竜宮小町「仕事から帰ってきたら事務所が戦場になっていた」 (177)



陽光を浴びて飛散する紙片


飛び交う怒号と銃声


バリケードに分断され、争う人間達



伊織「何よ…これ…。一体、何だっていうのよ…」


窓より射す八月の日差しを浴びて立ちすくむ一人の少女、
人気ユニット『 竜宮小町 』の若きリーダー、水瀬伊織の言に応える者はなかった。

彼女と共に数々の大舞台を潜り抜けてきた三浦あずさも、双海亜美も、
新人ながら冷静沈着な指導で三人を支えてきた敏腕プロデューサー、秋月律子をしても、
眼前の光景を現実の物と受け入れることなど、出来よう筈もなかった。


『3時の方向に敵影確認!』

『怯むなッ!奴らの豆鉄砲なぞ当たりはせん!復旧作業を急げ!』



765プロの新たな門出を迎える筈だったその場所は―――戦場と化していた





SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1375787173

何が始まるんです?



小鳥「皆さん!お帰りでしたか!」

あずさ「音無さん!!」

亜美「ピヨちゃん!!

律子「小鳥さん!何があったんですか!?」


『1時からも来ます!』


小鳥「あ、あの、それが」

律子「私達が出ていた二時間の間に、一体何があったんです!?」


『北壁の二人が孤立してしまいます!射撃許可を!』


律子「出るまでは何ともなかったのに、どうして、こんな、こんな……!」




『許可する!射撃用意!』


小鳥「皆さんのお気持ちは分かります」

小鳥「でも、今は話をしている状況じゃありません。早く避難しないと!!」


『サン、ニ、イチ!てーーーーーーーーーーー!!』


伊織「誤魔化さないで!!」

小鳥「きゃっ!」


『敵のじゅうげきです!発見されました!』

『くっ、逃げるな!応戦しろ!逃げれば撃つッ!』


伊織「これはどういうことなの!?知っているんでしょ!?答えなさいッ!」




真『ズガガガガガガガガガガガガガガガガガッ!』

春香『ばばばばばばばばばばばばばばばばばっ!』

真美『ずばばばばばばばばばばばばばばばば!』

P『いいぞ!頭を上げるなよ!』


やよい『ぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱっ!』

美希『のののののののののののののののののっ!』

千早『RATATATATATATATATATATATATATATATATATA!』


           ↑
          これ




亜美「仕事から帰ってきたら、アイドルがダンボールと机を積み上げて、
   見えない銃で戦争ごっこをしていたでござる」

あずさ「そのままの意味なのに、何を言ってるかわかりません~」

伊織「なんでアンタ達は律子がいないと、片付け一つまともにやらないのよ!!」

小鳥「すみませんっ!すみませんっ!」

律子「あは、あはは、あははははははは」





タイトルの表記に一部誤りがありました。


正しくは


竜宮小町「仕事から帰ってきたら事務所が遊び場になっていた」



です。訂正してお詫びします。





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このSSは、やや中2病気味のアイドル達とちょっとばかしこじらせちゃった大人達が
なぜか古い洋ゲーのことで煽りあったり、
声だけの存在しない銃を抱いて筋書きのないドラマを繰り広げたりするお話です。



ぶっちゃけただの戦争ごっこですが、どのアイドルも根は真面目なので
えげつない駆け引きをかましたり、互いに撃ったり撃たれたりします。

そういうの苦手な方はそっ閉じを推奨します。


あまりマジにならず、ビールでも飲んで気楽な気持ちで読んでください。


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やよい『だめです!近づけません!かりょくが違いすぎます!』

美希『本部は何やってるの!援護射撃がないと犬死になの!』

千早『仕方ないわね…。退避ーーー!退避ーーーー!』


春香『ばばばばばばばばばばばばばばばばばんっ!』

響『北壁!!修復完了だぞ!』

P『よくやった!余った資材(ダンボール)を可能な限り携帯し、直ちに帰還せよ!』


P『歩兵隊!弾幕を貼り続けろ!奴等を東のど田舎に送り返してやれ!』

真美『アイアイサー!ずばばばばばばばばばば!』

真『ズガガガガガガガガガガガガガガガガガッ!』


千早『くっ!何故後方支援がないの!?』



伊織「しかもお互いに指揮系統まで出来てるじゃない!」

律子「」

あずさ「あらー、本格的ですね~」

亜美「どうしてこうなった」

小鳥「いやあ、話せば長くなるんですけどねー」


――――

――



――

―――約二時間ほど前、765プロの新事務所


伊織「ふぅっ、これで前の事務所にあった荷物は運び込めたわね」

律子「それじゃあ、私達は新曲の宣材を撮りに行ってきます」

律子「順調に行けば二時間ほどで戻れると思うので、ちゃんと作業を続けてくださいね。
   帰ってきたら手伝いますから」

アイドル達「「「「 はーーーーーい 」」」」



P「うん。いい返事だな」

高木「仲良きことは、美しきことかな」

小鳥「みんな、律子さん達に心配かけないよう、しっかり頑張るのよ」

伊織「主にそこの駄目大人の三人に言ってんのよ」

伊織「アンタ達が遊んじゃうから、他の皆もつられるんじゃない」

あずさ「まあまあ、伊織ちゃん。それぐらいにしましょう?それでは、行ってきます~」 

亜美「行ってくんねー」バタン



なんぞこれwwwwww




海軍の支援を要請する!



律子「はあ、やっぱりお金かかっても業者に頼むべきだったのよ…」


律子「新しい事務所に引っ越してきたのに、資料の整理はおろか、まだ机一つ並べてないなんて…。
   これではいつ仕事ができるか、わかったもんじゃないわ」

亜美「シャチョー、今回の引越しだってとことんまでケチったかんね~。
   元から備え付けのキャビネットとか、ロッカーとかはそのまんまでいいけどさ」

伊織「その社長もいるし、明日はOA機器やら回線工事やら何やらが朝一で来るもの。
   流石にあのダンボールの山をそのままにはしておかないでしょう……、たぶん」


あずさ「うふふ、でも、みんなもプロデューサーさんも何だか楽しそうでしたね」

律子「はあ…、心配だわ」




P「信用ねえなあ」 

小鳥「律子さん、もっと私達を頼ってくれていいのに…」

千早「普段が普段、ですから」 

真美「だねー。真美、フガイなくて、涙がちょちょぎれるよー」

高木「うむ、だが今は我々に出来ることをやろうではないか」

貴音「高木殿の仰るとおりです。ちゃっちゃと終わらせて、引越しぱぁてぃを始めましょう」

P(さっき昼食べたのに、もう腹が減ったのか)



真「あの、机も並べちゃっていいんですか?明日、コピー機とか来るんですよね?」

高木「ああ、その点は問題ないよ。今度のオフィスは前とは比べ物にならないくらい広いからね」

やよい「うっうー!このフロアだけでも、私の家の部屋がぜーんぶ入っちゃうかもー」

美希「大きいことは、いいことなの」

千早「くっ」

響「だなー、何せ765プロには、遊びたい盛りの連中に加えて転倒系アイドルまでいるからなー」

春香「えっ?なになに?誰か私のこと呼んだ?」キョロキョロ

雪歩(ふえぇ、広すぎておちつかないよぅ…)





高木「よし。ではとりあえず、作業の分担を決めようか」

小鳥「空の机はすぐに動かせますし作業の邪魔ですから、そのまま壁に寄せとくとして、
   まずはこの、山程あるダンボールから片付けないといけませんね」

P「ですね、書類や資料の類は前の事務所と同じ配置でいいでしょう」

P「俺達の机にあった物は机の側に。ファイリングされている物は南側の大きいスチールキャビネットに。
  向こうでも倉庫や金庫に置いてあった物はそれぞれ運んで―――」アーダコーダ



真美「兄ちゃんが仕事っぽいことしてるの、久しぶりに見るなあ」

やよい「こうしてるとー、プロデューサーがまともな社会人に見えますー!」

千早「スーツって恐ろしいわ。腕組みして小難しいこと言ってるだけで、それっぽくなってしまうんだもの」

響「部屋の片付けはプロデューサーの仕事じゃないと思うぞ」





P「―――まあ、仕事関係の書類はそんなところです。後は俺達とアイドルの
  私物のダンボールですが、これは後回しでもいいでしょう。」

P「とにかく分類し、運び、それっぽく収納して、片付いた体を取り繕うことです」

高木「うむ!実情はともあれ、これなら律子君の目を誤魔化せるだろう。そうすれば叱られないですむ」



小鳥「タイムリミットは後二時間…!」

P「俺達の普段のぐーたらぶりを省みれば、時間はあまり多くありません」

P「正直、厳しいと言っていいでしょう」



高木「それでも、どんな手を使っても成し遂げねばならない。たとえ後世の歴史家にどう評されようと、
   我々三人が引越し早々に二十歳そこらの彼女に叱られる様な事態は、絶対に避けねばならない」


高木「大人の、面子にかけてな」





小鳥「私達に、できるでしょうか…?」

P「難しいです。難しいですが、やり遂げなければいけません。ここが正念場です」



高木「彼の言う通りだ。我々一人ひとりの力は弱い、脆弱な一本の葦(あし)だ」

高木「だが、その弱さゆえにこそ、我々は考え、行動し、団結する」



P「小鳥さん。貴女も俺も一人ではありません。社長もアイドル達も、律子に怒られたくないんです」

P「俺達三人と、皆の力があれば、出来ないことなんてありません」


小鳥「……私達と、そしてみんなの力があれば、何だって出来る」




小鳥「私、わかりました。頭でなく、心でなく、魂で理解しました」


小鳥「盲目的な信頼でも、無責任な楽観でもありません」

小鳥「今は魂の、魂の底から、自分を、皆さんを信じています」


春香「だって」


小鳥「私達みんな」


高木 P 小鳥 春香「 サボリ仲間だもんげ!! 」




真「盛り上がってるなあ」ズズー

貴音「雪歩、茶菓子はありませんか」ズズー

雪歩「名古屋名物、上がりういろうがあります。こしあんを使った、とっても上品なういろうなんですよ」

美希「ぶっちゃけめんどいの」ズズー


――――

――



――


小鳥「―――とまあ、それからも春香ちゃんを交えて、そんな感じのミュージカル調の寸劇を何分かやって、
   その後に役割を分担して作業に入ったんで、ピヨぐえっ!」ガシッ!


伊織「な・ん・で、アンタ達はイチイチ遊ぶのよォーーー!」ブンブン!

小鳥「ちょっ、伊織ちゃ、タイム!タイムだから!首!首、チョーク入ってるから!」

伊織「終わんなくても、マジメにやってれば律子だって怒んないわよ!
   それを毎回!毎っ回!こんがらがらせてぇーーーーーー!!」ブンブンブンブン!

小鳥「ぐえっ、バリ、バリアー!バリアー張ったから!」


律子「」

あずさ「あの~?律子さ~ん?」

亜美「ダミだ、帰ってこないや」



P『よぉーし!撃ち方やめ!奴等が引っ込んでる間に敵陣に通じる道を築くぞ!』

P『真は南側を、真美は北側の敵を警戒!春香は引き続き響を援護しろ!』

P『スナイパーがいるかもしれん!見つけたら真っ先に報告しろ!決して頭を出すなよ!』

真 響 春香 真美『アイアイサー!』


律子「」

亜美「まっ、さっきのピヨちゃんの話は聞かない方がいいね。律っちゃん、泣いちゃうよ」




小鳥「げっほ、ごほ、ごほ、おえ…」

伊織「……で?ふざけたなりにも作業には取り掛かったんでしょう?」

小鳥「はい…、ダンボール箱を選り分ける人、この部屋で使わない箱を倉庫に運ぶ人、
   中を出してキャビネットや書類棚に収納する人に分けたのはいいんですけど…」

亜美「うん、必ずしもコーリツ的じゃないけど、そこまではいいよね」



小鳥「覚えてますよね?荷作りの時、すっごいバタバタしたの」

あずさ「はい~、急な話でしたから事務所総出で詰め込みました~」


小鳥「で、私、あの時も詰め終わった時点で薄々気付いてたんですけど、
   どの箱に何を詰めたか書くの忘れたなーって」

伊織「最悪じゃない…」




亜美「あー、あン時、律っちゃんもいおりんも、別の仕事で途中でいなくなったかんねー」

小鳥「そのことに気付いた瞬間、みんなのテンションがダダ下がりしちゃって」

あずさ「時間もないし、いらないものはこっちに来てから処分しようって、
    選別せずに一切合切詰め込みましたからねえ~」



小鳥「それでも仕方ないから、一つずつ開けて中身を確かめ始めたんです」

亜美「うんうん」

小鳥「過去の企画書とか、お金の書類とか、映像とかゲーム機とか、
   細かい系統ごとに部屋の中に積み分けていって」

あずさ「この数ですからねー、お話を聞くだけでも大変そうです~」



小鳥「その作業で一時間位ですかねー。何せ、765プロは結構古い事務所ですから過去の書類が多いんです」

小鳥「ダンボール箱の塔がそこら中にいっぱい出来て、この部屋全体が迷路みたいな様相を呈してきまして」

小鳥「そしたら、プロデューサーさんが言ったんです」

P『 DOOM でこんなステージあったな』

小鳥「って―――」


――――

――



――

―――約一時間ほど前


小鳥「ああ、Knee deep in the dead の何面かにありましたね」

春香「プロデューサーさん、『 DOOM 』ですよ!『 DOOM 』!」

P「お、春香もDOOMerなのか?」

春香「はい!私、小さい頃から『 DOOM 』の大ファンでした!」

P(ほんまかいな)



春香「すごいですよね~。20年も前のゲームが今もプレイされてるんですから」

春香「私も、『 DOOM 』みたいに世代を超えて愛されるアイドルになれたらな~」



春香「なーんてっ、えへへっ」(頭こつんっ)

P「そうだな、春香なら多分なれるさ」

小鳥(他人事みたいに言ってるけど、あなたのお仕事ですよ?)



『 DOOM 』…1993年に発売された、FPSの代名詞的なタイトル、後のFPSゲームに大きな影響を与えた。

         3まで発売されてるが、ゲーム性が大きく異なる為、P達は1と2の話をしている。
         2013年の現在でもファンによって様々なPWAD(改造データ、いわゆるMOD)が作成され、
         いまだに多くのDOOMer達が、火星でショットガンをぶっ放しては脳汁を出している。
         軽快なレスポンスと疑似3Dの爽快なアニメーションが相俟って、非常に中毒性が高い。

『 FPS 』…ファースト・パーソン・シューター、First Person Shooterというゲームジャンル。

       あれだよ、一人称視点で銃とか撃つゲーム。ほら、Call of Duty とか Halo とかあるじゃん?
       操作キャラクターの視界とゲーム画面が同じのやつ。





真「あれ?皆して『 DOOM 』の話ですか?へへっ、面白いですよね!」

P「なんだ、真もDOOMerだったのか。お父さんの影響か?」

真「はい!あの面倒くさいことは抜きで、とにかく避けて撃つ!っていうシンプルなゲーム性が大好きで!」

P(うわ、こっちはマジっぽい)



真「何ていうか、スカーッ!としますよね!ボク、『 Serious Sam 』とかも大好きなんです!」

P「あれは反射神経もいるからなー」

真「でも、難しい方が挑戦のしがいがあるっていうか」



真「ゲームはやっぱり、ルールは単純!なおかつ、チャレンジングなのがいいですよね!ね!」

千早「………………」

P「まあ、複雑な制限の中に解法を見出す楽しさ、ってのもあるから、一概には言えないけどな」

P(なんか千早が怖い)



『 Serious Sam 』…ギャグテイストな世界観と、骨太で鬼畜なゲーム性を両立させた異色なシリーズ。
             1は2001年発売。2011年にはSerious Sam 3: BFEが発売された。
            序盤から本気で殺しに来る大量のモンスターを、トライアンドエラーの繰り返しで
            なぎ倒していく、シンプルかつチャレンジングな、アーケードライクな設計が売り。
            シリーズを通してスコアシステムが採用されており、非常に中毒性が高い。





小鳥「それなら『 F.E.A.R. 』の一作目もいいですよね」

貴音「」ビクッ

P「ああ、敵の数は少ないけど、AIの良さには定評がありますからね」

小鳥「あのスローモーションの中で敵を捌いていく感覚がたまらないっていうか!」



小鳥「敵がそこそこ賢い分難易度は高いんですけど、慣れてきて無双出来るようになると、
    『あれ、私って神じゃね?』とか思えてきちゃって!」

小鳥「最初は怖かったアルマちゃんも、だんだん可愛く見えてきちゃって!」

小鳥「まあ、あの梯子の演出は今でも声出ちゃいますけど…」

貴音「」ガクガクブルブル



P「あの作品はMとS、どちらの気分も十分に味あわせてくれますよね」

雪歩「あ、あの、いいゲームってそういうものですよね」

千早「………………」トントントントン

真(どうしよう、千早が『あー、なってねえなー』って態度で足トンしだした)



