早坂美玲「缶バッチ」 (15)

アイドルマスターシンデレラガールズの二次創作SSです。
ほんの数レス分の短いものになります。


登場キャラクター:早坂美玲、村上巴、藤居朋


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早坂美玲「なぁ、朋がラッキーアイテムが缶バッジって言ってウチの狙ってくるんだけど」


ウチは言いたくない相手にこう言い放った。
でも、コイツに言うしかなかった。


村上巴「あ?」


村上巴。
先述した朋こと藤居朋がリーダーをしているユニット『ともキュービック』。
この巴はそのメンバー。

もう一人いるんだけど、今はいない。
どころかこの部屋にはウチとコイツしかいない。


だから相談するにはコイツしかいなかった。


美玲「だーかーらー!オマエんところのリーダーがウチのバッチ狙ってくるんだって!」

巴「ウチにはカンケーなか、犬が追い払えばよか」

美玲「だー!もう犬犬言うな!!!今日のはデビキャだしッ!チビババァには分からないもんなッ!」

巴「わかるかそんなもんっ!ってぁチビババァとはなんじゃ!!!広島弁じゃしばくぞ!!!」



 ─ ─ ─ ─ ─



ウチ、早坂美玲と村上巴は仲が悪い。
いわゆる犬猿の仲だ。

元々仲が悪い、・・・はず。
波長がまったく同じというか、色々同じなのだ。

一人称も、ちょっと素直になれないところも、目指すところも。
とある共通の友達に頭が上がらないところも、先輩に可愛がられて拒否できないところも。

違うところは、わずかな年齢の差と、住んでいたところぐらい。あとは趣味嗜好かな。


それくらい、同じ。
自分の嫌なところだって、アイツを通して見えちゃう。



・・・つまり、同族嫌悪。



でも、完全に嫌いじゃない。
信頼はしている。


だからこそ、今回みたいに話題を振っては何故か喧嘩腰になってしまう。



 ─ ─ ─ ─ ─



美玲「ぐむむむっ」

巴「ぐぎぎぎっ」


二人「ふんっ!!!」


互いにそっぽを向いてしまう。
心のどこかでは、助けて欲しいはずなのに、ついつい対抗心が湧いてしまう。

まるで磁石の同じ極を向けたように。



でも、でも、でも。



ホントにタマに。



何かが“噛み合う”、そんなときがある。



巴「・・・自分で作ればええじゃろ」

美玲「は?」


ウチは驚愕した。瞼をこれでもかと見開いた。コイツが提案?


巴「智香姐さんが持ってきてたんじゃ、自分で作れるやつ」


そう言って、巴は部屋の戸棚を漁った。
皆が持ってきたグッズがまとめられている中から、いかにも小中学生が喜びそうなオモチャの箱が出てきた。


巴「ん」

美玲「あ・・・」



巴はわざわざ探して手渡してきた。埃まみれの髪を払いながら。
いや、コイツはこういうヤツだ。



分かる、自分で分かる。


誰かが困ってたら絶対見捨てないし、手が届く範囲なら勝手に体が動く。
勝手に体が動いて、自分が例えゴミだらけになったとしても、平気な顔をする。


だって、ウチだってそうするもんッ!




