――まえがき――
レンアイカフェテラスシリーズ第40話です。今回は「ある場所」よりお届けします。
以下の作品の続編です。こちらを読んでいただけると、さらに楽しんでいただける……筈です。
・北条加蓮「藍子と」高森藍子「カフェテラスで」
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「カフェテラスで」
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「膝の上で」
・北条加蓮「藍子と」高森藍子「最初にカフェで会った時のこと」
~中略~
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「早い早雪のカフェで」
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「滑って転びそうな日のカフェで」
・北条加蓮「藍子と」高森藍子「冬日のカフェで」
・北条加蓮「藍子と」高森藍子「18時のカフェで」
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聖夜の日の舞台で、「アイドルとして」の贈り物はめいいっぱいに届けた。
あと、もう1つ。
「私」が、届けに行こう。
灰色に埋もれてしまっている、かつての居場所へ。
――車内(運転手は藍子の母親)――
ブロロロ...
高森藍子「お疲れ様です、加蓮ちゃんっ」
北条加蓮「お疲れ様、藍子」
加蓮「……はー……」
藍子「ふふ。すごいステージでしたね」
加蓮「ホント。最後はフリータイムだーって、もうすごいことになってたよね」
藍子「まるでお祭りみたいで……見ているだけで、興奮しちゃいましたっ」
加蓮「藍子もステージに上がれば良かったのに。サンタ衣装を借りられる場所とかあったんだよ?」
藍子「うーん……。それも考えたんですけれど、でも、今日は撮る側になりたくて」
加蓮「あぁ、だからカメラを構えっぱなしだったんだ」
藍子「加蓮ちゃんの写真もいっぱい撮っちゃいましたよ~」
加蓮「また今度見せてね」
藍子「はーい。……あっ。あんまりお話しさせちゃったら疲れちゃいますよね。少しでも、体力を回復しておいた方がいいのかな……?」
加蓮「平気だよー。まだ身体は熱いけど」
藍子「到着するまで横になっていますか? あっ、せっかくですから、どうぞ♪」ポンポン
加蓮「えー……んー、遠慮しとく」
藍子「どうしてですか~」
加蓮「いや、だってさ……家とかならともかく、ほら」
加蓮「(小声で)……藍子のお母さんもいるしなんか気まずいし……」チラッ
<お気になさらず~♪
加蓮「わ、聞こえてた……。あ、あはは、あの、ありがとうございます」
藍子「加蓮ちゃん、変に畏まらなくてもいいのに」
加蓮「そ、そーいう物なんだからしょうがないでしょっ」
加蓮「それになんでそっちが車を出してもらってるのよ……お母さんに迎えに来てって頼んどいたのに。迷惑はかけないようにって散々言われたんだよ?」
藍子「私だって、加蓮ちゃんを手伝いたいですから」
加蓮「別にいいのに……」
藍子「お母さんだってそうなんですよ。相談したら、すぐに自分も手伝うからーって。大丈夫だって思うって言ってもぜんぜん聞いてくれなくて」
藍子「そうだよね、お母さんっ」
<あらら、そういうのは言わないお約束でしょう?
藍子「えへへ」
加蓮「……藍子と似てるんだね。親子で」
藍子「へ?」
加蓮「アンタだってそーでしょうが。大丈夫って言っても取り下げもしないで、いつもいつも……」
<うちの子はこう見えても頑固ですから♪
藍子「も、もーっ。それは加蓮ちゃんがっ……もうっ」
加蓮「ふふ」
藍子「む~」
……。
…………。
<あと5分くらいで着きますよ~
加蓮「あ、はいっ」
藍子「ありがとう、お母さん。……加蓮ちゃん、また畏まっちゃってる」
<もっと気さくにしてくれていいのよ?
加蓮「う、うん。……そうじゃなくて……藍子のお母さんがってことじゃなくて」
加蓮「そのー……」
藍子「……緊張しちゃってる」
藍子「大丈夫ですよ、加蓮ちゃん。きっとみんな、喜んでくれますっ」
加蓮「だといいけど……ねえ藍子。私、やっぱり余計なことをしようとしてないかな……。偽善にも程があるよ、こんなの――」
藍子「まだそんなこと言ってるんですか!」
加蓮「だってさ、その……私ができるのなんて一夜限りで……変に期待を持たせても、その後が辛くなるだけなのに……」
藍子「いっときの夢はいっときで終わらない。思い出したの、加蓮ちゃんですよ?」
藍子「正しいとか正しくないとかじゃなくて……やりたいって最初に言ったのは加蓮ちゃんじゃないですか。ほらっ、胸を張って行きましょう!」
加蓮「藍子……」
藍子「私も……た、頼りないとは思いますけど、ちゃんとついていますから!」
加蓮「……ん。ありがと……。弱気になったら、できるものもできないよね」
藍子「そうですそうです。ポジティブに前向きにっ」
加蓮「あはは。パッションの子は言うことが違うなぁ」
藍子「私だってアイドルですから!」
<くすっ
加蓮「? 藍子のお母さん?」
<ううん
<藍子がこんなにグイグイと言うの、初めて聞いちゃったかも♪
藍子「そ、そうかな……?」
加蓮「……。……そうそう。いつもこればっかりなんだよ。そのくせ自分のことになるとすぐ自信をなくしたり、自分でいいのかって言ったり」
<あらまあ
藍子「もうっ、またっ! い、今の加蓮ちゃんには言われたくな――じゃなくて違うのお母さんっ! ええと……ち、違うのっ!」
<別に違わなくていいのにね?
