京太郎「ムロもコーヒー?」 ムロ「はい」 (52)
咲-saki-のSSです
ムロたんイェイ~♪
でも内容は誕生日と関係ないよう
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清澄高校 麻雀部部室
優希「ふわぁぁ……」
咲「おっきいあくび」
和「ゆーき、シャキッとしてください」
優希「あうぅ、今日は天気で過ごしやすくて、眠気マックスなんだじぇ……」
咲「そうだねぇ」
京太郎「それにしても、最近ますますグータラじゃないか?」
優希「んー、主要な公式大会もひととおり終わったし、今の私はまったりモードなんだ」グデー
咲「このあとって春季大会くらいだから、ずいぶん先だもんね」
京太郎「モチベーションが保たないってことか」
優希「そゆことだじぇ」
和「それとこれと、ダラけるのは話が違います。そんな調子では後輩に示しがつきませんよ」
優希「へーい」
咲「あ、今日来るんだっけ」
和「はい。マホちゃんの方は麻雀教室があるようですが」
コンコン
京太郎「おっ、噂をすれば」
「失礼します」
ガチャ
ムロ「こんにちわー」
咲「いらっしゃい、ムロちゃん」
京太郎「うぃーっす」
ムロ「すみません、今日はマホいないんですよ」
和「はい、聞いてます」
ムロ「そうでしたか。あれ? 今日は人すくないですね」
和「染谷部長は進路ガイダンスだそうで」
ムロ「へぇ、今の時期から」
京太郎「ちなみに、そこのベッドになんかいるぜ」
ムロ「んん?」
モゾモゾ
優希「ぃようムロ、よく来たな」
ムロ「おはようございます。おやすみ中でしたか、優希先輩」
優希「おや、マホはいないのかー?」
和「ですから今日は麻雀教室だって、さっきから言ってるじゃないですか。もう!」
咲「あはは……」
京太郎「まだ寝ぼけてるなコイツ」
優希「くあぁぁ……」
咲「ふわぁ……あ、うつっちゃった」
京太郎「ふあぁ……っと、オレも」
ムロ「今日、いい天気ですから。小春日和ってやつですね」
和「……っ」ムズ
優希「お、のどちゃんもか?」
和「いえ……私は……」
優希「我慢しても無駄無駄! さぁ、観念してあくび顔を見せつけるがいいじょ」
和「だ、誰が……あ、あっ」
サッ
エトペン「ふわぁぁ」
優希「エトペンガードずるいな」
咲「ペンギンの鳴き声って、こんなかんじなのかな?」
優希「私のイメージだと、クエックエッかな」
ムロ「それはキョロちゃんの鳴き声じゃ……」
京太郎「眠気覚ましにお茶でも淹れるか。飲む人ー? ……全員挙手っと」
ムロ「あっ、私もお手伝いします」
京太郎「お客さんなんだから、座っててもいいのに」
ムロ「いえいえ。先輩だけにやらせるわけにはいきませんよ」
京太郎「サンキュ。それじゃあ、お湯沸かしといてくれ」
ムロ「はい」
京太郎「オレは……コーヒーにしようかな」
ムロ「ミルクと砂糖は?」
京太郎「んー、ナシでいいや」
ムロ「おお、オトナですね」
京太郎「そうか?」
ムロ「ブラック飲めるって、なんかすごいじゃないですか。苦くありません?」
京太郎「そりゃあ苦いよ。でも、慣れてくると苦味以外の味がわかってきて、美味しく思えるぞ」
ムロ「どうやったら飲めるようになるんですか?」
京太郎「そうだなぁ……オレの場合、眠気覚ましに我慢して飲んでたら、だんだん飲めるようになったな」
ムロ「我慢してたんですか」
京太郎「いきなりブラック飲んで美味いっていう人なんて、まずいないと思う」
ムロ「それもそうですね」
ムロ「私も……飲んでみよっかなぁ」
京太郎「無理するなよ?」
ムロ「えー、だってカッコイイじゃないですか」
京太郎「どうしてもっていうなら止めないけど」
ムロ「はい。じゃあ紅茶3、コーヒー2、はいりまーす」
ムロ「お待たせしました」カチャッ
京太郎「ほらよーって、なに読んでんの?」
優希「麻雀ガールズ」
京太郎「なんか面白い記事でもあった?」
咲「来年度の注目選手特集みたいなのやってる」
和「2年生を中心にピックアップされているようですね。ありがとうございます」
咲「うわ、二人してコーヒー飲んでる」
優希「かっこつけだじぇ」
京太郎「自分が飲めないからって、ひがむなよ」
優希「なんだと!?」
ムロ「私はかっこつけですけど」
和「大丈夫ですか?」
ムロ「カフェオレとかは飲めるんで、これで体調崩すとかはないと思います。たぶん」
咲「夜に眠れなくなっちゃうかもね」
京太郎「大丈夫だろ。一杯くらい」
ムロ「では……いただきます」
ズズッ
