P「佐々木千枝のシュノーケルになりたい」 (54)


薫「青い空っ!」

桃華「青い海ですわ!」

みりあ「そのあいだには入道雲!」

仁奈「宿題の終わってない8月31日の小学生の気持ちになるですよ!」

P「弾ける若さ! 弾ける水着! 俺たちの夏は、まだ終わらない! なっ! 千枝っ!」

千枝「えーっと……はい!」

P「最高だ! 最高の夏休みだ! それなのに……なぜ貴様たちがここに居るっ!」バッ


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美嘉「へっ? アタシ……?」キョトン

莉嘉「別にPくんの許可は要らなくない? みりあちゃんが呼んでくれたんだし~☆」

P「城ヶ崎姉ッ! 俺が引率する【ドキっ☆小学生だらけの夏納め!ポロリもあるよ(ロリだけに!)】によくもまぁノコノコと!」

美嘉「そういうこと言っちゃうからじゃん! アンタは大人として信用に置けないんだよ!!!」ガーッ

P「なんだとこの田舎ギャルめ!」ガルルル

美嘉「あ゛? 埼玉ディスってんじゃねぇゾ? あ゛っ?」ギャルルル

P「ヒェッ……ち、千枝ぇぇぇ! 助けてぇ! 菜の国から来たカリスマが虐めてくる!」コソッ

千枝「キャッ!? ぷ、プロデューサーさん!?////」ドキドキ

美嘉「年端もいかない女の子の背中に隠れやがって! アンタにはプライドとか無いワケ?」

P「うるせぇ、ババァ!」コソッ

美嘉「ババッ……!? アタシはまだ17だしっ!」

P「アベナナさんと同じ歳じゃねぇか! 結婚出来る年齢の女子は須らくみんな平等にババァじゃい!」

美嘉「このロリコン野郎!」

P「お前はさっさとサッカー選手とでも結婚してSNSとかにお手製晩飯の画像載せてカリスマ主婦気取っとけ!」

美嘉「け、結婚!?//// そ、それはまだ流石に気が早いというかそりゃ私だって相手が居たら……」ゴニョゴニョ


莉嘉「ちょっとPくん! お姉ちゃんイジメないでっ! お姉ちゃんはリカたちだけじゃ心配だからってついて来てくれたんだよ!?」

P「だからね、Pくんはそれが気に入らないわけですよ。Pくんだけで充分じゃない?」

千枝「でもプロデューサーさんだけだと、やっぱり大変だと思うから、他にも大人が居てくれたほうがプロデューサーさんの負担も減って良いんじゃないですかね?」

P「千枝はこの争いだらけの世界に神様が置き忘れた慈しみと優しさの全てを持って生まれた存在だな!」ナデナデ

千枝「えへへ……////」

P「と言うわけで、貴様がここに居て良い理由をくれた千枝に感謝しろよ城ヶ崎ッ!」

美嘉「コイツ……! 心の底からぶん殴りたい……!」プルプル

みりあ「プロデューサ~、荷物ここに置いとけば良いの~?」

P「おー」

薫「せんせぇ! 波ってずっとザバザバいってるけど、止まらないの?」

P「んー? それじゃあ、遊ぶ前にちょっと海についてお勉強しとくか!」

莉嘉「え~っ!? 勉強~っ!?」

P「はーい、みんな集まれ~! とときら学園出張版(全然人数足りないけど)はっじまっるよ~!」

仁奈「わ~!」

薫「はーい!」

桃華「はいですわ!」

千枝「はーい♪」

みりあ「はーい!」

莉嘉「はーい☆」

美嘉(嫌がってたのに結局聞くんだ? 莉嘉もまだまだおこちゃまだよねー、ふふっ)ニコニコ


P「姉ヶ崎さん」

美嘉「ん? アタシ? 姉ヶ崎じゃなくて城ヶ崎だけど」

P「みんなみたいに元気よく『はーい』は?」

美嘉「はぁっ!?」

仁奈「小学生の気持ちになりやがるでごぜぇますか?」パァアアアア

美嘉「えっ!? あ、いやちょっと!?」アタフタ

P「ほら、早く」

美嘉「えっ!? いや、それは……」

みりあ「美嘉ちゃん、はやくはやく!」キラキラ

美嘉(みりあちゃんの期待に満ちた眼差しが痛いっ……!!)

P「はよはよ」ニマニマ

美嘉「くっ……!」

P「城ヶ崎さんが元気よく挨拶するまでみなさんは連帯責任として、海で遊べません!」

莉嘉「Pくん!!」

美嘉(莉嘉……! まさか私を庇って!! さっきはお子様だなんて言ってごめ――)

莉嘉「お姉ちゃんのカリスマみなぎる挨拶をしかと見て、ジャッジよろしくねっ☆」

美嘉(莉嘉ぁあああああああああああ!?)


P「曇りなきまなこで、見定め、決める」キリッ

美嘉(あぁあああああ八方塞がり!!!)

