✝ 前 世 覚 醒 せ よ ✝
_______________________________________
「 --- 運命って。前世って。一体なんなんだ? 」
_______________________________________
【注意】このSSはフリーゲーム メイジシリーズ三作目「メイジの転生録」と「Fate/GrandOrder」のクロスオーバーです。
メイジシリーズを知らない方には解らない単語及びキャラクターが飛び交うので悪しからず。
運命的に少しでも気になったのなら、「メイジの転生録」をDLしプレイする事をお勧めします。
なお当方は非メイジであり、にわか仕込みな知識しかないので狂いメイジの方々からすると「ん?」となる事もあるかと思いますが、如何か見守って下さると嬉しく思います。
_______________________________________
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1499702520
……
…
.
-- 【人理継続保障機関 フィニス・カルデア】
((( … )))
「う、…んー…」
((( …て )))
…
((( 助 け て !!! )))
…
「わ、ッ!?…て、何だ、夢か」
頭の中で声が反芻する。まるで誰かが助けを求めて居る様な声だった。だが、起きた彼は其の声に聞き覚えは無い。
彼の名は藤丸 立香。人理修復と言う使命を背負った、若きマスターである。
彼の片手の甲には、赤く輝く令呪がある。其れは英霊(サーヴァント)を使役する主の証。
「…やけにリアルな夢だったな。まさか予知夢…?」
額に浮き出る冷や汗を、令呪の灯る手の甲で拭ってはベッドから降りようと ---
「先輩ッ!!」
「うわッ!?」
そうした矢先、彼の部屋の扉を荒々しく開き声を張り上げる眼鏡の少女。
「ど、どうしたんだよマシュ。そんなに慌てて」
マシュと呼ばれた彼女はひどく慌て、走って来た様子だ。
「実はッ、特異点が! …いえ、兎に角、管制室に来い、との事です!」
そう叫ぶや直ぐ、彼女はベッドから降りようとしていた彼に移動を促した。
「まさか…よし、行こう!!」
_______________________________________
-- 【カルデア 中央管制室】
「おぉ、来たね。其の様子だと良く寝てたみたいだ。無理もない、ついこないだまで ---」
「うん、御早う…で、一体どうしたの? ダヴィンチちゃん。」
レオナルド・ダ・ヴィンチ。通称ダヴィンチちゃん。
元は男だが、英霊として召喚される際に自らの容姿をモナリザめいた姿にした天才(へんたい)である。
「うん、今回は…日本のある場所で何やら反応を検知してね。特異点と言えるのか如何か微妙なんだ。」
「微妙…とは?」
マシュが問い掛ける。
「いやね、こう…魔力が物凄く蠢いているんだ。だが、どれもこれも何かがおかしい」
「何かって何さ」
「…さぁ、私でも良く分からないよ。だから、今回も君に頑張って貰おうと思ってね」
ゆるく首を横に振った彼…否、彼女は立香の肩を叩き、笑顔を見せる。
「場所は『宿命ヶ原』と言う街だ。前々から魔術師が良く集う街だと思って居たけど…此の魔力量は異常なんだ」
目を伏せ、悩まし気に唸る彼女の長い説明を聞き流す様に欠伸を漏らす立香。
「 --- そんじゃ、取り敢えず行って原因を確かめてくればいいんだよね? 」
説明を続けているダヴィンチにとそう告げれば、レイシフト…特異点に赴く為に、コフィンにと入る。
「…兎に角、宿命ヶ原は今や未開の地と言っても良い。何があるか解らない…十分に気を付けてくれたまえ」
「大丈夫です。私が、絶対、守りますので!!」
何時の間にやら、戦闘形態にと礼衣を変えているマシュが意気込み、彼に続く様にコフィンにと入っていく。
---- 藤丸 立香。此れは彼の運命を巡る人理録。
~~~~~~
--【宿命ヶ原 河川敷】
「…ぅ、…此処は…」
ふと目が覚めると、立香とマシュは河原にと寝ていた。二人は徐に立ち上がり、辺りを見回す。
「…どうやら、レイシフトに成功した様です。此処がダヴィンチちゃんの言っていた【宿命ヶ原】なのでしょう」
そして彼女がカルデアへと通信をしようとすると ---
..
.
--- 突 然 の 稲 妻 !! ---
.
..
「危ないっ!!」
「何だぁッ!!?!!」
立香へ目掛け飛来せし稲妻をマシュが盾で受け止める!
そして稲妻の飛んできた方向にと二人は目を向ける。
其処には ---
「 いよォーう…てめェ、見ねぇ顔だな。俺の "気丈螺旋" で増幅した雷を防ぐたぁやるじゃねー… 」
蒼い髪。赤い瞳。片頬に逆三角のタトゥー。そして体に纏った雷。
「な、何だお前はァー!?」
突然現れ、突然攻撃してきた彼にと、立香は捲し立てる様に叫ぶ。
「うるっせェよクソ虫が! …てめェら、何者だよ。大方徘徊者って訳でもねーだろ?」
「…先輩、どうやら彼は此の街について詳しそうです。其れに…あの力。一般人、と言う訳では無さそうです」
「嗚呼、確かに。…其処のあんた。俺は藤丸 立香。こっちはマシュだ。俺達は此の街について調べるために来たんだ!」
立香はマシュの前にと歩み出ると、彼に向かい自分達の名前。そして目的を告げた。
「…あァ? 調べる? はっ、メイジ気取ってんじゃねェーぞ。其処のオンナはやるみてぇだがよ」
「メイジ? …メイジって、何だよ」
聞き慣れぬ言葉に首を傾げる立香。
「んだ、なんも知らねェのか。…クフフゥ! 俺は絶叫ヶ原 武羅卯(ぜっきょうがはら ぶらう)! 破壊のメイジだ!!」
稲妻を揺らしながら、大きく腕を広げ大仰に名を名乗る。
「話は終わりだ。…なに、俺の運命が、オマエを…」
そして強引に会話を切り、改めて彼らにと向き直り
「 デリートるって事だったって事だよ !!! 」
更に増幅した稲妻を、彼らに向け放った。
「くぅ、っ…!!」
盾を突き立て、稲妻から立香を守るマシュ。彼女の腕には時折、盾を伝い電流が迸る!
「はっ! 耐えるじゃねーの…けど守ってばっかじゃ俺ぁ倒れねぇぞォー!?」
底が見えぬ程に稲妻は段々と勢いを増し、彼女に襲い掛かる。
そして、其の時 ---
..
.
--- 突 然 の 交 流 !!! ---
.
