中野有香「ツッコんでほしい?」 水本ゆかり「ええ」 (18)


・「アイドルマスター シンデレラガールズ」のSSです


中野有香「あぁーっ! お二人とも、こんなところにいたんですか!」

一ノ瀬志希「おや、有香ちゃんだ」

宮本フレデリカ「有香ちゃん! おつデリカ~♪」フリフリ

有香「おつデリカー、じゃないですよ! もうすぐレッスンが始まりますよ!? 早くレッスンルームに行って、支度しないと!」

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フレデリカ「あちゃー、もうそんな時間だっけ?」

志希「レッスンかぁ、そっかー……」

有香「そんなあからさまに、『気分乗らないなー』みたいな顔しないでくださいよ……。響子ちゃん達、もう先に行って待ってますよ?」

志希「女は少し待たせるくらいがちょうどいい、ってねー」ゴロン

フレデリカ「わーお、志希ちゃんったら、オトナの余裕?」

有香「はいはい。志希さんが大人っぽいのは分かりましたから。ほら、起きて下さい」ユサユサ

志希「……」

フレデリカ「はっ、たいへん! 患者の意識がありません! 呼吸が弱くなっております! ドクター中野、至急緊急オペを!」

有香「なんですって!? それはいけません! 急いで患者を手術室へ!」

フレデリカ「いえっさー!」

有香「くっ、なんとしても患者を助けなければ……! 手術を開始します! メス!」

フレデリカ「はい!」パシ

有香「汗!」

志希「はい!」ハスハス

有香「……って違ぁぁうっ!」

志希「あはは♪ やっぱり有香ちゃん、こーゆーノリ好きでしょ?」クンカクンカ

有香「それは、お二人が突拍子無く小芝居を始めるから、つい……! あぁもう、匂いを嗅がないでください! は、恥ずかしいじゃないですか!」

志希「えー? イイ匂いだから大丈夫だよー」

有香「そんな、かな子さんみたいなこと言ってないで! あとフレデリカさん! シャーペンで切開は出来ません!」

フレデリカ「でもこれ、勝手に芯が回転するから、ずっと芯が尖った状態で書けるっていうスグレモノだよ?」

志希「おお、そいつは便利! ……でも、お高いんでしょう?」チラ

有香「ご安心ください! 今なら送料負担で税込みたったのさんきゅっぱ!」

有香「ってだーかーらーぁ! こんなことやってる場合じゃないんですって! ほら、行きますよ!」グイグイ

フレデリカ「わわっ! 有香ちゃん、力強ーい!」

有香「鍛えて! ます! から!」グイグイ

志希「あぁ~、引っ張られーるー」ズルズル



水本ゆかり「……」

椎名法子「……」


----翌日----



有香「あの……ゆかりちゃん? それは一体、どういう……?」

ゆかり「ですから……私も、有香さんに『ノリツッコミ』をして頂きたいのです!」フンス

有香「は、はぁ……ノリツッコミ……ですか」

法子「うん♪ ノリツッコミだよ」

有香「えぇと……まずは、どのような経緯でそういう話に至ったのかを説明してほしいのですが……」

法子「有香ちゃん、昨日ラ・ロズレのレッスンに行く前に、志希さんとフレデリカさんとお話してたでしょ?」

ゆかり「あのお二方と一緒にいる時の有香さんは、私達といる時とはまた違って……とても活き活きして見えます」

ゆかり「その様子がとても楽しそうで……少し、羨ましく思ってしまって」

有香「ああ。アレかぁ……」トオイメ

有香「確かに、楽しいことには楽しいんですが……そもそも、アレは別にあたしがやりたくてやっているわけではなくて……」

法子「そうなの? うーん。それにしては、ノリノリじゃなかった?」

有香「ノリノリというか……乗らされているというか」

ゆかり「……あの、ご迷惑でしたか……? 無理強いをするつもりは無いのですが……」

有香「い、いえ! 別に、嫌だというわけでは!」

有香「わ、分かりました……。いつもお世話になっているゆかりちゃんの頼みであれば、不肖、中野有香! 誠心誠意ツッコませて頂きますっ! 押忍!」

ゆかり「ありがとうございますっ!」パァァ

法子「よかったねー、ゆかりちゃん!」

