【モバマス】森久保「詩的な日々」 (153)

初投稿です
多少のキャラ設定改変があります

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『森の香りと事務所』

――事務所――

乃々(どうも……もりくぼです……)

乃々(今日も今日とてプロデューサーの机の下で休憩中ですけど……)

乃々(今はもりくぼとお隣の輝子さん以外は出かけているのでいつもに比べて静かです…)

輝子「キノコー キノコー ♪」ガタゴト

乃々(輝子さんは昨日まで3日間休暇で出かけていたのですが今日はやけに嬉しそうです……
何かあったのでしょうか……)

輝子「クラクヨドンダ♪」ガサゴソ

乃々(気になります……)

輝子「ヒカゲデ-♪ コッソリソダテ……ん?」

乃々(これが『秋深き 隣は何を する人ぞ』でしょうか…)

輝子「ぼ、ぼののさん……?」

乃々「ファッ!?ソウデスネ モリクボガバショウノハイクヲツカウナンテオコガマシイデスヨネスイマセン」

輝子「お、おぅ…意味がわからないぞ……ぼののさん…?」

乃々「はっ!?……あ、し、輝子さんでしたか…
どうしたんですか、突然」

乃々(声に出てたでしょうか……)

輝子「いや…気付いたらぼののさんがこっちを見てたから……
も、もしかして、鼻歌、うるさかったか……?」

乃々「あ、いえそうではなくて……。
今日は輝子さんが御機嫌だったので…
休暇で何かあったのかと…」

輝子「あ、ああそういう事か……
フフ、実はな……」ガサゴソ

乃々(?………木?輝子さんのことだからキノコ関連でしょうか…?)

輝子「この休みに森のキノコ農家さんに会いに行ってな…キノコの原木を買ってきたんだ……」

乃々「そうだったんですか…
じゃあ、さっきからなにかしていたのは…」

輝子「こ、このままだと机の下に置くには大きいからな……
手頃なサイズに切ろうと思って準備してた…」

輝子「とは言ってもこれはまだ生だからな…
しばらくは乾燥させないと……」

乃々「どうして生の木を……?
乾燥させたものは売ってないんですか…?」

輝子「フヒ、それはな……」

乃々(そう言うとノコギリを持った輝子さんが私を呼びます)

乃々「何があるんですか…?」

輝子「まあ、見ててくれ…
きっとぼののさんも気に入ってくれるはずだ…」ザリザリ

乃々(そう言うと輝子さんはノコギリで気を切り始めました)

輝子「」ザリザリ...

乃々(………)

輝子「」ザリザリ...

乃々「あれ、…なんか…いい香りが…」

輝子「フフ、木の香りだ…」ザリザリ... ガッ ゴトン

乃々(気付けば事務所中に漂う木の香り……)

乃々「まるで森の中のようで……落ち着きます……」

輝子「フヒ、香りのお土産……気に入ってくれて何よりだ……」

乃々「でも、不思議ですね…
見た目は冬のかれた木なのに、こんなにいい香りがするんですから…」

輝子「冬でも木が生きているって事だな…」

乃々「…………『斧入て 香におどろくや 冬こだち』ですね…」

輝子「ど、どういう意味だ……?俳句……?」

乃々「あ、今のは与謝蕪村という人の俳句で…
冬に木を切った時に香りに驚かされ、外見は枯れていても中は生きているんだと気付いた状況を表してます…」

輝子「フフ…今の状況にピッタリだな……
さすがはぼののさんだ……」

乃々「いえ…森久保が作ったわけではないですし……」

輝子「あ、じゃあさっきばしょうって言ってたのも……?」

乃々「ああ、あれは、隣の人が気になる、秋のせいだろうかっていう俳句ですね…」

輝子「気、気にしてくれてたのは季節のせいだったのか……?」ショボーン

乃々「い、いえいえ、そうではなくて……!
ただ、今日の輝子さんは、凄く楽しそうだったので……何かあったのかなと……」

輝子「フ、フヒ、冗談、じょーくだ…
……けど、そういうことを気づいてもらえるのは……何だかくすぐったいな…」

乃々「ほかには、なにか、あったんでしょうか…」

輝子「そういえば、行きの電車で……」

―――――――――

――――――

―――

『宝物』

――事務所――

乃々P「ただ今もどりましたー」ガチャリ

ちひろ「はい、お疲れ様です」パラパラ

乃々P「あれ?ちひろさん何見てるんですか?」

ちひろ「ああ、これですか?この間まゆさんが『おねえさんといっしょ』に出たじゃないですか」

乃々P「ああ、そういえば先週はまゆさんが出てましたね」

ちひろ「その時の写真の整理ついでに少し見てたんですよ」

ちひろ「良ければ乃々Pさんもご覧になりますか?」

乃々P「あ、いえ、まだ書類仕事が残ってるのでせっかくですがまたの機会にしますよ」

ちひろ「そうですか」

乃々「まゆさんの写真……ですか
……?」ピョコッ

乃々P「うおお!?……森久保、また机の下にいたのか…
危うく踏みそうになったぞ」

乃々「ここは私の聖域『サンクチュアリー』ですけど……」

ちひろ「乃々ちゃん、写真見ますか?」

乃々「あ、ぜひ……」

ちひろ「はい、どうぞ」

乃々「どうも……」ペラ...ペラ...

