Tokyo QB(WIXOSS×まど☆マギ) (30)

初めに言っておく。

勢いで書いた、反省はしている。

はっきり言って、走り書きです。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1482434278

私、森川千夏の朝は早い。

「お早うございます」

「お早う、千夏ちゃん」

日の出よりも随分早く新聞販売店に出勤する。
ギチギチに働いていたまえのアルバイトは、
事情があって形の上では身を引いた。

前より多少楽になったとは言っても、
甘えてばかりもいられない家計事情に違いは無い。

手っ取り早く見つかったのが、この新聞配達だった。
最初は、予想通りかなりきついと思ったけど、
夜型に突っ込み過ぎた自分を改善するのにも丁度いい荒療治だった。

ーーーーーーーー

「ただ今」
「お帰り」

帰宅、優しい母が出迎えてくれる。
その優しさに気付く感性が、少し前まで錆び付いていた様に思える。
シャワーを浴びて着替えて朝食。
時間帯の重なる父を加えて、三人一緒の食卓。

随分前の中よりは上の社長一家、とまではいかなくても、
再就職後は今のラインで家も仕事も安定しているみたいだ。
それだけでも、不満はない。
足りない分は自分でなんとかできそうだから。

「行って来ます」
「行って来ます」

朝食を終えて、母に見送られて父と共に家を出る。
特別話す事も無いけど、途中まで一緒。
そんな朝が続いている。


ーーーーーーーー

「おはよー」
「お早う」

学校に着いて、教室に入る。
友人と挨拶を交わし、他愛もない世間話に興ずる。

最近ちょっと、青春の衝動的なものを叩き付けてしまった事もあったけど、
謝り倒してなんとか許してもらった。

その、謝罪に至るまでが結構時間がかかってしまったのは
本当に申し訳の無い事だったから、友情とは有り難いものだ。

ーーーーーーーー

「じゃあここ、森川」
「はい」ペラペラ

授業は真面目に聞き、真面目に受ける。
余計なお金等一銭も無いのだから、使えるものは徹底的に使い倒す。
一時期、やや本末転倒な理由でその辺が危うくなった事もあったけど、
今は、大丈夫。大丈夫。

ーーーーーーーー

昼休み、別のクラスの男子にコクられた。
友達の友達みたいなちょっとした縁のある相手ではあるけど、
丁重にお断りした。

結構人気のある子らしく、友達からはちょっと不思議がられた。
時々こういう事はある。

そちら方面に偏見はないけど、
私自身はネットスラングでエリートとかヤンデとか
クレイジーサイコとかコズミックデビルとか言う言葉が
しばしば附属される方面の指向を持ち合わせている訳ではない。

友人と話をしていて、
芸能人にいいなと思ったり、男性との色恋に漠然とした憧れを持ったり。
そんな感情は、確かにある。
だけど、今は食指が動かない。


お付き合いしたい、と言う程の相手には出会えない。
そうじゃないと相手にも失礼だし、正直忙しいし、只、それだけの事。

だけど、どうしてだろう?
こういう、私達の年頃なら青春真っ只中と言う事の筈だろう。
こういう事に触れると、何かチクリとする。
心の中にチクリとしたものを感じて、何か罪悪感の様なものが疼く。
どうしてだろう?

ーーーーーーーー

「どうする?」
「じゃあ、私は………」

放課後、一緒の予定だった友人の一人は、
急遽デートと言う事に相成ったらしい。

他の面子だけでも、と言う事も無いでもなかったけど、
ここは敢えて、このどさくさに私も低張に断りして行動を開始する。

学校の友達は大事だし、楽しいとは思う。
だけど、私の中にもちょっとした優先順位と言うものがある。

今、私が通っている進学校が遠ざかる。
そして、別の学校が近くに見えて来る。

遭えるだろうか?
遭えるだろうか?
遭えた。

あの長い髪に付けた赤いリボン。
こちらに気が付いて、こぼれる様な笑顔が振り向けられた。

「ちーちゃん」


すず!すず!すず!すずぅぅうううわぁああああああああああああああああああああああん!!! あぁああああ……ああ……


失礼、持病の癪が出た。
今、文字通り鈴を転がす様な可憐な声で、
とろける様な笑顔で私に声を掛けてくれたのが穂村すず子。
私の幼馴染で親友でマブダチで心の友で最高の友達。
だから、

