、どうしてベガまで……?」

輝子「あそこでしか売ってない、すごくおいしいキノコがあって……。
   それを使った料理が、私からのプレゼントだ。
   もうそろそろできるから、ちょっと待っててね」

輝子ちゃんとまゆさんと凛さんが食事の準備をしている間に、みなさんからプレゼントを受け取りました。


幸子さんからは、聖地限定版の『聖典』のセット。
まゆさんからは、もりくぼに似合うように仕立ててくれた甘ロリドレス。
小梅さんからは、おすすめ映画10選(ホラーを除く)。
美玲ちゃんからは、西暦の時代の、年代物の万年筆。

ここにはいませんが飛鳥さんからは、オシャレなネックレス。
蘭子さんからは、ページが減らない魔法のスケッチブック。

どれももりくぼにはもったいないほどの素晴らしいプレゼントでした。

Sweetchesの皆さんからは、後ほどケーキが送られてくるらしいです。

輝子「じゃあ、ど、どうぞ……。召し上がれ」

乃々「いただきます」


輝子ちゃんがベガまで行って買ってきてくれたキノコ……。
どれほどのものなんでしょう。楽しみです。

じゃがいもとにんじん、そしてそのキノコを、しょうゆとコショウで簡単に炒めたもののようです。
単純な味付けほどキノコそのもののおいしさが際立つ、ということなのでしょうか……?

そして、一口。


乃々「これは……! とても美味しいです!
   こんなの今まで食べたことないです……!
   まさにこの料理こそ、生命、宇宙、そして万物についての究極の疑問の答えなんですけど!!」

******


パーティは、私も含めてみんなが寝ちゃうまで続いた。
ベガテングタケ、乃々ちゃんが喜んでくれて良かった……。

その後、『正体不明の新人アイドルがサクヤヒメのライブに乱入した』と言うウワサは、銀河中に流れた。
新人の発掘に貪欲な親友は、私が紹介するまでもなくすぐに美玲ちゃんにまでたどり着いた。

あれよあれよというままにプロデュースされた美玲ちゃんは、あっという間にアイドルとしてデビュー。
乃々ちゃんと私を含めた三人で、ユニット『インディヴィジュアルズ』を結成することになるのだが、それはまた別の話。

おしまい


http://i.imgur.com/VkXl6Mv.png

参考文献

ロバート・A・ハインライン『天翔る少女』
アーサー・C・クラーク『2001年宇宙の旅』
ルイス・キャロル『不思議の国のアリス』
寺沢武一『コブラ』
ダグラス・アダムズ『銀河ヒッチハイク・ガイド』
アイザック・アシモフ『鋼鉄都市』
フィリップ・K・ディック『アンドロイドは電気羊の夢を見るか』
ロバート・A・ハインライン『ダブル・スター』

スタンリー・キューブリック『2001年宇宙の旅』
リドリー・スコット『ブレードランナー』
リュック・ベッソン『フィフス・エレメント』
ジョナサン・モストウ『サロゲート』

花猪口P『星輝子とキノコの話』シリーズ

遊戯王VRAINS
宇宙刑事シャリバン

佐藤勝彦『相対性理論』

Daisy Bell (A Bicycle Built For Two) 日本語訳→http://jazzsong.la.coocan.jp/Song472.html

その他色々他愛もないやつ(Wikipediaとかpixiv大百科とか)

(※注)
光速に近づくと質量が増大して船が壊れると言う論法は嘘です
美玲ちゃんに「あんまりγが大きくなると船が壊れちゃうモン」と言わせたかったために相対論を曲解しました
物理学素人のアカチャンなのであんまり突っ込まないで

前作→森久保乃々「あくむ」
森久保乃々「あくむ」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1500122438/l50)

前前作→【モバマスSS】安部菜々「ウルトラクイズごっこ決勝戦ごっこ」【早押しクイズ】
【モバマスSS】安部菜々「ウルトラクイズごっこ決勝戦ごっこ」【早押しクイズ】 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1499662797/) 

前前前世→【モバマス】アタック77【早押しクイズ】

先頭の空白がズレてて読みづらい

味が濃いSSでした乙

ケーキすげぇ…おつ
SFやっぱいいね

おつ
良い世界観だった。ご馳走さま

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