藤原肇「佐藤さん、佐藤さん」 佐藤心「はぁとって呼べよ☆」 (18)

肇(アイドルになって、東京に出てきて感じたこと)

肇(それは……私には、オシャレに関する知識と経験が足りないということ)

肇(もちろん、最近は自分でもいろいろと勉強しているつもりだけど……)


「どう、この服? 新しく買ったんだけど、似合うでしょ」

「確かにキミによく合っているけれど……この時期に肩出しは寒くないかな」

「ちょっとくらいいいのよ。オシャレは我慢しなきゃできないんだから!」

「理解らなくもないけど、ボクはストールを手放せないかな……」


肇(年下の子たちが、私よりもずっとファッションに精通していそうな光景を見てしまうと、まだまだ頑張らないと、と思ってしまう)

肇(でも、独学には限界があるし……本格的にやるなら、誰かにアドバイスしてもらったほうがいいのかも)

肇「陶芸だって、最初はおじいちゃんに手取り足取りなんでも教えてもらっていたわけだし」

肇「誰にお願いしようかな。ファッションに詳しくて、頼れそうな強い人………」キョロキョロ


心「見て見てプロデューサー! また衣装自作して来ちゃった♪」

P「うわあ……相変わらずクオリティ高いですね」

心「でしょでしょ? じゃあ今度なんかのイベントで使おうよ!」

P「んー……わかりました。考えておきます」

心「やった☆ さっすがはぁとのプロデューサー☆」


肇「………」

肇「なるほど……よし」



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肇「というわけで、佐藤さんにオシャレについて教わろうかと」

