幸子「お仕事が貰えるのは嬉しいですけど……なんでボクに?」
モバP「先方が是非にと推して来てな。多分だけど、スタッフか誰かが幸子のファンなんじゃないか?」
幸子「ありがたい話ですけど……肇さんとか芳乃さんの方が相応しいというか……適材適所というか……」
モバP「オファーがあったのは幸子だし……まあ、色んな仕事をしてみて、経験を積むってのも良いことだと思うぞ?」
幸子「それもそうですけど……予習とかしておくべきですかね?ボク、骨董品とかよく分からないんですけど……花瓶とかお皿とかそういう奴ですよね?」
モバP「多分そんな感じだろ。詳しく聞いたわけじゃないけど、幸子と鑑定人が骨董品を評価して、その差を見て楽しむような感じの企画らしい」
幸子「感じ悪い!なんですか!?ボクを馬鹿にしてるんですか!?」
モバP「いやいや、俺たちは幸子のセンスを信じているんだよ。考えても見ろ、骨董品だぞ?遥か昔に職人の手で丹精込めて作られた物だ。その時点でカワイイだろ?それが時代を経て評価される。それが骨董品鑑定だ。……カワイイものに対する審美眼に優れる幸子なら完璧にこなせるんじゃないか?」
幸子「…………」
モバP(厳しいか?幸子なら適当にカワイイカワイイ言っておけば丸め込めるって小梅が言ってたけど……)
幸子「……なるほど!確かに!」
モバP「マジかよちょろいな」
幸子「え?」
モバP「いや、何でもないよ?とにかくそういうわけで、幸子の直感で判断してもらいたいから予習なんかは不要だそうだ。基本的に台本どおりに進めるらしいから特に知識がいるような場面もないはずだし」
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幸子「ふーん?全部台本どおりで事前の努力は必要ない……分からないでもないですけど、そういうのはカワイくないですね……」
モバP「そういうものか?幸子のカワイイの基準はよくわからん」
幸子「簡単ですよ!ボクはカワイイ。そしてカワイイボクが努力するのもカワイイ。つまり、努力を怠ることはカワイイを怠ることに繋がるんです!それ、すなわちカワイくない。……そういうことです!」
モバP「わかるような、わからないような……」
幸子「プロデューサーさんは、ボクのプロデューサーさんなんですからボクの事は一から十まで理解していてくれなきゃ困りますよ?」
モバP「理解する前にカワイイがゲシュタルト崩壊しそうになるんだよなぁ……イイの部分とかが特に……」
幸子「何でですか!カワイイとはすなわちボク!カワイイという文字を認識した瞬間にボクの顔が出てくるくらいじゃないと!そうなれば、プロデューサーさんは常にボクを感じれて幸せになれます!カワイイボクに囲まれた生活……夢のようじゃないですか!」
モバP「俺がその生活を続けたら、多分カワイイのオーバーフローで早死にすると思うよ。まあ、そんな感じで。幸子のカワイイを全面に出してアレンジしながら台本読んでればいいんじゃない?」
幸子「もう!何はともあれ、カワイイボクにこなせないお仕事なんてありませんからね!完璧にこなして見せますよ!」
モバP[頑張ってね」
モバP(まあ、ドッキリだけどな!)
ハーイ、それじゃあ本番いきまーす!5秒前、4、3……
幸子「開運!おもむろに出張鑑定団!」
幸子「こんにちは、皆さん!ボクです!カワイイボクがF県はA市にやってきましたよ!天候も良好!絶好の幸子日和ですね!」
幸子「改めまして、この番組の進行役を勤めます輿水幸子です!進行役だからか、バスガイドさんの衣装です!どうですか?この衣装、カワイイでしょう?」
幸子「骨董品の知識はありませんが大丈夫です!ボクは太陽!カワイイ太陽!現場を明るく彩ります!ボクはいるだけで華がありますからねぇ!地味な……あっいえ、素朴な?……え、これもまずいですか。えーと……硬派な!そう!そんな感じの番組ですが、まあカワイイボクに任せておいて下さい!」
幸子「それでは、早速現場に向かいますよ!着いてきてください!」
……………………ハイ!オッケーでーす!
