比企谷「雪ノ下と猫」 (49)
比企谷(やはり昼は一人で静かに食べるに限る)
雪ノ下「……」
比企谷(雪ノ下?)
比企谷(あいつこんなところで何をやっているんだ?)
比企谷(校舎裏に向かってるな……)
雪ノ下「……」キョロキョロ
比企谷(随分周りを気にしてるな……)
比企谷(まあ、あいつのことだからちゃんとした理由はあるんだろう)
比企谷(……)
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比企谷(いやいや、後をつけるなんて悪趣味すぎるだろ。そもそも、あいつをつけるメリットもないしな)
比企谷(……)
比企谷(あくまで魔が差しただけだ)
比企谷(さて、一体何をやってるのか……)
雪ノ下「にゃー」
比企谷(!?)
茶色の猫「ニャー」
雪ノ下「にゃー」
比企谷(そういうことか)
比企谷(あいつ普段は氷みたいなくせに、時々妙に可愛いところがあるんだよな)
比企谷(それにしても、いつからこんなことをしていたんだ)
茶色の猫「ニャー」
雪ノ下「よしよし」ナデナデ
茶色の猫「ニャー」ゴロンッ
雪ノ下「よしよし。お前は大人しくていい子だにゃー」ナデナデ
比企谷(ぶっ)
比企谷(危ない危ない。あやうく声を出すところだったぜ)
比企谷(あの雪ノ下が猫言葉で……)
雪ノ下「野良なのにお前の毛並みは綺麗だにゃー」ナデナデ
比企谷(ぶっ)
比企谷(くくっ、その猫言葉で喋るのマジでやめろ)
雪ノ下「にゃー」
比企谷(ぶっ)
雪ノ下「にゃー」
比企谷(くっ、笑ってはいけない総武高かよ)
雪ノ下「にゃー」
茶色の猫「ニャー」
雪ノ下「♪」
比企谷(さて、どうしたものか)
比企谷(あいつ自身に聞いたとしてもどうせはぐらかされるか)
雪ノ下「また来るわね」
茶色の猫「ニャー」
比企谷(やばい、こっちに来る!!)
雪ノ下「……」
比企谷(何とか見つからずにすんだか……)
比企谷(……隠れる必要はあったのだろうか)
―部室―
比企谷「雪ノ下一人か」
雪ノ下「あら、どこの不審者が入ってきたのかと思って身構えたら、比企谷君じゃない」
雪ノ下「でも、比企谷君も不審者のようなものだから、やはり警戒しておいた方がいいかしら」
比企谷「誰が不審者だ」
比企谷(昼休みのお前の方がよっぽど不審だろ)
比企谷「……」
比企谷「ぶっ(思い出しちまった)」
雪ノ下「いきなりニヤニヤし出してどうしたのかしら?気持ち悪い顔がさらに気持ち悪くなっているわよ」
比企谷「な、何でもねえよ」
比企谷(言われっぱなしなのも腹が立つな)
比企谷(少しだけ揺さぶってみるか)
比企谷「そういえば、雪ノ下って猫が好きだよな」
雪ノ下「さあ、どうかしら」
比企谷「今日外で昼飯を食べていたら野良猫がこっちに寄って来たんだ」
雪ノ下「……そう」
比企谷「学校に野良猫が居着いても困るから、結局あまり相手を出来なくて残念だったと思ってな」
雪ノ下「その話を何故私にするのかしら?」
比企谷「猫好きの雪ノ下ならこの残念な気持ちを分かってくれると思ってな」
雪ノ下「比企谷君のうじうじした気持ちを理解しろと言われても困るのだけれど」
比企谷「それは残念だ」
雪ノ下「それにあなたは猫を飼っているのだから、別に野良猫の相手が出来なかったとしても問題ないのではないかしら?」
比企谷「たまにはカマクラ以外の猫の相手もしたくてな」
雪ノ下「……そう。それこそ私にとってはどうでもいい話ね」
比企谷「それもそうだな」
雪ノ下「……」
比企谷(あまり動揺は見られないか。あの件はあいつにとってそれほど知られたくないことでもないってことか)
比企谷(いや、あの時のコソコソした様子を見る限り、人目を気にしていたのは確かだ)
比企谷(だとすると動揺を抑え込んでいるだけか?)
―翌日―
比企谷「……」
比企谷(今日は雪ノ下の奴来ないな)
比企谷(昨日のことを気にしているのか?)
比企谷(いや、仮に気にしていたとして、それで来なくなるほどやわな奴でもないか)
比企谷(だとするとたまたま今日は猫の様子を見に行ってないだけか?)