乃々「まゆさんはやっぱり可愛いですね……」

ちひろ「しっかりもののお姉さんって感じですよね」

乃々P「森久保も可愛いぞぉ!」

乃々「ヒィッ!?突然叫ばないで欲しいんですけど!?」キーン

乃々P「すまん、ついな」

乃々「はぁ…… でもまゆさんはもちろんですけど、周りの子供たちの笑顔も素敵ですね…」

ちひろ「そうですね……
やはり、小さい子供たちの嬉しそうな笑顔をみてると、お金や地位よりも大切なものを思い出しますよね」

乃々P「ちひろさん、風邪薬要ります?」

ちひろ「どういう意味ですか」

乃々「『銀(しろがね)も 金(くがね)も玉も 何せんに まされる宝 子にしかめやも』ですね…」

ちひろ「ああ、それ、昔学校で習いましたねえ
万葉集でしたっけ?」

乃々「はい…、万葉集の、山上憶良(やまのうえのおくら)の短歌です…」

乃々P「国語なんて寝まくってたから覚えてないなあ…… どんな意味なんだ?」

乃々「直訳すると、銀や金や玉でさへもどうして子供という宝に及ぼうか、いや及ばない、という感じですけど…」

ちひろ「私たちが普段の生活で忘れそうになる大切なものを、昔の人はしっかり気付いてたんですねえ…」

乃々「時代は変わっても、人の心は変わりませんから……」

ちひろ「それが文学の魅力って事ですね
というか、乃々ちゃんはポエム以外のものも詳しいんですね」

乃々「ポエムだけでなく……詩や短歌も好きなので……」

乃々P「さすが森久保は勉強家だなぁ!!」

乃々「だから叫ばないでほしいんですけど…!」キーン

『記念日』

――女子寮・まゆの部屋――

輝子「そ、それでは…」

乃々「第14回アンダーザデスク女子力アップの会」

まゆ「略して女子会を開催します!」

輝子「い、イエーイ?」

乃々「ひゅーひゅー……?」

まゆ「パチパチー」

3人「………」

輝子「…毎回思うんだが……」

乃々「はい…」

輝子「三人で集まるだけなのにこの口上はいるんだろうか……?」

まゆ「ま、まあ普段のお茶会とは分けるという意味で……?」

乃々「せ、精神的な……?」

輝子「精神的な……?」

まゆ「と、とにかく始めましょう!」

―――――――――――

――――――

まゆ「このクッキー…キノコの形ですかぁ?可愛い…」

輝子「それは、私が作ったやつだな…近所のお店に良い型が売ってあったんだ…フフ」パクッ

乃々「味はごまクッキーですね… 美味しいです……」ポリポリ

輝子「ぼ、ぼののさんのクッキーも美味しいぞ……
これは…紅茶味かな……」モグモグ

乃々「そうですけど… お口にあったのなら良かったです…」パクリ

まゆ「二人とも順調に女子力が上がってるようで良かったです…」モグモグ

輝子「で、でもまゆさんのハートクッキーにはまだまだ勝てない……」パクッ

乃々「焼き加減も味も絶妙で…手が止まらないんですけど…」ポリポリ

まゆ「まだまだふたりにも負けられませんから…… まゆも進化しますよぉ…」

輝子「さ、流石の向上心だな……!」

乃々「ま、眩しいんですけど…!」

まゆ「あ、そういえば乃々ちゃん、この間の本返しておきますねぇ」

乃々「あ、どうも… 面白かったですか…?」

まゆ「ええ、すごく共感しました……」

輝子「何の本なんだ……?」

乃々「えっと、俵万智の『サラダ記念日』という本ですね… 」

まゆ「本というか短歌の歌集ですね…」

乃々「輝子さんも良ければ読みますか……?」

輝子「借りて良いなら……ぜひ…」

乃々「いけないわけないんですけど… はい、どうぞ…」

輝子「フヒ、あ、ありがとう……」

乃々「どういたしまして、ですけど… フフッ」

乃々「ところで、まゆさんはどの歌が一番気に入りましたか?」

まゆ「まゆはやっぱり…… 題名でもあるサラダ記念日の短歌ですねぇ」

輝子「どんな短歌なんだ……?」

まゆ「えっと… 『この味がいいね』と君が言ったから 七月六日はサラダ記念日 という歌です」

乃々「何でもない日も恋の力で記念日になる…… いいですよね…」

まゆ「まゆもプロデューサーとの出来事を記念日にしてますから…
すごく共感出来ましたぁ…」

輝子「ちなみに輝子さんの記念日はどんなのがあるんだ……?」

まゆ「そうですね、例えば、お家記念日とか、リボン記念日とか、シャンプー記念日とか、毎日が記念日ですよ…」

乃々「さ、流石はまゆさんですね……」

まゆ「輝子さんも読んだら一緒に語り合いましょうねぇ…」

輝子「フフ、次の女子会までに読んでくるぞ……」

乃々「楽しみにしてますけど……」

――その頃の事務所――

乃々P「まゆPさん、昼めし買いに行きませんか」

まゆP「いえ、今日はコレがあるので」

乃々P「まゆさんのお弁当…?今日はまゆさんオフのはずですよね?」

まゆP「そうなんですが…… 朝、自宅に来て『今日は記念日だからお弁当作ったんですよぉ……』って……」

乃々P「記念日とか関係なく事務所に来る日は作ってますよね」

まゆP「ええ、だからせめてオフの日は作らせない約束だったんですが…
『記念日ですから、ね?』って笑顔で言われてしまいまして…」

乃々P「押し切られたと」

まゆP「押し切られました」

乃々P「ちなみになんの記念日なんですか?」

まゆP「『前髪に気付いてくれた記念日』だそうです」

乃々P「何の記念日ですかそれ…」

まゆP「明日は『一緒におでん食べた記念日』らしいです」

乃々P「理由つけて毎日お弁当作る気なのでは…」

――――――――――――――――――――――――

まゆ(明日も腕によりをかけて作りますから、待ってて下さいねぇ…… プロデューサーさぁん……)

とりあえず今日はここまで

できる限り色んな詩歌とキャラを出したい……

>>17
やまのうえのおくら…高原野菜か(小学生の発想)

>>17
机下乃々「むーりぃー…… もう帰りたいんですけど……
子供も泣いてるし、その母も待ってるんですけど……」

山上憶良と言われるとこれが一番に思い浮かんだ

2本か3本投下します

『冬の月』

――テレビ局――

スタッフ「撮影お疲れ様でしたー」

乃々「お、お疲れ様でした……」

凛「乃々、おつかれ」

乃々「あ、凛さん…… お疲れ様です…」

凛「今日の撮影はどうだった?」

乃々「ば、バラエティはまだ……全然慣れないです……」

凛「あー… 私も最初は苦手だったけど、慣れれば出来るようになるから」

乃々「もりくぼには凛さんのように司会したりとかむーりぃ、ですけど…」

凛「そのうちに何とかなるから、大丈夫だよ」

乃々「そんなものでしょうか……」

凛「乃々は頑張り屋だって、私知ってるから」

乃々「そ、そんなふうに言われると……あうぅ… 恥ずかしいです……」

凛(かわいい)

凛P「凛ー早く着替えて撤収するぞー」

乃々P「森久保もなぁー」

凛・乃々「「あ、はーい」」

―――――――――――――――――――――――――――――――

凛「やっぱり外は寒いね…」

乃々「そうですね……」

乃々P「車回してくるのでちょっと待ってて下さい」タッタッタッ



乃々「………今日は満月みたいですね……」

凛P「正確には明日ですね」

乃々「あ、そうでしたか……」

凛「プロデューサー、細かいこと気にしすぎると禿げるよ?」

凛「…それにしても、空が高いね」

乃々「……冬ですからね… 月も遠く見えます…」

凛(月……空……)