ムロ「…………」
優希「どんなカンジ……いや、その表情を見ればわかるじぇ」
和「ムロにはまだ早かったみたいですね」
ムロ「…………」プルプル
京太郎「荒川憩、神代小蒔、雀明華……やっぱこのへんがトップか」ペラッ
咲「個人戦でも大活躍だったよ」
京太郎「それと新道寺の鶴田姫子に、多治比真佑子……」
咲「あ、阿知賀の先鋒さんも載ってる」
和「玄さんですか」
京太郎「染谷部長は?」
和「うーん、見当たりません……」
優希「団体戦優勝チームのメンバーだというのに」
咲「きっと、個人戦で活躍した人たちにスポットが当てられてるんじゃない?」
和「なるほど。では、来年は染谷部長も載ってるかもしれませんね」
まこ「いやぁ、どうじゃろ?」
和「噂をすれば。お疲れ様です」
優希「お疲れ様です!」
ムロ「ども。お邪魔してます」
まこ「おう、よう来たのう」
ムロ「紅茶とコーヒーありますけど、どうします?」
まこ「ほんじゃ、紅茶でたのむわ」
和「進路ガイダンスどうでした?」
まこ「簡潔に言うて、進路についての説明の説明かの」
優希「どゆことだじぇ?」
まこ「3年になったらどういう風に指導するかっちゅう話じゃったわ」
まこ「大半がまだ進学か就職か決まっとらんけぇの」
咲「染谷部長は決まってるんですか?」
優希「roof-topがあるじぇ」
まこ「それもええんじゃが、実家に落ち着くには早い気もするんよ。まぁ。考え中ってことで」
まこ「上の大学目指しとるやつなんか、もう受験に向けて対策しとるけぇ。あんたらも早めに決めといた方がええよ」
和「そうですね」
優希「のどちゃんは将来、弁護士か検事でも目指すのか?」
和「いえ、それはありません」
和「両親からも絶対にやめておけと言われてますし」
咲「そうなんだ。大変そうだもんね」
和「本当にそう思います。咲さんは、なにか考えてますか?」
咲「うーん、まだ漠然としか考えてないんだけど」
咲「プロ行きもいいかなーって……ちょっとだけ」
優希「いいと思うじぇ」
和「アリですね」
京太郎「いいんじゃねーの」
咲「……あ、あれ?」
まこ「どしたん」
咲「予想してたよりも、みんなの反応が……」
京太郎「もしかして、反対されると思ってた?」
咲「う、うん」
和「そんなわけないじゃないですか」
優希「咲ちゃんの実力ならプロでも通用するじぇ!」
咲「そうかな」
ムロ「私も全然イケると思いますよ。はい、染谷先輩どうぞ」
まこ「ありがとさん。咲はもっと自信持ってええと思うぞ」
京太郎「実際、もう話くらい来てんだろ?」
咲「うん。でも、ちゃんとやっていけるか心配で……」
和「咲さんならきっと大丈夫です」
優希「実力さえあれば、アラサー実家暮らしで休日はジャージでゴロゴロできるしな!」
和「小鍛治プロに失礼ですよ」
まこ「名指しせんといてやれ……」
咲「私の特技って麻雀くらいしかないし。もちろんプロになるために頑張るけど」
京太郎「それ以外はポンコツだからなぁ」
優希「すぐ迷子になるし」
咲「うぅっ、言い返せない始末だし……」
まこ「不安要素は多いが、そこは徐々になおしてくしかないのう」
咲「ですよね。それさえなんとかすれば、」
和「しかし、プロになれば解説のお仕事もあるかもしれませんよ」
咲「えっ」
優希「宮永咲プロ、注目選手についてなにか一言!」
咲「―――」
まこ「固まっちょる」
京太郎「ダメだこりゃ」
まこ「これにくらべたら、野依プロでもまだ喋っとるほうじゃ」
和「基本単語ですけどね」
ムロ「はぁ……でも、すごいですね。もう具体的に将来のこと決めてるなんて」
京太郎「コイツの場合は例外みたいなもんだけどな」
まこ「早いうちから決めるんもええけど、選択肢を広げるのも大事じゃ」
まこ「それに、あんましゴールが遠くてもダレるしのう」
京太郎「ダレますか」
まこ「おう、高2の時期なんざ特にな。長い夏休みみたいなもんじゃ」
優希「ホントに毎日が休日だったらいいのに」
和「ちゃんと授業と部活に出て宿題も提出したら、好きなだけ休んでもいいですよ」
優希「それじゃ平日と変わんないじぇ!?」
まこ「夏休みの宿題も進路も、ほったらかすと後で大変じゃぞ?」
京太郎「そうですね。オレも考えとかないと」
ムロ(……将来かぁ)
高遠原中学校
ムロ「ミカは新道寺にいくんだよね」
ミカ「なにとつぜん」
ムロ「受験勉強の調子はどう?」
ミカ「計画的に進めてるつもりだけど、余裕があるとは言えないかな。どうしたの?」
ムロ「んー? いや、そんな時期だなって。おもっただけ」
