卯月「シンデレラ・ロード」 (22)
こんばんは。
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のモバマスSSです。
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トップアイドル。
普通の少女が、シンデレラへと登り詰める道は、険しく、長い。
アイドルになることを夢見て養成所に通っていた私は、プロデューサーさんに見込まれて、正式にアイドルとして活動できるようになった。
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デビューして以来私は、New generationsという3人組のユニットで活動している。
New generationsは、渋谷凛ちゃんと本田未央ちゃんと私の3人で構成されている。
凛ちゃんはすごく可愛くて、年上の私よりしっかりしている。
ボーカルの実力はトップレベルだし、ダンスだって卒無くこなす。
未央ちゃんは明るくて、見ている人たちを元気にさせる。
ダンスは3人で一番上手いし、未央ちゃんのトークはとても盛り上がる。
このユニットでしばらく活動して、痛感したことがあった。
私は、2人に比べて取り立てて良いところがない。
ボーカルは凛ちゃんに、ダンスは未央ちゃんに負けているし、ヴィジュアルだって2人に勝っているとは思えない。
本当は、こんなこと、思っちゃいけないのに。
私の劣等感は、New generationとしての活動を重ねていく度に増していった。
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土曜日のレッスン日、
私はプロデューサーさんに呼びだされた。
「卯月、凛と未央はどこにいるか分かるか?」
「えっと、2人ともレッスンをしていると思います。」
「大事な話があるんだ。レッスンが終わり次第、凛と未央を呼んできてくれないか?」
「は、はい!」
プロデューサーさんにお願いされて、メールを打っている時は、心臓が止まりそうになった。
大事な話ってなんだろう。私だけ、New generationを外れろとか......?
考えれば考える程、思考がマイナスになっていきそうになった。
凛ちゃんと未央ちゃんは、メールを送ったら直ぐに来た。
私達3人を座らせて、プロデューサーさんは切り出した。
「新しく、シングル曲を出すことになった。」
「2ヶ月後、〇〇のライブハウスで新曲の発表ライブを行う」
凛ちゃんがプロデューサーさんに疑問を投げかけた。
「3人のユニット曲ですか?」
「違う、卯月のソロ曲だ。曲名は「気まぐれロマンティック」。凛と未央には、ライブの時にバックダンサーをしてもらう」
心臓が止まったような感覚。
最初は、プロデューサーさんの発言を疑ってしまった。
〇〇のような大きなライブハウスで、他のアイドルをバックダンサーに置いてのライブ。
他のアイドルにバックダンサーをやらせてのソロ曲は、全てに置いて高い技術が必要になる。
歌うのは1人だから、ミスは絶対にしていけない。
ダンスでも、バックダンサーが霞むほどのパフォーマンスを見せないといけない。後ろに立つのが同じアイドルなら、尚更。
正直に言って、私には荷が重すぎる。
「......できるか、卯月」
でも、プロデューサーさんにそう言われて、見つめられたら、断ることはできない私がいた。
「......はい!私、頑張ります!」
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最近、どこか卯月の様子がおかしいと思っていた。
プロデューサーとしては、担当アイドル少しの変化でも見逃してはいけない。
......何か、卯月の悩みを打ち破る切っ掛けはないのか。
そう思っていた矢先に、レコード会社から受け取った新曲。
身近な異性に抱く一途な恋心が込められた歌詞、アップテンポなリズム。
この歌を、誰が歌うか。
そう考えた時に、ふと卯月の名前が浮かんできた。
事務所に帰り、真っ先にパソコンに齧り付く。