幸子「……ふぅ。初めての現場は緊張しますね!」
スタッフ「お疲れ間です!飲み物どうぞー!」
幸子「あ、ありがとうございます!」
スタッフ「そのままでいいので、流れの確認をさせていただきますね。この後は、今回の依頼者の方がいらっしゃるお寺の方に向かいます。お寺に向かう所を撮影しますので、歩きで向かいますね。ここにナレーションが入りますので台詞等はいりませんが、その分カワイイ感じで移動してください」
幸子「はい!得意分野です! ……あの、さっきは失礼しました。地味とかいっちゃって……」
スタッフ「いえいえ、事実ですし。ある程度台本があるとはいえ、幸子ちゃんの素の反応が欲しいですからね。むしろ、バンバン言っちゃってください」
幸子「そ、そうですか?それならいいんですが……」
ハーイ!それじゃあ、現場向かいまーす!撮影始めてますので、歩いていってくださーい
幸子「ハイ!お寺に到着しました!それでは早速、今回の依頼者さんをご紹介します!ここ、偶像寺の住職さんである寺山寺夫さんです!よろしくお願いしますね!」
住職「はい、よろしくお願いします」
幸子「今回は、何故番組に鑑定を依頼されたんですか?」
住職「ええ、家の御堂の蔵には昔から様々なガラクタが納められていまして。奉納して戴いたものや、除霊の依頼で持ち込まれたものなどで溢れ返る程でして。お焚き上げなどで定期的に整理はしているんですが、どうしても由来の分からなくなってしまうものがあるんです」
幸子「えっ……このお寺って、除霊とか……されているんですか?」
住職「手に負えるものであれば、請け負う事もありますね」
幸子「ああ……嫌な予感がしてきました。やっぱりボクじゃなく、他に適任の方がいるんじゃないですか。小梅さんがそこら辺に隠れているんでしょう!? ……え?いない!?そんなバカな!?もうこんなの完全にフリじゃないですか!」
住職「ああ、いえ。流石にそういったものをテレビに出すわけにもいきませんよ。今回見ていただくのは、檀家の方から寄進して戴いたものの、詳細が不明な物なんです。そこら辺の記録が残っていなかったもので、戴いた方には失礼な話ですが」
幸子「本当ですか!?……確かに袖長片目隠れ系金髪美少女は見当たりませんし……いえ、カツラを被って変装している可能性も……」
住職「大丈夫ですよ。実は今回、輿水さんにおいでいただいたのも、私が輿水さんのファンだからなんですよ」
幸子「えっ!そうなんですか!?」
住職「そうなんですよ。ですので、後で個人的にサインなどいただけますとありがたいです」
幸子「なぁんだ!それを早く言ってくださいよ!そうですか、そうですか!それなら仕方がないですねぇ!仏門に下った方をも魅了してしまうボク!どうですか?実物はテレビなんかで見るよりも五割増しでカワイイでしょう!?テレビの回線ではボクのカワイさは伝えきれませんからね!」
住職「そうですね(チョロい)」
幸子「え?」
住職「いえ、なんでも。それでは中へ案内させていただきます。こちらへどうぞ」
幸子「あ、はい!」
幸子「えーと、こちらのお寺、偶像寺は三百年の歴史を持つ由緒正しいお寺なんですね」チラチラ
住職「はい、私で十七代目になります」
幸子「なるほど。それにしても偶像(アイドル)寺ですか!まさにボクたちアイドルの為にあるようなお寺ですね!後でお参りしていきましょう!」チラチラ
住職「ええ、この寺では弁天様を祀っていますから、商売繁盛、芸事上達なんかにも御利益がありますので、是非ご参拝下さい」
幸子「そうなんですか……えーと……ところで、一つお聞きしたいんですが」
住職「はい?」
幸子「このお寺、なんだか薄っぺらくないですか?」
住職「いえ、先程も申し上げた通り歴史あるお寺ですが」
幸子「いえ、そうじゃなく。……物理的に。ペラペラしてます。っていうか張りぼてですよね?これ」
住職「ええ、張りぼてですね」
幸子「ボク、お寺の様式とかには詳しくないんですが、こういうものなんですか?基本的にお参りしてきたのは神社ばかりだったのであまり見たことないんですけど」
住職「ははは、まさか。本来はちゃんとした御堂ですよ。実は今、建て直しの工事を行っていまして。その期間中は、こうやって張りぼてで雰囲気を出しているんですよ。」
幸子「そうなんですか。雰囲気。そうですか。……え!?そんなんでいいんですか!?」
住職「問題ありません。しばらくの間は、ここで法事や葬儀も行っていますが、皆さん満足されていますよ」
幸子「そ、そうですか……そういうものなんですかね?……しかし、何でしょう?何だか既視感があるような……なんだかテレビ局のセットで……」
住職「気のせいでしょう。さあ、中を案内します」
幸子「えっ?あっ……はい」
住職「此方の部屋でお待ちください。私は、鑑定していただく骨董品の準備をしてきますので」
スタッフ「一度、テープチェンジに入りますので、輿水さんは休憩をお願いします。ああ、一度台本で流れの確認をお願いします。こちらお使いください」
幸子「はい、ありがとうございます………………あれ?」
幸子(この台本、スタッフ用!マル秘!って書いてありますね……スタッフさんは……行っちゃいましたね。まあ、問題は無いでしょう。ボクもスタッフの一員ですからね!えーと、この後の流れは………………!?)
幸子(あれ!?なんですかコレ!?一番上に赤い目立つ文字でドッキリって書いてありますよ!?)
スタッフ「ん……?あ!?ごめんなさい!間違えました!」
幸子「あっ……(取り上げられた……)」
スタッフ「…………見ました?」
幸子「…………えーと、その……」
スタッフ「……」
幸子「……こ、この後は、鑑定人さんの紹介と、地元の質屋さんの紹介をしてその後で骨董品を調べるんですよね!ちゃんと見てますよ!」
スタッフ「そうですか……ごめんなさい。この台本、少し古いものだったんですよ。今ちゃんとしたやつ持ってきますね!」
幸子「はい……お願いします……」
幸子(うわぁ……これ、絶対ドッキリじゃないですか……うわぁ……気付きたく無かったです……)
幸子(っていうか、やっぱりおかしいかったんですよ!ボクが呼ばれたのも!お寺が張りぼてだったのも!むしろ納得です!)