巴「ふんっ」


後ろを向いたコイツに自然に言葉が出る。
譲歩を見せた相手に自分も何か見せなきゃという気分になる。


美玲「・・・一緒に作らないかッ!」

巴「あ?」

美玲「そのまんまの意味だよッ!だって、ウチはオマエんところのリーダーの趣味なんてあんまり分からないし」

巴「・・・わーった。さっさとだせい」

美玲「え?」

巴「さっさと出さんか、朋姐さんは○時に帰ってくるゆーっとったからな。サプライズというヤツじゃ」



あの巴がノった。
心の中でマジか、とさっきとは違う意味で驚愕した。



 ─ ─ ─ ─ ─


それから、ウチらは淡々と作業を行った。


美玲「・・・なぁ“巴”、朋の好きなものって占いって言うけど・・・」

巴「占い・・・星座占いは毎日チェックしていたはずじゃ」

美玲「じゃあ、誕生日の・・・」

巴「蟹」

美玲「それッ!」


蟹座のマークを見て、少し顔を熱くしたのは内緒。




巴「“美玲”、そちらから見て朋姐さんはどう見えるん?」

美玲「甘えん坊」

巴「知ってたわ。じゃが、身をわきまえている」

美玲「どういう事?」

巴「自分一人の限界を知ってる、という事じゃ」

美玲「・・・限界」

巴「じゃが、誰かと一緒なら限界を突破できる事も知っている」

巴「言ぅてしまやぁあの人は月。誰かによってさらに綺麗になる人」

美玲「月」

巴「ああ、智香姐さんは太陽で、ウチは華、そして朋姐さんは月。三人で・・・『ともキュービック』じゃ」

美玲「ふぅん、だからそのマークのバッチ作ってたのか」

巴「ふふっ、シンボルマークというやつじゃ」


ちょっとだけ羨ましいと思った。




そうして時間は過ぎていった・・・。



藤居朋「たっだいまー!!!つっかれたー!!!!」

巴「おかえり」

美玲「・・・おかえり」


その問題の人が帰ってきた。


朋「巴ちゃんパワー充電させて~むぎゅ~」

巴「やめんか、こっちにせんかい」

美玲「やだ、そのままで」

朋「ひ、ひどいっ!・・・って、待ってこれって」


気づいたようだ。

年下のような年上はテーブルの上に並べられたバッチを手に取る。

ウチら2人で10個ほど、似合いそうなデザインを施したものだ。


美玲「ずっとラッキーアイテムだって欲しがってたから作ったんだッ!」

巴「普段のお礼じゃ」

朋「え、えっ・・・ちょっと待ってよ、あたし泣きそうなんだけど」


朋はひとつひとつじっくり見て、大事そうに抱きしめた。

サプライズは成功したようだ。



朋「ありがとね、2人とも」

美玲「えへへ」

巴「ふふっ」

朋「でもびっくりしたわ!巴ちゃんと美玲ちゃんが仲良く作業しているなんて」


2人「仲良く・・・?」


朋の発言で互いの顔を見合わせた。


2人「はっ!!」


そして2人いっぺんに明後日の方向を向く。


美玲「んなわけないしッ!!!チビババァとは競争してただけだしッ!!!」

巴「ウチが犬と仲良くするわけがなか、朋姐さんに喜んでもらうためで」


なんで仲良くしていたんだ?と頭の中で渦巻く。

言うなればたまたま噛み合ってただけ、そのはずだッ!



朋「ふふっ、2人が仲が悪いのは分かったわ♪」


朋は嬉しそうにこちら2人の頭を撫でてくる。

嬉しいけど嬉しくない!!!!


朋「こんな仲の悪い子たちに慕われるなんて幸せねー♪」


美玲「だーッ!ニヤニヤするなぁ!!!」

巴「全然わかっとらんわっ!!!!」



ウチも横のチビババァも、ボサボサの頭で口を尖らせてあらぬ方向を見続けた。





今日起きたこの事は、特別なことじゃない。


ウチと巴が喧嘩をすれば、ふと仲良くしている時間がある。


そして、また喧嘩している。


時々たまに、日をいくつか跨げばまた起こる。



・・・そんなこんなで、事務所のみんなが口を揃えてこう言うんだ。



2人は仲が悪いのが、仲が良い証拠だって。




終わり

以上です。ありがとうございました。

リハビリがてら友人にお題を出して頂きまして、書き上げました。
ある程度、初見でも、私の以前書いてたシリーズ読んでた方でも読める内容にはなってるはず・・・?



ではまた。

おつおつ

一応突っ込むとお嬢はウチじゃなくてうち

生きとったんか、嬉しいわ

続編待ってるうちにこっちはもう社会人になっちまったよ

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