P「ほら、はよ。みんなの遊ぶ時間が無くなっちゃうから」

美嘉「……っ」プルプル

美嘉「はぁ~いっ♪ ミ、ミカ、勉強頑張っちゃうぞ~★」(ゝω・) テヘペロ

P「……きっつ」ボソッ

美嘉「~~~っ////」プルプル

みりあ「え~? 美嘉ちゃん可愛かったよ? ねっ? 千枝ちゃん?」

千枝「え!? う、うん! そうだね! かわ……とっても綺麗だなぁって!」フンス

美嘉「いっそ砂浜に埋めて……アタシは貝になりたい……そう貝界のカリスマに……」※魂が抜け出る

薫「かいかい?」

P「はい、じゃあ今日は、ちょっと今更な気がしますが海についてお勉強をします」

千枝「わ、わーい」

P「波がザブザブしてる理由はいくつかありますが、その原因の一つは今、千枝の柔らかな黒髪を揺らした風です」

桃華「風、ですの? この?」ソヨソヨ

P「はい。海水が風に吹かれると、海面が揺れます。慎ましくも瑞々しい千枝の胸のように」

モバつけろやカス


美嘉「先生、さっきから気持ち悪い例えしないでください」

P「千枝の胸は気持ち悪くないでしょうが!!! むしろ絶対的に気持ちイイでしょうが!!!!!」

美嘉「先生のことが気持ち悪いって言ってるんですけど!?」

P「はい、そして風以外にも、もう一つ大きなモノが影響を及ぼしています。さて、それはいったい何でしょうか?」

薫「せんせぇ! かおる、分かったーー!」

P「はい、元気一番龍崎さん!」

薫「海の中で巨人がおっきな島を動かしてるときのはんどう!」

P「んんっ! ファンタスティック!!! 幻想的であり、素晴らしい発想ですね!! 反動という言葉を知ってたことに○をあげましょう! でも残念、違います!」

みりあ「はいっ! はいはい!」ピョンコピョンコ

P「はい、やりたがりの風雲児赤城さん!」

みりあ「私たちのダンスの振動が地面を伝わって、海を越えて大陸に届く!」

P「んんんんっ!!! なんか良くわからんがパッション!!! 情熱大陸的なものをヒシヒシと感じます! でも違います! いや、無くは無いかも!?」

美嘉「もっと大きいものだよ~」ニコニコ

仁奈「もっと大きい……ハッ――! もしかして……仁奈のせいでごぜーますか……?」ガクブル

P「違うよ!!! 仁奈ちゃんのせいじゃないから! その存在感たるや我々民草の童子には眩しいほどだけども!!」

桃華「それじゃあ……わたくしのせいなのでしょうか?」ウルッ

P「んんんんっ!!! なんでっ!? なにゆえにそうなったんで、お嬢ちゃま!?」

桃華「仁奈さんより年上であり、身長もわたくしのほうが高かったので……」

P「違いますっ!」


莉嘉「分かった! 波が波を呼ぶ、的な……こう、ぶつかり合ってお互いを高め合っていくんだよー! アイドルみたいに、さっ☆」キラキラ

P「中学生ーーーーーっ!!! せめて知ってて! 中学生は、せめて……日本の教育……日本の教育とは……いったい……」

美嘉「ヒント。地球には無いものです」

薫「はい! 隕石が地球に落ちたしょーげきで!」

P「それはあるかもしれん! でも用意した正解は違います! ごめんね……大人の世界って理不尽でごめんね……」

莉嘉「はい! 地球には存在しない、わ、我々の知らない謎の物体の出す謎の電波の影響によって」

P「なんで急に我々とか言って尊大な感じになってんの!? んでなるべく知ってる難しい単語並べたみたいだけど不正解だからな!?」

莉嘉「ちぇーっ」プクー

桃華「地球には無い……ハッ! 逆転の発想ですわ! 元は地球にあった……! つまり、宇宙船!!!」ドヤッ

P「違います。そんなしたり顔で言されても、宇宙に行った宇宙船は地球の海に影響を及ぼさないでしょ」

桃華「大きい宇宙船が、壊れた衝撃で?」

P「違います」

桃華「大きい宇宙船にぶつかった隕石が地球に落ちた衝撃で?」

P「付け足しても正解になりませんっ!!!」

桃華「うぅ……」ウルッ

美嘉「ふふっ、みんなの頭の上にあるものだよ。ほら、いつも夜になったら見えるやつ」

みりあ「夜に? あっ!」


美嘉「はい! 正解は『月』でした~」

桃華「お月様?」

美嘉「月にはねぇ、引力っていう、引っ張る力があって、その引力が地球の海面を引っ張り上げるんだよ」

莉嘉「お姉ちゃん、スゴい……! 賢く見える!!」

美嘉「まぁ高校生だしぃ~。ってか莉嘉は習ってるはずなんだけど?」ジト-

莉嘉「そだっけ?」エヘヘ-

薫「ホントに!? ねぇ、せんせぇ! 月が引っ張ってるの?」キラキラ

P「…………いや、ちょっと先生分かんないなぁ? 海が……月に……? えっ?」ウーン

みりあ「美嘉ちゃん、間違ってるの……?」

美嘉「えっ? いや、ちょっ……!?」


ザワザワ……


P「城ヶ崎、ちょっと、こっち」チョイチョイ

美嘉「な、なに?」ザッザッ


P(あのさ、高校生なんだから、空気読めい)ヒソヒソ

美嘉(はぁっ?)ヒソッ

P(千枝がずっと正解を言いたそうにウズウズしてただろ……今か今かと)ヒソヒソ

美嘉「千枝ちゃんが?」チラッ

千枝「莉嘉ちゃんのお姉さんは、やっぱり高校生だから物知りだね」ニコニコ

莉嘉「でしょー!」エッヘン

P「千枝はずっと我慢してたんだよ、正解を知っていたのに……」

美嘉「……っ!? あ、あ、アタシ……ただ……っ! だいたい、知ってるなら言えばイイじゃん……」

P「それがバラエティのお約束ってヤツだ。カリスマギャルには分からないかもしれんが、な」

美嘉「お約束……っ! 言われてみれば千枝ちゃんの表情が心なしか曇って見える……そんな、千枝ちゃんはあの年齢ですでに……?」

P「ああ、バラエティの……いや、大人の狡くて汚い部分を本質的に理解してる……!」

美嘉「そんな……あんなに可愛くて純粋そうな子が……?」チラッ

千枝「……?」パチクリ

美嘉(ごめんね……ごめんね……千枝ちゃん……)ウルウル

千枝(莉嘉ちゃんのお姉さん、どうしたんだろ……すごく悲しそうな顔してるような……?)