幸子(どんなドッキリなんでしょう……ば、爆薬とか、仕掛けられてたりしませんよね……?)キョロキョロ
幸子(……!うわ!カメラ!鞄に隠しカメラ!み、見えちゃってますよ!まずくないですか!?)チラチラ
幸子(鞄の向きもあからさまにこっち向いてますし、バレバレじゃないですかコレ!スタッフさんは素人ですか!?)オロオロ
幸子(…………)
幸子(…………何でしょうね。隠しカメラに気付いたの初めてですけど……なんだか嬉しい……)ニマニマ
幸子(…………)チラッ
幸子「~~~っ」クスクス
幸子(ま、まずいですね!これはニヤけちゃいます!カメラに気付いたことに気付かれたらドッキリが台無し!皆さんに迷惑が!顔!顔隠さなきゃ!)ガバッ
スタッフ「そろそろ休憩終わりまーす。準備の方を……あれ、寝ちゃいました?」
幸子「あっ!いえ、起きてます!」
スタッフ「そうですか……ひょっとしてお疲れですか?」
幸子「いえいえ、大丈夫ですよ!」
スタッフ「……顔が引き攣ってますけど……この部屋、何かありました?」キョロキョロ
幸子「っ!い、いいえ。特に何も?」
スタッフ「そうですか?それじゃあ、撮影の準備に入りますので、あちらの部屋へどうぞ」
幸子「はいっ!」
幸子(あの鞄は……持ってきませんよね)チラッ
幸子(うわぁ、どうしましょう!これは思ったより大変なお仕事になるかもしれません!)
幸子(き、気付いてない事にしなくちゃいけませんね!何も知らないボクはアシスタントに集中しますよ!)
ハーイ本番いきまーす!5秒前、4、3……
幸子「さて、それでは住職さんに骨董品を見せていただくわけですが、その前に本日協力していただく鑑定人の方を紹介させていただきます!地元で質屋を営む、美術商のフジキさんです!今日はよろしくお願いします!」
鑑定士「よろしくお願いします」
幸子「フジキさんは美術品の修復なんかもされているようですが、今回の偶像寺の建て直しにも関わられているんですよね?」
鑑定士「はい。解体の時に出てきた、割れた美術品の修復などをさせていただきました。その縁もあり、こうしてご相伴に預かれることになりました。いやぁ、歴史あるお寺の秘蔵の品ですよ!楽しみですね!」
住職「お見せするのは、当たり障りのないものばかりですけどね」
鑑定士「いえいえ構いませんよ。本当に秘蔵の品は、もっと信頼関係ができてからということで。何か力になれるようなことがありましたら、気軽に呼んで下さい」
住職「フジキさんを呼ぶと高くつきそうでいやですがね」
住職・鑑定士「ハッハッハ!」
幸子(ドッキリってことは、こういうのも全部演技なんですよねぇ……役者さんなんでしょうか?)
幸子(周りを見てみても、特に仕掛けのようなものは見当たりませんね……ドッキリって気付いちゃうと、いつ何がくるのかわからないから緊張しますね……やっぱり気付かなければ良かったです!まったく!台本を間違えたスタッフさんもカメラを仕込んだスタッフさんも気が抜けてますよ!)
住職「えーと、それじゃあ最初の品を持ってきてもらいますね」
幸子「はい。それじゃあ、お坊さんが品物を取りに行ってくれている間に、ルールの説明をさせていただきますね!」
幸子「まずボクが骨董品を見て、カワイイポイントをつけます。その後、フジキさんに鑑定を行っていただき、評価額を決めていただきます。そして、カワイイポイントと評価額との差がどれだけ開いたかで、ボクのカワイイへの嗅覚を鍛えるわけです。ここまで、大丈夫ですか?」
住職・鑑定士「…………」
幸子「ちなみに、カワイイポイントとは、骨董品が経てきた時間、歴史などといったものの中にあるカワイさをボクが感じ取り、それをボク自身のカワイさと比較した”幸子指数”(単位は1幸子)をボクのカワイさを市場に流した際の1秒辺りの値段である”幸子プライス”を基準に換算したものです」
住職「ちなみに、そこら辺を考えたのは?」
幸子「当然ボクです!」
住職「……そうですか。よくOKがでましたね」
幸子「まあ、この世にボクより価値のあるものなんてありませんからね!みんなボクを基準にしてしまえばいいんですよ!日本の宝!世界の至宝!全宇宙が求めた至高の美!それがボク!輿水幸子ですから!そう言って説得しました!」
鑑定士「そうですか」
幸子「それではルールも理解していただいた所で、カワイイ骨董品を見せてください!」
幸子(さあ、どんなドッキリがくるんですか!?骨董品が明らかにおかしいとかですかね?それともボクが触った瞬間に割れるお皿とかですか!?)
坊主「こちらになります」
幸子(む……意外と普通に持ってきましたね。触るだけで壊れるようなものならもっと慎重になるハズ……ということは壊れる系ではない。お坊さんの足取りも悪くないですね。お坊さんが割ってしまい、住職さん大激怒系のドッキリでもなさそうです)
坊主「どうぞ」
鑑定人「ほう。壷ですね」
住職「こちらは、建て直しの際に出てきたもので、この寺が出来た三百年前。当時の記念にと、檀家の方から戴いたものだという記録も出てきました。詳細は不明なのですが、この深みのある青といい、全体的な風格といい、さぞ名高い陶工の作なのではないかと思っています」
幸子(……?なんだか底の方に白いものが……模様?いや、ゴミですかね?)
鑑定人「うーむ。確かに感じさせるものがあります。時代を経て深みを増した色といいますか……」
幸子「ほう。確かにカワイイ色をしていますね。大きさも小さめでカワイ…………!?」
幸子(あれっ!?嘘っ!?あれ、値札!?壷の底に値札がついてますよ!?スタッフさん!?)バッ
スタッフ「?」
幸子(気付いてない!?またミスですか!?ああっ!住職さん!そんなに撫で回したら底が!値札がカメラに映っちゃいますよ!?鑑定士さんは……気付かない!方向的にボクにしか見えてないんですか!?)