加蓮「あははっ。ま、お互い様だよ」
加蓮「私は藍子の、藍子は私の背中を押して行くってことで。ほら、藍子が困った時には私が助けてあげるから」
藍子「む~。なんだか丸め込まれちゃってる気がする……」
<ふふっ
藍子「ほら、加蓮ちゃん。最後にもう1回だけ、荷物の確認をしましょ?」
加蓮「うん。こっちがサンタの衣装で、こっちがプレゼント。えーっと……1人目の男の子がこれで、2人目の女の子がこっちで……」
藍子「はい、これリストです。希望しているプレゼント、看護師の方に教えてもらったんですよね?」
加蓮「こっそり聞いてもらうよう頼んだけど……バレてないかなー。聡い子とかもいそうだし」
藍子「そこは、大丈夫だって信じちゃいましょう」
加蓮「ん。まーあの人も相当やり手だしその辺は大丈夫でしょ」
藍子「はいっ。それから、こっちがメッセージカードです。置いていくのを忘れちゃダメですよ?」
加蓮「さすがに忘れないって」テニトル
加蓮「…………」ジー
藍子「加蓮ちゃん? ……もしかして、また不安になっちゃったり――」
加蓮「あ、ううん、もう大丈夫」
加蓮「今は……どっちかっていうとワクワクしてる方かな」
藍子「ワクワク?」
加蓮「やるなら楽しまなきゃ損だって、前にモバP(以下「P」)さんが教えてくれたことがあってさ」
加蓮「それを思い出したら、どんなことが起こるか分からない緊張がワクワクに変わってきちゃった」
加蓮「どうなるのかな。……喜んでくれるかな? それとも、びっくりしてくれるかな」
加蓮「ふふっ。また身体が熱くなってきちゃった!」
藍子「えぇ!? だ、大丈夫ですか……!? まさかLIVEで体力を使いすぎて、」
加蓮「……あのね藍子。話の流れで察してよ。ワクワクして身体が熱くなったんだけど」
藍子「あっ。そ、そうですよね」
<藍子っていつも加蓮ちゃんのことを心配してばっかりなのよね
<お母さん、初めて加蓮ちゃんに会った時にびっくりしちゃった。思ったよりずっと元気そうな子だったから
藍子「あ、あはははは……」
加蓮「どういう風に私を紹介してんのよ……」
藍子「い、今はその話はいいじゃないですか! ほら、もうすぐ着くみたいですよ!」
加蓮「後でしーっかり問い詰めるからね」
……。
…………。
藍子「お母さんっ。行って来るね。加蓮ちゃんのこと、ちゃんと見守ってきますっ!」
<はい、行ってらっしゃい
加蓮「……行ってきます。ありがとうございます」
<いえいえ
バタン...
――病院のロッカールーム――
加蓮「着替え完了。うんっ、身も心もサンタクロースって感じ!」
加蓮「30分かー。思ったより時間くれなかったなぁ」
加蓮「ま、そもそも真夜中に病院に入らせてくれるだけ……しかもプレゼントを配らせてなんて無理が通るだけでも感謝かな」
――病院の廊下(深夜)――
<キィ...