..
突如、立香とマシュの後ろから雷電が弾け飛ぶ。
其の雷電はブラウの稲妻を押し返し、電流を返却した!
「ヘウッグ!?」
反撃を受け怯んだ彼は、其の場にと膝を着いた。
「この雷は…まさか!」
どうでもいいがフェイトの綴りが間違ってんのは何か意味があるのか?
「そう! 私だ!!」
立香。マシュ。ブラウ。各々の視線は現れた人物にと向けられた。
「私がニコラ・テスラ…。…天才だ。」
掌から青白い電気を発しつつ、現れた彼。
彼は立香の使役する英霊の一人であり、彼もまた、雷を操る者である。
「クッソッ…! この、やろァ…ッ!!」
雷撃を受けたブラウが立ち上がり、彼らを睨み据える。
そしてテスラは彼を諭す様に、こう告げた。
「…直流でも、交流でも無い雷電を操る者よ。同じく雷電を操る者として忠告するが、…一人では些か不利ではないかな?」
そして、立香とマシュも彼にと目を向ける。
「クソァ…確かにフクロにされんのは勘弁だぜ…」
決して愚かではない彼は、悪態を吐けば観念した様に目を伏せる。
「…そう言えば、テスラ。どうして此処に?」
ふと、唐突に登場した彼にと立香は訊ねる。
「何。マスターを守る為以外に理由はあるまい。…ふむ。それにしても私だけではなく他の者は来て無いのか。…此の街の何処かで徘徊しているのやも知れん」
そして、テスラはブラウにと向き、歩み寄って行く。
「若き雷電よ。案内を頼めるかな?」
そして彼に向け片手を差し出した。
>>6
メイジシリーズ特有の態とな誤字です。
ちょくちょくそう言った言葉や単語が出て来ます!
「…」
ブラウは応じる様に片手を伸ばし ---
「バァアアアアアカ!! 誰がてめェらの案内なんざすっか! てめェらの運命は又今度消してやんよ!!」
そして彼にと御返しと言わんばかりに思い切り増幅した稲妻を浴びせた。不意打ち故か、テスラは身を怯ませて仕舞う。
「あっ! テスラ、大丈夫ッ!?」
立香はスタン状態にと陥った彼に駆け寄り、其の隙にブラウは離脱して行った。
「ぬぅ…不覚。矢張り交流以外は信用ならんな…」
「まぁまぁ、俺達が助かっただけでも儲けものだよ」
立香は怨み事を呟く彼を宥める様に微笑み掛けた。
「…ですが先輩、情報は無しのままです。先程の彼を探さなくてはいけないのでは…?」
マシュがそう訊ね、立香は悩まし気にうぅんと唸った。
「そうなんだよな…いや、取り敢えずはカルデアと通信をしよう」
そして一先ず、先程中断してしまった通信を再開する事にした。
『やほ。やっと繋がったみたいだね。首尾はどうだい?』
通信越しに管制室に居るレオナルドの声が聞こえる。
「どうもなにも、前進無し。いや、まぁテスラと合流出来たしありっちゃありなんだけど…」
『何だ、じゃあさっきから通信出来なかったのは彼のせいなのかな? 物凄い電磁場でろくに音声も拾えなかったぞ?』
「あぁ、其れは多分…えぇと、ダヴィンチちゃん。メイジって知ってるかな?」
事情を説明する前に、立香は気になった言葉を訊ねる。
『メイジ? 「Mystic Aurapower Generating Evolseed」…略してMAGE。平たく言えば君と同じ魔術師さ』
「魔術師…確かにあれは、…」
『何だ、其れじゃあ君はメイジと遭遇したのかい? どんな?』
「どんなって --- 」
「あれは悪鬼エジソンの様な男だ! 私の交流を浴びてなお動き、且つ私も痺れさせた、雷電を操る者である!」
彼の通信にと割り込むテスラ。余程逃げられたのが苛立ったのか、其の声は少し荒い。
「うわッ、お、落ち着いて…! …ふぅ、兎に角そう言う事。名前は…ブラウ、とか言ったっけ」
『成る程、雷を操る魔術師か。…其れで、ソイツは?』
「其れが…逃げられちゃって」
苦笑いをしつつ、申し訳なさげに報告する。
まさかのFAIT/GO
がんばれ~
これは俺得な組合わせ
期待
気やヶったか…
シリーズ風に言えばメイジの人理録かな?とりあえず続き期待
『そうか…だが、彼はメイジの中でも高位の様だね。幾分か魔力が残留している。其処のニコラ・テスラ君に、彼の魔力を追わせられないかい?』
「テスラに?」
そして立香は、彼の方を見遣る。
「……いいかな?」
「何故私が? …アレとは金輪際関わりたくないものだな。あの雷電が交流であればまだ許せるが。まるで『おっと電気が滑った』と言わんばかりのあの不意打ちも…」
心底嫌そうな顔をし、此れでもかと言う程に顰められた顔からは彼の気持ちが顕著に出ていた。
「そうは言っても、…」
『頼むよ天才君。こっちじゃ上手く反応を拾えないんだ』
しかしテスラは断固として拒む姿勢である。
「…先輩、…」
「ん? …あー、うん。そうだね」
マシュからの囁きに頷いた立香は、両腕を組み拗ねた子供の様に立つテスラにと向き直った。
「テスラ、取り敢えず追うのはやめよう。…無作為に追っても、勝てるかどうか」
わからない、そう言い掛けた所、テスラは伏せていた目を開き彼を見る。
「良いだろう! 我が神の雷電に挑もうとせんあの輩に本物の交流を見せてやろうではないか!!」
あっさりと立香の挑発に乗り、先程敗走したブラウの魔力を辿る事を決意した。
『…面倒くさいんだか、扱いやすいんだか』
通信越しにダヴィンチがそう漏らした。
--【宿命ヶ原 繁華街】
「ふむ…こっち、いや、…悪いがマスター。あの謎電気少年の魔力反応は此処で途切れている」
「そう、か…。でも、手掛かりはあるに越した事は無いよ。有難う」
立香は肩を竦めたテスラにと感謝を述べれば、辺りを見回した。
「…おかしいな」
ぽつりと呟いた彼にと、マシュが首を傾げた。
「おかしい…って、どうかしたんですか?」
立香は更に見回した後、考え込む様に唸った。
「いや、こんな街なんだし…人が一人も居ないのはおかしくないかな」
彼の言った通り、街の建物の明かりは灯り、ネオンライトが道を照らしている其処には、誰も居ないのである。
「皆さん、建物の中に居るのでは --- 」
『待った! 話の途中で悪いが、敵性反応だ!』
突然の通信に彼らは互いの背を合わせ、敵の影を探す。
「「「…▂▇▅▂▅▇█ …」」」
路地裏からぞろぞろと、彼らを囲む様に出て来たそれら。
赤く、血に濡れた様な色をした犬。大きな目玉をぎょろりと動かす、単眼の魔物。そして形容しがたいキメラ。
何処に隠れていたのか、と疑いたくなる程の数のモンスターが姿を現し、彼らを取り囲んだ。
「こ、此れは途絶必死…何とか撤退しないと、このままじゃ逃れられずに死ぬ!」
「先輩ッ!! 後ろに!!」「ははははッ!! 余程痺れたいと見える! 良かろう、我が雷霆に慄くが良い!!」
マシュは飛び掛かる魔物を盾で打ち払い、テスラは這い寄る魔物を雷撃で穿つ!