住職「では、どうぞご覧ください」
幸子「えっ!?……あ、はい!えーと、手袋とかは……?」
鑑定人「茶器や壷など、日常生活で使用するようなものの良さは、素手で触ってこそわかるものですよ」
住職「ええ、そのまま触ってご鑑賞ください」
幸子「そそそそうですかっ!。わ、わかりました。それでは失礼しますねっ!」
幸子(ええ……どうしたらいいんですかコレ……ちなみに値段は……)チラッ
¥-3000
幸子(安いっ!いや、壷の相場とか知りませんけど!あ、これってそういうドッキリですか!?安いものに高値を付けさせるみたいな!?素人にそれをやらせて面白いですか!?っていうかそれってドッキリなんですか!?馬鹿にしてるだけですよね!?)
幸子(嫌だなぁ……そういう汚れみたいなのはボクには似合わないんですよ……でも、安値をつけるのも面白くない……とりあえず、値札を見ないようにしないと……ああ、値段を知っちゃうと、もうそういう壷にしか見えません……ホームセンターとかで売ってそう……っていうかホームセンターの値札ですねこれ。コ○リって書いてあるじゃないですか……これって、見抜いちゃったら逆に面白く……なりませんよね。えぇ……どうしたらいいんですか……)
幸子「む、難しいですね……」
鑑定士「いいんですよ。見て、触れて。感じたことを思うがままに言ってもらえれば」
幸子(そりゃあ、その方が面白くなるでしょうけど!)
住職「ええ。輿水さんの感性で、見たままを教えて下さい」
幸子(ええい!もうなるようになあれ!)
幸子「……す、素晴らしいですね!」
住職「おお!そうでしょう?」
幸子「この色。300年の時間を経て深みを増したかのような青からは、壷が見てきた時代のカワイイが伝わってくるようです!さらに、ボクの小さなカワイイ手にも馴染むこの形!誰の手にも馴染む様に作られているのでしょうね。高い技術、成熟した技!そんなカワイさを感じます」ペラペラ
鑑定士「ほう……」
幸子「それらを考えると…………この壷のカワイさは0.2幸子!カワイイポイントに換算すると1,500カワイイ!今は円高ですので……現在の日本円に合わせると…………でました!ボクの評価額は三百万円です!
※ちなみにカワイイポイントには変動相場制が採用されていますよ!ボクのカワイさは日本だけには収まりませんので!
幸子(やってやりました!やってやりましたよ!)
幸子「さあ!この壷の歴史にあやかり、ボクは三百万円と評価しました!次はフジキさんにも鑑定していただきましょう!」
幸子(正直、値札(三千円)に引っ張られました)
鑑定士「それでは失礼して」
幸子(鼻で笑って偽者ですな。とか言うんでしょう?ボクは詳しいんです。またバカにされる……って、ちょっと!なんでこっちに値札向けるんですか!やめて下さいよ!)
鑑定士「唐津焼の一種のようですね。素朴ながら、味わい深い。良い青だ」
幸子(だから何でこっちに底を見せてくるんですか!?見えちゃうじゃないですか!もっと壷の口とか見てくださいよ!側面を見るにしても反対側を向けて……あーもう!)
幸子「……あ、痛!目にごみが入っちゃいました!」
幸子(なんだか説明口調になっちゃいましたが、これで皆ボクの方を見るはず!そうすればボクの横にいるスタッフさんには値札がバッチリ見えるはずです!)
スタッフ「……うわっやべ!(小声)」
幸子(良しっ気付いた!さあ、今のうちですよ!剥がして下さい!)
スタッフ「大丈夫ですか~?」
幸子(…………もういいですかね?)
幸子「……ふぅ、お騒がせしてしまいましたね。ごめんなさい」
幸子(良し。剥がされてる!……露骨に見ると、気付いていたことがばれそうですね。あまり気にしないようにしないと)
幸子「えーっと、何でしたっけ?……そう!フジキさん!どうでしたか?」
鑑定人「ええ、青唐津の壷のようです。三百年前となると、江戸時代には窯元がたくさんありましたので、箱も銘もない状態で誰の作か特定するのは難しいですが、当時としては珍しい色ですし、釉薬の鉄分が綺麗に作用したんでしょうね。深い青色が美しい。希少性などを加味して高値が付くこともあるでしょう。結構なものを見せていただきました」
幸子「そ、そうなんですか?」
幸子(あれ?意外と高評価ですね。……ああ、上げて落とす奴ですね?)
幸子「それでは!フジキさんがこの壷にお値段をつけるとしたら、おいくらになるでしょうか!?」
デデン!!(効果音
鑑定人「百万円です!」
幸子(……あれ?)
鑑定人「唐津焼とは昔から人気のある焼き物で~~現存する数が~~発色の感じからすると窯元は~~」
幸子(あれぇ?なんだか色々解説してますが、三千円の壷ですよ?それ)
鑑定人「余程の逸品でなければそれほどの高値は付かないんですが、こちらはお寺で死蔵されていたおかげもあり、状態が非常にいいですね。それらも合わせて百万円と評価させていただきました」
幸子(だから、三千円ですって。……あれ?思っていたのと違いますね。ひょっとして、この仕掛け人さんは何も知らない素人の人ですか?鑑定人のフリをした仕掛人……?あらかじめ用意された台本を読んでいるだけ……?ということは、これも全部前フリ……!?)