P「お前が今、すべきことは謝罪の言葉を並べることじゃあない、もちろん高校生なんだから分かるな?」

美嘉「アァ……! 分かる、アタシは高校生だから分かる。アタシ、分かるよ……!」グシッ

P「はい、じゃあ佐々木さん、詳しい解説を!」


千枝「えっ? 千枝がですか?」キョトン

美嘉「いやー、アタシ、ちょっとうろ覚えでさー。なんて言うの? 知ったか、ってヤツ?」

P「そんなわけで、お願いします」

千枝「えっと……莉嘉ちゃんのお姉さんが説明してくれたように、月にはいろんな物を引っぱる力があるから海が持ち上げられます」

みりあ「ふんふん」

美嘉(アタシを立ててくれてる……! こんなアタシのことを……! 千枝さん……!)ウルウル

千枝「そして、それが干潮と満潮といった潮の満ち引き、つまりは海を大きく動かして波が作られてるんです」

薫「海が動くの!?」

千枝「うん、えーっと、干潮は減って、満潮は増える、って言えば分かりやすい……かな?」

みりあ「あっ! みりあ知ってる! 潮干狩りなんかは干潮のときにするんだよね!」

千枝「うん。潮が引くと普段海に隠れてる砂浜が出てくるから、貝が見つけやすいんじゃないかな?」

美嘉「なるほど~! 千枝ちゃん、賢いね~」ナデナデ

千枝「えへへ……////」

美嘉(こんなにも……純真そのものなのに……影でいっぱい頑張ってるんだねぇ……)グスッ


莉嘉「お姉ちゃん、カッコ悪いー」ジトー

美嘉「うっ……」グサッ

P(耐えるんだ城ヶ崎……!)

美嘉(ああ、これが大人の務めってヤツなんだね、プロデューサー……! 耐えてみせるよ、アタシっ!)チラッ

P(……って感じでこっち見てくるから、飼いならされた犬に見えて笑いがこみ上げてくる。ダメだ、我慢しろ、俺っ!)プルプル

仁奈「今はかんちょーでやがりますか?」

P「今は反対の満潮に近いかな? 昼になるともっと水位が上がるから注意するように!」

桃華「水位が上がったらどうなるんですの?」

P「例えば今、足が地面に着いた状態で首より上が海中から出てるとしたら、満潮になると顔も海の中に沈んじゃうな」

みりあ「溺れちゃうってこと?」

P「まぁ、実際には人間は泳げるし、自然と浮くように出来てるわけだから、そこまで気にすることは無い」

莉嘉「じゃあ心配無いね!」

美嘉「それじゃあ、みんな、遊んできな!」

薫「わーい!」

桃華「千枝さん、早く! もぐりっこしますわよ!」

千枝「あ、うん……でも……」チラッ

P「ん? 行っといで。今日くらいしかみんなと遊べないだろうし」

千枝「じゃ、じゃあ、千枝も遊んできます♪」

P「んむんむ」


莉嘉「お姉ちゃんも一緒に遊ぼ~♪」

美嘉「あ~、アタシは、ちょっと移動で疲れたから休憩して後から混ざるよ」

莉嘉「え~っ……オバさんみたい~……」ジトー

美嘉(あれ? もしかして莉嘉の中でアタシの株が大暴落してる……?)

みりあ「じゃあ、あとで一緒に遊ぼうね!」

美嘉「うん、ごめんね」

みりあ「莉嘉ちゃん行こ!」トタトタ

莉嘉「うん……」チラッ

美嘉「ほ~ら、さっさと遊んでおいで。楽しみにしてたんでしょ?」

莉嘉「うん……!」

P「あんまり遠く行っちゃダメだぞー」フリフリ



ザザーッ ザザーッ

ザザーン…



P・美嘉「…………」


P「なんで、残ったんだよ」チッ

美嘉「あからさまに舌打ちすんな! 本当にちょっと疲れたんだってば」

P「助手席に座って道の駅で買ったチクワ食ってただけの癖に!?」

美嘉「はぁああ!? ちゃんとナビしたじゃん!」

P「そのせいで一回山まで行っただろうが! 千枝たちの貴重な"今"という時間を奪った大罪人だぞ!?」

美嘉「うっ……それはゴメン……反省してる……」ショボン

千枝「プロデューサーさん……? どうしたんですか、そんなに大声出して……」

P「ち、千枝っ!? みんなで一緒に泳ぎに行ったんじゃないのか!?」

千枝「えへへ、シュノーケルを忘れちゃって……千枝、おっちょこちょいで困っちゃいます」コツン

P「なにそのセルフコツン可愛い(あはは、普段はしっかりしてる千枝にもそういうところあるんだな)」

美嘉「心の声と、言いたいことがごっちゃになってない?」

千枝「えーっと、確かここに入れておいたはず……」ゴソゴソ

P「そっちのカバンじゃなくて、そっちの青いキャリーケースの中じゃないか?」

千枝「あっ、そうでした!」

美嘉「…………」


千枝「よし!(装着) じゃあ、遊んできます! プロデューサーも良かったら、あとで一緒に……////」

P「用意できたら行くから! すぐ行く! 未来で待ってて!」

千枝「未来で……? えへへ、じゃあ、あっちで待ってますね♪」タッタッタッ

P「あー、可愛いなー。お嫁さんにしたいなー」ハァ

美嘉「あのさ?」

P「ん?」

美嘉「道の駅でお土産屋に寄ったとき、プロデューサーだけ遅れて合流したよね? トイレだって言ってさ」

P「あー、うん。そうだっけ……? どうだったかなー」

美嘉「あとさ、どうして千枝ちゃんのシュノーケルがキャリーバッグのほうに入ってるって知ってたの?」

P「…………」

美嘉「…………」



P「……君のような勘のいいギャルは嫌いだよ」


美嘉「おまわりさーーーーーん!」

P「違う!! ただの荷物検査だから! 空港とかでもあるでしょ!? 危険物が紛れ込んでないかなーって!!」

美嘉「危険物なんか入ってるわけないじゃん!?」

P「分からんだろ!? 悪質なファンの手によって、だな!?」

美嘉「アンタが一番悪質なファンだからっ! なんか危険なモノは入ってた?」

P「ちょっぴり背伸びして選んだであろう水色のストライプ柄のパンツが入ってた」

美嘉「おまわりさーーーーーーーーん!」

P「これは危険物でしょ、どう考えても」

美嘉「危険なのはアンタでしょ、どう考えても!」

P「待て待て。千枝、さ? 今日の朝、待ち合わせ場所に来たときにな?」

美嘉「うん」

P「あっ、この子、既に服の下に水着を着てるな? ふふふ……普段は遠慮がちな癖に海が待ち遠しくて着てきちゃったんだな、千枝は悪い子だ……って、ひと目見て気付いたんだ」