藍子「ひっ!?」
加蓮「はい?」チラ
藍子「…………」ガクガクブルブル
加蓮「……端っこで何してんの?」
藍子「び、びっくりしたぁ……! なな、なんでここ真っ暗なんですか!?」
加蓮「夜なんだから真っ暗に決まってるでしょ。ここ24時間営業じゃないんだよ? 急患は別だけど」
藍子「だ、だって、こんな……こんなに暗いなんてっ……! だい、大丈夫ですよね、何もいませんよね!?」
加蓮「……。そういえば、さっきから藍子の肩に何か半透明の手――」
藍子「ひゃあああああああああああ~~~~~~~~~~っ!?!?!?」
加蓮「ちょ、馬鹿っ!」クチオサエ
藍子「%##(#$T%"(%"("$!?!?」
加蓮「(小声で)夜なんだから叫んじゃダメでしょ! ちょっとでも騒ぐなら許可できないってきつく言われてるんだから……!」
藍子「…………!!!!!」コクコク
加蓮「……離すよ?」
藍子「……!!!」コクコク
藍子「ぷはっ……。う、ううっ、なんで電気をつけてもらわないんですか……」
加蓮「そこまでワガママは言えないよ。あとこれでも歩けるし」
藍子「なんで歩けるのぉ……」
加蓮「慣れてるから?」
藍子「……うぅ……真っ暗で、寒くて……私、帰っちゃダメですかぁ……? お母さんと車で待ってちゃ――」
加蓮「…………」
藍子「あうぅ……」
加蓮「そりゃ……私のことだし、1人でも大丈夫だけど、でも、藍子が見ててくれた方が……頑張れる気がして……」
加蓮「迷惑なら――」
藍子「(小声で)い、行きましょう加蓮ちゃん。子ども達がサンタさんを待っていますよ!」
加蓮「う、うん」
藍子「……」
藍子「…………」ギュ(加蓮の服の袖をつまむ)
加蓮「震えてるし……。やっぱ先に戻った方が、」
藍子「だ、大丈夫です。加蓮ちゃんを見守るって決めたんです。お母さんともやくっ、約束しましたから。震えてるのは、その、か、加蓮ちゃんの体温が低いからです!」
加蓮「これ服。……ま、いっか」
加蓮「プレゼント持った、メッセージカード持った、衣装もバッチリっと。うん……よしっ。藍子、しっかり掴んでてね」
藍子「はいぃ……」
<てくてく
<てくてく
加蓮「ここから階段だよ。気をつけてね」
藍子「は、はい」
加蓮「よっ」
藍子「……うぅ……」カツン
藍子「!?!?」バッバッ
加蓮「……藍子の足音だよ?」
藍子「わ、分かってますっ」
加蓮「そう……」
<てくてく
<てくてく
藍子「か、加蓮ちゃん。いますよね……?」
加蓮「いるってば……。じゃあアンタが掴んでるのは誰なのよ」
藍子「ひっ……!」
加蓮「あのねー。……そんなんじゃホントに保たないよ? 今から車に戻ってる時間はないし、藍子1人でここから出るのって――」
藍子「……!?!?!?」ムリムリムリムリ!
加蓮「まったく。……何か話でもして気を紛らわせたら? 小声でなら大丈夫だろうし」
藍子「そ、それならええと……そ、そうだ。加蓮ちゃんのそのサンタさんの衣装って、前にお仕事で使った時のですよねっ」
加蓮「覚えてたんだ。そうだよ、藍子とステージに上がった時の」
加蓮「眠ってる子どものところにプレゼントを届けるから、別に私服でもいいんだけどさ。こっちの方が気分出るじゃん?」
藍子「なんとなく分かっちゃいます」
加蓮「どうせなら藍子も着替えればよかったのに」
藍子「ううん。今日は、加蓮ちゃんがプレゼントを届ける日ですから……私は、ただの付き添いですよ」
加蓮「付き添いががくがく震えててどうすんのよ」
藍子「そ、それは言わないお約束です……あぅ」
加蓮「どうせならトナカイの衣装を借りてもよかったかもね。ああいうのって暖かそうだし」
藍子「夜の病院を歩く、サンタさんとトナカイ……」
加蓮「……」
藍子「……」
加蓮「ぷっ」
藍子「ふふっ」
加蓮「何それって感じだよねっ」
藍子「絵本でもそんなのありませんよ、普通っ」
加蓮「あはははっ」
加蓮(……よかった。いつも通り、カフェでのんびりしている時の藍子みたいに――)
藍子「ふふっ。…………?」チラッ
藍子「…………~~~~~~!?」ギュッ!
加蓮「痛っ!? 何、どしたの?」
藍子「か、加蓮ちゃん、あれ、あれ……!?」
加蓮「ん?」
藍子「何かいる~~~~~~っ!!!」
加蓮「……いや、あれただのカーテンだよ?」
藍子「」ブクブクブク...