ゆかり「はい!」

有香「あはは……」

ゆかり「それでは、早速……」

ゆかり「……どうぞ!」

有香「……」

法子「……」

ゆかり「……」ワクワク

有香「…………えぇと」

法子「…………ゆかり、ちゃん?」

ゆかり「……あ、あら……? 有香さん、ノリツッコミは……?」

有香「い、いや……だから、ツッコむためにはまず、ゆかりちゃんがボケてからじゃないと」

ゆかり「……ボケる、ですか……?」

法子「……ねえ、ゆかりちゃん? そもそも、『ノリツッコミ』ってどういうものか、わかる?」

ゆかり「えぇと……その、詳しい定義は存じ上げなくて……すみません」

有香「定義というほど、大それたものではないのですが……」

法子「しょうがないなぁ。あたしが、一から教えてあげるよっ!」

ゆかり「まあ。法子ちゃんも、ノリツッコミの心得をお持ちなのですか?」

法子「ふふーん♪ あたしだって一応、大阪の生まれだからねっ」ドヤァ

ゆかり「……はっ。まさか、ノリツッコミの『ノリ』は、法子ちゃんの『ノリ』なのでは……」

有香「そんなわけ無いでしょう」



~~説明中~~



ゆかり「なるほど……」

ゆかり「まずは暫くの間、相手が言ったことに合わせてエチュードを行い、その後で不自然な点を、語気を強めつつ指摘する……これが一連の流れなのですね」

法子「そうそう、大体そんな感じかな♪」

有香「……ゆかりちゃんの表現だと、ノリツッコミがやたら高尚なもののように感じますね」

法子「同じドーナツでも、チョコレートでコーティングすれば、もっとおいしくなるじゃない? それと同じだよ!」

有香「その例えがピンとくるのは、法子ちゃんだけかと……」

ゆかり「……そうなると、お互いに演技力も求められるわけですね……奥が深いです」フムフム

有香「いや、そんなに難しい話ではないんですよ?」

法子「そうだよ、簡単だよ!」

法子「湯煎するかレンジで溶かしたチョコレートにドーナツを浸すだけだから……」

有香「コーティングの話はしてませんっ!」

法子「いやぁ、少しの工夫で一段とおいしくなるんだから、ドーナツもノリツッコミと同じぐらい奥が深いと思うんだよねー♪」

ゆかり「さすが法子ちゃん……参考になります。今度ドーナツを購入した際は、是非試させて頂きますね」

有香「……とりあえず、話が進まないので、ドーナツのことを考えるのは後にしましょう?」

法子「えーっ!? ドーナツのこと考えちゃダメだなんて……」

法子「心に穴が空いた気分になっちゃうよ」

有香「何を普通にうまいこと言ってるんですか」

ゆかり「有香さん! 要領は分かりました。もう一度、挑戦させて頂けますか?」

有香「あっ、はい」

法子「ゆかゆか、がんばれー!」モグモグ

ゆかり「あら、おいしそう」

有香「考えるのは後でって! 言ったのに!」

法子「考えてはいないよ? 食べてるだけだよー」モグ

有香「……法子ちゃんのドーナツへの想いは、もはや無我の境地にまで達しているというのですか……!?」


~~数分後~~



ゆかり「結局、私達もお呼ばれしてしまいましたね」

法子「おいしかったねー♪」

有香「はい! 特にあの、マシュマロをサンドしたチョコドーナツ! あんなの、初めて食べましたよ!」

法子「でしょでしょー! あれ、今月の新作なんだー!」

有香「……って、そうじゃなくてー! 当初の目的から脱線しすぎですよっ! ノリツッコミの件はどこへ行ったんですか!?」

法子「おぉ~! さすが有香ちゃん。お手本みたいなノリツッコミだねっ」

ゆかり「有香さん、お口の周りにチョコレートが」フキフキ

有香「あっ、すみません」

ゆかり「いえいえ。……それにしても法子ちゃん」

法子「なぁに?」

ゆかり「私よりも先にノリツッコミを受けるなんて……いつの間にボケをされたのですか?」

法子「うーん? そういえば、いつだろ? あたし、みんなでドーナツ食べたかっただけなんだけどなー」

有香「あ、あはは……」

有香(……この二人、フレデリカさん達と違って、意識してなくてもボケに繋がっちゃうからなぁ……)