幸子「……いやぁ、KP(カワイイポイント)との差は二百万!雰囲気に騙されて高値を付けちゃいましたね!」
住職「しかしながら、やはりいいものだったんですね。細かい値段の差はあれど、輿水さんの審美眼も流石ですよ」
幸子「いえいえ」
幸子(つまり、本命のドッキリは別にある……!そして、この壷には百万円の値段が付いた……!すなわち……!)
鑑定人「それでは、壷をお返し……ぐっ!」
幸子(来たっ……!こちらが本命っ……!正座で足が痺れた鑑定人さん……!割れる壷っ……!住職さん大激怒……!これが筋書きっ……!)
坊主「おっと、大丈夫ですか?」
幸子(あれっ!?普通に助けたっ!?読み間違えた!?)
鑑定人「あ、あぶなかった……ありがとうございます」
坊主「ええ、壷も無事ですね。良かった」
幸子(絶対ここだと思ったのに…………ってあれ!?)
鑑定人「あれ……あなた、頭のところ……」
坊主「え?……うわっ!やっべ!カツラがずれてる!?」
幸子「カツラ!?坊主頭のカツラなんてあるんですか!?っていうかカツラでもお坊さんになれるんですか!?」
住職「ああ、宗派によっては剃髪しない事もあるんですよ。今日はテレビの撮影ということで、イメージを守る為にカツラを着用させていただいていますが」
坊主「取り乱しました。お恥ずかしい」
幸子「えぇ……?」
幸子(ドッキリにしたって雑すぎませんか!?本物のお坊さんを連れて来いとまでは言いませんけど、住職さんみたいに頭を剃って……)
住職「実は私もカツラでして」
幸子「住職さんも!?ええ!?全然分かりませんよ!?」
住職「外して見せましょうか?ほら」ベリベリ
幸子「ベリベリ言ってますよ!?っていうか金髪!?しかも長い!?」
住職「格好いいでしょう?普段はコレでやらせていただいています」
幸子「そ、そうなんですか……お寺って意外と緩いんですね……」
幸子(い、いくらなんでも……えぇ……?っていうか、あのカツラって特殊メイクじゃ……)
住職「さて、私と彼のカツラを付け直すのにも時間がかかりますので、少し休憩にしていただいてもよろしいですか?」
スタッフ「あ、はい。……それって、時間かかりますよね?……できればでいいんですが、時間短縮の為に、先に品物を拝見させていただく訳には……」
住職「ああ、鑑定にも時間がかかりますしね。いいですよ。持ってくるように伝えておきます」
坊主「それでは、失礼いたします」ペコリ
幸子(……なんかもう、よく分かりませんよ……)
~休憩中~
幸子「……ボク、お坊さんって全員頭を剃らなきゃいけないんだと思ってました……」
鑑定人「剃った方が楽だから剃っているだけで、常に剃っている必要はないらしいですよ。宗派によって違いはあるでしょうが」
幸子「へぇ……そうなんですか」
幸子(絶対嘘です……あの住職さんとか、どこかのライブハウスにでも居そうな風貌でした……とにかく、絶対お坊さんじゃない……)
鑑定人「まあ、カツラを被ることはあまり無いでしょうけど…………おや、誰か来ましたね」
小坊主「……失礼します。次に見ていただく品物をお持ちしました」
幸子「これは……包丁ですか?」
小坊主「いえ、小刀です。これも、昔この寺に持ち込まれたもののようで、由来が分からない物です」
鑑定人「ほう。これは手袋を用意したほうがよさそうですね……それでは、拝見します」
小坊主「はい。お願いいたします」
幸子「……あれ?ボクからじゃないんですか?」ヒソヒソ
スタッフ「撮影の時は、輿水さんから見ていただきますが、先に時間がかかる鑑定だけ終わらせてしまいんですよ」ヒソヒソ
幸子「そうですか……」
鑑定人「ふむ……これは……ほうほう……」
鑑定人「保存状態が悪かったせいか、錆が浮いていて刀紋が見えない。女性用の護身用の短刀のようですが……」
幸子(それにしても、中々終わらないですねえ……未だにどういうドッキリなのかよくわからないですし……)
幸子(ドッキリだって分かっちゃうと、緊張して疲れますし……早く終わりませんかねぇ……)
バンッ!(襖が開いた音)
住職「何 を し て い る 貴 様 ら!」
幸子(あ、終わりそう)
住職「っ!!早くそれを離さんか!」
鑑定人「わっ!ちょ、ちょっと!危ないですよ!」
幸子(誤ってあの刀が刺さってえらい事になるとかそういう奴ですかね?刃が引っ込む刀と血糊のやつ。前にやりましたよ?)
鑑定人「そ、そんなに押されたら……うわっ!」
幸子(あ、落とした)
住職「何!?し、しまった!アレが折れてしまうなんて!?」
鑑定人「な!そんな馬鹿な!いくらなんでも、畳に落とした程度で折れるはずが……折れてない……」
住職「え?」
幸子(んー?)
住職「本当だ……折れてない……」
鑑定人「ええ……大丈夫だったようですね……」
幸子(ああ、ここで折れるはずだったんですね。小道具さんのミスか何かですかね?)
住職「……」
鑑定人「……」
幸子(ど、どうするんでしょうか……)ドキドキ
住職「は、早くそれをこちらに渡しなさい!」
鑑定人「ま、待ってください!落ち着いて!」
幸子(続けた!?)