加蓮「…………あー……ダメかー……」
<てくてく
<てくてく
加蓮「入院病棟はこっち、で……えーっと、右だっけ、左だっけ――」
藍子「加蓮ちゃん!?」
加蓮「わっ!? ……み、耳元で急に声をあげないでよ。小声でもびっくりしちゃうでしょ」
藍子「道っ、道っ、大丈夫なんですよね!? 私嫌ですよ真夜中の病院で遭難なんて――ううぅ、想像しただけで、あうぅぅぅぅ……」
加蓮「いつもはこんなところまで来ることもないし、ちょっと道を思い出そうとしただけだってば」
加蓮「……うん、大丈夫。こっちだね」
藍子「だ、大丈夫なんですよね?」
加蓮「慣れた場所だもん」
藍子「ほほほホントに大丈夫なんですよね……!?」
加蓮「しつこいっ。ほら、鼻水くらい拭きなさいよ」
藍子「はぃ……」グスグス
<てくてく
<てくてく
加蓮「確か、1人目が501号室で――藍子?」
藍子「」マッシロ
加蓮「……生きてる?」
藍子「しんでます」
加蓮「……。ここで死んだら後処理が楽そうだね」
藍子「そおですね」
加蓮「ここの医者、腕だけはいいから死ななくて済むかもよ」
藍子「そおですね」
加蓮「……藍子の好きな食べ物は?」
藍子「そおですね」
加蓮「高森さん、今回の新曲はどんな感じでしょうか?」
藍子「そおですね」
加蓮「…………」
加蓮「……」先に藍子の口を軽く手で抑えて、大声出させないようにして……あ、ついでに暴れないように軽く抱きとめてからっと」
藍子「もごごごご(そおですね)」
加蓮「耳元で――う~ら~め~し~」
藍子「"RT)Q"$(QT%Q)"#%(Q!?!?!?」ジタバタ
藍子「」ガクッ
加蓮「や――」
藍子「」オメメグルグル
加蓮「あ、ヤバ、やりすぎた」
――数分後――
藍子「加蓮ちゃんを見守る……加蓮ちゃんを見守る……私は加蓮ちゃんを見守るって決めたの……」ウツロナカオ
加蓮「……だ、大丈夫?」
藍子「あははー何言ってるんですかー私は加蓮ちゃんの側にいてこうして加蓮ちゃんがーあははー……」
加蓮「病院ってホント怖いところだね……」
<てくてく
<てくてく
――病院の廊下・501号室の前――
(藍子はだいぶ正気に戻りました)
加蓮「501号室……うん、間違いないね」(スマフォのライトを当てて確認)
加蓮「藍子、ホントに一緒に入らなくていいの? 歩いてる時、ずっと恐がってたのに……真っ暗な廊下にひとりぼっちだよ?」
藍子「加蓮ちゃんと一緒にいると、だんだん慣れてきちゃいましたっ」
加蓮「すごい……」
藍子「それに、子どもの寝室に入っていいのは、やっぱりサンタさんだけですから」
藍子「私は、ここで待っていますね。……ま、まだちょっぴり怖いですけれど、今日のLIVEのことでも思い出して我慢していますから!」
加蓮「……ありがと」
藍子「1人目の男の子ですよね。はいっ、これ。プレゼントと、メッセージカードですよ」
加蓮「ん……」ウケトル
加蓮「…………」
藍子「……? 加蓮ちゃ――」
加蓮「ううん。緊張してる場合じゃないよね」
加蓮「ここまで来るって決めたのは私なんだし。プレゼントを配るって無理を言ったのも私なんだし……」
加蓮「藍子にも迷惑をかけちゃってるもん」
藍子「そんな、迷惑なんて……」
加蓮「ふふっ。ここで躊躇ってる場合じゃない。……大丈夫、大丈夫。絶対、喜んでくれる……」
加蓮「……」
加蓮「――行ってきます」
藍子「行ってらっしゃい。待ってますね」
<ガララ...
――501号室――
<ガララ...
……。
<すぅ、すぅ……
加蓮(寝てる……)
加蓮(そりゃそうだよね。もうすごい時間だもん)
加蓮(……病院の個室で眠る、男の子、か)
加蓮(月明かりのお陰で、少しだけ見える。すごく痩せてて顔色も良くない)
加蓮(あの人、なんて言ってたかなぁ)
加蓮(いつも、この窓から外を見て……外の人達を……普通に歩いている人達を、うらやましそうな目で見ている、って)
加蓮(……)
加蓮(っと。早くプレゼントを置かなきゃ。時間は限られてるもんね)ガサゴソ
加蓮(よいしょ……っと。この辺でいいかな?)
加蓮(…………)
<すぅ、すぅ……
加蓮(起きてない……よね?)
加蓮(こ、こういうのも案外楽しいかも? ……って私が楽しんでどうするの! 今日の目的は、子どもにプレゼントをあげることで――)
加蓮(いや、やるからには楽しく、かな? ……あはは、いいのかな……?)
加蓮(……)
加蓮(……明日の朝になれば、あの人が「サンタさんからのプレゼントだよ!」って盛り上げてくれるらしい)
加蓮(サンタさん。私が……子どもに、夢と希望を贈る側なんだね)
加蓮(ホントは病院の人がやれば解決だけど……サンタの役割を、私に譲ってくれた)
加蓮(あなたなら、贈る意味を誰よりも知っている、って、あの人が言ってくれた)
加蓮(……未だに実感が湧かないなぁ。だいたいよく考えてみたら私だってまだプレゼントを貰える側じゃん!)
加蓮(……でも)
加蓮(灰色の世界の中でも、夢を見てほしい。希望を持ってほしい。いっときの夢かもしれないけれど、いっときでは終わらない――)
加蓮「……メリークリスマス。聖夜に、ささやかな奇跡を」
<すぅ、すぅ……
……。
――病院の廊下・501号室の前――
<ガララ...