『 F.E.A.R. 』…邦画的な恐怖演出が光る、じわじわ怖いホラーFPSの名作。心臓の弱い人はやっちゃダメ。
        現在3まで出てるが、小鳥さんは1とその拡張パックを念頭に置いて話している。
        プレイヤーはゲージを消費して、反射神経を研ぎ澄まし感覚だけを加速させることで、
        結果としてゲーム中の時間の流れを遅くする「Slow-Mo」という特殊能力が使える。
        自他共に動きは遅くなるが、照準は素早く動かせるので、慣れれば一方的な殲滅が可能。
        この能力を駆使して敵を次々に捌いていく感覚は、中毒性が非常に高い。1は2005年発売。




美希「ふーん。プロデューサー、古いFPSが好きなんだね」

P「お、何だ?美希」

P(頼むから変なこと言うなよ…)



美希「ミキ、いくら面白くても、画面が汚くて古臭いゲームってやる気になんないの」

P「あ゛ァ!?」

小鳥「ぁんだとコラ!!」

真美「沸点ひくっ」



美希「だって仕方ないの。ミキね、ゲームするようになったのは小学校の4年とかからだけど、
   その頃にはXBOX360とかPS3とかあったんだもん」

P「んぐっ」

小鳥「かはっ(吐血)」

真(これはマズイ)




美希「今でこそ普通になっちゃったけど、小さな頃からHDの綺麗なゲームをやってたの。
   20年前のゲームとか無理なのも、仕方ないって思うな」

P「ふ、古いけど面白いゲームはテクスチャ変更MODとかあるし!」

小鳥「ユーザー製のDOOMエンジンなら、高解像度対応できるし!」

高木(ふむ、私は黙っていた方が賢明だな)



春香「プロデューサーさんっ、このままだとマズイですよ!」コショコショ

P「そうは言ってもだな、歳の差はどうにもならんわけで」コショコショ

春香「美希、一度弱点を見つけたら、無自覚にとことんえぐってきますよ!話題を変えてください!」コショコショ

P「お、おう」コショコショ



美希「特に小鳥は、もっと新しいことに目を向けたほうがいいの。
   過去と妄想にばっかりとらわれてると、現実に対応できなくなっちゃうよ?」

小鳥「うぐっ」


P「えげつなあ…」

春香「そんなこと言っちゃ駄目ですよ!美希は本気で心配してるんですから!」コショコショ




雪歩「み、美希ちゃんは好きなシリーズってあるのかな?」

真(雪歩ナイス!)

美希「あはっ!ミキね、『 バイオショック 』が大好きなの!」

美希「インフィニットのお空もすっごいキラキラしてて、面白かったの!
   だけど初代のビジュアルもお気に入りなの!お話の衝撃も忘れられないの!」

雪歩「うんうん、初代も面白いよね」ニコニコ


真美「ドリルつながりかな?」コショコショ

真「そうかもね。とにかく、これでプロデューサーが美希に譲歩してくれれば、場は収まるよ」コショコショ




P「え?劣化『 System Shock 』がどうしたって?」

美希「!」

真「うん、そうなるよね。わかってた、わかってたさ」



『 バイオショック 』…海底都市「ラプチャー」を舞台としたアドベンチャーFPS。1は2007年発売。
             アクションよりも物語や演出に重点を置いた、思想的な作品。
             右手に巨大なドリルを装備した「ビッグダディ」という象徴的な
             敵キャラクターがいる。ある意味子だくさん。Rescue or harvest ?
             プレイヤーの行動を逆手に取ったストーリーが有名になったが、独特の世界観と、
             それを支える退廃的かつ幻想的な絵作りも素晴らしく、初見の没入感は非常に強い。

            
             2013年発売の最新作では舞台を海底から空中へと変えた。 
            
             開発者が1999年発売の『 System Shock2 』の実質的な続編とした為、

             システムを簡略化した『 バイオショック 』は何かと比較された。





美希「ひどいの!いくらプロデューサーでも、言っていいことと悪いことがあるの!」

P「はあ、『 System Shock 』をやらずにゲームとか語っちゃってたわけだ。はあ、まじはあ」

小鳥「かわいそうですよ、プロデューサーさん。きっと『 Deus Ex 』だってやったことないんですから」



美希「デウスエクスなら360でやったの!」

小鳥「あっ、ごめんね、美希ちゃん。『 Deus Ex 』って言ったら、通は初代をさすのよ。
   説明しなくてごめんなさいね」

P「 HRも普通のゲームとしては悪くないけど、『 Deus Ex 』としてはねえ」ニヤニヤ

美希「ぐぬぬぬぬ」



P「ゆとりショック」ボソッ

美希「!!」

P 小鳥「ゲラゲラゲラ」

美希「ひどいの!ひどいの!」



『 Deus Ex 』…濃密な設定のサイバーパンクRPG。初代は2000年発売。

        凄惨で濃厚なSF世界とプレイヤーの思想を試す無慈悲なストーリー、
        多彩な攻略法を編み出せる自由度の高さが売り。
        初見のとっつき難さを解消すれば、没入感は非常に高い。
        画面形式はFPSだが、攻略にはシューティングよりもキャラのビルドが重視される。
       
        初代の主人公は、初期状態では真ん中に弾が飛ばないレベルの脆弱な存在だが、
        このゲームにはやたら多くのスキルが用意されており、潜入タイプでもランボータイプでも
        プレイヤーの思う通りに成長可能であり、決して広くはないが、窓を叩き割る、
        ダクトから進入する、敵をやり過ごす、敵を皆殺しにする、開幕ロケラン等、
        キャラに合わせた攻略法を実現できる箱庭が存在し、
        プレイヤー各自のロールプレイを(当時としては)高いレベルで支えていた。

        2011年発売の『 Deus Ex: Human Revolution 』はゲームとしての完成度は高いものの、
        システムが大幅に簡略化され、ボス戦が強制される等、
        大きな売りであった自由度がなくなったとして
        『 Deus Ex 』としては物足りないという人も多い。





雪歩「あきらめました。皆さん、お茶をどうぞ」

真「もうダメだね、あそこまで行ったらほっとくしかないよ」ズズー

真美「戦争がなくならないわけだよ、うん」ズズー

春香「どのゲームも、みんな違って、みんないいのに」ズズー

千早「……………はぁ(ため息)」ズズー

貴音「好きだからこそ、譲れない部分もあるのでしょう。一度衝突すれば、綺麗事ではすみません」ズズー



貴音「雪歩、恐縮ですが、何かお茶菓子をいただけませんか?」

雪歩「えーっと、手持ちのういろうは切らしちゃったし、お茶菓子のダンボールは…、あっ、ありましたぁ」

雪歩「はい、文明堂のパイポルトです。あずきとりんご、お好きなのをどうぞ」



高木「しかし、いい加減止めないと作業が進まないねえ」ズズー

やよい「そういうのこそ、うわやくの仕事じゃないかなーって」ズズー

響「うわ、こっちに来るみたいだぞ」




美希「みんなも呑気にお茶なんて飲んでる場合じゃないの!」

小鳥「そうですよ!皆さんは『 DOOM 』と『 バイオショック 』どちらがいいゲームだと思いますか!?
   当然、『 DOOM 』ですよね?」

美希「違うの!ゼッタイ『 バイオショック 』の方がいいに決まってるの!」

真「そう言われても、二つとも同じFPSでもゲーム性が全然違うからさ」

真美「うん、比較の対象になんないよね」



P「そうだな、二つともそれぞれに異なる良さがあるからな」

高木「うむ、ナンバーワンでなくてもいいのだよ。君達同様、もともと特別なオンリーワンだからね」

春香「そうですよ!だって私達!」

響「なに自分達だけいい格好しようとしてるの?」





美希「やよい達は何が好きなの!?隠してないで答えるの!」

小鳥「そうですよ!タイトルによっては訴訟も辞さない覚悟です!」


やよい「あ、あのー!私は64の『 ゴールデンアイ 』が一番かなーって」

高木「うむ、私個人としては『 Call of Duty 』の2のキャンペーンが最も好ましいね」

雪歩「わ、私は『 S.T.A.L.K.E.R. 』シリーズとか『 METRO 2033 』とか『 YOU ARE EMPTY 』とかかな」

貴音「わはふひは、ほはい『 はんひはふ 』へふ」モッシャモッシャ

響「えへへ、自分は『 MAX PAYNE 』を推すぞ!」



全員「「「「 えっ? 」」」」

響「えっ?」




貴音「ひびひ?んぐ、ごくん……、響?『 まっくす・ぺいん 』は、てぃ・ぴぃ・えす、ですよ?」

響「えっ?」



雪歩「響ちゃん、FPSのFは、FirstのF。一人称視点だよ?」

真「そうそう、『 MAX PAYNE 』はペインさんの背中が見えてるから三人称」

やよい「 TPSは、Third Person Shooterの略ですー」

美希「ねえ、響って中学ちゃんと出たの?英語の時間に習ったはずだよ?」

響「えっ?」



春香「あー、ネットでもいるよねー。FPSとTPSの区別が付いてないのに得々と語っちゃう子」

春香「あ!違うよ!別に響ちゃんがイタイって言ってるんじゃないよ!違うから!」

響「」

真(今日の春香は煽るなー)

雪歩(さっきの“転倒系”を根に持ってるのかな?)

真美(よかったー、『 地球防衛軍 』とか言わなくてよかったー)


えっ?



P「まったく、駄目じゃないか響。好きなゲームのジャンルくらい、しっかり把握しておかないとな」

響「うぅ…返す言葉も無いぞ…」


P「 FPSの意味も知らないとか、アイドルにとって一番大事なことも知らなかったくせに
  自分は完璧だなんて、おこがましいにも程があるぞ」

響「えっ、そうだったの!?」

高木(知らんかった!!)



千早「はああああぁぁぁ(嘆息)」

春香「あれ?千早ちゃん、さっきからおとなしいね?言いたいことがあるならハッキリ言った方がいいよ」

真(えっ、これおとなしかったの?)


千早「……リアルじゃないからクソ」ボソッ

全員「「「「 ! 」」」」

P(あー、言っちゃったかー)





千早「『 S.T.A.L.K.E.R. 』、10メートル離れただけで当たらないマカロフ(笑)」

雪歩「!」


千早「『 バイオショック 』、何回殺されても復活できるチェンバー(笑)」

美希「!」


千早「『 MAX PAYNE 』、おっさんがピョンピョン飛び跳ねるノワールゲー(笑)」

響「!」


千早「『 Serious Sam 』、ロケットの爆風でジャンプ(笑)シンプルなゲーム性(笑)」

真「!」


千早「『 DOOM 』、ゼロ距離(笑)でぶっ放すコンバットショットガンの爽快感(笑)プライスレス(笑)」

小鳥「!」 春香「!」



千早「どれも子供の遊びね、くだらない。本物が欲しいなら『 ARMA 』をやりなさい」

千早「銃器に兵器、緊張と絶望、生命、そして死。戦場の全てがそこにあるわ」



『 ARMA 』…とにかく戦場のリアリズムに重きを置いた、チェコ開発の軍事FPS。
        戦場シミュレーションとして名高い『 Operation Flashpoint 』シリーズの実質的な後継作。
        2009年に2が発売され、2013年8月現在、3のベータテスト中である。
      
        いわゆる「ゲームらしさ」を排除し、可能な限りのリアルを再現したシビアな設計が売り。
        マップが広過ぎ?敵に見つかったらすぐ撃たれてゲームにならない?
        当たり前だ、『 ARMA 』は遊びじゃねえんだよ。
      
        挙動も鈍く、ゲームとして大事な、不自然な親切さが全くと言っていいほどないので、
        万人受けではないが、一度慣れると没入感が非常に高い。いいからデモやってみ?
      
        拡張性も高く、今もユーザーによって様々なMODが作られている。
        ゾンビと人間相手のシビアすぎるサバイバルが楽しめる『 DayZ 』が有名だが
        信頼していた仲間に背中を撃たれると、一週間は何も手につかないので危険。




小鳥「ばーん!」

千早「ひゃっ」ビクンッ


小鳥「かしゃっ、しゃっこん(リロードの音)」

春香「はい!千早ちゃん、アウトォー!」

千早「……二人とも、何の真似かしら」

小鳥「えっ、何で喋ってるの?」カチャッ

春香「あれっ?千早ちゃんはリアル系プレイヤー様なんだよね?
   だったらマルチプレイは当然、リスポーン(ラウンド中の復活)無しだよね」カチッ



やよい(春香さん、安全装置を外しちゃいましたー!)

真美(ダメだ、二人とも目がマジになってる)

高木(ハイライトくん、アウトォー!)

響(また馬鹿にされたら嫌だから、黙ってよっと)



P「パイポルトうめー、もう一箱開けようぜ」モッシャモッシャ

貴音「なりません、このだんぼぉる箱はわたくしが雪歩から託されたものです」モッシャモッシャ



『 パイポルト 』…文明堂より発売中のお菓子。

           しっとりした香ばしいパイ生地に、なめらかなこしあんが包まれた「あずき」と
           果肉入りのりんごあんを包んだ「アップル」の二種類がある。
           老舗ながらの濃密な味のハーモニーは日本茶と相性が良く、非常に中毒性が強い。




千早「……………わかった、私が間違っていたわ」

千早「だから、銃を下ろしてください」

やよい(千早さん、ジャケットの左脇がふくらんでいます!)

真美(嘘っこの、見えない銃なのによくやるなあ)



小鳥「右手を上げて」カチャッ

春香「左手は腰の後ろに」カチャッ



美希「っ!待って欲しいの!二人とも落ち着くの!」

真「おっと!美希はそのままだよ」カチャッ

美希(後ろを取られた!?)



P「じゃあいいよ。こっちの箱に、元祖浪花屋の柿の種が入ってるから」

貴音「わたくし、ちょうど塩辛い物が欲しいと思っていました」

響「さっきから二人とも調子に乗ってバクバク食べてるけど、そのお茶菓子の箱って雪歩のだよね?」




千早「ふふっ、どうすれば許してもらえるのかしら?」

小鳥「笑わないでちょうだい。引き金は軽いわよ?」カチャッ

春香「左脚を前に出して、脚を組んでほしいな」カチャッ

千早「!!くっ!」

真美(まさかw)



美希「二人とも考え直すの!取り返しが付かなくなるの!」

真「はい、動かない。美希にやらせてもいいんだよ?」カチャッ

美希「卑怯なの!こんなの、真クンのやることじゃないの!」



P「別に大丈夫だろ。雪歩は根は強い子だから」ポリポリ

高木「うむ、萩原君はああ見えて、芯はしっかりしているからね。
   ところで君、独り占めするという了見はどうかと思うぞ」

貴音「あなた様、高木殿の仰る通りです。我々は宇宙船765号の仲間ではありませんか。
   過剰な富は分配するべきです」

やよい「ぷろでゅーさー。わたし、お腹が空いちゃいましたー」

響「あーあ、開けちゃったー。知らないぞー、自分止めたからねー」




小鳥「そうしたら左を向いて、『 恋を始めるポーズ 』をしてもらえる?」カチャッ

春香「大丈夫だよ、千早ちゃん。携帯のカメラだけど、
   できるだけ大きな解像度で綺麗に撮ってあげるから」ケータイトリダシ、ステーンバーイ...

千早(春香の左側面に回りこんで、銃を……、駄目!隙がないわ、まるでプロみたい)

真美(はるるんもえげつないなぁ)



美希(二人とも本気なの。千早さんの発言は許せないけど、イチかバチか…!)

真「………………」カチリ

美希(ッ!動けないの!これが、これが765プロの二番手『 菊地真 』の、Dランクアイドルの実力…!)

美希(くやしいの…、Eランクのミキは無力なの)



P「ほーら、やよい。あーんしてごらん、あーん」

やよい「そういうの、いらないかなーって」

貴音「あーん」

高木「あーん」

響「知ーらないぞー、知らないぞー」




小鳥「まだかしら、千早ちゃん?お姉さん、あまり気が長い方じゃないの」カチャッ

千早(音無さんの装備は、一度に二発の散弾を発射するDOOM2の中折れショットガン)

千早(発射ごとに装填が必要な為、連射はできない。初弾を切り抜ければ…)

千早(美希…)チラリ

美希(!)



