【デレマス】映画にまつわる小話 (13)
P「ただいま戻りましたー。……あれ、速水さんと小松さんだけでしたか」
奏「おかえりなさい、プロデューサー」
伊吹「おかえりー」
P「はい、ただいま。2人してスマホとにらめっこなんかしてどうしたんですか?」
奏「ちょっと気になる映画があってね。今度2人で行こうかと思って」
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P「映画ですか、いいですねぇ。何というタイトルですか?」
伊吹「『君の膵臓(すいぞう)をたべたい』って作品なんだけどさ……」
P「すみません、もう一度タイトルを言って貰えますか?」
よよ
奏「『君の膵臓をたべたい』よ」
P「ホラー、ですか?」
奏「いいえ、青春映画よ。『ラスト、このタイトルに涙する。』ですって」
伊吹「他にも色々観たい作品があるんだけどさ、とにかくインパクトが強いから気になってね」
P「確かに、中身がとても気になりますね。タイトルだけだと、どちらかと言うと白坂さんが好きそうですけれど」
奏「否定はしないわ」
P「観に行くのでしたらオフを合わせましょうか?」
奏「でもまだ観に行くと決めた訳じゃないのよ」
伊吹「だからぁ、気にすることじゃないって」
P「何か問題のある作品なのですか?」
伊吹「奏って恋愛映画苦手だから気にしてるんだって」
P「そういう事でしたか」
奏「それに、万が一そういう作品だったとしたら気まずくなりそうじゃない?」
伊吹「何考えてるのよ奏ったら……」
奏「あら、私がどんな事を想像したと思ってるのかしら?良かったら聞かせて貰える?」
伊吹「何でもないよっ!!」
P「速水さん、からかいすぎは程々にして下さいね?」
奏「プロデューサーがそう言うなら止めておくわ。……ねぇ伊吹、どうせならプロデューサーと行ったらどうかしら?」
伊吹「えっ」
奏「恋愛色の強い作品だったとしても問題ないでしょう?むしろ、そっちの方が楽しめるんじゃない?」
伊吹「そ、それはそうだけど……、じゃなくって!プロデューサーだって迷惑だって!!ね?」
P「私個人としては誘っていただけるのでしたら大変嬉しいですね。ですがやはり立場上2人きりで、というのは難しいでしょうね」
伊吹「ほら!」
奏「あら、残念。じゃああなたの部屋でなら2人きりでも構わないのかしら?」
P「答えが分かっている質問はかえって回答に困るのですが……」
奏「それはOKととってもいいてことかしら?」
伊吹「はいはい、プロデューサーを困らせないの。ところでさ、プロデューサーは最近映画とか観た?」
P「いえ、最近はレンタルすら観れていませんね。勿論うちのアイドルが出演した作品に関しては別ですが」
伊吹「ふぅん。好きなジャンルは?」
P「そうですね…、得にこだわりはありませんがアクションやファンタジーが多い気がしますね」
奏「恋愛映画は守備範囲外なのかしら?」
P「そうですね、映画館で観たことは……。いえ、1作品だけ映画館で観たことがありますね」
伊吹「え、なんて作品?」
P「『世界の中心で愛を叫ぶ』です。聞いたことはありますか?」
奏「観たことは無いけれど、確か去年中国版が放映されたのよね?雑誌で読んだわ」
伊吹「私は何年か前にレンタルで観たよ!良い作品だよね!」
P「中国版、というのは初耳ですが、映画化にコミカライズ、ドラマに舞台化もした作品なんですよセカチューは」
伊吹「せかちゅー?」
P「作品の通称です。懐かしいなぁ、確かまだ私が高校生の頃でしたっけ……」
奏「ふぅん、もし良かったらどういう経緯で観ることになったのか聞かせて貰えるかしら?」
P「聞いてて楽しい話ではありませんよ?それに作品の内容もおぼろげですし」
奏「それでも、よ。あなたの昔話を聞いてみたいの。伊吹もそうでしょう?」
伊吹「うんうん、聞きたい♪」
P「そういうものですか?…では、どこから話しましょうか。あれは10年以上前、まだ私が高校生だった頃。当時の私はコンビニに少年誌の立ち読みに行くのが習慣でした」
P「普段は素通りする入り口横のコミックコーナーに、その日は偶然足を止めました。最上段に表紙が見えるように陳列してある作品があり、それがセカチューでした」
伊吹(真面目な顔してセカチューって、なんだかおかしいね?)