しかし二人が幾ら手練れであろうと、限界はある。其の証拠に ---
「っ! …く、こう言う時、アーラシュが居てくれたら…!!」
段々と押されゆく彼らが見える。遂に仲間共々建物の壁際にと追い詰められた立香は己の運命を嘆き、打開策を考える。
幾ら考えようと、英霊の数が少なければ選択肢も少ない。
「--- … 万事休すか…!」
立香は目を硬く瞑る。
だが、
運命は、
宿命は、
因果は!
彼を、見放さない!!
.
「 ゴ ッ ズ ・ ブ レ イ ク !!!! 」
.
..
突如、爆発音が鳴り響き迫り来る魔物を吹き飛ばした!!
「これは流石にFAIRとは言えないな。助力しよう、謎の徘徊者よ」
爆発に巻き込まれ損ね、動き出した魔物達にと次々に剣が突き刺さる!!
「な、何だッ!!?!?」
魔物達は瞬く間に塵と肉塊と化した。そして立香は、爆発による砂塵の中から現れし三人の人物にと目を遣った。
「やぁ、驚かせてしまったかな。だがNO PROBLEM。私達は君らに危害を加えたりはしないさ」
一人。其の青年はスーツめいた衣服を着ており、朽ちた魔物死体より剣を抜いた所を見るに先程の剣戟は彼の業の様だ。
二人。両手に刻印を宿し、些か疲れの見える表情をしている少年。相当魔力を消費した故か。其れを鑑みるに最初の爆発は彼の業の様だ。
三人。緑色の服に身を包んだ、変哲もない少女。彼女は道に転がる魔物を踏みながら立香達にと近付いた。
「…貴女、怪我してる。少しじっとしてて」
少女はマシュにと掌を向け、呟く様に唱えた。幻覚か否か、少女の背に翼が見える。
「ラスト・ヒーリング…!」
すると、魔物による掠り傷がみるみる内に治っていった。
「あ、…有難う御座います!」
マシュは怪我を治してくれた彼女にと礼を述べる。
「…所で、助けて貰っといて不躾だけど…君達は…?」
未だに状況を読みこみかねている立香は、現れた三人を順々に見ながら訊ねた。
>>11 ~ 14
読んで頂き有難う御座います…! 情報擦り合わせ等の為、ゲームをプレイしつつゆっくりと投下していくので、気長に待って居て下さい!
おおおこれは面白い!
BGM聴きながら読むと捗るゾ
突然の騎士
あ
あ
あ
あ
ああ
あ
あ
ああ
>>22 ~ 25
定期的に更新するので、保守は必要ないです!
あとコメントする際にはE-mail欄に「sage」を付けて下さると助かります。
暫くsageで進行する事にします。ある程度投下出来たらまたageます!
いや、保守じゃなくて荒らしでしょ・・・
メイジの転生録wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwこれは期待wwww
「ん? 嗚呼、此れは申し訳無い。名も名乗らぬ者を信じろと言うのは多少無理があったかな?」
剣に付着した血を振り払いながら、好青年らしい微笑を浮かべた男が歩み寄る。
「私はファタリテート=エクスハティオ。99位の騎士、と呼ばれているよ。…ほら、君達も」
エクスハティオ、と名乗った青年に促されるまま、両手に刻印を宿した少年が歩み出る。
「俺は魔黒 理人。…まぁ、ただのメイジだ。リヒトって呼んでくれや」
粉末めいた物を口にしながら、名を名乗る。次いで、マシュの怪我を癒した少女が立香にと顔を向けた。
「私は…狩流 玲音。レイネ、で構わないわ。…それで、貴方達は…」
現れた三人が名乗り終えると、今度は立香達が名乗り出した。
「俺は藤丸 立香。こっちはマシュ。…んで、それがテスラだよ」
リヒトは纏めて紹介を済ませた彼を一瞥し、其の視線をテスラにと向けた。
「…ん? 私に何か気になる所でもあるかな? 少年よ」
視線を受けテスラが首を傾げる。
「あぁ、いや…何だかオッサン、アイツに似てんなって」
「…あいつって?」
嫌な予感を感じつつも、立香は聞かずには居られなかった。
「えっとな、ブラウって奴なんだけど」
最期まで言い切る直前、テスラは突然飛び起きた猫の様に反応を示した。
「ほう、少年はあの謎電気少年と知り合いなのかな?」
「え、ぇ? …何だ、もう会ったのか。其の様子じゃ、メーワクかけたろ」
やれやれと肩を落としつつリヒトは項垂れた。
「いや、まぁ…突然現れて攻撃してきたから、反撃しちゃったんだけどさ」
まさか彼の仲間だったとは、と申し訳なさげにする立香にとエクスハティオが声を掛ける。
「いや、何ら問題は無い。此方こそ悪かったね。…さて、自己紹介も終わった事だし…」
『ああ、そろそろ如何動くか話しておきたいね』
痺れを切らしたかの様にダヴィンチが通信越しに言葉を続けた。
「ッげ、ェ!? 何か声が聞こえっぞ!?」
突然聞こえた新しい声に戸惑いを隠せず辺りを見回すリヒト。
「落ち着くんだ、リヒト君。きっと彼らの関係者だろう」
対し、動じぬエクスハティオにとダヴィンチは言葉を続けた。
『それで、此の街は一体どうなってるのかな。…と、立ち話は危険だよね。さっきみたいにモンスターがうようよ出て来るかもしれないし』
安全に話せる場所は無いか、と問い掛けたダヴィンチにと、又もエクスハティオが答えた。
「其れなら移動しようか。…近くにカフェがあってね。其処なら此処よりは幾らか安全さ」
「あッ、は、はいっ!」
そして新たに三人の加わった一行は、彼の言うカフェにと向かう事にした。
_______________________________________
--【繁華街 道中】
「…にしても、本当に人が居ないな…」
周りを見る立香にと、リヒトが答える。
「ああ、そりゃあな。一般人は皆バケモンになっちまった。…さっきもやり合ったろ?」
「…? 其れって…」
意味が理解出来ぬ様子の立香はリヒトにと更に問い掛ける。
「おっと、少し待った。…如何やら敵だね」
答える間も無く、エクスハティオが敵影を報告した。
現れたのは二体のモノリス。メイジの間ではデスモノリスと呼ばれる物だ。