美嘉「服の上から、ひと目で見抜いたのが、もうどうしようもなく気持ち悪い」

P「だから、パンツが入ってるかどうか確認しとかないと、もし忘れてたら大変なことになるじゃん?」

美嘉「まぁ、しこたま遊んでーの、替えの下着が無かったら、悲惨だけど」

P「今日の楽しかった思い出が悲しい思い出へと反転してしまいかねんだろ?」

美嘉「アタシだったら塞ぎ込むかもね」

P「だから、こうするしか無かったんだ……」ガクッ

美嘉「プロデューサー……」


P「俺は! 千枝のプロデューサーとして……! ふ、ふぐぅ……」ポロポロ

美嘉「…………」



ザザーッ ザザーッ

ザザーッ…



美嘉「でも犯罪は犯罪だからね。千枝ちゃんが悲しむようなことだけはやめてあげなよ」

P「あー、ウッス。その辺はきっちり線引きしとかにゃなんねぇよな」

美嘉「大人だからね」

P「ところで、美嘉ねぇは遊んで来ないのか?」

美嘉「アンタに美嘉ねぇって言われるとイラってするからやめて? アタシはまぁ、アンタひとりにするのも可哀想だしさ……////」

P「可哀想だなんて上から目線やめて貰えません? 僕は一人でこの青い空に包まれて健全でエロい妄想するんで大丈夫ですんで」

美嘉「アンタ、本っ当っに気持ち悪いよね?」

P「あはは、よく言われますぅ~」

美嘉「普段何考えてんの? 一回で良いから頭の中を覗いてみたいよ。まっピンクなんじゃないの?」アハハ

P「今は、千枝のシュノーケルになりたいなぁ、って思ってる。いや、半年くらい前からずっと思ってたんだけど」


美嘉「ごめん、やっぱ覗きたくない。覗きたくなかったー! アタシの平穏な日常がアブノーマルに侵食されてくー!」

P「シュノーケルになって、千枝の小さな口に咥えられたい」

美嘉「もうやめて。アタシの夏と、千枝ちゃんをこれ以上汚さないで」

P「いや、全然変な意味じゃなくて」

美嘉「それが変な意味じゃないとしたら、この世界の全部が変だし。そんな世界なんか要らないってば」

P「いや、だって、シュノーケルだぜ?」

美嘉「あのシュノーケルだぜ? 欧州プロサッカー選手のあのシュノーケルだぜ? みたいに言われても」

P「お前、意外とツッコミ上手いな」メモメモ

美嘉「何のメモ取ったの!?」

P「莉嘉ちゃんが放つ『がおがおパワー☆』のエネルギー総量は凄まじい。なぜなら、ライオンは一週間で1000回以上も交尾をするからだ、というメモを」

美嘉「それ今必要なメモだった!? しかも実姉を目の前にしてるのにも関わらず、その無遠慮さが余計にキモさを引き立ててる!」

P「ところで、お前がここに居たら俺がこの日の為に買った超望遠高画質デジタル一眼レフが使えないんだが?」ゴソゴソ

美嘉「だから、そういう間違いが起こらないように今アタシはここに居るんだってば」

P「お前は鬼か。そのパーカーの下に着てるトラ柄のスケベ丸出しなビキニに存在理由を与えてやれよ」

美嘉「別にオニじゃないし、トラ柄じゃないし、丸出しでもないし! ピンク色だし!」

P「ピンクっっっ!! エロイやつが選ぶ色だ! どうせ埼玉のイオンで買ったやつだろ! いっちょ見せびらかしてこいよ!」

美嘉「例え地元で買ったやつだとしてもアンタに見られるのなんかまっぴらゴメンだねっ」ベーッ

P「見ねぇよ! 興味無ぇよ! 俺の望遠レンズにヒビが入るわい!」

美嘉「今すぐヒビを入れてあげよっか?★ミ」ニコッ

P「ほんと、勘弁してください。高かったんです。夏のボーナス消し飛んだんです」

美嘉「まったく……ちゃんとキレイに撮ってあげてよね。あの子達の良い思い出になるように、さ?」

P「お、おう……?」


美嘉「この歳になると、もっとたくさんプライベートな写真を撮ってもらっておけば良かったなーって思うんだよね」

P「ババァ臭ぇ」

美嘉「ホントだよね! アハハ! 若い頃なんて、一瞬だしさ! あはは……」

P「そうだな、一瞬でババァだもんな。お前みたいに」ボソッ

美嘉「海に突き落とすぞ」ギロッ

P「俺、泳げねえんだよ、言わせんな恥ずかしい」

美嘉「マジで!?」

P「みんなには内緒な」

美嘉「アハハ、格好悪っ! 絶対言うし★」ニヤリ

P「おまっ!? まぁ別に良いけどさ、カナヅチくらいで俺の大人の魅力は損なわれん」

美嘉「大人って、アンタ、ただの変態のオッサンじゃん?」

P「どうせオッサンですよ~。ほら、みんなと一緒に撮ってやるから早くパーカー脱いで遊んでこい」

美嘉「撮ってくれるんだ? じゃあちょっと泳いで来ようかなーっ」

P「まぁ、一緒にって言ってもギリギリで顔をフレームアウトさせるけどな」

美嘉「意地でも写ってやる!!」

P「俺の撮影スキルなめんなよ。城ヶ崎だけ心霊写真みたいに、上手くボカして写すし」

美嘉「じゃあいっそ撮らないで! 撮影とか困るわー、今プライベートなんで、ホント困るわー」

P「でもお前が写ってないとみんな不思議に思うだろ? 10年後、この夏を振り返ったときに、誰か一緒に行ってたよね? 変だね? 誰も覚えてないの? ってなるじゃん?」