「すず」

この一声を最高にキメて見せる。

「遭遇、どうも」

にこっ、と、可憐な微笑みで応じてくれるすず、
の隣にくっついてるメガネがこちらを見てぺこりと頭を下げるので、
こちらもすずと一緒の相手に相応しい礼を以て応じる。

「こっち、来てたんだ」
「ええ、ちょっと通りがかって」

私は、表に出ぬ様に静かに呼吸を整えて
あくまでも落ち着いた言葉を紡ぎ出す。

その間にも、すずはにこにこと、
昔と変わらぬ天使、或は小悪魔の微笑みでこちらを見ている。

もちろん、すず、穂村すず子、私の最高の友達が
こうやって私に向けてくれる微笑みは
最高にして究極にして至高の温かさに満ち溢れている。

「すずーっ」
「あ」

すず子が、くるりと振り返る。


「カードショップ寄ってく?」
「えーっと………」
「御意、それでは私は先に帰りますが、森川さんもいかがですか?」
「ええ、お邪魔させてもらうわ」

うん、学校での付き合いは大事だよ。
ひとりぼっちは、寂しいもんな。

「それじゃあ、私も後で行くから」

かくして、すずは相変わらず輝く笑顔を振りまいて、私達の前から遠ざかる。
さて、今日こそはこの厨二メガネを、潰す。

「笑止。今のあなたの技量でDr.ハンナに勝てるとでも?」クイッ

そろそろ新しいノートを購入しよう。
黒く装飾して、英語は得意な方だ。

ーーーーーーーー

紙一重だった。

流石、Dr.なんちゃらとか言う二つ名を持っているだけの事はある。
紙一重の差ではあっても、結果は結果、
敗北と言う厳然たる事実を、受け容れようではないか。

結局、すずは夕方過ぎても来なかった。
断腸の思いではあるが、私には予定がある。
かつての様にずるずると、と言うのはなかなか難しい。

帰宅途中、私は公園に立ち寄った。
公園に立ち寄り、ブランコに腰掛ける。
やっぱり、昔の様には行かないか。

ブランクがあった、お互いにお互いの事情はある。
それでも、私はすずを求め、すずは私を求めている、筈。


ほむらだからと言って、
最高の友達を保護者面して
自分の都合のいい世界に監禁して自分のために独占して
「愛よ」とドヤる類の歪んだ思考回路を私は持ち合わせてはいない。

あくまで、幼馴染として親友として健全なお付き合いをさせてもらっている。
そして、それは幸せ。
ちょっと前までは、本当に余裕が無くて、
そのせいで私自身も色々とトラブルがあった。

私自身が少し幼稚だったから、と言う事も認める。
でも、それも昔の話。
その前の昔に迄は戻れないけど、
それでも、今は自分達でなんとか出来る、それだけでも幸せ。

幸せ、の筈、

なんだけど、なんだろう?

「やあ」



「僕の声が、聞こえるかい?」
「聞こえる」

ぽつり、と、私は返答を返していた。
感覚がおかしい。
おかしな所から声が聞こえる。
よくよく辿ってみると、地面の近くから聞こえている。

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今回はここまでです。続きは折をみて。



ウィクロスはわからないけど期待

末尾Pが応援とか荒し宣言だろ

>>8
応援ありがとうございます。

と言った先からすいませんが、
ウィクロス寄りの即興ネタSSになります。

それでは、今回の投下、入ります。

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>>7

「僕が、見えているんだね」

目をぱちくりさせた私の前で、
「それ」は、確かに声を発していた。
それも、かなり可愛らしい。

「な、何?」
「僕の名前はキュゥべえ。
早速だけど、僕と契約して、魔法少女になってくれないかな?」
「は?」

ーーーーーーーー

「つまり、人間を食べる魔女と言うのがいて、
それを退治するのが魔法少女で、
魔法少女になったら、何でも一つ願いを叶えてくれる。
そういうシステムって事でいいの?」