鑑定人「うわっ!」
幸子(そしてまた落とした!?っていうか叩き付けた!?)
住職「良し!折れた!」
幸子(良しはまずいんじゃないですか!?)
住職「ああ、いや。……これが折れてしまうとは……何ということだ……」
鑑定人「……何がどうなっているんですか!私はただ頼まれたものを見ていただけで……」
住職「なんですって!?あれは倉に安置してあったはず……お前が持ち出したのか!?」
坊主「は、はい!」
幸子(普通に進めてますよ……何なんですかこのドッキリ……ぐだぐだじゃないですか……)
住職「馬鹿者!この寺にいながら、あれが何なのか知らないのか!」
幸子「……えーと、一度落ち着いてもらえませんか?状況がよくわからないんですけど……」
幸子(多分、あれでしょうけど)
住職「……実はあの短刀は、除霊の依頼でこの寺に持ち込まれたものでして……」
幸子(でしょうね。心霊ドッキリですねコレ)
住職「抜くだけ、触れるだけでも霊障が起きるような代物で、我々の手には負えなかったので倉で安置して対策を練っていたのですが……」
幸子「あれ?このお寺って、手に負えないような代物は引き受けないんじゃ……?」
住職「……あのまま依頼人が持っていたら危なかったんですよ。緊急の措置でした……おい、お前……なぜアレを持ってきた」
小坊主「え、ですから住職さまが何か骨董品を持っていくよう言われましたので、見映えが良さそうなものをと思いまして……」
住職「あれが危険なものだということくらい……いや、お前は先月来たばかりだったか。……知らせていなかったこちらの落ち度か……」
幸子(なんでそんな危ないものが置いてある倉が出入り自由なんですか……展開に無理がありますよ……刀も無理矢理折りましたしね!)
住職「何はともあれ、あの刀が折れた以上、皆さんも危険です。ですが我々が責任を持って除霊しますので、ご安心ください」
幸子(まあ、そうなりますよね……付き合うのやだなぁ……)
住職「……刀を折ってしまったフジタさんと一番近くにいた輿水さんは特に危険ですね。……まずお二人の除霊から始めた方が良さそうだ。ひとまず、場所を変えましょうか」
幸子「え?ここだとまずいんですか?」
住職「ええ。いざという時に逃げやすいように、広くて出入り口の多い部屋の方がいい」
幸子(そっちに色々仕込んであるんでしょうね……)
鑑定人「……実感が沸きませんが、なんだか本格的ですね」
住職「そりゃあ、本職ですから」
幸子(たぶん本職じゃないです)
住職「慎重ににいきましょう。お二人は着いてきてください」
住職「ここならいいでしょう」
幸子「…………」
幸子(さっき休憩した部屋じゃないですか……ああ、あの鞄もある……)
住職「それでは、除霊に必要な道具などを準備してきますので、なるべく動かないようにしてお待ちください」
幸子「動かないように……?」
住職「ええ、霊障などが起こった際、パニックになって飛び出すのは危険です。この部屋の中なら余程のことが無い限り危険は無いので、何かを見たり聞いたりした場合も絶対に動かないようにしてください」
幸子(完全にフリじゃないですか……)
住職「それでは……」
幸子「……いっちゃいましたね」
幸子(隠しカメラ入りの鞄は部屋の奥……押入れの方を向いてますね……これは向こうに仕掛けがあるはず……そちらに座りますか……嫌ですけどね……)
鑑定人「まったく、大げさだなあの住職さんも。幽霊なんて居るはずないじゃないか」
幸子「あれ?信じてないんですか?」
鑑定人「ええ。仕事柄、曰くつきの骨董品なんかも見てきましたが、幽霊なんて一度も見たことありませんからね。逆に、輿水さんは信じているんですか?」
幸子「ええ、まあ」
幸子(小梅さんと一緒に居ると、あの子の気配とか感じたりしますからね……)
鑑定人「霊障だとかいう物も、すべて化学で解明されているんです。大丈夫ですよ」
幸子「ははは……」
幸子(もう全部フリにしか聞こえませんよ……)
鑑定人「住職さんもどこまで行ったのか……中々帰ってこないな……わっ!?」
ガタガタガタガタガタガタ
幸子(やっぱり仕掛けてあった……押入れの襖がすごい揺れてる……)
鑑定人「な、なんだ!?地震か!?……いや、部屋は揺れてない……?」
幸子「すごい勢いで揺れてますね……」
ガタガタガタガタガタガタ
鑑定人「き、君の方が近いんだ……調べてみてくれないか……」
幸子「え、はい……」
幸子(おっと、つい返事しちゃいましたけど、ドッキリなんですし怖がったほうがいいんですよね?うん、その方がそれっぽいです)
幸子「い、嫌ですよ!こういう所で年下の女の子に調べさせるとか正気ですか!?フジキさん、お化け信じてないんでしょう!?」
鑑定人「そうなんだけど……恥ずかしながら、ビックリして腰が抜けて……」
幸子「ええ……?」
幸子(やっぱりコレ、ボクが調べないと進まないやつですね。わかってましたけど!……なんかビックリする仕掛けとかしてあるんでしょうか……そういうのは苦手なんですけど……)
ガタガタガタガタガタガタ
幸子「わ、分かりましたよ……それじゃあ、調べます……ん?」
ガタガブータガタガタブーガタガタ
幸子(なんですかねコレ……?襖が揺れる音に混じって何か聞こえる……?)