一方はX。もう一方はYの形をしている。
「…丁度良い。あれくらいならば君達でも倒せるんじゃあないか? 少し御手並みを見ておきたいのだが」
早速倒しに行こうとするリヒトを引き止めつつ、エクスハティオが立香にと訊ねた。
「倒せるか OR NOT。其れを問うたのだ」
「勿論」「あれ位であれば…」「我が稲妻を相手にするには少し貧相に見えるが…まぁ試してみるか」
エクスハティオは肯定の言葉を口にする彼らにと満足そうに頷いた。
転生録、現代舞台だけどわりと人の命軽いからぐだ戸惑いそうね
マシュとテスラが各々前へと出た。
「…嗚呼、気を付けたまえよ。侮ると --- 」
エクスハティオが警告をしようとしたその時。
「ッ!! …な、何だッ!?」
突如、モノリスにと対峙したテスラが驚きの声を上げた。
「ど、どうした!?」
其の声につられ、立香も声を荒げた。
「…くっ、我が雷電が…!!」
テスラに纏う電気は、先程よりも目に見えて弱くなっていた。
「…ああなる。そいつはメイジには手強かったかな?」
「あれって…力を奪われたって事?」
如何やらテスラは魔力を奪われ、電流に変換出来る魔力量が尽き掛けている様だ。
「…! マシュ!!」
ふと、立香はマシュの方にと目を向けた。
「私は大丈夫です!!」
マシュの方はと言うと、既に倒していた様だった。
「其れじゃあテスラの手助けに…、ん…?」
立香はある事に気が付いた。
「…」
そしてテスラの横を通り、モノリスにと歩み寄り___
「………ただのカカシじゃんか!!!」
モノリスを引っ掴むと、力付くで圧し折った。
「はい。ただのカカシです。先輩」
テスラと違い、盾で直接的に攻撃したマシュは気付いて居た。
「…私の雷電が、カカシ如きに…!!」
悔しそうに歯噛みしつつ、がくりと項垂れるテスラにとエクスハティオは肩を叩き宥める。
「まぁまぁ、アレはそう言う奴さ。君みたいな、スキル重視のメイジと相性が悪いって事さ。…見た事の無い敵に遭遇したら、先ずは観察してみたまえ」
「…ぬぅ…すまないなマスター。少しばかり充電させてくれ」
「いいよ、テスラ。ちゃんと休んでてね」
魔力を消費したテスラは、すごすごと引き下がり空気中に漂う魔力を蓄電と言う形で溜め始めた。
「ブラウとラドのヤローも多分もう集合してんだろ。なんせ前と同じ状況だからな」
障害を排除し、目的地であるカフェにと向かい始めた最中、リヒトがぼやいた。
…前と同じ? ふと、立香は首を傾げた。そして、訊ねた。
「…リヒト、前と同じって…? 其れに、さっきもさ、人が化け物になったって元々知ってた様な口振りだったし…」
「……」
リヒトは困った様に、エクスハティオにと助けを求める視線を向けた。
「OK。私から説明しようか。まだ暫く歩くし、ついでにね」
歩き続けながら、エクスハティオは語り出した。
リヒトと出会う前の事。出会った後の事。そして、宿命元老院なる組織が世界の運命掌握を企み、レイネを利用した事。
更に、リヒトが街を救った事も。
「…と、まぁ、その老いぼれ達が彼女の力を利用して、街の一般人を怪物に変えた。今の状況は、あの時と同じだ」
「…」
其の話を聞いていたレイネは酷く複雑な顔をしていた。
「ま、今起きている事にコイツは関係ねーよ。オッサンの言う通り、俺が全部元通りにしたからさ」
リヒトはレイネを親指で指し示しつつ、誤解が生まれぬ様にそう告げた。
「…取り敢えず、私達は集合後、宿命ヶ原タワーを昇ってみようと思ってね。その途中で君達を見つけた、と言う訳さ」
そして、エクスハティオが喋り終わるとぴたりと歩みを止めた。
「…さ、着いたよ。此処が集合場所さ」
_______________________________________
--【カフェ 『CLOSS ROAD』】
「やぁ、待ったかな?」
エクスハティオはテラステーブルを囲んだ椅子にと座る二人にと声を掛けた。
一人は…ブラウだ。そしてもう一人。
目付きは鋭く、三白眼。そして長い金髪を揺らし、椅子から勢い良く立ち上がった。
「待った? 待ちぼうけてカカシになる所でしたよ、中年。そして犬と雌犬。一体何処で道草を…ん?」
「…お、ッ!? てめェは!?」
ブラウともう一人の男はエクスハティオ、リヒト、レイネの後ろに居た三人にと目を向けた。
「ブラウさん、あの見知らぬ雑種共を知っているのですか?」
誰何する様にブラウにと視線を戻した男が訊ねた。
「あァ、…さっき言ったろ、ラド。此処に来る途中、ナメくさった連中に会ったってな…!!!!」
「……ほう、ブラウさんをコケにしたクソの溜まった肥溜以下の連中とはアレらの事でしたか。…許し難きクズ共め…!!!」
ラドと呼ばれた男は、憤怒に塗れた形相で三人を睨んだ。
「落ち着けよ御前ら! ていうかブラウ!! テメーはただ返り討ちにあっただけだろうが!! 正当防衛だろ!!!」
事情を知るリヒトは彼らを止めるべく前にと勇み出た。
「黙れやァアアアア!! 邪魔するなら貴様からスライスハムにしてやろうか家畜犬ッッッッッ!!!!」
「…まるでバーサーカーみたいだね、マシュ」
「はい、話を聞かない辺りが…」
リヒトにと噛み付き喚き散らすラドを見つつ、立香とマシュはぼやいた。
「ク、クフフ…ハハハハハハ!! また会ったな謎電気少年!!!!! ブラウ、と言ったか? 覚えておいてやろう。情けなく逃げた青瓢箪としてな!!」
「ちょ、テスラ…ッ!!」
魔力も蓄え終えたのか、元気に溢れ挑発するテスラの頭を立香は叩いた。
「ア”、ァ”ア”ッ”!?」
挑発に対し、ラドと同じく怒りを露にするブラウ。
「退けやリヒト…俺ァあのクソうるせーキャラ被りヤローを始末するからなァアア!?」
そして稲妻を増幅させ、テスラにと向け _____
「其処までにしたまえ。彼らは協力者だ。…やり合うにしても、此の街を救ってからにして貰いたいのだがね」