美嘉「この夏最大のミステリーじゃん……絶対アタシ死んじゃってるヤツじゃん……」


P「だからひとりでバナナボートでも乗ってむやみやたらにビーチに性的なモノを振りまいて存在をアピールしてこいよ」

美嘉「ハワイでも無いのにバナナボートなんか乗るわけないじゃん。むしろハワイでもお断りだし」

P「波に乗せてエロスを届けてやれよ。世界で一番ホットなビーチに変えてやれよ」

美嘉「だからアタシを日本の性代表みたいにすんなし!」

P「性代表と正代表が掛かってるんですね分かります! よっ、R-18!」

美嘉「せめてU-18にしてよ! もう知らないっ! 勝手に言ってれば!?」スック

P「どこ行くんだ? トイレか? 海ですんなよ?」

美嘉「しないし! ってかトイレじゃないし!」

P「なんだ腹が減ったのか? 食い意地が張ってるなぁ。これだから埼玉むすめは……」ヤレヤレ

美嘉「お腹も空いてないし! パーカー脱いでくるだけだから!////」

P「は……? 脱ぐだけならここで脱げば良いのでは?」

美嘉「う、うるさいなぁ!? 色々準備とかあるんってば、コッチは!////」

P「……? ひとりで大丈夫か? 補助は必要か?」

美嘉「なんの補助!?」

P「いや、準備だって言うから、上田女史みたいなゴテゴテした奇抜な衣装を着てくるのかと……」

美嘉「そんなの着ないから! 脱ぐだけっ!!」

P「脱ぐだけとか、卑猥原人かよ……アウストエロピテクスかよ……」

美嘉「もう黙って写真でも撮っとけ!!!」プンスカ

P「夕方までには帰ってこいよ~?」フリフリ

美嘉「べ~~~っ!っだ!」スタスタ


ザザーッ ザザーッ

ザザーッ…


P「さってと……じゃあ、お楽しみのハイファイ☆な写真でも撮りましょうかね!!!!!!!」


【海の家の脱衣所】


美嘉「まったく。あの超絶ロリコン煩悩ハゲ野郎め……」イライラ

美嘉「せっかく今日のためにおニューの水着買ってきたのに……マルキュー(渋谷109)で、ちゃんと(?)」

美嘉「いや!? べ、別に、プロデューサーに見せるために買ってきたわけじゃないけどさ!?」ワタワタ

美嘉「でも、少しくらいアタシに興味を持ってくれたって……ハッ!?」

美嘉「いや、なに言ってんのアタシ!?」

美嘉「ただ、ギャルらしくバシっとセクシーな水着を華麗に着こなす姿を……」

美嘉「華麗に……着こなす……」チラッ


【鏡に映る、かなり攻めたビキニ】


美嘉「……失敗したかな」

美嘉「…………」



美嘉「い、一応水着の色と口紅の色は合わせておこうかな……うん!」



【海中】


千枝「……」シュコー


キラッ


千枝(あっ……!)スイスイ

千枝(可愛い貝殻!)ヒョイ

ザパッ

みりあ「千枝ちゃん、何か見つけた~?」ザバザバ

千枝「うん、これ!」キラッ

みりあ「わぁ! きれ~な貝殻だね! いいなぁ! みりあも探そっと!」ザブン

桃華「シュノーケルって長く潜っていられるからイイですわね!」

千枝「うん! やっぱりシュノーケル持ってきて良かった~♪」

莉嘉「千枝ちゃんって、ちゃんと日焼け止め塗ってる? 水中メガネのあと付いちゃうよ?」

千枝「あっ……塗るの忘れてた……」

莉嘉「じゃあこれ、リカの使いなよ!(防波堤の上から)」

薫「日焼け止め……やっぱり莉嘉ちゃんってお姉さんな感じする~」

莉嘉「えっへへー!(お姉ちゃんに持たされてただけなんだけどねっ☆)」バチコーン

千枝「あ、ありがとうございます」オズオズ


莉嘉「へ? あはは、千枝ちゃんって、なんかリカにだけよそよそしくない?」ズイッ

千枝「だって年上だし……」

莉嘉「別にそんなに変わんないじゃん? まあ、リカは中学生だけどさ。仲良くしよーよっ☆」パリピ-ッ

千枝「う、うん!(うう……本当はギャルっぽいとこがちょっと怖いだなんて言えない……)」

みりあ「取ったゲロー!」ザパァ

小魚「酸素、酸素があばばばば」

莉嘉「うわ、魚じゃん! やるぅ!」

薫「キラキラしてる~! かおる、初めてこんなに近くで生きてるお魚さんを見たかも!」

桃華「あら? そう言えば、仁奈さんはいったいどこにいらっしゃるのかしら……?」キョロキョロ


ブクブク

ブクブクブクブク

ゴボゴボッ


全員「っ!?」



シーン…



全員「……?」


仁奈「ぷはっ! ウツボの気持ちになるでごぜぇますっ!」ザッパァ

桃華「きゃっ!?」

ウツボ「あばばばば」ウネウネ

薫「すっごーーーい!! おっきぃ~っ!!」

莉嘉「そ、それってすごくドーモーなヤツじゃなかったっけ……?」サーッ

みりあ「噛むやつ……だよね……?」

千枝「仁奈ちゃん! 早く離して! もし噛まれでもしたら……あっ!」ポチャン

仁奈「悲しいけどここでさよなら、でごぜーますか?」ポイッ

ウツボ「……」スイーッ

薫「おつかれさまでーっ!」フリフリ

千枝「どうしよう……さ、探さなきゃ……」サーッ

桃華「どうなさったのですか? なにやら顔色が優れないようですけど……」

千枝「莉嘉ちゃんに借りた日焼止めを海に落としちゃって……」

みりあ「えっ!?」

莉嘉「え~っ!? でもまぁ、別に良いよ? また買えば良いし」

千枝「でも……あっ! 良かった……岩の隙間に入ってるだけだった……腕を伸ばせば取れそうです!」

莉嘉「え~、怪我しちゃうかもだし、危ないから、もうほうっておきなよ~」

千枝「大丈夫です! 待っててください!」ザブン

莉嘉「あっ! 千枝ちゃん……大丈夫、かな……」


【海中】


ザザーン…

ボコボコ…


千枝(も、もう少しで届きそうなんだけど……)グイー

千枝(んーっ! あっ! 取れた! 良かったぁ! あとはそーっと引き抜くだけ……)

