【ガルパン】麻子「五十鈴さんなんて大嫌いだっ!」 (37)


―演習場―


麻子「んぅ……。やっぱり寝るのはここが一番だ」パタンッ

麻子「今日は沙織がうるさくて昼寝ができなかったからな、どうも寝たりない」フワァ

麻子「放課後ならここを独り占めできる」フフフ

麻子「暖かい日差し、草の匂い、心地いい風……」

麻子「……ぐぅ」


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・・・・・・
・・・



  「麻子、麻子」


あれ? お母さん?


  「そろそろ起きなさい」


わかってる……でも、お母さん、どこ?


  「ここにいるわよ、麻子」


ホントだ。長い髪、やさしい顔、温かい手……



・・・
・・・・・・


華「…………」ズイッ

麻子「…………」パチクリ

華「あ、おはようございます」ニコ

麻子「うわあ!? なにやってるんだ五十鈴さん!? 顔が近い!」ドキドキ

華「す、すいません! 起こしてしまって!」アワアワ

華「麻子さんの髪に花びらがついていたものですから、取ろうとしたのですが……」

麻子「はぁ、はぁ……。もう、驚かせるな」ドキドキ


麻子「それが花びらか? でも、この辺りに花なんて咲いてないぞ」

華「そう言われればそうですね……あっ」

麻子「ん? 私の後ろになにか……? あっ」

ペタン

華「お花、麻子さんの下に隠れてたんですね」

麻子「す、すまん! 気付かなかった! わざと潰したわけじゃないんだ!」アタフタ

華「大丈夫ですよ、この程度でへこたれる野花ではありませんので」ニコ

麻子「ほ、本当か? それなら良いんだが……」


麻子「この花、なんていう花なんだ?」

華「うーん……野菊の一種だと思いますが、詳しくはわたくしもわかりません」

麻子「そうなのか?」

華「はい。外見だけで判断するのは結構難しいんですよ」

麻子「ほう。人間と一緒だな」

華「うふふ、さすが麻子さんですね。わたくしもそう思います」


麻子「それで、次期生徒会長がこんなところに何の用だ」

華「いえ、大したことでは。ちょうど明日の所信表明演説用の原稿が完成したので、羽を伸ばしたいなぁと散歩を」

麻子「ああ、明日だったのか。絶対聞く。そのためだけに学校に行こう」

華「ありがとうございます」ニコ

麻子「羽は伸ばせたのか?」

華「それが、ここしばらくお花を生けずに忙しくしていたので、禁断症状が……」プルプル

麻子「そんなに?」


麻子「そうだ。もし良かったらうちの仏壇に供える花を選んでくれないか? お彼岸も近いしな」

華「仏花ですね! わたくしで良ければ、願ったり叶ったりです!」パァァ

麻子「私だって助かる。さっきみたいに、気付かずに失礼なことをしていたりしたらイヤだからな」

華「そう難しく考える必要はありませんよ。大切なのは、捧げる相手への気持ちなのですから」

麻子「そうなのか?」

華「それでは一緒にお花屋さんへ行きましょう! ええ、そうしましょう!」ギュッ

麻子「うわっ。手、引っ張らなくても」トトト


―麻子の家―


チーン …

麻子「…………」人

華「…………」人


麻子「……一緒に拝んでくれてありがとう、五十鈴さん。友達を親に紹介するのは、こんな気持ちなんだろうな」

華「麻子さんのお友達として認めていただけたような気がします」ウフフ

麻子「花も、本数と色の関係とか、並べ方がひし形とか、気にしてなかった」

麻子「一人暮らしを始めてからは、なんとなくでやってたからな」

華「本当に大切なのは、麻子さんがご両親のためにお花を選んだ、ということですよ」

華「わたくしは少しお手伝いをしたに過ぎません」ニコ


麻子「まぁ、これだけ立派なお供えだ。うちの親も喜んでくれてるだろう」

華「麻子さん。仏壇やお墓のお花って、どうしてこちら側を向いていると思います?」

麻子「え? ……あ、そうか。死んだ人に向けて供えてない」

華「そう。お花はいつでもわたくしたち生きている人間の方を向いているのです」