エクスハティオは何時の間にやら席にと座り、優雅に珈琲を飲みながら彼を宥めた。
「っ、クソ…おいオッサン、今は見逃してやる。何もかも終わったら改めて叩っ潰してやるからな!!!!」
「そんな!! ブラウさん、今直ぐ殺しましょうよ!!」
「黙れや、ラド! 俺だってそうしてぇが、今はそれどころじゃねぇんだとよ!!!」
未だに収まらぬ怒りを現す様に、二人は座っていた椅子にとどかりと音を立て座り直した。
「…はァ、先が思いやられるぜ」
どっと疲れた様な顔をしつつ、リヒトも席に着いた。其れに倣う様にレイネも座った。
「つーか、そいつら何なんだよ。俺ぁてっきり此の異変の原因かと思ったんだがよ」
ブラウは顎で立香達を指しながら、誰に聞くでもなく言葉を漏らす。
「少なくとも宿命ヶ原の住人じゃあねぇだろ。特に其処のオッサンなんざ、此の街の奴だったら俺が気付いてねー訳がないしな」
テスラを睨み据え、続けて述べた。
「そう言えば、説明らしい説明もしてなかったな…じゃあ、先ずは名前を。俺は藤丸 立香。こっちはマシュで…うん、テスラだよ」
未だ彼らを知らぬブラウとラドにと、手短に名を紹介した。
「俺達は、カルデアって所から…こう、世界を救う為に動いてるんだ。有り体に言えばね」
「世界を? 救う? …はっ、そりゃ大仰なこったな」
ブラウは嘲笑う様に笑みを零した。
「つまる所、運命救済者って訳だな。はは、こりゃ良い。心強ぇじゃねぇか」
半ば信じて居ないのか、何処か小馬鹿にする様に囃した。
「…」
「…」
「…」
事情を説明し終え、ブラウの囃しも終え、沈黙が場を支配した。
「…其れで、エクスティオ。此の皆でどうするの?」
テーブルを囲む様に座った彼ら。沈黙を破る様に、恐る恐る立香が問い掛けた。
「ああ、もう予定は決まっている。宿命ヶ原タワーに向かおう。…手掛かりはあそこだけだからね」
エクスハティオは遠くに見える、高い塔に目を遣りつつ答えた。
と、全員集合し目的地も定まった所で今日は此処まで。
続きは月曜日ごろになると思います!
上のレス下から3行目エクスティオになってるよ
4行目だった
スレ主のノリがキモすぎる
間違っちゃいない>エクスティオ
>>38
おつ
続き楽しみです
「少し待って居てくれたまえ。あそこまで行くのはまぁまぁ歩くからね。車を取って来るよ」
そして、エクスハティオは椅子から立ち上がるとその場から離れて行った。
「車って言ったってよ…前の奴だろ? 案外普通の。…この人数…ちゃんと乗れんのかよ」
ブラウはリヒト、レイネ。そして立香、マシュ、顔を顰めてテスラを見遣った。
「全くですブラウさん。助手席に犬と雌犬を相乗りさせるとしても、後部座席にはブラウさんと私。詰めたとしても後一人しか乗れないでしょう」
ラドが文句を垂れ、立香、マシュ、テスラは互いに顔を見合った。そして悩んだ。
「どうする? …」
「先輩には、私の膝の上に乗って頂く…と、言うのは」
「おっと待ちたまえ。其れでは私が置き去りにはならないか?」
暫し、三人で会議を続けるも不毛な話し合いが続く。
「取り敢えず、話し合いはエクスハティオのオッサンが帰って着てからにしようぜ。ファミリーカーでも拾ってくんじゃねーの」
リヒトは冗談めかして笑いつつ、三人の話を終わらせた。
そして又、沈黙が流れる。
…数秒後、遠方より何やらエンジン音。そして狂気を帯びた雄叫びと共に此方に向かう影があった。
「何だ…?」
立香は睨み据える様に、砂塵を纏いながら爆走する其れを見遣った。
「…こ、この音は…!!」
リヒト、レイネ、ブラウ、ラドの四人は段々と近付く音に気付くと勢い良く立ち上がり、構えた。
「……まさか、…」
リヒトはごくりと生唾を飲み込み、覚悟を決めた表情を浮かべる。
他の三人も同じく、射抜き殺さんばかりに砂塵の巻き上がる方にと険しい顔を向けていた。
「…先輩、私の後ろに」
その雰囲気に只ならぬ戦慄を感じたマシュは、立香を後ろにと下がらせた。
そして______
..
.
「 イ ェ ア ア ア ア ッ ッ ハ ァ -------- ッ !!!!!!!!!!!! 」
.
..
耳をつんざく様な爆音と絶叫だった。其れは彼らの居るカフェの前にと急に止まり、激しい程の風を浴びせた。
「いよーォう…」
風と共に舞い上がる土煙は段々と晴れ、現れた人物の姿を露にしていく。
「おッ、御前は…ッ!!!?!?!!?」
リヒトは驚きに目を見開き、言葉を詰まらせた。
「 ---- … ヱドロ… !!!」
「お、へへ、覚えてたか。でも、な、違ェ、よ。俺を呼びたいなら、な」
『FAIT』と彫られた鉢がねを額に巻き、茶色のマントを揺らしながら、乗っていたであろう単車から降りた男は、首を振った。
「…『ヱドロさん』、だろォん!!?!?」
そして、両者は睨み合う様に出方を窺った。
その時、途切れていた通信が起動し、声が届く。
『立香君、マシュ!! 一体何が起きているんだ!』
「ダヴィンチちゃん! 今まで何を…」
『悪いね。少しそっちの情報を纏めるのに忙しくて…ってそれよりもだ。今、君達の目の前に居る奴。恐らくクラスは復讐者(アヴェンジャー)だ。だが… 』
ヱドロは何処からか、形容し難い武器を取り出す。
それは『DEA TH』と刻まれた持ち手。長く延びる諸刃に、奇妙にヒビの如く曲がる刀身。更に四方八方に延びる刃。その形状は、凶悪そのものであった。
「あの、な、今はな、俺…調律者ァで、そんでな、ァ。…復讐、者ァ? アヴェ、とか?? くッせぇ肉柱野郎が、そう言ってた、わ」
そして、武器を掲げリヒト達にと歩み寄り、
「御前らを、 皆 殺 し に するだけの、なァァアアァアアン!!?!!!!?!!?!!!!!」
その場から跳躍し、甲高い声と共に振りかぶる。
「…っ!!」
前にと出たマシュが、盾でヱドロの斬殺を受け止めた!