美希(千早さん、わかったの)コクン

美希(何かきっかけがあれば、同時に動くの。ワンアクションでも早く動ければ、
   真クン相手でもチャンスがあるの)


春香「………………」カチャッ

美希(問題は春香なの。一言も喋らないで千早さんを睨んでるの、こういう時の春香は一番怖いの)

美希(いくら千早さんでも小鳥を相手にしてその上、今の春香までは…)

真「あれ?他人の心配をしている暇があるのかな?ボクも舐められたもんだね」カチリ

真美(ドキドキ)



やよい「ぷろでゅーさー、わたしのこと、嫌いになっちゃったんですか?」グスン

P「柿の種うめー、マジとまんねー」ポリポリ

貴音「あーん。ほら、あなた様。あーん」

高木「あーん。ほら、キミィ。上司に恥をかかせるもんじゃないぞ?あーん」


やよい「えへっ、もう、いいです。わたしは、ぷろでゅーさーにはいらない子だったんですね」ニコッ

響(やよい、演技上手くなったなー。こういう路線で売り出すのもありなんじゃないか?)




小鳥「さあっ、さっさとポーズを取りなさい!今なら命だけは助けてあげる!」

小鳥「それで終わりよ!!他に選択肢は無いのっ!さあっ!早く!!」

千早(音無さんの口調が荒く、口数が多くなったきたわ…、元アイドルとはいえ所詮は事務員ね)


千早「くすっ」

小鳥「何がおかしい!死にたいのっ!?」ガチャッ

春香(マズい)

千早「ふふっ、覚悟が決まったら急におかしくなっちゃって」

小鳥「そうなの、それでは覚悟ができたところで、『 恋を始めるポーズ 』してもらいましょうか」ガチャッ



真「………………」カチリ

美希(後ろを取られた時点で、白兵戦で真クン相手にミキの勝ち目はないの)

美希(何とか揉み合いに持ち込んでも、春香は真クンごと撃ってくるの)

美希(なら、たとえ0.1パーセントの可能性でも、賭けてみるしかないの!)

真美(だんだん胃が痛くなってきた)



P「響、あーん」

響「えへへへ、あーん…、あーっ!自分を共犯者にしようって魂胆だろ!ひっかかんないぞ!」

貴音「あなた様、あいどるとプロデューサーは一蓮托生、不可分の関係にございます」

高木「こんなことは言いたくないがね、プロデューサーとしての君の才能を見出したのはこの私だよ。
   我々はただの部下と上司でなく、いわば師弟関係に近いと思うのだがね、ん?」

やよい「えへへ、わたし、短い間でもお兄ちゃんが出来たみたいで嬉しかったです」




  『 言いたいことさえ 言えない私だけど 』


千早「ごめんなさい、音無さん。『 恋を始めるポーズ 』は出来ません」

小鳥「なっ!?千早ちゃん!あなた、死ぬのが怖くないの!?」

春香「………………」ジリッ



  『 もし恋愛するなら 第一候補はいるの 』


真「この曲は…」

美希「雪歩のCDなの…」




  『 あと少しだけ前に出て 言葉掛けられたならば 』


千早「死は恐ろしいです。私にはまだまだ、生きて成し遂げたいことがたくさんありますから」

千早「ですが、私のやりたいことというのは、たとえ肉体が生きていても、
   人間として、いいえ、アイドルとして死んでしまったら出来ないことなんです」



  『 手を伸ばしたら届くほど 近い存在なだけに 』


千早「だから、私が私である為に、私を、如月千早を培った全てにかけて、
    『 恋を始めるポーズ 』は拒否します」

真美(あまとう全否定だよ)





  『 It's my first stage 』


小鳥(この子…………)

千早「………………」

小鳥「………………ふふっ」


小鳥「ふふっ、ふふふっ、あはは、あはははははは」

小鳥「……どうやらお姉さんの負けのようね」



  『 あなたはいつでも 優しい微笑みくれる 』


小鳥「いいわ、あなたは生きなさ、きゃあっ!」ドサッ

千早「!」



春香「あーあ、小鳥さん、肝心なところで甘いんだもん」

真美(殴った!見えない銃の台尻で殴った!)

春香「これでお別れだね、千早ちゃん。私、千早ちゃんと友達になれて嬉しかったよ」カチャッ




  『 でも私はドキドキ 不器用 引きつり笑顔 』


千早「春香…!」

春香「えへへ、おかしいね。これから人を撃とうっていうのに、涙なんて流しちゃってさ」


春香「私って、アイドルのくせに本当に不器用だよね。自分でも嫌になっちゃう」




  『 もしお化粧してお洒落して 背伸びした自分ならば 』


春香「じゃあね、天国でもアイドル頑張ってね」



春香「私はきっと、そっちには行けないから」




千早「いいえ、私はまだ天国には行かないわ」

春香「今さらになって命乞い?いやだなあ、綺麗に終わろうよ。もう、逃げ道なんてどこにも無いんだよ?」

千早「そんなことはないわ。春香にそんな風に見えているだけ、いつだって道は開けているものよ」

真美(二人とも入りこんでるなー)




  『 この初めての気持ち通じるの? マニュアルで読んだ 』


春香(さっきに比べて、音量が大きくなってる。早く片付けないと)

春香「へえ、面白いね。後ろの窓から飛び降りでもするの?やってごらんよ。
   ここ四階だし、運が良ければ脚を折るくらいですむかもしれないよ」

千早「ふふっ、私、分の悪い賭けはしない主義なの」



千早「覚えておきなさい、春香。どんな絶望的な状況でも、たった一つ未来に繋がる道があるとすれば…」

春香「さよなら、千早ちゃん」カチリ

千早「それは過去に逃げ込むことでも、現実から目を背けることでもない、賭けるべき道は…」




  『『『 It's my first stage 』』』


真美「うわっ!!!うるさっ!」

春香「!」ビクッ

千早「前よ!」 美希「前なのっ!」


春香「くっ、ばんばんっ!なっ、美希!?」 

真美(二人同時に襲いかかった!はるるんの右手から銃を奪おうと揉み合ってる!)


真「なっ!美希ッ!おいっ!止まれ!」

真美(しかしまこちん!はるるんを気遣って撃てなァーーーい!)



雪歩「 Fire in the hole ! ( ファイアー イン ザ ホール! )」ピンッ ヒョイッ


P「あーん?……………!!!!」

P「グラナーター!( グレネードだ!爆発するぞ! )」

貴音「にげろー」

高木「アラホラサッサー」





  『『『 Love you, love you あなたへの溢れる 』』』


美希「形勢逆転!なの!」カチャッ

真「そうかな?春香から離れたおかげで、美希を遠慮なく撃てるようになったよ」カチャッ

真美(ミキミキ!はるるんのベレッタの奪取に成功!
   何故かはるるんは、千早お姉ちゃんの胸で幸せそうな顔で気絶中!)


千早「真!もういいのよ!私達が争う必要なんてないわ!」

真「千早、君は命を賭して自分を貫いた。ボクも同じことをさせてもらうだけさ」

真美(しかぁーし!まこちんもコルトの照準をミキミキの額に合わせていたぁーーーーー!!)




  『『『 混乱した心 もどかしくて 』』』


P(くそっ、雪歩のやつ、『 First stage 』を大音量でかけて自分の位置を消していやがる)

P(積み重なったダンボールやら机やらのおかげで視認も出来ねえ、ヤクい状況だな……)


P「響!!ヘイ、パース!」ヒョイ

響「ヘーイ、ナイスパース!…って、このダンボール箱なに?」ガシッ

P「雪歩のお茶菓子コレクションだ!ついて来い!落とすなよ!」ダッシュ

響「えぇーーーーー!!待ってよー!置いてかないでーーーー!」バタバタバタ




   『『『 Love me、love me 私に気付いたら 』』』


貴音「待ちなさい響っ!!今逃げれば、萩原組は地の果てまで追い込みをかけますよ!」

やよい「響さん!わたしが雪歩さんにくちぞえしてあげます!いつもニコニコ現金払いです!」


貴音 やよい「だから、その箱を渡しなさい!!(てください!!)」


響「うわーん!もう誰も信じられないぞー!」バタバタバタ

P「へへっ、あ~ばよ、とっつぁ~ん」バタバタバタ

高木「待~てぇ~!ル~パ~~~ン!」




   『『『 少しだけ 意識してください 』』』


P「すぅー……、サカタハルミジャン!」

雪歩「コンボラ!(手榴弾ですぅー!)」ピンッ ヒョイッ

貴音「くっ!また、ぐれねぉえどですか!やよい!今は非難して態勢を整えます!」

やよい「うっうー!交渉決裂ですー!」

高木(ふむ、四条君側についていった方が指揮権を握れそうだな)



P「なるほど、東の壁の机の陰か。よし!響、ついて来い!西側の窓を背にして陣を敷くぞ!」バタバタバタ

響「うわーーーーん!待ってぇーー!待ってよーーー!」バタバタバタ

雪歩「つっ!つい、反応してしまいましたぁ~!」




   『『『 It's my first stage 』』』


雪歩「こうなりゃ、やけです!ありったけのポテト(手榴弾)をご馳走してあげますぅ!」

雪歩「 Say hello to my little friend!!(私のお友達に挨拶しやがれ、ですぅ!!)」ピンッ ヒョイッ


小鳥「どかーん」

真「なっ!雪歩!?ボクは味方だよ!?」

千早「萩原さん!もうやめて!これ以上の戦いは無意味よ!」

真美(千早お姉ちゃん、そう言いつつも寝ているピヨちゃんのダブルバレルショットガンを奪い取る!)

真美(これぞ悲しきアイドルの習性!一度染み付いた戦いの匂いはァ、もう洗い流せなァーい!!)




雪歩「いいアイドルは、死んだアイドルだけですぅ!!」

雪歩「 Have a nice day!! Kablooie!(ごきげんよう!!カッビーン!)」ピンッ ヒョイッ


小鳥「ちゅどーん」

美希「千早さん!一緒に逃げるの!雪歩はもうミキ達の知ってる雪歩じゃないの!」

千早「駄目よ!春香を置いては行けないわ!」


真「ここまでか…。真美!何をボサッとしてるのさ!春香を確保するよ!手伝って!」

真美「う、うん!」

真美(ここで真打ち、真美選手参戦!はるるんを千早お姉ちゃんから引っぺがす!)




雪歩「 Never gets old when something blows up!(爆発って何度見ても飽きないですぅ!)」ピンッ ヒョイッ


小鳥「 Kaboooom!」

美希「ダメなの!雪歩はどんどん移動してるの!このままだとやられちゃうの!」

美希「貴音が机でバリケードを作ってるの!そっちに避難するの!」


真「真美!響とプロデューサーが西方で砦を築いてる!ボクが援護するから、
  春香を連れてそこまで走るんだ!」

真美「アイアイサー!」ダッシュ

真美(真美選手、結構重いはるるんをかついで走り出す!まこちん、コルトの狙いを二人から離さない!)

真美(あれ?真美、さっきからヘンなこと言ってない?)



千早「いやっ!!待って!お願い!!春香を連れかないで!」

美希「くっ!仕方ないの!力ずくでも千早さんを引っ張ってくの!」ガシッ

千早「いやあーーーーー!春香ァ!春香ーーーーーーーー!」



真「美希……」カチャッ


真「いや、今は駄目だ。背中を向けた人間を撃つのは、ボクの流儀に反する」

真「この借りは、必ず返させてもらうよ」


――――

――



――


小鳥「―――とまあ、そんなこんなで今に至るわけです」

小鳥「バリアー!」サッ

伊織「………………」

小鳥「あ、あれ?」


伊織「頭が痛いわ………」

律子「私も………」

あずさ「律子さん、大丈夫ですか?」

亜美「あ、律っちゃん、おかえり。どの辺から現実に帰ってこれたの?」

律子「美希がプロデューサーと小鳥さんを煽り始めた辺りからね、はあ………」

小鳥「ケロリンありますよ。飲みます?」




亜美「んで、ピヨちゃんは、はるるんに殴らんたから参加しないの?」

小鳥「私、ほっとかれた腹いせに両陣営の防壁(ダンボール箱)で、
   一人ジェンガやってたら千早ちゃんに蜂の巣にされちゃって」

伊織「最低ね」



響『プロデューサー!もう少しで東軍の防壁近くまでの壁が確保できるぞ!』

P『注意を怠るな!今は引っ込んでるが、どこから出てくるかわからんぞ!』

真『南壁、異常無し!』

真美『北壁、同じく異常見当たらず!』




律子「ハー……、で、一体どういう決着が付いたら、この馬鹿げた戦争ごっこは終わるんですか?」

小鳥「いやあ、特にルール決めとかなく、自然発生的にこうなっちゃったもんで」

小鳥「今は東軍と西軍に分かれてるみたいだし、
   どちらかが全滅するまで続くんじゃないんでしょうか」




律子「ハー……、もうここまで行ったらそれを待つしかないわね」

伊織「随分と諦めがいいわね」

律子「どうせ言ったって聞きゃしないもの。終わったら終わったで、私達も片付けをしなきゃいけないし。
   精神的にも体力的にも消耗するだけ損よ。ここで座って見物してます」ドサッ



律子「何も考えないで、終わるのを待っているのが一番楽だわ、もう疲れたのよ」

小鳥「あれ?第三勢力として紛争の鎮圧に乗り出したりとかしないんですか?」

伊織「いい子だから黙ってなさい、ね?いい子だから」



あずさ「あら~、意外と早く終わりそうですよ?」

律子「?」

亜美「ほら、あそこ、ひびきんがさっきから行ったり来たりして
   自分の左右に箱を積み上げて、壁を作ってるっしょ?」

響『』セッセ セッセ

あずさ「うふふ、ビーバーみたいで可愛いです~」




亜美「あれ、きっと道なんじゃないかなー?あれが敵の基地に繋がると、
   壁を壊すなりして侵入できる、みたいな」

あずさ「一種の陣取りゲーム、みたいなものでしょうか~」

伊織「あら、本当だわ。むやみに攻め込まないのは、暗黙のルールみたいなものがあるのかしら」

亜美「そうしないと、ただ壁を壊して撃ちあって終わりだかんね。すぐ終わっちゃってつまんないよ」

律子「そうやって、いつまでもいつまでも、遊ぼうとするのよね…」



律子「ハー…、そのまとまりの良さを、十分の一でもいいから仕事に使ってくれればいいのに…」

小鳥「律子さん、ため息ばっかりついてると、幸せも一緒に逃げちゃいますよっ」

伊織「黙ってなさい、ね?いい子だから、小鳥はいい子でしょう?」

小鳥「ピヨォ…」




亜美「それにほら、さっき千早お姉ちゃんが襲撃して来たとこ、あっちも東軍の近くまで道が出来てるよ」

亜美「たぶん、あの二つを繋げたら、兄ちゃん達、二手に分かれて同時に攻撃するんじゃないかな?」

伊織「そんなの、待ち伏せされたら終わりじゃない。テロ対策の初歩の初歩でしょ」ズイッ



伊織「まさかフラッシュバンや、スモークグレネードまで声で再現する気じゃないでしょうね」ズズイッ

亜美「いや、亜美に言われても、その、なんだ、困る」

小鳥(あれ、伊織ちゃん、意外と楽しんでない?)



あずさ「東軍の方は、あれから動きがありませんね~」

あずさ「千早ちゃん達しか生き残ってないんですか?」

小鳥「いえ、社長と貴音ちゃんもまだ生きてる筈です―――」


――――

――



――


千早「一体、どういうことですか!」バンッ


―――東軍『 765解放戦線 』本部


高木「ふむ、伝達を省いてすまないが、君なら我々の援護が期待できない状況で
   若い二人を犬死にさせたりはしないだろうと思ってね」

千早「確かに撤退を繰り返しましたが、援護さえあればあと一度の襲撃で北壁の道を潰せたんです!」

高木「如月君、君がよく働いてくれたのは知っとるよ。だが、ここらで一息いれてはどうだね」



千早「今や連中は、中央の道を完成させようとしています。
   そうすれば二度と攻勢に転じることは不可能になります」

千早「北壁を美希と高槻さんに守らせてる今、最早守備に人員を割く余裕は我が軍にはありません!」

高木「二方面なら、君と四条君でなんとか守りきれるさ」

貴音「………………」




千早「万全の迎撃態勢を整えたとしても、度重なる襲撃に遭えば現場は疲弊し、士気も落ちます」

千早「その瞬間を攻撃されれば、我々はともかく実戦経験の少ない二人は
   行動が予測できなくなります。全滅の恐れも出てきます」

高木「そうだろうな、天海君も菊地君も同じ轍は踏むまい。次は一切の躊躇なく、引き金を引くだろう」

千早「それがわかっていながら何故!」



貴音「千早、貴女が一番心配しているのは、美希達ではありますまい」

千早「ッ!!」




高木「西軍と正面からの撃ち合いとなれば、天海君の身の安全は確保できないだろうからね」


高木「彼女は前線で作業中の我那覇君を隣で援護している。幸いなことに我那覇君は火器を携帯していない。
   自分が単独で二人に近づけければ、まだチャンスがある」

高木「西軍本部の注意は、誰か囮を用意すればいい。星井君達を連れていったのはその為だろう?」

千早「………………」



高木「沈黙、か。肯定と同義だね」

千早「………………」

高木「ふふ、いいねえ、その目。いや、実に懐かしい。君が765プロに来た頃を思い出すよ」


これは稀に見る良作品



貴音「ふふふ、『 戦場の歌姫 』、いや『 地獄の壁 』も衰えたものです」

千早「………………」キッ!