「その通り。飲み込みが早くて助かるよ」

「でも、その、魔女って簡単に退治出来るの?
こっちが殺されるとか?」

「それは、実力次第だね。
だけど、君の素質は高い方だし頭の回転も速い。
魔法少女になれば高い実力を伴う筈だよ」

「そう」

森川千夏は、ブランコを小さく揺らし、ふぅーっと深呼吸した。


「私の、この胸の中にあるものを知りたい、じゃあ駄目かな?」
「それは、どういう意味だい?
外科的な意味なのかな?」
「まさか」

千夏は、可愛らしく苦笑する。

「この胸の中に、何かがあるの。
最近色々あったけど、それでも、家族とも友達とも上手くいって、
なんとかかんとか幸せなんだと思う。
だけど、そう思えば思うほど、この胸の中で何かが疼く。
気のせいだとは思えない。ざわざわして、時々苦しくなる。
その、正体を知りたい」

「本当に、それでいいんだね?」

「叶えてくれるの?」

「ああ、君の素質なら十分釣り合う願いだ」

「そう………
魔女に、簡単に殺される、なんて事は本当にないの?」

「君ならその心配はないね」
「そう。じゃあ、教えて。
この胸の中にある何か、その正体を知りたい」

「契約は成立だ。

キミの祈りはエントロピーを凌駕した。

さあその新しい力を解き放ってごらん

ちなつマギカ」


ーーーーーーーー

―――――すず、がんばっ

クスクスッ

―――――本当に、必要?

え?

―――――セレクターですよね?

………

―――――虫酸が走る!!!!!

「」

―――――こんにちは

―――――消えてくれないなら、私が消すだけ

―――――彼女の家に住み街を歩き只起きて食べて排泄をして寝るその繰り返し

―――――私を自由にして

―――――放っておけない

―――――やっぱ俺

―――――もう後戻りは

ソウダ、ワタシ、白井クンヲ

「あああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっっっっっ!!!!!」


ーーーーーーーー

「ちーちゃん?」

穂村すず子は、目についた友人の姿を追って、
思い出深い公園にたたたっと駆け込んだ。

「ごめんちーちゃん、
これ、はんなちゃんもお気に入りのお店。
行列長引いてさ、戻ってみんなで食べよ………
ちーちゃん?」

すず子は、ようやく異変に気付く。
そもそも、公園の地面に座り込んでいた時点で普通ではなかった筈だが。
ふらりと立ち上がり振り返る千夏。
その表情は、危機的に虚ろだった。

「ちー、ちゃん?」

すず子の胸の奥から、何かが込み上げる。
これは、危険だ。
こういう危うさを、すず子は知っている。

「私って、ホントバカ」

ーーーーーーーー

「な、何?
これって何? バトルフィールド?」

突如飲み込まれた異空間、と言う意味では、
確かにすず子には心当たりがあった。
だが、今の異空間はもっと個性的と言うべきものだった。
その景色は、得体の知りない絵画の様にぐにゃぐにゃ歪みながら、
基本的な絵面は児童公園。
但し、それが大量の遊具と共に無限大に広がって見える。