凛「………寒月や」

乃々「………門なき寺の?」

凛「天高し。 フフッ、通じたね」

乃々「通じ合いましたね」 フフッ

凛P「………与謝蕪村…ですか?」

乃々「正解ですけど…」

凛「流石はプロデューサーだね」 ウンウン

乃々「うちのプロデューサーさんとは大違いなんですけど……」

凛P「冬の天に浮かぶ月と地上の寺を交互に見ている俳句
今夜の月にはぴったりですね」

凛「お寺が無いのが残念だけどね」

乃々「そういえばこの辺りにお寺があった気がするんですけど…… 行ってみますか?」

凛P「今からはさすがに……」

凛「というか乃々Pさん待たないと」

乃々「フフッ 冗談です…」

ブロロロロ……

乃々「噂をすれば来たみたいですけど」

凛「じゃあ、帰ろっか」

乃々(お月様も、おやすみなさい…なんて)

『かはゆし・かわいい・カワイイ』

――事務所――

美玲「……なあ」

乃々「はい」

幸子「何ですか?」

美玲「幸子が自分のことを『かわいい』ってよく言うじゃん」

幸子「まあボクは『カワイイ』ですけどね!」フフーン

美玲「古文では『かはゆし』って『かわいそう』って意味もあるんだってな」

幸子「スルーしないで下さいよ」

乃々「……『恥ずかしい』という意味もありますね……」

幸子「乃々さんも!」

美玲「……幸子はかはゆし、だな」

乃々「…どの意味で使ったんですか?」

美玲「ご想像にお任せします」

幸子「だからボクは『カワイイ』ですから!!」

美玲「おーおー幸子はかわいいなー」

幸子「棒読み!!」

美玲「まあ、それはともかく
なんで『かはゆし』で恥ずかしいとかかわいそうの意味になるんだろうな」

乃々「…どちらかと言うと元々はそれらの意味で使われていたみたいですね……」

幸子「そうなんですか?」

乃々「元々『顔映ゆし』という言葉が語源で、(相手が優れていて)直視出来ない から『気恥ずかしい』の意味になり 、
直視出来ないが放っておけない感覚から『気の毒だ、可愛そうだ』の意味になったみたいです……」

美玲「じゃあどうして今みたいな意味になったんだ?」

乃々「諸説あるみたいですけど…
直視出来ないほど美しい、辺りからきたみたいです……」

幸子「まあボクほどのカワイさなら直視出来ないのも仕方が無いですね!」フフーン

乃々「そうですね……」

美玲「………」

幸子「何ですかその反応!」

美玲「幸子は弄られカワイイだからなッ」

幸子「喜んでいいんでしょうかそれ……」

乃々「………それにしてもなんで突然『かはゆし』なんですか?」

美玲「……なんとなくだッ」

乃々「……そうですか…」

美玲「………」

乃々「………」

幸子「………」

美玲「……なんか言えよ」

乃々「えぇ… ……なんかって何ですか……」

美玲「………そりゃあ、あれだ、ノノとキノコが最近話してるようなやつだ」

乃々「?」

幸子「………あー、分かりましたよ」ニコニコ

美玲「……な、なんだよッ!ニヤニヤしてッ!」

幸子「最近、アンダーザデスクの皆さんが俳句とかで盛り上がってるから
羨ましくなったんですね?」

美玲「ファッ!?…ち、違うぞッ!//」

幸子「違わないでしょう?」ニヤニヤ

美玲「ウチは別に羨ましいとか思ってないしッ!///」

乃々「……今の美玲さんが『かはゆし』ですね…」フフッ

美玲「……ノ、ノノぉーッ!!///」

『私の土は』

――事務所・夕方――

卯月「お疲れ様ですー」ガチャリ

凛「あ、卯月、今レッスン終わり?」

卯月「凛ちゃんもですか?」

凛「うんそう。 ここ座る?」

卯月「あ、お邪魔しますね」

卯月「何読んでるんですか?」

凛「花の図鑑。 事務所の本棚に置いてあったから」

卯月「じゃあ私も金子みすゞさんの本の続きを読もうかな」

凛「それ、卯月が読んでたんだ…… ちょっと意外かも」

卯月「そうですか?優しい詩でいいですよね!」

凛「乃々と気が合いそうだね…。 どの詩が好きなの?」

卯月「『草の名』とかが好きですね
小さなものに対する目線って言うんでしょうか そんな感じが好きです」

凛「なるほどね」

卯月「凛ちゃんはどの詩が好きですか?」

凛「好きなのは迷うところだけど…… 印象的なのは『草と土』かな」

卯月「まだ読んでないですね… ちょっと読みますね」

凛「どうせなら音読しようよ」

卯月「な、何でですか!?」

凛「……大人の都合?」

卯月「……分かりました、頑張ります!」

凛「素早く適応したね……」

卯月「大人の事情ですからね、仕方が無いですね」

凛「そうだね、仕方ないよね」

卯月「じゃあ読みますね…

『草と土』
かあさん知らぬ 草の子を、

なん千万の 草の子を、

土はひとりで 育てます

草があおあお しげったら、

土はかくれて しまうのに。 」

卯月「……たしかに印象的ですね」

凛「なんかこう……なんとも言えない寂しさだよね…… 卯月?」

卯月「あ、そうですね!……………ちょっと行く所ができたので先に帰りますね」

凛「あ、うん また明日」

卯月「はい、また明日!」

――とある養成所――

??「今日のレッスンはここまで
しっかり学んだことを覚えてくるように」

子供達「「「はい!」」」

??「じゃあ、お疲れ様」

子供達「「「お疲れ様でしたー!」」」

ザワザワ……

??「ふう、今日も終わったな」

卯月「お疲れ様です、トレーナーさん!」

養成所トレーナー(以下トレーナー)「誰かと思ったら卯月君じゃないか!
久しぶりだねえ!」

トレーナー「元気にやっているかい」

卯月「はい、お蔭さまで!」

トレーナー「それは良かった ……立ち話もなんだから向こうにでも座ろうか」

トレーナー「最近の君の活躍は凄いねえ」

卯月「見ててくれてるんですね。 養成所時代にトレーナーさんが指導してくれたおかげです」

トレーナー「私は基礎を教えただけで、後は卯月君自身の才能と努力の成果さ」

卯月「でも私が努力を知ったのは他でもないこの養成所の時でしたから!」

トレーナー「そう言ってくれると嬉しいねえ」

卯月「ところで、トレーナーさんは最近どうですか?」

トレーナー「どうということも無い、いつも通りさ」

卯月「そうですか、お変わりないなら良かったです」

トレーナー「……何かあったのかい?
悩み事なら聞くよ」

卯月「い、いえ!そんなことは無いです! ただ…」

トレーナー「ただ?」

卯月「例え土が上から見えなくなっても、草は自分を育ててくれた土を覚えているもんだって思ったので」

トレーナー「?」

卯月「…まあ、そんな訳です …また来ても良いですか?」

トレーナー「……いつでもおいで 待ってるよ」

卯月「ありがとうございます!」

卯月「じゃあ、今日はこれで」

トレーナー「アイドル、頑張ってね!」グッ!

