【ガルパン】冷泉肛門廟 (13)

:自宅の居間にて



 むずっ……



久子(──ん、屁か)

久子(ふん、ババァになっても屁はしっかり出よる)

久子(ま、屁がでるうちは死にゃせんじゃろ)

久子(……ん、きよるきよる──ふんッ)





 ──ブリュッ……!





久子(ん!? な……!?)



 ──るゅ……



久子「ぬ……!」

久子(ちょいとちょいと……! えぇ……?)

久子「勘弁しておくれよ、屁じゃなかったのかい……?」



 ……ゅル……



久子(ぐ、ぬ……ええい、畜生め)

久子「……このクソ肛門、糞と屁の区別もつかんのかっ」

久子(……まったく、接骨院に出かけようとしとったのに……)

久子「……はぁ……」

久子「……やれやれ……出たもんはしかたがない……さっさと洗っちゃろう……よっこい、せっ……」



 ……とろゅ……



久子「っ……まったく、尻が気持ち悪いったらありゃしない……」



 ……ひょこっ、ひょこっ、ひょこっ……


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:風呂場

ジャアアアアアアアアアアア……

久子「臭いねぇこのうんこタレめ。……まぁ、出るものが出るうちは、死にゃあすまいが──」

久子(──けども……屁と糞を間違うとは、やれやれ……とうとうオムツを考えにゃならんのかねぇ……?)




ジャバジャバ、ジャバ……




久子(尻の緩くなった婆ぁが一人──風呂場にかがんで、ババのついた下着を洗う……)

久子「……。」


久子(もっとこう、惨めな気持ちにでもなるかと思ったが──)


久子(──なぁに、大したことはないね)




 ごっしゃ、ごっしゃ、ごっしゃ、



久子「こんなもの、あの子の癇癪にくらべれば──屁でもない」


久子(……癇癪を起して、あの子が糞尿をまき散らして──)


久子「……くく、いっひっひ」


久子(あぁいかん、思い出すと、笑っちまうよ……あの子、母ちゃんに会いたい父ちゃんに会いたい、とヒドイ癇癪を起こして──その上に糞尿までまき散らされて……いや難儀したねぇ……カッカッカッ……まったく、あの時はまいったよ……)



 ……ごっし、ごっし、ごっし……



久子(……。……この先──この子は一体どうなってしまうのかと──あの頃はずいぶん困り果てたもんだったが……。)

久子(なに、なんとかなるもんさ……)

久子「──しかし、ふぅ、腰が痛いねぇ……やれやれ、こればかりは何ともならん」

久子(……かといって……クソまみれのこの下着を、洗濯機や洗面台につけさせたくはないからねぇ……捨てるのは勿体がないし)


久子「まぁ、とにかく、一休みそしよう。腰がもう、どうしようもないよ」

久子(風呂の縁にでも、腰掛けようか……よっこい、しょ……)



 
 ……つるッ!



久子「ほっ!?」

久子(床のタイルが石鹸ですべって──!!)


 と、とととと、とっ──


久子(──ふんぬっ!)


 グッ……!


久子(っふぅ……なんとか、転ばずに踏ん張れた……タップダンスが役に立った……のかねぇ)


久子(けどまぁ……こういうことにも気を付けにゃいかんね……)


久子「……。」



 ──ワー、ワー、……キャーキャー……



久子(ん……今朝は、近所の公園の子供の声が、やけににぎやかしいね……)

久子(……。)

久子(……そうか。今日は、日曜か……)


久子(……昔はよく──まだ眠いとのたまうあの子をたたき起こして、公園へつれていってやったもんだ。)



久子「……。……どれ、電話でもしてやろうかね。どうせまだ、イビキをかいて寝っ転がってるんだ。まったく……」



 ごそっ……



久子「ジジババ用の携帯電話は、ボタンが大きくてたすかるねぇ」


 ぽち、ぽち……


 ────ぷるるるるる、ぷるるるるる……

 ────ぷるるるるる、ぷるるるるる……



久子(でない。眠りこけて、電話に気が付かないのかね?)



 ────ぷるるるるる、ぷるる──ぷつっ



久子(お……)

麻子『……ふぁい……』


久子(──ほらやっぱり、この寝坊助は──)


久子「──こら! アンタまだ寝てたのかい! いま何時だと思ってるんだい!」

麻子『……いきなり何……日曜の朝くらい、ゆっくり寝たい……』

久子「あんたにゃ曜日なんか関係ないだろ。いっとくけど──学校の勤怠簿はしっかり家に届いてるんだからね」

麻子『ぐっ……もー……用事は何……』

久子「用事が無きゃ電話しちゃいけないのかい」

麻子『駄目じゃないけど、せめて午後がいい……』

久子「……ったく……。……」

麻子『……。』


久子(……。)


久子「……オムツを、買って送っとくれ」


麻子『……はぁ?』

久子「今はインターネットで、安くいっぱい買えるんだろ。ジャングルだかアマゾンだかで」

麻子『オムツって……誰がはくの?』

久子「私に決まってるだろ」

麻子『──おばぁ?』



久子(…………。)