ミカ「ムロだって受験生じゃん」
ムロ「そうなんだけどね」
ムロ「ちょっと、このままでいいのかなって最近、考えるようになったんだ」
ミカ「もしかして、清澄以外の学校に進むとか?」
ムロ「ちがうちがう。ただ……自分の将来について無計画ではあるまいかと」
ミカ「べつに、私もそんな先の事まで考えてるわけじゃないよ?」
ミカ「てか、今は目の前の受験でいっぱいいっぱいだし」
ムロ「そっか」
ムロ「でもミカは、わざわざ県外の学校を目指して勉強してるわけでしょ?」
ムロ「それにくらべて、私はコレといった動機もなく近場の学校ですまそうとしてる」
ミカ「和先輩や優希先輩がいるじゃない。それだって立派な志望動機だよ」
ムロ「うん。そうなんだけど……」
ミカ「だけど?」
ムロ「そういうのって、なんていうか普通じゃない?」
ミカ「まぁ、大多数がそうだと思う。無難な選択かな」
ムロ「だから……なんか、そこに自分の意志がない気がして……」
ムロ「こういう大事なことで、よく考えないで決めちゃうのはよくないと思う」
ミカ「気持ちは分からなくもないけど」
ムロ「自分の行き先なのに、自分で決めないで周囲に流されてる気がするんだ」
ムロ「清澄に不満があるわけじゃないし、他に選択肢も思いつかないけど」
ムロ「選んだ理由にイマイチ自信が持てないっていうか」
ミカ「……不安になっちゃった?」
ムロ「そう、だね……」
糞ss
なぜ書いたのか
ムロ「私、こういう風に自分のこと考えるの、はじめてかもしれない」
ミカ「そういう時期なんだよ。私たち」
数日後 清澄高校麻雀部部室
和「ロン。7700です」
ムロ「はい」
チャラ
ムロ「はぁ……」
和「?」
ムロ(なにかしなくちゃと思って、なにかに急かされてるかんじ)
ムロ(この頃、勉強に集中できてないし、こうやって麻雀にまで影響が出ちゃってる)
ムロ(失礼だよね。せっかくお邪魔してるのに……ダメだな、私)
ムロ「はぁ……」
久「どうしたのかしら、ムロちゃん」
マホ「最近、ずっとあんな感じなんです」
咲「なにか、考え事でもあるのかな?」
優希「おーいムロ、生きてるかー?」
ムロ「そうですね」
優希「なんか困ったことでもあったのか?」
ムロ「そうですね」
優希「と、見せかけて実は何もなかったりして」
ムロ「そうですね」
優希「……紅茶でも飲んでティーブレイクしたらいいじぇ」カチャ
ムロ「そうですね」
ゴク
ムロ「ふぅ」
ムロ「……って、うわ苦っ!?」
優希「おはようムロ」
京太郎(オレのコーヒー……)
ムロ「えぅぅ……な、なんなんですか、いったい」
和「それはこっちが聞きたいです」
ムロ「え?」
久「どうしたの? なんだか心ここにあらずって感じだけど」
まこ「悩んどるようじゃったが。よかったら話くらい聞くけぇ、言ってみんさい」
ムロ「あぁ……すみません。実は、進路の事で悩んでいて……」
マホ「えぇ!?」
咲「もしかして、ここ以外の学校を……」
ムロ「いえ、そういうのじゃないです」
優希「じゃあ、どういうのなんだじぇ!?」
京太郎「進路って……もしかして、この前の」
まこ「ああ。そういやそんなこと話しとったのう」
久「なになに? なんの話?」
まこ「こないだ、2年生の進路ガイダンスがあっての」
京太郎「部でもちょっと進路の話題になったんですよ。主に、咲のプロ行きについてですけど」
久「あら、ついに決心したの」
咲「決心ってほどでもないですけど、前向きに」
ムロ「それで、自分の将来について考えるようになったんですけど……」
久「迷っちゃったわけね」
京太郎「竹井先輩は地元の大学に進学でしたっけ」
久「そうよ」
和「ちなみに、学部はどこを受けるつもりなんですか?」
久「第一志望は教育学部ね」
和「ということは、教員を目指してるんですか」
咲「学校の先生かぁ」
優希「おお、なんかイメージにぴったりだじぇ!」
久「ありがとう。でも、教職に就くつもりはないのよ」
ムロ「じゃあ、どうして?」
久「人にものを教えたり指導したりするのは好きだし、得意だっていう自負もあるわ」
久「そういう知識や技術を学ぶために進学するわけなんだけど」
久「かならずしも、教員だけがそのスキルを生かしてるわけじゃないでしょ?」
久「きっと他の職業でも役立つだろうしね」
京太郎「大学出てからのことは、まだ?」
久「それはその時の私が決めるわ」
まこ「先は長いけぇの」
久「もしかしたら、学校の先生もわるくないって考えてるかもね」
久「参考になったかしら? ムロちゃん」