藍子「っ!」ビクッ
加蓮「……やっぱ一緒に入ればよかったのに」
藍子「あ……か、加蓮ちゃんですよね。……加蓮ちゃんですよね?」
加蓮「扉を開けた時に見えるでしょ。部屋の中、月明かりがあったんだし……」
加蓮「ただいま、藍子」
藍子「……おかえりなさい。渡せましたか?」
加蓮「うん。……行こ、藍子」
藍子「はいっ」
――病院の廊下(深夜)――
<てくてく
<てくてく
加蓮「……さっきの501号室の男の子さ。私のこと、知らないんだって」
藍子「そうなんですか……?」
加蓮「うん。やっぱり男の子ってアイドルよりスポーツの方が好きなんだね。テレビで野球とかサッカーばっかり見てるって、あの人が」
藍子「受付で会った看護師さんですよね」
加蓮「そうそう。……だからメッセージカードに、私からって書いてないんだ。本当に、サンタクロースからの贈り物って感じ」
藍子「アイドルの加蓮ちゃんからの、ではなくて」
加蓮「私からの贈り物。……正真正銘、"アイドルの私"が伝わってない人に、私ができるせいいっぱいなんだ」
藍子「……」
加蓮「……すごく、痩せてた」
藍子「……」
加蓮「アイドルじゃない私が……ただの私ができることって、本当に限られてて」
加蓮「ささやかでしかない、1回限りでしかない、夢」
加蓮「……」
藍子「……伝わりますよ。まごころを込めた贈り物なんですから」
加蓮「ん……だと、いいけどね」
藍子「もうっ。そんな弱気になっていたら、伝わる物も伝わらなくなっちゃいますっ」
藍子「絶対にやるんだーっ、って気持ちが大切なんですよ。アイドルだって、加蓮ちゃんだって!」
加蓮「……そだよね。ありがとね、藍子」
藍子「いえいえ」
加蓮「ありがと」
藍子「はいっ」
<てくてく
<てくてく
――病院の廊下・602号室の前――
加蓮「2人目はここっと」
藍子「はい。プレゼントと、メッセージカードっ」
藍子「行ってらっしゃい、加蓮ちゃん。待っていますね」
加蓮「うん。……やっぱ藍子も一緒に入らない? 別に、私1人じゃなくてもいいと思うよ?」
藍子「ダメです。サンタさんは加蓮ちゃんで、私はただの付き人なんですから」
加蓮「でもさ、プレゼントを選ぶ時だって一緒にいてくれたし……もうほとんど、藍子だってサンタみたいなものじゃん」
藍子「その時だって私は見ていただけで、最後に選んだのも、看護師さんに確認をとってオッケーをもらったのも、ぜんぶ加蓮ちゃんですからっ」
加蓮「……」
藍子「私……加蓮ちゃんと一緒にやるのも好きですけれど、こうして加蓮ちゃんが頑張っているところを見るのも、好きなんです」
藍子「それから、帰ってきた加蓮ちゃんを迎えるのが、すっごく大好きなんですっ♪」
加蓮「ったくもー。同じ思い出を~、って言ってたの、どこの誰よ」
藍子「まあまあ。ほら、時間がなくなっちゃいますよ」グイグイ
加蓮「そうだったっ。じゃ、行ってくるね」
藍子「はい。行ってらっしゃい、サンタクロースさん」
<ガララ...
――602号室――
<ガララ...
……。
<くー……。
加蓮「(超小声で)こんばんはー。サンタさんがやってきたよー……なんてねっ」
<くー……。
加蓮(……ふふっ)
加蓮(加蓮ちゃんのファンだから、すごく喜んでくれる……って、本人でも家族でもないのに、あの人、大はしゃぎだったなぁ。年甲斐もなく――)
ゴゴゴゴゴ...
加蓮(…………っ!?)ゾクッ
加蓮(……)キョロキョロ
加蓮(……な、何もなかった。うん。何もなかった。寒いからね。サンタさんだって寒い場所はね。うん)
加蓮(…………)ガサゴソ
加蓮「よいしょ、っと……」
<くー……
加蓮(……無機質に白い室内には、何もない。遊ぶ物も、誰かと話す物も、何も)
加蓮(あの人が言ってた。家族がキツイことになってる、って。だから……棚の上には、私が置いたプレゼント以外、何も置かれていない)
加蓮(学校にもほとんど通っていなくて、友達もいない。医者や看護師以外がこの部屋を訪れることは、滅多にないらしい)
加蓮(……)
加蓮(……この子は……何に希望を持っているのだろう)
加蓮(昔の私みたいに、アイドルに憧れて……ってこともないらしい)
加蓮(なりたいものが、なんにもなくて……好きな物が、あの人とお話することと……私の舞台を見ることだけ、だって)
加蓮(欲しいプレゼントを聞き出すのも、最後までかかった、って言ってた)
加蓮(もしかしたら……私からのプレゼントを喜んでくれる、って、あの人がはしゃいでたのも……ちょっと無理をしてなのかもね)
加蓮(……私は、希望になれてるのかな)
加蓮(あなたに、希望を届けられてるのかな)
加蓮(……)
加蓮(――ダメだよね。弱気になってたら、できることもできなくなる)
加蓮(でも……あーあ。私もパッションアイドルだったらなぁ。藍子みたいに、ずっと前向きでいられたらいいのに……なんて、今更か)
加蓮「メリークリスマス。希望が、此処にありますように」
<くー……
……。
――病院の廊下・602号室の前――
<ガララ...