久子(ふん、露骨に声色を──変えるんじゃないよ)

久子(……。)

久子(……のう、麻子や)


 ──年寄りの、意地悪なのかねぇ。電話の向こうで──それまで寝ぼけていた孫の声の、その調子がハッとして変わる──そんな孫の様子に、こうしてほくそ笑んでしまうというのは──

麻子『待って。どうして。なんでおばぁがおむつを』



久子(……。悪い遊びだね、ほどほどに、してやらにゃあね──)


久子「──別に、大したことじゃあないよ。年寄りになると、屁と便の区別もつかないんだ。嫌だよまったく」

麻子『……。それって……病院、とか……行った?』

久子「馬鹿たれ。病院にいく必要なんてどこにあるんだい。体はどっこも悪くないんだ」

麻子『悪くないって、だけど、……一応……』

久子「あのね、これは「老い」ってやつなんだよ。病院にいったからって、どうにかなるもんでもないんだ。アンタ、ちったぁ勉強ができるんだから、それくらいわかるだろう」

麻子『……っ。…………分かった。おむつ、買う。送るから……』

久子「ん、頼んだよ。」

麻子『……。あの、おばあ……』

久子「なんだい」

麻子『来週、学園艦の寄港日だから』

久子「そうかい」

麻子『その時にまた、家……帰る』

久子「……そうかい。じゃあ、晩御飯は二人分つくっておくよ」

麻子『うん。お願い』

久子「じゃあ、もう切るよ。これから出かけるとこなんだ」

麻子『あ……うん……じゃあ、来週。……えと、出かけるなら、気をつけて』

久子「うるさいね、年より扱いするんじゃないよ。」



 ──ぷつっ……



久子「……。」


 ──ワー……きゃぁひいぃえあははは……ママァァァァア──


久子(……子どもは元気だね……)

久子(……。)

久子「……さて、さっさと洗ってしまわないと」



 ──じゃばじゃば……



久子(……。)



久子(……『老いる』か……)

久子(……。)







 ──むずっ……







久子「……ん?」



 ──むずむずっ……



久子「お……今度こそ、屁、かね……?」

久子(……。)

久子(──うん。屁、だとは思う。便ではないと──尻の穴はそう判断しとる)

久子(しとる、が……。……もしこうまで警戒して──それでもなお便だと見抜けなかったなら……)





 ──……一応……病院、とか──





久子(……。)

久子(その時は、──一応、念のため──病院へ行くべきなのかねぇ……)

久子(……。)



久子(……。)

久子(……どうしようかねぇ、麻子や……)

久子(……。)

久子(……っ、ええい、しゃらくさい、その時は、その時さ)


久子(漏らしてもいないのに、悩んでどうなるのさ!)


久子(スゥ──ハァ──)


久子(──ほりゃァっ!)





 ──────────ッ





 ぷぅっー!




久子(──!!! 屁……!)

久子「……はは……は……!」


久子「──ほれ見たことかい! 何ともないんだよ。まったく……大げさな……、なんとも、気持ちの良い屁じゃないかい!」

久子「ふふ、ふ……」

久子「ふ……」





──じわぁ……





久子「……!?」



久子「────。」

久子「……。」

久子(尿漏れ──かい……)

久子「……。あぁ……。漏れたの、かい……」

久子「……。」

久子「……っ!」



久子「セ、セーフ! セーフじゃ!」


久子「尿漏れなんざ、年寄りならだれだってしとるわ!!」


久子「タ〇さんも鉄〇さんもとく〇つさんも、みんなしとるってテレビでもいっとったわ!」


久子「……ふぅー……ふぅー……ったく……病人扱いしおって……こんな事でいちいち病院なんぞ……っ」






── おばあ…… ──






久子「……っ」

久子「……馬鹿たれ……高校生にもなって、そんな声を出すんじゃないよ……」


久子「……。」

久子(──麻子や──)

久子(やっぱり、こんな事ぁ、私には大した問題じゃあないさね)

久子(足腰が弱って、身体もあちこち動かなくなって、どころか、屁と便の区別もつかなくなって、おまけに小便が垂れようとも──)

久子(そういうものだと受け止めてしまえる──それもまた『老い』なのかねぇ)

久子(……それに──)

久子「──お前が元気にしているなら、私にとってはもう、大抵のことは──もう、大した問題ではないんだ──」

久子(……そういうのも全部ひっくるめて──老いるということなんだろうさ……)

久子(──だから、なぁ、麻子や──)

久子(お前が心配した声で、あれこれ口うるさくいってくれるのを聞きゃぁ……私はもう──)




久子「……。」




久子「……ふん。……やれやれ病院の診察証は、どこになおしてあったかね──」




久子(──やれやれ、世話のかかる孫だよ──)




ガールズ(?)&パンツァー(?) ~冷泉肛門廟~

ありがとうございました。

あっさり目のゆるふわ系で行きます。

汚物を漏らさない程度の筋肉は死ぬまで維持したいね

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