華「生花は美しく咲き誇る時期を経て、やがて枯れていきます。これって、何かに似ていませんか?」

麻子「……そうか。そこにあるのは命の象徴なんだな」

華「仏花の美しさは、死者を思いやる人々の命の、そして心の美しさなのです」

華「麻子さんの心も、これほどに美しいんですよ」ニコ

麻子「……なんだか照れる」


麻子「今日は本当に助かった。少しでもお礼がしたいんだが、夕飯、食べていくか?」

華「いいんですか! わたくしもう、お腹がペコペコで」

麻子「レトルトカレーくらいしか無いが」

華「せっかくなのでご相伴にあずかります」ニコ


華「―――ごちそうさまでした」ペコリ

麻子「こ、米がもう無いぞ……まぁ、覚悟の上ではあったが」ハァ

華「こうして麻子さんとふたりでお食事というのも新鮮でしたね」ニコ

麻子「そうだな。今日は新しい発見が多い」

華「それでは、そろそろお暇を……あら?」


ザァァァ …


ザァァァ …


麻子「雨? もしかして学園艦が秋雨前線に突入したのか?」

華「そういえばそんな放送をしていたような……たしか、明朝には上がっているとのことでしたが」

麻子「それなら泊っていけばいい。あ、明日は所信表明だったか」

華「お昼休みを利用しての放送なので大丈夫ですよ。麻子さんこそ良いんですか?」

麻子「ああ。どうせ私は朝起きれないし、先に学校に行ってもらって構わない」

麻子「それに、今日はなんだか五十鈴さんと居たい気分だしな」

華「うふふ、光栄です」ニコ


チュン チュン …


華「んぅ……朝、ですね。よかった、雨も上がってます」

麻子「ぐぅ……」

華「やっぱり麻子さんはまだ眠ってますね。起こしてしまうのも申し訳ないですし……」

華「失礼になりますが、ここはわたくし一人だけ先に学校へ―――」


麻子「おかあ……さん……」

麻子「ぎゅって……して……」


華「…………」

華「少し遅刻するくらいなら、問題ありませんよね」

華(沙織さん、みほさん、ごめんなさい。ケータイの着信で起こしてしまわないよう、電源を切っておきますね)


・・・・・・
・・・



  「麻子、麻子」


お母さん。なあに?


  「昨日はお花、ありがとう。お父さんも喜んでたわ」


そっか……良かった。


  「良い子ね、私たちの麻子」


撫でるのは、くすぐったい……



・・・
・・・・・・


麻子「んぅ……。もう朝、か……」ウトウト

華「すぅ、すぅ」

麻子(っ!? な、なんで五十鈴さんが同じ布団の中に!? ///)

麻子(い、いや、それだけじゃなく、私の頭が抱きしめられてるぞ!? ///)

麻子「ん? 五十鈴さんがまだ寝てる? いつもより早く起きたのか?」モゾモゾ チラッ


[11:39]


麻子「」


麻子「お、起きろ五十鈴さん! 何をやってる!」ガバッ

華「ど、どうしたんですか、麻子さん!?」パチクリ

麻子「時間を見ろ! どうして寝坊なんかした!」

華「えっ!? ……つい、麻子さんの抱き心地が良くて」エヘヘ

麻子「うっ/// そ、それは今はいい! 早く準備をだな!」

華「朝ご飯は……?」

麻子「あるわけないだろ!」


ドタバタ ドタバタ

麻子「このままじゃ、私が新生徒会長を演説に遅刻させたことになってしまう!」

麻子「きっとただの遅刻扱いじゃ済まされないぞ……風紀委員に何されるかわかったもんじゃない……!」

華「あ、でも走れば間に合うかも知れません!」

麻子「……寝起きで走れと?」

麻子「それに、私の運動神経はともかく、五十鈴さんは体育が苦手だったような……」

華「ええと、わたくしの手を引っ張っていただければ……」

麻子「くそっ、もうそれしかない! 五十鈴さんなんて大嫌いだっ!」ギュッ タッ タッ タッ

華「ごめんなさ~い!」タッ タッ タッ


―放送室―


桃「おい! 五十鈴華は見つかったか!」

優花里「いえ! どうやらまだ学校に来ていないようです!」

沙織「何度も電話してるんだけど出ないよ~!」

そど子「風紀委員も学園艦中を探してるけどまだ発見できてないわ!」

柚子「ホント、どこ行っちゃったのかなぁ……」


ガチャ! 