ムロ「はい。そんな考え方もあるんだなーって」
まこ「プロ行きよりは現実的じゃしのう」
咲「ゴメンね、参考にならなくて……」
ムロ「い、いえ。貴重なご意見ありがとうございます」
久「それじゃあ、次はムロちゃんの話を聞かせてもらおうかしら」
ムロ「私ですか? でも私は……」
久「最近の、気になったことや不安に思ってることを聞かせてほしいの」
ムロ「は、はい。実は―――」
久「―――なるほど。つまり、自分の選択に自信が持てないと」
優希「べつに問題が無いんだったらいいんじゃないのか? なるようになるじぇ」
和「それとはまた別なんだと思いますよ。問題が無いのが問題というか……」
京太郎「上手くいかなかったら、あの時ちゃんと考えてればって後悔しちゃうかもな」
ムロ「そうなんです」
ムロ「清澄に通うようになってから、マホの世話も減って自分の時間ができたけど」
ムロ「周りは受験勉強とか頑張ったりしてるのに、自分はそういう事してないし……」
久「まるで育児から解放された主婦みたいな悩みね」
マホ「育児……」
まこ「ほんで、どうするつもりじゃ?」
久「ひとつ考えがあるわ」
まこ「さすがじゃのう」
久「それをするには、まこの協力が必要なんだけど」
まこ「わしにできる事ならなんでも。後輩のために努力は惜しまんよ」
久「さすがね。じゃあ……」
次の日 roof-top
京太郎「で、これがムロの悩みを解決する策ですか」
久「そうよ」
ムロ「い、いらっしゃいませー」シャランラー
京太郎「喫茶店に仲居さんがいるんですけど」
マホ「わぁ、着物似合ってます!」
久「心配しなくても、ちゃんとメイドもいるわよ」
咲「またこの格好……」
和「こちらの席へどうぞ、ご主人様」
京太郎「ちゃんとってなんですか。べつに心配も所望もしてないですけど」
久「あら、こういうのお嫌いかしら?」
京太郎「全然嫌いじゃないです」
優希「言ってくれれば私もコスプレしたのに」
久「優希までコスプレしちゃうと、下手したらお客よりメイドのほうが多くなっちゃうからね」
まこ「そげな心配はいらん。あとコスプレじゃのうて、あくまで制服じゃ」
マホ「そこは譲れないんですね」
京太郎「でも、本当にコレ効果あるんですか?」
久「なにもしないで考え込むよりマシでしょ」
京太郎「まあ、身体を動かすと思考が前向きになるって聞いたことありますけど」
久「今回のミッションの勝利条件は、いったいなんだと思う?」
優希「バイトすることで、進路の参考になる?」
久「惜しい! そもそもムロちゃんは進路で悩んでるわけじゃないわ」
マホ「それじゃあ、えっと……」
京太郎「具体的な問題があるわけじゃないんだよな」
京太郎「なんていうか、自分に自信を持てないでいる」
久「正解(エサクタ)!」
久「今回の目的は、ムロちゃんに自信をつけさせることよ」
マホ「それがどうして仲居さんなんですか?」
久「服装に関してはまこの趣味ね。大事なのは、なんでもいいから仕事を達成すること」
優希「それだけ?」
久「ええ。自信をつけるには、すこしづつ成功体験を重ねるのがポイントよ」
京太郎「すこしづつ?」
久「あんまり強烈のだと、酔いやすいのよね」
マホ「なるほどー」
優希「教育学部めざしてるだけあって、さすがですね!」
久「聞きかじった程度の知識だけどね。これで上手くいくといいんだけど」
ムロ「お、おまたせしました。ご注文のレモンティーと、洋なしのタルトです」
常連「ありがとう。新人かい?」
ムロ「あ、はい」
常連「若いねぇ。がんばりなよ」
ムロ「はい、ありがとうございます!」
久「なに? タルトなんて、そんなのあったの?」
まこ「期間限定商品。今日の仕入れ分はあれで最後じゃ」
久「くっ……そういうのは先に言ってよぉ」
まこ「言うたら、お客さんに出すぶん減るじゃろ」
常連「ちょっと打ちたいんだけど、いいかい?」
まこ「どうぞー。今日はきれいどころ揃ってますよ」
まこ「ムロ、あっちのお客さんにアツシボ持ってっとくれ」
ムロ「はい」
まこ「あと、これ読んどき」
ムロ「これって……この店のハウスルール?」
まこ「公式大会のとはまたちょっと違うけぇ、要注意じゃ」
ムロ「私も卓に入るんですか?」
まこ「モチのロン。ま、うちはノーレートじゃけぇ気軽にな。ただし真面目に打つこと」
ムロ「わかりました。やってみます!」
ムロ(先輩方や部のみんな以外と打つのはあんまり経験ないけど)
ムロ(とにかく、ミスのないようにがんばらないと!)