卯月「はい!頑張ります!!」グッ!

本日は以上です
そのうちに登場した歌の作者紹介もしたいですね

乙 次も待ってる
>>27
>輝子「ちなみに輝子さんの記念日はどんなのがあるんだ……?」
ここだけ気になった

>>66 うわぁ恥ずかしい
という訳で>>27 修正

まゆ「まゆもプロデューサーとの出来事を記念日にしてますから…
すごく共感出来ましたぁ…」

輝子「ちなみにまゆさんの記念日はどんなのがあるんだ……?」

まゆ「そうですね、例えば、お家記念日とか、リボン記念日とか、シャンプー記念日とか、毎日が記念日ですよ…」

乃々「さ、流石はまゆさんですね……」

まゆ「輝子さんも読んだら一緒に語り合いましょうねぇ…」

輝子「フフ、次の女子会までに読んでくるぞ……」

乃々「楽しみにしてますけど……」

1本投下します

『秘めた心・1』

――事務所――

乃々P「まゆPさん昼めし買いに行きませんか、って、やっぱり今日もまゆさんのお弁当ですか」

まゆP「今日はまゆも事務所に来てますし、今日も記念日らしいので」

乃々P「ちなみに今日はなんの記念日ですか?」

まゆP「えっと… 」??「『Pさんがちょっと早いクリスマスプレゼントをくれた記念日』ですよぉ…」

乃々P「まゆさん!?いつの間にまゆPの背後に!?」

まゆ「乃々ちゃん直伝の気配を断つ術ですよ…」

乃々P「森久保ォ!お前そんなこと出来たのかぁ!」

乃々「……いつも言いますけど叫ばないで欲しいんですけど……」

まゆP「相変わらずですね… …まあそういう訳でお昼ご飯は間に合ってますので」

乃々P「分かりました じゃあちょっとコンビニ行ってきます」

乃々「……あ、じゃあもりくぼもジュース買うのについて行くんですけど……」

乃々P「森久保が?」

乃々「……いけませんか?」

乃々P「いや、そんなことは無いが
ちょっと意外だっただけだ」

乃々「もりくぼは人混みが苦手なだけで…… 家から出たくない訳では無いんですけど」

乃々P「そっか、じゃあ行くか」ガチャリ

まゆP「――ジュースぐらい廊下の自販機で買えるのでは?」モグモグ

まゆ「それは言わないお約束、ですよぉ… ……はい、あーん♡」

まゆP「いや、自分で食ベれるので」

まゆ「そんなー」

―――――――

「アリガトーゴザイマシター」

乃々P「ふー、買えた買えた… やっぱり外は寒いなー」

乃々「ホントですね……」

乃々P「…………ん、」

乃々「この手は、……繋ごうってことですか?」

乃々P「そんなことしたら俺捕まるわ、
荷物を持ってやろうって手だよ」

乃々「そうですか… じゃあ、お願いします…」

乃々「どうして今の流れで違うんですか…」ボソリ

乃々P「ん?なんか言ったか?」

乃々「何でもないです…けど……」

乃々P「そうか……」

乃々「………」

乃々P「………」

乃々「……川ですね」

乃々P「……そうだな」

乃々「………」

乃々P「………」

乃々P「……森久保の趣味について話そう」

乃々「……なんで突然…」

乃々P「いや、なんとなく…
最近周りとよく話してるみたいだからさ」

乃々「まあ、そうですね…」

乃々P「なんか今の状況に合った俳句とかないか?」

乃々「……無茶ぶりですけど」

乃々P「そこを何とか」

乃々「………じゃあ、そうですね……」

乃々「『筑波嶺の 峰より落つる 男女川(みなのがわ)』とかどうですか……」

乃々P「どういう意味だ…?」

乃々「筑波山から落ちてくる川の流れという意味ですね」

乃々P「………川しか要素ないよね?」

乃々「……Pさんにはこれぐらいでいいかと……」

乃々P「え、酷くない…?」

乃々「でも正直、あんまり興味無いでしょう……?」

乃々P「………まあ、あんまり無いな… すまん」

乃々「…別に、Pさんはそれぐらいでいいです……」

乃々P「そうか」

乃々P「まあ、これから詩とかの仕事も取ってきてやるぞ森久保!」

乃々「ええー……」

乃々P「戻りましたー」ガチャリ

乃々(………あの歌、実は短歌なんですよ…… 教えませんけど) モドリマシター

――――――――――――――――――――――――――――――

筑波嶺の 峰より落つる 男女川
恋ぞつもりて 淵となりぬる


陽成院



筑波山の峰よりから流れ落ちる男女川は、次第に水かさを増して深い淵になります
同じように、あなたを思う私の心も、積もり積もって、淵のように深い思いになりました

今日はここまで
三連休も投下したい

二本投下します

『炬燵で語る愛』

乃々「ふーー………」

凛「はぁーー……」

まゆ「あぁーー……」



乃々「…………炬燵っていいですね……」

凛「そうだね……」

まゆ「休憩室に置いてくれたちひろさんに感謝ですねぇ……」

乃々「炬燵で食べるミカンは格別です…… 」ハムハム

凛「……乃々って食べ方も小動物っぽいよね」

まゆ「分かります…」

乃々「そ、そうでしょうか……?」ハムハム

凛「リスとかハムスターみたい」

まゆ「可愛いと言うか、愛らしいですよね」

乃々「な、なんか恥ずかしいんですけど……」

ガチャリ

加蓮「ふぁー つかれたー……」

凛「あ、加蓮」

まゆ「お疲れ様です」

乃々「お、お疲れ様です…」

加蓮「お疲れー 私も炬燵入らせてー」



加蓮「…………はぁー……ぬくー……」

乃々「加蓮さんはさっきまでお仕事だったんですか…?」

加蓮「そう、映画の撮影」

乃々「す、凄いですね…」

まゆ「どんな映画なんですかぁ……?」

加蓮「んー、普通の恋愛映画だね」

乃々「どんな役を演じるんですか……?」

加蓮「主人公の親友役で……まあいつものやつ」

まゆ「いつもの?」

凛「あー……」

乃々「凛さん、知ってるんですか?」

凛「加蓮はほら、昔病弱だった関係もあって、病気とか儚い感じの演技が上手いんだよ」

加蓮「つまり、途中で死ぬ役ってこと」

まゆ「そうなんですか…… でも、そういう演技って難しそうですし、凄いじゃないですか」

加蓮「まあ、そうなんだろうけど…
私としては、体も強くなったし、もっと色んな役を演じたいなってさ」

凛「まあ、それは今プロデューサーが頑張ってるから。それに、一つ突出したものがあるっていうのも、すごいことだと思うよ」