麻子「ぜぇ、ぜぇ……」プルプル

五十鈴「はぁ、はぁ……」


みほ「ま、麻子さん!? だいじょうぶですか!?」

麻子「五十鈴さんを、連れて来た……あとは、頼む」バタッ

杏「冷泉ちゃんは小山と西住ちゃんに任せた! 五十鈴ちゃん、準備オッケー? 本番行くよ!」

華「は、はい!」ドキドキ

沙織「頑張って華! 落ち着いて!」

優花里「何かあれば後続の私たちがフォローしますので!」

桃「放送開始、5秒前。3、2……」スッ


華「大洗女子学園の皆さん、こんにちは。新生徒会長の、五十鈴華と申します―――」


・・・・・・
・・・


  「麻子、麻子」


お母さん。手、握っていい?


  「ええ。頑張ったわね、麻子」


だって、華さんは友だちだから。


  「そう。素敵な友だちね」


うん。私の、自慢の友だち……



・・・
・・・・・・


―保健室―


麻子「お母さんの手……温かい……」ギュッ

華「…………」ドキドキ

麻子「…………」

華「…………」ニコ

麻子「……五十鈴さん。説明を頼む」

華「麻子さんの髪がお顔にかかっていたので、払おうとしたのですが、そしたら麻子さんに手をつかまれまして」

麻子「……すまん」パッ

華「いえ、その、どういたしまして?」


麻子「演説、結局聞けなかった。すまない」

華「沙織さんも優花里さんもつつがなく終わりましたよ。すべては麻子さんのおかげです」

麻子「後で録音を聞かせてもらおう」

華「わたくしの方こそご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」

麻子「そんな堅苦しく謝られてもな」


華「でも、わたくし、麻子さんに嫌われちゃいましたし……」

麻子「あれは冗談だ」

華「本当ですか?」

麻子「あ、当たり前だろ! そっちこそからかってるのか?」

華「いいえ、からかってなどいません。冗談だというなら、わたくしのこと、嫌いじゃないんですね?」

麻子「う……。やけに突っかかるな」

華「そこのところ、どうなんでしょう?」

麻子「……五十鈴さんのこと、嫌いじゃない。決まってる」


麻子「自分の道を持ってて、礼儀正しくて、そんな五十鈴さんを嫌いなわけが無い」

麻子「前におばあが入院した時、私のことをおぶってくれただろ? その時思った。五十鈴さんは力持ちでやさしくて、あたたかい」

麻子「今日の朝だって……私のために寝坊してくれたんじゃないか?」

華「いえ、あれはご飯の食べ過ぎで起きれなかっただけです」

麻子「ふっ。そういうところも嫌いじゃない。むしろ好きだ」

華「うふふ。それは良かったです。わたくしも麻子さんのこと、好きですよ」ニコ

華「ご家族を、そしてお友達を大切にする麻子さんのことが大好きです」

麻子「は、恥ずかしいこと言うな」テレッ


麻子「その、これからは生徒会長だろ? "五十鈴さん"と学園中の生徒が呼ぶことになるわけだ」

麻子「その中で私も五十鈴さんと呼ぶのは、なんだか悔しい」

麻子「だから……これからは、華さん、って呼んでもいいか?」

華「ええ、もちろんです」ニコ


麻子「華、さん」

華「はい、麻子さん」ニコ

麻子「華さんは、私のこと、好きなんだよな?」

華「え、ええ。大好きですよ?」ドキッ

麻子「その……。華さんに、頼みが、ある」

華「は、はい。なんでしょう」ドキドキ


麻子「今日の遅刻、生徒会長権限で取り消してくれ」

華「ダメです♪」

麻子「―――やっぱり華さんなんて大嫌いだぁ!」







おわり

読了ありがとうございました

過去作
・まこみほ
【ガルパン】麻子「西住さんの睡眠は安眠戦士マコリンが守る!」
・まこさお
【ガルパン】麻子「なんでも言うこと聞く券……?」
・まこゆか
【ガルパン】優花里「許してください!」麻子「許さない」

ほんとすき

乙乙です

素晴らしい

連日おつ

乙でございます

素晴らしかった、ありがとう


あんたやったんか……毎回良質なssをありがとう(拝み)

心が洗われるな

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