ゆかり「それでは、お腹も膨れたことですし……再チャレンジです!」

有香「ま、まだやるんですか」

ゆかり「ええ。一度決めたことを、途中で放りだすわけにはいきませんから」フンス

法子「おぉ……ゆかりちゃんが燃えてる!」

有香「普段のアイドル活動並に気合いが入ってる気がするのは、気のせいでしょうか」

ゆかり「ふふっ。有香さんに負けないように、私も頑張りますよ。おすっ!」グッ

有香「お、押忍! ……え、ノリツッコミの話でしたよね? 勝ち負けとか、そういう話じゃないですよね?」

ゆかり「えぇと……まずは、ボケを行わないといけないのですよね……。その為の、お芝居を……」

ゆかり「法子ちゃん。ご協力、お願いできますか?」

法子「おっけー♪ 任せて!」

有香「……だ、大丈夫でしょうか……?」

法子「じゃあいくね? ショートコント! 『オールドファッション!』」

ゆかり「えっ」
有香「えっ」

法子「オールドファッション、おいしいよねー!」モグモグ

ゆかり「え、ええ……」

法子「ゆかりちゃんも、食べる?」

ゆかり「いえ、私は……先程、頂きましたから」

法子「そっかー」モグモグ

ゆかり「……」オロオロ

法子「……? ゆかりちゃん、どうしたの?」

ゆかり「その、えー……な、なんでや、ねん?」

有香「カァァァーーーーット! そこまで! はい、集合!」パンパン

有香「法子ちゃん! コントの題材が攻め過ぎです! ゆかりちゃん、どうすればいいのか困って、挙句何故かツッコミに回っちゃったじゃないですか!」

ゆかり「すみません……急にテーマを振られたので、考える間も無く……」

法子「うーん、身近なお題にすれば、ゆかりちゃんもボケやすいと思ったんだけど」

有香「身近なのは法子ちゃんだけでしょう!」

法子「それじゃあ、別のお題にしたほうがいいかな?」

法子「いくよ? ショートコント! 『フレンチクルーラー』!」

有香「ストーーップ! 種類が変わっただけじゃないですかっ!」

有香「ゆかりちゃん! やっぱり導入はゆかりちゃんが考えたほうがいいと思います!」ガシッ

ゆかり「は、はぁ……。ですが、それはそれで、難しいです……」

有香「さっきも言いましたが、難しく考えることはありませんよ!」

有香「ロズレのお二人だって、いつも大して深く考えずに喋ってるんでしょうし!」

法子「有香ちゃん、さらっと辛辣なこと言ってない?」

ゆかり「考え過ぎずに、ですか……。思い返せば、レッスンを受け始めた頃は、頭で先を考え過ぎるあまり、ダンスの動きが固くなっている……と指摘されたことがありました」

有香「そういう時は、雑念を払い、頭を空っぽにした方が、かえって集中できますよ!」

ゆかり「そうですね……フルートの音色のように、透き通った心で……!」

ゆかり「水本ゆかり、参ります……っ!」

有香「はい……!」ゴクリ




ゆかり「…………フルートは、こうやって、振るーと音が出るんですよ!」バァァァァン

有香「って駄洒落っ! ここにきてただの駄洒落ですか!?」

法子「それ、前にあたしがやったやつ!」

ゆかり「や、やりました……! ついに、ノリツッコミを頂きました……しかも、お二人から……!」パァァ

有香「いやいやいや! 今のは、ノってません! ていうか、ノリこなせません!」

法子「きっと、そうやって奏でる音楽をスウィングっていうんだね♪」

有香「法子ちゃんはさっきからちょくちょくうまいこと言いますね!? ゆかりちゃんに対抗してるんですか!?」

ゆかり「いえ、スウィングのリズムは主にジャズで用いられるものですから……クラシックの演奏が主だった私には、あまり馴染みが」

有香「いや、そこは真面目に返すんですか……」

法子「そっかー。音楽の種類もドーナツと同じで、たくさんあるもんね」

ゆかり「はい。ジャズもクラシックも、それからアイドルソングも。どれも味わい深いです」

有香「なんか綺麗にまとまってる!」

法子「ハッ……! つまり……音楽は、ドーナツなんだよ!」

有香「えええ!? 何ですかその暴論は!」

ゆかり「そういえば、最近楽譜で全音符を見ると、ドーナツを思い出すようになって……なるほど、道理ですね」

有香「それは道理とかじゃなくて、考え方が法子ちゃんに影響受けちゃってるだけだと……!」

法子「えへへ♪ あたしたちが仲良しな証拠だね!」

ゆかり「うふふ……はいっ」

有香「うぅ……! 誰か、このしっちゃかめっちゃかな空間をどうにかしてください~!」




有香「はぁ、はぁ、はぁ……」

ゆかり「ノリツッコミこそ満足に得られませんでしたが、今日は大変賑やかにお喋りができて、とても有意義に過ごせました」ツヤツヤ

法子「今日の有香ちゃん、元気いっぱいだったもんね! これって、あたしたちのおかげかな?」

有香「あたしは、もう、お腹いっぱいです……」

法子「あはは! 有香ちゃんったら、ドーナツの食べ過ぎじゃない?」

有香「……いえ、そういう物理的な意味では無いので……」

有香「でもまぁ、ゆかりちゃんが満足できたなら、よかった……かな?」

ゆかり「はい。貴重な経験をさせて頂きました。できれば、今後のアイドル活動にも、活かしたいですね」

法子「もうすぐ、ライブステージもあるもんね!」

有香「ふふっ! あたし達の絆があれば、怖いものなどありません! 客席に、最高の笑顔を届けましょう!」

ゆかり「ええ。三人で、極上のコントを披露して……」

法子「会場を、爆笑の渦に巻き込んじゃうよ!」

有香「はいっ!」



有香「って違ぁぁぁぁう! あたし達、アイドルなんですよ!? お笑いライブをやってどうするんですかっ!?」



おわり


ロズレでツッコミアイドルとしての才能を開花させた有香 みんなもっと書けばいいと思うの
尚、法子を書くためにミ●ドに行ってきたものの、特に活用はできなかった模様


他シリーズ
キャンディアイランドのてんで毒にも薬にもならないおしゃべり

も、よろしければどうぞ。



ゆかり嬢可愛い



中野ちゃんは総受けと信じ続けてきた
間違い無かった

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