「よ、ぉン? 見知らぬ、お嬢さン、な。用があんの、そいつらだけ、なんだわ。な。だから --- 」
「いいえ、私にでも貴方が何をしようとしているのか…それ位は解ります! なので、退く訳にはいきません!!」
「…あ、そ。なら、イイ、わ。そンじゃ、諸共…葬ッ式ィイイイ!! 執行ゥォオッオオオ!!!」
その叫びと共に、ヱドロは後ろにと弾ける様に跳んだ。
先程まで彼が居た場所に、血に濡れた刃が迅く回転しながら通過する!
「チィーッ、単車下人めが…一度死んだ癖にまだ死に足りない様だな!」
ラドは舌打ちをしつつ、罵倒の言葉を吐き捨てた。
「相変わらず遅ェ、遅すぎんぞォー? そこの、お姫様に、守って貰えや。へへ、へ!!」
「貴様ァ…ッ!!」
ヱドロの挑発に容易に乗り、前にと出そうになったラドをブラウが引き止めた。
「落ち着けい、ラド! 今度は前とは違う…硬ェ盾役も居る。慎重にフクロにすんぞ!!」
「あ、へへ、怖ぇ。怖ェの」
ヱドロは不気味に笑いつつ、舐める様に対峙する相手達を眺める。
「ま、いい。飽きたし、御前らの処理は、又今度。でも --- 」
瞬間、ヱドロの姿が消える。
「こいつ、貰ってく、ぞォオオオ??? へへへ、へハハハハ!!!!」
「え、ちょっ何…!!!!?」
さながら瞬間移動めいて移動した彼は、立香を片腕で抱え上げると停めた単車目掛け大きく跳んだ。
「先輩ッ!!?」
そして彼が単車にと跨ったその時、
..
.
--- 突然のブレーキ音 !!!
.
..
「エ”ア”ァ”ッ”!!?!?」「うわッ!!?」
突如現れた車が単車諸共ヱドロを吹き飛ばした。そしてヱドロの腕からすっぽ抜けた立香は地面にと激突 --- しそうな所を、駆けたマシュが受け止めた。
「やれやれ、タイミングが良いのか悪いのか…。それはさておき、ナイスキャッチだ。マシュ君」
車から降りたエクスハティオは、単車と共に寝転がるヱドロを見下ろしながら不敵な笑みを浮かべた。
「久し振りだね、調律者君。そして直ぐに御別れとなるだろうよ」
「オ、オッサン…マジでファミリーカー持って着やがった…」
リヒトは先程ヱドロにとぶつけられた車をちらりと見つつ、ぽつりと独り言めいて呟いた。
「…ア、ハハ!! よォーゥ、ン? 騎士様、よ。人にぶつかっといて、よ、謝罪も、無しか、ァアアアァア?? へへへへ!!!」
跳ねる様に起きたヱドロは、狂剣を振り油断しきったエクスハティオを斬り付けた!
「ああうっ」
エクスハティオは直ぐに剣を展開し身を守ろうとしたが易々と砕かれ、傷を負って仕舞った。
「禁ンンン…物ゥ、それは、な、油断だぞォーン!!?」
「エクスハティオ!! …マシュ、エクスハティオを助けないと!!」
立香は、トドメを刺そうとするヱドロを見つつ叫ぶ。
「で、ですがッ…先輩が…!」
マシュは先程の様に彼を奪われないか、と言う心配もあり、中々に動けずに居た。
「やらせる訳にはいかねぇ!!」
「チョーシに乗ってんじゃあねェぞォオオォオ!?!!!!!?!?」
「もう一度地面で寝させてやる!!」
リヒトが、ブラウが、ラドが一斉に背後から攻撃を仕掛ける!
然し、大したダメージは与えられて居ないのか、ヱドロはのっそりと振り返った。
「あ、あ? チク、チク?? ビリ、ビリ??? かいーし、うっせェ、よォ!!!!!!」
エクスハティオへのトドメを中断し、狂剣を乱雑に振り回す!
「ぐっ!?」「グギィッ!?」「ギィアッ!!?」
リヒトとラドはその攻撃をまともに喰らい、膝を地に着けた。
「…あ、ァ? 何、立ってんだ、よォ?? エへへ、ハハハハ!!」
辛うじて掠める程度で済んだブラウにと、畳み掛ける様に狂剣を振り翳した。
「しまっ…!」
その速さに慄き、避けようとするも____間に合わない!!
「ブラウさんッ!!!」
ラドは噴き出る血にも構わず立ち上がり、身を挺してブラウを守ろうとした____だが、間に合わない!!!
続きはまた、時間が空いた時に書き進めます。
乙
乙、エドロの再現率高くて笑うわww
「へへへ、死ねやァ!!!」
ヱドロの振るった武器が、ブラウの運命を刈り取ろうと吼える!
--- そして、遂に胴を真っ二つに切り裂いた。然し、其れは、
「……お、オッサン…何してンだ…!!?!?」
ブラウではなく、ニコラ・テスラ。彼の身体を切り裂いていた。
テスラは不敵に笑みを浮かべ、目の前のヱドロにと強烈な雷電を浴びせた!