「え?」

そして、すず子は、さっきから鉄棒をくるくる回っていた大量の何かと
ドリブルをしていた大量の何かに担ぎ上げられ、
空間の奥へ奥へと運搬されていた。


「ち、ちょっと、何っ!?」

すず子が放り出された先にいたのは、
読者向けにぶっちゃけてしまえば魔女だった。
塔の様に巨大な白い蕾、
その蕾をギチギチに締め上げながら周辺で蠢く大量の蔓。

「!?」

大量の蔓が、すず子に向かって猛スピードで伸びて来た。
それは、鎖に化けてすず子に巻き付き、
魔女に向けて一挙に引き寄せる。

「ち、ちょっと、嫌、嫌あああぁぁぁぁぁっっっっっ!!!!!」

すず子は大量の鎖で魔女の前まで引き寄せられ、
魔女は巨大な白い翼を開いてばくんっ、と、すず子を一飲みに包み込み、
更に、翼の外側で白い糸が噴出されて
すず子を包み込んだ魔女はそのまま巨大な白い繭となっていた。

ーーーーーーーー

「すずっ、すずっ!? すず、すずっ! すずっ!!!!!」
「珍しい状態だけど、君にも魂があるみたいだね」

インキュベーターの顔は、魔女結界の地面に向けられていた。

「魂があるなら願いを叶える事が出来る。
すず子を助けたいかい?
それなら、僕と契約して魔法少女になってよ」

ーーーーーーーー

「な、何? 何?
い、いや、いやっ、
助けて、助けてちーちゃんタスケテタスケテタスケテ………」

白い翼の内側は、想像以上に湿っぽく、弾力があって、気持ち悪かった。
その中で、すず子は鎖で雁字搦めにされ、ガタガタ震えている。


「!?」

そんなすず子の頬、伝う涙が、ぺろんっ、と舐められていた。

「ひ、ひっ………」

すず子が周囲を見ると、大量の「舌」がすず子を取り巻いている。
馬鹿みたいに長い舌が、
うねうねと動きながら四方八方からすず子に向けて延びている。
更に、新たな蔓がしゅるしゅるとすず子の体に巻き付いて行く。
その蔓は、すず子の体に近づくと形状を変え、動物質な質感になる。
ぬとぬとと粘液を滴らせ、
粘膜に包まれて弾力のある柔らかさで
すずの全身に巻き付きながら這い上る。

「や、やだ、やだぁ………
助けて、助けてちーちゃん助けてえっ!!!
………?………」

その瞬間、時が止まった、様だった。
間違いなくリアルタイムで進み続けていた侵略が、
ぴたりと止まった様に見えた。

「あああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっっっっ!!!!!」

次の瞬間、すず子は不意に全身に外気を感じた。

「………リル、なの?」

その姿に、すず子は目を丸くする。
破壊された「外壁」の外側に立っているのは、
すず子がよく知っている「リル」に他ならない。
但し、その姿は、等身大の人間の少女、但し服装はちょっと変わっている。
その様にしか見えなかった。


「すず、動かないでっ!

リルの声と共に、「外壁」を穿った七つの刃がすず子の方向に飛び、
取り敢えず魔女との接続は切断される。

「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ………」

そのままリルが剣を構え、
その剣閃と共に、すず子を拘束していた繭と
十重の翼と三十の鎖とその他諸々が木っ端みじんに切り刻まれた。

「はあ、はあっ………」
「大丈夫、すずっ!?」
「うん、有難う………」
「あれが、本体か」
「多分………」
「大丈夫、すずは下がってて」
「う、うん」
「化け物めえぇっっっっっっっっっ!!!!!………」

魔女とリル、どっかんどっかんと激しい戦いが展開される中、
言われた通りに後退したすず子が見たものは、

「リルっ!!」
「?」
「ちーちゃん?ちーちゃんどうしたの?
ねえちーちゃんしっかりしてっ!!
リル、ここを出て、ここを出てちーちゃん病院にっ!!」
「………分かったっ!!」