千枝(そーっと……そーっと……あれ……? ぬ、抜けない……? えっ……!?)ゴボッ


【海上】


千枝のシュノーケル「しゅこー……」


みんな「……」


千枝のシュノーケル「しゅこー……」トプン


みりあ「千枝ちゃん、大丈夫かな……?」


千枝のシュノーケル「ごぼっ」ブシュッ


薫「!?」

千枝「……っ!!」ジタバタ

桃華「なんかシュノーケルから水が吹き出してヤバげでございましてよ!?」ビクッ

仁奈「あ、あ……上がってこねーでやがりますよ……?」

みりあ「もしかして腕が抜けなくなっちゃった、とか……!?」

莉嘉「そんな……っ!」

薫「どっ、どうしよう!?」

莉嘉「リカのせいだ……リカが日焼止めなんか貸したから……」ガタガタ

みりあ「莉嘉ちゃん! みりあと、莉嘉ちゃんで引っ張ってみよう!」

莉嘉「でも……無理やりそんなことしたら、千枝ちゃんの腕に傷が付いちゃうかも……」

桃華「そうですわ! もしそんなことにでもなったらお仕事にだって影響が……」

みりあ「でも、今はギリギリでシュノーケルが海から出てるから良いけど、このままじゃ……」

薫「あっ……! かんちょー……?」


【砂浜】


P「おかしい……みんなの姿が見当たらないぞ……?」キョロキョロ

ザバッ

薫「せんせぇ!! たいへんっ! たいへん……っ!!」バシャバシャ

P「ああ、どこに行ってたんだ、薫? せんせぇ心配したぞ」

仁奈「たいへんでごぜーます……っ! 仁奈たち、あっちの防波堤のそばで、ウツボや貝の気持ちになって……」ガクガク

P「防波堤……? 向こうか?」チラッ

桃華「Pちゃま!! けほっ、ケホっ……千枝さんが……」ガクガク

薫「腕が岩に挟まっちゃったみたいで、かおるたち、頑張って助けようとしたんだけど……! やっぱり無理でぇ……」ポロポロ

P「っ!」

桃華「無力なわたくしを許してくださいませ……Pちゃま、どうか、どうか……」ポロポロ

みりあ「今は莉嘉ちゃんが千枝ちゃんに付いてくれてるけど、どんどん海が上に上がってきてて……このままじゃ千枝ちゃんのシュノーケルが海に沈んで……」ポロポロ

P「みんな……もう泣かなくていいぞ。大丈夫だから、落ち着いて。今は千枝もシュノーケルで息が出来る状態なんだな?」

桃華「ええ、でも……」ウルウル

薫「せんせぇ! 早く千枝ちゃんを助けて……!」ポロポロ

仁奈「おねがいでごぜーます……!」ウルウル

P「ああ、絶対に助ける。お前たちはここに居てくれ。そのうち城ヶ崎のお姉ちゃんが帰ってくるはずだから!」

みりあ「うん……」

P「それと、城ヶ崎のお姉ちゃんが返ってきたら、誰か他の大人を呼ぶように伝えてくれ!」ダッ


【防波堤】


ザザーッ ザザーッ

ザザーン…


千枝のシュノーケル「ごふっ」ブシュッ

莉嘉「どうしよう……どうしよう……」

千枝のシュノーケル「しゅここっ」ブシュッ

莉嘉「もう少しで完全にシュノーケルが沈んじゃう……」ガタガタ

P「莉嘉! 千枝は大丈夫か!?」バシャバシャ

莉嘉「Pくん……! 遅いってば! うえぇえええん……」ギュッ

P「もう大丈夫だぞ、莉嘉――って……」

千枝のシュノーケル「……ごふっ」ブシュッ

P「これは……」ゴクリ

莉嘉「ぐすっ……さっきからどんどん海水がシュノーケルに入っていってるの……!」ウルウル

P「千枝も現在進行形で怖いだろうけど、お前もこれずっと見てたんだろ? さぞ怖かっただろうに……」ゾッ

莉嘉「当たり前じゃん!!?」

P「もし俺が莉嘉だったら、押し寄せる不安と恐怖で海に入ったまま失神する自信ある……」

莉嘉「そんなことどーでも良いから早く千枝ちゃんを助けてあげないとっ!」

P「まったくもってその通りだ!」ザブン


【海中】


ゴボゴボ…


千枝(どんどん海水が口の中に……腕も抜けないし……千枝このまま……溺れちゃうのかな……)

千枝(怖いよ……怖いよ……プロデューサーさん……)ギュッ

P(……っ!)グイッ

千枝(この手、プロデュー……)