加蓮「ん、ありがと…… ただ今回はその演技も割と行き詰まってるんだよね…」

凛「そうなの?」

加蓮「………心情が分からないっていうか」

乃々「そうなんですか…?」

まゆ「恋愛なら話してくれれば少しは役に立てるかも知れませんよぉ……」

加蓮「じゃあちょっと聞いてもらえるかな」

凛「あ、でも映画の内容とか、話しちゃ不味いんじゃないの?」

加蓮「まあぼかしながら話せば大丈夫でしょ……」

加蓮「主人公と私の役、仮に友人って呼ぶね、が同じ人に恋をして……」

乃々「三角関係…青春ですね……」

加蓮「友人は主人公のために、誰にも恋心を打ち明けずに主人公の恋路を応援して、結果二人は結ばれるんだけど」

加蓮「思いを隠し続けた友人は心の病にかかって途中で死んじゃうってストーリーなんだよね」

まゆ「それは……なんというか」

凛「重いね…」

乃々「辛すぎる青春なんですけど……」

加蓮「重いのは良いんだけど…
病の原因は恋心を隠してたからで、結局本当に誰にも打ち明けないんだよね」

加蓮「その心情がよくわからないっていうか」

凛「なるほどね……」

まゆ「まゆも……好きな人は他人を落としてでも捕まえたいと思いますから、それは分かりませんねえ」

加蓮「そっかー…」

まゆ「お役に立てなくて、ごめんなさい…」

加蓮「いやいや、大丈夫だよ
乃々と凛は何か思い当たることとかない?」

乃々「アドバイスにはならないと思いますけど、一つ、思い当たる短歌があります」

加蓮「短歌?」

凛「あ、乃々もあった?」

乃々「り、凛さんもですか?」

凛「多分乃々と同じだと思うから…
答え合わせしようか」

乃々「はい」

凛「いくよ、
『玉の緒よ 絶えなば絶えね ながらえば』」

乃々「『忍ぶることの よわりもぞする』」

乃々「…当たり、ですね」

まゆ「息ピッタリですねぇ…」

加蓮「その歌はどういう意味なの?」

凛「『あぁ、私の命よ、絶えるなら早く絶えてしまえ……そうしないと、あの人への恋心が隠しておけなくなってしまうから……』」

凛「…みたいな意味合いかな」

乃々「…り、凛さん……?」

加蓮「………今の死にそうな演技、良かったよ」

まゆ「フフッ……大先輩のお墨付きですねぇ……」

凛「…あっ……素で演技してた……//カァー」

加蓮「『早く絶えてしまえ……』」

凛「と、とにかく!どう、なんか分かった?」

加蓮「………うーん… やっぱり、どうして隠しておきたいのか、分からないかなぁ…」

凛「まあ、私もイマイチ納得はしてないね… 乃々はどう?」

乃々「どう、と言われてもですけど…
……きっと、友人さんは主人公さんも好きだったんじゃ無いでしょうか」

まゆ「……というと?」

乃々「自分が間に入ると、話がややこしくなって、二人を悲しませてしまう、
ましてや、それで病気になったなんて伝えたら、みんな後悔するかもしれない、そう考えたんじゃないでしょうか…」

まゆ「そういう考え方もあるんですね…」

凛「たしかに…私もトライアドプリムスで三角関係になったと考えると……相手のために伝えられないかも…」

加蓮「なるほどね………… なんとなくちょっとわかった気がするよ」

乃々「なら、良かったんですけど」

加蓮「まあ、もっと頑張ってみるよ… みんな、ありがと」

凛「いえいえ」

乃々「お礼を言われるほどのことでは……」

まゆ「頑張って下さいねえ…」

――――――――――――――――――――――――――――――

乃々(加蓮さんが出演した映画は大ヒット作になりました)

乃々(加蓮さんの演じた友人役は主役を食う程の人気になり、加蓮さんへの出演オファーもますます増えたそうです)

加蓮「凛ー!!」ガチャリ

凛「どうしたの、加蓮」

乃々「…加蓮さん」

まゆ「今日はやけに元気ですねぇ…」

加蓮「いい事あったからねー、あ、炬燵入らせてー」

加蓮「はふぅ…… そう言えば乃々、こないだ借りた短歌集、あとで返すね」

まゆ「加蓮さんも読むんですか?」

加蓮「あー、ここでアドバイスもらった後に興味が出てね、乃々に一冊借りてみたんだ」

乃々「どうでしたか…?」

加蓮「んー、古語だしやっぱり難しいけど、意外と面白いね」

乃々「なら、良かったです」

凛「それで、いいことって何があったの?」

加蓮「いやー、実はね、とうとう死なない役がもらえてさ」

凛「本当!?良かったじゃん」

乃々「おめでとうございます…」

まゆ「改めて聞くとすごい判断基準ですね……」

凛「今回はどんな役なの?」

加蓮「えっとね………」

――――――――――

―――――

―――――――――――――――――――――――――――――――
『玉の緒よ 絶えなば絶えね ながらえば
忍ぶることの よわりもぞする』

新古今和歌集より

式子内親王 作
―――――――――――――――――――――――――――――――

しばらくしてからもう一本投下します

用事が出来たので投下は夜にします……

続き投下します

『素直な言葉』

――事務所――

乃々「……ん、」

乃々「奈緒さん、読み終わりました……」

奈緒「おう、…あたしも今、最新巻読み終わった」

乃々「奈緒さんも少女漫画読むんですね……」

奈緒「んー、まあ、あんまり読まないけど……
『ちはやふる』は少年漫画っぽくもあるよな」

乃々「たしかにそうですね……」

奈緒「私は乃々が読んだことが無いのが意外だったぞ」

乃々「ほのぼのしたもの以外はあまり読まないので… でも、面白かったです」

奈緒「今何巻読んでたんだっけ?」

乃々「9巻読み終わりました…」

乃々「紀貫之の言葉が印象的でした……」

奈緒「え、そんなのあったか?」

乃々「自然な発声が詩になるってセリフで……ここです」

奈緒「ああ、あったな、そんなシーン…
このセリフって結局何の引用なんだ?」

乃々「……ネットで調べてみたんですが『古今和歌集』の仮名序からの引用ですね……
書いたのは紀貫之です」
―――――――――――――――――――――――――――――――
古文
世中にある人・ことわざしげきものなれば、心に思ふことを、見るもの・聞くものにつけて言ひ出だせるなり。
花に鳴くうぐひす、水にすむかはづのこゑを聞けば、いきとしいけるもの、いづれかうたをよまざりける。