ーーーーーーーー

「大丈夫?」
「ああ、大丈夫」

デタラメに走りながらも千夏の肉体を抱えて先に魔女結界を脱出し、
しんがりを任されて出て来たリルに千夏が尋ねる。

「ちーちゃん? ちーちゃんちーちゃんっ!?」
「………死んで、る?」

千夏を診たリルの言葉に、すず子は目を見開いてリルの顔を見る。

「キュゥべえ!」
「なんだい?」
「な、何?」
「君にも僕の事が見えるんだね」

キュゥべえの言葉に、すず子がこくこく頷く。

「こいつがキュゥべえ、
私を魔法少女にして、カードから出してくれた」

「魔法、少女?」

「そう、魔法少女、魔女を狩る者さ」

「魔女、って………」

「さっきの化け物の事でいいんだな?」

「否定する程間違ってはいないね」

「じゃあ、ちーちゃんは、魔女に………」

「殺された?」

「否定する程間違ってはいないね」


「ちー、ちゃん………」

「すず………」

「普通なら、こうなってしまった人間は生き返らない、
だけど、元に戻す方法はある」

「!?」

「僕は、魔法少女として契約する少女に、
一つだけ願い事を叶える事が出来る。
叶える事が出来る願いの規模は契約する少女の素質によるけど、
君の素質は極めて大きい。
この状態の森川千夏を元に戻す事が可能なぐらいに」

「本当っ!?」
「本当さ」

「すずっ! 魔法少女は魔女と戦わなければならないんだろう?」

「そうだね。確かに魔女退治には危険が伴う。
だけど、穂村すず子の素質は強大だ。
多少鍛えたら大抵の魔女は鎧袖一触、君がサポートすると言うなら百人力だ」

「そう」グシッ
「それじゃあ、私………」

「制止、少し待って下さい」
「はんなちゃん?」
「肯定。こちらに電話をかけてきた筈のすず子さんが遅いので見に来ました。
何か、契約の話をしている様でしたね」

「今日は随分と素質のある人間と出会う日だね。
僕と契約して………」

「安易。我々人間を超越した存在と安易に契約をして見返りを求めた場合、
往々にして痛い目を見ます。
ですから、まずはこのDr.ハンナが
根掘り葉掘り尋問する必要がある様ですね」バキッボキッ


ーーーーーーーー

「唖然、なんと言う………」
「それじゃあ、ちーちゃんは」

「そう、あの魔女が森川千夏だ。
森川千夏のソウルジェムはグリーフシードとなり
魔女を生んで消滅した。
もっとも、あれだけ魔法少女になった途端、
あれほど短時間で魔女になったケースは珍しい………」

「リル、代わりはいくらでもあるけど、
無意味に潰されるのは困るんだよね」

「リル」
「うん」
「キュゥべえ」
「なんだい?」

「魔女になった魔法少女は、元には戻らないの?」

「僕の知る限り、前例はないね。
魔法少女は魔女になる。それは不可逆だ」


「すず子さん、あなたは………」
「すず」

自分を見るリルの問いかけに、すず子は、小さく頷いた。

「私は、止められなかった」

すず子は、ぽつりと言った、

「ちーちゃんも、最初は自分で戦っていた。
でも、耐えられなかった。だから、ルリグに願った。
多分、間違ってる。そう思った。
だけど、それで苦しむちーちゃんを、私は………」

