杏「ふれふれあんず」 (14)
まゆ「ただいま、杏ちゃん」
杏「あ、お帰り」
杏「撮影どうだった?」
まゆ「うふふ……ちゃんと出来ましたよ?」
杏「ん、そっか」
杏「じゃ、発売が楽しみだね」
まゆ「そうですね」
まゆ「今回の撮影……アジサイも綺麗ですごい楽しかったんです」
杏「ふーん」
まゆ「……興味ないありませんか?」
杏「ほら、杏は花より団子だから」
まゆ「確かにそうですね……」
まゆ「じゃ、そんな杏ちゃんには……はい、どうぞ」
杏「ありがと」
杏「……クッキー?」
まゆ「はい」
まゆ「お土産に買ってきたんです……うふ」
杏「ふーん」
杏「じゃ、一緒に食べよっか」
まゆ「うふ、そうですねぇ」
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杏「いただきまーす」
まゆ「いただきます」
杏「あむ……ん、わりとおいしい」
まゆ「ですねぇ……なんだかちょっと不思議な味……」
杏「だねー」
杏「でも癖になるかも……」
まゆ「うふ……」
杏「あむあむ……」
まゆ「……あ、そういえば」
まゆ「もうひとつ、不思議なことがあったんです」
杏「……撮影で?」
まゆ「はい」
杏「心霊写真が撮れたとか?」
まゆ「違いますよぉ……!」
まゆ「そんな写真は……」
まゆ「……」
まゆ「……な、ないはずです」
まゆ「たぶん……」
まゆ「……」
まゆ「……ないですよね?」
杏「いや、杏に聞かれても」
杏「まあ、無事に撮影が終わったっていうなら大丈夫だと思うよ」
まゆ「ですよね……ほっ」
杏「……相変わらず怖がりだなぁ」
まゆ「怖いものは怖いので……」
杏「……で、何があったの?」
まゆ「あ、そうそう」
まゆ「えっと……撮影の日、まゆ、ふれふれまゆを作ったんです」
杏「……何それ?」
まゆ「雨が降って、プロデューサーさんと二人きりの時間が増えるように……って」
まゆ「そんな願いをこめた、まゆのてるてる坊主です」
杏「あー、るてるて坊主みたいな?」
まゆ「……るてるて坊主?」
杏「ん、違うの?」
まゆ「いえ……まゆ、るてるて坊主は知らないので」
杏「あ、そうなんだ」
杏「いや、ただ単にてるてる坊主を反対にして吊るすだけなんだけどね」
杏「そしたら明日は雨になるーっていうから……杏も小さいときは毎日吊るしてたよ」
まゆ「毎日……」
杏「毎日すごい雨が降ったらずっと休める!……って思ったんだけど」
杏「そんな強い雨ぜんぜん降らなくてさー」
まゆ「……まあそうですよね」
杏「だよねー」
杏「そんなに雨が降ってたら地球が海だけの星になりそう」
まゆ「……うふふ、それは大変ですねぇ」
まゆ「でも、まゆの作ったふれふれまゆはそのるてるて坊主とは違いますよ?」
杏「あ、そうなんだ」
まゆ「逆さに吊るしたりしないので」
杏「ふーん……じゃ、見た目はてるてる坊主と同じって感じ?」
まゆ「はい」
まゆ「……ううん、ちょっと違うかも」
杏「ん?」
まゆ「えっと……作り方は普通のてるてる坊主と同じなんですけど」
まゆ「作るとき……思い込めて作るんです」
まゆ「明日雨が降って、プロデューサーさんと一緒にいれますようにって……強く……強く……」
まゆ「……それで、完成した二つのてるてる坊主にアクセサリーをつけるんです」
まゆ「片方にはまゆと同じ……赤いリボンを頭と、首に……」
まゆ「片方にはプロデューサーさんと同じ黒いネクタイを首に……」
まゆ「これで、てるてるまゆとてるてるプロデューサーさんの出来上がりです」
杏「……なるほどねー」
まゆ「あとは、これを吊るすんです」
まゆ「てるてるまゆとてるてるプロデューサーが寄り添うように……一緒にいられるように……って」
まゆ「それから、吊るしたそれに祈るんです」