貴音「ふふ、凄んでも無駄ですよ。わたくしとて貴女同様、幾多の鉄火場を切り抜けてきたのですから」

千早「『 銀色の月 』……」

貴音「ふふ、光栄です。ふふ、ふふふ」



高木「ふむ、どうやら本当に気付いていない様だね」

高木「変だと思わないかい?我那覇君が工兵として最低限の
   身を守る装備すら持たされずに、前線で作業を続けていること」

千早「!」

貴音「そして、そんな丸腰の響を、開戦から変わらずに春香が隣で護り続けていること」



千早「罠、だったんですね…」

貴音「ふふ、あの方は貴女の甘さを見抜いていたのでしょうね」

貴音「プロデューサーの面目躍如、といったところでしょうか」




高木「恐らく菊地君も天海君も、君が痺れを切らして単独で近づいてくるのを待っているだろうね」

高木「より確実に、我々の戦力を削ぐ為に」カチャッ

千早(しまったッ!机の下までは注意を払っていなかったわ!銃口が見えない!)

貴音「盛者必衰、とはこのことでしょうか。真、衰えたものです」カチャッ



千早(いや、社長があの早さで銃を抜けるわけが無い!彼はアイドルじゃないんだから!)

千早(まさかブラフ!?私相手に!?)



高木「以後、君は今から四条君の指揮下に入ってもらうよ。私は荒事はどうも苦手でね」

高木「星井君達への指揮権は、これを認めない。私が直接、彼女達の面倒を見ようじゃないか」




千早(完全に油断したわ…。くっ、これでは春香を助けるどころか…!)

貴音「ふふ、そう気を落とすことはありませんよ」

高木「我々とて、西軍の殲滅などが目的ではないからね。
   もちろん、身の安全が保証される限りにおいて、だが」



千早「………………」

高木「我々の目的は、あの男が西軍の砦のどこかに隠したパッケージを見つけることさ」

貴音「あの方のこと、とうに別のダンボールに入れ替えているでしょう」

高木「何せ山の様な数のダンボールだからね、探すのも一苦労だろう」

貴音「それ故に我々は西軍を無力化し、プロデューサーを捕らまえ、尋問する必要があるのです。
   他の者の生き死には、さほど問題ではありません」




千早「お伺いしたいことがあります」

高木「ふむ、そう来なくてはな、言ってみたまえ」


千早「私がプロデューサーを確保し、目的のパッケージを入手できたら、
   西軍の兵の命は助けていただけませんか?」

高木「それは約束しかねるな。我々よりも向こうの出方次第だからね」


千早「彼の命を交換条件に、投降を申し出ます」

貴音「あの方にそんな人望があるとは思えません」


千早「ええ。あくまで可能性の話、ですが。社長、お答えいただけますか」

高木「無論、彼女達が投降するなら受け入れるさ。私だって鬼じゃないからね」


千早「それで結構です。ありがとうございました」

高木「しかし、今の君に単独行動を許す気はないよ。現場では四条君の指示に従ってもらうからね」


千早「はい、その点に異存はありません。粉骨砕身の覚悟で臨みたいと思います」

貴音「………………」




高木「ふむ、ならば急いで配置につきたまえ」

高木「我那覇君の作業もあと少しで終わるだろう。そうすれば、局面が動く」

高木「三本目の道を作るとは考えられない。山の様な数のダンボールがあるとはいえ、限りがあるからね。
   もう一本作るとなれば、砦の防壁に手を付けざるを得なくなる」



高木「出来てせいぜい、壁を高くすることくらいだな。今は、中腰姿勢でも完全には姿を隠せないからね」

高木「あの男としてはまだまだ我慢比べを続けたいだろうから、そう指示を出すが、それが最後だ」

高木「もっとも、彼女はそんなことは許さないだろうがね」



貴音「貴女も、それを期待したからこそ、無理に局面を動かそうと足掻いたのでしょう?」

千早「………………」

高木「先に動いた方が負ける。なに、昔馴染みの単純な話さ」



高木「我々はただ待っていればいいのだよ。蛇の様に警戒を怠らず、ただ静かにな――」


――――

――



――


やよい(だんだん日が落ちてきましたー)

やよい「美希さーん、そっちはどうですかーー?」


―――東軍『 765解放戦線 』北壁内部


美希「駄目なの。口径の合わない弾ばかりなの」

やよい「そうですかー…」



美希「この銃は小さすぎて使い物になんないの、こっちは銃身がひん曲がってる上に今にも壊れそうなの」

美希「銃身は曲がってても弾は撃てるけど、衝撃でバラバラになっちゃいそうなの。
   こんなの、怖くて使えないの」



やよい「は~…、あんまり良くない状況ですー」

やよい「ここから覗いてると、響さんの作業も後数往復で終わっちゃいそうです。
    それまでになんとか弾薬をかくほしないと…」

美希「………………」

美希「バラバラ、か……」




やよい「美希さん?」

美希「ミキが悪かったの」



美希「仲良しだった765プロを、こんな風にバラバラにしたのはミキなの」

やよい「そんなことないですー。プロデューサーも小鳥さんも、美希さんにひどいことを言いました」

やよい「それに、直接の原因を作ったのは千早さんです。
    私だって、好きなゲームをあんな風に言われたら、きっと怒ったと思います」


美希「でも、ミキが最初にプロデューサーと小鳥を煽ったんだもん」

美希「ヒドイこと、いっぱい言ったの」



やよい「………………」

美希「ミキ、『 DOOM 』って遊んだことなかったの」




美希「ミキがまだゲームとかするようになるよりも、もっと前にね、
   お姉ちゃんが遊んでるのを見て、なんか汚いゲームだな、って思っちゃったの」



美希「お姉ちゃん、ミキも一緒に遊ぼうって言ってくれたのに、『汚いからヤ』って断っちゃったの」

美希「そしたらお姉ちゃん、すっごい悲しそうな顔で笑ったんだ」



美希「ミキ、お姉ちゃんを傷つけたのはわかったんだけど、
   まだ本当に小さかったから、自分が何を言ったかもよくわかってなかったの」

美希「ミキが悪いことしたのだけはわかって、でもお姉ちゃんも何も言わなくて」

美希「心がすっごい苦しくなったの、それでゼンゼン関係ない『 DOOM 』を恨んじゃったの」



美希「バカだよね、子供って。自分勝手なの」

やよい「………………」




美希「ミキね、本当は『 バイオショック 』をみんなに教えてあげたかったの」

美希「好きなものだから、ただそれだけだったの」



美希「ミキ、プロデューサーもゲームが好きだって知ってて、前からお話したかったの」

美希「ミキね、考えなしに余計なこと言って、ヒトをヤな気持ちにさせちゃうことが多いんだ」

やよい「………………」



美希「でもね、ゲームの話なら亜美達とよくするし、二人を怒らせることも無かったの」

美希「なのに、『 DOOM 』の話が出た途端、ミキの中の悪い気持ちがわいてきたの」

美希「そんな古臭いのより、もっと面白いゲームがあるのに、って」

やよい「………………」


美希「考えたらわかることなの。好きな人がいるなら、そのゲームにもいい所があるはずなの」

美希「なのに、遊びもしないで悪口言って、もっといいものがあるよなんて、バカすぎるの」




美希「ヒドイこと、いっぱい言ったの」

やよい「………………」

美希「ミキがバカだったの」



やよい「そうだね、ばかだったね」

美希「!…うん、ミキが悪かったの」


やよい「ちゃんと反省した?」

美希「わかんないの、でも二人には謝りたいの」


やよい「えへへ、じゃあ、わたしは許してあげます!だから、いっしょに謝りに行ってあげます!」

美希「やよい…。うん、二人にも謝って、家に帰れたらお姉ちゃんにも謝るの」

美希「許してくれるかわかんないけど、でも、頑張って謝るの!」



やよい「うっうー!それでこそ美希さんで、あっ!」




美希「やよい!どうしたの!?」カチャッ

やよい「しっ、そっちの隙間から覗いてください」


美希「響が匍匐前進で砦に戻っていくの…」

やよい「さっき、プロデューサーに呼ばれたんです。それに、ほら、あそこ」

美希「っ!マズイの!とうとう中央の道が繋がっちゃうの!」


やよい「こっちの道はまだ繋がってません。すぐには来れないはずです」

やよい「私、千早さん達に報告してきます!まだ大丈夫だと思いますけど、
    警戒をおこたらないでください!」タッタッタッタッ



美希(本格的にマズイの…。弾薬も少ないし、日が落ちてきてるの)

美希(東側に陣を構えたのは失敗だったの!窓から射してくる西日で狙いがつけられないの!)

美希(侵入してくるのを室内で迎え撃つしかないの。でも、向こうも待ち伏せは警戒してるし、
   真クン相手に白兵戦にでもなったら、やよいがいても分が悪すぎるのっ!)



美希(お姉ちゃん………)


――――

――



――

―――765プロの新事務所、入り口付近の非武装中立地帯『 NAMJATOWN 』


あずさ「あっついですねえ…」パタパタ

伊織「西日がモロに入ってくるじゃない…。どうりで、こんなに広い物件が借りれたわけだわ…」パタパタ

亜美「エアコンついてんのにコレだもんね…。亜美、明日からこの事務所来るのいやかも…」パタパタ

律子「遮光性のあるカーテンとブラインドを早急に手配しないと…。
   アイドル達の日焼けも心配だし、何より仕事になんないわね……」パタパタ



小鳥「ただいま帰りましだー…、あづぃー…」ボタボタ

あずさ「ご苦労さまです~」パタパタ

小鳥「皆さん、午後ティーの無糖でよかったんですよね」ダラダラ

亜美「ピヨちゃん、サンキュー」パタパタ

伊織「さすがに今はこういうモノの方がありがたいわね」パタパタ

律子「小鳥さん、そのクーラーボックス、皆の目に付く場所に置いといてください。
   脱水症状を起こしてもいけないんで」パタパタ





小鳥「ゴキュッ ゴキュッ ゴキュッ ゴキュッ ゴキュッ ゴキュッ ゴキュッ ゴキュッ ゴキュッ ゴキュッ ゴキュッ ゴキュッ ゴキュッ ゴキュッ 」

小鳥「ぷアーーーーーっ!いやー、今日も一日頑張りました!!」


律子「勤務時間中にギネス呑んでんじゃねえよ」




小鳥「二杯目、イッキまーす!」こっこっこっこっこっこっこっ

律子「しかもグラスまで買ってきてんじゃねえよ」

伊織「もうほっときなさい。可哀そうな人なのよ」


小鳥「いやホラ、お酒ってやっぱり器が重要じゃないですか」

小鳥「んで、どうなりました?どっちが勝ってます?」

亜美「どうもこうもないよ。千早お姉ちゃん達の方は閉じこもったまんまだし」



P『………………』

真『………………』

真美『………………』



亜美「まこちんと真美は銃座について警戒してるだけだし」

律子「プロデューサーもたまに響と話すだけで、さっきから西日を背にして仁王立ちしてるだけです」

あずさ「うふふ、三人とも、結構絵になりますね~」

伊織「ダンボールの砦でなければね」




春香『………………』カチャッ

響『』セッセ セッセ



伊織「動いてるのはあの二人だけね。響が砦と行ったり来たりして、さっき中央の道を東軍の砦に繋げたわ」

律子「その響は今、先の北側の道を繋げてます。で、L85A2アサルトライフル装備の春香が隣で援護中、と」

亜美「普段のはるるんからは想像できないくらいの、警戒っぷりだね」

律子「まったく、あれだけの注意力があってどうして転ぶのかしら」




春香『………………』カチャッ

響『』セッセ セッセ



小鳥「あれ?道が繋がったのに、どうしてカチこまないんですか?」

伊織「西軍は閃光弾もスモークも持ってないもの。エントリーポイントが一箇所しかなかったら、
   簡単に対策とられちゃうじゃない」ズイッ

伊織「プロのテロリストっていうのはね、正面から撃ち合ったりなんてしないの。
   別の部屋に陣取られて、open&clear 後の隙を狙われたらお終いだわ。対テロの基本よ、基本」ズズイッ

小鳥(伊織ちゃん、タクティカル・シューターとか好きなのかなー)

あずさ「今は我慢比べの時間みたいですねー」

律子「おっ、北側の道も繋がったみたいですよ」




春香『………………』コクリ スッスッ

響『』ズリズリズリズリ


亜美「はるるんのハンドサインで、ひびきんが匍匐前進で兄ちゃんのとこに戻ってくね」

律子「結構、本格的ね」




P『 ――― ――― 』

響『』コクリ


小鳥「響ちゃん、またダンボールを集めてますね」

伊織「あら、今度は中身が入ってないやつだわ。結構大きいのを選んでるわね」




P『 ――― ――― 』

響『』ペタシ ペタシ


伊織「それをたたんで……ライオットシールドにでもするのかしら?」

律子「うーん、それにしては取っ手が無いわね」




真『………………』カチャッ

真美『………………』カチャッ


小鳥「真ちゃん達も降りてきましたね。北側の道の近くにつくようです」

亜美「ホントだ。道には入んないで、入り口の防壁でカバーして周囲を見回してる」

あずさ「何を警戒してるんでしょうか?」




真『………………』サッ サッ

春香『………………』コクリ ズリズリズリズリ


律子「春香が砦に引き返していくわ。教科書通りの匍匐前進ね」

伊織「真と真美のサブマシンガンはMP5A3ね。この距離なら悪くない選択よ」

亜美(…………あれ?何かヘンだよ?)




春香『………………』カチャッ

春香『………………』ズリズリズリズリ


律子「春香が中央の道に入っていくわ」

伊織「さっきから相当な警戒ぶりね」




春香『………………』ピタッ カチャッ

春香『………………』


律子「中央の道に座り込んで、南側の壁に張り付いたわね…。
   大丈夫かしら、あの位置だと東軍の動きに即応できないんじゃない?」

伊織「響の盾になる為…?いえ、もっと別の何かが?」




春香『………………』サッ サッ

響『』コクリ ズリズリズリズリ


律子「今度は響が中央の道に入っていくわね」

伊織「さっきたたんでいたダンボールも持ってくのね」

小鳥「やっぱり盾にするんですかね?でも、突入するなら響ちゃんだけ丸腰のままってのも変ですし」

あずさ「?」




亜美「ねえ、いおりん。ヘンなこと聞くかもしんないけどさ。みんなの銃って、嘘っこのやつだよね?」

伊織「はあ?そりゃそうでしょ、ここは日本よ。トカレフとか散弾銃ならともかく、
   アサルトライフルなんて一般人が持てるわけないじゃない」




響『』ズリズリ ピタッ

春香『………………』カチャッ


律子「響が春香のそばまで行って止まったわ。匍匐のまま起きないわね」

小鳥「春香ちゃん、警戒を続けてますね」

あずさ「…………?」




亜美「うん、そこで確認したいんだけどさ。亜美たちが帰って来た時はさ、
   両軍とも見えない銃を持って、口でバンバン言ってただけだよね」

伊織「そうね、いい歳して戦争ごっこ?って、最初は呆れたけど、観ていると結構楽しいわね」

伊織「サバイバルゲームってこんな感じなのかしら。もっとルールと設定を煮詰めて、
   ライブDVDの映像特典とかでやってみたら面白そうだけど、変な連中から叩かれるから無理ね」




春香『………………』コクリ

響『』コクリ ガサガサ


律子「安全が確認できたみたいですね。ん、ガムテープ?」

小鳥「響ちゃん、たたんで纏めていたダンボールを広げていますね。あれ?でも、箱にはしないんですね」

律子「ええ、私ももう一度箱にして左右の壁の上に積み上げると思ったんですけど、
   平らなままですね」

あずさ「…………?…??」ゴシゴシ




響『』ガサガサ ペタペタ

春香『………………』カチャッ


律子「あ!わかった!!!」

小鳥「ぅわっ!」ビクッ

あずさ「きゃっ」ビクッ




亜美「うん、それはいいとしてさ、繰り返しになるけど、確かに亜美達にはみんなの銃が見えなかった」

亜美「それに、みんなも口で銃声のモノマネをしてた。だから戦争ごっこだってすぐにわかった」

伊織「?ええ、そうね」



小鳥「律子さん、いきなり大声出さないでくださいよ。びっくりするじゃないですか」

律子「壁ですよ!壁!」

あずさ「はあ…、壁ですか?」




響『』ペタペタ

春香『………………』カチャッ


律子「ほら、響が平たくしたダンボールを何枚も横に繋げてるでしょ」

小鳥「あっ!そうか!あの方法なら、強度はともかく高さは稼げますね。視界を消せます」




亜美「なのに、いおりんも律っちゃんも西軍の装備を言い当てた。
   ピヨちゃんもあずさお姉ちゃんも、特に異議をはさまなかった」

伊織「そりゃあそうよ、L85なんて特徴的だもの、間違えっこないわ」



あずさ「あの~、私、それよりも律子さんに聞きたいことがあるんですけど」

律子「何ですか?」

あずさ「私の目の錯覚かもしれないんですけど。ほら、あそこです。私の指の先」




響『』ペタペタ

春香『………………』カチャッ

春香(律子さん達、何話してるんだろう?)