奏(黙って聞いてなさい)
P「私は『待望の映画化!』といったよくある帯が気になって、手に取って読み始めました。絵柄はどちらかと言えば女性向けだったのですが、気にならず読んでいました」
P「中には、あー、少女コミックとかにありがちな恋愛描写とかも……あったので、立ち読みは中止して購入し、自宅で読みました」
奏「それって、所謂大人の階段を……ってことかしら?」
伊吹「ちょっと奏!」
P「直接的なシーンはありませんでしたけれどね」
P「私は作品に感動し、映画館へ行くことを心に決めました」
奏「ふぅん、もしかしてそこから気になる女子を誘ったりしたのかしら?いいわね、青春って」
伊吹「あんたいくつよ」
P「いえ、誰かを誘ったりはせず、1人で観ました」
奏「……え?」
P「当時は、いえ、当時も恋人はおろか親しい異性そのものがいませんでしたから、1人で映画館へ行きました。男同士で観に行くような作品でもありませんでしたしね」
伊吹「……っ」
奏「その……続きは?」
P「私は休みの日に映画館へ向かいました。話題の作品だということもあり、多くの人が並んでいたのを覚えています。チケット購入後、パンフレットを買って席を決めて、上映時間までパンフレットを読みふけっていました。最近の映画館は全席指定の所も多いですが、当時の地元の映画館は席は自由だったんですよ」
P「話は逸れますが、その時より更に数年前の夏休みの子供向け映画では席が足りずに通路の階段に座ったり、なんてこともありましたね」
伊吹「す、凄いね」
P「全くです。さて、先ほども話しましたが私は余り細かいストーリーまでは覚えていません。それでも印象に残っているシーンはあります」
P「ヒロインが白血病で倒れ、余命宣告まで受けてしまうんです。そんな中主人公にとある場所に行きたいとお願いをして、2人は病院を抜け出して旅に出るんです」
P「ですがそんな無謀な試みがうまくいくはずもなく、ヒロインは主人公が目を離している時に倒れてしまうんです。主人公はすぐに気づいて必死に声をかけるもヒロインは既に意識朦朧、主人公は彼女を抱きながら周りに『助けてくださいっ!助けてくださいっ!!』と叫ぶんです」
伊吹「あー、あったねそんなシーンも。アタシは小舟の上で仰向けになってるシーンが好きだったな。世界の中心にいるみたいだー、って所」
P「作品のタイトルにもなった部分ですね。ラストはオーストラリアのエアーズロックで彼女の散骨をするのですが、そこで主題歌でもある平井堅の瞳をとじてがまた涙腺を刺激するんですよ」
P「エンドロールも終わり、館内が明るくなると色々なものが見えました。肩を寄せ合っているカップル、泣いている彼女の頭を優しくなでている彼氏、うっとりと見つめ合うカップル……。私は、360度カップルに囲まれていました」
奏「……まぁ、カップルは多いでしょうね」
P「映画の余韻とはまた別の理由で鼻の奥がツン、と来たのは今でも思い出しますよ……」
伊吹「それが、プロデューサーの恋愛映画の思い出なの?」
P「えぇ、少なくとも映画館で観た作品は。自宅でならタイタニックなどは観たことが何作かはありますが、それでも片手で数える程度ですね」
伊吹「もしかして、トラウマになった、とか……?」
P「どうでしょう、余りそういうつもりはありませんが……」
奏「ところで、1つ聞きたいことがあるのだけれどいいかしら?」
P「どうぞ、私に答えられることでしたら」
奏「さっき、当時“も”親しい女性がいなかった、って言っていたけれど、プロデューサーの中では私たちってどういう立場なのかしら?」
伊吹「あ、確かに!どーゆーことなのさプロデューサー!!」
P「あれはプライベートで、という意味で言ったんですよ。勿論速水さんや小松さん、他の方々のことは信頼しています。ですが、私からあなた達を親しい女性だと言ってしまうのはあらぬ誤解を招く可能性がありますので……」
奏「ふぅん、まぁ、そういう事で今は構わないわ」
伊吹「む―……。あ、そうだプロデューサー、この映画皆で観に行かない?」
P「え?」
奏「どうしたのよ急に」
伊吹「映画の残念な思い出は楽しい思い出を横に置いておけば気にならなくなるって!それに、親しい女性じゃなくても気の置けない友人だったら気兼ねなく一緒に観に行けるでしょ?」
奏「随分強引ね。でもその考えは嫌いじゃないわ」
P「……お2人とも、ありがとうございます。では、後日私が日程を調整しますので皆で観に行きましょう」
伊吹「楽しみだね、奏」
奏「そうね」
後日、アイドル数名で映画館に向かうもそれに気付いた一般の人々が騒ぎになり、ネットニュースになったとか。
今日、テレビCMで『君の膵臓をたべたい』という映画があると知り、なんとなしに書いてみました。
セカチューも原作と映画、確かドラマも多少内容が違うのですが、機会があれば見て損はないかと。
それでは失礼します。
おっつおっつ
すい臓のやつ何度も予告見たから気になってるんだよなー
乙
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