「ギィエエエァアアアッッッッーーッ!!!!?!!!?!?!!!?!?」
ヱドロの身は震え、恐らく全身を駆け巡る痛みに悶えて居た。
「…何、私にも…よく、解らないな。運命的に、体が動いたのだよ」
如何に英霊と言えど、あの殺戮的斬殺をまともに喰らっては消滅の運命を辿るだろう。
現に彼は膝を折り、その場にと倒れた。
「…ブラウ、とやら。…貴様の雷電も、中々…フフ、いや…やはり、私の方が上だな」
減らず口を叩きつつ、倒れた自分を困惑の表情で見下ろすブラウにと続けて告げた。
「…心配ない、マスターと、貴様が生き残って居れば…何時か又、逢えるとも」
「ふざけろや…次会ったら俺がブッ潰してやんよ! …ヱドロぉ、てめェ…こんなヤローに俺を助けさせるたぁ赦さねぇぞ…!!!」
消滅し掛けて居るテスラから、視線をヱドロにと向け、そう吠えた。
ヱドロはすっかりスタン状態から解放され、落とした武器を拾い上げていた。
「…はーァ、キモ。最ッ、高に、キモすぎんぞォーン?」
ヱドロは、うげェ、と吐きそうな顔をしつつ悪態を吐いた。
「馴れ合いなら死んでからやれよ。ま、すぐ、全員、送ってやっから、な??」
そして、テスラにとトドメを刺そうと剣を振り上げ、
「テスラァーッ!!!」
そして、思わずマシュの後ろから走り抜け出てしまった立香を見、瞬時に武器を仕舞い、立香の前にと出た。
「よォ、ン? あハ、ァ…守られてりゃ良かったのにな、オマエ」
そして抵抗する間も与えず、又も立香を抱え上げては
「じゃあな、糞雑魚メイジ共!! コイツにゃ用があるから、それ済んだら又殺しに来てやっから、な!! へ、へはは、ハハハハーァッ!!!!!!!」
乗って来た単車を捨て、その場から消え去った。
「…先、輩…?」
『……非常に不味い事になったな』
其の場に残されたのは負傷したリヒト、ラド、エクスハティオ。軽傷で済んだブラウ。そして奇跡的に傷は負わずに済んだマシュとレイネである。
通信越しでも解る程に、絶望的な声を漏らすダヴィンチは、
『……彼の魔力はこっちで追う。死なない限りは追えると思うが…、…君達は一刻も早く向かって貰わないといけない。いけるかい?』
「上等だッ…、やらなきゃ、やべー事になるしな…!!」
レイネに回復術を施され、傷を癒したリヒトがそう告げた。
『…そうか。なら、是非とも御願いしたい。彼が死んでしまっては、…此方ではもう、打つ手が無くなるからね』
「回復なら任せて。…私には、此れ位しか…」
レイネは少し弱気にそう口にしつつ、負傷した彼らを治療していった。
「……先輩、直ぐに助けに行きます…!!!」
マシュは、ぐっと歯噛みしつつ、悔し気に、絶望に敗けぬ様に呻いた。
_______________________________________
--【宿命ヶ原タワー】
「ふぅ、やっと着いたか。此処が…」
『あぁ、其処の上の方に立香君は居る。…だが、魔力反応が消えたり出て来たりとし始めている。…何かが起きる前に、彼を助け出してくれ!!』
一行は通信の声に頷き、中にと入って行った。
「…然し、前回の老害どもと言い、どうしてああ言う奴等は高い所が好きなんだ。全く…ん?」
「どうしたよ、ラド」
ふと、階段を上がろうとした矢先、ラドがある事に気が付いた。そして怪訝そうに訊ねたブラウにと答える。
「…いえ、エレベーターで一気に上がる、と言うのは…」
「それは得策とは言えないな。退路も無くなるし、罠を仕掛けるには絶好の場所だろう」
エクスハティオが諫める様に述べ、首を横に振った。さしものラドも、此れには納得せざるを得ず言い返せずに居た。
「…、皆さんは階段を使って下さい。私は、あれで上がります」
マシュは踵を返し、エレベーターにと向かった。
「待ちたまえ。…罠かもしれないんだぞ?」
エクスハティオのもっともらしい問いにマシュは振り返りつつ答えた。
「例え罠であっても、逃げられなくとも、…今は早く、先輩の元に行かないと…!」
その目は焦燥に駆られている。其処に居る誰もがそう思った。
「…ったく、しゃーねーな。オッサン、ブラウ、ラド。御前らはそっちから行けや。俺とレイネはエレベーターで行くからよ」
せめて一人にはしない様にと考え、リヒトは数を半分に分け行動しようと提案した。
「ああ、死ぬなよ。リヒト」
時間を無駄に費やす訳にも行かず、ブラウは彼を止めずに階段を駆け上がり始めた。
「犬風情が指示など烏滸がましいにも程があるな…。まぁいい、後で貴様を殺すのは私だ」
罵詈雑言を吐き捨てつつ、ラドはブラウの後を追った。
「やれやれ、君は最初とだいぶ変わったものだね。…然し、此れが我が使命であらば従うまでだな」
多少強引に事を運んだリヒトに柔い笑みを浮かべつつ、エクスハティオもブラウ達の運命にと続く様に階段を上がって行った。
そして丁度、リヒト達の元にとエレベーターが舞い降りて来た。
開いた扉の中にと続々と乗り込み、最上階のボタンを押した。すると、がこん、と揺れ扉は閉まって行った。
「…すいません、リヒトさん。レイネさん」
マシュは自分が強引に数を分けて仕舞った事を自覚している様子で、申し訳なさげに呟いた。
「いいのよ、大事な人を守りたいって気持ちは…、良く解るから」
レイネは優しく微笑み掛けつつ、彼女の落とした肩を撫でて遣る。
リヒトは掛ける言葉が見付からないのか、それともレイネの言葉によってか、頬を掻きつつエレベーターの天井を見上げた。
そして、がごん、と先程よりも少し大きく揺れると、エレベーターは止まった。何事も無く最上階に辿り着いた様である。
「よし、行くぞ!!」
開いた扉から、先ずはリヒトが先行し後に二人は続く。
出た先は、異様な空間であった。
「此れは!! 歪曲空間か…!!!」
以前の戦いにて、リヒトは知っている。
此処には、ヱドロ。因果歪曲の調律者。全ての運命の頂点に立つ男。…そして、リヒトが前世に覚醒し、打ち負かし、滅ぼした筈が復活した、彼が居ると言う事を。
「お、お、よく、よく、来た、な? 探しに行く手間ァ、省けた、ぜェ??」
声が響いた。誰何するまでもない、解りやすい声だった。
リヒトは先進を止め、後ろを振り返る。エレベーターは既に歪曲空間から弾き出され、退路は無かった。
「…出て来いよ、決着つけに着てやったぜ!!!!!」
前にと向き直り、リヒトは叫んだ。後ろの二人も、臨戦態勢にと移る。
「あハ、歓迎パーティー、してェけどな。御前らの運命、…此処まで」
姿を現したヱドロは、三人を見遣れば口角を此れでもかと吊り上げ、薄気味悪い笑顔を浮かべた。
「惨ッッッッッッッたらしく仲良く、人肉合挽き肉にして、そんで、へへェ、そぼろでも作って、せせこら作った墓に添えてやんよォオオオオオオオ!!?!?」
そして、テスラを斬殺執行した例の武器を出現させ、構えた!