加蓮「ただいま、藍子」
藍子「お帰りなさい、加蓮ちゃん」
加蓮「……あと1人。行かなきゃ」
藍子「はい。行きましょう。あなたの想いを届けに……」
――病院の廊下(深夜)――
<てくてく
<てくてく
加蓮「……」
藍子「……」
加蓮「……もし神様がいるなら、なんでこんな酷いことをするんだろう、って、ちっちゃい頃に思ったんだ」
藍子「……?」
加蓮「今でも、そう思う。……でも、それは私にじゃない」
藍子「……」
加蓮「……」
藍子「……いつも、思うんです。加蓮ちゃんって強いなぁって」
加蓮「はぁ? 何言ってんの……真逆だよ……。私なんて、弱くて小さくて――」
藍子「ううん。それが、強いってことなんだと思いますよ」
加蓮「……そうなのかなぁ」
藍子「きっと」
加蓮「……」
藍子「……」
加蓮「……」
藍子「……」
<てくてく
<てくてく
――病院の廊下・703号室の前――
加蓮「……」
藍子「……」
加蓮「……行ってきます、藍子」
藍子「行ってらっしゃい。加蓮ちゃん」
<ガララ...
――703号室――
<ガララ...
……。
<すぅ……
加蓮(うん、寝てる寝てる……)
加蓮(8歳の女の子。そーちゃん、って呼ばれるのが好きらしい。カードに「そーちゃん」って書いた時、ちょっとだけ心が暖かくなったのを覚えてる)
加蓮(……やっぱり……あんまり元気そうな身体じゃないよね。痩せてて、顔も青白くて……)
加蓮(おっと。あんまり見てたら起こしちゃうかな。えーと、プレゼントと、メッセージカード。この辺にっと)ヨイショ
<すぅ……
加蓮(……メッセージカードを……書くのに、一晩かけた。その間、ずっと藍子が隣で見守ってくれてた)
加蓮(何を書けば伝わるんだろう。どんな言葉を書けば、笑顔になってくれるんだろう、って)
加蓮(……いや、正直に言おう)
加蓮(私だって、私の価値はそれなりに知っている。1人目の……私を知らない子はともかく、2人目と、それから、ここの女の子)
加蓮(つまり私を知っている……ファンでいてくれる子なら、何を書いても喜んでくれるんじゃないか、なんて、考えてしまった)
加蓮(だから逆に――アイドルじゃない私が伝える言葉を選ぶのに、何時間もかかった)
<すぅ……
加蓮(いつかの私は、明日が来ることを信じられなくて。藍子のお陰で、来年の話ができるようになって)
加蓮(そして、今の私は……明日を迎えるのが、怖い)
加蓮(もしかしたらその後、ずっと怖がるかもしれない。私が余計なことをしたから、なんて、ずっと思ってしまって――)
加蓮(……)
加蓮(…………)
藍子『寂しい気持ちがあるからLIVEなんてしなければよかった、なんて、あなたは思ったことはありますか?』
藍子『――それを思ったことが、本当にありますか? それは本当に、あなたの本心からの言葉ですか?』
加蓮(…………っ! 分かってるよ! でもっ……分かってても……言い聞かせても、不安なんて簡単に消える訳ないじゃん!)
加蓮(閉じ込められた世界の中で、小さな希望を得てしまうことがどれほど辛いか、私が一番知ってる!)
加蓮(……でも……届けたいの! 夢も希望もあるって知ってるから……!)
加蓮(私は――――)
<すぅ……
<……モゾモゾ……
加蓮(――えっ?)
「だれか……いるの?」
加蓮(……っ!!??)