マホ「マホ、おなか空いてきちゃいました」
優希「それならなんか注文するといいじぇ。なに食べる? タコスはないけど」
マホ「どれにしようか悩んじゃいます。うーん……」
久「ちょっとカタイけど、なかなかサマになってるわね、ムロちゃん」
京太郎「そうですね。部活でも、よくお茶淹れるの手伝ってくれますし」
久「須賀君のお墨付きなら大丈夫ね」
京太郎「そりゃどうもです」
和「ご注文は?」
マホ「マホは、えっと、パンケーキください」
優希「のどちゃんのおっぱいみるく」
和「そんなものありませんっ!」
京太郎「すみません、竹井先輩は引退したのにお世話になってしまって」
久「気にしないで。後輩の面倒を見るのは先輩のつとめだもの」
京太郎「オレも、なんか上手いことアドバイスできたらよかったんですけど」
久「上手くなくてもアドバイスしたら? きっと、このあともまだまだ悩みはつづくわ」
久「その時、私はもう居なくなってるから、これからはあなたが後輩を助けてあげなさい」
京太郎「竹井先輩……わかりました。まかせてください」
咲「ありがとうございましたー」
和「ピーク過ぎたみたいですね」
まこ「そうじゃのう。よし、もう上がってええよ、ご苦労さん」
ムロ「お、お疲れさまでした……」
まこ「どうじゃ? はじめてのバイトは」
ムロ「緊張しました。緊張して疲れました」
咲「そうだよね、接客って緊張しちゃう。何度やっても慣れないよ」
和「私は楽しくなってきました」
マホ「先輩たちスゴイです。マホもあんな風にテキパキやってみたいです!」
優希「マホはその、無理しない程度にな……」
ムロ「どうでした? ちゃんとやれてました?」
まこ「ん、上出来じゃ。代打ちもできとったし、勝ちすぎのうてええわ」
ムロ「それは……いいのかな? ちょっと複雑です」
まこ「咲と和にくらべたらの。言うてもウチの客層はけっこうレベル高いけぇ」
久「靖子とも打ってるような人たちだし、そこは胸張ってもいいわよ」
ムロ「ありがとうございます」
まこ「ほれ、お待ちかね。今日のぶんの給料じゃ」ドンッ
ムロ「うわわっ、こんなに」
まこ「ウチの一番人気メニュー、藤田プロも絶賛のカツ丼(大盛り)じゃ!」
ムロ「い、いただきます……食べきれるかなぁ?」
久「今日はご苦労さま。すこしは気が晴れたかしら」
ムロ「……そうですね」
ムロ「お手伝いしてみて、はじめて接客のお仕事したり」
ムロ「代打ちで知らない人と打ったりして、不安もあったけど……」
ムロ「やってみたら、意外となんとかなりました」
久「案ずるより産むがやすしってやつね」
優希「ムロはやればできる子なんだじぇ!」
和「これからは、自らを省みるようにしたほうがいいですよ」
まこ「そうじゃのう。自分を俯瞰して見れれば、自己分析もはかどるけぇ」
久「敵を知り己を知れば百戦危うからずってやつね」
まこ「咲のプロ行きの話、聞いとったじゃろう? ポンコツなとこは確かに心配じゃが……」
咲「うぅ……」
まこ「それでも咲には、麻雀っちゅう得意分野がある。誰でもこういう長所短所がある」
まこ「アンタにもな」
ムロ「私にも……」
久「今はまだ見つからなくて、ピンときてないだけ。きっとすぐ見つかるわ」
ムロ「そういうものなんでしょうか」
久「そういうものよ。上手くいく時はスルスルーっていっちゃうんだから」
まこ「そういう時もあるのう」
久「上手くいかない時は、じっと待ってるのがいいわ。んー、2年くらい?」
優希「果報は寝て待てってやつだじぇ」
京太郎「寝すぎだから」
咲「それは竹井先輩だから上手くいったんじゃ……」
久「オススメしないわ!」ドヤァ
まこ「されてもせんわ」
和「世の中にはいろんな人がいるっていう話です」
ムロ「な、なるほど……」
咲「来年はマホちゃんも受験生だね」
マホ「そうなんです。大変です」
ムロ「最上級生なんだから、しっかりしないとね」
マホ「はい! マホがんばります!」
ムロ「たしか、マホが小6の時も同じこと言ってた気がするな」
マホ「……ジャメヴです」
高遠原中学校 放課後
マホ「それじゃあ、いってきます!」
ムロ「うん。車に気を付けて、いってらっしゃい」
マホ「はい!」
ムロ「学校が終わってマホは麻雀教室へ。清澄は、今週は試験期間中で午前終わり」
ムロ「さて、私はどうしよう?」
ムロ(本来ならば、まっすぐ帰宅して机に向かい、参考書を広げるべきなのだが)
ムロ(あいにく、実に4日ぶりの快晴。雲ひとつない秋晴れの空がそれを許してはくれなかった)
ムロ(このまま家路を辿るにはもったいない。すこし寄り道でもしよう)
ムロ(この空の下、ただ歩いてるだけでも気持ちがいい。理由なんてそれだけで十分だ)
ムロ(などと文学的いいわけを心の中でしつつ、私は駅前にある商店街へとくりだす)
ムロ(そこで見た、意外な人物の正体とは……!?)