ガタガタガタガタガタガタ(ブーンブーンブーン)
幸子(ああ、バイブの音ですね。これで襖を揺らしてるんですね聞こえちゃってるじゃないですかバレバレじゃないですか!またですかスタッフさーん!!リハとかやってないんですかね!?気付いてくださいよこんなの!?)
鑑定人「こ、輿水さん……?大丈夫かい……?」
幸子「えっ?あ、はい。ちょっと怖くて……」
鑑定人「そうだよね……申し訳ない……」
幸子「ああ、はい。それじゃあ開けます……」
ガタガタ……ガタ……
幸子「……あれ、止まっちゃいました……」
鑑定人「ああ、手を伸ばした瞬間に止まったね。なんだったんだ一体……」
幸子「一応、開けておいた方がいいですよね?」
鑑定人「そうだね……いや、もう動けるようになったし、中学生をこれ以上危険な目に合わせる訳にもいかない。ここからは私が調べるよ……輿水さんは下がっていてくれ」
幸子「あ、いいんですか?それじゃあお願いします」
鑑定人「なんかやけにあっさりしてるね」
幸子(そういう流れなんでしょう?)
鑑定人「……よし、それじゃあ開けるよ……せいっ!」スパァン!
幸子(わぁ。思い切って開けましたね……)
幸子「ど、どうですか?中に何か……?」
鑑定人「……」
幸子「フジタさん?」
鑑定人「……」ガタガタガタガタ
幸子(ひぃっ!?すごい震えだした!?)
鑑定人「う、うわぁああぁぁあああぁぁ!?」ダダダダダダ
幸子「わっ!?」
鑑定人「あああああああああああ!?」
幸子「えっ!?ああっ!?」
幸子(何か急に震えだしたかと思ったらすごい勢いで逃げていきました……)
幸子(それでも押入れの襖と出口の障子はちゃんと閉めていくんですね……うわぁ、びっくりしたぁ……)
幸子(随分と真に迫った演技でしたね……やっぱり俳優さんなんでしょうか?)
幸子(おっと、ボクもちゃんと怖がらなきゃ……カメラがこっちを向いてますしね……)
幸子「わー、フジタさんが逃げてっちゃいましたー。いったいなにがー?」
幸子(あれ……なんか怖がる演技難しい……フジタさんの演技の迫真っぷりに頭が働かなくなってます……!?)
幸子(これはマズイですね!今はおそらくドッキリの一番いいところ……!ここで怖がれないアイドルなんて……!)
幸子「え、ええと。動くなっていわれてたのにー。カワイイボクを一人にするなんてー。大人失格ですねー」
幸子(切り替えなきゃ、切り替えなきゃ……!怖がる演技に必要なもの……何かないですか……?)
幸子(ボクは今一人……!恐ろしい仕掛けで畳み掛けるなら今のハズ……!ビックリ系……!ビックリ系の奴で頭をリセットさせて……!頭が真っ白になるやつをください……!)
ペタペタペタペタ
幸子「ひゃっ!?」
幸子(よし来ました!障子紙に手形!ベタですがシンプルに怖いやつ!どうやって付けてる……いや、今は怖がるのに集中しないと……!仕掛けを調べるのは後!)
幸子「わっ!?わわっ!?て、手形が……窓に!窓に!」
幸子(いや、窓じゃないですね……まあいいや。なんだかパニック起こしてるみたいでそれっぽいでしょう)
幸子「い、いやぁ……たすけて……」ガクガク
幸子(よしよし……!調子が出てきましたよ……!そうそう、こんな感じですよ……!事務所で心霊現象が起きた時は大体震えてましたよボク!いいです……経験が演技にリアリティを与えてくれています……!ありがとう小梅さん、ありがとう輝子さん……!お二人との経験のおかげで、ボクは成長出来てます……!)
幸子「ひっ……!こ、今度は障子に人影が……!?」
幸子(これもシンプルに怖いやつですね……!怖いやつですよ……!怖いやつのはずなんですけど……!)
幸子(影を作るのにスポットライトを使ってるんですね……人影の周りが光ってますよ……)
幸子(いや、これはこれで……後光が差している仏様みたいですね……?そういう演出なんでしょうか……?)
幸子(あ、違いますね。なんかグルグル部屋の周りを回りだしました。ホラーの方の人影ですねこれ。リハーサルとかされてないんでしょうね)
幸子(それにしたって、せめてもう少し練習を……!ああ、スポットライトの人早いです……!影の人はゆっくりしか動けないんですから、ライト係の人がしっかり合わせてあげないと……!ああ!ライト!段々下がってきてますよ!)
幸子「……」ガタガタ
幸子(一応、怖くて声も出せない感じに演技できてますかね……?これだけ畳み掛けて来てるんですし、そろそろクライマックスっぽいですけど……)
ブイイイイイイイン
幸子「へっ?」
ガガガガガガガガッ!
幸子「わっ!?うわぁ!?」
幸子(なに!?えっ!?なんですか!?障子が破られて……!?チェーンソー!?)
ホッケーマスク男「BOOOOOOOO!!」
幸子「なんでいきなりジェ○ソンが出てくるんですか!?お寺ですよココ!?大体、ジェ○ソンはチェーンソーを使わないって小梅さんが言ってましたよ!」
幸子(ああ、とうとうツッコんじゃいました……あれ?)
