王「ごほっ、ごほっ…ぅぐ……」
「起き上がってはなりませぬ、我が王……貴方のお身体はもう……」
王「息子に残すべき物も、継がせるべき手順も、全て終えた」
王「後はこれだけなのだ」
王「他の者達は出て行け……王子と二人にさせて貰う」
「……御意」
「御心のままに」
王子「……父上、先程のお話は…」
王「伝説の『魔女』は確かにこの国に存在する、それは私の傍にいたのだ……」
王子「……」
あれはまだ私が産まれて間も無い時だ。
赤子の私が最初に彼女に会った記憶だ。
「おぎゃぁあ! おぎゃぁあ! おぎゃぁあ!」
当時の国は不安定で、後から聞いた話ではその日は恐らくクーデターの起きた日だった。
泣き叫ぶ私の事を抱き上げる暇も無ければ人もいなく。
炎に包まれる城の中で何も出来ない赤子の私を、誰も気にかける者はいなかった。
ただ、一人を除いて。
……「まぁ、可哀想に……」
何年経とうと、どれだけの事があろうと、何故か言葉の一つ一つさえ忘れる事がない。
泣いていた私を炎の中抱き上げるその女は、優しい声でそう呟いて何処かへ歩いて行ったのだ。
期待
王「……十を数える歳になった頃に、私は前王に言われたものだ」
王「焼け落ちた城跡に大量の花と共に眠っていたのを見つけた時は……神の奇跡だと思ったとな」
王子「父上は神に愛されていたと聞きます」
王「それは違う」
王「私が愛していただけだ、彼女は私を愛していたのではなかった」
王子「まさか、神とはその魔女なのですか……?」
王「そうだ……あれは、哀しき時を生きる女だ」
ふむ
まだか
そしてお前のお母さんだ
期待
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