頭の中に浮かんだ構想が、液晶の画面に流れ落ちてくる。
計画したライブが、卯月が壁を越える切っ掛けになることを願って。
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本格的にレッスンが始まる前に、トレーナーさんとの打ち合わせに入った。
トレーナーさんも、卯月が歌うこと、凛と未央の2人がバックダンサーを務めることに賛同を示してくれた。今後、New generationはレッスン重視のスケジュールになる。俺も時間を作って、レッスンの指導に当たるようにすることにした。
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まずは、3人で曲の確認。
3人が三者三様の反応を示したが、この曲を特に気に入ったのは卯月だった。
「私、この曲でライブを成功させられるように、頑張ります!」
その言葉を聞いて、俺は安堵した。
そして、レッスンが始まった。
声合わせのレッスン。
卯月は特に問題もなく、この曲を歌い上げていた。
ダンスのレッスン。
3人のダンスにも、課題らしい課題が見当たらない。
この調子なら、いける。
順調にレッスン日程を消化し、俺はそう思った。
しかし、物事はそこまで簡単に進まなかった。
これが、卯月が思い悩んでいたことなのかもしれない。
ボーカルと、ダンスを合わせたレッスン。
当然のことながら、バックダンサーである凛と未央は踊るだけで、メインである卯月はボーカルに合わせて、凛と未央以上のダンスをしなければいけない。
それが、卯月にとっては重圧だったのかもしれない。
ボーカルとダンスを合わせたレッスンは全くと言っていいほど上手くいかず、
卯月の笑顔は日に日に少なくなっていった。
レッスンの30分前。
事務所にいた俺の元に、見慣れない電話番号から電話がかかってきた。
「はい、もしもし。CGプロのPです」
「こんにちは、いつも卯月がお世話になっています」
卯月のお母さんだった。
「本日はどのようなご要件でしょうか?」
「はい、今日卯月が体調を崩してしまって......。ライブが近いとのことですが、今日のレッスンはお休みさせていただけないでしょうか」
「はい、分かりました。お大事にされてください」
電話を切る。
気がつくと体が、鞄を持って外に出ようとしていた。
途中で、凛と未央とすれ違う。
「すまん、急用が入った。トレーナーさんには、今日卯月が休みだって伝えておいてくれ」
2人にそう言い残し、俺は駆け出した。
コンビニによって、少し買い物をする。
途中でタクシーを拾って、しばらくしたら卯月の家が見えてきた。
運転手に料金を払い、車から降りた。
郊外にある、少し大きめな卯月の家。
インターホンを押すと、中から小走りをするような音が聞こえてきた。
「はーい」
卯月のお母さんだった。
「こんにちは。改めまして、CGプロのPと申します。本日はお見舞に伺いました」
「心ばかりのものですが、卯月さんにどうぞ」
「ありがとうございます。お時間があれば、卯月に会っていきませんか?」
リビングに通してもらう。
卯月のお母さんに案内されて2階を上がり、卯月の部屋の前まで来た。
卯月のお母さんがノックをする。
部屋の中から力の抜けた返事が返ってきた。
「卯月にお客さんよ」
「......誰?」
「ふふ、卯月のプロデューサーさんだって」
卯月のお母さんが俺に向かってにやりとし、部屋のドアを開けた。
部屋の中に入ると、頭に冷却シートを貼ってベッドに臥せっている卯月がいた。その表情に、いつもの笑顔が無い。体調不良以上のことを感じさせた。
驚愕の表情。
少し、気まずい。
助けを請うために振り向くと卯月のお母さんの姿はなく、閉められたドアだけがあった。
息をすって、吐く。
「卯月、ここに座っていいか?」
「あっ、どうぞ」
「これ、買ってきたんだ。よかったら食べてくれ」
「ありがとうございます......」
「......」
「......」
静寂。
それが耐えられなくなったのか、卯月が口を開いた。
はっとして、卯月の方を見る。
「私、何やっても他の人よりできなくて、失敗ばかりで......」