「理解、正しくても、耐えられないと言う事はあります。
私にも、それは責められません」

「キュゥべえ」

すず子は、キュゥべえと対峙した。


ーーーーーーーー

森川千夏は、穂村すず子に抱き締められていた。
強く、強く包容されていた、

「すず?」

その事に気づき、千夏の呼吸と心拍数は急激に速度を増していたが、
次の瞬間には、

「あっ」
「ご、ごめんっ」

千夏に突き飛ばされ、すず子は尻もちをついていた。

「ごめん、すず、すずっ、私、私っ、私………」

ガタガタ震え出した千夏を、すず子はもう一度、
もう一度優しく抱き締めた、

「やり直そう」

甘やかなすず子のささやきと共に、千夏の頬に涙が伝う。

「今度こそ、私も一緒に戦うから」

小さく頷いた千夏は、すず子をそっと引き離す。
そして、一歩前に出る。

「キュゥべえさん」
「なんだい?」
「少し、お聞きしたい事があるんですけど?」
「戦慄、なんですか、その営業スマイルは?ダレカタスケテー」


ーーーーーーーー

\ドッゴォォォォォォォォォンンンンンンンンンンッッッッッッッッッッ/

「判断能力の低い未成年者相手に
ろくろくリスクも説明しないで見た目可愛い営業スマイルと営業ボイスで
命懸けの危険契約とか
ナメてるのかゴラァァァァァァァァッッッッッッッッ!!!!!」ドッゴーンッ

「君たちはいつもそうだね。事実のありのままに伝えると、
決まって同じ反応をする。訳が………」

「見えない人の方が多い謎の宇宙生物の害獣とか、
動物愛護法に抵触しないわよね」メキメキメキメキ

「ちーちゃん、その辺で」
「そうね、この辺にしておきましょう」ベシャッ

「もう一度確認するけど、今の話に嘘はない?
これ以上隠してるリスクとかは?」
「ないよ」

千夏の問いに、キュゥべえが答える。

「そう。契約を結ぶか否かの選択権は本人にあって、
それで、契約を結べば素質の範囲ならどんな願いでも叶えてくれる。
叶える願いの種類自体に制限はない」

千夏が言う。

「確認。異形のものとの契約としては、割と良心的な方でしょうか」
「そうだね」
「御影はんな、穂村すず子、僕が言うのもなんだけど、
君達が知っている契約と言うのは………」


「キュゥべえ」

千夏が、改めてキュゥべえに告げた。

「私と契約して、私の希いですず子を元に戻して」
「ちーちゃんっ」
「それは出来ないね」
「どうしてっ!?」

「穂村すず子の魔法少女としての素質は強大なものだ。
魔女になった君を元に戻した上に契約前の状態にまで引き戻した。
君の素質も大きい方だが、穂村すず子にはかなわない。
それほど大きな力を持つ
穂村すず子の契約を破棄する素質は君にはない」

「くっ………」ギリッ

「円環、千夏さんの契約を認めれば円環の構図が成立してしまう。
二人が一組になり、
相手の魔法少女契約の解除を希いとして魔法少女の契約をする。
それでかなりリスクは低くなる。
そもそも魔法少女としての希いを叶える事は出来ませんが、
既に事情を知らずに魔法少女になってしまった者を救うためには有効。
それでは、あなたのエネルギー回収とやらに重大な支障が発生する。
そういう事ですね?」

「否定する程間違ってはいないね」
「………」スチャッ
「………」バキッ、ボキッ
「妥協。リル、千夏さん、適当な所で切り上げて話を続けましょう。
そうですね。百体ぐらいがいい所でしょう」


ーーーーーーーー

「キュゥべえ………」ゼエ、ゼエ、ゼエ
「満足したかい森川千夏?」モシャモシヤ

「満足なら最低あと一万は必要だけど、
だけど、契約はする」

「ちーちゃんっ!」

「ごめん、すず子。
だけど、こいつの事は許せないけど、これは最後のチャンス。
これは、私の、
贖罪だから」

ーーーーーーーー

「契約は成立だ。

キミの祈りはエントロピーを凌駕した。

さあその新しい力を解き放ってごらん

ちなつマギカ」

「ちーちゃん………」
「ごめん、すず………」

「確認。その本があなたの武器なのですか?」

「そうみたいね、戦う時は鞭になるみたいだけど、基本は本。
魔女とか魔法少女の事とかの情報が物凄く大量に掲載されて、
すぐに検索する事が出来る。
万単位の専門書の記述にも匹敵するとか」