まゆ「ふれふれ……ふれふれ……って」
まゆ「……これでふれふれまゆの完成です」
杏「ふーん……」
まゆ「これを作ったから……きっと雨が降って」
まゆ「プロデューサーさんと二人きりの時間が増えたんです……うふ」
まゆ「……きっとこれは偶然じゃない」
まゆ「まゆの思いを受け取ってくれた神様が叶えてくれたんだって……まゆは、そう思ってます」
まゆ「うふ……うふふっ」
杏「……いいなー」
杏「……本当に叶うなら……杏も作ろうかな」
まゆ「あら、杏ちゃんも作るんですか?」
杏「うん」
杏「……杏も、明日雨降らないかなーって思ってるからさ」
まゆ「そうですか……」
まゆ「……杏ちゃんが作るならふれふれあんずですね」
杏「……どっちでもいいよ」
まゆ「うふふ」
まゆ「……ちなみに、なんで雨にしたいんですか?」
杏「お仕事だから、休みにならないかなって」
まゆ「……杏ちゃん、しばらくオフでしたよね?」
杏「ん、そだよー」
杏「まゆもいなかったし、だらだらの限りを尽くしてた!」
杏「……なんて生活してたらさー」
杏「休みになれちゃったよね」
杏「お仕事したくなくなるよね」
杏「だから明日は休みたい!」
まゆ「……」
杏「……いや、明後日からがんばるつもりだよ?」
まゆ「……本当ですかぁ?」
杏「少なくとも今はそう思ってる」
まゆ「……」
杏「それに、明日ってまゆはオフなんでしょ?」
まゆ「あ、はい……」
杏「……だから、久しぶりにいろいろ遊びたいなって思って」
杏「撮影でしばらくあえなかったし」
まゆ「!」
杏「だから、明日雨になって、お仕事が無くなればいいのにな……って」
杏「……まあ、そんな感じで作ろうかなって」
杏「……」
まゆ「……そうですか」
まゆ「うふ……いけないことなのに……うれしいかも……♪」
まゆ「うふふ……」
杏「……何さ」
まゆ「いえ、別に」
まゆ「……杏ちゃん、寂しかったんだな……って」
杏「……そりゃあさ、この寮って杏たち以外いないしさ」
杏「ちょっとくらい寂しくたって……仕方ないでしょ」
まゆ「うふ……そうですね」
まゆ「うふふ」
杏「……何さ」
まゆ「いえ別に……うふふ」
杏「……うぅ」
まゆ「さて、それじゃ作りましょうか」
杏「ん、そだね」
杏「……まゆはてるてるまゆにリボンをつけたんだよね?」
まゆ「そうですね」
まゆ「よりまゆらしくなるようにって……」
杏「そっか……んじゃ、杏も杏らしくなる何かを……」
杏「……」
杏「……働いたら負けって書けばいいか」
まゆ「うふ……確かに杏ちゃんらしいですね」
杏「でしょ?」
杏「あと杏らしいものっていってもこのうさぎくらいしかないし……」
まゆ「このうさぎを作るのは……」
杏「まあ、無理だよねー」
まゆ「……あら?」
まゆ「そこ、綿出てませんか?」
杏「……あ、本当だ」
まゆ「うふ……後で縫ってあげますねぇ」
杏「……ありがと」
杏「やっぱまゆがいると助かるなー」
まゆ「うふふ……」
まゆ「今度の撮影は一緒に行けるといいですね」
杏「……そだね」
………………
…………
……
まゆ「うふ、できました」
杏「杏もできたよ」
まゆ「あらかわいい」
杏「まゆのこそ」
まゆ「うふふ」
杏「へへっ」
杏「……で、後はこれを吊るせばいいんだっけ?」
まゆ「そうですね」
まゆ「ふれふれ……ふれふれ……って祈りながら」
杏「んー」
杏「……ふれふれー……めっちゃふれー……!」
杏「交通が機能しなくなるくらいの雨めっちゃふれー……!」
杏「明日が間違いなく休みになるくらいの雨めっちゃふれー……!」
杏「ふれー……ふれふれー……!」
杏「……」
杏「……よしっ!」
杏「こんなもんかな?」
まゆ「……別に声出さなくてもよかったんですけど」
杏「あ、そうなの?」