比企谷(まあ、毎日見に行くわけでもないか。由比ヶ浜あたりとの約束もあるだろうしな)
比企谷(後で由比ヶ浜あたりにでも確認をとってみるか)
比企谷「由比ヶ浜」
由比ヶ浜「どうしたのヒッキー?」
比企谷「今日の昼休み、雪ノ下はお前と一緒にいたのか?」
由比ヶ浜「ゆきのん?うん、一緒にお昼を食べたよ」
比企谷「そうか。ありがとうな」
由比ヶ浜「ゆきのんがどうかしたの?」
比企谷「何でもない」
由比ヶ浜「えー、そんな言い方されたら余計に気になるし」
比企谷「何でもないと言ってるだろ」
由比ヶ浜「教えてよー」
―翌々日―
雪ノ下「……」キョロキョロ
比企谷(お、今日は来たみたいだな)
雪ノ下「……」キョロキョロ
比企谷(前回よりも周囲を警戒しているな)
雪ノ下「……」キョロキョロ
比企谷(となると、あの揺さぶりは効いてたわけか)
比企谷(雪ノ下から一本取ってやりたいという気持ちで言ってみたが……)
雪ノ下「……」キョロキョロ
比企谷(あの雪ノ下がこんなことになっているのを見ていると、さすがに若干の罪悪感がなくもないな)
茶色の猫「ニャー」
雪ノ下「お前はいつもここにいるにゃー」
比企谷(また猫言葉に)
雪ノ下「にゃー」
雪ノ下「……」
雪ノ下「比企谷君の言う通り、野良猫の相手をして学校に居着かせてしまうのは良くないわよね」
雪ノ下「……あまり良くない事をしているのは分かっているわ」
比企谷(思いの外揺さぶりが効いてたよおい)
雪ノ下「……」
にゃー
茶色の猫「ニャー」
雪ノ下「慰めてくれるの?優しいのね」ナデナデ
茶色の猫「ニャー」
比企谷(何これ、すっげー罪悪感)
茶色の猫「ニャー」
雪ノ下「あっ、こら」
雪ノ下「お前は野良猫なのに本当に人懐っこいにゃー」ナデナデ
茶色の猫「ニャー」
比企谷(……)
―別の日―
由比ヶ浜「ねえ、ヒッキー」
比企谷「何だ?」
由比ヶ浜「最近、ゆきのんが昼休みに何してるか知らない?」
比企谷「雪ノ下?知らんな。どうかしたのか?」
由比ヶ浜「最近、ゆきのんをお昼に誘っても、何か用事があるみたいで断られちゃうことが多いんだよね」
由比ヶ浜「ほら、ヒッキーこの前私にゆきのんが昼休みに何してたか聞いてきたじゃん。だからひょっとして何か知ってるのかなと思って」
比企谷(さて、どうしたものか)
比企谷(あいつ自身が何も言ってない以上、黙っておいてやるべきか)
比企谷(この前の件について罪悪感もあるしな)
ニャー(⌒▽⌒)
比企谷「さあな」
由比ヶ浜「でもこの前……」
比企谷「あれは雪ノ下に用事があって昼休み中探していたのに、見つからなかったからお前に聞いただけだ。用事は無事放課後に済ませたから大丈夫だ」
比企谷「大体、お前が知らない雪ノ下の事について俺が知るわけないだろ」
由比ヶ浜「それもそうだね」
比企谷「何にせよ、あいつが用事があると言うのなら本当に用事があるんだろう」
比企谷「あいつが変なことをするとも思えん。今のところ困っている様子もないんだろ?」
由比ヶ浜「うん……」
比企谷「ならいいじゃねえか。何か困っているようならその時は話を聞いてやればいい」
由比ヶ浜「うん……そうだね。ありがとうヒッキー」
比企谷(さて、あれで由比ヶ浜の奴は引いてくれたかねえ)
雪ノ下「……」キョロキョロ
比企谷(感謝しろよ雪ノ下。お前の恥ずかしい姿、後ろめたい姿を見られないように陰ながら助力してやってるんだからな)
比企谷(まあ、見られたくないのなら、あいつ自身にも気をつけてもらいたいがな)
比企谷(見つけたのが俺のように心の穏やかな人間だったから良かったものを、お前を妬んでいる奴らに見つけられていたらいい攻撃材料にされていたぞ)
比企谷(いや、それで屈するあいつでもないか)
比企谷(……)
比企谷(いつまでもあいつの後をつけている俺も悪趣味だな)
比企谷(……まあいい、見つかるまで成り行きを見させてもらうか)
比企谷(俺も暇だな……)
茶色の猫「ニャー」
雪ノ下「にゃー」
黒色の猫「ニャー」
雪ノ下「にゃー」
比企谷(何か増えてるぞおい)
雪ノ下「よしよし」ナデナデ
比企谷(前からいた茶色だけじゃくて、黒色も雪ノ下に慣れてるな)
比企谷(ってことは、昨日今日で仲良くなったわけでもなさそうだな)
比企谷(俺がここで雪ノ下が猫と会っているのを見つける前に、あの黒色は来ていた可能性があるな)
比企谷(だとすると、雪ノ下はいつからこんなことをしているんだ……)
比企谷(それにしても……)
雪ノ下「にゃー」
比企谷(猫の相手をしている時のあいつは本当に幸せそうだな)
雪ノ下「♪」
比企谷(表情の変化は少ないが、分かりやすく幸せオーラを出してやがる)
雪ノ下「うふふ」
比企谷(たまにあからさまに笑っているしな)
比企谷(こうしていれば、あいつも結構可愛いのにな……)
比企谷(いやいや、惑わされるな俺!中身はあの氷の女王雪ノ下だぞ!)
