────────── 彼は夢を見ていた。
何気ない日の夕方、何気なく立ち寄った酒場で。
或いは女性の悲鳴を聞いて入った路地裏で。
森で冒険者仲間と狩りをしている最中で。
水汲みに川辺に向かった先で。
『彼女』に会おうとして。
彼は死んだ。
死に際で見えた光景は崩れ落ちて泣き叫ぶ『彼女』の姿と。
……そして、世界が歪み壊れていく姿だった。
「記録する」
「記録対象は……」
A「創世紀1248年……人々が国を作り上げ、彼等を束ねる王が君臨していた時代」
B「創世紀1680年……異界から魔王が現れ、これに人類が戦いを挑んでいた時代」
C「再世紀48年……誰もが魔王が倒されたと信じていた時代」
D「第七世紀2403年……数々の災厄が終わり、平和となって十年の月日が流れた時代」
「記録対象となる時代により、『彼』が何者なのかが分かる」
「さて……」
【選択肢からお選び下さい】
>>下1
D
「第七世紀2403年……数々の災厄が終わり、平和となって十年の月日が流れた時代」
「この時代における私の観測は曖昧である以上、ここからは別視点での観測となる」
「”” 時の ””、頼んで良いだろうか」
< 「私は構わないけどね、記録に必要なのだろう?」
「そう」
「対象は……」
A「とある町の鍛冶師」
B「小さな村の青年」
C「山賊」
D「魔法使い見習いの少年」
>>下1
B
【難易度8】
【『霧の魔女』開始】
───── 第七世紀2403年 ─────
青年「今日も来たんだなお前」
「お前って言い方は好きじゃないわ」
青年「名前なんて無いくせに」
「名前ならあるから」
青年「それって、”” 霧の ”” って言ってたやつか?」
青年「そんなの名前じゃないだろ」
霧の「……」
霧の「それより他の子供達は?」
青年「まだ仕事があるからさ、少し待ってろよ」ドサッ
霧の「……」
青年「……」
青年(……何日くらい前だっけ)
青年(村の子供達の間で遊び場になってた、森の入り口にある空き地でコイツが寝てたんだよな)
青年(何処の家の子か、なんて考えるまでもない)チラッ
霧の「……」
青年(コイツの着ている服は俺の家にあった母の物だ)
青年(見つけた時、コイツは高価な下着しか着けていなかったから)
青年(村の大人は……コイツは何処かの貴族の奴隷で、逃げてきたのだろうと言っていた)
霧の「ねぇ」
青年「ん、なんだよ」
霧の「そんなに見つめられると恥ずかしいのだけど」
青年「変な色の髪だと思ったんだよ、白髪女」
霧の「銀色だから、一応」
青年「……なぁ、お前さ」
霧の「霧の、って言ってるでしょうに」
青年「あー分かったよキリノ」
霧の「それで、何?」
青年「……」
青年「何処から来たのかと思ってよ」
霧の「ふぅん」
青年(……こんなこと最初の日からいつも聞いてるんだけどな)
青年(多分今日もはぐらかされる)
霧の「……」
< ニコッ
霧の「森の奥にある大樹の下で生まれたのよ、私」
青年「……?」
みてるぞ
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