P「ちべぇえええええ、ふごごごっ!? ごぼごぼばばばべぶばぁああ!」ゴボボボ

千枝(えぇーーーー!? どうして海の中で喋って、えーーーーーっ!?)ゴボゴボ


【海上】


ザザーッ…


莉嘉「お願いPくん……千枝ちゃんを助けてあげ……」

千枝のシュノーケル「えーーーーーーー!?(異常なほど、こもった声。もはや音)」ゴフゴフッ

莉嘉「!?」ビクッ

ザパッ

P「ぶっはぁあああああ、ひゅーーーーー!? 莉嘉! 莉嘉ぁあ!! あばばば非常事態発生!!!」ザバザバ

莉嘉「Pくん!? どうしたの!?」ガシッ

P「こひゅー、こひゅー……俺な、実は泳げねぇんだ。それに今、塩水をしこたま飲んで辛い」

莉嘉「かっこ悪っ!? いや、ここまで泳いできたじゃん!?」

P「いや、もう、必死で……必死のぱっちで……」ゼェハァ

莉嘉「ど、どうすんの!?」

P「だがひとつ分かったことがある。俺は潜ることなら出来る。そして、俺にはもうひとつ出来ることがある」

莉嘉「もうひとつの出来ること?」

P「俺自身が―――――――シュノーケルになることだ……!!」


【砂浜】


美嘉「あれ? どうしたのみんな……プロデューサーや莉嘉たちは?」

みりあ「美嘉ちゃん!! 大変なのっ! 千枝ちゃんの腕が!」ポロポロ

美嘉「腕が!?」

仁奈「うつぼが!」ポロポロ

美嘉「うつぼが!?」

桃華「シュノーケルが!」ポロポロ

美嘉「シュノーケルが!?」

薫「日焼け止めが!」ポロポロ

美嘉「日焼け止めが!? って、ええ!? 全然分かんないから、みんな落ち着いて!」

みんな「かくかくしかじかぴにゃぴにゃふごふご」

美嘉「ええっ!? 莉嘉が貸した日焼け止めを海に落とした千枝ちゃんが日焼け止めを拾おうとして岩の隙間に腕を挟んじゃったの!?」

みりあ「そうなんだよ!」

薫「それで、せんせぇが千枝ちゃんを助けに!」

美嘉「あの馬鹿っ! 泳げないくせに!」ダッ

みりあ「あっ! 美嘉ちゃんっ!? 大人の人に……って行っちゃった……」

桃華「どうしましょう……」オロオロ


【防波堤】


莉嘉「Pくんが、シュノーケルになるって言い残して海に沈んでいったまま二分くらい経ったんだけどぉ……」オロオロ

P「ぶっはっ!!? ひぃいいいあああ」バシャバシャ

莉嘉「Pくん!? 大丈夫!?」ガシッ

P「空気っ……! 酸素っ……母なる星に満ちたる大気よ、私は神に感謝する……」ブクブク

莉嘉「泳いで! ちょっとは泳いでってば!」ザバザバ

P「いや、無理無理、俺、一学期の通信簿の体育のとこ、ずっと2だったもん。プールサイドで見学してたもん」

莉嘉「意外と冷静じゃない!?」

P「さっき、あまりにも酸欠状態が続いて、走馬灯が見えたんだ。小学生の頃の」ハァハァ

莉嘉「ハァハァじゃなくて、今も千枝ちゃんは酸欠状態なんだからしっかりしてよ、Pくん!?」

P「ああ、案ずるなかれ! 千枝には全てを伝えた……!」

莉嘉「全てって!?」

P「まず千枝にシュノーケルを外してもらい、俺が口移しで酸素を与える。そしてその間に俺が千枝の腕をなんとかして最小限のダメージで引き抜く!」

莉嘉「よく海中でそれ、伝えられたね!?」

P「ああ、身振り手振りのジェスチャーでな!」

莉嘉「ジェスチャーで!?」

P「こんなこともあろうかとジェスチャークイズの練習をしておいて正解だったようだな……!」

莉嘉「でも、それってその、千枝ちゃんと……キスするってことだよね?」ドキドキ

P「いたしかたあるまい……千枝の命が掛かっているんだからな……!」キラリ

莉嘉「Pくん……!」

P「次に会うときは、千枝と二人だぜ……っ!」ザブン


莉嘉「頑張って……! Pくん……!」

美嘉「おーい!! 莉嘉ー!」ザバザバ

莉嘉「あっ! お姉ちゃん!」ジャバジャバ

美嘉「プロデューサーと千枝ちゃんは!?」ハァハァ

莉嘉「それが……」


【海中】


ゴボゴボ…

P(千枝、準備は良いか?)サッサッスッ

千枝(はい……!)コクコク

P(そ、それじゃあ、行くぞ!)

千枝(ち、千枝……プロデューサーさんとキス……しちゃうんだ……っ////)

P(千枝のシュノーケルになるという俺の夢が、まさかこんなアクシデントで叶おうとは……!)ガシッ

千枝(んっ……)ドキドキ

P(俺はずっとこうしたかったんだ……こうやって千枝の肺に酸素を届けたかったんだ……)

P(やましさなんて一切なく、ただ、俺を伝って、千枝の肺を満たして、千枝の血液に酸素を送る存在に……!)

P(そうやって、千枝の血潮に……そんな存在に、ずっとなりたかったんだ……)

P(……でも出来んっ!!!!)ゴボゴボ

千枝(プロデューサーさん……!?)

P(俺ごときが、千枝の唇に触れるだなんて、そんな大罪を犯せというのか、神よ……!)フルフル

千枝(く、苦し……)ゴボッ

P(しかし俺は泳げない! このままでは俺を信じてくれたはずの千枝まで……!)ブクブク

千枝(プロデューサーさん……っ! はっ、早くっ……)ジタバタ

P(――ハッ!? ち、千枝!? 大丈夫か!? くっ、酸素を……早く……!)ガシッ

千枝(んんっ……!//// プロデューサーさんの酸素が……気管を通って千枝の肺[ナカ]に……!)


P(……)※無心で人工呼吸器になってる

千枝(プロデューサーさんの酸素……すごく……濃い、です……////)

P(千枝、ごめんな、俺はどうやらここまでのようだ……)フッ

千枝(プロデューサーさん!?)

P(もう俺の中にはひとかけらの酸素も残っちゃあいないんだ……)ブクブク

千枝(プロデューサーさん……!!)グイッ グイッ

P(千枝……千枝……)サッサッスッ

千枝(もう、良い、んだ……? プロデューサーさん! 千枝、そんなの嫌ですっ……!)ジタバタ

P(もう、良いんだよ……千枝……)ニコッ

千枝(お願い抜けて……! 千枝の腕なんか、どうなってもいいから、お願いっ……)ゴボボ

P(水中メガネは外さないように指示しておいて良かった……)ブクブク

千枝(プロデューサーさんっ……! プロデューサーさん……!)グイッ グイッ

P(最後に……千枝の涙……見れたからな……マジ尊い……)ブクブク

千枝(抜けた……! でも酸素が……!)ゴボボ


P(ああ……良かった……抜けたんだな……そうだ、水面から顔を出して、胸いっぱいに空気を吸い込め……)



P(産まれた瞬間みたいに……たくさんたくさん……)



P(ちくしょー、海の底って……こんなにも暗いんだな……)



P(ん……?)


キラッ


P(光が……そうか、天国からお迎えが来たのか……早ぇよ、ちくしょー)

P(もう少し……もう少しだけせめて、千枝のウエディングドレスを見るまでは……)

P(あっ……そうだ、結構前の仕事で、もう……見てた……わ……)



――――――

――――

――



ロ……


プ……ーサー


プロデューサー……!