雪ノ下「にゃー」
比企谷(猫に注ぐ優しさの100分の1でいいから俺にも優しくしろよ……)
―また別の日―
雪ノ下「……」
比企谷(お、今日は猫のところに行くみたいだな)
比企谷(飽きずに雪ノ下の後をつけ続けてる俺って傍から見たら完全に変態なんだろうな)
雪ノ下「?」
比企谷(ん?今日は猫が来てないな)
雪ノ下「にゃー」
雪ノ下「……」
比企谷(……)
比企谷(何も返って来ないな)
比企谷(その日以来、茶色の猫も黒色の猫も姿を見せなくなった)
比企谷(そして、今日も……)
雪ノ下「……」
比企谷(やっぱり今日も来ないな)
雪ノ下「はぁ……」
比企谷(表情からは分かりにくくても、最近の雪ノ下は明らかに元気が無い)
比企谷(自慢の毒舌の切れも弱まっていて、最近は絶対に許さないリストにあいつの名前が挙がることが無くなっている)
パキッ
雪ノ下「!!」
比企谷(やばい!!木の枝を踏んじまった!!)
雪ノ下「……比企谷君、隠れているのなら出てきなさい」
比企谷「……もしかしてとっくにバレてたのか?」
雪ノ下「あなたに部室で野良猫の話をされた時から、薄々そんな気はしていたわ」
比企谷(やっぱり、言うべきじゃなかったか)
雪ノ下「覗きはいつごろから初めて、どのくらいやっていたのかしら?」
比企谷「部室でお前にそれとなく話した日からだ。そこから、お前が校舎裏に向かっている時はおそらく毎回だ」
雪ノ下「隠れて覗きを続けていたなんて趣味が悪いわね出歯ヶ谷君」
比企谷「出歯ヶ谷って何だおい」
雪ノ下「ごめんなさい。間違えたわ、出歯亀君」
比企谷「悪化したぞ」
比企谷「薄々覗かれていると分かっていながら、何で今まで何も言ってこなかったんだ?」
雪ノ下「そうね、比企谷が取るに足らない存在だったからかしら」
比企谷「なんて言い草だ」
雪ノ下「他の人なら、ともかく比企谷君に覗かれている可能性があると思っても、最初以外はこれといって警戒する気は起こらなかったわ」
雪ノ下「後の方になってからは、そもそも比企谷君がいるかいないかということ自体どうでもよくなっていたわ。これもあなたの存在感のなさ故かしら」
比企谷「にゃーにゃー言っているところを俺に見られて何も思わなかったのか?」
雪ノ下「何を言っているのかしら?そういう気持ち悪い妄想は心の中だけに留めておくべきよ」
比企谷(そこについては白を切り通すつもりか)
比企谷「お前、一回恥ずかしい姿を見られたのなら、何回見られようと関係ないとばかりに、白を切り通すつもりでいたから、特に何も言ってこなかったのか」
雪ノ下「さあ何のことかしら。どの道、友達のいない比企谷では、何を見たこところで、周りに広めようがないと思うのだけれど」
比企谷「もし俺が由比ヶ浜あたりに喋っていたとしたら」
雪ノ下「でも、あなたはそうしなかった」
比企谷「……そうだな」
雪ノ下「いずれにせよ、私はもうここには来ないと思うわ。だから、比企谷君の覗き生活もこれでお仕舞いね」
比企谷「……良いのか?」
雪ノ下「良いも悪いも、私がここに来る理由はもう無くなってしまったわ」
雪ノ下「相手が野良猫である以上、ひょっとするとまた現われるかもしれないけれど、それをいつまでも待ち続けるつもりもないわ」
比企谷「……そうだな」
―休日・公園―
雪ノ下「比企谷君、何の用かしら?休日に人をこんなところに呼びだして」
比企谷「やっと来たか」
カマクラ「ニャー」
雪ノ下「その子は比企谷君のところの……一体どういうつもりなのかしら?」
比企谷「ほらよ。ちょっと出かけてくるから、その間カマクラを預かっていてくれ」
カマクラ「ニャー」
雪ノ下「待ちなさい!預かっていてくれって……」
比企谷「なるべく早く戻って来る」
雪ノ下「……あなたも気遣いという言葉を知っているのね」
比企谷「むしろ俺は気遣い上手だぞ」
雪ノ下「にゃー」
カマクラ「ニャー」
雪ノ下(肉球……)プニプニ
カマクラ「ニャー」
雪ノ下「♪」
比企谷(……)
比企谷(カマクラもそんなに嫌がってないみたいだな)
比企谷(さて、もう少し出かけているとするか)
終わり
乙!!!