あずさ「あの南側の、とても背の高いスチール製のキャビネットの上です」

律子「あれ?あんな所にダンボールなんて置いてありましたっけ?」


亜美「うん、亜美、その銃はわかんなかったけど、MP5はゲームで見たことあるからすぐにわかったんだ」




響『』ペタペタ

春香(ん?南側を指差してる。あっちには何も…)



あずさ「いえ、それもそうなんですけど、その箱の間に何か見えませんか?」

律子「ん~~、西日が射しこんで、よくはみえないですね…」


伊織「まだるっこしいわよ、亜美。一体、何が言いたいの?」




響『』ペタペタ

春香(西日が反射して、よく見えない…)



あずさ「ほら、何か細長いものが出てませんか?光が反射してよくわからないんですけど…」




響『』ペタペタ

春香(ん?反射?何でダンボール箱があんなに強く…)



亜美「だからさ、いおりん」




響『』ペタペタ

春香(そもそも、あんな所にダンボール箱あったっけ?まだ引越しの作業をしてた時は…)



亜美「何で存在しないはずの嘘っこの銃が、亜美たち全員に見えてるの?」




響『よし!出来たぞ!!』


春香『!!!響ちゃん!危ない!!!』





  キシュッ




                     キシュッ






春香「きゃあっ!!」ドンガラガッシャーン



P「!!春香!!!」

真「!」

真美「!6時の方向にスナイパー!キャビネットの上!」



響「春、香……?」

春香「響ちゃん……駄目……かく、れて…」


P「クソッ!」タッタッタッ




P「何やってんだ響!早く隠れろ!馬鹿野郎!」ガシッ ズリズリ

響「どうして……春香……春、香……」


春香「よか、った………プロ…デューサー、さん……ありがとう…ございます……」




真「くそっ!!よくも春香を!」

真美「駄目だよ、まこちん!完璧にポジションを取られてる!ここからじゃ分が悪いよ!」



P「この角度なら安全だ!ここから一歩も動くなよ!」タッタッタッタッ

響「春…香………なんで……なんで自分なんか………」




―――同刻、東軍『 765解放戦線 』本部


千早「春香!!」

貴音「いけません!今動けば的になるだけですよ!」カチャッ

千早「くっ!」




春香『』ハア ハア

P『 ―――! ―――! 』




貴音「ふむ、安心なさい。急所は外れているようです」

貴音(しかし、非常に宜しくない位置ですね。南向きに倒れた拍子に響の作った壁を破壊してしまいました)

貴音(おそらく、狙撃手からは全身が手に取るように見えているでしょう)

貴音(それでも止めを刺さない、ということは……)





千早「しかし、あのままでは……!」

貴音「いえ、すぐには殺さないでしょう。今は西軍の出方を待つのです」

貴音「これは命令です。彼女同様、今は貴女の命も他人が握っていることをお忘れなく」カチャッ




千早「……わかりました。ただ、そちらこそお忘れではないですか?」

貴音「何をです?私は貴女の背中を取っています。これより重要なことなどありますか?」

千早「ええ、やはり忘れているようなので教えてあげます」




千早「もし春香の身に何かあれば、私は自分の命など顧みないということを」




―――同刻、東軍『 765解放戦線 』北壁内部


美希「春香!!」

やよい「春香さん!!」

高木「来たか…」




美希「社長!何を落ち着いてるの!命令を出して欲しいの!」

やよい「そうです!春香さんを助けなきゃ!」

高木「なるほど。実に、実に美しい感情だ。驚きだよ。戦場にいてなお、そんな感情を持てるとはね」



高木「だが、その命令は出せない」

美希「!」

やよい「!」




高木「考えてもみたまえ。我々は理由こそ違えど信じるものの為に、
   彼等と東西に分かれて銃火を交えてきたのだよ」

高木「彼等は今、突然の脅威から仲間を救わんと懸命に戦っている最中だ」

高木「そこに突然我々が出て行けば、どの様な結果になると思うかね?」

美希「………………」

やよい「でも!春香さんはわたし達の…」



高木「かつての仲間を救いたいという、君達の美しき真意とは裏腹に銃口を向けられるのがオチだろう」

高木「そして、我々か彼等か、そのどちらかに損傷が出るだけ、天海君の救出は遅れるだろうな」

高木「今は事態の推移を見極めるのが先決だ。西軍の連中にコンタクトを取るのは、それからでいい」

やよい「うー……」



高木「わかってくれ。私も辛いのだよ」




高木(これでお膳立ては整った)


高木(今の彼女は常軌を逸してる。菊池君達とて、無事にはすむまい)

高木(そしてあの男は、何よりも自分の身を優先する人間だ。敵わないとわかれば、
   アイドル達を見捨てて早々に投降してくるに違いない)

高木(彼を捕縛した後、残った者で彼女を排除すればいい)



高木(問題なのは如月君だ。天海君の救助が間に合わなければ、必ずや牙をむいてくるだろう)

高木(四条君一人に任せたのは少々心許ないが、まあ、それでも彼女相手にさすがに無傷とは行くまいよ…)



高木(ふん…、その時は冷静に対処するまでだ。私はただ、待っていればいい)


高木(フフ、英国の古い諺にあるよう、“ 最後に笑う者が最もよく笑う ”のさ)







カチャッ


――――

――



――

―――765プロの新事務所、入り口付近の非武装中立地帯『 NAMJATOWN 』


律子「………………」

伊織「………………」

あずさ「………………」

亜美「………………」

小鳥「………………」



雪歩『 ゆきぴょんお姉ちゃん 人を撃った ♪ 』

雪歩『 イーアイ イーアイオー ♪ 』



律子「……あれ、雪歩よね?」

伊織「奇遇ね。私にもそう見えるわ」

あずさ「役に入りこんでますね~」

亜美(ゆきぴょんにイタズラすんのやめよう…)

小鳥(雪歩ちゃん……恐ろしい子!)




雪歩『 ほら 泣いてるのは 娘たち ♪ 』

雪歩『 イーアイ イーアイオー ♪ 』



伊織「あのライフルはVintorez。VSS半自動消音狙撃銃ね」

あずさ「はい~。1987年に当時のソビエト連邦がスペツナズ用に開発した消音銃です。9×39mm SP-5もしくは
    SP-6弾という亜音速弾とサプレッサーを使用することで発射時の衝撃波を大幅に軽減し、射撃制度と
    威力を殺すことなく驚異的な消音効果を実現しました。400M内の中距離、短距離狙撃に適してますが
    フルオート射撃も可能なので近距離での銃撃戦にも対応できます~」

律子「!?」


小鳥「『 S.T.A.L.K.E.R 』好きの雪歩ちゃんらしい、今の戦況にピッタリのチョイスですね」

亜美「発射音、口で言ってたけどね」

伊織「まあ、いくら本気で演じてるとはいえ、しょせんはアドリブありきのごっこ遊びだし、
   消音銃でも銃声を言わないとコミュニケーションが取れないのよ」




春香『』ハア ハア



亜美「はるるん、撃たれたのに死んでないね」

伊織「映画とかだと、定番の見せ場よね。壁も崩しちゃって遮蔽物が何も無いし、
   格好の狙撃ポジションを取られてるから、味方もなかなか助けにいけない」

伊織「私はイライラしちゃうから、この手の場面ってあまり好きでないけど」

小鳥「味方の反対側に体を投げ出したのもわざとですかね?」

あずさ「きっとそうでしょうねー。体を張ったいいアドリブです~」

律子「ハー…、器用だか不器用なんだか」




真『 ―――! ―――! 』

真美『 ――! ―――! ―――――! 』

P『………………』カチャッ



あずさ「三人とも、なかなか助けに行きませんね~」

伊織「まだそんなシーンじゃないんでしょう。仲間の救出にはやる真を新兵の真美が必死に抑えてる感じね」

小鳥「まだ未熟だった真美ちゃんの成長を感じさせる、隠れた名場面ですね」

律子「あら、プロデューサーの武器はワルサーP38なのね」

亜美「兄ちゃん、結構かっこつけだなあ」




響『 ――…… ――…… 』



律子「響はまだ立ち直れてないわね…。あの子は意外にメンタルの弱い所あるのよね」

あずさ「響ちゃんはきっと、アパムさんみたいな特技兵なんでしょうね~」

伊織「縁起でもない名前を出さないで頂戴…」

小鳥「アパーム!弾!弾持ってこい!アパーーーーム!!」

亜美「やめて」




真『 ―――! ―――! 』

真美『 ―――! ―――――! 』

P『 ――― ――― 』



伊織「ああもう!いつまで言い争ってるのよ!さっさと助けに行きなさい!イライラするわね!」

小鳥「やっぱり武装介入しましょう!この国の均衡を定めるのは我々『羊飼い』です!民草は羊です!」ガタッ

律子「いいから座ってろ」

亜美「いや、ぶっちゃけ難しいよ。兄ちゃん達、千早お姉ちゃん達、ゆきぴょんの三すくみになってるもん」

あずさ「うふふ、プロデューサーさんはどう動くのでしょうね~」




―――西軍『 765自由同盟 』防壁


春香『』ハア ハア



P「―――悔しいけど真美の言う通りだ。これ以上無い、絶好のポジションを取られた。
  ここから出た途端に風通しの良い体にされちまうな」

真美「うん。体が壁の外に投げ出された上に、ゆきぴょんとはるるんを遮る物が一つもないかんね」

真「クッ!目の前で仲間が死にかけてるのに、指をくわえて見てることしかできないなんて!」



雪歩『 スカした美少女もういらない♪ 俺の彼女はVSS♪ 』



真美「しかもゆきぴょん、あの背の高いキャビネットの上に寝っ転がってるだけじゃなくて、
   ダンボールで完璧に体を隠してるよ。こっからの銃撃は意味無い」

真「…何とか近づいてキャビネットの上から降ろすしかないね。プロデューサー、どうします?」

P「……今考えてるよ」




P(くそっ!何故気付けなかった?春香も俺も、東軍の連中より雪歩を警戒していたはずなのに!)

P(いや、駄目だった。それでは足りなかったんだ。俺達が砦を築いて態勢を整えた時点で
  雪歩は既にあの場所にいたんだ。そして息を殺して俺達を見張ってたんだ!)



P(そうだな…、『 First Stage 』の襲撃の直後にはもう、作戦を決めて実行に移していたんだろうよ。
  あの時は皆、自分の身を守るのに必死だったからな…)

P(あの騒乱の中で着々と誰にも気付かれず、御丁寧に防壁まで用意して、
  2メートルはあろうかっていうあのキャビネットに登って、ずーっと隠れていたわけだ)

P(まったく、普段おとなしい奴ほど、いざって時は何をするかわからんな)チラッ



春香『』ハア ハア

雪歩『 もしも現場で倒れたら♪ 穴を掘って埋まりますぅ♪ 』



P(替え歌なんて歌ってるくせに、相変わらず此処から見えてるのはVintorezの銃身だけだ)

P(あのまま、あの場所から動かないで春香を餌に俺達全員を釣り上げる気なんだろうよ)


P(逆に考えれば、春香は大事な餌だ。餌がなくなれば、俺達はいくらでも時間をかけられる)

P(そうだ、新しい餌が手に入らなければ、春香の命だけは保障される。春香の体力が持てばな…)





P(気になるのは東軍の連中だ。あれから動きがない)チラッ

P(貴音や社長はともかく、なぜ千早が出てこない?一番の親友の春香が撃たれたんだぞ?)

P(完璧に上を取られた以上、俺達が無傷でこの状況を切り抜けるには、
  千早の無鉄砲な介入がどうしても必要だ)



P(そもそも、あいつをこっち側に引き入れる為にこそ、丸腰の響に春香を付けていたってのにな)

P(社長と貴音には気付かれるだろうが、それでも千早ならあの二人を裏切ってでも罠にかかりに来る)

P(そうして千早を確保したら、今度は春香を使って東軍の内部情報を聞き出し、共に殲滅する)

P(雪歩を狩るのはその後でいい。完璧な計画だったんだ)




春香『』ハア ハア

雪歩『皆さん、だんまりですか?ひどいですぅ~、春香ちゃんが寂しがってますよぉ』


真「っ!プロデューサー!!」

P「落ち着け、挑発に乗るな。お前達まで犠牲にするわけにはいかん」


P(俺達が全員同時に動けば、一人やられる程度で済むかもしれんが、それでは向こうの思うつぼだ)

P(…まあ、上官の考える“完璧な計画”なんてものがプラン通りに進んだ例なんて、そうないんだろうな)





P(ちょっと待て、今の俺に残されている勝ちはなんだ?)


P(真達は無傷のまま雪歩と東軍を排除し、“荷物”を家に持ち帰る…。そうなれば最高だが現実は厳しい)

P(“荷物”は箱を変えて隠した。このダンボールの数だ…俺が洩らさなければそう簡単には見つからん)

P(たとえこの戦いに勝てなくても、一度姿をくらまして、その後でこっそり回収すればいい)




P(東軍だけを考えれば、真達は俺がいるから危険なんだ)

P(俺がいるから、この二人は戦う。社長達は俺を捕らえたいから、二人を排除しようとする)

P(俺も春香もどうにもならなくなって、勝ちの目が無くなれば、投降するのは真達の権利だ)

P(社長もお目当てのものを探す人手が欲しいだろう、投降はまず受け入れられる)




P(次に雪歩だ)


P(雪歩の狙いは、まず俺の“荷物”を取り返すこと)

P(そして、自分の“荷物”に手を出した人間への復讐だ。いや、雪歩の世界では落とし前というのかな)

P(本当は響を狙っていたんだろう。あいつは手を出さなかったが、俺達と一緒にいたからな)



P(皮肉なもんだ、何もしてない響が狙われ、同じく何もしてない春香が撃たれた…)

P(いや、違う。俺は響を運び屋に選んだ、その上、千早を釣る為に丸腰で最前線に送った)

P(仲間を撃つのは嫌だ、と言って武装を拒否したのはあいつだが)



P(それでも、春香が撃たれたのは俺のせいだ。喰った量と金額でいえば貴音の方が上だがな)チラッ

P(きっと高木社長も、俺や貴音と同じく雪歩の制裁対象だろう、あの時一緒にいたからな)




春香『………………』

真『春香!眠っちゃ駄目だ!何でも、何でもいいから喋るんだ!』

真美『はるるん!もう少しの辛抱だからね!もうすぐ助けるから!』


P(春香はもう、難しい)

P(こうなったのはあの二人が千早を押さえたからだ。大方、漁夫の利を狙ってるんだろう)

P(なら相応の報いを受けてもらおう。俺の計画を邪魔してくれたからな)