世のに生きる人々は様々な出来事に出会うから、心に思ったことを、見るにつけ、聞くにつけ、歌にして詠むのだ。
うぐいすや蛙の声を聞けば、生きるもので歌を詠まないものがいようか、いや、いない。

この文章の解釈には諸説あり、その一つに『つまり、心に思ったことを素直に言葉に出せば、それは歌となり得る』というものがあります。

―――――――――――――――――――――――――――――――

乃々「短歌も多く出てきますけど、こういう知識が知れるのもいいと思います…」

奈緒「かるたにも詳しくなれるしな」



奈緒「………素直な言葉が詩になる…か」

乃々「想いのこもった言葉は、それだけで一片の詩となるのかも知れませんね……」

奈緒「………うーん、難しいな」

乃々「………私も体験したことは無いので、よく分からないですけど」

奈緒「でも、いい言葉だってのは分かるぞ」

乃々「そうですね……」

ガチャリ

乃々P「森久保!!!仕事行くぞ!!!」

乃々「ヒイッ!……不意打ちはやめて欲しいんですけど」

奈緒「乃々Pさん素で声がデカイからな」

乃々P「いやーすまん、まあとにかく行くぞ森久保ォ!」ヒョイッ

乃々「反省してないですよね、と言うか抱き上げないで下さい、歩けますからぁ………!」

奈緒(でもお姫様抱っこされて嬉しそう)

バタン

奈緒(……乃々も仕事行ったし、あたしもレッスンルームにでも行こうかな)

――レッスンルーム前――

奈緒(あれ、加蓮?あんな所で何してるんだ)

加蓮「…………」ブツブツ

奈緒(ああ、台本暗記してるのか……
ここ最近、ドラマとか一気に増えたって言ってたな)

奈緒(目を閉じてるから、こっちに気が付かないな…… このまま気付かれないように近づいてみよう)ソローリ

加蓮「…………」ブツブツ

奈緒(…………)

奈緒(小さくてあまり聞き取れないけど……)

奈緒(目を閉じて呟く加蓮はさっきの漫画のシーンのようで。)

奈緒(発せられる言葉は、断片的でも詩のような響きを持っていて。)


奈緒「………綺麗だな。」

加蓮「あれ、奈緒?」

奈緒「あ…」

加蓮「………あー、何ー?私に見とれてたのー?」

奈緒「……ち、ちがうぞっ!今のはなんて言うか……あ、あれだ!あの壁の絵!アレが綺麗だなって!」

加蓮「誤魔化さなくてもいいのにー」

奈緒「べ、別に誤魔化してなんかねぇよ!」

加蓮「えー?…………じゃあ、私のことは綺麗だと思ってないの……?」

奈緒「い、いや、それは、その」

加蓮「どっちなの……?」

奈緒「そ、そりゃあ、綺麗だと思ってないわけないだろ!あーもー!言わせるな!」

加蓮「フフッ」

奈緒「はぁ………」

加蓮「奈緒ー」

奈緒「………なんだよ」

加蓮「ありがと、嬉しい」

奈緒(………ずるい)

奈緒「……どういたしまして」

加蓮「てゆーか私も奈緒に暗記してるの見られたわけだし、お互い様だよー?」

奈緒「……その後にあたしは追撃を食らったんだが」

加蓮「細かいこと気にしてるとさらに眉が太くなるよー?」

奈緒「なるかっ!!」

以上です

仮名序の解釈に関しては元ネタのマンガに一番近いと思われる解釈を使用しています
あと、TPは3人とも同じPという設定なので今度から 凛P → トライアドP となります。

教養を高める古典SS、すごくいいです
ためになる…

投下します

『楓と乃々のラジオ 前日譚』

タッタッタッタッ

乃々(もりくぼです)

乃々(もりくぼと奈緒さんが漫画の話題で盛り上がっていたところ、突然入って来たプロデューサーさんが『仕事に行くぞ!』と叫び、)

乃々(そのまま連れ出され、プロダクション内を駆け抜けています…抱き抱えられて)

乃々P「あ!すまん、抱えたままだったわ」

乃々P「下ろすぞー、よいしょ、っと」

乃々(名残惜しいですが…周りの視線も気になるので、大人しくおろされます……)

乃々「そんなに急いでるんですか……?」

乃々P「いや、ゆっくりでも問題なく間に合うぞ」

乃々「じゃあなんで走ってたんですか……」

乃々P「これから森久保の活躍が見られると思ったらテンションが上がってな!」

乃々「ここ廊下なんで静かにしてほしいんですけど……」

――車内――

乃々「今日はラジオの打ち合わせ……でしたっけ?」

乃々P「まあ、そうだな
……しかし森久保も、あまり仕事を嫌がらなくなったなぁ…」

乃々「……ラジオは何回かやりましたし、人に会わなくて済みますし、ゲストなら一回だけですし…
………ちょっとだけ、アイドル、頑張ろうかなって、思いますし………」

乃々P「森久保ォ!お゛れは嬉しいぞぉ!森久保ォ!!」

乃々「車内に響くのでやめて欲しいんですけど……
なんでそんなに叫ぶんですか……」

乃々P「森久保が可愛かったり前向きだったりするとつい、嬉しくてな」

乃々「………そうですか
……………で、でもやっぱり叫ばなくてもいいんですけど」

乃々P「まあ、たしかに車内ではうるさいから、なるべく気をつけるよ」

乃々「……そういって守られたことは一度もないですよね…」

乃々P「性格だからな、許してくれ……
そうだ、さっきのラジオの話だけど、」

乃々「何ですか?」

乃々P「ゲストじゃなくて、パーソナリティだから」

乃々「え……、聞いてないんですけど……」

乃々P「ホントは第一回ゲストだったんだがな、交渉の結果パーソナリティになれることになった」

乃々「………ということは、これからラジオの仕事が何度もある、ということですか……?」

乃々P「まあ、そうだな
毎週ライブとかじゃないし、いけるだろ?」

乃々「うぅ………が、がんばり、ます、けど……」

乃々P「その意気だぞ森久保!」(声小さめ)