「訂正。その表紙の文字を読み解く限り、桁が一つ違うみたいですね」

「すごい、勉強家のちーちゃんにぴったり」


「有難う、すず。
だから、すずの事は私が守る。
すずの事を、命懸けで守る。
グリーフシードも集めて、すずに危ない事なんて………」

「ううん、一緒に戦おう、
一緒に、魔法少女として」
「………そう、だね」

「嘆息。私は穂村すず子さんの師匠です。
魔法少女にはなれませんが」
「うん、頼りにしてる」ニコッ
「………………………………」
「苦笑、かないませんね。
出来る限りの手助けはさせていただきます」

「リル………」

「すず、魂をソウルジェムに封じられ、魔法少女になったとは言っても、
こうして人間としての体を得て外に出ている。
私も………共に戦う」

「ありがとう、リル、ちーちゃん」
「ええ。長い戦いになるかも知れない。
でもきっと」
「希望、でもきっと、出口はあります」
「うんっ」

本編―了―


おまけ

見滝原市内

マーマ、あーさ、あーさ、おきてー
そぉりゃあああああっっっっっっっっっ!!!!!
どひゃあああああっっっっっっ!!!!!

「せえっふぅーっ!!」
「あーっ」
「落さないで食べてねー」

「もぉーっ、タツヤったら可愛いなぁー、
私のお婿さんにしちゃうぞーっ」ウェヒヒヒ

「おーっ、タツヤもてもてだなーっ、
最近流行ってるもんなーっ」ニシシッ

「そうだね」フフッ
「あーっ」

「でもなんだろうなー」
「?」

「最近だよな。
なんか、つい最近まで絶対だめーって当たり前だったと思うけど、
最近になってぱーっと変わったみたいな」

「そう言えばそうだね」

「そうかな?」ティヒヒヒ
「ママ、コーヒーは?」
「いや」


 ×     ×

見滝原市立病院病室

「さやか、かい?」
「うん」

「………昨日は………」
「辛い? 苦しい?」

「………当たり前じゃないかっ!!」ガンッ

「ほら、痛みすら感じないんだ、
もう動かないんだよ、この左手は。
こんな手でヴァイオリンは弾けない。
ヴァイオリンが弾けない、もう………」

………ふわっ

「!?」
「そう、辛いんだね」
(ち、近っ! ………)

「その苦しみから、

すぐに、

解放してあげますからねっ」


 ×     ×

「驚いたよ、あのワルプルギスの夜を倒してしまうなんて」

「でも、死ぬんだね、里見紅」

「ああ、魔法使いはごめんだからな、
只の、人間の大人として死ぬ。
俺の、フィールド、
物理で一瞬でぺしゃんことかって、
つまんない、でしょ、そんなの、さぁ………」

それじゃあ、
お疲れ
って事で

「それじゃあ、
これからは君に任せると言う事でいいんだね、
カーニバル?」

「はい、お任せなのです」


 ×     ×

「戻って」来た。

こうやって、手をグーパーしても、間違いなく自分の、白井翔平の体だ。

中学の同級生で、一番辛かった時に励ましてくれた。
本当は優しくて、それで無理しいで、笑顔が最高に可愛い森川を助けよう。

その事に必死になって、あの里見紅とか言う××野郎の煽りに乗った結果、
自分はどうなったんだろう?

だけど、今、自分は現実にこうして生きている。体に異変は、ない。

取り敢えず、戻ろう。
家に戻って学校に戻って、そして、森川に会おう。
森川の友達だと言う穂村すず子にも手伝ってもらって、今度こそ。

色々と確かめるために、自分のスマホを確認する。
取り敢えず、森川には無事のメールを送っておく。

そう言えば、なんとなくソシャゲに登録したんだっけ。
アバターの設定、髪は、やっぱり黒髪ショート。
明るくて、さばさばして、ちょっとS入ってる感じかな。
この辺の大きさには、少しロマンを込めて

\パンパカパーン♪♪♪♪♪/

おめでとう。

君は、

選ばれたポン!

==============================

本作はここまでです。

しまいにアンソロとかまほいくとか、
現在進行闇鍋SSと化してしまいました。

HTML依頼は折を見て。

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