P「二人とも聞いてくれ。春香を助けたかったら、そのままそこから動かずに東軍の方を警戒してくれ」

真「!?プロデューサー!何を言ってるんです!?」

真美「そーだよ!今は東軍よりもゆきぴょんっしょー!」




P「今俺達の誰か一人でもやられたら、東軍は雪崩を打って攻撃してくる。そうなれば春香は救えない」

真「春香はもう戦闘能力がありません!東軍は国際法によって保護する義務があります!」

P「そうだな。だが、その前に真美が撃たれるかもしれないぞ」

真「っ!」

真美「そんな言い方ってないよ!真美だって“ アイドル ”だもん!自分の始末ぐらい自分で出来るよ!」



P「ははっ、そうだったな。真美もいつの間にか大きくなったんだよな」

P「もう立派な、一人前の“ アイドル ”だ」

真美「兄ちゃん!誤魔化さないで!」

P「けどな、真美?今ここで死んだら、もう亜美に会えないんだぞ。それでいいのか?」

真美「!」

真「………………」




亜美「え、さっきからここにいるんだけど」

小鳥「ほ、ほら、そういう設定なのよ!」




真美「亜美………」

P「真も同じだ。ご両親のことを考えろ」

真「………………」

真「投降、する気ですか?」

P「いや、そんな気はない。向こうはこっちが消耗するのをジリジリ待っているような連中だからな」

P「我慢比べは俺達の負けだ。だから、ルールを変えてやる」チラッ



春香『………………』

雪歩『あれぇ、いいんですかぁ?このままだと春香ちゃん、眠り姫になっちゃいますよぉ』



P「いいか、雪歩はあの場所から動けない。彼女の射線上に入らないようにして、東軍の出方に備えろ」




P「今から俺がやる行為に、面食らうかもしれん。正直、反吐が出る思いをするだろう」

P「だがお前達は俺など気にせず、目の前の敵に対処することだけを考えろ。これは命令だ」

P「そして、出来る範囲でいいから、春香に話しかけてやってくれ」

真「プロデューサー……」

真美「兄ちゃん……」




亜美「あれで納得しちゃうんだ」

伊織「しかも敬礼までしてるわ」

あずさ「皆さん、入りこんでますね~」

律子「特に雪歩がいいわね。演技指導を増やした方がいいんじゃない」

小鳥「春香ちゃんは撃たれ損ですね」




亜美「ていうか、みんな流してるけどさ。何で亜美達に銃が見えてんのさ」

亜美「あれ、モデルガンとかじゃないよね」

あずさ「う~ん、それはきっと、皆やプロデューサーさんがこの戦争ごっこに真剣な証じゃないかしら~」



律子「そうですね。聞いた話では、真に一流の格闘家はイメージトレーニングで実際に怪我をしたり、
   エア味噌汁を作って一家団欒したりするらしいです」

律子「まだまだ売れてないけど、ウチの子達は誰もがトップアイドルになれる素質を秘めてますから、
   その位は可能でしょう。アイドルはイメージを具現化する仕事ですからね。あははは」

伊織「律子…」

律子「お願い伊織、今は何も言わないで。もう疲れたの」



亜美「みんなもその力を仕事に使えばいいのに」

小鳥「ちっちっちっ、まだまだ子供ね亜美ちゃん。仕事でなく遊びだからこそ、本気になれるのよ」

伊織「………………」スッ

小鳥「すみません。ごめんなさい。反省してます。お願いですから、無言で鼻と口を塞がないでください」




雪歩『あれぇ~?春香ちゃん、眠っちゃ駄目だよぉ』キシュッ

春香『あぅッ!!』

真『なッ!?』

真美『ダメ!!駄目だよ!まこちん、抑えて!』


亜美「あっ、はるるんが舞台に戻った」

あずさ「うふふ、やっぱり雪歩ちゃんは優しいです~」




春香『いたいぃ、痛いよぉ…足の指がああぁぁ…プロデュ-サーさぁん、助けて…助けてください…』

雪歩『プロデュ-サー、ご指名ですぅ。早くしないと、春香ちゃんが踊れなくなっちゃいますよぉ』

真『くそっ!春香、頑張れ!もうすぐ助けるから!』

真美『はるるん!ガンバって!負けちゃダメだよ!』


亜美(優しい?)

律子「さすが春香、アイドルという身分を活かしたナイスアシストだわ。雪歩もよく拾ったわね」

伊織「凄い演技ね、血糊も無いのに本当に痛そうに見えるわ」




P『』ズリズリ


小鳥「あれ、プロデューサーさんがひび」

伊織「………………」スッ

小鳥「モガゴガ」




響『はる…か……はる…か……』

P『………………』


あずさ「匍匐で響ちゃんの所に行きましたね~」

亜美「ひびきんさ、ずーっと、ひとりごと言ってたよね」

伊織「ええ、あの役はあの役で大変よ。響のプロ根性を垣間見た気がするわ」

小鳥「モガゴガ(えへへ、伊織ちゃんのおてて、やわっこくていい匂い~)」

律子「一体どうするのかしら?響は武装してないし、あの状態では戦力にならないでしょうに」




響『……は…る…か……はる…か……』

P『………………』

ガシッ


P『東軍の兵に告ぐ!!直ちに武装を放棄して、我が方に降れ!!』


P『さもなくば、この娘の頭を吹っ飛ばすぞ!!!』カチャッ

真『!?』

真美『!?』

雪歩『!?』




亜美「どうしてそうなった!?」




真「プロデューサー!?一体、何を言ってるんですか!?」

P「黙って前を向いてろ!命令だぞ!」

P「東軍の兵よ!一度しか言わないからよく聞くがいい!」



P「お目当ての『 雪歩のお茶菓子コレクション 』を隠したのは、この娘だ!」

P「指示したのは俺だが、肝心の隠し場所は知らない!
  今銃口が突きつけられている、この小さな頭が記憶しているのみだ!!」

P「俺達を殺してダンボールの山を漁っても無駄だぞ!別の隠し方をしろと指示を出したからな!」




律子「うわあ」

亜美「兄ちゃん、かっこ悪うぅ…」

小鳥「モガゴガ(響ちゃん、プロデューサーさんに抱っこされてるけど、
   これってセクシャルなハラスメントになるんじゃない?)」





P(もちろん、全て見え透いたハッタリだ。だが、逆転の可能性はここにしかない)

P(社長はこんなハッタリには乗らないが、若い貴音は万一の可能性を捨てきれないだろう)

P(社長の周到さに貴音の食い意地が勝てば、少なくとも何らかの動きを見せる筈だ)



P(投降を装い、美希達を盾にして出てくるか、あるいは内ゲバに走るか)

P(何でもいい、真達の距離と実力なら即応できる。とにかく局面を動かすことだ)

P(社長…、最後の笑うのは俺ですよ。アンタじゃない)




P「いいか!今から10数える!その間に北側の防壁を開き、両手を上げて出て来い!」

P「北側の道は生きている!そちらが丸腰であることが確認でき次第、合図を送る!
  匍匐で出てくれば、狙撃される危険は無い!!」

P「ゼロのカウントと同時に、俺は引き金を引く!わかったな!?行くぞ!」


P「10!」





P「9!」


雪歩(この角度じゃ狙撃できないよぉ…。二人とも体をピッタリ隠してるもん)

雪歩(花火は使い切っちゃったし、今移動したら蜂の巣にされちゃいますぅ)




P「8!」


春香「プロデューサーさん……駄目…逃げて……」ハァハァ

雪歩(春香ちゃんはまだこっちの手にあるし、今は成り行きを見守るしかないなぁ)




P「7!」


真(プロデューサー、貴方は一体何を……)

真(いや、もうサイは投げられたんだ。迷いは捨てろ。目の前の敵に集中するんだ)



P「6!」


真美(亜美…、長かった戦いもこれで終わるよ)

真美(辛くて、苦しかったけど、得る物もあった。大事なことを学んだんだ)



P「5!」


真美(お姉ちゃん、ゼッタイ、ゼッタイ家に帰るからね)

真美(そしたら、二人で遊んで、いっぱいお話しようね。真美は、亜美に伝えたいことがいっぱい…)




P「4!」


亜美(ドキドキ)

小鳥(ワクワク)




P「3!」


伊織「今まで東軍の動きが無かったのが気になるわ」

律子「さて、貴音達はどう出るかしらね」

あずさ「皆さん!あれを!」




P「2!」


あずさ「北壁のダンボールが!」




ドサッ ドサッ


真「東軍の北壁が崩れ落ちていく……」

真美「まこちん!中に人影が!」カチャッ


P「1!」




高木「………………」ユラリ



真美「シャチョー!?」

真「社長!両手を上げて、一歩だけ前に進んでください!」カチャッ

P「社長、真の言った通りです。一歩だけなら雪歩の角度に入りません」カチャッ

響「……は……るか…………はる……か……」




高木「………………」


真美「シャチョー!手を上げて!ケイコクはこれで最後だよ!」

真「ちょっと待って、何かがおかしい……」

P「………………」

響「……はるか…………はる……か……」




高木「………………」ユラユラ

高木「」ドサッ

高木の背後の人影「………………」カチャッ


P「!!ッ!」カチャッ


P「真!真美!中央だ!」

真「了解!」カチャッ

真美「ラジャー!」カチャッ




声『やっ!!』


真「!真美!危ない!!」ガバッ

真美「まこちん!!」



伊織「中央の防壁が吹き飛んだ!」

律子「真が真美に飛びついて、飛んできたダンボールから守ったわ!」




美希「真クン!手を上げるの!」カチャッ

やよい「真美!動かないで!」カチャッ

真「!」

真美「!」



あずさ「二人とも体勢を崩しました!」

亜美「ミキミキ、迷いが無い!即座に二人の銃を蹴り飛ばす!」




千早「あっちは上手く行ったようですね」

P「ははは、千早だったのか。ビックリしたよ」



千早「すみません、プロデューサー。不意打ちの様な真似をしてしまって」

P「いや、いいさ。アイドルにはサプライズが付き物だからな」



P「一体どうしたんだ?東軍の方に動きが無いから心配したんだぞ。いつも連絡は絶やすなって教えただろ」

千早「申し訳ありません。少々、取り込んでいまして」



P「そうか、誘いには乗ってこないし、何せ春香が撃たれても何のアクションも無かったからな」

P「流石に心配したよ」

千早「………………」




P「ところで、千早」


P「どうして俺に銃を向けてるんだ?そっちは弾が出る方だぞ?」カチャッ




千早「プロデューサーこそ、担当アイドルに銃を向けるなんてどうかと思いますよ」カチャッ

P「千早が銃を降ろせば、俺もそうするさ」カチャッ



美希「!」

美希「二人とも何やってるの!?もう戦う理由なんて無いの!銃を降ろすの!」カチャッ

やよい「そうです!もう終わりにしましょう!」カチャッ

P「うん、俺もそう思うんだが、千早が銃を降ろしてくれんのだ。なあ、千早?」

千早「………………」




亜美(胃が痛くなってきた)




千早「我那覇さんを、放してください」カチャッ

響「はる…か……はる、か………」

P「うん?響のことなら心配するな、俺が面倒見るから」カチャッ

P「それより、ほら、春香を助けなくていいのか?また意識を失ったみたいだぞ」

春香『………………』



美希「千早さん!みんなで協力して春香を助けるの!だから二人とも銃を降ろして!」カチャッ

やよい「プロデューサー!千早さん!お願いです!お願いします!」カチャッ

真「………………」

真美(真美は、真美はどうしたらいいの……?)



千早「春香はもう、助からないわ」

美希「!」

やよい「そんな!」




伊織「春香、せっかく復活したのに台無しね」ヒソヒソ

あずさ「意識も無くなっちゃったそうですから喋れませんねー」ヒソヒソ




P「ああ、そうだな。かわいそうに…」カチャッ

千早「よくも、よくもそんなことが言えますね。春香を囮にしたくせに」カチャッ


P「そう責めないでくれよ、俺だって最善を尽くしたんだ」

千早「黙れ!!」ガチャッ



P「まあ、聞いてくれよ。お前がさっさと社長達を振り切って
  こっちの罠にかかってくれれば、誰も傷付かずにすんだんだぞ」

千早「我那覇さんを放しなさい。さもなくば…」

P「さもなくば、どうするんだ?その脇腹の傷でまともに狙いがつけられるのか?」

千早「くっ!」ガバッ





律子「まあ、そう言われたら押さえざるを得ないわよね」ヒソヒソ

亜美「兄ちゃん、こっすいなー」ヒソヒソ





P「どうした、息があがってるぞ?トレーナーさんに休憩お願いするか?」カチャッ

千早「くっ……」ハァハァ カチャッ

P「貴音とサシでやりあったんだろ?もう少し早ければなあ」

千早「我那覇さんを、放しなさい……」ハァハァ



P「後な、千早は俺ばっかり責めるけど、それはちょいとばかり不公平だぞ」

千早「……?……わかってます……私が…もっと早く……」ハァハァ



P「あのな、囮の件だけどな。春香自身がそれを言い出したんだよ」

千早「!」

P「千早ちゃんは必ず私の所に来ます、ってなあ。あいつの真意は結局わからずじまいだが、
  きっとお前を助けたかったんじゃないか」

千早(春香……私は…)ハァハァ




伊織「大人気ないわねえ、言ったもん勝ちなのをいいことに…」ヒソヒソ

あずさ「でもでも、これは効きますよぉ~」ヒソヒソ





千早「これが、最後の警告です…」ガチャン

P「そうそう、しっかりと肘を絞って、両腕で銃を支えること。
  今でも俺の教えを守ってくれるんだな、嬉しいよ」スッ



亜美「およ、兄ちゃんが銃を降ろした?」

律子「まさか、降伏する気?」




P「ところで、こうしたらどうする?」ヒョイッ

響「はるか………はる……か……」

千早「なっ!この…卑怯者ッ!」ハァハァ



伊織「響を盾に!?」

小鳥「モガゴガ(さすがの私もそれは引くわ)」





P「なあ、千早。教えてくれよ?響ごと撃つのか?
  春香が身代わりに救った命だぞ?助けたいと思わないか?」

千早「貴方という人は……ッ!」ハァハァ

P「それとも、その響だから逆に憎いのか?お前のP220は信頼性の高い、いい銃だ。
  しっかり狙えば、きっと望みが叶うぞ」

千早「……だまれッ!」ギリッ



P「なあ、千早。考えてもみろよ?俺を殺して、それでどうなる?まだ雪歩の問題があるんだぞ?」

P「手負いのお前と、あいつらだけで雪歩を処理できると思うか?」

P「きっと、これから何人も、何人もやられるぞ?」


P「お前のわがままのせいで、な」




亜美「ゲスぃわぁ…」

あずさ「これはちょっと…」

小鳥「演技です!演技です、よね?」





ガチャンッ


千早「あ、あああ」

千早「ああ、あああああ」ドサッ

千早「あああぁ、あああああああああああぁ!」

千早「あああああ!ああ!春香あっ!春香あぁっ!!あああああ!!」




P「ふん、Dランクアイドルといってもこんなものか」


P「よし、お前達、雪歩を片付けろ」

P「あいつはあの場所を動けん、二手に分かれてシールドを作るんだ」

P「それで狙撃の脅威は無くなる。全員で囲めば、この馬鹿げた戦いも終わりだ」




美希「………………」カチャッ

P「うん?美希、何のつもりかな?」



美希「許せないの」

P「おいおい、お前まで甘っちょろいことを言いだすのか?」



P「勘弁してくれよ。いつから765プロは博愛主義者の集まりになったんだ」

美希「こんな人間に、一度でも罪悪感を感じた自分が情けないの」



P「ほう、俺を殺して雪歩も殺せば、悪者はいなくなりましたメデタシメデタシってわけか」

美希「雪歩はまだ交渉の余地があるの」




美希「プロデューサーには、反吐がでるの」




P「随分と酷いことを言うんだな。そうまで言われちゃ俺だって傷付くぞ?」

美希「当然の報いなの」



P「そうか?報いと言うなら、この戦いのそもそもの発端は、美希、お前じゃなかったか?」

美希「その手は通じないよ?ミキは自分勝手な子供だからね」



P「うん、確かに美希は子供だな。隙だらけだ」

美希「あはっ、ごめんね。オジサン」



P「それに随分と視野が狭い。駄目だぞ、怒った時こそ冷静にならないと」

美希「覚悟するの」




??「きゃあっ!」


美希「!」


真「駄目だよ、美希。アイドルたる者、現場の空気に敏感でなきゃ」カチャッ




やよい「ごめん…なさい…美希さん。あっという間に銃を、取られちゃいました…」



真「素手とはいえ、やよい一人に、ボクの相手は荷が重いと思わなかったのかい?」

P「真、よくやった」



美希「真クンはさすがなの。音を立てずに銃を奪って
   やよいに突き付けるなんて、ミキには恥ずかしくてできない芸当なの」

真「何とでも言いなよ。ボクだって学ぶさ。君は自分が撃たれることなんて何とも思わないだろうからね」カチャッ

真美「まこちん!もうやめて!」



真「プロデューサーから、銃を降ろすんだ」




美希「ミキ、わかんないなあ。そんな卑劣なことをしてまで守る価値が、このオジサンにあるの?」

P「おいおい、オジサンはひどいなあ」


真「プロデューサーはボクの上官だからね。守る義務はあるよ」

美希「部下の命を盾に取るような上官でも?」

真「無論さ、でなきゃ組織は成り立たない」




真「それに、プロデューサーのやったことは正しい」

真「彼は自分の命と、僕達の命、そして君達の命を秤にかけて、なるべく死人が出ない方法を取ってきた」

真「千早の傷は浅くないが、まだ助かる余地はある。撃ち合いになれば、そうはいかなかった」

真「どんなに近しい人でも、自分の命や望みを秤にかけることは、そんなに簡単じゃない」


真「ましてや僕達は恋人でも肉親でもない。アイドルとプロデューサー、ただの仕事仲間だ」




美希「春香を助けに行かなかったの」

P「俺だって、犠牲を払わずにすむなら助けたかったさ」



美希「千早さんに銃を突き付けられて、何も分からなくなってる響を盾にしたの」

P「響がああなったのは俺のせいじゃない。まあ、完全に無罪というのは良心が咎めるがね」

P「あいつを盾にしたのは、千早が撃てないと確信していたからだ」



美希「春香が撃たれたのは二人を前線に出したからなの」

真「それは作戦の上でのことだよ。春香が志願し、千早が単独で近づいてきた時の段取りを皆で決めた」

真美「………………」



美希「それでも、納得できないの」

真「別に納得してもらう気は無いさ。ただ、君のわがままでやよいはもう弟達に会えなくなる」カチャッ

やよい「美希さん………」




P(ふん、真もなかなかやるもんだな。後一押しというところか)