京太郎「よっ、ムロ。奇遇だな」
ムロ「こんにちわ、須賀先輩……なにしてるんです?」
京太郎「今日は学校早上がりだったんだよ。それで、いい天気だし散策してた」
ムロ「試験期間だからでしょう? 勉強しなくていいんですか?」
京太郎「そう言うなよ受験生。勉強しなきゃいけないのはお互い様だろ?」
ムロ「そ、それはそうですけど、私はさっき学校終わったんです」
京太郎「もうそんな時間だったのか。んで、この後はなんか予定とかあんの?」
ムロ「ありません。帰って宿題するくらいですけど」
京太郎「でも、そんな気分にはなれなくて、つい駅前なんかに足をのばしてみたり?」
ムロ「まぁ……いい天気ですし」
京太郎「じゃあさ、ちょっとつきあってよ」
ムロ「え?」
ムロ「どこ行くつもりなんですか?」
京太郎「それは着いてからのお楽しみってことで」
ムロ「ほほう、期待しておきますね」
京太郎「あいよ。でもあんまりハードル上げ過ぎないでくれな」
ムロ「そういえば須賀先輩の私服、はじめて見ました」
京太郎「会うときは部活で、基本制服だからな」
ムロ「それは今はやりのフライトジャケットですね?」
京太郎「おっ、よくわかったな。最近じゃあ、女の人もふつうに着てるから知ってるか」
ムロ「よく兄の読んでるファッション雑誌みてるんですよ」
京太郎「へぇ、お兄さんいるんだ」
ムロ「はい。2人ほど」
京太郎「なるほど。たしかにそんなかんじだ」
ムロ「なにがです?」
京太郎「男兄弟いそうなかんじ。しっかりしてるし、意見をハッキリ言えるところとか」
ムロ「ええ? 全然しっかりしてないですよ。和先輩とか竹井先輩のほうがすごいです」
京太郎「あの2人はまたタイプが違うんだよなぁ。どっちかっていうと、姉タイプだし」
ムロ「ああ、たしかに。それじゃあ宮永先輩は? 宮永先輩も妹でしたよね」
京太郎「ムロ、おまえ……咲がしっかり者に見えるのか?」
ムロ「……ノーコメントで」
京太郎「ハッキリ言っていいんだぞ。ほら、遠慮せずに」
ムロ「いやいや、そんな……ねぇ?」
京太郎「ははは、ムロは正直者だな」
ムロ「イジワルですよ……須賀先輩」
京太郎「わるいわるい。お詫びと言っては……着いた」
ムロ「ここ?」
京太郎「そ、ここが目的地」
ムロ「ここって、喫茶店ですか?」
京太郎「前からちょっと気になってたんだ。でも、一人ではいるには……」
ムロ「躊躇しちゃう外観ですね。レトロっぽい店構えで」
京太郎「年季はいってるよなぁ」
ムロ「チェーン店じゃないお店って、ちょっと勇気がいりますよね」
京太郎「だろ? 懐の心配はしなくていいからさ」
ムロ「……しかたないですね。そこまで言うなら、お伴しましょう!」
ガチャ カランカラン
店員「いらっしゃいませ」
京太郎「二人です」
店員「こちらの席にどうぞ」
京太郎「店の中も、モダンな感じでいい雰囲気だな」
ムロ「そうですね。あの、私ちょっと浮いてません?」
京太郎「大丈夫だよ。なんで?」
ムロ「だって、学校の制服って私一人だけですし」
京太郎「背伸びしてるみたいで、ほほえましいと思うぞ」
ムロ「や、やっぱり……!?」
京太郎「べつにドレスコードなんて無いんだし、安心しろ」
京太郎「そういうオレだって、この店の雰囲気に負けちゃってるし」
ムロ「そんなことないですよ。オシャレだし、カッコイイです」
京太郎「そ、そうか?」
ムロ「はい」
京太郎「あー……ありがとな。ムロに言ってもらえると心強い」
ムロ「あれ、須賀先輩って褒められるの弱い?」
京太郎「さぁさぁ、はやく注文しようぜ」
ムロ「そんなファストフードじゃないんですから、ゆっくりしていきましょうよー」
京太郎「この店、ケーキが美味しいって評判なんだ」
ムロ「露骨に話をそらしましたね……須賀先輩って甘いモノ好きなんですか?」
京太郎「最近になって目覚めた」
ムロ「へぇ、なにがキッカケで?」
京太郎「部のみんなとケーキバイキングに行った時にな」
ムロ「仲良しでいいですね、そういうの」
京太郎「まぁ、最初はオレ以外の5人で行ってたんだけど」
ムロ「あ……」
京太郎「いやいや違うからな? 竹井先輩がタダ券もらってきたんだけど、5枚しかなくて」
京太郎「オレのほうから丁重にお断りしたんだ」
ムロ「ああ、そうでしたか」
京太郎「ケーキバイキングの店って、男は入りにくいんだよ」
ムロ「女のお客さんが圧倒的に多いですしね」
京太郎「そうそう。だから、こういう喫茶店とかで食べるんだ」
ムロ「男の人でもやっぱり甘いもの好きなんですね。染谷先輩のお店でもけっこう注文ありましたし」
京太郎「甘いもの好きに男も女も関係ないさ。でも、ちょっと人目は気にするかも」
ムロ「それで、こういうお店でなんですね」
京太郎「ご理解いただけたようでなによりです。ああ、オレはもう注文決まってるけど」
ムロ「はやっ、ちょっと待っててください。ちなみに、なに頼むんですか?」
京太郎「ガトーショコラとコーヒーのセット」
ムロ「好きですねコーヒー」
京太郎「コーヒーとチョコの組み合わせは相性抜群なんだぜ」
ムロ「私はどうしよっかなぁ……悩む」
京太郎「どれも美味しいぞ」