加蓮(起こした……!? いや、おっ、起こしちゃった時の……それくらいは考えてるけど、え、でも――)
「だぁれ……?」
加蓮(と、とにかく何か言わないと――! 親を装う? ううん、できる訳がない! ここは素直に――)
加蓮「私、」
「……あ! かれんちゃんだ!」
加蓮「サンタさ――え?」
「かれんちゃんだ! かれんちゃんだよね!? あれっ、どうしてここにいるの? もしかして、あそびに来てくれたの!?」
加蓮「ぁ……」
「あそびに来てくれたんだ!」
加蓮「や、」
「あ! まっ赤なふく! サンタさんだ! サンタさんが、来てくれたんだ!」
「かれんちゃん、サンタさんだったんだ!」
加蓮「あ……あはっ。そ、そうなんだよ~。実は、加蓮ちゃんはサンタさんなんだよ~?」
「サンタさん!」
加蓮「え、えっと、そ……そーちゃん、だよね? 良い子にしてたそ、そーちゃんに、今日はプレゼントを持って来たの――あっ」
加蓮「も、持って来たんじゃよ。ほっほっほ」
「ほんと!?」
加蓮「ほ、ほっほっほ」
「ほっほっほー!」
加蓮「あ、あは。あはははは……」
「えへへー、へんなのー!」
加蓮「えと、あの、あ、そうだ。加蓮ちゃんがその、サンタさんだってのは、みんなにはナイショなの」
「ナイショなの?」
加蓮「そうそう! だからね。みんなには、しーっ! 約束できるかな?」
「うんっ! しーっ!」
「あのね、わたし、いつもかれんちゃんのうた、聞いてるの!」
「わたしも、かれんちゃんみたいになりたいの!」
加蓮「っ……! そ、そうなんだ。嬉しいなぁ」
「かれんちゃんみたいに、すごいうたをうたって、それから、かれんちゃんがサンタさんなら、わたしもサンタさんになるの!」
「……でも、おかあさんとおとうさんが、それはむりだ、って言うんだ」
「わたし、うたってたらすぐにつかれちゃうから……元気じゃない人は、かれんちゃんにはなれないって言うの」
「わたし、かれんちゃんにはなれないのかな……ぐすっ」
加蓮「なれるよっ!!」
「ぇ?」
加蓮「なれるよ……! 絶対になれるよ!!」
「わたし、かれんちゃんになれるの?」
加蓮「うんっ……!」
加蓮「ねえ、そーちゃん。そーちゃんは、歌、好きなの?」
「大すきだよ!」
加蓮「歌うこと、好き?」
「大すき!」
加蓮「……私……みたいに、キラキラしたい……?」
「うんっ! いっぱいキラキラして、それで、いっぱいうたいたいの!」
加蓮「それなら……絶対に……絶対になれるよ……! 絶対にっ……!」
「……? かれんちゃん……? サンタさんなのに、泣いてるの?」
加蓮「…………っ!!」ゴシゴシ
加蓮「――そーちゃん」
「は、はいっ」
加蓮「今がどんなに辛くても……キラキラしたいって気持ちがあったら、絶対にキラキラできる」
加蓮「ほら、そーちゃんが良い子にしてたから、サンタさんが来たのと同じように」
加蓮「願いは、絶対に叶うから……生きていれば、絶対に幸せな時間は訪れるから」
加蓮「忘れないで。奇跡は、絶対に起きるから……!」
「うーんと……」
加蓮「いつか分かるよ……覚えていれば、絶対にいつか分かる!」
加蓮「だから、何も諦めないで。なりたいって気持ち、諦めないでね……!」
「うん。分かった!」
加蓮「メリークリスマス!」
「メリークリスマスーっ!」
――病院の廊下・703号室の前――
――SIDE Aiko
ドアを開く音がして、おかえりなさい、って言う前に。
くしゃくしゃな顔の加蓮ちゃんが、とん、と抱きついてきました。
「加蓮ちゃん……?」
「っ……!」
何があったのかは……分かりません。私の役目は、ここで待つことですから。
聞いた方がいいのかもしれないけれど――
今は、受け止めてあげようって思いました。
「……お疲れさま。加蓮ちゃん」
「うん……っ……」
抱きとめてあげて、頭を撫でて。押し殺した泣き声が聞こえます。
息が漏れそうになる度、加蓮ちゃんはぎゅっと口を噤んで。
抑えきれない気持ちを、なんとか抑えようとしていました。
……実は、少しだけ話し声が聞こえていたんです。
ううん。何を話していたのかは分かりません。
私が分かるのは、「何かを話していた」ってことと。
それはきっと、加蓮ちゃんにとってすごく大切だったってこと。
もしかしたら、室内にいた時からもう泣いちゃっていたのかもしれない。
それでも、こうして我慢をしているのは……声を押し殺して、感情を抑え込んでいるのは。
加蓮ちゃんなりの、最後の意地なのかもしれません。
今日の加蓮ちゃんは、サンタさんですから。サンタさんが子どもの前で、大泣きしちゃう訳にはいきませんよね。
「加蓮ちゃん……」
「うん……」
「ううん。素敵な、サンタさん」
「うん……!」
「お疲れさま。……頑張っていたところ、ずっと、見ていましたよ」
「うんっ……!!」
でも……サンタさんでも、加蓮ちゃんは加蓮ちゃん。1人の、女の子なんだから。
誰かが、その気持ちを受け止めてあげなきゃ。
……。
…………。
子ども達の幻想を守る優しいお姉さんが、いつもの「北条加蓮ちゃん」に戻るまで、3分くらいかかりました。
……3分で元に戻っちゃうあたり、さすが加蓮ちゃんって感じですよね。
強い子です。そして、とっても優しい子。
あなたの決意を、そして、あなたの気持ちを受け止め続けて、本当によかった。
病院の受付を通って――来た時にも対応してくれた看護師さんに2人で頭を下げて、外に出た時のことでした。
「あ……雪……」
ぽつり、と加蓮ちゃんが呟きました。私も、空を見上げます。
病院の中はあんなに真っ暗だったのに、外はほのかな月明かりに包まれていて……その中にゆっくりと、灰のようにさらさらとした雪が舞い降りていました。
「雪、ですね……」
「ホワイトクリスマスだね……」
「そうだ。雪で1つ思い出したことがっ」
「思い出したこと?」
「加蓮ちゃん。瑞雪、って言葉、知ってますか?」
「ううん。聞いたことない」
「めでたい雪、って意味だそうですよ」
だから今日は、瑞雪の聖夜。
加蓮ちゃんにとっても、そして、子ども達にとっても、幸せで、冬なのにあったかい……そんな、24日。
「……瑞雪、か」
「瑞雪ですっ」
「みんなも……幸せに、なれるのかな」
「なれますよ。なれるに決まってますっ。だって――」
「だって?」
「こんなに素敵な人が、幸せになってほしいって……心から、そう想っているんですから。幸せにならない訳がないですよ!」
「……あはは……もー、何それ。口説いてるつもりぃ?」
いつものように、ちょっとした軽口を叩いてから。
とん、と、顔を私の肩に当てて。
またぎゅっと抱きしめてあげたら、小さなすすり泣きが聞こえてきました。
よかった、って、何度も何度も、呟く加蓮ちゃん。
……本当に……よかった。
あなたを見守っていてよかった。背中を押してあげて、よかった。
メリークリスマス、加蓮ちゃん。
――北条家の前――
<キイィ...