杏「……ま、声に出したほうが神様にも届きやすいでしょ」
まゆ「そういうものでしょうか……?」
杏「それじゃ、まゆも吊るしなよ」
まゆ「そうですね」
まゆ「……」
まゆ「……」
まゆ「……」
まゆ「……これがてるてるまゆ」
まゆ「それと……」
まゆ「……」
まゆ「……」
まゆ「これが、てるてるプロデューサーさん」
まゆ「うふ……これで出来上がり……♪」
杏「……二つ作ってるなーとは思ったんだけど」
杏「やっぱりプロデューサーだったんだね」
まゆ「はい」
まゆ「まゆと、杏ちゃんと、プロデューサーさん」
まゆ「……てるてるまゆたちも一緒にいさせたかったので」
まゆ「まゆたちと同じように……うふ」
杏「……そっか」
杏「そうだよね……うん」
まゆ「……」
杏「……」
杏「……ね、明日雨降るかな?」
まゆ「降りますよ、きっと……うふ」
杏「そっか」
杏「……そのときは、プロデューサーもこの部屋に来て、一緒に1日中だらだらするのかな」
まゆ「神様がお願い事を叶えてくれるならそうなるかもしれませんね」
杏「……雨の中くるなんて大変だろうなぁ」
まゆ「そうですね……うふふ」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
杏「……降ってるね」
まゆ「降りましたねぇ」
まゆ「それも、結構強い……」
杏「……外に出たくないレベルのね」
まゆ「……」
杏「……」
杏「……まさか、本当に降るとは」
まゆ「信じてなかったんですかぁ……?」
杏「いや、別にそういうわけじゃないんだけど……」
杏「……降ってるなぁ」
まゆ「降ってますよ……うふ」
杏「……」
杏「……今日のお仕事なくなるかな?」
まゆ「プロデューサーさんから連絡来てるんじゃないですか?」
杏「あ、そっか」
杏「んー……あ、連絡来てる」
杏「なになに……」
杏「……」
杏「……うげー」
まゆ「あら」
まゆ「なんて書いてあったんですか?」
杏「……仕事はあるから迎えに来るってさ」
杏「くそう……休めなかった……」
杏「こんな雨降ってるんだから仕事なしでもいいのに……」
まゆ「……今日は何のお仕事なんですか?」
杏「えっと……何かの雑誌の撮影だったかな」
まゆ「……それって、室内のですか?」
杏「そうだったはず」
まゆ「……なら、このくらいの雨じゃ、まだお仕事なくならないかと……」
まゆ「室内だったら雨もほとんど関係ないでしょうし」
杏「まあそっかー……」
杏「……警報も出てないから辿り着けないってこともないだろうしねー」
まゆ「そうですね」
まゆ「警報まで出てたら、もしかしたら休みになっていたかもしれませんけど……」
杏「祈りが足りなかったかー……くそう」
杏「もっとふれー……って祈っとけばよかった……」
まゆ「……うふ」
まゆ「それじゃ、プロデューサーさんを待ってましょうか」
杏「……どれくらいで来るかな?」
まゆ「きっとすぐ来ますよ」
まゆ「プロデューサーさんなら」
杏「うげー……」
杏「今日もだらけようと思ってたのに……もっとだらだらしたかったのに……!」
まゆ「ふふ、また今度、一日中一緒に遊びましょうね……♪」
杏「杏は遊ぶよりはだらけたいけどね」
杏「……一緒に」
まゆ「……うふふっ」
おわり
あいの待ち人まゆはとても素敵でした。ついでに初めて自引きできたまゆでした
お仕事セリフでは「てるてるまゆ」「てるてるプロデューサーさん」、思い出エピソードでは「ふれふれまゆ」と呼ばれていたのでこういった形のものにしました
誤字脱字、コレジャナイ感などはすいません。読んでくださった方ありがとうございました
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