心「………」

肇「………? 佐藤さん?」

心「………」

心「………」ブワッ

肇「え!? ちょっと、なんで泣いてるんですか!?」

心「ご、ごめん……えぐっ……JKにファッションで頼ってもらったの、初めてで……うぅ」シクシク

心「今までたいがい『うーん……』って目で敬遠されてたから、うれしくて……ぐずっぐずっ」

肇「は、はあ……それにしても、ここまで泣く必要はないような」

心「はぁと、実は涙腺緩いの」

肇「初めて知りました……」

心「頬つねったら涙出るよ? 試してみる?」

肇「いえ、べつに」

心「試してみれ?」

肇「されたいんですか?」


心「でもさ、ホントにはぁとでいいの? 見ればわかるけど、結構人を選ぶファッションだよ?」

肇「それはそうかもしれませんが……佐藤さん、ファッションそのものに詳しそうなので。私の服を考えるときは、私に合うように選んでくれるんじゃないかと」

肇「オリジナリティは、土台がしっかりしているからこそ成り立つものだと思っています。うつわを作るときと同じです」

肇「だから、佐藤さんもそうなのかなって」

心「肇ちゃん……キミ、いい子だね」

肇「ふふ、思ったことを言っただけですよ」

心「よーし、そこまで言われちゃ頑張らないわけにもいかないな♪ はぁとに任せとけ☆」

肇「よろしくお願いします! 佐藤さん」

心「はぁとって呼んでいいぞ☆ なんか他人行儀だし♪」

肇「これから先生になる人なので、敬意と適度な距離感をもって接します。だから、佐藤さんでお願いします!」

心「け、敬意……もう~~、はぁとって呼べよ~、よーべーよー♪」ニヤニヤ

肇「なんだかとてもうれしそうですね」


心「それで、どんな感じのオシャレがしたいの?」

肇「ええとですね」

心「そんなにかしこまる必要ないから、思ったこと言ってくれたらいいんだよ♪」

肇「は、はい! では」

心「うんうん♪」

肇「ナウでヤングなじぇーけーにしてください!」

心「その表現の時点でナウでヤングじゃないぞ……」

肇「え? でも、うちのおじいちゃんがそう言っていて」

心「おじいちゃん時代に取り残されてない?」

肇「いまだに携帯も持ってませんから……」

心「それ、さすがに不便じゃない? 肇ちゃん買ってあげたら?」

肇「そうですね……ちょうどそろそろ、誕生日だし」

心「お、じゃあ誕生日プレゼントそれで決まりだね☆ アイドル活動で稼いでるぶん、奮発しちゃえ☆」

肇「……はい!」

心「じゃあ、善は急げってことで! 機種だけでも見に行こっか♪」

肇「私もそれほど詳しいわけではないので、よろしくお願いします」

携帯ショップ店内


心「肇ちゃんのおじいちゃん、目はいいの?」

肇「あ、はい。身体は丈夫な人ですから」

心「へえ、そうなんだ」

肇「むしろ最近、どんどん元気になってきているみたい……今度東京のライブに来るんだって張り切ってました」

心「元気の源は、かわいい孫娘なんじゃないのー?」

肇「そうだといいですけどね」フフ

心「そんなおじいちゃんにぴったり合ったケータイを探さないとね♪」

肇「私も頑張ります」


心「………」

肇「………」

心「ところで、何か忘れてる気がするんだけど」

肇「確かに……」

「アタシのケータイなんだから、セクシーでかわいいやつにしないとね!」

「携帯でセクシーとはいったい……そもそも、なぜボクがキミのスマホ選びに付き合っているんだろう」




心「………」

心「ま、いっか♪」

肇「携帯、探しましょう」



肇(結局、私たちが一番最初の目的を思い出したのは一時間後のことでした)

心「というわけで、ようやく思い出した肇ちゃんオシャレ計画について」

肇「はい」

心「まずはじめに言っておく!」

肇「はい!」

心「肇だけに!」

肇「………」

心「オシャレは我慢だぞ☆」

肇(まるで凍った空気をなかったかのように流してきた……)

肇「オシャレは我慢、とは」

心「たとえば今日のはぁと! 肩出してるでしょ、寒いのに」

肇「あ、はい。12月に入ってそれは寒くないのかなって思っていたんです」

心「ぶっちゃけ外に出ると寒い☆」

肇「やっぱり……」

心「でもでも、自分を魅せるためには必要だと思えば、そんなに痛くもないんだよ?」

肇「自分を、魅せる?」

心「そう♪ 魅力的な自分を見せていくの♪」

心「だから、オシャレっていうのは忍び耐えるものなのだ☆」

肇「なるほど……少し、考えてみます」

心「がんばれ☆」



翌日


心「う~、さぶさぶっ」

心「急に大寒波が来るんだもんなあ、参っちゃう♪」

心「さすがに今日は肩出しなんてできないできない――」


ガチャリ


肇「お、おおおおはようございまままますすす」ガタガタブルブル

心「めっちゃ露出してる子いたーー!?」

肇「ど、どどどうですか佐藤さん、すすすこしはおしゃれにににに」

心「あー、バカバカ! 純粋! とりあえずはぁと自前のどてら着とけ!」





肇「あったかいです……」

心「あったかいどてらにあったかいお茶、これで大丈夫でしょ♪」

肇「すみません……融通がきかなくて」

心「まあまあ、それだけ肇ちゃんがまっすぐってことでいいじゃん♪」

肇「ありがとうございます」ズズズ

心「そういえばさ、その湯呑って肇ちゃんが選んだんだっけ?」

肇「あ、はい。先日、Pさんと一緒に出かけたときに買ってきたんです」

心「ふーん。どうりでいいセンスしてると思った♪」

肇「まあ、陶器の目利きはそれなりに」

心「おー♪」

この時期に肩出しは冷えるだろうに

心「……ところで、今気づいたんだけど」

肇「はい?」

心「湯のみと湯あみって、似てると思わない?」

肇「………はい?」




その日の夜


心「は~~、いい湯だいい湯だ♪」

肇「よくわからない流れでしたけど、佐藤さんと一緒にお風呂に入るのは新鮮でいいですね」

心「でしょ? ていうか、お互い寮にいるのに今まで一緒したことなかったのがおかしかったのかもねー」

肇「かもですね。ふふっ」

心「せっかくだし、いろいろおしゃべりでもしちゃおうか♪」

肇「いいですよ。何をお話ししましょうか」

心「肇ちゃんがプロデューサーをどう思っているか! ラブ的な意味で!」

肇「え、ええっ!?」

心「実際どうなの? はぁと的には、結構ぐいぐいいってるイメージあるんだけど」

肇「い、いえいえ! 決してそんなことは……たぶん……おそらく」

肇「もちろん、頼りにしていますし、人間的にも素晴らしい人だと思っていますし、できればあの人のことはたくさん知りたいし、私のことをたくさん知ってほしいのは確かですけど」