「期待してくれてるプロデューサーさんにも申し訳ないですよね......」
そうだ、俺は何を考えていたんだ。
俺は卯月が「何をしたいか」、「何を悩んでいるか」
ではなく、「何をさせたいか」としか考えてなかった。
その結果、元々弱っていた卯月を追い詰めることになってしまっていた。
そんなんじゃ、プロデューサー失格だ。
俺の言葉が足りなかった。
卯月の笑顔を取り戻したい一瞬で俺は喋り出した。
「私、ダメですよね...」
はっとして、卯月の方を見る。
「私、何やっても他の人よりできなくて、失敗ばかりで......」
「期待してくれてるプロデューサーさんにも申し訳ないですよね......」
そうだ、俺は何を考えていたんだ。
俺は卯月が「何をしたいか」、「何を悩んでいるか」
ではなく、「何をさせたいか」としか考えてなかった。
その結果、元々弱っていた卯月を追い詰めることになってしまっていた。
そんなんじゃ、プロデューサー失格だ。
俺の言葉が足りなかった。
卯月の笑顔を取り戻したい一瞬で俺は喋り出した。
すみません
>>14×です
「なあ卯月、聞いてくれるか?」
「俺が卯月をスカウトした時の話なんだけどさ、他にもスカウトしたアイドルがいるだろ?」
頭上にハテナを浮かべる卯月。
「1人1人に、スカウトした理由があるんだよ。例えば奏はその雰囲気とかで、裕子はただ単に面白かったからなんだよ」
「私にも、理由があるんですか?」
「もちろんあるよ。卯月の養成所に来る前の日に、俺さ、仕事で失敗しちゃったんだ。ダブルブッキングっていうやつだ」
「関係者の人に頭下げまくったよ。俺、すごい落ち込んでてさ。その時に見たのが、卯月だったんだよ。俺に挨拶してくれた時の笑顔。それに元気をもらったんだ」
「私の、笑顔で......」
「うん。卯月の、笑顔で。この娘を、アイドルにしたい。ステージの上で、笑顔を振りまいて欲しい。そう、思ったんだ」
「自分より、ボーカルが、ダンスが上手い人がいたっていい。歌が上手いなら歌手でいいし、ダンスが上手いならダンサーでもいい。どれだけの人を笑顔にできるかっていうのが、アイドルとして大事なことだと思うんだ。そして、卯月にはそれができる」
「でも、私、何も上手にできないんですよ......」
「上手にできないなら、人に頼ればいい。トレーナーさんだって、ちひろさんだっているし、俺にもアドバイスはできる。そこから、ゆっくりでいいから慣れていけばいいんだよ。まだ、次のライブまで時間はある」
「私を、助けて、くれるんですか......」
「ああ、もちろん。俺は卯月のプロデューサーだからな」
「ふふ、プロデューサーさんって、やっぱり優しいですね...」
卯月の口元が少し上がる。
顔を上げて、俺と目を合わせると、満面の笑顔を見せてくれた。
「プロデューサーさん、私、頑張りますから......私に、魔法をかけてくださいね!」
「ああ、約束する」
この、笑顔。
俺が独り占めしておくには、余りにも勿体無かった。
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ライブ当日。
私と凛ちゃんと未央ちゃんが、衣装をきてステージ裏に立った。
すぐ側に、プロデューサーさんがいる。
ステージでは、前座として楓さんと智絵里ちゃんがライブをしている。
でも、今日の主役は私。
プロデューサーさんだって、見守っていてくれている。
「ありがとうございましたー!さて、次はメインの......」
凛ちゃんよりも、未央ちゃんよりも、楓さんよりも、智絵里ちゃんよりも。
誰にもできない、とびっきりの笑顔で。
このステージ全てを、笑顔にしよう。
私は全力でステージに飛び出していった。
おわり。
お読みいただきありがとうございました。
一応言っておきますが、ss中の「気まぐれロマンティック」はいきものがかりさんの
曲のカバーです。
気が向いたら、別のssも書きたいと思います。
おやすみなさい
良かった
乙
他のアイドルのカバー曲でも書いてほしいなこれは。
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