乃々「………………あれ、ゲストの予定だったなら、元のパーソナリティの人はどうなったんですか……?」

乃々P「ああ、その人と二人でパーソナリティをすることになったんだ」

乃々「……そうですか」

乃々P「まあ、森久保も一度共演した事あるし、大丈夫だろ」

乃々「……誰なんですか?」

乃々P「楓さんだ」

乃々「………………え?」

乃々P「楓さんと二人でパーソナリティだぞ」

乃々「…………むーりぃ」

乃々P「この間もラジオで共演してただろ?」

乃々「あの時は卯月さんもいましたし…
……もりくぼ一人で楓さんと話すなんて……
オーラで消えくぼになるのは見えてるんですけど……」

乃々P「まあ、森久保が緊張するだろうとは、思ってたからな」

乃々P「そのための今日の打ち合わせだしな」

乃々「どういう事ですか…?」

乃々P「今日は楓さんも来るからな、俺達が打ち合わせしてる間に打ち解けてもらおうってことだ」

乃々「……二人だけでお話とか…絶対緊張するんですけど……」

乃々P「誰だって、あまり話したことのない相手との会話は緊張するさ
でも、俺は森久保なら出来ると思ってるぞ」

乃々「……………分かりました
………頑張ってみるんですけど…」

――スタジオ――

乃々P「こんにちは
よろしくお願いします」

楓P「こちらこそよろしくお願いします
乃々さんも、よろしくお願いします」

乃々「よ、よろしくお願いします……」

楓「お久しぶりです、乃々ちゃん
シャイニーナンバーズ以来ですね」

乃々「こ、こんにちは………」

楓P「じゃあ、時間も無いですし、僕らは向こうで打ち合わせしましょうか」

乃々P「ええ」

バタン

乃々(その場には、楓さんともりくぼだけが取り残されました)

乃々「ごめんなさい……貴重な時間をもりくぼなんかのために……」

楓「え?ああ、プロデューサーさんの言葉ですか、あれは…おっとと」

乃々「あれは…?」

楓「あれはヒミツです」

乃々「え…?」

楓「ヒミツです♪」

乃々「わ、分かりました……」

乃々「……」

楓「……」

楓「乃々ちゃん、緊張してます?」

乃々「ご、ごめんなさい……」

楓「あぁ、いえ、怒ってなんかいませんよ
……ただ、少し親近感が」

乃々「親近感…ですか…?」

楓「私も人見知りで、人とお話したり、上手く付き合っていくの、苦手だったんです」

楓「だから、乃々ちゃんが緊張するのも少し分かるなって」

乃々「……楓さんは、いつも堂々としていて……
人見知りだったなんて、思いませんでした…」

楓「アイドルになってからは、自分でも人付き合いが上手になってきたと思っているので、そう言われると嬉しいですね」

楓「乃々ちゃんはアイドルになってから、何か変わりましたか?」

乃々「もりくぼは……
ちょっとだけ、自分に自信が持てた気がします……」

楓「自信ですか?」

乃々「こんなもりくぼでも、誰かを笑顔に出来るかもって……
そう思えるようになりました……」

楓「人を笑顔に、ですか 大切なことですね……
……乃々ちゃんが『自身』に『自信』を持てたなら良かったです ふふっ」

乃々「……」

楓「ところで、乃々ちゃんがポエム好きなのは知ってたんですが、詩とかもお好きなんですよね?」

乃々「あ……はい、
どうしてそれを……?」

楓「ああ、そう言えば……今回のラジオが私達が詩や句を紹介するラジオだったので、そうじゃないかなと」

乃々「そう言えばもりくぼ、ラジオについてほとんど聞いてないんですけど…」

楓「乃々ちゃんのパーソナリティ自体がつい最近決定しましたからね
乃々Pさんが『大丈夫だ』と言っていたので、大丈夫でしょう」

乃々「……心配しかないんですけど」

楓「それよりも、乃々ちゃんはどんな詩とかが好きなんですか?」

乃々「基本は俳句と短歌ですけど…
ポエムは好きですけど、詩はあまり読みませんね……」

乃々「俳句や短歌は短いなかに多くを詰め込めるのがいいなって……
……楓さんはどんなのがお好きなんですか?」

楓「私は、色々ありますが、一番好きなのは漢詩ですね」

乃々「漢詩ですか……あんまり知らないですね……」

楓「漢文を勉強しないと、少し難しいかもしれませんね
でも読んでみると俳句や短歌と同じように意味がこもってますし、何よりリズムがいいんです」

乃々「リズム…ですか」

楓「『押韻』というのがありまして、平たくいうとラップみたいに音を合わせるものですね」

乃々「ラップですか……
……楓さんの好きな漢詩は何ですか…?」

楓「好きな漢詩、ですか…
李白の『春日醉起言志』、日本読みだと『春日 酔いより起きて 志を言う』とか好きですね」

―――――――――――――――――――――――――――――――
春日 酔いより起きて 志を言う

處世若大夢 胡爲勞其生
所以終日醉 頽然臥前楹
覺來盼庭前 一鳥花間鳴
借問此何時 春風語流鶯
感之欲歎息 對酒還自傾
浩歌待明月 曲盡已忘情

人生は大きな夢のようなものだ。
なにもあくせくすることはない。

そういうわけで、一日中飲んで酔っ払っている。
前の柱によりかかって、縁側で寝転がっている。

目が覚めて庭のほうを眺めると、
花の間に鳥が一羽鳴いている。

私は尋ねる。「ウグイスよ、今何時だい?」
ウグイスは春風の中、木々の間を飛び回り、しきりにさえずる。

その歌声に感じ入り、ため息が出る。
そこでまた杯を傾け、飲む。

大声で歌い、月がのぼるのを待っていると、
歌える曲も尽きてもうわけがわからなくなってしまった。
―――――――――――――――――――――――――――――――

楓「そう言えば今日漢詩集を持っていたので、お貸ししますよ」

乃々「いいんですか?」

楓「なかなかこういう仲間は見つかりませんから、
乃々ちゃんにも漢詩の魅力を知って欲しいんです」

乃々「…ありがとうございます
じゃあもりくぼも、この俳句集をお貸しします…」

楓「フフッ ありがとう」

楓「せっかくですし、乃々ちゃんの好きな俳句も聞かせてもらえますか?」

乃々「もりくぼは……」

――――――――――――

――――――――

――――

コンコン

楓P「入りますよー」

楓・乃々「「はーい」」

ガチャリ

乃々P「森久保!仲良くなれたか?」

乃々「あ……、はい、もう緊張はしてません
……目的を忘れてました」

楓「私も、盛り上がってしまいました」

楓P「それだけ仲良くなれたなら良かったです」

乃々P「じゃあ、いきますか」

楓「あら、もうそんな時間ですか」

乃々「……行くってどこへ……?」

楓「どこって…」

楓P「それは…」

乃々「このままラジオの収録だぞ森久保ォ!!」

乃々「…………え?え?」

三人(ニッコリ)