肇「だから、えっと、その……ぶくぶく」カアァ

心「赤くなっちゃってかわいい♪」

肇「これは湯気のせいです!」

肇「わ、私の話はこれで終わりです。そういう佐藤さんはどうなんですか」

心「はぁとがプロデューサーをどう思っているかってこと?」

肇「はい!」

心「んーとね……」

肇「………」

心「秘密☆」

肇「………」

肇「ずるい」プクー

心「オトナはずるいんだぞ☆」

肇「むー」プクプクー

心「あはは♪ 肇ちゃんホントにかわいいなあ」

心「ちょっと羨ましいぞ」

肇「羨ましいって……佐藤さんのほうが、かわいい路線で進めていると思いますけど」

心「あー、そういうんじゃなくてさ。なんていうか、ほら。自然体のかわいさってやつ?」

心「肇ちゃんにはそれがあるんだよね。昨日今日、一緒にいてわかった」

肇「そうなんですか?」

心「そうそう♪ その点、はぁとはいろいろキャラ作りまくってるからなー」

心「そういう天然産は、なんだかまぶしく映るときがあるんだよね……」

肇「………」

肇「私は、そういったことはよくわかりません。でも、はっきり言えることがあります」

肇「佐藤さんは、強いアイドルです」

心「え?」

肇「フリフリの衣装を着ても、白無垢を着ても、チェーンソーを握っても。あなたは変わらずシュガーハートでしたから」

肇「何をしても、変わらない……とても強くて硬いうつわ。それが、佐藤さんだと思うんです」

心「………」

肇「す、すみません。生意気ですよね、十歳も年下なのに」

心「年齢の話はやめろ☆」

肇「あ、はい」

心「……ふふっ。強くて硬いうつわ、か♪」

心「サンキュ☆ いい褒め言葉もらった!」

肇「そ、そうですか?」

心「うんうん♪ はぁともいい意味で開き直ってるからさ」ザパァン

心「こうなったら、どこまでいってもシュガーハートで通してやるぞー!」

肇「………」

肇(勢いよく湯船から出て、仁王立ちで高らかに宣言する佐藤さん)

肇(……強い人だなって、そう思った)


肇「あと、大きい……胸とか、いろいろ」ボソリ

心「肇ちゃんもお尻はなかなか大きいぞ♪」

肇「!?」カアァ

翌朝


肇「今日も寒いな……さすがに学習して、暖かい服装で来たけど」

肇「………」

肇「かわいい、か」

肇「………」

肇「シュガーハジメ……」

肇「は、ハジーティー☆ なんちゃって」

肇「さすがに恥ずかしい……こんなの、誰かの前じゃできないかな――」


P「………お、おはよう。肇」

肇「………」

肇「P、さん?」

心「はぁともいるぞ☆」

肇「あ、あわあわわ。その、今の聞いて」

P「……まあ、不可抗力で」

肇「………」

肇「……う、うわああ」ボンッ

心「今日も一日ハジーティー☆」

肇「心さん!!」

心「わ、名前で呼んでもらえた」



おしまい

おわりです。お付き合いいただきありがとうございます
肇ちゃんは書くのがなかなか難しいと感じました

過去作
速水奏「小松菜伊吹」
橘ありす「雪ですね」 佐城雪美「呼んだ……?」

などもよろしくお願いします

おつ

ハラミ奏と小松菜伊吹ってあなただったのか
言われれば確かにそうかも
乙です


しゅがはさんかわいいよしゅがはさん

おつ
肇ちゃんすき

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