千枝「――プロデューサーさんっ!!!」

P「ああ……なんだ、天使って千枝にそっくりなんだな……やはり千枝は天使だったのか……」パチクリ

千枝「プロデューサーさんっ……! 良かったっ!」ウルウル

P「あれ……? 千枝……だよな? あれっ? 俺、生きてるの?」


美嘉「こんの馬鹿プロデューサー!!!」ガーッ

P「おお、城ヶ崎姉……お前、耳元で叫ぶ奴があるか。おかげで鼓膜が」キ----ン

美嘉「どれだけアタッ……みんなが心配したと思って……」プルプル

P「おー、すまん。心配してくれたんだな、さんきゅ」

美嘉「ぐすっ……ばかぁああああああ!」ビエェエエエエ

P「そう言えば俺は誰が助けてくれたんだ……? 最後に千枝に似た天使の姿を見た気が……」

千枝「それが千枝も海から顔を出した瞬間、意識が朦朧として……いまいち記憶が……」

美嘉「私が駆けつけた時には千枝ちゃんが!!! 千枝ちゃんがアンタを助けたんだよ!!!!!!」アタフタ

莉嘉「お姉ちゃん……?」

美嘉「千枝ちゃんが必死になって海からプロデューサーを引き上げた姿は正にマーメードって感じだったなーーー!」

P「そうだったのか……ありがとうな……千枝」ナデナデ

千枝「い、いえ、そんな……私の方こそ……プロデューサーに助けてもらいましたし……////」

美嘉「ふ、ふ、二人共、ちょっと休んでおきなよ!! アタシらは海の家で焼きそばでも食ってくるし!」

莉嘉「そうだね☆ 行こ行こ、みんなっ♪ お姉ちゃんが好きなものいっぱいご馳走してくれるってさ!」

美嘉「えっ!?」

莉嘉「んじゃ、れっつごー!」

みりあ「う、うん」

薫「やっきそば、やっきそば!」

仁奈「仁奈の全力を見せつけてやるでごぜーます!」

桃華「わ、わたくしはかき氷を……!」


\ ワイワイ ガヤガヤ…/


P「…………」

千枝「…………」



ザザーッ ザザーッ

ザザーン…



P「えーっと、そのなんだ……」

千枝「は、はい……////」

P「緊急事態だったとはいえ、その、ゴニョゴニョ……して、すまんかった」

千枝「しょ、しょうがないと思います!! 緊急事態だったので!!」フンス

P「いや、あのときは気が動転しててな!? 言い訳になるけど、決して冷静な思考では無かった! だから忘れてくれ、頼むっ!」

千枝「プロデューサーさんっ」ジトー

P「本当にすまん! 忘れてくれ!!!」ドゲザァッ

千枝「えっと……忘れなきゃ、ダメですか……?」ムスッ

P「えっ?」

千枝「千枝、本当に嬉しかったんです。プロデューサーさんが助けてにきてくれたこと、助けようとしてくれたこと」

P「いや、結果的には助けることが出来なかったわけで……」

千枝「千枝、悪い子です。だから絶対に今日のこと、忘れませんから」

P「えっ」

千枝「プロデューサーさんからキスしてもらったこと、絶対に忘れません」ツーン

P「千枝……」

千枝「ふふっ♪」ニコッ

P(神様……! 悪い千枝すらも、また天使だったということなのか……!? これがこの宇宙の真理なのか……)


【海の家】


莉嘉「――ねぇねぇ、お姉ちゃ~ん?」モグモグ

美嘉「ん~?」モグモグ

莉嘉「どうして、本当はお姉ちゃんがPくんを助けたってこと言わなかったの?」

美嘉「ぶーーーーーーっ!?」

みりあ「え~~~~っ!? そうだったの!?」ガタッ

美嘉「あは、あはは……こら莉嘉っ! なんで言っちゃうかなぁ……」

莉嘉「薫ちゃんたちはみんな、かき氷機の前に張り付いてるし、みりあちゃんだけならイイでしょ?」

美嘉「まったく……」フキフキ

みりあ「本当に美嘉ちゃんがプロデューサーを助けたの?」

美嘉「あー、うん、アタシもあの時は必死だったし、あんま覚えてないんだけどね……アハハ」

莉嘉「ざっぱーんって海に潜ってさ、千枝ちゃんを海から引き上げて、また潜ったと思ったら今度はPくんと一緒に海から出てきたんだよ!」

みりあ「すっご~~~い! カッコイイね~っ!」キラキラ

美嘉「や、や、それほどでも……////」テレテレ

みりあ「自慢のお姉ちゃんだね!」

莉嘉「あったりまえじゃん! なんてったってカリスマJC、城ヶ崎莉嘉の姉だもん! これくらい朝飯前☆ ねっ、おねーちゃん?」

美嘉「莉嘉……アンタ……」ウルウル

莉嘉「でもどうして言わなかったの? 本当のことを知ったらPくんだってコロっといっちゃうかもだったのにぃ……」

美嘉「マセたことを……んーと、そりゃ、千枝ちゃんの見せ場を奪っちゃったから……じゃなくて!」

美嘉「なんて言えば良いんだろ、覚えてないならフェアーじゃないって言うか……」ガシガシ

みりあ「……?」

莉嘉「?」


みりあ「あ~っ! だからプロデューサーの唇がピン――」

美嘉「わぁああああああああ!?//// みりあちゃんそれ気づいちゃダメぇっ!////」バッ

みりあ「むぐっ……んん~~~」ジタバタ

莉嘉「なになに!? どうしたの!?」

美嘉「ああ、もうっ! 大人になるのってホント難しい~~~っ!」



                       終わりっ★


以上で投下終了です。なんかごめん。

おつ
美嘉姉かわいい

菜の国じゃなくて、彩の国だってんだよ!あ゛? 埼玉ディスってんじゃねぇゾ? あ゛っ?
ssは面白いかったですハイ

よい

千枝ちゃんは天使だし美嘉ねぇもかわいかった
おつ

埼玉出身なら紳士な筈なのにな

>>48
どちらかと言うと、紳士という名の変態だからなこのPは

モバつけろやガイジ

乙!

なんだよモバカスのSSかよ
なら本家のP出すなよ

スレタイでモバマスとわからないガイジが騒いでおられる

乙乙

いい話風に終わってるけどPは捕まれ

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