乃々「き、聞いてないんですけど!?」

乃々P「言ってないからな!」

乃々「どうして黙ってたんですけど!?」

乃々P「色々あって収録日が決定してから伝えられなくてだな…
急な仕事だと嫌がると思ったからとりあえず打ち合わせと伝えておいた」

乃々「騙されていたんですけど……
もう何も信じられない、机の下にこもるんですけど……」

乃々P「そうはさせんぞ森久保ォ!」ガシッ

乃々「あうぅ……逃げることも許されない、もりくぼは籠の中の鳥です……」

楓「まあまあ乃々ちゃん、一緒に頑張りましょう」

乃々「…………か、楓さんがそう言うなら……分かりました、よろしくお願いします……」

以上です
なんとか年内に投下できました
では良いお年を

あけましておめでとうございます

1本投下します

『七草粥』

乃々(もりくぼです)

乃々(今は楓さんと2回目のラジオ撮影を終えて、車で事務所に戻る途中です……)

乃々P「……しかし、新年から大忙しだな森久保!」

乃々「プロデューサーさんがたくさん仕事を入れるからじゃないですかね……
もっといたわってくれてもいいと思うんですけど……」

乃々P「それだけ森久保が人気ってことだからな!」

乃々「……それは、嬉しいかも、ですけど……でも、本当に疲れました……」

乃々P「まあ、本当に仕事が増えてきたからな、
嬉しい悲鳴だが…俺もちょっと疲れたし、何より腹が減った」グー

乃々「……今日は帰ってご飯食べて早く寝るんですけど……」

乃々P「風邪ひくといけないしな………
着いたぞー」

乃々(事務所への階段を登っていきます……)

乃々P「……なんかいい匂いがする?」

乃々「……もりくぼもそう思います…」

ガチャリ

凛「乃々、お疲れ様」

まゆ「乃々ちゃん、お疲れ様です」

輝子「オ、オツカレー……フヒ」

美玲「お疲れ様だぞ!」

卯月「乃々Pさんも、お疲れ様です!」

各P達「「お疲れ様です」」

乃々「お、お疲れ様です…」

乃々P「お疲れ様です」

卯月「乃々ちゃんと乃々Pさんもお粥食べます?」

乃々P「お粥……ですか?」

乃々「……あ、今日は…」

まゆ「七草粥ですよぉ…」

輝子「7日…だからな…」

乃々「そう言えばそうでしたね……、頂きます…」

乃々P「あ、俺も頂きます」

卯月「よそうのでちょっと待って下さいね」

乃々「大きい鍋ですね……こんなのありましたっけ……」

凛「朝、まゆが持ってきたんだよね?」

まゆ「はい…、いつも頑張るPさんや皆さんに、食べて貰おうと思って……」

卯月「はい、どうぞ!乃々ちゃん、乃々Pさん!」

乃々P「あ、どうも」

乃々「ありがとうございます……
いただきます」パク

乃々「………美味しいです」

乃々P「あったまるなあ」

卯月「それは良かったです!」

まゆ「みんなで作った甲斐がありましたね……」

――――――――

―――――

――

乃々「ごちそうさまでした……」

まゆ「お粗末さまでした」

乃々P「まだまだ食えるな……
……そういえば、何で1月7日に七草粥を食べるんだろうな」モグモグ

凛「それはみんな気になってさ」

美玲「さっきネットで調べたぞ!」

輝子「元々は……中国の習慣らしいな」

まゆ「『七草』は本来は秋の七草を指していて、春の七草は『七種(ななくさ)』と書いていたそうです」

卯月「他にも1月15日だったり、地域や時代で入れるものが違ったりと時代と共に変わってきたみたいですね」

乃々P「へぇー……」モグモグ

乃々「プロデューサーさん……、ほとんど聞いてなかったですよね……」

乃々P「いや、美味し過ぎて……すまん」モグモグ

他のP達「……………」モグモグ

凛「ひたすらに食べてるね…」


美玲「ところでノノと乃々Pは、七草全部言えるのか!?」

乃々P「……正直ひとつぐらいしか覚えてないな…
ナズナだっけ…?」モグモグ

乃々「せり、なずな、ごぎょう、はこべら、ほとけのざ、すずな、すずしろ、ですよね……」

美玲「せ、正解だぞっ!」

乃々「どうもです……」

乃々「でも、どうして突然…?」

輝子「み、美玲ちゃん……、六つしか言えなかったからな…みんなに聞いて回ってるんだ……フフ」

美玲「う、うるさいなァッ!///
乃々Pには勝ってたし!」

まゆ「ごぎょうがでてこなかったんですよねぇ……」

美玲「も、もう言えるモンッ!///」

皆(かわいい)

乃々「ま、まあまあ……
……あ、ところで、今の七草って誰が決めたか知ってますか……?」

輝子「誰……?」

まゆ「誰なんですか…?」

卯月「あ、でも確か……」

凛「さっき調べた時に見た気がする……」

美玲「…………思い出した!」

輝子「だ、誰なんだ?」

美玲「よつじよしなりみたいな名前だろ!」

乃々「四辻善成(よつつじ よしなり)ですね…」

まゆ「よく覚えてましたね…」

美玲「よしッ!」

乃々「正確には、決めた、ではなく、書いた、なんですけど……」

乃々「彼の『河海抄(かかいしょう)』という本の『芹、なづな、御行、はくべら、仏座、すずな、すずしろ、これぞ七種』というのが、最も古い記述だと言われています…」

卯月「へぇ……」

凛「河海抄って、源氏物語の本だっけ」

乃々「源氏物語の注釈書ですね……
読んだことは無いですけど……」

まゆ「行事ごとには、深い歴史があるものですね……」

卯月「だからこそ大切にしないといけませんね!」

輝子「そうだな…」

美玲「そうだなッ!!」

凛(正解できたからか、機嫌が凄くいいね……)

P達(まだあと3杯はいけるな……)モグモグ

以上です

不定期になりそうなので1度HTML化して続きは1本ごとにスレを建てようと思っています

では依頼出してきます

これはきのこに載るよ
僕が保証する

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