おまけ・比企谷「雪ノ下が猫」
比企谷「……」
比企谷「ああ、これは夢だな。いきなり通学路に立っているなんて普通に考えたらありえねえ」
比企谷「周りの建物の様子も、実際の通学路のものと少し違うしな」
比企谷「そして、何より……」
雪ノ下「にゃー」
比企谷「猫耳と尻尾を生やした小さい雪ノ下が、段ボールに入ってこっちを見つめている」
雪ノ下「にゃー」
比企谷「はあ……最近、雪ノ下がにゃーにゃー言っているのを聞いていたから、こんな変な夢を見ているんだろうな」
雪ノ下「にゃー」
比企谷「……全く目をそらさずにこっちを見つめてやがる」
雪ノ下「にゃー」
段ボールの張り紙『拾って下さい』
比企谷「いや、拾わんからな」
雪ノ下「……」ジー
比企谷「目力がこえーよ」
比企谷「いつの間にか、猫ノ下と一緒に我が家に帰っていた。さすが夢。展開が支離滅裂だ」
雪ノ下「にゃー」
比企谷「つーか、お前普通に二足歩行なんだな」
比企谷「さて、どうするか……」
比企谷「カマクラのねこじゃらし……」
比企谷「ほれほれ」フリフリ
雪ノ下「……」ウズウズ
比企谷「やっぱり駄目か?」フリフリ
雪ノ下「にゃっ!ふにゃっ!」
比企谷「おっ、ねこじゃらしに食いついた」
比企谷「ほれほれ」フリフリ
雪ノ下「にゃっ!にゃっ!」
比企谷「こっちだぞー」フリフリ
雪ノ下「ふにゃっ!」
比企谷「あの雪ノ下を自在に動かしていると思うと、何か変な気分だな」フリフリ
雪ノ下「……」ハッ
雪ノ下「……」プイッ
比企谷「あっ、そっぽ向きやがった。雪ノ下こっちだぞー」フリフリ
雪ノ下「……」プイッ
比企谷「駄目か」
雪ノ下「……」ウトウト
比企谷「眠そうだな」
雪ノ下「……」ゴロン
比企谷「床の上で横になった」
雪ノ下「……」
雪ノ下「……」スッ
比企谷「あっ、起きた」
雪ノ下「……」ジー
比企谷「な、何だ?」
雪ノ下「にゃー」
比企谷「何だ?急にこっちに寄って来て」
雪ノ下「にゃー」
雪ノ下「……」ジー
比企谷「お前まさか……」
雪ノ下「にゃっ」ゴロン
比企谷「やっぱり、俺の膝で横になるつもりだったのか……」
雪ノ下「にゃー」
比企谷「……」
比企谷「小さくなって耳と尻尾が生えているとはいえ、膝に乗っているのは雪ノ下なんだよな……」
雪ノ下「……」スースー
比企谷「そう考えると落ち着かんな……」
雪ノ下「うにゃ……」スースー
比企谷「……」
雪ノ下「にゃー……」スースー
比企谷「か……」
比企谷「いやいや、落ち着け俺。これはあくまで雪ノ下だ」
比企谷「……それ以前にこれは夢だった」
比企谷「なんつー夢だよ……」
雪ノ下「ふにゃ……」スースー
比企谷「……」
比企谷「いつものあいつにももう少し可愛げがあればな……」
雪ノ下「……」スースー
コンコンッ
比企谷「ん?何の音だ?」
比企谷「……窓の方か?」
由比ヶ浜「わん!」
比企谷「……」
比企谷「これ以上面倒見切れるか!!」ガバッ
比企谷「ハァ……ハァ……」
比企谷「……」
比企谷「本当になんつー夢だよ……」
終わり
以上
面白かった、乙でしたー
おつ
面白かった、乙
乙、ネコ×ゆきのんはもっと増えるべき
乙です。
ねこのん
ゆいわん
もっとみたいお
乙です。
野良猫たちは保健所→三味線の…か?
乙
これはヒッキーがゆきのんの猫になってあげるしかないな
おつおつ
乙です。
ゆきのん可愛いww
八幡はキツネだっけか
小町はたぬきですな、青くないやつ
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