ホッケーマスク男「」テッテレー
幸子「か、看板……?ドッキリ大成功?なぁんだ。ドッキリだったんですね!」
幸子(せ、セーフ……いいタイミングで終わってくれましたね……)
ホッケーマスク男「ふぅ……」ヌギヌギ
幸子「ああ、住職さんでしたか。もう、ビックリしましたよー」
住職「いやぁ、お疲れ様です。どうでした?」
幸子「ええと、怖かったです。最後の方とかもう、腰が抜けるかと思いましたよ」
幸子(少し、余裕がありすぎますかね?いや、心霊現象がドッキリだったという安心感を出すにはこれくらいの方が……)
住職「いえ、そっちの事じゃなくて」
幸子「え?」
住職「今回の企画名なんですけど……”アイドル輿水幸子は、バレバレのドッキリに乗っかる?乗っからない?”という……」
幸子「…………?」
幸子「……」
幸子「!?!?」
住職「どこら辺で気付きました?やっぱり、お寺の名前ですかね?あからさまでしたからね。なんですかね偶像寺って」
幸子「え!?いや……えぇ!?」
住職「おや、違う?それでは張りぼて?とりあえず、台本の所では間違いなく気付いていたと思いますが……」
幸子「……あれも仕込みですか」
住職「ええ、当然。全部仕込みですよ。そもそもお寺じゃないですからね、ここ。セット用の張りぼてを持ってきて、古くていい感じの民家に被せてあるだけです」
幸子「……おかしいとは思ったんですよ。……おかしいと思ったのは台本を渡された時です。確信したのはカメラを見つけた所ですかね……ぽつんと置いてある鞄からあからさまにカメラが覗いてましたからね!」
住職「随分とうれしそうにしてましたよね」
幸子「うう……ドッキリでカメラに気付けたの初めてだったんですよ……」
住職「まあ、わざと気付いてもらえるように置いてあったんですけどね」
幸子「ぐっ……」
住職「張りぼてのお寺には、違和感を感じられなかったんですか?」
幸子「いや、おかしいとは思いましたよ?でも、建て替えとかでそういうこともあるのかなと思うじゃないですか!」
住職「ありませんよ……誰が張りぼてのお寺に参拝するんですか……」
幸子「……あれ?……ということは、あの壷の値札とかもわざとやってたんですか!?」
住職「もちろん。輿水さんが気付かれた後は、なるべく底面をみせるようにしていました」
幸子「ぐぅ……見ないように頑張ったのに……」
住職「スタッフに気付かせる為に体を張った辺りはファインプレーでしたね。周りに対する気遣いが見て取れました。……あれが無かったら鑑定人が自分で気付いて回収する予定だったんですが」
幸子「そうだったんですか……ちなみにですけど、住職さんとフジタさんって普段は何をされている方なんですか?まさか本職の方じゃないですよね?」
住職「ええ、もちろん。普段は俳優業をしてます。金髪ロン毛の住職は流石にいないでしょう。ちなみに坊主頭は特殊メイクです。鑑定人のフジタさんも同じく俳優ですね」
幸子「ああ、やっぱり。刀を取りに飛び込んできた辺り、迫真の演技でしたね」
住職「でしょう?芸暦だけは長いので」
幸子「演技といえば、あの折れない刀ですよ。何事も無かったかのようにやり直してましたけど、あれもわざとですか?トラブルとかじゃなく?」
住職「ええ、もちろん。軽く落としたくらいでは折れない程度の強度がある小道具を使いました。面白かったでしょう?」
幸子「……ツッコミたくて仕方が無かったです」
住職「おや、随分と静かにしてませんでしたか?」
幸子「何か喋ったら流れでツッコんじゃいそうだったんですよ!明らかに折る気満々で叩きつけてましたからね!」
住職「はっはっは」
幸子「あとは……そうそう、最後のスポットライト!」
住職「ああ、いい画がとれていると思いますよ」
幸子「絶妙に連携が取れてませんでしたからね……正直、襖を開いて注意してあげようかと思いましたよ」
住職「そうなる前に突入する手筈になってましたからね。いやぁよかったよかった」
幸子「ああ、それと押入れの襖が揺れたときにブンブンって音がしてたじゃないですか?あれも?」
住職「ええ、もちろん計算の内です」
幸子「まったくもう……勘弁して下さいよ……」
住職「それでは改めて、輿水さん。今回のドッキリ、どうでした?」
幸子「とにかく疲れました……もう二度とやりたくないですよ……」
住職「それでは……ドッキリ大成功!!」
チャンチャン♪
輿水幸子「骨董品鑑定のアシスタントですか?」 改め モバP「幸子にバレバレのドッキリ仕掛けてみた」
おわり
幸子「……ああ、忘れてた。手形あったじゃないですか?あれってどういう仕組みで浮かび上がってるんですか?」
住職「手形?」
幸子「ええ、あれですよ。障子に浮かび上がったやつです。手形がブワーって」
住職「……障子……ですか?」
幸子「はい。そこに………………あれ?」
住職「……なにもありませんが」
幸子「……? …………ああ、さっき破かれた障子の下に…………ない……」
幸子「……あれ?」
幸子「…………あれれぇ?」
完!
くぅ疲!
デレステにて現在、イベントKawaii make MY day!が開催中です!
幸子は出ないがな!騙されたぜ畜生!
HTML依頼出してきます
乙
乙ー
>>6のとこ、300年の歴史で今17代目ってことは
20年に1回くらい代替わりしてるってことだしな
フジタだのフジキだの
しっかりしてほしいですぜ
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