加蓮「あ、到着したんだ。今日はありがとね、藍子」
藍子「ううん。こちらこそありがとうございます、加蓮ちゃんっ。今日は、お疲れ様でした!」
加蓮「藍子のお母さんも、送ってくれてありがとうございました」
<いえいえ♪
加蓮「ふうっ……」
藍子「…………」
加蓮「ん?」
藍子「あ、ううん。お疲れ様なんて言っちゃいましたけれど、やっぱりもうちょっと、加蓮ちゃんとお話していたいなって……」
加蓮「あはは……結構盛り上がったもんね。クリスマスの日に食べたい晩ご飯の話」
藍子「えへへ……」
加蓮「藍子のお母さん、運転しながらなんか難しい顔をしてたよ? 赤信号の時とかカバンをちらちら見てたし」
藍子「うぅ、困らせたかった訳じゃなくて~~~!」
加蓮「ムードもなんにもないよねー。ねー聞いてよ藍子のお母さん。藍子っていつもこうなんだよー」
<あらあら
藍子「もうっ、またっ! い、いつもは、」
<いつもは?
藍子「……い、いつもこうですけれど……だ、だって楽しいからいいでしょ~っ!」
<あはは
<加蓮ちゃん、いつも藍子をありがとうね
加蓮「こっちこそ、ありがとうございます」
加蓮「私も藍子と話すのは大好きだけど、でも、今日は1人にさせて」
加蓮「ほらっ、続きはまたカフェに行った時ってことで!」
藍子「む~。約束ですよ?」
加蓮「もちろんっ」
藍子「……あ! それなら、1つだけいいですか?」
加蓮「ん?」
藍子「最後に写真を撮っておきたくて。ほらっ、クリスマスの加蓮ちゃん、まだ撮ってませんから!」
加蓮「あれ、そうだっけ?」
藍子「そうですよ~。……ああっ! サンタさんの加蓮ちゃん、撮り忘れちゃいました! うぅ、いっぱい撮るって宣言したのに~~~!」
加蓮「ふふ。残念。シャッターチャンスはまた来年」
藍子「サンタさんの加蓮ちゃんは……残念ですけれど、諦めちゃいます」
藍子「代わり、じゃないですけれど、今の加蓮ちゃんを……だって今の加蓮ちゃん、ほっとしたような、成し遂げた! って顔のような……とにかくすっごくいい表情をしてるから」
藍子「あの、撮っても、いいですか?」
加蓮「うん、いーよ」
藍子「やったっ」
加蓮「どうせなら藍子も一緒に映る?」
藍子「へ? いいんですか?」
加蓮「藍子の言う"すっごくいい顔の私"は、藍子がいてくれたからこそなんだよ」
加蓮「だからほらっ!」グイッ
藍子「ひゃっ」
加蓮「藍子のお母さーん! 撮ってもらってもいいですか!?」
<はいはいー。ほら、藍子、カメラ貸して?
藍子「う、うん」ハイ
<よーし。じゃあ撮りますよ
<……あら、ホント。加蓮ちゃんも藍子も、すごくいい表情♪
<はい、
2人『チーズっ!!』
――ぱしゃっ
おしまい。
読んでいただき、ありがとうございました。
おつおつ。
また大きく一歩踏み出すことができたんだなと加蓮の成長を感じました。
おつですー
加蓮の藍子への信頼が、シリーズ重ねてきたからこそのものなのが素敵ですねー
大分涙腺に来る……
乙です、これからも楽しみにしてます!
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