「させる訳、ねェだらァ!!!?」
リヒトは両手に宿る刻印を煌めかせながら吠えた。
「前の仕打ち、私が…ボクが、全ッッッ部、返却してやるよ!!!」
レイネはまるで人格が変わった様に、膨大な魔力を携えた翼を広げながら叫ぶ。
「私が前に出ます!! 皆さん…、油断なさらぬ様に!!」
盾を構え、ヱドロにと猛進する様にと彼らの前にと出たマシュは、必ず打ち負かすと言う決意を胸に立ち向かった。
_______________________________________
--【宿命ヶ原タワー 最上階 階下】
「はァ、…は、何事も無く上がらせちゃくれねーってか」
ブラウは息切れを落ち着かせる様に肩を上下させつつ、大きな部屋内にて呟いた。
「忌々しい。我らの邪魔をするとは…万死に値するな」
ラドは睨み据えた。最上階にと向かう前に立ち塞がった、三つの人物を。
「……然し、君は死んだ筈。…後の二人は、初めましてかな?」
エクスハティオは三人の敵影を見、露になった敵の内、一人にと訊ねた。
「フハハハハ!! 先程振りだな、諸君。まぁ、私は…呼ばれた者に付き従わねばいけないのでな。先に進みたくば、私を倒していけ! と言う事だ」
ニコラ・テスラ。ヱドロに斬殺され、運命が潰えた筈の彼。仲間だった彼が、敵として現れた。
テスラの後ろの一人。彼の名は【ファントム・オブ・ジ・オペラ】。
其の人物は欠けた仮面を被り、物悲し気な雰囲気を醸す、タキシードとマントに身を包んだ男。
更に特徴的なのは、手である。血に濡れた異形の其の手、爪は刃物めいて鋭利であった。
「…何だ、私に対する挑戦か? ブラウさん、あいつは私めにお任せを」
ラドはファントムの爪を見遣り、対抗意識を燃やしながら述べた。
そしてもう一人。彼の名は【ランスロット】。
黒く、鈍く光る西洋鎧を着込んだ騎士であった。
「…ほう、中々の手練れだな。彼の相手は、私がしよう」
エクスハティオは見た。敵の騎士が持つ、剣を。
各々、乱闘にならぬ様に距離を空け、一対一で対峙した。
________ .
「…オッサン、てめェに何があったのか知らねぇ。だがてめェとは運命決してやらなきゃ気が済まねぇ」
ブラウは目を伏せ、そして見開いた。彼(テスラ)の運命を制圧すべく。
「俺の稲妻で苦しませ、悶えさせながら運命制圧(デリート)してやんよ!!!!」
「ふははははッ!! 神の雷霆に勝るもの無し!!!! 我が交流を以て、貴様の運命を決しよう!!!!」
________ ..
「嗚呼、クリスティーヌ…君は美しい……愛しい君へ、私は歌う。…私の声を、聴いてくれ…」
「何だ、気持ち悪い。私を何処ぞの雌と勘違いしているのか。失礼にもほどがある…」
ラドは自律アーティファクトを展開する。血刃 - デスブラッド - は、目の前の敵の血を啜ろうと、唸りながら回り始めた。
「壊れた蓄音機風情の声を聴く位であればテレビの砂嵐でも聴いて居る方がマシだな。どちらも大差ないと言う事だが…どちらにせよ、貴様の喉笛は私が切り刻んでやろう」
________ ...
「…Arrrrthrrrrrr………」
「…PERFECK DARK。狂気に飲まれし騎士よ。私の剣を以て、其の心を解放しよう。…さぁ、N I G H T を始めよう!!!!!」
エクスハティオは剣を展開する。一本、二本…否、四本もの剣を出し、構える。手には握らず、宙にて浮かせ、構えている。
「最初から全力、ともいかないのでね。…先ずは小手調べ、と行こう!!」
________ ....
一斉に攻撃の応酬が始まり、無残にも部屋を囲む窓は割れ堕ちた。
続きは例によって時間が空いた時に書き込んで行きます…!
乙ー
立て続けのイベントのおかげでまだまだ遅れそうです。申し訳ありません。
_______________________________________
--【宿命ヶ原タワー リヒト達が到着する数刻前】
「...う、ん...此処は...」
ぼんやりと視界を揺らしながら、立香は力の入らない両手で起き上がろうとした。
「よォ、ン。目ェ、覚めたか。運命救済者さん、よ」
耳に届いた声の人物を確かめる様に、立香は顔を上げる。
「...」
其処にはヤンキー座りをしながら立香を見下ろし、ニヤついた笑みを浮かべるヱドロが居た。
「そう睨むなよ、な。俺ぁ、オマエを助けてやろォーっての、はは、へ?」
身体にダメージは無くとも、目の前でサーヴァントを惨殺されたせいか立ち上がる気力の無い立香をヱドロは肩を貸し抱える様に起こした。
「...助ける?」
「ま、どっちにしろ現世の運命は潰えるけどな。来世はちゃァんとした人生歩ませてやっから、な??」
ヱドロは、立香を引き摺りながら歩き続けた。
やがて、歪曲した空間を抜け、立香は目にした。
「.......な、...何、これ...」
魔神柱。悍ましい肉の柱。然し、立香が見たものは、立香の知る魔神柱とは又、違っていた。
「...俺...?」
魔神柱の身体には、幾数人もの " 藤丸立香 " が埋まっていた。
中には性別、髪色、刻まれた令呪の形、と違う部分もあったが、立香は運命的に確信した。
【此処にいる彼ら】は【自分】である、と。
言葉を失った立香にと、ヱドロは心優しく声を掛けた。
「そ。ぜェーんぶオマエ。別の世界に居る、同じ運命を持つオマエだ」
そして、言葉を続ける。
「こいつらもな、オマエとおんなじで、な。世界救う運命、背負わされてんの、へへ...二重運命(ダブルフェイト)なんてモンじゃね、な」
「...嘘だ。こんなの」
訳も分からず、立香は首を振った。弱々しく。
「嘘じゃ、ねェ。まるで、カルデアっつー所の御人形だな。いい様に扱われてよ」
ヱドロは、彼を苦しめる事に躊躇いは無く、更に囁く。
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません