モバP「誰にでも見せる顔」 (43)

アイドルマスターシンデレラガールズのSSです。
ゆっくり投下ですがお読みいただければ幸いです。

期待

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 しゅこ、しゅこ、しゅちゅ、ずちゅ…………しゅっ、しゅ、しゅ、しゅ…………ぃ、

「あっ、これ……Pチャン、キモチいい? にゃふふふ、みくの手の中でぴくんっ、って震えて、どんどんおっきくなってってるにゃぁ……」


 れろ、れろ、ちろちろ……れりゅっ、ちゅちゅ……っ、

「はぁむ、あむっ、んく……、おクチ、入りきらない……ん……っ、しゅちゅっ、んちゅ……ん……っ!」

 ……くびゅっ、びゅっ、びゅく……!

「んんっ、ふ……、んっ、んぅ、う…………ごくん、こく、こく……ふぁぁ、ほァ、ほ…………ぁ」 


 ちゅぷ、にゅじゅっ! じゅぷっ、ぷちゅっ、とちゅ……っ

「ふ……にゃぁぁぁっ!! あはっ、はぁっ、Pチャ、深ぁ……い!」

 こちゅっくちゅっ、じゅっ、じゅくっ、ずちゅっじゅっじゅっ、

「あ、やっ、あっあっ、え、えっちなカオしてるって、しょんにゃ、あっ! あっあっあっ、あああぁ!!!」


――ああっ、んあっ、にゃあッ、あっ、ああ……あ、アぁ……ッ!


――は、はぁ、ふぁ……Pチャ、Pチャン、も、もうねないと、あさ、起きれなくなっちゃうにゃっ、あアああっ!!


――アッ、らめ、んむっんっ、んにゃあっあ…………

 





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 たまには寝坊もしてみるもんだ。
 
 こうして前川さんと同じ電車に乗れた幸せを噛みしめ、つくづくそう思う。

 彼女は駅のホームに、普通の女子高校生の様にして居た。

 というか、次の急行待ちの列に並んだら、たまたまそこが彼女の後ろだった。

 斜め後方から、そっと横顔を覗き込む。眼鏡と、大きめのマスク。普通なら正面から見たってそうそう気付くもんじゃない。クラスメイトだからこそ分かる立ち姿だった。

 声をかけた瞬間の、びっくりした猫みたいな表情はマスク越しでも分かった。


 電車通学っていうのはなんとなく知っていたけど、いつも通りの時間じゃ一度も会ったこと無かったから。まあ普段は電車も大混雑でそれどころじゃないってのもあるし。

 いつもこの電車なの? ってさりげなく聞いたら、今日は早く来るつもりだったけど、準備に手間取っていたら結局遅れたとのこと。

 そんなこと言って寝坊したんでしょうって言ったら、照れくさそうにしてた。

 目の下に薄いクマがあったから、夜更かしでもしたんでしょって決めつけたら、まーそんなところって言って恥ずかしそうにそっぽを向いた。

 でも彼女はもう学校に連絡して、お咎め無しにしてもらったらしい。何それずるい。

 まあ仕方ないんだろう。どうせ仕事がらみだろうし。

 だって押しも押されぬ人気アイドルなんだから。

 それにしてもテレビでの猫キャラの印象が強すぎるせいか、こうして普通にしていると他の乗客は全然彼女に気が付かないようだった。
 
 そのことを言うとすごい複雑そうな表情をしたもんだから、俺は思わず吹きだしてしまった。

 すると彼女はちょっと拗ねたようにして、まあまあ、なんて言ってなだめて。
 
 そして、どちらともなく笑いあった。


 自分としてはごく自然にやりおおせたつもりだ。

 内心、心臓バクバクで、嬉しさで叫び出しそうなのをずっとこらえてた。

 あの前川みくと! 

 クラスじゃなんとなく距離を取っているような感じだけど、案外普通に、イイ感じに喋れるじゃん!

 そんな彼女を――学校までのほんの短い時間だけど――俺だけが独占できる幸せを噛みしめていた。 




同級生視点は本当に抜けるからもっとやれ

あれっ?前は目線投稿逆じゃなかった?違う人?
でも期待

前のもよかったから期待だな

誰か前のを教えて

一緒の人かわからんがここを大人で検索すりゃ出るよ

thx
この人か、期待

おつ

おつ




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「……すべすべ、ですか? ふふっ、温泉とサウナのおかげですね……んっ、あ、ちゅ……」

 しゅちゅっ、にちゃっ、かぷ……っ、こりっ、

「んっ、ううぅ……、吸っちゃぁ、だめぇ、ん、きゃぁ、あ!!」

 ぺろっ、れろっ、こりこりっ、くり……っ、

「ん、はぁ……む、んん、ん…………ふあぁ! は、はあ、はぁ……あ、お、おっき……」

 すちゅっ、

「ぁん……! その……となりまで、聞こえちゃうから」

 ぴと……

「ちゅー、して、ふさいでてくださ……んちゅっ、ん…………んんんっ!」

 ずりゅっ!!

「んふ、んあ、ふぅあっ! あ……アツぃ……っ、い、やっ、あっ、く……ぅ!」

 ぱん、ぱんっ、ぱちゅ、ぱちゅっ、じゅぷ、ぐぷっ、

「んやっ、あっ、が、ガマンくらべっ、なんて……っ、む、う、ん、ん……ぁ! いやっあっあっ」


 ごぷ……、どぷ……、

「は、ふぁ、はあ、はあ、あ…………っ、ちょ、ちょっと、おやすみ、しませんか……おふろ、おふろで、また……」




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「これ、よかったら食べてね?」

 昼休み、見飽きた弁当箱の隣にそっと差し出されたてのひら。

 その上にのった温泉まんじゅうがもちろん本題なんだけど、包装の和紙よりも白い指先に目が行ってしまうのは仕方がないことだ。

 手首から、見えない血管を遡るようにして視線を上げてゆく。

 そこにある柔らかな笑みが、他でも無く俺に向けられている。

「……おー、ありがとう!」

 口の中に残っていたものを無理やり全部飲み下して答える。声は控えめに、代わりに頭を全力で縦に振る。 

 そして再びまんじゅうに視線を落とす。

 それはてのひらにのったまま、一向に机に置かれる気配が無い。

 もういっかい顔を上げると、高森は微笑んだまま、ハムスターのように小首を傾げてみせる。

 ――ひょっとして、つまんでいいのか?

 思いもよらぬ機会を目の前にぶら下げられ、俺は固まる。が、

「ああ――ライブで、温泉街に行ったの。とっても素敵なところだったから、雰囲気だけでも、おすそわけって思って」

 その一瞬で、彼女は机の上にちょこんとまんじゅうを置いてしまった。

「あ、ああ、そうだったんだ……ほんと、ありがとう!」

 少しでも落胆に気付かれないよう努めて元気に礼を言った。

「なんてところに行ったんだ?」

 聞いたことはあるが行ったことは無い街の名前が返ってきた。へー、そうなんだという適当な相槌しか打てない自分が情けない。

 ここで会話を続けられたら、出る芽も――まあ万に一つくらいは――あるかもしれないってのに。

「そんなによかったんなら今度行ってみようかな、俺も」

 もう一度、緩やかな笑みが返ってきた。

「うん、温泉も良かったけれど、街をお散歩するのも楽しかったから、考えてみてね」

 そして彼女は次のクラスメイトに向かう。

 その背中を未練がましく追う俺。と、くるり、振り返り、

「そうそう――お菓子、先生にはヒミツ、ですよ?」

 今まで見たことの無い、いたずらっぽい微笑み。

 これも俺に向けられたものだよな? そう思っていいんだよな?

 ――そう思うことにして、俺は小さく手を振った。ヒミツっぽく見えるように。



高森って藍子ちゃんじゃなくてなつ姉が出てきて
みくにゃんが続いたのかと勘違いした…

モモンガおっすおっす
待ってたで




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 ざぶん……っ、

「……ぷはっ! ふぅ、そろそろ上がりましょうか。えへへ、Pさん、泳ぎ上手なんですね。私、もうくたくたになっちゃいました」

 ぺた、ぺた……

「はぁ、ふぅ……それじゃあ、シャワーを浴びて……きゃっ?! あ、その……あの、私、とっても疲れちゃってるし、午後から学校、行かないといけませんから……」

 ぴと……

「……その、少しだけ、なら」ギュ…



 くちょ、くちゅっ、れろっ、しゅちゅ……ぅ、

「あむ……っ、ぷほっ、ふぁぁ……んむ……やぁ、水着、ずらしちゃ……」

 くちょっ、にじゅっ、しゅちゅっ、すりゅっ、

「おむっ、んむっ、ぁむ……ぷほ……シャワー、あついの……のぼせちゃいそう……はぁ、はぁ、ふあ、あ……ぁぁ」



 ごちゅっ、どちゅっ、ぐちゅっ、ぷちゅっ!!

「ふぁっあっ、あ……あああっ!! らめ、えっ、うあっ、んあっ、アッ!!」

 じゃぷっ、ぶちゅっ、ばしゃっぱしゃっぱしゃっぷしゃっ!!

「んあっ、ああっあっあっぃぃ!! 膣奥(オク)、とけひゃうっ、みぁみ、壊れちゃうっ!!」

 とちゅ……

「ほあぇ……?」

 びゅぅ、くゅ、びゅくびゅく、どく……っ!

「あヒっ、いい……っ! あむっ! んっ! んんんっ!!!」

 じゅぼ…………ごぷ、とろっ、とろ、とく……ん、

「ほぇあっ、んむっ、あむっ、んっ、んあっんっれろっ、ぷほ……はー、はー、ハ……ぁ」



「あ、まだ……まだぁ、もう、すこし、んー………………んちゅっ、ン……ぅ」


 にちゅっ、ぬちゅっ、じゅぷっ、じゅくっ、じゅ……ぅ、




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「……たく、全員ドタキャンかよ」

 約束していたはずの勉強会。どいつもこいつもサークルだのバイトだのいろいろな理由をつけて、日曜午後のゼミ室に来たのは俺一人だった。

 レポートの提出期限間近だから、なんかやらないとまずいんだけど……みんなもう目処が付いてるから来なくてもいいやってなったのか? 焦ってるのって俺だけ?

「はぁ…………どーすっかな」 

 嘆いたところで仕方がない。まだ図書館とか喫茶店の方がやる気になりそうだと思い、腰を上げたところに――部屋の前の方でドアノブの回る音がした。お、やっと誰か来たか――そう安心して座り直したのもつかの間。


「――あ、お疲れ様! 久しぶりだね」


 遠慮がちに開かれたドアから現れたのは――同じゼミ生にして、アイドルの、新田美波だった。 

「……お、おう、久しぶり」

 返事をするのがやっとだった。 

 ゼミ仲間といっても、向こうは仕事の方が忙しいせいで普段の時間は余り出席してないし、個人間での絡みもほとんどない。まあ同じゼミに在籍してるってだけでラッキーな方だろう。

「一応だけど……時間、間違ってないよね?」 

 ドアから一歩踏み出した彼女の全身が視界に入る。特別着飾っているわけでもないのに他の女子と違う確定的な何か。その上にある柔和な表情が苦笑いに変わる。

「んー、今日ここで勉強会だって連絡貰ったんだけど……直前で、皆来れなくなったって。もしかして男子もそう?」

 質問だった。俺は動揺を押し隠して答え、ため息なんかついてみる。

「あ、ああ。みんな勝手だよな。こんなんじゃ勉強会にならないってのに……」 

 そこまでで、俺のなけなしの勇気は底をついた、これまでさんざゲスなことを考えたり吹聴したりしときながら、いざチャンスに出くわしたところで現実はそんなもんだった。

 沈黙。頭ん中をいくら掻きまわしても、それ以外が見つからなかった。

「んーと、それじゃ」

 それじゃ解散しようか、緊張に耐えかねて切り出しかけた瞬間――座っていた俺の上から、ふわりと、香りが降りてきて鼻先をくすぐった。

「その……よかったら、なんだけど」

 恐ろしく近くで新田の声がした。顔を上げる。

「最近私、全然ゼミに参加出来てなかったから、進行とか、いろいろ教えてくれないかな?」

 胸元のボタンの糸さえ見える距離に新田がいた。少し赤らんだ頬に、不安そうな形の眉。引き結んだくちびるは剥き身の柑橘類みたいにみずみずしい。

 緊張、しているのは彼女も同じだと分かった。それが分かって少しホッとして、いいぜ、なんてカッコつけて言ってみた

「……ありがとう! ごめんね? レポート提出前でそっちも忙しいのに」

 彼女の表情はぱあっと明るくなった。いそいそと俺の正面に座り、それじゃ、よろしくお願いします、ってうやうやしく頭を下げたかと思えば、はにかんで笑った。 

 こっちまでつられて笑った。

 そうして勉強をはじめて、空気が緩やかになっていくのを感じた。俺は特等席で、歳相応にころころ変わる彼女の表情を見ることができた。

 勝手に遠ざけていたのは自分の方だったのかもしれないと、途端に大胆なことを考えた。

 意外とこういうのが切っ掛けで……なんて。まあ今日はがっつくような場じゃない。

 これから、考えていけばいい。何枚にも広げたレジュメを俯瞰する、新田の真剣な表情を見ながら、そう思った。






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「もう知らない!」

「つーん、もうPくんのことなんか知らないもん。あっち行ってよ……行ってってば! バカばかばか……ぁ!」


「……だ、らってぇ、ひっく、ぐす……アタシばっかり、Pくんのこと好きみたいじゃん……そー考えたら、すごい……、かなしくて」

「もー。コドモじゃ、ないんだから、そんなんじゃゴマカされないんだから……」


「ちゃんと、言(ゆ)って?」



 こちゅっ、くちゅっ、とちゅっ、ぷちゅ……ぅ!

「はみゅっ、んみゅ……んっ、はぁ、ん…………! あ、アタシも、しゅき、スキだよ……ぉ! P、くん、Pくん……! あっんあっ!」

 とんっ、とんっ、とんっ、とん、と…………んっ!

「ふぃうぁっ! あっ、んはぁっ! お、おナカ、ふかいよぉ! らめらめぇ! ゃうっ、んっんっ!」

 とぴゅるっ、ぴゅくっ! ぴゅちゅっ! びゅぅぅぅぅ!!!!

「あ、あ、あ、ああああああぁぁ!!! れてるっ、あかちゃんっ、デキるよぉ! Pく、ん、Pくんっ!! んぅ……ん!!」


 とぷ、こぽ…………

「……ホントに、オトナにされちゃったね……Pくん……ん…………っ、あい、あ……」

「……あ、うー、やっぱり、ハズいな……うん」


「……だいすき、ずっと、だいすき」







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「ちょっとハナシあんだけど」

 放課後、カバンを掴んだ瞬間、城ヶ崎に呼びとめられた。

 なんだよと、精一杯強がってみせる俺を無視するように、城ヶ崎は俺に背を向けて教室の外へ歩み出した。

 顔はよく見えなかった。でもその背中がいつも以上に小さく見えて、俺は付いてゆく以外の行動を取りようがなかった。

 
 ずんずん進む城ヶ崎は――なんどかこちらを一瞬だけ振り返り――じめじめした体育館裏に行き着くまで頑なだった。

 その小さい歩幅は、むしろ俺がアイツを追い越さないように苦労したくらいだったが、それを茶化すことはできなかった。
 
 高なる心臓は俺自身が一番感じていた。

「で――なんなんだよっ」 

 自分を奮い立たせるために先手を打った。その声は思いのほか強く響いた。

 今日は体育館の運動部は休みの曜日みたいだった。それか、特に熱心でも無い部員がまだ到着していないだけか。

 一拍置いて、城ヶ崎は振り返る。夕日がもろにその顔にあたる。

 久しぶりにまともに見た気がする。


「最近、アタシのこと避けてない?」 

 イキがった態度は一瞬でその中心を打ち抜かれる。


『お前は姉ちゃんみたいにはなれない』

 ――悔し紛れと、それ以外の理由で言ったことば――は、燃えカスとなって自分自身を苦しめていた。

 
 結果アイツは、アイツがあれほどあこがれ続けた姉ちゃんと、まったく見劣りしないくらいのアイドルとなった。

 みじめ過ぎて、情けなくて、俺は前みたいに、アイツに絡めなくなった。

 きっとアイツは、前みたいに俺に絡まれなくなったと思ったんだろう。

「そーゆーの、イヤなんだけど」 

 イヤ……嫌、なのか。


「まーアンタが色々言ってくれたのはモチ覚えてるけど、もうアタシもコドモじゃないしー? それくらい気にしなくったってぜーんぜん問題ないんだから!」

 かちん、ときた。

 それは久しぶりで心地いい音だった。

「はあ? こっちこそぜんっぜん気にしてねえし! ってかお前まだまだガキっぽいっての!」

 自然と出てくる悪態に、城ヶ崎はむしろ嬉しそうな顔をした。

 そんな顔するなよ。頼むから。冷静ぶってた頭が押し流される。

 今まで通りを。それよりもっとを、考えてしまう。

 
 テレビで、雑誌で、映画で見るより、活き活きとした顔をみせられたら、どうしても。



おつおつ



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「あ、あの……Pさん、千枝、その……っ」

「この間……お、オトナに、なったんですっ。まだ、ママにも言ってません……Pさんに、最初に、伝えたくて」

「ちょっと怖かったけれど……千枝、成長してるって。Pさんに相応しいおんなのひとになってるんだって、なれるんだって……でも」

「こうも思ったんです……今の千枝をあげられるのは、今だけだって。だから……」

 ぎゅー、

「今だけの千枝……今のうちに、見ておいてくださいね」



 ぐっぷ……むにゅ、ぐぷぷぷぅっ!

「ひっぁっ、ああああぁっ、ああっ!! お……っきぃれすっ、Pさ……ぃぁぁあ!!」

 ぐぐ…………じゅぷっ! ずろろろろ……ぶちゅっ、つゅ!

「ひにゃ、ふぁ…………ぁあああ”っ! お、はぉ…………んはぁっ!」

 むちゅっ、ちゅぱっ、れろ、くちゅ……ちゅっちゅれろぉ、いちゃいちゃぁ……

「ふ、ふぅ、はぁぅ、ふぁ……す、しゅごいれすっ、ちえ、ちえ、いつもより、おナカのおくまで、ひくひくしびれて……」

 こちゅっ、こちゅ、くちゅ、くちゅっ、

「Pさんのカチカチ、おへそくらいまでキてるの、わかって…………ゃんっ!」

 とちゅっ! つちゅっ! とんっ、とんっ、つんっ、とゅん……!! 

「ひゃひっ、いひゃぅぁ!! あ、りゃめっ、らめっ!! ふ、ひ……ぁ! んあっあっあっ!」

 びゅるるる! びゅるっ! びゅくるっ、ぶぴゅっ、びゅー、

「ひぃああっ!! あっ! あっ! あああ…………ァ!!」

 どぶっ、どぷー、どぷー、どぷ……ぅ、


「はー、はー、はーっ、はぁ、は……ぁ、ぇへ、ふぇ……ちえも、しゅき、れすぅ……んちゅっ、ん……」







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 昼休みの終わり、校庭から教室に戻る途中で、他の奴に言われて気が付いた。上から2番目のシャツのボタンがどっかに消えて、白いひもだけがひょろひょろ飛び出していた

 後半くらいにファールもいいとこの掴みかかり方をしてきやがったやつのせいだろう。そういえばイヤな感じの音がしたのを覚えてる。

「あっはっは、かーちゃんに怒られんぞおまえー」

 教室に戻ってもしつこく絡んでくるそいつをそろそろシメようかと立ちあがった瞬間、

「きゃっ!」
 
 すぐ横で誰かが驚いた声で、オレ自身もビビってしまった。

「あ――ごめんね、ボタン、取れちゃったんだなって思って、じーって見ちゃってたの」

 恥ずかしそうに微笑みながら言ったのは、佐々木だった。教室では隣の席で、そこにはもう教科書もノートもきちんとそろえて置いてあった。

 まだ汗だくのオレたちとはえらい違いだ。はん、だか、ふん、だか言って、オレは顔を背ける。

 とりあえずもう一回かーちゃんがどうだとダチが言おうもんなら、その時はぶん殴ってやるぞと心に決める。

「――ママに怒られちゃうの?」

 まさか佐々木から言われるとは思わなかった。ハンシャ的に悪口を言いそうになるその前に、もうひとこと、佐々木は。


「……千枝、できるかも、ボタン、取ってある?」

 オレは佐々木を見た。まじまじと、正面から、佐々木の顔を見てしまった。

 
「じゃあ、脱いで?」

 放課後、二人きりの教室で佐々木にそう言われ、背筋によくわからないものがはしった。言われるがまま無事だったボタンをひとつひとつ外して、もたつきながらソデを抜いた。 
 
 汗を吸ってじっとりとしたそれを佐々木はイヤな顔一つせず受け取り、ちょこんと座った膝の上に広げた。


「似たようなボタンならたぶんあるから……えへへ、男子、元気だもんね」

 裁縫箱をまさぐる佐々木は、あまりにオレが見つめたせいか、はにかみながらそんなことを言う。

 少し待っててね――そう言う佐々木の小さな手につままれた針のするどさが、ふしぎなほどオレの目に焼き付いた。


 迷い無くはしる裁縫針が、夕日を受けてキラキラ光る。それはまるで、佐々木の指先が輝いているみたいだった。

「すごいな、佐々木は……オトナ、だな」

 思わず出てきた言葉に、佐々木は、子供っぽく笑った。


「はい、これで大丈夫」

 佐々木の手から、オレのシャツが返ってくる。ほんのり残った体温は、もともとか、それとも、佐々木のか。

 あんまり目立たないとは思うから――そう付け加える佐々木の言うとおり、よっぽどじっくり見なきゃ分からないくらい同じようなボタンで、同じような付き方だった。

「ごめんね、千枝、レッスンだから急いで帰らなくちゃ」 

 慌ただしく裁縫箱をしまっていた佐々木は、本当にすぐにでも席を立ちそうだった。オレが礼を言うかどうかなんて気にしてもいない感じだった。それをどう思えばいいのか、オレには分からなかった。


 一緒に校門をくぐって、道を別れてから、着てるシャツをもういっかい見る。ほとんど同じボタン。よく見れば、違うボタン。

 オレと佐々木だけが知っている、ボタンのひみつ。



千枝ちゃんは合法

おつおつ




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――ガチャッ

「……プロデューサー、まだ起きてるのか……? いや、ウチは、その、顔見に来ただけ……いや、たまたま通りかかっただけだっ」

「ふ、フン……ウチはもう寝るからな、歯だって磨いたし……き、来てみろって? なんだよ……ふぁっ?!」ギュー

「は、はなせよっ、ウチは催促なんかして……うるさいうるさいっ! それ以上言ってみろ、ひっかいてやるからなっ、ホントだぞ!」



 ――こちゅっ、くちゅっ、とちゅっ、とちゅ……っ

「はひっ、ふぁっ、あっ、あ……っ、ヤダ、ヤだ……ぁ、はずかし……っ」

 ――ちゅぱっ、ちゅっ、ねちゅっ、れろ……ぉ、

「ぷは……ぉ、はっ、はっ、ハ……ぁ、イジワル、しないでよぉ……もっと、ちゅーってぇ、はぁ……んむぅ」

 くちゅくちゅっ、こちゅっ! こちゅっ! とちゅっ、つちゅ……ぅ!

「ああっ、や、ダ……ぁ! すなおに、いったんだから、やさしくしろよぉ……あん、あンッ!」
 
 むちゅっ、ちゅっ、ちゅぱ……っ

「あぁ……眼帯、はずしちゃヤダ、らめ……っ、みちゃらめっ、あ、あ、あ、あああぁ~~ッ!!」ギュゥー

 

「はー、はー、は……ぁ。ご、ゴメンな……背中、いっぱいツメアト、のこっちゃって……い、痛くないか……?」

 ぺろっ、ぺろっ、れろ、つつ――っ、

「ふぁ……ツバ、つけたら治るかな……れろ、ぺろっ、しちゅ、ちゅう……」



「きゃう……?! も、もぉ……、あしたガッコーなんだぞ……はやくねないと……んっ、んん……ぁ」



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「くふ~~~~~~~~~うぁ……あぁ……」

 朝のホームルームが終わるなり、小さな口をめいっぱい開けてあくびした人がいた。

 それはボクの隣。

 めいめい着席して教科書出したり、教室外にダベりに行ったりするクラスの中で、彼女だけが突っ立ったままいつまでも大あくびを繰り返している。

 それが途切れると、今度は両目をゴシゴシこする。さすがに今は眼帯はしていない。

「……はふぅ」 

 最後にもうひとつ小さなあくびが漏れたところで、ようやく、じっと見続けているボクの存在に気付く。

「な……うぁ? なんだよ、ウチの顔、なんかついてるか?」

 真っ赤になった目で聞いてくる早坂。付いてるも何も。

「夜更かししたの? 仕事?」

「んー……そうだなー。まあ、そんなトコだ」

 ボクの質問に、ぐったりと座り込みながら早坂は答えた。目をつむって今にも寝そうだ。

 途切れそうな会話をどうにかしてつなごうとする。

「大変なんだね。でも、最近楽しそうでよかったよ」

 それを言った瞬間、がばっと早坂は起き上がってまくしたてる。

「た、楽しそう?!  ウチは別に……その……」

 でもだんだんと尻すぼみになっていった。ウソでも楽しくない、とは言いたくないらしい。

「だいたい、なんでウチが楽しそうだとオマエがイイんだよっ?!」

 なんとか言い返そうとしてくる早坂は可愛くてしかたない。

「ほら、転校してきたばっかりの時、『またすぐ地元に帰るかもだけどな』って言ってたじゃん」 

 最初の頃は警戒心剥き出しで、誰とも仲良くなろうとしなかった早坂は、今、早坂なりのやり方で他のクラスメイトとも打ち解けようとしている。

 加えてみんなが彼女の扱いに慣れてきたというのもあるだろうけれど、やっぱり……好きな相手が孤立しているのは、見ていてつらかった。

「もう、帰るって言わないんでしょ?」

 そこまで言うと、彼女はどうしてか少し悔しそうにうなずく。

「ウチ……大事なモノが出来たんだ。だから、もう帰るっては言わない」

 その大事なモノは何か分からないけれど。いつか、その中のひとつになれたらいいなと思う。 

 もちろん、彼女は表立って認めたりしないだろうけれど。

 


お、来てたー
おつ

年齢層低くない?
もっとやれ




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「ん、んふふー、Pはん、目付きヤらしいで? 熱過ぎてヤケドしそーやわー。胸元ぱたぱたーってな……ぁん!」

 もにゅ、くにゅ……

「ん……ぷはっ! ば、バレてもーたなぁ……そ、みんな大好きヒョウ柄やでぇ、んっ! いやぁさっすがPはん、ウマいもんにはっ、目がない……んっ、ん……」

 ぷちっ、ぷち……っ、しゅる……

「は、は、ふぁ……も、もうっ、カンタンに脱がしてくれるなぁ……ウチがコレ買うた時どんだけ恥ずかったか……」

 れろっ、むちゅぅ、くぽっ、くちゅっ、 

「……ちゅっ、んちゅっ、は、はぁっ……っ! ……え、シタ? あ、アホぉ! お、オトメがしょーぶすんのに…ひんっ! 上下不揃いなワケない……んまあ、その、気になるならめくったらぁ、ええやん……」

 ――――ぴらっ、

「ふー、ふー……あはは、ツッコミどころ、ないやろ……? ん……あん……ふぁ……」


「え、ウソやろ、ちょちょちょ待」



 ――ずぷっ、ずちゅっ、ぐちゅっ、ごちゅっ!

「やっ、あっ、ひっ、あっ、」

 にじゅうっ、くちゅっ、さしゅっ、ぴちゅぬちゅずちゅつ、 

「あ、ひっ、いっ、ああっ!! あか、アカンってぇ……いけず、ぇ……! んっ、んっ!」

 ちゅぱっ、むちゅっ、ちゅうぅぅっ、

「ほぇぅ、んっ、いいっい!! た、たこさんみたいにちゅーちゅーしたら、らめっ、ウチ、うち、もう……もぉっ!!」

 ――とんっ! とんっ、とんっ、とんっ!

「お……っ、あぉっ! ふぁっぉ! あ、あか、んてっ、オク、溶け、んあっあっ、あっ! あっ! あっあっ、はああっ! あ”っ、あ”っ!」


 どぷ、ぶぴゅるっ、びゅぅ、ぶびゅぅ、びゅー……


「はー、はー、はっ、は…………ぁ、アホぉ……穿かせたまま、スキマから挿っこむとかぁ、ん……っ、このぉ、ヘンタイさん……んむ……ちゅ……っ」


「えへ……ぇ、次は、買うてくれるん? あはぁ、やらしぃの、ちゅっ、穿かすんやろ……かなわんなぁ……んっ、ん……っ、あ……っ!」






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「そこで波がぐぅわぁーなってなー? 瑞樹はん流されながらもガッツリポーズ決めててぇ……」

 昼休みの教室で、大阪弁と笑いが響き渡る。それは学校中に届いているはずで、まるで学校の中心がココみたいになってるかもしれない。

 それを遠巻きに眺める男三人。

「あーあー、今日もアイツ大人気だな。あの関西人」

 俺の右のメガネが言う。いかにもうんざりした口調だが、それは言った本人にだって負け惜しみと分かっているだろう。

「ま、まあアイドルだしな、難波。有名人だし」 

 俺の右のデブが背中を丸めて小声で続ける。無駄に小さな弁当を拝み込むようにしてつついている。

 もうおわかりだろうが陰キャ三人衆である。

「…………」 

 俺は沈黙を保っている。さも興味が無いと完璧に態度で示している。

 というのは見せかけで、俺の集中は一点、机に腰掛けた難波のスカートに、その際の肉付きのよい太ももに注がれている。

 あんな短いスカートで足組んで落ち着きがなくて、それでいて不思議とあざとさや下品さを一切感じさせないのは本人の陽気がなせる業なのか。

 色気も皆無だから、幸か不幸か、と言わざるを得ないだろうけど。そんなこと言う勇気はとてもじゃないが、ないけれど。

 できるのはせいぜい、取り巻きの隙間からばれないようにスケベ丸出しの視線を差し込むことくらいだった。


「あの人プロ意識高すぎるやろ! てもーウチら全員腹抱えて笑ってもーたわー! …………んー? なんやなんや? 熱い目線を感じるでぇ?」

 
 
 難波の声が聞こえ、俺は自分の血の気が引く音を聞いた。どっと湧いていた笑いは止んでいた。


 気が付けば教室中の視線が俺たちに集中し、その中心に、難波がいた。デブもメガネももちろん俺もしばりつけられたように動けなかった。

 脚から視線を引き剥がした俺は、今度は難波からの顔から目が離せなかった。少し真顔になった難波は――そんなこと言っている場合じゃないけど――間違いなく可愛かった。

 公開処刑を待つ陰キャ三人衆の前で、彼女の表情が再び笑みに変わった。

「あ! もしかして昼のたこ焼きの青のり歯についとるんかな? んもーはよ言ってや!」 

 素早くポケットから手鏡を出す様に、再び教室が笑いに包まれた。

 もーかなわんわとか言いながら鏡を仕舞うが、難波は続けざまに自分の太ももと膝の間くらいをぺちぺちと叩く。

「ほらほら、そんな離れてへんでコッチ来てーな。ウチのお顔のチェック任しますから!」

 言うが早いが、うすら笑いを浮かべてのこのことデブとメガネが立ち上がる。お前らにはプライドってものが……

 ――意地を張っても仕方ないので、仕方なく俺も立ち上がり、取り巻きの一番外側に腰掛ける。それでもさっきよりはずっと近い。

 さすがにこの距離で太ももを見続けることは出来ないから、俺は難波の顔を見た。

 満足そうな顔で話を再開する難波は、その顔は――眩しすぎて、だから今まで遠くで見ることしかできなかったのだと気付いた。

 難波の話は、全部が全部面白いかと言われれば多分違うだろう。でも俺はきっと、アイツの思う通りに笑っていた。



わざと切り抜かれた下着もいいよね




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「あの……P殿はその、本当にこの白い水着が……? そ、そうですか」

 ぎゅっ、

「実はあのグラビアのあと、友達や部活の仲間に少なからずいじられてしまいまして……ははは、でも、うん……」

 ――ちゅっ 

「P殿に……P殿に好きだと言っていただけるのなら、珠美はもう、それでいい気がしてしまうんです」

 ぎゅーっ、

「えへへ……こうやって抱き締められたらP殿の腕の中にすっぽりです、珠美はやっぱり、小さいですね……」

「それが、いまはうれしく思います」



「っあ、あ、あ、き、おっき……」

 ぐぐぐ……ずちゅん!

「あ、あ、あ!! Pどの、んぅ、ちゅ……んっ! っ、ひぅ、ふぁ……っ!」

 ――ずっぷぷぷぅ!

「はぅん、あんっ! お、ナカッ、ふかぁ……い、はいってるっ、あひっ、イッ!」

 ――っずっ、ずちゅっ、ぐっぐちゅつっ、ずん!

「あっあっ、カタチ、できてるっ、Pどの、Pろのぉ! んうっ、んんんぁっ!!」

 ちゅーちゅぽっ、むちゅっ! れろっ、ちゅぱ、ちゅつ…………っ、

「ンあっ、ああっあっ!!! すっちゃらめっ、コリコリ、らめぇぇっ! それ、かんじすぎちゃ、あひっいっ、いぁぁ! あっ、アッ!!」

 どぷびゅるっ、びゅ! くっ!!

「あああああぁ!!! イ……いあっあっんあぁあああ!!!! あ”っ! あ”~っ!」


 こぷ……ぅ、

「は、はぉ、ほぁ、ふぁー……っ、ふー、ふー…………んっ、ちゅ……ぅ」



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 朝6時50分。
 
 うす暗い職員室の裏手。本校舎よりはいくらか新しい武道場。

 眠ったままの学校の空気を、鍵を外し、引き戸を開ける音が、すっと通り抜けてゆく。
 
 一礼して道場内に入り、全てのカーテンと窓を開け終えてもなお、誰も姿を現さない。

 まあ、それをとがめる気はさすがにない。なにしろ朝練は7時半からだ。

 俺自身も、いくら道場の開け閉めが部長の仕事だからといって、こんなに早く来る必要はないのだ。

 でも、こうして来てしまうのは――習性だ。

 少し前までは、いつも俺より早く道場に到着しているやつがいた。

 そいつは年度明けに転校してきて、ウチで一番弱くて、一番小さくて、だからこそ一番努力していた。名前は、脇山珠美。

 学校に一番乗りした脇山は、俺か女子の部長が来るのを待つ間、ずっと素振りだの筋トレだのをしていた。

 だから、男子の部長として妙な意地を張ったというか、あるいはあまり待たせるのも不憫になったというか――つまるところカッコ付けで俺も早く来るようになったのだ。

 その時間は、俺と脇山だけということがほとんどだった。二人で履物を脱ぎ、カーテンと窓を左右半分ずつ開けたりした。

 必然的に、俺と脇山の間にうわさが立った。

 正直なところそれは望んですらいたことだと、今なら思える。だがその時は――今思えばバカみたいなプライドと――お調子者たちの言動にイラついていた。

 そして言ったのだ。あんなちび、と。ガキんちょに興味はないと。

 もちろん本人の前で言ってはいない。だが必然的にそれは伝わっただろう。そうだと思う。

 脇山は、朝連に来なくなった。時を同じくして、脇山がアイドルの養成所に通っているということが皆に伝わった。どちらが原因なのか、俺には分からない。

 練習にもあまり来られなくなった。

 まあアイツならレギュラー争いに関係なさそうだしなとぼやいた顧問に、身勝手な怒りを抱いたりもした。俺が言ったことも五十歩百歩だというのに。

「……はあ」

 自然と零れたため息で我に返る。気が付けば全ての窓は開け終えていた。時計を見れば、まだ7時を回ったばかり。普段ならあと10分は誰も来ないだろう。

 だというのに、俺は聞いた。パタパタとそそっかしい足音を。

 表に目をやる。と、

「あ……おはようございます、部長!」

 ちょうど一礼を終えた脇山がその小さな頭を上げ、少し緊張した面持ちで俺に挨拶してきた。

 怒られるとでも、思ったのだろうか。嫌われていると、思われているのだろうか。

「……遅かったな」

 きっとこれは、口にしたかった言葉じゃなかった。

「っ、は、はい! すみません!」 

 余計縮こまる脇山に罪悪感を覚える。俺も緊張で逃げ出したくなる。

「次は、前みたいに早く来いよ」

 どうにも押し付けがましい言い方しかできなくて、それが俺の精一杯だった。 

 そんな俺の言い草に、脇山は、顔を綻ばせた。

 また来てもよいと許された――そんなことを考えたのだろうか。そんなことを考えさせてしまったのだろうか。

「は――はいっ! 以後気をつけます。今日も宜しくお願いします!」

 安心したのは俺の方だった。何もかも以前の通り、とはいかないだろうけれど。それでも。




たまちゃんって剣弱かったのか

Pの剣には弱い




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「く、口噛み酒、ですかっ? うちの神社ではそーゆー伝統はなくて……」

「はわーっ?! 私の口噛み酒なんて誰も望んでませんよっ! だってだって、アレですよね?! お米をもぐもぐして、れろるろーって壺に吐いて、一年ほっとくんですよね?!」

「Pさん、ほんとに、その……な、なーんだ、冗談だったんですねっ! ほっ……あ、でも、その……ぉ」

 ぺろ……っ、

「いま私とちゅーしたら、歌鈴のゼロ年物!! なんて、あは、あははは……んむゅっ?!」

 ちゅぱ、ちゅー、

「ん、ふんむ、んにゅ……ぷほっ! あ、ふぇ、ふぁ……」ポーッ

 ちゅ……ぅ、

「P、さ……ん…………んっ、ふにゅ、ん……っ」


 ぴちゃ、むちゃ、むちゅっ、れろ、ぬちょ……ぉ、

「あ……ひんっい! 腰、浮いちゃう……りゃめ、とめ……んっんんっ!! こ、こっちもおさけ、なんれすかぁ? わか、め……? やっ……おく、ペロペロ届いて……ん、あぅ!」


 ず……ぬちゅっ、とちゅっ、ずちゅっ、ぷちゅっ!! 

「Pしゃ、あうっ! んっ! へひゃっ、んにゃっ、うあっ! んっ、ちゅー、ちゅーしてっ、くださ……んっ」

 ちゅっ、んちゅっ、れろちゅっ、ちゅぱっ、

「……ぷほっ。ふえへへ……Pしゃん、Pしゃぁん……んっ、ちゅっ、ん…………ぅ」



「んあっ、ん、あ……ァ!! あ、あああ、ご、ごめんにゃひゃい、かみしゃま、イきましゅっ、かみひゃまぁぁ!! あッ!」


 ごぷっ、どぷっ、ぶくくっ、びゅく…………ぅ、






――――――――――――――――――――――――――――――――



 あの映画で流行った巫女ってやつは、なんとうちのクラスにもいる。

 地元でもあんな感じなの? ってきいたら、まちまちだって。

 じゃあ口噛み酒はって聞いたら、顔を真っ赤にしてぶんぶん首を横に振った。

 そういう質問ばっかりってぼやいてたから、似たような話はやっぱりされるんだろう。


 道明寺はそうやってからかうのが面白い。自分でも性格悪いとは思う。 

 他にも、ドジ踏んだ時の泣きそうな顔や、小さなことにテンパってたり、それが大したこと無いって分かってホッとしたり、

 あとは、何気なくくれるほほえみや、小さなことでいばってみたり、それが大したことないって分かってしょぼくれてみたり、

 数えたらきりがないと思う。というか、多分、コロコロ変わる全部の表情が良い。

 でも、俺の知らない表情もまだまだいっぱいあるんだろう。

 いつかの、結婚式の宣伝で見た表情は、まるで本当に道明寺が結婚したんじゃないかって間違えたくらいだった。

 あの表情は、きっと俺がちょっかい掛けたところで出ないのだろう。

 道明寺が、自分で放たなければ出ない色。そんな気がする。

 悔しくて、彼氏もいない癖に結婚式かよって独りごとを呟いてしまった。


 彼氏、ホントにいないだろうか。

 あとで聞いてみたら、すっごい恥ずかしそうにいませんよの一点張り。まあいるとは言えんわな。

 でも道明寺に限ってウソなんかつけないだろうし、なんか安心した。
 
 彼氏くらい作れよって言った。その続きはまだ言えなかった。

 
 帰り際、じゃあ実家で口噛み酒作るようになったら教えてって言ったら、もうっ! ってプリプリ怒りだした。

 それがどうしようもなく可愛くて、見ていられなくて。


 そしてふと、考える。

 知らない顔が、あといくつあるんだろうか。


これでお終いです。
最初から数えて時間かかり過ぎですみませんでした。
お読みくださった方、ありがとうございました。

乙です

おつおつ

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