ムロ「それはわかってます! なんでもいいって言うとアレですけど、いまいち決め手が……」
京太郎「なら、先に飲み物のほう決めれば?」
ムロ「そうしましょう。じゃあ、ミルクティーにしようかな」
京太郎「だったら、チーズケーキとかどうだ? ミルクとチーズ、乳製品つながりで」
ムロ「へぇ……わるくないです。むしろいい」
京太郎「すみませーん。コーヒーとガトーショコラ、あと……」
ムロ「ミルクティーとチーズケーキください」
店員「かしこまりました」
京太郎「そういえば、チーズケーキって色んな種類あるよな」
ムロ「ああ、レアとベイクドとスフレがありますね」
京太郎「そうそう。奥が深くてびびる」
ムロ「ベイクドって『焼く』って意味なんですよ。知ってました?」
京太郎「知ってる。優希じゃあるまいし、高校生をなめるなよ?」
ムロ「ちょうど試験範囲だったんです。ってか優希先輩、英語苦手なんですか……」
京太郎「補習の常連さんだ。心配しなくても、来年はちゃんと『先輩』になってるはずだから安心しろ」
ムロ「それはよかったです……ホントに」
京太郎「そっちは大丈夫なのか?」
ムロ「おかげさまで。たまにミカとも一緒に勉強してるんです」
京太郎「新道寺目指してるんだっけ。あそこってやっぱ難しいの?」
ムロ「みたいですね。そのおかげでいい先生になってくれてます」
店員「お待たせいたしました」
京太郎「はい、どうも」カチャ
ムロ「おおー」カチャ
店員「ごゆっくりどうぞ」
ムロ「美味しそうですね!」
京太郎「だな」
ムロ「それじゃあ……ごちそうになっちゃいますよ?」
京太郎「なっちゃいましょう! いただきまーす」
ムロ「このお店のはベイクドでした」
京太郎「これで英語のテストにベイクが出ても大丈夫だな」
ムロ「忘れないです。なんか暗記パンみたいな話ですね」
京太郎「ガトーショコラも濃厚で生地がしっかりしてて食べ応えある」
京太郎「オレの中のケーキ観が変わっていく」
ムロ「そんなに」
京太郎「というか、オレのケーキに対してのイメージが貧弱だったんだよ」
京太郎「もっとこう、白くてフワフワでクリームやらフルーツやらがのってて……みたいな」
ムロ「いわゆる、お誕生日ケーキみたいな」
京太郎「それだ。そういう機会でしか食べなかったから、こういうシンプルなのが新鮮でさ」
京太郎「ほら見ろ、断面をのぞいてもイチゴとか入ってない。黒一色。表面に粉砂糖がふってあるだけ」
京太郎「この飾り気のない、堂々としていてトッピングに頼らないその姿は、まさに男の食べ物だ」
ムロ「語りますね」
京太郎「色々トッピングしたのも、あれはあれで美味しいけどな。そっちはどう?」
ムロ「なんていうか……大人の味です」
京太郎「へぇ、どんな風に?」
ムロ「さっき須賀先輩が言ってた、男の食べ物っていうか」
ムロ「フワフワしてなくて、派手な見栄えじゃないですけど」
ムロ「オーソドックスで、だからこそまた食べたくなる、昔から続いてきたような味です」
京太郎「なるほど」
京太郎「清涼飲料水の期間限定フレーバーとか、一回飲んだらもういいやって思うの多いよね」
ムロ「そういう話なのかな?」
ムロ「ふぅ……満足」カチャ
京太郎「はぁ……同意」
ムロ「まさか学校帰りにお茶してくなんて、思ってもみませんでした」
京太郎「あんまり寄り道しない?」
ムロ「そもそも校則違反ですから」
京太郎「マジ?」
ムロ「はい。中学校だし、そんなもんじゃないですか?」
京太郎「な、なんてこった。ムロを不良の道に引きずりこんでしまった……」
ムロ「……してないとは言ってないですけどね」
京太郎「だよな。商店街ぶらついてたし」
ムロ「須賀先輩は道草たべまくりでしょ」
京太郎「おっと、見た目で判断するなよ」
ムロ「実際してるじゃないですか」
京太郎「オレは学校帰りじゃないし。1回帰宅してるし」
京太郎「でも、こんなところ部のみんなに見られたら『私も連れてけー』なんてどやされそうだ」
ムロ「他の先輩たちとはよく出掛けたりするんですか?」
京太郎「いや、そんなに」
ムロ「あれ、意外」
京太郎「プールとか祭りとか、イベントに行く時にみんなでってのはある」
ムロ「それも楽しそうですね」
京太郎「まぁな。ムロはいつもマホと遊んでそう」
ムロ「言うほどいつもではないですけど、よく一緒にいますね」
ムロ「最近はマホが麻雀教室とかで別行動が多いですけど。今日もそうなんですよ」
京太郎「へぇ、がんばってるなぁ」
ムロ「よく空回りしちゃうんですけどね……心配は尽きないです」
ムロ「私も、もうすぐ卒業だし。大丈夫かな?」
京太郎「きっと大丈夫だよ。そういうムロは?」
ムロ「私?」
京太郎「あれからどう? 悩んでない?」
ムロ「多少マシになりました」
京太郎「あんまり考えすぎるはよくないからな。気になったことあったら気軽に言ってくれ」
ムロ「ありがとうございます。お世話になりっぱなしで」
京太郎「高校生になったらなったで、また色々と大変だから」
ムロ「そうですよねぇ、勉強に部活と……大変だ」
京太郎「オレも、不安だらけだよ」
ムロ「須賀先輩が?」