P(そうだな、ついでに真の覚悟も確かめさせてもらおう)


P「そう、納得してもらうつもりは無い」

P「これは、命令だ」カチャッ

響「は…る………は…る…か」



美希「!どこまで、どこまで腐ってるのッ!」ガチャッ

真「………………」



P(ほう、真は動じないか。成長したもんだ)

P「美希、銃を床に置け」

P「お前が一人で雪歩を無力化するんだ。さっさとシールドを作れ、急げよ。俺の引き金は軽いぞ?」

美希「!」ギリッ

真「………………」




真美「千早お姉ちゃん?」




千早「………………」フラッ

千早「春香、ごめんなさい。長い間一人にしてしまって」



P「………………」

真「………………」




千早「こんな所に座っていたってしょうがないじゃない」

千早「今、そこに行くわね」



美希「千早さん………」

やよい「だめです…そっちに行っては……」

真美「はるるんの…所へ……」




千早「ごめんなさい、春香。散々助けてもらったのに、何もしてあげられなくて」

千早「いつもいつも、春香は私の隣で笑ってくれたわよね」

千早「私はもう、何もしてあげられないけど、そばにいることくらいならできると思うの」



亜美「………………」

伊織「………………」

律子「………………」




春香「」

千早「ふふ、安らかな顔ね。まるで眠ってるみたい」

千早「『私は天国に行けない』なんて言ってたけど、アテが外れたようね?」

千早「春香みたいないい子が、天国に行けないわけ無いもの」



あずさ「………………」

小鳥「………………」




美希「千早…さん……」

真「駄目だよ、美希」カチャッ



千早「ふふっ、でも春香がいるなら、私は地獄でもいいわ」



美希「でも、あのままじゃ雪歩に……」

真「君には君の仕事がある。千早の邪魔をしてはいけない」



千早「春香と一緒なら、どこにいても楽しいに決まってるもの」




真美「………………」

P「真美、お前も動くな」カチャッ



千早「向こうに行ったら、二人でユニットを組みましょう」



真美「もう、そんな気ないよ。真美にできることなんて、なんも無かったんだ」



千早「いつか春香と二人で歌うのが、私の夢だったの」



真美「ただ、無事に帰れたら、オッサンには言いたいことがあるよ」

P「ふん、それでいい。大人しく座ってろ。そうすれば無傷で帰してやる」



千早「春香、私の、かけがえのない親友」



千早「春香………大好き………」









              ぱんっ












真「!」

真美「!」

美希「!」

やよい「!」



P「がアッ!」


貴音「ふ…ふふ、こんな酷い有様でも…当たる…ものですね……」

貴音「『 銀色の月 』の…面目躍如という…ところでしょうか……」



P「貴…音…、おま…え……」ドサッ


貴音「あなた様…、悪党には悪党の…報いがありま…す……」

貴音「わたくしも…、もう……」ドサッ



真美「お姫ちん!」

真「真美行くな!!狙撃されるぞ!もう貴音は助からない!」

真美「だったら行かなきゃ!お姫ちんは仲間だもん!」ダッ

真「真美ッ!!」




真美「お姫ちん!お姫ちん!」

貴音「その…声は……真美…ですか……お願いが…ありま…す……」


真美「何?真美、なんでもするよ」

貴音「わたくしは…もう…自力では……歩けません……」

貴音「あの方の…所…へ……連れて行って…くだ…さい……」



真「………………」

美希「………………」

やよい「………………」



真美「はい、お姫ちん。真美の肩につかまって」

貴音「ふふ…貴女に…肩を貸して…もらう日が……来るとは……わからない…ものです……」




P「」

真美「お姫ちん。兄ちゃんだよ」

貴音「感謝します……真美……この世の…名残に……もう一つだけ…聞いていただけませんか……」



響「は…る…か……は…る…か……」


貴音「あの場所…では……響が…危険です……どこか安全な…争いの無い…ところへ……」

真美「わかったよ、お姫ちん」タッ



真美「ほら、ひびきん。こんなところで寝たら駄目だよ」

響「は…る……か…………はる…か……」


貴音「響を……頼みます……よ……」




P「」

貴音「ふふ……あなた様……わからない……ものですね……」




貴音「わたくし…今日は…あなた様と……二人で……
   らぁめんを食べに行こう…などと……考えていたのですよ……」



貴音「それが…こんなことに…なるとは……人生とは…真……わからない……ものです……」



貴音「あなた様…あなた様は…いつもわたくしを……からかって…おいででしたね…」



貴音「わたくしの…わがままなど……一向に聞かず……自分が食べたい時だけ……わたくしを誘って……」



貴音「ふふ……今日からは…違います……わたくしが……あなた様を……独り占めできるのですから……」



貴音「あなた様………ああ、あなた様」



貴音「わたくし……は…貴音は…幸せです………」




キシュッ キシュッ


P「」貴音「」



雪歩「ミッションコンプリート、です」




伊織「―――そう、着いたの。窓はやめて、生存者がいるから」

伊織「私達も中にいるからフラッシュの類は使わないでね。それじゃ」


律子「伊織?」

伊織「頃合よ。もう終わりにしましょう」





バーン!


特殊装備の隊員1「 GO!GO!GO! 」

特殊装備の隊員2「 MOVE!MOVE!MOVE! 」


あずさ「!?」

小鳥「えっ!!SWAT!?」

亜美「なんでこの人達まで見えない銃持ってんの!?」




特殊装備の隊員3「 HOSTILE ENGAGE! 」

特殊装備の隊員4「 MINASE-POLICE! GET DOWN!! 」


真「くそっ!ここまで来てやられるかっ!雪歩!」

雪歩「Прикрои меня !(真ちゃん!援護して!)」キシュッ キシュッ



特殊装備の隊員5「デブがやられた!」

特殊装備の隊員6(新堂)「発砲を許可する!撃てっ!」


真「行くよ雪歩!ボク達に明日はないんだ!」

雪歩「 BANANA FISH を見ましたぁ!死ぬにはいい日ですぅ!」

美希「もうヤケなの!誰も死なせるわけに行かないの!」

やよい「うっうー!こんなところにミニガンが落ちてましたー!」




特殊装備の隊員7「ばばばばばばばばばばばばばばば!」

特殊装備の隊員8「だだだだだだだだだだだだだだだっ!」


真「ずがががががががががががががががががががががっ!」

雪歩「 キシュッ キシュッ キシュッ キシュッ キシュッ キシュッ キシュッ 」

美希「ののののののののののののののののののののの!」

やよい「きゅいぃーーーん ばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばば!」



特殊装備の隊員9「容疑者発見!」

小鳥「ちょちょっ!アタシは違いますって!」

特殊装備の隊員10「拘束します!」

小鳥「あっ、だめっ、ロープがくいこむっ」

亜美「もうワケわかんないよーーーーーーーーーーーーー!」



特殊装備の隊員11「ぐあっ!」

特殊装備の隊員12「がぁっ!」


やよい「うっうー!ノンストップでうちまくりですーー!」

雪歩「未来です!私の弾丸は未来への架け橋ですぅ!」

キシュッ キシュッ キシュッ キシュッ キシュッ ………


――――

――



――


「「「「 ―――せーの…、おつかれさまでしたー! 」」」」


―――それから三時間後、765プロの新事務所


律子「ふう、やっと一段落つけますね」

雪歩「何もありませんが、お茶を淹れてきました。どうぞ」

あずさ「伊織ちゃんのお手伝いさん達が手伝ってくれたおかげです~」ズズー

やよい「伊織ちゃん、ありがとうございますー!」

伊織「別にいいのよ。あの有様じゃあ、いつ帰れるか分からなかったしね」ズズー



亜美「まだ開けてないダンボールが残ってるけど、それは明日だね」ズズー

真美「そだね。ギョーシャさんが来ても恥ずかしくない程度には片付いたしね」ズズー

響「仕事に必要な書類は揃ったみたいだし、後の箱はおいおい片付ければいいさー」ズズー



P 高木 小鳥 貴音「………………」

     ↑
新堂さんに両腕縛られて正座中




伊織「それにしてもアンタ達、随分と派手に遊んだわねえ」


真「いやあ、面目ない」ズズー

雪歩「えへへ、楽しくてつい調子に乗っちゃいましたぁ」ズズー

春香「えっへへー、千早ちゃん!楽しかったね!ね!」ダキッ

千早「春香、離れなさい。私、暑苦しいのは嫌いよ」ズズー



美希「真クンも雪歩もみんな迫力満点でスゴかったの!迫真の演技だったの!」

真美「いやぁー、ミキミキもここぞ!ってとこで活躍してたじゃん」

響「自分は足を引っ張ったり、おかしくなったり、人質にされたりで散々な役回りだったけど、
  皆の活躍を見てるだけで楽しかったぞ!」



P「いや、前二つは自分で選んだんじゃん」ボソッ

律子「あら、プロデューサー殿。まだ反省が足りないんですか?」ニコッ


高木「キ、キミィ、余計なことを言うものではないよ!『 時は金なり 』という諺を知らんのかね」

小鳥「社長、それを言うなら『 地獄の沙汰も金次第 』ですよ」

貴音「ところで、引越しぱぁてぃはまだでしょうか?」グー




律子「引越しパーティーなんてやってる暇ないわよ。もう遅いもの」

貴音「そ、んな…それではわたくしは何の為に今まで戦ってきたというのです!?」ジタバタ

亜美「もうそういうのいいから」



真「お茶菓子の箱、結局出てきませんでしたね。プロデューサー」

P「おっかしいんだよなあー、確かにあの辺に隠したんだけど」

響「あっ!プロデューサー!!何でも自分を巻き込むの、もうやめて欲しいぞ!」

あずさ「まあまあ、プロデューサーさんは響ちゃんとお友達になりたいのよ。許してあげてちょうだいね?」



伊織「きっと、残ったダンボールのどこかに紛れちゃったのね」

雪歩「あ、あの、皆さんももう今日はお茶菓子のことは気にしないでください」

雪歩「明日捜せばいいし、出てこなければその時はまた買ってくればいいだけの話ですから」

春香「えへ、えへへへへ、千早ちゃーん。えへへ」ギュー

千早「ふふっ、お菓子だけにおっかしいって、ふふっ、ふふふっ」




貴音「そもそも、何ゆえにあいどるのわたくしまで、このような辱めを受けねばならぬというのです」

貴音「そのうえ、予定していたぱぁてぃも無しとは詐欺ではありませんか。騙りではありませんか」ジタバタ

律子「ハー……」

伊織「アンタねえ、竜宮抜きにしたら女の子の中ではアンタが最年長なのよ。自覚を持ちなさい」

小鳥「異議あり!!二十代はまだまだ女子です!」

亜美「そうだね、プロテインだね」



伊織「私達がいなかったんだから、最年長の貴音が他の子達の手綱を引き締めないと駄目じゃない」

律子「そうよ、真面目にやってたら引越しパーティーだって出来たのよ。分かってるの?」

貴音「ふふ、戯言を…。潤い無き人生など、もやし抜きの野菜らぁめんを食べる様なものです!」

美希「それって重要なの?」

やよい「美希さん!もやしは命のタンパク質です!」



P「リツコサァン、四条のヤツ全然反省してねっすヨ!パツイチ、シメちゃってくださいヨ!」

真美「うん、とりあえず兄ちゃんは、いおりんが何でもう自分のことを怒らないのか考えようか」

真(プロデューサー、貴音さんに撃たれたこと、まだ根に持ってるなー)

高木(ふむ、彼の株が下がった今が頃合だな)


高木「まあまあ、四条君も罰は受けたのだし、律子君も水瀬君もその辺にしてあげたまえ」

響「社長、両手縛られて正座してそんなこと言っても威厳無いぞ」




高木(フッ、甘い。サーターアンダギーの様に甘いぞ、我那覇君…。これからが真の大人の力というものさ)

高木「そうだな…場もおさまったところで、今日はこのまま、全員で食事というのはどうだろうか?」

貴音「!」

やよい「!」

律子「いえ、まだ話の途中なのですが…」



高木「ふむ、この近くに私の知り合いの経営してる店があってね。この男は料理の腕はいいが、
   商売の方が不味くてね、友人として少々助けてやりたいのだよ」

律子「聞けよ」


貴音「流石高木殿。妙案です。良策です。膳は急げです。四条貴音、義によって助太刀いたします」ジタバタ

春香「えへへ、一緒にご飯なんて久しぶりだね!楽しみだね、千早ちゃん!」ギューッ

千早「何言ってるの、春香。今日のお昼は一緒に食べたでしょう。暑苦しいから離れてもらえる?」

あずさ「あらー、事務所の皆でお酒が呑めるなんて嬉しいわね~」

真「いや、それは駄目ですから」


律子「はあ…もういいです。好きにしてください」




小鳥「社長、気前の良いこと言ってるけど、後でこっそり経費に捻じ込んでくるんでしょうね」コショコショ

P「絶対そうに決まってますよ。あの給料ドロボーめ、食べ物でアイドルを釣りやがって……」コショコショ

P「やよい、やよい、こっちおいで」コショコショ

やよい「?」トテトテ



P「今すぐ家に電話して、長介君達に出かける支度をするように言うんだ。部屋の外でかけろよ」コショコショ

やよい「!!いいんですかー?」コショコショ

P「仕事でもないのに遅くまでつき合わせたしな。
  これから家に帰ってご飯の支度、ってなると相当遅くなるだろ?」コショコショ

P「店が分かったら俺がタクシーに電話して、家から連れて来るよう手配するからな。
  車が着いたら運転手さんに俺を呼んでもらうよう、長介君達に言うのを忘れるなよ」コショコショ

やよい「プロデューサー、ありがとうございます!」ガルーン



小鳥「いいんですか?」コショコショ

P「いいんです。小鳥さんが経費として認めなければいいだけの話ですから」コショコショ

小鳥「ピヨッ!!?」

伊織(まあいいわ。聞かなかったことにしましょう)





伊織「それよりアンタ達もわかってるんでしょうね?ゲームのことなんかで大騒ぎして」

真美「いやまあ、半分は遊びだったんだけどさ」

美希「ミキが悪かったの、考え無しにバカなこと言ったの」

千早「美希、貴女やあの二人にも問題はあるけど、一番の原因は私よ」

千早「皆にも酷いことを言ったわね、ごめんなさい」ペコリ



春香「そんな!頭を上げてよ!千早ちゃん!好みは人それぞれだもの!」ブンブン

真「うん、あの言い方にはカチンときたけど、謝ってくれればボクはそれでいいよ」

響「だなー。好きなものだからこそ、互いに尊重しないとなー」

雪歩「大丈夫だよ、千早ちゃん。もう気にしないで。私も皆も、もう何とも思ってないから」



千早「ありがとう、皆、萩原さん。ふふっ、萩原さんは優しいのね」

雪歩「ええっ、そんな、私なんて///」モジモジ

春香「あれっ?」




伊織「ふん…、まあいいわ。私も好きだから気持ちはわかるけど、これからはこんなことしないでよ?」

律子「そう!私達は仲のいい友人でもあるけど、仕事仲間でもあるんだからね。
   趣味やプライベートの問題で、職場の空気を悪くするなんてプロのすることじゃないわよ」

アイドル達「「「「 はーーーーーい 」」」」



P「うん。いい返事だな」

高木「仲良きことは、美しきことかな」

小鳥「みんな、もう律子さん達に心配かけちゃ駄目よ?」

伊織「………………」スッ

小鳥「モガゴガ」

貴音「出立はよ、はよ」ジタバタ




やよい「ねえ、伊織ちゃん!伊織ちゃんは、どんな Shooter が好きなの?」

やよい「わたし、伊織ちゃんと Co-op して Mo-Mo-Mo-MonsterKill したいですー」ウッウー

伊織「えっ?私?い、いいのよ、やよい。私は別に///」テレテレ

亜美「そうそう、いおりん教えてよ~」ニヤニヤ

あずさ「私も興味あります~」

律子「私も知りたいわね。今後のプロデュースの参考にしたいし」ニヤニヤ

P(何言ってんだコイツ)



