道明寺歌鈴「特別じゃない昼下がり、励ましにイタズラなキスを」 (12)

道明寺歌鈴ちゃんのSSです。

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のどかな午後の昼下がり。ここ最近はお仕事で忙しかった中珍しい一日オフだけど事務所にやってきて、お仕事しているプロデューサーさんを眺めます。あくまでも邪魔しないように、頬が緩まないように。私がオフなのに事務所にやってきたことに呆れていたプロデューサーさんも今は気にせずお仕事をしています。


にやにやではなく、にこにことプロデューサーさんを眺めていると、カタカタとパソコンを操作していたプロデューサーさんが私のことをじっと見つめきます。

なにか用事でしょうか。用事があるなら声をかけてくれればいいのに、プロデューサーさんは何も言わずにただ私をじーっと見つめてきます。

そんなことを何度も繰り返されては流石に気になるわけで。

「ど、どうしたんでしゅか?」

噛んじゃいました。やっぱり恥ずかしくて顔がかぁっと暑くなります。


「歌鈴を見たらいけないのか?」

そう言われたら駄目なんて言えないので首を横にふるふると振ります。私だってプロデューサーさんのことをずっと見ていたわけですし。

するとプロデューサーさんが立ち上がり私の方へと近付いてきます。

どうしたんだろう、と小さく首を傾げているとあっという間に私の目の前へと来ていたプロデューサーさんの顔がぐいっと私の顔に近付いてきました。

思わぬ行動に、言葉にならない言葉を発するしかない私の頭の中がパンクしそうになったところで慌てて体を逸らします。

「ち、近いですよぉ! 誰かに見られたらどうするんですかっ!」

それでもプロデューサーさんは離れようとしません。お仕事のし過ぎで疲れたのでしょうか。

僅かに悩んだ顔をしたプロデューサーさんが呼吸音ですら聞こえる距離なのに口を開きました。

「歌鈴」

名前を呼ばれてびくんっとしてしまいます。



「キスしよう」

キス? キスってあの、 いわゆる、ちゅーですよね。漢字にしたら接吻というあのキスですよね。

プロデューサーさんは何を言っているんでしょう。確かに私とプロデューサーさんはお付き合いをしていますからキスをすることくらい別にふ、不思議ではないですけどまだお昼ですし、なによりここは事務所です。

「な、何を言ってるんでしゅかぁっ!」

慌てて抗議の声をあげてしまったためまた噛んでしまいました。今私の顔が赤いのは噛んだからじゃないことくらいは私でも分かります。

ここでやっとプロデューサーさんが離れてくれます。ただにやにやとしたような意地悪な笑みを浮かべて。

「別にキスくらいしてくれてもいいじゃないか。それとも歌鈴は仕事で疲れている彼氏を応援してくれないのか?」

そんな言い方はずるいです。むむーっと頬を膨らませた私を見てプロデューサーさんは相も変わらずにやにやと笑っています。

そんなプロデューサーさんの顔を見ていたら沸々と私の心にある考えが浮かびました。いっつもこうしてプロデューサーさんにからかわれているんですし偶には仕返ししてあげるのもいいかもしれません。

今の事務所にはちひろさんが居ますが、幸いにもお仕事に集中しているのかこちらを見ている様子はありません。



気が付いたら私はプロデューサーさんの手をぐいっと引いてソファに倒れ込んでいました。図らずもプロデューサーさんが私を押し倒しているような体勢です。

流石にプロデューサーさんも驚いたのでしょう。困惑している表情ですがどうしたものか悩んでいるのが分かります。


だから私はそのままキスをしました。

プロデューサーさんお望みのちゅーです。目を瞑って私の唇とプロデューサーさんの唇を重ねます。

どこかほっとする温もりを感じながらそのまま腕をプロデューサーさんの背中に回してしっかりと抱きしめます。プロデューサーさんが逃げないように、しっかりと。

最初は離れようとしていたプロデューサーさんもそんな私の仕草で諦めたのか抵抗をやめました。それを確認すると合わせていた唇をそっと離します。

私を見下ろすプロデューサーさんの顔は嬉しさを堪えているような物足りないと言うかのようなおかしな表情をしていました。

そんなプロデューサーさんの顔を確認した私はふふんと笑い、自分でもはっきりと分かるドヤ顔をしました。いつもからかわれているプロデューサーさんに一矢報いたのです。

私は満足感でいっぱいでした。


でも、プロデューサーさんは違いました。さっきのキスでトリガーを引いてしまったのか、ふふんとドヤ顔を晒していた私をソファに押し付けて唇を合わせてきました。

いきなり唇を合わされた私の驚きなど意に介さずといった風にプロデューサーさんは私の口の中へと舌を入れようとしてきます。

一瞬ぴくりと体が震えますが大好きな恋人からされるそれに抗えるわけもなく、私はそのまま受け入れてしまいました。

思わずプロデューサーさんを抱きしめる手に力が込もると、プロデューサーさんは私の髪を手で梳きながら舌で歯の裏をなぞってきます。そんな行為に単純な私は嬉しさを感じ安心してしまいます。

そんなことをしながらどれくらい経ったのでしょうか。プロデューサーさんは満足したのかゆっくりと顔を離します。

「ぷはっ、歌鈴…お返しだ」

「……もっと…」

思わず心の声が漏れてしまいました。先ほどのちゅーでトリガーが引かれたのはプロデューサーさんだけでなく私もでして、気付いたら催促するように、もっとと言ってしまいました。

ぎょっとしたように驚いたプロデューサーさんでしたが、私の言葉の意味を理解すると顔を近付けてきました。

けれど私はそんなプロデューサーさんの唇に人差し指を当ててその動きを止めると首を横に振り、プロデューサーさんを押しのけるようにソファから立ち上がります。


「事務所じゃ恥ずかしいから……お家で待ってますね?」

プロデューサーさんの耳元でそっと囁きます。

息を飲むプロデューサーさんから離れてぺこりとお辞儀をすると小走りで事務所から立ち去りました。

きっと今の私はにへらとだらしのない顔をしてるでしょう。

それでも私の心はぽかぽかと幸せな気持ちに満ちていて、きっとまた明日からも頑張れる。そんな気がしているのです。

短いですが以上です。
読んでくださりありがとうございました。

限定歌鈴ちゃん超可愛い、私のところにも来てくれないかな……

おつー

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