京太郎「え、なに……そんなに能天気に見える?」
ムロ「いえいえ、そんなこと思ってませんってば」
京太郎「オレだって人並みに悩みくらいあるんだぜ」
ムロ「そうなんですか。まさか……恋の悩みとか!?」
京太郎「残念ながら、女子が好きそうな話題ではナイ」
京太郎「来年こそ地区予選突破して、麻雀部の雑用係というイメージから抜けだしたいのだ」
ムロ「ああ……って、なんですかそのイメージ」
京太郎「世間ではそう思われているらしいぞ」
京太郎「全国、ひいては世界レベルもいる清澄高校麻雀部の女子部員たち」
京太郎「そこに一人だけいる男子部員は地区大会予選落ちレベルの実力しかない」
京太郎「しかも部員のためにタコスまでつくってるし、控え室ではお茶淹れてるし」
ムロ「完全にマネージャーですね、これ」
京太郎「実際、買い出しとか牌譜まとめたりしてたし、べつに雑用がイヤなわけじゃないんだよ」
京太郎「あの夏、オレはオレにできることを精一杯やってた」
京太郎「それが部のみんなの為になるなら。でもやっぱり……」
京太郎「自分が、あの場所に立ちたかった」
ムロ「…………」
京太郎「最初は、自分の不甲斐なさとか実力の無さを悔やんだりしてた」
京太郎「全国大会で優勝したあいつらが羨ましかったし、カッコイイと思った」
京太郎「でも次第に、周りがみんな先に行ってしまって、取り残されたように感じたんだ」
京太郎「結局、あいつらの活躍を素直に受け入れられないままでいる」
ムロ「それは、ツライですね……」
京太郎「うん。カッコ悪いしダサいよな。でもしょうがない、本当のことだから」
ムロ「認めちゃうんですか?」
京太郎「じゃないと、先に進めない気がするんだ」
京太郎「そういうとこをまず受け入れないといけないと思う。開き直りっぽいけど」
ムロ「すごいですね」
京太郎「そうでもない。本当は、できる事なら今すぐ捨てちゃいたい、こんなの」
京太郎「だから、仕方なく抱えてるって言うほうが正しいかも」
ムロ「そっか……須賀先輩も大変なんだ」
京太郎「もう慣れたけどね」
京太郎「ムロの不安もそのうち軽くなってくさ」
ムロ「そうですかね」
京太郎「きっとな。アレだ、コーヒーみたいなもんだ」
ムロ「飲んでくうちに?」
京太郎「ああ、苦いのばっかじゃないのに気付くはずだよ」
ムロ「だといいですけど……」
京太郎「先輩を信じなさい。まぁ、たまにはミルクや砂糖をいれてもいいな」
ムロ「須賀先輩がそう言うんだったら、期待しておきますね」
京太郎「おう。あー、ちょっと手ぇ洗ってくるわ」スッ
ムロ「はい。あの、どうもごちそうさまでした」
京太郎「……そこは気付かないふりしてもいいんだぞー」
ムロ「すみません」
店員「それではお会計ご一緒で―――」
京太郎「―――」
ムロ「…………」
カチャ
ムロ「っ……」
ムロ「苦い……まだ無理かぁ」
翌日 高遠原中学校
ムロ「おはようミカ」
ミカ「おはよう。ムロ、ちょっときて!」
ムロ「なに? どうしたの」
女子A「ムロ昨日さ! 男の人と一緒にいたでしょ!」
ムロ「へ?」
女子A「アタシ見ちゃったんだよね! 背の高くて金髪の人と一緒に!」
女子B「マジか」
ミカ「本当なの、ムロ?」
ムロ「えーと……」
女子A「駅前からすこし歩いたトコにある喫茶店に入ってったよね! ちょっと古いカンジの!」
ムロ「ああ、まあ……うん」
女子A「それでお相手はどんな人なの!? パッと見、大学生っぽかったけど!」
ムロ「いやその……」
ミカ「背が高くて金髪って、もしかして須賀先輩?」
女子A「知っているのかミカ!?」
ミカ「清澄高校の麻雀部の先輩だよ」
女子A「清澄って、最近ムロがよく通ってるとこじゃん!」
ムロ「うん、まぁ……」
女子A「ってことは、2人はそーゆーカンケイなのだね!」
女子B「マジか」
ムロ「ちがうし」
ミカ「これはちょっと説明責任あるんじゃない?」
ムロ「ないよ」
女子A「いいなー! 私もオシャレなキャフェ-でデートしたいなー!」
ムロ「デートって、そんなんじゃないってば!」
ミカ「でもお茶したのは本当?」
ムロ「……です」
女子B「マジか」
女子A「完全デートじゃん! そこんとこ詳しく教えてよー!」
ミカ「あ、今日清澄行くよね? 私もついてくから。たまには和先輩と優希先輩に顔見せないとね」
ムロ「好きにしなよ……はぁ、なんだか面倒なことになっちゃったなぁ」
ムロ「とほほ、もう寄り道なんてこりごりだよ~」
おしまい
乙
実写化で再現しやすい咲キャラNo.1のムロのSSでした
原作では花田先輩の応援でけっこう大きめに描かれていて満足
次の出番は決勝戦先鋒でしょうかね
依頼出してきます
乙
こういう雰囲気好きだしムロも好き
久々に原作の京太郎っぽいのが読めたかもしれない
乙!
乙、良かった
乙
こういう咲ssは久しぶりな気がする
こんな感じの増えないかな
京ムロで飯テロ、もしやと思って酉検索したらやっぱりあなただったか
乙でした
ムロちゃんスレの人乙
乙です
面白かった
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