真「そうだね。ボクも、伊織がどんなタイプのFPSが好きか興味あるよ」ニヤニヤ

小鳥「そうよね~。皆の戦いを観ている時も、横で色々言ってたものね~」ニヤニヤ

美希「ミキも!でこちゃんが何が好きか知りたいの!」

響「FPSでもTPSでも構わないぞ!」

伊織「ちょっ、ちょっ!アンタ達まで何なのよ///」テレテレ



春香「い・お・り!ソーレ、い・お・り!」パンッ

伊織「!?」


真美(はるるん、やっぱりえげつないなあ)




春香「い・お・り!ソーレ、い・お・り!」パンッ

千早「い・お・り!ソーレ、い・お・り!」パンッ

伊織「!!?」



真「い・お・り!ソーレ、い・お・り!」パンッ

雪歩「い・お・り!ソーレ、い・お・り!」パンッ

響「い・お・り!ソーレ、い・お・り!」パンッ

伊織「!!!?」



律子「い・お・り!ソーレ、い・お・り!」パンッ

亜美「い・お・り!ソーレ、い・お・り!」パンッ

あずさ「い・お・り!ソーレ、い・お・り!」パンッ

伊織「!!!!?」



やよい「い・お・り!ソーレ、い・お・り!」パンッ

真美「い・お・り!ソーレ、い・お・り!」パンッ

P「い・お・り!ソーレ、い・お・り!」パンッ

高木「い・お・り!ソーレ、い・お・り!」パンッ

小鳥「い・お・り!ソーレ、い・お・り!」パンッ

貴音「い・お・り!そぉれ、い・お・り!」パンッ


伊織「///!!!!!!!?」




「「「「 い・お・り!ソーレ、い・お・り! 」」」」パパンッ

伊織「だーーーーーーーー!わかった!わかったからあ!///」



伊織「ハアハア……まったく、どうして私の番になるとイチイチ大騒ぎすんのよ」

やよい「うっうー!それはわたしもみんなも、伊織ちゃんが可愛いからです!」

伊織「!ちょっ、やだ、やよい、やめて///」テレテレ


真美「やよいっちは無邪気だなあ」

P「あれがやよいだ。よく見とけよ、真美」



伊織「え、えーと、その、ゴホン!」

伊織「じゃあ言うわよ、私の好きなFPSは……」

アイドル達「「「 好きなFPSは? 」」」(ステレオ)

伊織「ぐっ…、へこたれないわよ……。私の好きなFPSは……」




伊織「この Headshot級アイドル、水瀬伊織ちゃんのフェイバリットシューターは……」



伊織「ジャーン!『 SWAT4 』よ!」



アイドル達「「「 えっ? 」」」(サラウンド)

伊織「えっ?」



『 SWAT4 』…その名の通り、アメリカの特殊部隊「SWAT」を題材としたFPS。2005年発売。

          プレイヤーは4人の隊員を率いるSWAT部隊のリーダーとなり、様々な任務に挑む。
          SWATは警察機関であるため、犯人は殺害するよりも拘束する対象であり、
          その為にペッパーボールガンやレス・リーサル・ショットガン等の多様な
          非殺傷武器が用意されているのが大きな特徴。
          この他にも、ドアウェッジやオプティカルスコープといった特殊部隊ならではの
          ガジェットを駆使し、状況に合わせて部下達に細かい指示を出しながら
          凶悪犯の潜む民家やナイトクラブ、はたまた地下鉄をジリジリと進む緊張感は胃に来るレベル。
          敵AIも賢く、積極的に裏取りや待ち伏せをする為、難易度は高いがリプレイ性もグンバツ。




やよい「えーーーっ!?伊織ちゃんって『 FPS 』と『 Tactical Shooter 』一緒にしちゃうんですかー?」

伊織「えっ?」


千早「水瀬さん。私も『 SWAT4 』は、リアリズムをゲーム性に上手く落とし込んだ好例として認めるけれど、
   やはり『 FPS 』と、『 Tactical Shooter 』は別ジャンルとして分けて考えるべきではないかしら」

真「そんなこと言ったら、千早の好きな『 ARMA 』シリーズだって後者の分類になるんじゃない?」

響「『 ARMA 』は風景や兵器を眺めるのも楽しいぞ!」

春香「ひ、響ちゃん!お散歩ゲーの悪口は言っちゃダメだよ!」

雪歩「え?誰か『 S.T.A.L.K.E.R. 』をコケにしましたかぁ?」


あずさ「う~ん、でも『 Tactical Shooter 』って言っても、ここ数年の『 Tom Clancy 』はちょっとね~」

律子「あずささん、ちょっと屋上に出ましょうか」

美希「ミキ、お姉ちゃんが『 SWAT4 』遊んでたのも見てたけど、
   シューターって言うより『 HITMAN 』みたいな四次元パズルって感じだったの」

P「お姉ちゃん紹介してくれ」

貴音「」グー




亜美「シャチョー、一向にまとまらない我らが765軍に一言」

高木「うむ。好きな物事に対しては、とことんまで妥協を許さない彼女達の姿勢は
   実に胸を打つものがあるね。撃つゲームなだけに」

真美「ダメだこりゃ」

小鳥「ギャフン!><」



――――――――――――


――――――


――――

――



――

――――


カチャンッ ギィ――――……


???「………よし、誰もいないな」



―――同日、PM10:00 765プロの新事務所


???「社長も小鳥さんも酔っ払ってタクシーに乗ったのを確認したし、
    貴音も食い過ぎで動けなくなって律子の車に乗っていったからな」

???「ククク……、それにしても長介君達が来た時の社長の驚いた顔といったら」

???「まあ、しょせんは子供の食べる量、金額的にはそう変わらんがな。後は小鳥さん次第だ」

???「とにかく電気を点けよう。こう暗くちゃ話にならん」


パチッ



P「………ふん。どうやら、あれから誰も来てないみたいだな。ダンボールの配置もそのままだ」




P「今の状態をカメラに撮っておこう。明日になって貴音あたりが騒ぐといけないからな」ピロリン


P「こっちの角度からも」ピロリン

P「こっちからも」ピロリン

P「反対側も」ピロリン

P「おっ、その角度いいよー」ピロリン

P「いいね、いいねー、可愛いよー。目線くれるかなー」ピロリン



P「よし、こんなものだろう。この写真の通りに直せば、痕跡を残さないですむ」


P「それじゃあ、作業にかかるとするか」




ガタガタ

P「よいしょっと。紙の詰まったダンボールってのは、どうしてこう重いんだろうな」


ガタガタ

P「ふう、それにしても水瀬家の使用人に両腕縛られた時はさすがにあせったぜ」


ガタガタ

P「アイドル達に開けられたら、何もかもパァだったからな」


ガタガタ

P「それでも、部外者の人間が来たのは幸運だった。他の連中に指示したら勘ぐられただろうしな」


ガタガタ

P「本当は倉庫かなんかに運ばせたかったんだが、あの場じゃそうもいかなかった」


ガタガタ

P「何でもないふりをして、こっちの急ぎでないダンボールに紛れこませるので精一杯だった」


ガタガタ

P「まあ、こうやって誰にも見られず回収に来れたんだ。それで良しとするさ」


ガタガタ

P「はは、明日いくら捜そうがもう出てこないぞ。貴音、そして社長。最後に笑うのは俺だったようですよ」



P「おっ、これだ。この特徴的なオレンジボックス。間違いない」




P「あれっ?なんか重いな。いや、こんなもんだったか。何せ、大量のお茶菓子が詰まってたからな」

P「パイポルトや柿の種だけじゃない。外箱を入れ替えた時に気付いたんだが
  カステラだってあったし、あられや煎餅、羊羹だってあった」


P「雪歩のやつ、田舎のおばあちゃんじゃあるまいし、こんなに蓄えたって悪くするだけだろうに」

P「食べ物を腐らせるのは、生物として一番やっちゃいけないことだぞ。わかってるのか?」

P「プロデューサーとして、担当アイドルにそんな罪を犯させるわけにはいかない。俺が協力してやらにゃ」



P「クク、これで今月の食費は浮いたし、新しいゲームが買えるな。あー、仕事したいのに困っちゃうなー」





P「それでは、感動の再開タイムといきますか。テレビだったらタレントは既に泣いてる頃だな」



P「当番組スタッフが、プロデューサーさんの依頼を受けて、全力で探しました」

P「そして、遂に見つけました。数時間前に生き別れとなった、貴方の探し人を」

P「先方もとても会いたがっておられました。一日たりとて忘れたことなどない、と」グスッ


P「では、よろしいですね……?」


P「はい!」



P「では登場していただきましょう!雪歩のお茶菓子コレクションさんです!どうぞ!」


パカッ


――――

――



――


???「あー、いいお湯だった」


―――同刻、 都内某所



???「今日は仕事でもないのに、いっぱい動いたなー。さすがに疲れたかも」


???「10時半前、か…。しばらく水着の仕事ないし、レッスンもあるから別にいいよね」



ガサガサ

???「えーっと、今日のバッグの中に……おっ、あったあった」



パクッ

???「うーん、美味しいなー。やっぱり高いだけあるなー」


???「こんなに美味しいんだし、お茶も淹れよっかな」スタスタ




しゅんしゅんっ しゅんしゅんっ


???「えーっと、雪歩に教えてもらった淹れ方はたしか、お湯を一度完全に沸騰させて」

カチッ


???「お茶っ葉が半分湿る程度に急須に少量のお湯を注いで蒸らして」

しゅわっ しゅわっ


???「次にお湯を飲む分だけ湯呑みに注いで数秒冷ます」

じゃーーー


???「で、それを急須に入れて、蓋をして一分待つ」

だばーーー




???「よしっ、時間だ。最後の一滴まで注ぎきる、と」

ちょろろろろ――


???「うーん、いい香りだなー。雪歩が教えてくれたお茶はやっぱり違うなー」ズズー





???「ふうっ――、それにしても今日はヒドイ目にあったぞ」




???「プロデューサーもたいがいだよなー。人を運び屋にしたり、盾にしたり、扱いがひどすぎるぞ」


???「工兵の役を任されてからも、あっちにこっちにダンボール持って行ったり来たりでさー」

???「ま、そのおかげでこうして美味しいものが食べられるんだけどね」モグモグ


バウッ

???「うん?いぬ美も食べたいのか?ダメだぞ、パイポルトは甘いから歯に悪いんだ」



???「でも、プロデューサーも結構抜けてるんだなー。東軍や雪歩に気を取られて
    こっそり同じ模様のダンボール箱にすり替えられたのに気付かないんだもんなー」

???「まあ、自分も壁を築くふりして、同じ色のガムテープを貼り直したり小細工はしたけどさ」

???「一度でもいいから箱を開けて、中を確認すればよかったのに。
    でも、雪歩がどこで見ているか分からないし、そうもいかなかったのか」

???「自分の立てた作戦で、自分の行動を縛っちゃったんだな」モグモグ



???「いぬ美、あーゆーのを『 策士、策に溺れる 』って言うんだぞ」ナデナデ

へっへっへっ




???「プロデューサー、今頃血眼になって捜してるのかなー。明日の片付けが大変だぞ」


???「全部は持って来れなかったから、片付けの時にパイポルトだけ自分のバッグに入れて
    後は箱ごと新堂さんに預けたし、伊織ならきっといいようにしてくれるよね」モグモグ


???「近くに同じ箱が見当たらなくてピヨ子には悪いことをしたけど、
    あんな本を職場に置いとくのが悪いんだからね」モグモグ



???「んぐ、ごくん。あー、美味しかったー。これでしばらくはおやつに困んないぞ」


???「んーーー、っしょっと。そろそろストレッチして寝ないとな。今日も疲れたけど楽しかったなー」


???「………………」







???「えへへっ、やっぱり765プロは楽しいところだぞ」





                                 おしまい

疲れた。


やたら煽りあうし、自分勝手だけど仲がいいみたいなのを書きたい
     ↓
よし、みんなを戦わせよう
     ↓
でもアイドルが怪我するのヤダヤダ
     ↓
声だけの銃持たせりゃいんじゃね?


って感じでした。


お話の書きためは以上です。後は本文中で説明できなかった、ゲームの説明文を投下します。

ここまで読んでくれた人、ありがとうございました。

乙!
めっちゃ面白かった!


アイマスのゲームに触れた人が知ってそうなタイトルは割愛。



『 S.T.A.L.K.E.R. 』…2012年のチェルノブイリ原発跡地とその付近の危険地帯「ゾーン」を舞台にした、
            ウクライナの「 GSC Game World 」開発の半オープンワールドFPS。
            一作目の『 S.T.A.L.K.E.R. SHADOW OF CHERNOBYL 』は2007年発売。
           
            SS中で千早が銃の精度を揶揄していたが、これは上記『 S.T.A.L.K.E.R. Soc』の
            最序盤でいきなり激ムズなミッションを与えられる為にできた風評被害の様なもの。
            ちゃんと狙えばしっかり当たるので安心しよう。AIの出来もよく、戦闘も楽しいぞ。
           
            東欧ゲー特有の寂寥感に満ち溢れた「ゾーン」の中を、
            凶悪なミュータントや人間達、そして危険なアノーマリーを掻い潜って、
            二束三文のお宝をちまちま集める感覚は一度味わうと忘れられず、没入感が高い。
           
            結構な人気の内に三作目まで発売されたが、開発元が残念なことになったので
            『 S.T.A.L.K.E.R. 』の名を冠した続編は出せないが、
            スタッフ達は新スタジオに移って精神的な続編を開発中らしい。


            ロシアのSF小説「ストーカー(もしくは路傍のピクニック)」、「願望機」が
            元ネタになってるので興味がある人は読んでみよう。
            え、映画?アレは一見さんにはオススメできません。


『 MAX PAYNE 』…GTAシリーズで有名なRockstar Games(今はTake 2?)から発売されてる為、 
             箱庭ゲーと勘違いする人が多いが、実際は2001年から続く骨の太いTPS。最新作は3。
             前述の『 F.E.A.R. 』のようなスロー能力「バレットタイム」が使えるが、
             こちらは三人称視点なので映画さながらの熱い銃撃戦が楽しめる反面、
             多用するとピョンピョンゲーになるので注意。

             復讐から始まる、暗い、ノワール調のストーリーにも重きを置いてるが、
             主人公の「マックス・ペイン」は経験から学べない人間なので、
             そういった愚かな男の弱さや悲しさが許容できない人にはオススメできない。
        
             全体的に難易度が高く、初代と2は覚えゲー的な側面もあるが、凶悪な配置の敵を
            無駄弾を使わずに針の穴を通すようなエイミングで屠った瞬間はマジ滾る。

             是非ともPCでプレイして欲しい、完成度の高い一品。


『 ギネス 』…しつこくない程度の香ばしさとクリーミーな泡、
        そして、まろやかでしっかりとした味わいが魅力の、
        アイルランドを代表する、大麦を使った黒スタウト。親しみやすく、中毒性が高い。

        スーパーで売ってるギネス缶を使えば、簡単にクリーミーな泡を再現できるのでオススだが。
        ボトル売りのギネスをあまり冷やさないで飲むのも美味しい。
        どちらの場合も背がある程度高く、細くないグラスを使おう。専用グラスを買うのもアリだぞ


シューターのこと書いてたのに、今はストロングホールドがやりたい。


これで書きためは終了です。


SS中では色々揶揄するようなことも書きましたが、
説明してないタイトルも含めて、名前を出したタイトルはどれも出来がいいゲームです。

初見のとっつきにくさはありますがよかったらプレイしてみてください。

PC版なら海外のダウンロードサイトやamazonで安く変えます。
古いゲームは今のOSで動かすには工夫がいるものもありますが。



シリアス→ギャグ→Seriousと来たので次はイチャラブものか、ホッコリするもの書きたい。


繰り返しになりますが、読んでくれた人ありがとう。
HTML化依頼出してきます。

乙!
最初から見てたけど終わりが気になるいいSSでした!

大作だったな


最後までノンストップの面白さだったぜ

おつん
ARMAやってみたいんだけど、敷居が高いんだよね………

すごい作品だったわ。そしてPがゲスい

僕ののーとぱそこんでできるのないかな

FPSが好きな奴に碌なのはいねえってウチの兄貴が言ってた


これはめずらしいゲスP

面白かった乙乙

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